「うん、もう平気。……ありがとう、隆くんもお店頑張ってね。うん、じゃあまたね」

廊下で話した後、電話を切りながら部屋に戻ってそのままベッドの上に座ると、ずっと私になんか興味なさそうにテレビを見ながら煙草を吸っていた仁は、それを灰皿に押し付けながら低い声を出し、私のことを見た。

「誰だ、タカシって」
「……」

もしかして私が誰と話してたか気になってるのかな……ちょっと嬉しい。だからつい、もう少し反応を見たいなと思ってしまい黙っていると、仁は苛立っているのか「オイ」と怖い顔をする。

「……河村隆くん。仁もよく知ってるでしょ」
「河村、だと?」
「そうだよ」
「んでテメエのとこにあいつから電話掛かってくんだよ」
「べつにいいでしょ……友達なの」
「あ?」

隆くんは、以前に会った時からずっと私のことを心配してくれていて、今でも時々連絡をくれる。私が寂しそうにしてたから、かわいそうだと思ってくれているのかもしれない。でも、もう平気だよ、と言えば「そっか、よかった」と笑って、安心してたみたいだった。

「あんな奴と関わんじゃねえ」
「なんで、隆くんはすごく良い人だよ。私にも優しくしてくれるの」
「テメエは優しくされりゃ誰でもいいのかよ」
「そんなこと言ってないでしょ」

呆れた振りをしながら、心の中ではちょっと笑っていた。珍しく、ヤキモチやいてるのかな。いつもは私にそんなこと言ったりしないのに。

「隆くんがね、仁にもお店に来て欲しいって言ってたよ」
「ケッ、誰がんなとこ行くかよ」
「今度一緒に行かない?」
「テメエ一人で行け」

随分機嫌が悪いな……。仁と隆くんは子どもの頃からずっと知り合いだから、とっても良い人だってことはわかってるだろうし、べつに何も心配することなんてないのに。

でも、自分ではもう女の人に連絡先教えるなとか約束させておきながら、相手が隆くんとはいえちょっと悪かったかな……と思いつつ、これ以上何か言うと余計に怒りそうだし。

まあいいや、とりあえずそっとしておこう。と思ってそのまま寝転び、しばらくの間アプリのゲームで遊んでいると、急にベッドが軋んだので視線を画面から外して見るといつの間にか横に仁が座ってて私を見下ろしてる。

「……。お前くだらねえことすんな」
「ん……?なに、くだらないことって……」

見上げながらそう聞くと、仁は黙ったまま私の頬を撫でるので思わず携帯が手から滑って、ポサ、という音とともにシーツの上に落っこちた。

「あいつと口なんか利いてんじゃねえ、っつってんだよ」
「……」

なんだかちょっと切なげな眼差しでじっと見つめられて、胸がどきどきする。そういえば、確か、前に隆くんが言っていた。空手道場に通っていた時、私と話すといつも仁に怒られたって。

あの頃のことをよく覚えてなくて、あの後優紀ちゃんに聞いてみたら私はどうやら随分と隆くんに懐いていたらしい。優しくしてくれる男の子が珍しくて、嬉しかったのかもしれない。

もしかしたら、あの時も、仁はヤキモチやいてたのかな……。

大きな手が私の頬を優しく撫でるのがなんだか心地よくて、目がとろんとしてくる。そのまま仁のことを見つめていたら顔が近付いてきて、そっと唇にキスされた。

「……仁、どうしたの……?」

離れた後、本当はわかっているけどわざと聞いてみると、やっぱりそれには何も答えない。なんだか可愛く思えて、堪え切れずちょっと笑ってしまうと、反対に仁の眉間には皺が寄ってどんどん不機嫌になっていく。

「……なに笑ってんだ」
「べつに……」
「馬鹿にしてんだろ」
「してないよ」

そうは言っても顔は上手く隠せずににやけていたのだろう。仁は「テメエ……」と低い声を出した後、私に覆い被さって身動きを取れなくするとミニスカートから出ている太股を手の平で撫でた。そしてそれは次第に上へと上がってきて、下着の上から私の秘部を指で擦る。

「……あ……、だめ……。ねえお風呂入ってからにしよ……?」
「口答えすんな」
「だって……、」

仁がその体勢のまま手を伸ばしてテレビのリモコン掴み、電源を切ると急に部屋の中はシンと静まり返る。小さく「いや」と言ってみても、既にじんわりと湿り気を帯びているその箇所は、ちっとも拒んでなどいない。

するりとショーツを脱がされて直接触れられると、口からは「……あ」という声が漏れ、私は思わず手を伸ばして仁の腕を掴んでしまう。

「や、やだ……もっと暗くして……」
「……」
「……恥ずかしいの……」

顔が火照って、熱い……きっと今赤くなってる。仁は、黙ったままそんな私のことを見下ろしていた。何を今さら、と自分でも思うけど、やっぱり明るい場所で直視されるのは恥ずかしくてそんなの耐えられない。

結局は言う通りに照明を消してくれて、それから枕元のランプをつけるとぼんやりとしたオレンジ色の明りが部屋の中を照らす。ベッドに寝そべって、下半身だけ何も身に着けない私が開いた足の向こうには、仁の姿。そのとなりには、さっきまで履いていたはずの下着が落ちている。

「……っ、あ……」

十分濡れるくらい優しく擦られた後に、指が入り込む。いやらしい水音を立てながら気持ちのいい箇所を探る様に動かされると私の中からはとろりと生温いものが溢れ出してきて、次第に呼吸も荒くなっていく。

声と恥ずかしさを堪えながらも仁のことを眺めていると、時々ちらりと私に視線を向けるので、その度に目が合う。

セックスする時、いつも仁は黙ったまま……。だけど、べつに言葉で責められたりなんかしなくたって、こうやって時折仁と視線を合わせるだけで、体中が熱くなって堪らなくなる。

仁の指が私の中に入り込んでいる、やらしく動いてる。そう思えばいつも自分で勝手に興奮して、恥ずかしいくらいに濡れてしまう。

「あっ、……あ、そこだめぇ……」

感じる箇所を優しく責められながら更には舌で舐められると、卑猥な響きに気がおかしくなりそうになって、もうこれ以上我慢なんてできない。

「……気持ちいい……、いっちゃう……あ、っ……」

快感に震えながら甘ったるい声を上げて達してしまうと、瞼はとろんとして、じんわりと続く気持ち良さの中そんな自分がなんだか急に恥ずかしくなってくる。

するとそこから離れた仁がこちらに近付いてきて私の首元にキスしながら、右手はカットソーの下に入り込んでたくし上げると、ブラジャーの上から優しく胸を揉む。

私はそれとは逆の仁の左手首を掴んで自分の口元まで持っていくと、中指と薬指の爪先辺りに歯を立てて強めに噛んだ。

「……痛てえよ」

仁は思わず胸を触る手を止めると低い声を出し、顔をしかめた。照れ隠しのつもりでしたのかは、自分でもよくわからない。でも、そんな仁の様子を見て愉しそうに笑うと、私がこんな風に声を上げて笑うのは珍しいと思ったのかそれ以上は何も言わず、べつに怒らなかった。


上半身も全部脱がされたところで私は体を起こし、仁の着ていたTシャツを途中までたくし上げると後は自分で脱いでくれて、それは下半身も同じだった。

立って、と言って膝立ちしてもらうと私は仁の前に四つん這いになって、ペニスをそっと手で触りながら、顔を近付けてそれを舌で舐め上げる。

それから口に咥えたり舐めたり、愛撫を繰り返し、時折上目遣いで仁のことを見上げてにこっと笑ってみせる。「気持ちいい?」と見つめながら優しい声音で聞くと、仁は何も言わないけど頭を撫でてくれるから、きっとそうなんだろうなって自分ではいつも思ってるけど。

軽く腕を掴まれたのでそれを止めて体を起こすと、そっと押し倒されて仰向けになったところ、避妊具を付けた仁が私の中に入り込んで、覆い被さってくる。

ゆっくりと動きながら、熱っぽい視線でじっとこの目を見つめる仁の顔を、私はそっと両手で包み込んだ。

「仁、機嫌直った?」
「……」

黙ったまま何も答えないので、そのまま顔を引き寄せてキスする。軽く音を立てながら何回か繰り返したところで、その目を見つめながら微笑んだ。

「こんなこと、仁にしかしないよ」
「……」
「ね、だから機嫌直して……?」

べつに、本当に機嫌損ねて怒ってるなんて思ってない。仁はもう大人だし、子どもの私みたいに本気でヤキモチやくわけないけど。でも、安心させてあげたかったし、それにきっと、こうすれば気分も良くなるのかなと思ったから。

すると仁は左手で私の右手を掴むとそのまま自分の口元まで運び、何度か口付けた後に手の平をぺろりと舐めた。

それに思わず声が漏れると、そんな私のことをじっと見ながらもう一度舐めるので、「くすぐったいよ、仁」と少し笑いながら言った。さっきの仕返しのつもりだろうか。その割には、ちっとも痛くないけど。

私の手を掴む仁の左手の薬指には、指輪が見える。あれからちゃんと、外さずにいつもつけてくれているみたいだ。

「ねえ仁、私のこと好き……?」
「……」

少し首を傾げて微笑みながらそう尋ねても答えるはずない。そんなこと聞かなくても知っているし、この体で十分過ぎるくらいに感じてる。私を好きだと、愛していると。沈黙こそが彼の肯定の意味なのだと知っていれば、べつに不安になる必要もないのに。

それなのに、もしかしたら、その”好き”の感情は女としてではなく、妹としてなのだったとしたら……。そんな考えがいつも頭のどこかにあって、どうしてもそれを拭い去ることができない。


快感に侵されて次第に呼吸が荒くなり、喘ぎ声が漏れる中、私は左手で仁の肩をそっと撫でながら甘えた声を出す。

「ね……、私のどこが好き……?」
「……」

だけど、仁はそれにも答えない。理由なんてない、って言われてしまえばそれまでだけど、やっぱりじっと目を見るだけでずっと黙ったまま。

私はたくさんあるよ、仁の好きなところ。ケンカが強くて頭が良くて、顔も好き。背だって高いし料理も上手で、綺麗好きで……。数え切れないくらい、あれもこれもと言いたい。でも、仁には聞いておきながら自分ではそんなこと照れくさくて口には出さないけれど。

教えて、私のこと本当に好きなの。愛してるの。
どこが、好きなの。女として見てくれる……?

それでも結局仁は一切何も答えないまま。ただ黙って、喘ぐ私のことをぎゅっと抱き締めるだけだった。










「……。短大卒業した後のことは、もう考えてるの」
「ん?んー……」
「聞いてるの、

久々に帰った実家のリビングで、ソファに寝転びながら携帯の画面を眺めていると、近くまでやってきた優紀ちゃんが腰掛けながらそんな質問をする。

「んー考えてたり、なかったり……」
「お友達はみんなどうしてるの」
「知らない」
「もうじき夏休みも終わりでしょう。シェアしてる家のことだってちっとも教えてくれないし……もう、いい加減怒るわよ」

優紀ちゃんが怒っても、頬膨らませてるだけでちっとも怖くないんだけど。でもこのまま放っておくと最終的に泣き出すから、仕方なく起き上がって向かい合う様に座ると「ごめんね」と謝った。

「仁だって、どうするのかしら」
「え?」
「なにも教えてくれないの。卒業した後、あの子どうするのかなあ」
「……」

そういえば。いつの間にか仁は22歳になってて、もう大学4年生だ。この時期ならもう就職活動終わってるくらいのはずなのにそんな素振りもなかったし、本人も何も言わない。

「でもさ、そもそもあの人ってなんで大学行ったの」
「高校の時の先生に、随分と薦められたみたいよ」
「……ふうん」

お互いに卒業した後も当然一緒に暮らすつもりだったけれど、ちゃんと考えてみれば私は仁についてよく知らない、わからないことばっかりだ。それに私のくだらない嘘だって、いつまで持つかわからないし。

は仁からなにか聞いてない?」
「……知らない。会ってないもん」
「そうよねえ」

ハア、と優紀ちゃんが軽く溜息を吐くのを聞きながら、胸がどきどきしてくる。いつか本当のことを話さなくてはならない日が来たとしたら、優紀ちゃんはどんな顔するだろう……。私が、仁を彼氏代わりにしてるって。兄妹でセックスしてるって。

そう考えるだけで、いつも大きな不安が襲ってくる。私が、兄じゃなくて、ちゃんと他人の男性を好きになっていたとしたら、隠しごとする必要もなかったのに。……でも、やっぱりそんなの無理だから。

私は仁さえそばにいてくれればそれでいい。他には何も要らない。欲しくなんてない。







「仁、大学卒業した後はどうするの」

アパートに帰ってから、私は仁に聞いてみた。作ってくれた夕ご飯を食べながら、何気なく話題に出してみたけれど、案の定仁は聞いているのいないのか。何も答えない。

「全然、就活なんてしてる様子なかったよね」
「……」
「バイト先だって教えてくれないし」
「……お前はどうなんだよ」
「え?」
「お前だって卒業だろうが。なにか考えてんのかよ、その小せえ脳みそで」
「……」

小さいは余計だと思うけど、まあ確かにまだ考えてないので何も返せずに黙り込んでしまう。周りの子がどうしてるかはよく知らないけど、どうやら就職する子もいれば大学に編入する子もいるらしい……。

高校の時、何も希望することがなくて悩んでたけれど、結局短大に進んでも同じことだ。べつにやりたいことなんて何もない。だって私は、仁のこと以外には、あまり興味がない。

そういえば壇くんは今頃どうしてるだろう。きっと美大で頑張ってるんだろうな。一度は連絡しようかと思ったけれど、今、壇くんに会うのはなんだか後ろめたい気持ちがあって、できないままでいた。

だって、壇くんはすごく純粋でとても優しい子で、ずっと変わらず仁に憧れてる。そんな穢れのない真っ直ぐな瞳に見つめられるのは、きっと……今の私には耐えられない。

「……わかんない。私に編入はできないだろうし……働こうかな」
「なにすんだよ」
「さあ……」
「お前みてえな馬鹿にできる仕事なんかねえだろ」
「あるよ、探せば。……知らないけど」

仁は、バイトだってお前にはできないからするなって言って止めてばかり。それは心配してるからなのか、本当に私のことを馬鹿だと思って止めているからなのかは、イマイチよくわからない。

確かに仁ほど頭は良くないかもしれないけど、でも、べつに普通レベルだと思うし……自分では。課題手伝ってもらったりはしたけど。結局、ほとんど全部仁がやってくれてたりはしたけど。

「ちゃんと働くから……追い出さないで」
「……」
「生活費入れるから」
「くだらねえこと考えてんじゃねえっつったろ」
「……」

これまでは学生だったから、どこか甘えがあったけど。それがなくなったとしたら……なんだか急に不安になってくる。仁はどうするんだろう。何になるんだろう。

なんでもできるのに、仁はいつだって何もしない。テニスだってなんだって、みんな辞めてしまう。少しくらいその才能と頭脳を私に分けてくれたっていいのに。兄妹なんだから、ちょっとくらい、バチは当たらないのに……。




私は、夏休みが明けると短大の就職支援室に行ってみた。何もしてないんです、と言ったら呆れた様な顔されたけど、まだ募集のある企業をいくつか紹介してもらい、受けてみることにした。

お前なんか採る会社ねえだろ、と仁には鼻で笑われたけど。そんなのわかんないよ、と言って受けに行ってはみたものの案の定簡単には受からない。なんでかな、って考えてみたけどみんは説明会行ったりとか、インターンシップとかもっとずっと前からちゃんと準備してるから、そんなの当然だ。


「……やっぱり私って馬鹿なのかなあ」
「今頃気付いたのかよ」

自分のあまりの計画性の無さにちょっと落ち込みながら、頭の中で考えていたことをいつの間にか口に出していたらしい。仁はベッドの上で壁に寄り掛かりながら、床に座ってテーブルに頬杖をついている私を見て言った。

「頭悪いと思う?」
「気の毒になる程度にはな」
「……嘘でしょ」
「嘘だと思うなら自分の脳みそに聞いてみろ」
「……」

梅干し一個分くらいしか中身入ってねえんじゃねえのか、と嘲笑されて、それにはさすがにちょっと腹が立ち、いくらなんでも言い過ぎ!と思って立ち上がると仁の座ってるとなりまで行って軽くその肩にパンチする。

「ひどい……そこまで馬鹿じゃないもん」
「そう思ってんのはお前だけだろ」
「自分ばっかり頭良いからって……意地悪。鬼、悪魔」
「言ってろ」
「不良、ヤンキー、親不孝者」
「……」

……全然聞いてないし。虚しくなってきたからやめよう。どうせケンカしたって、力でも口でも仁に勝てるわけなんてないし。と思って、諦めてとなりに並んで壁にもたれ掛かりながら、うーん……と考えていると、ぱっとあることを閃いた。

「私も河村すしで修業して、寿司職人になろうかなあ」
「……だからお前は馬鹿だっつってんだよ」

呆れた様な顔する仁に、むに、と軽く頬を摘まれる。全然痛くないけど、「痛い」と言うとその手はすぐに離れた。

「もう怒った、仁は意地悪ばっかり……。隆くんの方が、ずっと優しいもん」
「……」
「私、隆くんのとこで修業しちゃうからね」

ちょっと仕返しするつもりでそう言うと、仁は少しだけ目を見開いて私のことを見た後、急にきつく抱き締めてそのままベッドの上に押し倒された。

「……お前に意地悪なんかしてねえだろ」
「したもん……」
「いつしたんだよ」

低い声を出され、じっと見つめられて、胸がどきどきする……。

「……さっき、馬鹿って言った……」

何、言ってるんだ私は。まるで小さい子どもみたいで恥ずかしくなってくる。確かに、仁の言う通り意地悪なんてされたことない。それはいつも周りから嫌なこと言われたりされたりするだけで、本人からはべつに何も。まあ、ちょっと口が悪いくらいで。

身の周りのこと面倒見てくれるし、色々教えてくれるし、欲しい物買ってくれるし。痛いこともヒドイことも、したりない。それに私がお願いすれば、なんでも聞いてくれる……。


ごめんと謝るのはどう考えたってこっちの方なのに、仁は軽く溜息を吐くと、「……悪かった」と私の頭を撫でながら言った。

仁が謝るところを見るなんて、生まれて初めてだ。だって仁はいつだって絶対に、何があっても誰に対しても、そんな言葉口に出したことなんてないのに……。

「……ごめん……嘘だよ、私怒ってない。意地悪なんて言って、ごめんね」
「……」
「隆くんのところには行かないよ……。ごめんね……仁、もう謝らないで……」

ぎゅっと抱き締められたその温かい腕の中で、頭を撫でられながら、懺悔する様にそっと目を瞑る。仁が嫌だと思う様なことを言ったり、ちっとも悪くないのに謝らせたりして……ごめん。

きっと私が妹で歳下だから、何を言っても、何をしても、仁は怒らないのだろう。

妹としてじゃなく女として見られたいなんて思っておきながら、そんな兄の優しさに甘えて、付け込んで……どこまでも我儘になっていく。私はいつまでも子どもで、悪い人間だ。









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