6.歩行者専用道路
商店街近代化事業の目玉は、何と言っても歩行者専用道路(グリーンモールと呼称)を中心にしての“街づくり”であった。
この歩行者専用道路を中心にした街づくり構想については、全国的にも余り類例のない画期的な考え方であっただけに、商店経営者は重大な関心を持たざるを得なかった。
まず市から、当時商店街が立地していた銀座通り及び朝日町通り(駅前)を残しての街づくり案、現在の形の歩行者専用道路案など3案が示され、地元商店街に判断を求められた。
これに対し地元商店街として協議を重ねた結果、「現道を残すことになると、全体の道路計画が制約され、街区の形上にも大きな影響を及ぼすことになり、思い切った街づくりにならない」ということから、現在の形の歩行者専用道路案に賛成することになった。しかし、この歩行者専用道も一番最初の案では、巾員が22mにもなっていたため、一般住民の間からは「なぜ歩行者専用道路が必要なのか」あるいは「余りにも商店街中心的な考え方だ」「そのために減歩率が高いのではないか」などさまざまな不満が出てきた。結局道路巾員は18mに変更されることになったが、その必要性については、「交通安全対策、緊急災害時の避難場所、コミュニティ活動の広場、地域全体のシンボルなど多目的に利用する」ということで理解が得られた。
巾員が18mに変更された中でも当初案では、「八十二銀行中込支店」と「いちかわ」の建物は動かさない、ということを前提としていたため、この間(今のBブロック)の巾員は13mでユルイS字型に湾曲していた。これについて依田市長は「折角新しくつくる道路を狭くしたり曲げることは、将来に禍根を残すことになる.お互い皆んなが犠牲を払っての街づくりであるから、大企業だけを特別扱いすることは許されない。巾員は18mで真直にすべきだ」と強く指示した。
これにより、歩行者専用道路は現在のような形で決定された。従って、「いちかわ」は、出っ張り部分を全部切り取り、その分をパラス側に増床した。また、「八十二銀行中込支店」は、建物を90度回転させて現道になじませると共にグリーンモール側に一部増床をした。次に、歩行者専用道路に面しての建物、構造物等については「建築申し合わせ書」を作り、これに準拠して工事を進めた。もちろんこれは、「建築協定」と違って強制力のあるものではなかったが、一応原則的なことは皆が守ってくれた。申し合せ書の主なものを拾ってみると
(1)建物の一階部分の外壁は、道路境界線から90cm後退し 2楷以上の外壁は道路境界線上で揃える。
(2)建物は、耐火構造または簡易耐火構造とする。
(3)建物階数は、3階を予定した 2階以上とする。
(4)建物の一階部分は、店舗または事務所とする。
(5)一階部分の階高は、商店街の外観又は将来日除け等の設置を予定して3.5mとする。・・・・・等であった。 これらの確認については、各店が建築確認申請書を県(佐久地方事務所)へ提出する段楷で、市にチェックして貰うという方法をとった。
また、建物の建築形態は、「共同店舗方式」「連棟間仕切店舗方式」「独立店舗方式」の3種類であった。
○ 共同店舗・・・・・ワンフロア形式でパラス
○ 連棟間仕切店舗・・・・・ガル(8店)、グリーモールセブン(7店)、サンテラス(10店)、Cブロック9連店(9店)・中込郵便局グループ(7店)、Bブロック中山酒店グループ(4店)など
○ 独立店舗・・・その他の店舗歩行者専用道路内の施設については、当初の考え方では、路面舗装から始まって、植樹、街路灯、横断地下道のキャノピー(入口の特殊プラスチックによる覆い)、花鉢、吸殻入れ、ベンチ・・・・・・に至るまで、経費はすべて組合負担ということであった。
そのため組合では、施設整備費として 2億6,600万円の計画予算が計上されていた。もちろんこの経費は、組合が高度化資金を借入れて賄う計画であったが、所詮は賦課金という形で組合員の負担になる訳である。 従って、組合員は自分の店舗の近代化(主に建物の新増築)に、高度化資金の借入れを含めて莫大な投資をしてしまった後だけに、さらに歩行者専用道路の施設整備のために多額な負担をするということは極めて困難な状況にあった。
そこで組合では、施設委員会が中心になってこれらの施設整備費については区画整理事業の中で処理して貰えるよう市当局と折衝を始めた。市では、区画整理事務所に常駐していた県建築技術センターに設計を依頼する一方、国(建設省)や県に対し積極的に働きかけをしてくれた。何度か建設省と折衝をした結果、同道路内に設置する施設のうち、国庫補助対象として適合するものについては、すべて区画整理事業の中で処理してくれるという有難い結果になった。
もちろん国庫補助対象以外のもの(シンボルネオン灯、放送施設、撒水栓、ベンチ、吸殻入れ・・・・・・)は組合が負担するということは、当然であった。
このため、歩行者専用道路内施設整備費総額約1億9000万円のうち組合が負担したのは2,900万円余りで、高度化資金は借入れず、出資金充当ということで処理できた。(100ページ参照) このことは、建設省の、中込商店街の街づくりを全国のモデルケースにするため、できるだけ立派な街路にしてやろうという暖かい配慮と、市を始め関係行政機関の積極的な協力支援のお陰であったと考えている。このような経過のもとにでき上がった中込商店街のシンボル「歩行者専用道路」は国道横断部分は地下道で結び、延長412m、巾員18mで、両側5mを歩行帯とし、中央部8mは施設帯にしてある.(A・Bブロック) またCブロックは、中央部8mの施設帯に2.7mの水路「せせらぎ」をつくり、周辺部を日本庭園風にして、橋を架けたり市魚の佐久鯉を放流するなど、ユニークな買物公園にした。 なお、この「せせらぎ」については、最初は現在の水位よりももっと下を流す予定であった。いわゆる“水を眺める”という発想であった。しかし建設省などと話し合いを進めてゆくなかで“水を眺める”ではなく“水に親しむ”という発想に変えることになり現在の設計になった。 従って、現在は中込用水を止め揚げて取水しでいる。水辺への降り口を各所に設け、自由に水に接することができるようになっている。
主要施設が区画整理事業の中で設置できることになったため、市としても組合としても「できるだけ立派な、しかも中込商店街独特な施設にしよう」ということになった。
街路灯及び放送施設の配線はすべて地下配線にした。また、カラー舗装の模様は、市花(コスモス)、市木(カラマツ)、市魚(佐久鯉)をデザイン化してこれを特注平板ブロックに刻み込むといったチョットぜいたくなつくりにした。(ただし、市魚の佐久鯉については、デザイン化が難しいということから水色平板に玉石を埋め込み千曲川の流れを表現している)。
また、Cブロックの「せせらぎ」は内山産のウズヌキ右で縁取りをしてあるほか、香坂ダム工事で掘り出された大きな石をところどころに配し、日本庭園的な景観を造り出した。 植樹帯は、ケヤキを各ブロックの主木にし、A・Bブロックはハナカイドウ、サルスベリ等を高木に、低木はツツジで埋め、Cブロックでは水辺の関係からシダレヤナギ、マツ、モミジなどを高木にし、低木はツツジ、水辺にはアヤメを配してある。 なお、歩行者専用道路内に組合で設置した施設及び経費は、別紙の通りである。