そこで、現在販売されている建築ではどんな断熱をしているのかと調べてみた。
まずは、市販の住宅での現状はどうかと、ハウスメーカーの住宅展示場を見て回ったが、どのメーカーも自信たっぷりで、自社の採用工法で十分であるとの説明を受けた。もっとも、あまりしつこく質問したので、翌日以降、毎日家内がノイローゼになるほど、展示場から家への照会電話に悩まされたが。
現在では、湿気に対する対策、断熱材の厚さ、壁体内換気等に考慮した住宅でなくては、金融公庫の割増融資も受けられないので、省エネルギー住宅でなくてはならないのでしょう。事実、ハウスメーカーの説明では、ほとんどが高断熱、高気密が提示してあり、額面どおりであれば皆快適な家になるのであるが。
しかしながら、昔のことであるが、結露による構造体の腐食等が発生したことを思い浮かべる。北海道において、オイルショック以後の省エネのため、断熱材を2倍以上にした住宅で、建物の構造部材が湿気により腐ってしまった記事を見た。特に、高断熱は結果的に気密性も向上させているので、室内の生活の湿気が壁面を通して、断熱材の中に入り込むので、結露やかびの原因となる。これに対する対策は、室内側に防水膜をつくることであるが、水蒸気は細かい微粒子であるので、必ずしも完全には密閉できないので、どこかで入ってきた湿気を抜かないと、外気に接した箇所で冷やされて飽和水蒸気となり、断熱材の空隙に結露し、さらに構造部材をぬらす。このようなことの繰り返しによる経年変化で断熱効果を低減させたり、カビやダニが繁殖してしまう。構造部材は湿気で腐敗菌を繁殖させ、腐敗して構造耐久力を失う。
また、断熱工事は、工事施工者を信じるしかなく、施工性の悪さは仕上げ後では、壊して見るしか確認のしようがないのである。ほとんどの住宅が断熱層の後ろに透湿防水のシートを貼って、断熱層の湿気を排出している。さらに断熱材と外壁の間に換気の空間をつくって湿気を排出する仕掛けを開発しているメーカーもあった。
冬の熱の流れは、これでもよいのだが、夏の冷房で外が暑く室内が冷たいときは、逆の現象も生じる。これは、逆に通気層を通じて外の暖かい水蒸気が断熱材の中で結露するかもしれない。これに対して、ほとんどの住宅は防水透湿シートを外壁に張り付けて対策を講じている。水蒸気は非常に微少な粒子であるので、水蒸気圧の差が生じれば、逆流もあるのかもしれない。これについては、いろいろ調べてみたが、(建設省建築研究所の実験)では、確かにこの現象は起こるのであるが、ちゃんとした乾燥木材や外壁との間に吸湿層を設けると、結露をまた外壁木材を通じて排出できるようで、大きな問題とはなっていないようだ。
断熱はこのように常に結露の問題をかかえているので、ただ工夫もせずに厚くすれば良いというわけではないようだ。 また、何社かある軽量鉄骨製の住宅は木造に比して、構造体の熱伝導(ヒートブリッジと言うようだ)で断熱には不利に思えたので、私の選択肢からははずれた。
ハウスメーカーの場合はパンフレットやモデルハウスである程度の状態を事前に知ることができるが、自宅の周りの住宅は必ずしもそうしたメーカー住宅ばかりではない。地元の工務店等が大部分に思える。時たま見受けられる建築現場でそっと外から覗いた程度であるが、施工の入念さに差があるようだ。たぶん建築士が施工監理をしていると思われるが、頭をひねる施工も見受けられる。特に、建て売り住宅では、施主が不動産屋が大部分であるので、価格的なことから、仕様が決まってくるのであろうが、自分は住みたく無いような施工も見られた。
概して、私の住んでいるところでは、断熱性能を重視して住宅を注文するというよりは、坪いくらで建てられるかで、仕様はその次の問題のようだ。予算ありきで、性能は予算内で何を優先するかで、見た目の豪華さを選択するようであるため、ただ施工者が断熱材を入れていれば満足といった具合か。
ただ、阪神大震災以後、耐震性は考慮している。外壁もほとんどが、構造用合板で全面覆い、軸組でありながら、筋交い等の不備を合板でカバーしている。当然気密性も高くなっている。そのため、今までは空気が外に何となく抜けていた気密性の悪い住宅では問題なかったことが、大きな問題化している。
戸建てではないが、鉄筋コンクリートによるいわゆるマンションを中心とした集合住宅では、構造的に気密性が高くなっているが、ほとんど特別に外断熱を施してはいない。そのため、断熱処理が貧弱であることも影響して、かなりの結露の心配が懸念される。このような、気密性が良いにも関わらず、トイレと台所での使用時の換気くらいしかない。24時間計画換気をしているのは、限られた物件である。その結果として、結露とダニ、カビの問題が発生する。さらに、換気が悪いために、ホームシックネスである、入居後にすぐに発生するホルムアルデヒドに代表される化学物質や経年変化による上記のカビやダニによるアレルギー反応である。
マンションだけに限らないが、気密性が良いのに、換気が悪く、さらに、健康を害している接着材や家具、合板にこれらの物質を使用しようしている家が大部分ではないだろうか。それならば、昔の通気性の良い住宅の方がエネルギー効率は悪いのだが、安全な住宅となってしまう。冷暖房のエネルギーも昔に比べて増大しており、我々日本人の住宅はエネルギー垂れ流しの住宅である。
地球温暖化の防止のために、「夏は団扇と扇風機で、冬はこたつ一つで頑張ろう」といってもはじまらない。現時点よりもさらにエネルギー消費を増やさずに、我々の生活向上と夏冬の快適さを実現できる家造りが、要求されているのではないだろうか。ここで考える高断熱・高気密の住宅はそのための一つの具体的な手法と思われる。
今は違うと思うが、断熱サッシを勉強していたとき、欧米の様にペアガラスでの製品を、あるサッシメーカーに照会していたら、ペアガラスの間隔がほとんど6mmくらいで、12mmはないのかとい問いに、東京周辺ではほとんど注文がないので、特別に注文しないとない旨の回答であった。当地ではほとんど必要ない無駄なものであるとのことであった。
欧米では、25mmとか30mmと聞く。これは、対流による熱伝導による影響がでない最大の間隔をとるようである。(サッシが厚くなる)
時代が変わったので、今はそんなことはないと思うが、我々日本人はあまり、こうしたことには投資を惜しんで、見た目の豪華さ、とりわけ台所(使いこなせない豪華なシステムキッチン)や居間仕上げ、玄関ドア等に投資してきたのかもしれない。