■君の名を呼ぶ静かな声 四「どう・・・すれば、よかったんでしょうか。私は、どうすべきだったのでしょう。あの人と一緒にいると、なんだか違う自分になれるような。そんな気がして。でも、怖いんです。怖くて、手が伸ばせなかった。足がすくんで、声も出せない。どうしたらいいんでしょう?あの人は行ってしまいました。それなのに、私は何もできない。」 ■□■ 柔らかな日差しが、窓から差しこんでいる。三月も半ば過ぎ、ラダトの街は春の色を身に纏いつつあった。あと半月もすれば、淡く煙る桜の花びらで、街は更に美しく彩られることだろう。 クラウスの背中が消えた後、花の白にまぎれていた誰かが、春の空へと飛び去っていったのに、青年は気付かない。 |
(2002/12/01)
三へモドル |
※…現実的に考えると、二人はその後会うこともなく、クラウスは修行を積むうちに、どこかの誰かと恋に落ちて結婚して、シエラのことは遠い昔の思い出になってしまって。で、十年後町中ですれ違った誰かに記憶を呼び覚まされたけれど、お互いに声をかけることもなくまた行き過ぎてしまう…ってところでしょう。
でも、夢見がちな私としては、こんなオチの方がいいなあ…。お伽話になってまうけどね。