6.断熱材の選択


 それでは、断熱材料として何を選んだらよいのであろうか。今考えられる断熱材はほとんどが、空気を利用した物で、空気をいかに閉じこめて、対流させないで、断熱効果を図る物である。

 まず、繊維系のグラスウールやロックウールは、細かい繊維の中に空気を閉じ込めて熱の伝導を押さえる材料である。この中に湿気が入り込むと効果が落ちる。この材料を長期的に、湿気から守ることはかなり難しいように感じる。重量がそれほどあるわけではないが、下に垂れ下がることもよく見られる。そして、黒くかびが生えているものも見受ける。そこで、値段のことを深く考えなければ、ボード状にして性能の向上した製品が多数出回っているようであるが、私はなるべく避けたい断熱材と考える。

 次に、発泡系の断熱材である。発泡ポリスチレン、スチロールやウレタンである。これは、小さな気泡を閉じ込め、熱による空気の移動を防ぐことによる断熱材である。欠点としては、耐火性に劣ることである。現在は難燃性のものもあるようであるが、外断熱に使用するときには注意が必要である。また価格的にも繊維系に比べて割高である。気泡が独立していれば、湿気にも強く、気泡が細かければ細かいほど断熱効果もあがるので、今度ぜひ使用してみたい材料と思っている。ただ、固形物になるため施工性と自由度が少ないことがあるが。(ウレタン等で後で流し込む工法もあるが)
 
 さらに断熱材の施工を工場でパネルに充填して、現場で組み立てる工法がある。これには、軸組みをし、そこにパネルをはめ込む工法と、基準法38条の大臣認定を得た工法として、パネルそのものを組み立てていく工法がある。

 前者には、グラスウール等の繊維系の断熱材を充填したものと、ウレタン発泡系のものがあるが、資料ではウレタン系の方が性能に優れているようだ。
 軸組みパネルであるが、機会があったので、現場の施工や出来上がりを見せてもらったのに、OMのフォルクスハウスがある。これは、内側の合板がそのまま仕上げ材として利用しているので、合理的である。ただ、工場制品とはいえ電気等の配管は中に組み込む配慮が必要だと感じた。工場でのパネル化は通常は壁に埋め込む、設備工事や電気工事の配管類の処理が課題のように思える。(当初の設計通りでの施工はできるが、制作後での変更がむずかしい)
 パネルの外側のみ工場で制作し、室内側は配管後石膏ボード等で密閉する工法もある。
 後者の大臣認定工法は、私の目に留まっていいなと感じたのは、三井ホームのRコントロールパネル工法であった。残念なことにパンフレットでは、屋根にしか使用していないように見られた。空間を広くとれて、屋根裏まで利用できるこのパネル工法は、軸組みやパネル組みを含めて魅力を感じた。今度建築するときには、こうした工法をぜひ採用してみたいと思っている。

(*追加  平成11年にセールスマンに聞いたところでは、すべての壁で施工可能のようである)




 
鉱物や石油製品による断熱材

分類 名称 原材料 特徴 単価等
繊維系 グラスウール
珪砂、石灰石、苦石灰、
長石、ソーダ灰
無機質繊維系
安くて施工しやすい
100mで700円/m2 シェアが60%
繊維系 ロックウール
玄武岩or鉄鋼スラグ 吸音性あり、 700円/m2
発砲プラスチック系 ポリスチレンフォーム ポリスチレン樹脂、発泡剤 軽くて、耐水性あり、商品としては少ない(YBボード)
発砲プラスチック系 押し出し発泡ポリスチレン 同上 硬質で耐圧、断熱性能が高い(スタイロフォーム) 50mmで1430円/m2
発砲プラスチック系 硬質ウレタンフォーム ポリイソシアネート、ポリオール、発泡材 断熱性能高い、外貼り工法が多い 50mmで1820円/m2
発砲プラスチック系 高発泡ポリエチレン ポリエチレン、発泡剤 石油製品としては柔軟性に富む(サニーライト) 50っmで1700円/m2
発砲プラスチック系 フェノールフォーム フェノール樹脂、発泡剤 耐火性に富むが高価で住宅にはあまり使用していない 6000/m2
 



 自然素材系断熱材

木質系繊維 セルロース
ファイバー
パルプ、古新聞、
接着剤
GW以上に吸音性高い、専門業者 業者の材工見積もり
軽量軟質木質
繊維ボード
木質繊維 これからのエコ断熱材の主流、防湿シート不要 80mmで2200円/m2
炭化発泡コルク コルク 水に強い
ポルトガル輸入
100mmで7500円/m2
セルロースウール セルロース繊維
(パイン材木質繊維
保湿吸放湿がよい
フィンランド輸入
100mmで4500円/m2
ココヤシ繊維 ココヤシ繊維 吸放湿よい 100mmで2100円/m2
綿状木質繊維 木質繊維 吸放湿よい 100mmで2250円/m2

   この表は建築知識1999−03号より抜粋させてもらったが、これからは、特にドイツ等で採用されている、地球環境にやさしい自然素材系の断熱材に移行していくものと思われる。

断熱材の施工
 
 第一に、湿気を呼び込まないこと

 まず、室内側は、完全に防湿材で覆い、室内の湿気(水蒸気)が入り込まないようにする。ほとんどの室内側の設計は、石膏ボード張りであるが、その下地に防水のシートを貼っていない場合が多い。
 室内でなんにもしなくても、人体からは水蒸気が発生しており、これは、かなり細かい。水滴の比ではない。外部との水蒸気圧の差が生ずると、必ず移動する。かなり細かい所からも移動するといわれている。日本は地震が多い。これは、建物が柔軟にできているので、そのたびに変形しているので、躯体での隙間は必ずできてしまうので、防水シートで防御するしかない。たぶんこれでも完璧では無いのかもしれないが。

 第二に断熱層の湿気を早く逃がす

 上記の対策をしても、完全ではないので、断熱層の中に含まれた湿気を早く外に逃がさねばならない。そのままにしておくと、外気温で冷やされ飽和水蒸気は、結露し、空隙は水分で覆われ、断熱効果の低下のみならず、カビが発生する。
 市販されている断熱材は、室内側はアルミ箔のコーティングしたポリエチレンシートで、室外側は透湿性のシートとなっているはずである。これを逆に使うのは論外であるが、隙間無く、完全に空間を覆いたい。そして、その外側には空間を設け、断熱材の湿気を吐き出させ、空気の対流で、上方で排気させたい。この方法には、断熱材のなかで、行うのが望ましいが、工法特許等があるので、工夫が必要である。
 これができない時には、外壁の合板を通過した湿気を排出するしかない。外壁には、ほとんどの施工者が透湿防水シートを貼っていると思うので、ここから、湿気だけを早急に排出しなければならない。換気工法である。これを完全に行う必要がある。

 木造住宅は、地震によりかなり変形するため、外壁の防水層は必ず、変形し隙間があくし、伸縮性塗料でも劣化があるので、水はかならず入ってくると思った方がよい。(しっかりとしたメンテナンスが実施されていれば別であるが)


内断熱工法

  断熱工法は、内断熱工法から始まり、現在の主流もやはり、内断熱である。

  内断熱に使われる断熱材料
  施工法等は、今までまとめたものが、ほとんどが内断熱を前提に検討したものであるの で、注意事項等はそのところでまとめてある。

    1.マット
       外壁の空隙を利用して断熱材を充填する。価格的には、グラスウールとロックウールが主流である。これからは環境等で、自然素材を利用したものが内断熱検討されていくだろう。
    2.吹き込み
       専門業者による断熱材の吹き込み工法で、やはりグラスウール、ロックウール、自然素材 であるセルロースファイバーが普及している。
    3.現場発泡
       ウレタンの吹き込み充填(ウレタンは発泡剤の地球環境や人体への悪影響が問われている)
    4.ボード
       内断熱には充填精度の確保が難しい
   
外断熱工法

  内断熱で難しい防水シートや断熱材の施工欠損や結露対策に対して、その問題点を解決してくれる。特に構造材の木部がヒートブリッジにならずにすむことはメリットが大きい。そのため断熱・気密が簡単に実現できる。しかしながら、内断熱に比べると価格的には高価である。

  ボード状の石油製品発泡系断熱材の貼り付けが主流

   アキレスのAR工法
   トステムのサーモマスター
   福地建装のFAS工法
  
  外壁の外側に貼り付けるので、結露もなく、木部の柱等もヒートブリッジにならずに有効に働く。ただ、地震等の構造物の変形で断熱材の変形等による欠損の問題がある。ただ、コンクリート構造物などでは、雨風の影響を減らせるので、建物の耐久性が良くなることは言われている。
  シロアリ等の害が心配。出窓等の複雑な構造には注意が必要。

パネル工法

  断熱材をパネルに挟み込んだ、軸組で組んだ間に断熱材入りのパネルをはめ込んで外壁、屋根を作っていく工法。また、パネルそのものを組み上げる工法である。

 
1.軸組の柱、梁を組み立てその間にパネルを組み込む
    ウレタン系の断熱材を使う
       FP工法(松本建工)
       スーパーウォール(トステム)
    
    グラスウール
       TZ工法(宇部)
       フォルクスハウス(OMソーラー)
       PFP工法(新住協)

2.軸組の外側にパネルを貼り付ける
    ウレタン系
      ジャンボパネル(ナカジマ)
      
    スチレン系
      マイティー工法(アピカルグループ)
  
    グラスウール系
      OPS工法(寒地住宅研究会)

3.軸組をパネルに組み込んだもの
    ファクト・P工法(エアサイクル)

4.枠のない構造用合板と発泡断熱ボードの組み合わせ

    DKパネル(大周建設)
    サーモプライハイノン(アキレス)    

5.基準法38条の大臣認定製品
    発泡断熱材をOSBでサンドウィッチしたもので、軸も枠もいらないことで合理化とコストダウンを図ったものだが、コストはまだ高い

     スーパーシェル(トステム).......ウレタンをOSBでサンドウィッチ
     Rコントロールパネル(三井ホーム).....発泡ポリスチレンをOSBでサンドウィッチ
     トリプルウォール(大成建設)..........同 

 発泡系は断熱材が経年変化でずれたりすることも少ないく、防水シート等を施工しなくてもよい
 パネルの合板をそのまま壁面に使用することができる(OMソーラー)
  工場製品のため、工場でのコストダウンはあるが、運搬費、施工費を含めるとまだ、高価である。  ただ、断熱の施工は、施工者次第であるので、施工のばらつきがなく、ある一定の精度が確保できるこの工法は魅力がある。設備の配管等も埋め込んでおくことが出来る(配管、配線用のスリット)
 また、屋根裏等は、このパネルで完全断熱が可能であるので、広い空間を確保できる。吹き抜けや屋根裏部屋等の利用が快適である。