冬の暖かい住宅とともに、夏をいかに過ごすかをみてみる。
高断熱・高気密の家は、夏暑いということをよく聞く。実体はどうなのであろう。冷房を前提であるならば、常に締め切っていることが多い。断熱が良いといっても、窓からの輻射熱は遮る物が無ければ容赦なく入ってくる。そのため、午後以降は室温がかなり高くなって不快感がますのは事実である。
特に気密性を重視する人は、引き違いのサッシでなく、外開きのサッシを使っていると思う。外開きはその性格上外側に面格子を付けられないので、防犯上外出時等は開放しておくことができず、締め切ったままが多い。そのため、魔法瓶の様に断熱された家は温度も下がらないので、結果的に暑いのであろう。私は、断熱処理に伴う総合的なバランスと使い方が悪いのではないかと思う。
なにも今更、南面全室を開放し、すべて北側に空気を流通させる吉田兼行の徒然草の家のことを言っているのではない。十分な空間のない小さな宅地の中で建てる住宅には、心地よい南からの通風が吹き抜ける環境は過去のものであろう。窓を開けておくと隣のエアコンの廃熱が吹き抜け、灼熱地獄の場合もあるだろう。
ここで、原点に帰って考えなければいけないことは、夏の太陽の開口部からの輻射熱は無視できない物であり、これに対する処置がどうされているかである。今の住宅、特に総2階では、南面や西面での、窓に対する庇等がほとんど配慮されていないのではないだろうか。そして、安価になったエアコンを前提にした設計も多いと思われるが、昔の人がやっていた、よしず、すだれやこうした建築の配慮は、一日中締め切った部屋の開口部分からの温度の上昇を改善できる。
住宅の南面につけた適切な庇は、予想される日射量を70%近くカットでき、ブラインド等では(50%の遮蔽率で)約40%位カットできるようである。これらを併用すると、なんと85%位の日射量をカットできそうである。
落葉樹による庭木も有効に働くと思うが、これができる庭が必要であるが。
ガラスで熱エネルギーを反射させて、透過させないものがあるが(LOW−E)、緯度の低い(ヨーロッパ等に比して)日本での冬の豊かな日射量を考慮すると、太陽の恵みは大きく、その恩恵は無視できないので、これを遮断することは避けた方が省エネであろう。断熱の利いた家ならば、これだけで、日中は暖房のいらない生活も可能であり、わざわざ日照の期待できるところに、高価で、もったいない。ただ、北面等には利用できるかもしれないが。
そして、少なくとも南北に風が吹き抜けられる位の開口は確保したいし、今後建築する家には考慮したいものに、トップライトによる採光と換気窓である。夏の温度差による2階部分の不快さは、このトップライトによる換気でだいぶ和らぐのではないか。戸締まりの心配や、窓の開け放しによる隣接した近所の家等に気兼ねせずに、かなりの換気ができそうである。使用例を見たことはないのであるが、カタログ等にある、ルーフファンも温度を下げるまではいかないまでも、室内の空気の流れを感じて少しでも不快感を解消できそうである。特に気密性のよい住宅は、排気性能が良い。
真夏や真冬以外の冷暖房の必要ない時は、極力窓が開けられて、トップライト換気なども活用した風の通りのよい開口の配置は、ぜひ、設計に取り入れたいものだ。そして、十分な断熱処理で、外気の影響を受けなければ快適に過ごせるのではないか。
1.やはり高断熱の家であること
一番要求されるもの(特に屋根、外壁)
2.気密性は高ければ、排気の効率がよい。
気密性のいい住宅だからと言って窓を開けないことの方が問題である。
3.日射をコントロールする。
・ひさし(不可欠)
・すだれ、よしずの活用(カーテン・ブラインドに頼らず外で遮蔽)
・LOW−Eガラスの使用は注意(冬を考えろ)
・植物を利用した日射の遮蔽
・屋根の断熱は完全に。(あるいは天井断熱)
4.通風のルートの確保
・南北等の2方向、上部への通風
5.排熱の処理(熱い空気は上に上がる)
・トップライトによる換気
・ルーフファンによる機械換気
有事のトイレや台所の換気だけではだめ。
6.夜間や留守中の時の通風と換気
・防犯上の安全なサッシや面格子、ギャラリー
現在昼間留守にする家庭が非常に多くなっていると思うので、締め切っていた家に入ったとき の不快感は避けたいものだ。
安易に24時間冷房に頼よることなく、上記の対策を講じることで、昔の人の教訓を生かし、冷房使用をどうしてもだめなときだけの最小限にすることができる家づくりが省エネ、地球環境に優しい生き方である。
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