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2018/08/30 トマ・ピケティ
・ 21世紀の資本
・ 図解 ピケティ入門
・ 朝日新聞 ピケティに関するトピックス
【02】
08 30 (木) ピケティの21世紀の資本 世界経済の流れの筋
私は世界の政治情報では「田中宇の国際ニュースの解説」が信頼できるサイトだと思っている。 政治は将来どのような方向へ進むのかを決める役目と、希望をもって暮らせる設計と実行に移す役目の二つがある。
生活していくのには相応する収入がなくてはならない。 この大事な経済生活の保障も、政治の役目とともに政治家は担っています。
この将来へすすむ方向と現実生活保障は、一国とすれば政治と経済をどうするかということに他ならない。 私はいろいろと国内ニュースや世界ニュースを耳にしていて、子どもたちに対して明るい希望に満ちた毎日を送ることができるんだよと言えないのです。
小さい子供たちがいじめをしたり登校拒否になったり自殺したり、生活に意欲をなくしたりしているニュースに接しています。 この状況は、根本的な部分に私たちの欠落している部分があるとしか言いようがないのです。 子供は親に似ると言います。 別の表現をすれば、 「子どもを見れば親が分かる」 「親を見れば子供が分かる」 ということなのです。
子どもが学校に行きたくないというのは、子どもがいけないのか、学校がいけないのか、子どもも学校も双方ともいけないのか。 この三つの角度から、考え直したことがあるでしょうか。 三つの観点から検証したことがありますか?
教育に対しては文部省からの要求や県教委からの要求、親から子供への要求があるけれど、子どもたちからの要求をみんなが取り上げて議論したことがありますか? 子どもの要求を取り上げ集めたことがありますか。 子どもの要求を教育委員会はまとめたり、議論したことがありますか?
総理大臣は子どもが時間的にも一日のスケジュールをこなし、要求されたことをだれでも処理したりすることができるのか考えたことがありますか。 文部大臣にしても然り。 県知事にしても町村長にしても、子どもを取り巻くこれら諸状況を子ども一人ひとりができると考えたことがありますか?
子どもががんじがらめのスケジュールで、毎日嬉しそうに学校へ行くことができないとしたら、どうしたらいいのでしょうか?
今日の午後、テレビニュースでは親の子供虐待が増加していると報じておりました。 親の子育てに間違いがあることが分かっているじゃありませんか !! 親の子育てをどうしたらいいのかを、文部大臣は知っておりながら一言も提案をしようとはしていません。 今に始まったことではなく、前からのまやくせで、ほっかぶりをしてきてしまったのです。
以上、こまごまと書き立てましたが、実は子どもの生活の中で困っていること一つ取り上げてみても、私たち大人の考えの中に、根底的に間違ったままでいることがあると考えています。
温故知新、こうしたときもこの言葉を思い出して、参考にしたいことがあれば、それをまた学びなおす方法もあるのです。 この言葉一つをよく考えてみても政治の行方(ユクエ)や実生活の在り方のなかにも、改善したほうがいいということもあると思うのです。 論語のイの一番に 『学而第一』 とあります。 多くの人はそれを教えられてきたでしょう。 学ぶことを忘れ、自分の考えでこうすることがいいと思い込んでいるのです。 親が間違っているのです。が学ぶことを大事にしていないのです。 こんな親が増えてくれば、お隣同士も日本全体も楽しい明るい未来は望めません。
経済格差は開くばかりだし、一方で就職活動は門戸開放して平等となり、同じ仕事の分野ならば自分の能力を自由に発揮できる方法として、能力本位の働き方を導入しています。 超過勤務で自殺者が出ても企業の考え方が政治家を虜にして企業の都合がよいように法律まで変えている実情を見ると、労働の賃金分配の考えがでてきたのに、起業家は一向に知らぬ顔を押し通し言います。 子どもの虐待も、子どものいじめも、子どもの自殺も、源(モト)をただせば、みんな経済生活に関連していることが多いのです。
ピケティり本は世界中の人々が目を通している本です。 この本から学ぶことが必ずある筈です。
21世紀の資本
トマ・ピケティ著 21世紀の資本 主席訳者 山形浩生
2014/12/8 第1刷発行
2015/1/15 第7刷発行 序文等 15p 本文 608p 索引 98p
発行所 KKみすず書房
定 価 \ 5,940
購 入 2015/2/2 下平好上
(1) はじめに
「はじめに」 (という序文の副題のように次行下部に次の言葉が小文字でいれてある)
「社会的差別は、共同の利益に基づくものでなければ、設けられない」
―――人権宣言、第1条、1789年
(続いて冒頭に)
富の分配は、今日最も議論されて意見の分かれる問題の一つだ。でもそれが長期にわたり、どう推移してきたかについて、本当にわかっているのは何だろう? 19世紀にマルクスが信じていたように、私的な資本蓄積の力学により、富はますます少数者の手に集中してしまうのが必然なのだろうか? それともサイモン・クズネッツが20世紀に考えたように、成長と競争、技術進歩という均衡力のおかげで、発展の後期段階では階級間の格差が縮まり、もっと調和が高まるのだろうか? 18世紀以来、富と所得がどう推移してきたかについて、本当にわかっていることは何だろうか、そしてその知識から、今世紀についてのどんな教訓を引き出せるのだろうか?
(と、富の分配についての歴史的現状の位置づけにふれています。そして本書の核心部分に続きます)
本書で答えようとするのはこうした問題だ。すぐに言っておくと、本書に書かれた答えは不完全で不十分なものだ。でもその答えは、これまでの研究者が使えたものよりもはるかに広範な、長期的で比較可能なデータに基づいた答えとなっている。そのデータは3世紀にわたる20ヵ国以上のものだ。また格差の根底にある仕組みについて、もっと深い理解を与えてくれるような、新しい理論的な枠組みに基づいたものである。現代の経済成長と知識の浸透のおかげで、マルクス主義的な終末は避けられたが、資本や格差の深層構造がそれで変わったわけではない――少なくとも、第二次世界大戦に続いた楽観的な数十年で想像されたほど大幅に変わったわけではない。資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき(19世紀はそうだったし、また今世紀でもそうなる見込みがかなり高い)、資本主義は自動的に恣意的で持続不可能な格差を生み出し、それが民主主義社会の基盤となる能力主義的な価値観を大幅に衰退させることになるのだ。それでも、民主主義が資本主義に対する支配力を回復し、全体の利益が私的な利益より確実に優先されるようにしつつ、経済的なオープン性を維持して保護主義的、国家主義的な反動を避けるようなやり方はある。本書の後のほうで私が提案する政策提言は、この方向性に傾いたものだ。それは歴史的経験から導かれた教訓に基づいている。本書でこれから展開されるのは、つまるところその歴史的経験の物語となる。
(一応本書の狙いを述べているのは以上までです。続いて今までの歴史で「富の分配」についての論争について、の考察に移っていきます)
データなき論争?
富の分配をめぐる知的、政治的な論争は、昔から大量の思い込みと事実の欠如に基づいたものとなっていた。 …………(以下省略)
(以下省略するが、「はじめに」すべてで36頁の長い考察が続くのです。そして、最後をこう結んでいます)
最後に一言。1913年に『20世紀の資本』という本を刊行するのはかなり無謀だっただろう。 フランス語で2013年、英語で2014年に刊行された本書を『21世紀の資本』と名付けたことについては、読者のご寛容をお願いするものだ。 2063年や2113年に資本がどんな形をとるかについて、自分が全く予測できないことは十分に自覚している。 すでに述べたように、私はこれからの本書でしばしば、所得と富の歴史は常に根深く政治的であり、混乱に満ち、予想外のことだと示すことになる。 この歴史がどう展開するかは、社会がどのように格差をとらえ、それを計測して変化させるために、社会がどんな政策や制度を採用するかに左右される。 今後数十年の間に、そうしたものがどう変わるかを予見できる者は誰もいない。 それでも歴史の教訓は有用だ。 というのもそれは、これからの1世紀でどんな選択に私たちが直面するか、そしてそこにどんな力学が作用するかを、もうちょっとはっきり見通すのに役立つからだ。 本書は論理的に言えば『21世紀の夜明けにおける資本』という題名にすべきだっただろうが、その唯一の目的は、過去からいくつか将来に対する慎ましい鍵を引き出すことだ。 歴史は常に自分自身の道筋を発明するので、こうした過去からの教訓がどこまで実際に役立つかはまだわからない。 私はそれを、その意義をすべて理解しているなどと想定することなしに、読者に提示しよう。
(こうして 18の表と、98の図 を用いて、本文の解説が始まります)
(2) 「トマ・ピケティ」での検索内容
ピケティについて知っておきたいことは、検索でおよそのことを調べるのが一番手っ取り早い。 その中から取り出して見たいものを拾えばよい。
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検索結果
約 264,000 件 (0.40 秒)
① トマ・ピケティ 経済学者
トマ・ピケティは、フランスの経済学者。クリシー出身。経済学博士。パリの高等師範学校の出身で、経済的不平等の専門家であり、特に歴史比較の観点からの研究を行っている。2002年にフランス最優秀若手経済学者賞 を受賞。パリ経済学校 設立の中心人物であり、現在はその教授である。
・ 生年月日: 1971年5月7日 (年齢 47歳)
・ 生まれ: フランス クリシー
・ 配偶者: Julia Piketty
・ 学歴: 高等師範学校、 社会科学高等研究院、 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス、
パリ経済学校
・ 影響を与えた人: エマニュエル・サエズ、 ジョン・メイナード・ケインズ、
アンソニー・アトキンソン、 サイモン・クズネッツ
② トマ・ピケティ - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/トマ・ピケティ
トマ・ピケティ(Thomas Piketty、1971年5月7日 - )は、フランスの経済学者。クリシー出身。経済学博士。パリの高等師範学校の出身で、経済的不平等の専門家であり、特に歴史比較の観点からの研究を行っている。2002年にフランス最優秀若手経済学者賞 ...
③ 実はみんな読み切れない トマ・ピケティ『21世紀の資本』を簡単図解 恥をか ...
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/42199
せっかく買ったんだから、読まなきゃなあ。でも、そんな時間もないし—『21世紀の資本』ブームに乗りたくても乗れない人にご朗報。600ページ超の内容も、たった6つの図で理解できるんです。 金持ちの資産に課税せよ. フランスの経済学者トマ・ピケティ氏が来日 ...
④ Amazon.co.jp: トマ・ピケティ: 本
https://www.amazon.co.jp/本-トマ・ピケティ/s?ie=UTF8...1...27%3Aトマ・ピケティ
現代思想 2015年1月臨時増刊号◎ピケティ 『21世紀の資本』を読む -格差と貧困の新理論-. 2014/12/12. トマ・ピケティ、 ポール・クルーグマン. ムック · ¥ 1,404プライム. ポイント:70 pt (5%). 残り1点。注文はお早めに。 こちらからもご購入いただけます.
⑤ 21世紀の資本 | トマ・ピケティ, 山形浩生, 守岡桜, 森本正史 |本 | 通販 ...
https://www.amazon.co.jp/21世紀の資本-トマ・ピケティ/dp/4622078767
Amazonでトマ・ピケティ, 山形浩生, 守岡桜, 森本正史の21世紀の資本。アマゾンならポイント還元本が多数。トマ・ピケティ, 山形浩生, 守岡桜, 森本正史作品ほか、お急ぎ便対象商品は当日お届けも可能。また21世紀の資本もアマゾン配送商品なら通常配送 ...
⑥ ピケティが本当に伝えたかった3つの論点 - iRONNA
https://ironna.jp/article/1137
田中秀臣 ブームがピークを迎えているトマ・ピケティの『21世紀の資本』。ピケティの主張自体は極めて簡潔であり、三点にほぼ集約できる。
⑦ 3分でわかるピケティの格差論と「r > g」の意味 - NAVER まとめ
https://matome.naver.jp/odai/2142311183807973501
WBS(2015年2月2日)からの書き起こしを中心に、トマ・ピケティの格差論を簡単にまとめました。|『21世紀の資本』
⑧ トマピケティ21世紀の資本とは?【わかりやすく主張解説】
sirundous.com › 政治・経済
経済書として話題になっているトマピケティの21世紀の資本「話題だから概要を知っておきたいんだよね」という方にな・・・
⑨ 動画
21:00 21世紀の資本論についての新たな考察
1:27:23 トマ・ピケティ 仏経済学者 『21世紀の資本』
21:00 Transcript of "21世紀の資本論についての新たな考察"
⑩ トマ・ピケティとは (トマピケティとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
dic.nicovideo.jp/a/トマ・ピケティ
トマ・ピケティ(Thomas Piketty,1971年~)とは、フランスの経済学者である。 概要 経済的不平等についての専門家であり、資本主義と格差拡大の関係について論証した「21世紀の...
※ トマ・ピケティに関連する検索キーワード
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トマ ピケティの新 資本論 ピケティ 資本論
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トマ ピケティ 名言 ピケティ 解説
③ 実はみんな読み切れない
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/42199
せっかく買ったんだから、読まなきゃなあ。でも、そんな時間もないし—『21世紀の資本』ブームに乗りたくても乗れない人にご朗報。600ページ超の内容も、たった6つの図で理解できるんです。
金持ちの資産に課税せよ
フランスの経済学者トマ・ピケティ氏が来日した。1月29日からの3泊4日の分刻みのスケジュールをこなし、後述する東大での講演会も大盛況となった。
今や雑誌・テレビに引っ張りだこのピケティ教授。だが、彼の著書で、現在日本で13万部のベストセラーとなっている『21世紀の資本』を読破した強者はどれほどいるだろうか。何せ注釈を抜きにしても608ページに及ぶ専門用語をちりばめた大著である。実のところ、多くの人が読み切れていないのではないか。
そこで、どんな内容なのかを押さえておくため、単純明快な図解を試みた。ここに示した6つの図に目を通せば、『21世紀の資本』を直感的に理解できるはずだ。
以降のこの印は、ここをタッチして開き見ること ポイント1『21世紀の資本』におけるピケティの3つの功績。
(1)最大の功績は、それまであまり注目されず、データも不十分だった「格差論」を歴史的なデータに基づいて示したことだ。約15年もの歳月をかけて、世界の税務データを収集した。
(2)そのデータを惜しみなく、インターネット上の「世界トップ所得データベース(WTID)」において無料公開している。これは、格差についての議論がより活発になることを願ってのことである。
(3)ピケティ教授は格差を是正するために、富裕層への累進課税を提唱している。いままさに、この是非を巡って世界中で大きな論争が巻き起こっているのだ。
少子化が大問題
ポイント 2財産の成長率は、労働によって得られる賃金の成長率を上回る。
株や不動産、債券などに投資することで財産は増えていく。こうした財産の成長率は、給与所得者の賃金が上がる率よりも、常に高くなる。これがピケティ教授の理論の核心である。
では、財産の成長率が賃金の成長率を上回ると何が問題なのか。
主に資産運用によって財産を築いている富裕層は、株や不動産を保有しているだけで、多大な利益を獲得できる。一方、平均的労働者は働けども賃金はゆるやかにしか上がらない。賃金を貯蓄したところで大きく増えるわけでもない。こうして格差が広がってしまう。
ポイント3「持てる者」はより豊かに、「持たざる者」はより貧しくなる。
こうした状況は今後も続 くのか。カギとなるのは技術革新である。将来的にバスが自動操縦になれば、運転手は不要になる。会計ソフトの導入で、経理事務員は減っていく。このよう に、最新技術を導入すると作業効率は上がるが、労働者は職を奪われる。富裕層はそうした技術に投資して、ますます儲かるばかりだ。
ポイント4 21世紀は「相続」によって格差がさらに肥大化していく。
「重要なのは、格差の大きさそのものではなく、格差が正当化されるかどうかだ」
ピケティ教授は、後述する東大の講義でも、そう強調していた。たしかに、機会が平等に与えられた上で、努力して得た財産に差が生まれるのは仕方ない。しかし近年は、働かずとも相続によって利益を増やしている層が増大している。
特に、先進国では少子化が進んでおり、祖父母や両親の財産を子息が一身に受け継ぐことも少なくない。裕福な家庭に生まれた人は、さらに裕福になることが約束されているということだ。こうした事態は、真面目に働いてきた労働者の不満につながる恐れがある。
ポイント5 1910~1950年代は格差が小さかった例外的時代。
昔はそんな格差はなく、いまが「たまたま」格差社会なのだという意見もある。だがピケティ教授は、2度の世界大戦があった'10年~'50年代こ そ、「たまたま」格差が小さかったに過ぎないと反論する。インフレや急激な経済成長によって格差が拡大することを恐れた政府が意図的に経済に介入した結果 だというのだ。
5のグラフをもとにピケティ教授は、日本滞在中にもこう力説した。
「21 世紀中に、格差は19世紀に近い水準にまで広がるでしょう。グローバル化の進む中で、格差を是正するためには、累進課税を世界で一律に適用することが考え られます。そうすることで、富裕層がタックスヘイブン(租税回避地)で税金逃れをするのを防ぎ、情報の透明化を進める。日本はそのリーダーシップをとるべ きです」
ポイント6『21世紀の資本』の警告は日本にも当てはまるのか。
当てはまらないという意見もある。日本はアメリカに比べて高所得者上位の間で年収の幅が小さい。加えて欧米に比べて相続税が高く設定されているからだ。
し かしピケティ教授は、「日本は典型的な格差社会だ」と断言する。日本の高所得者上位5%には大企業の一般社員クラスが相当するが、そのシェアは25・ 98%を占める。非正規雇用者の拡大や最低賃金の低さによって、下位層の所得が低下。その結果、正規雇用者層が上位に押し上げられているためだ。ピケティ 教授が続ける。
「非正規雇用者も、正規雇用者と同様に財産を増やすチャンスを与えられるべきです。
そ のために富裕層への課税を行うことを提案しますが、税率の設定は難しい。日本の最高税率は、1970年代には75%でしたが、今は45%と下がっていま す。最高税率が下がるとともに、経済成長率も下がった。ここにどのような因果関係があるのかを再検討して、課税について議論を進めるべきです」
誌上中継 ピケティ教授vs.東大生
「将来、金持ちになる僕らは悪者ですか?」
そのために勉強してきたのに
「あなたが教えているパリ経済学校の学生も、僕たち東大生も親が裕福なんです。だから、いい学校に行けたし、将来も金持ちになると思う。ピケティ教授は、富裕層への累進課税を唱えていますが、僕たちはどう受け止めればいいのでしょうか」
東大生の大胆な質問に場内は沸いた。1月31日、東大本郷キャンパスで行われたピケティ教授の講演会でのひとコマだ。会場には500人もの学生らが詰めかけ、約1時間の講演の後、質疑応答となった。
冒頭の質問をしたのは、工学部2年生の男子学生。恵まれた環境で不自由なく育った己を、心のどこかで恥じる気持ちがあったのかもしれない。ピケティ教授は彼の心情を汲み取ったかのように答えた。
「親は選べませんよ。家が貧しくても、金持ちでも、何ら恥じることはない。出自に関係なく、いかに将来、世界に貢献できるかということが大切なんです。
ただ、格差によって教育の機会が阻まれてしまうのはいただけない。それが次なる格差を生むことになり、悪循環が繰り返される。民主主義なのですから、我々一人ひとりが平等な社会を目指して動き出せば変わるはずです」
また「21世紀の(望ましい)政治」についてコメントを求められたピケティ教授は、こう答えた。
「経済の発展にとって政治の役割は重要です。アメリカでは、最高裁判所が政治献金を表現の自由として上限なく認めてしまって、何を考えているのやら。〝平等〟の解釈がおかしいと思いますよ」
ある男子学生はこんな不満をぶつけた。
「日本でも、格差に関する議論が活発になっていますが、単なる政治イデオロギーの押しつけです。
もっと学術的な根拠に基づいて議論をするべきではありませんか。だから、論争ばかりで格差がいっこうに是正されないのだと思えます。学者はこの議論にどう参入できますか?」
東大生らしい発言だ。ピケティ教授は、冷静に答えた。
「我々は、みんな市民なのだから、学者がエライわけでもない。それに、学術というが、特に経済学は歴史や実証を重視すべきで、数式のお遊びになってはいけない。経済や社会の問題を述べるのに、複雑な数式なんて必要ありませんから。
ただ、学者にはデータを集める時間がある。それを世界に向けて公開し、議論をより有意義なものにできるなら、学者冥利に尽きるというものです」
予定時間を終了しても、学生たちの挙手は止まらなかった。
経済学部3年生の男子学生は、複雑な心境を語る。
「格差の拡大が望まれないことは理解できます。でも、自分が生きているうちに資本主義のあり方を考え直さなきゃいけないほど大きな変化があるとは思えない。
だったら、やっぱり富裕層に入っておきたい。そのために、がむしゃらに勉強してきたんです。富裕層への課税に反発もするし、国がそのような政策をとるなら、海外に逃げたくもなります」
東大生協でも書籍売り上げランキング1位に輝く『21世紀の資本』。講演後、売れ行きに拍車がかかっているという。賛否はどうであれ、ピケティ教授の警告は、確実に未来のエリートたちに届いているようだ。
※ 以上、「週刊現代」2015年2月21日号より
⑥ ピケティが本当に伝えたかった3つの論点
https://ironna.jp/article/1137
トマ・ピケティの『21世紀の資本』(みすず書房)は、本人の来日もあり、現在そのブームはピークを迎えている。国会でもピケティの議論を援用した討論が行われ、書店にいけば関連書籍や雑誌の特集はまさに山積み状態だ。ピケティの主張自体は極めて簡潔であり、それは以下の三点にほぼ集約できる。
1)世界中で所得と富の分配の不平等化が進んでいる。2)その原因は(税引き後の)資本収益率(r)>経済成長率(g)にある。つまり経済の大きさが拡大するよりも資本の取り分が大きくなる。例外はふたつの世界大戦とそれに挟まれた期間だけである。3)この世界的所得格差を是正するためにグローバル資産課税やまた累進課税を促進すべき、というものだ。
注意すべきは、ピケティのいう「資本」とは、主に個人や企業が有する民間の実物資産(不動産など)や金融資産(株など)のことである。また人的資本は考慮に入れられていない(ピケティの解説としては、高橋洋一『図解ピケティ入門』(あさ出版)がベストなのでぜひ参照されたい)。
ピケティの議論については、誤読や批判的読解が行われてきた。代表的な誤読としては、ピケティの議論を「反成長」やアベノミクス批判、消費税賛成などに利用するものである。ピケティ自身は、将来的に経済成長ができないともそれが否定すべきものだとも一切いっていない。単に経済成長率よりも資本収益率が上回るとだけ言っているにすぎない。またアベノミクスの積極的な金融緩和には肯定的であり、他方で消費増税については格差を悪化させるものとして否定している。
ピケティ「財政面で歴史の教訓を言えば、1945年の仏独はGDP比200%の公的債務を抱えていたが、50年には大幅に減った。もちろん債務を返済したわけではなく、物価上昇が要因だ。安倍政権と日銀が物価上昇を起こそうという姿勢は正しい。物価上昇なしに公的債務を減らすのは難しい。2~4%程度の物価上昇を恐れるべきではない。4月の消費増税はいい決断とはいえず、景気後退につながった」(日本経済新聞、2014年12月22日)。
例えば民主党の岡田克也代表は、ピケティの議論を同党の経済政策と親和的なものとみなしているという報道を目にした。「時間を置かずに10%にきちんと上げていくことが次の世代のためにも必要だ」と消費増税を積極的に進める発言をし、または積極的な金融緩和論者(原田泰)の日銀審議委員への選出を反対討論まで展開して防ごうとした同党とピケティの議論が協調する余地はないだろう。
【写真】トマ・ピケティ氏(左)と握手を交わす民主党の岡田代表=1月30日夜、東京都港区のフランス大使公邸
海外の専門家によるピケティ批判には鋭いものが多く、その主要点は、1)ピケティの前提とする経済モデルの特異な仮定への批判、2)r>gがそのまま所得格差につながる可能性が低いこと、などである。前者については、専門的すぎるので割愛する。後者については、冒頭でも解説したが、人的資本(教育や訓練の経済的貢献)を無視していることにも大きく関わっている。また3)グローバル資産課税など処方箋が非現実的だとする反論も多い。
特に重要なのはピケティの議論を日本に適用した場合だろう。この点については、『Voice』4月号に掲載された拙稿「アベノミクス2.0でデフレ脱却へ」や、『電気と工事』3月号「『21世紀の資本』と日本の経済学」、そして原田泰氏との対談(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41814)などで私自身の見解を開陳してきた。
ひとことで言うと、日本の経済格差の問題点は、「貧しい人が多すぎる」ということだ。
デフレによる長期停滞は、失業者の増加、非正規雇用の増加などで低所得者層を生み出しつづけてきた。いま日本の生活保護世帯に属する人たちは約216万人いる。さらに今回の消費税増税(5%から8%増へ)の際に、政府は低所得者層に地方自治体を経由して1万円を補助する政策を打ち出した。その対象となる人たちの総数が約2400万人に上っていた(軽部謙介「消費増税でわかった二四〇〇万人の貧困」『文藝春秋』2014年4月号)。日本の人口の約20%が「低所得者層」に属する。その一方で、富の集中は深刻ではない。つまりピケティの問題視する経済格差は社会のわずかな人たちに富や所得が集中することで出現するのだが、日本ではその種の経済格差は深刻ではない。むしろ日本では「貧しい人が多すぎる」ことが経済格差を深刻化している。
この多数の貧困化現象は、経済停滞の長期化と大きく関連している。そのため対策は、ピケティの富裕税よりも経済成長を促す政策であり、現状ではアベノミクスの積極的な金融緩和政策である。そのほかに日本の高齢化の進展にともなう老人格差も問題ではある。この論点については、(対談以外)の私の上記論説を参照してほしい。
ともあれピケティによる経済格差問題への注目は当分続くだろう。このことは私にはとてもいいことだと思う。経済問題という理解するのに取っ付きにくいが、それでも日々の生活の上で重要な問題に人々の関心がいくからである。
もちろんこのピケティブームはさまざまな派生的な論争を提起するだろう。例えば、最近、伊東光晴(京都大学名誉教授)のピケティ批判「誤読・誤謬・エトセトラ」(『世界』2015年3月号)を読んだ。そこで伊東はピケティの議論は日本の実情をみていないとする。ここまでは私と同じだ。しかし日本の経済格差は、ジニ係数をみると1981年の0.3491から最新調査(2011年)の0.5536まで「異常な値」をとっていると伊東は見ている。ジニ係数は所得の不平等度を測る指標のひとつで、値が1に近いほど所得の不平等度は高まる。このジニ係数の「異常な値」の主因は、伊東によれば、80年代からの「規制緩和をはじめ、市場優位の新自由主義的経済政策」だという。この延長で、現状のアベノミクスも伊東によれば「新自由主義的経済政策」の弊害を象徴したものになるのだろう(伊東光晴『アベノミクス批判』岩波書店、参照)。
しかし伊東の主張には疑問がある。まず問題にすべきは、税や社会保険などによる再分配後所得のジニ係数であるはずだ。再分配前のジニ係数は、高齢化の進行とともに上昇しているが、再分配後のジニ係数はこの20年、0.3前半から後半で安定している。ただ問題は、1997年以降、若い世代中心にほぼ全世代でジニ係数が0.3前半から後半にシフトしたことだ。この原因は、当時の消費増税を起点とする経済の極端な落ち込みと、それに対処しそこなった日本銀行の金融政策の失敗だった(詳細は拙著『経済政策を歴史に学ぶ』ソフトバンク新書参照)。
日本の経済格差論争というのは、先の民主党の政策スタンスやこの伊東論説のように、消費増税の悪影響を軽視し、また金融政策の改善効果に批判的な人たちと、それに抗する人たち(ピケティも日本については抗する側だろう)との論争でもあるのかもしれない。
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■ 「21世紀の資本」の欺瞞と拡散する誤読 https://ironna.jp/article/1049『月刊正論』 2015年4月号
■ 格差は悪か ピケティは正しいか https://ironna.jp/article/1046『月刊正論』 2015年4月号
■ 左翼たちの異様な喜びはキモくないか https://ironna.jp/article/1047『月刊正論』 2015年4月号
⑦ 分でわかるピケティの格差論と「r > g」の意味
https://matome.naver.jp/odai/2142311183807973501
1冊6,000円近くするにもかかわらずベストセラーになっているフランスの経済学者トマ・ピケティの著書『21世紀の資本』。ピケティが唱える“格差論”がなぜこれほど関心を集めるのか。
出典 [WBS]ワールドビジネスサテライト:テレビ東京
■資本主義は格差を生み出す
ロイター/アフロ
「アメリカの企業トップが、年間10億円規模の報酬を得ているのはクレイジーですよ」
出典 2月2日(月) WBS
「彼らのパフォーマンスからは、そこまでの報酬は正当化できません」
出典 2月2日(月) WBS
経済学の常識を変える
ピケティ氏は、世界各国の所得と富の推移を調べ上げました。
その結果、彼の研究は、これまでの経済学の常識を変えたのです。
「私たちは現代の情報技術を使って、所得や富に関する膨大な歴史的データを集めました」
出典 2月2日(月) WBS
アメリカの所得の格差を示したグラフ
出典 ja.wikipedia.org
【アメリカの所得の格差を示したグラフ】
20世紀初頭から数十年間、格差は縮小し続けました。この過去の研究から、資本主義が発展すると格差が縮小することが、経済学の世界で、半ば常識とされてきました。
ところが、ピケティ氏がその後のデータを詳しく調べたところ、過去30年、アメリカの格差は急速に拡大。常識は間違っていたのです。
格差が縮小したのは、戦争で多くの財産が破壊されたとき。資本主義の発展とは無関係でした。
「20世紀前半の格差の縮小は、経済発展とは全く関係なかった。大恐慌や第二次世界大戦が主な原因だったんです」
出典 2月2日(月) WBS
■「r > g」の意味
r(リターン)とは、株や不動産など、資産運用から得られる利益率のこと。
g(グロース)は、経済成長率。 働いて得る、所得の伸び率のこと。
資産運用による利益が、所得の伸びを上回れば、資産を持つ人と持たずに働く人の格差は広がるばかり。
資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき、資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出す。
したがって、「資本主義を放置すると格差は拡大する」
出典 2月2日(月) WBS
ピケティ氏の研究によれば歴史上、
r(資産からの利益率)は常に、g(所得の伸び率)を上回り続けていました。
「人口が増えない社会では、現在の所得よりも、過去に蓄積した財産のほうが重要です。受け継ぐ財産の無い若い世代にとって、財産の世襲は大きな格差を生み出します」
出典 2月2日(月) WBS
■ピケティは、日本の経済政策をどう見ているのか
Q.アベノミクスは、格差を拡大するのか?
「アベノミクスには、格差拡大のリスクはあります。
株価は上昇しても、本格的な景気回復につながらずに、格差は拡大するだけかもしれません」
出典 2月2日(月) WBS
安倍首相は、「これまで日本の格差に顕著な拡大はない。ピケティもしっかりと成長し、その果実がどう分配されるかということが大切と言っている」と主張。
格差是正より成長優先をにじませる安倍総理に対してピケティ氏は、
「成長と格差の縮小は同時にやるべきです。まず成長、その後に格差に対処するという考えは間違っています」
出典 2月2日(月) WBS
Q.日本の格差是正の処方箋は?
「日本は若年層を優遇する税制に変更すべきです。特に、資産が少なく、労働所得しかない若者を優遇すべきです。若者が多い非正規雇用の待遇改善も重要です。これは、格差の縮小だけでなく、人口増加につながる政策です」
出典 2月2日(月) WBS
「若い世代が子供を持つのを支援することは、日本の長期的な経済成長にとって極めて重要な課題なのです」
出典 2月2日(月) WBS
関連検索の中にあるピケティ アベノミクス を開く
※ 「ピケティ理論からみたアベノミクス、最終目標は”再分配”の実現! 」
http://www.s-ichiryuu.com/archives/32939426.html
2015年06月09日
おはようございます、一龍です。 以前、ピケティ理論の結論についてはこちらの記事でまとめましたが、
これだけ知ってれば大丈夫、ピケティの結論をまとめてみた!
http://www.s-ichiryuu.com/archives/31022762.html
では日本経済は、特にアベノミクスはピケティ理論から言うとどうなのかを知りたいところです。 今回は『図解 ピケティの「21世紀の資本」』 の最終章
第9章 日本の「格差」を解消する処方箋 ピケティ理論で読み解くアベノミクス
から、まとめてみたいと思います。
ピケティ理論で読み解くアベノミクスのポイント
★「アベノミクスで格差が広がる」のウソ
ピケティ理論は様々なデータを元に格差の広がりに警鐘を鳴らすものでした。 その点を踏まえたうえで、多くの日本人が関心があるのはアベノミクスははたしてどうなんだというところでしょう。 アベノミクスで格差が広がるという経済学者もいますが、
“アベノミクスが始まって、円安、株高、公共事業を強化したことで雇用者数が100万人以上増えています。 非正規雇用が大部分を占めるという指摘もありますが、実際には失業者100万人が働けるようになったということです。 失業者の100万人と非正規雇用の100万人のどちらがいいでしょうか。 収入を得られる人が100万人増えたわけですから、底辺の押上につながっているわけです。”
つまり、
“アベノミクスは確実に低所得者層の収入をアップさせている ”
わけですから格差の広がりを抑えているといえます。 また、雇用が増えている中で、倒産件数が減る一方、廃業が増えています。 これは産業構造の転換が進んでいることを意味します。 格差が完全にない社会はありません。 社会主義でもその実現は不可能でした。
ピケティが重視するのは"再分配"による格差是正です。 実は
“成長は再分配の必要条件なのです。パイが縮小すると最終的には財政破綻になってしまいます。それを考えるとアベノミクスのまずパイを拡大させるという政策は間違っていません。”
今後、相続税や納税者番号制度など、お金が"再分配"する制度を強化していく政策も併用していくことで、経済成長しつつ格差是正も同時に実現することは可能だと思います。
“アベノミクスによって格差が拡大するというのは杞憂です ”
★アベノミクスにひそむ問題点
しかし、アベノミクスで全てが良くなっている、欠点がない、ということではありません。 例えば、アベノミクスがはじまってリフレ政策ですから当然ながら急激に円安が進行しました。 この円安対策が不十分なのです。 円安にはメリットもデメリットもあります。
“ そもそも円安が悪いわけではありません。円安になればなるほど企業成績はよくなって、国の税収も増えます。日本の経済問題の最終目標は国の財政の維持可能性を担保することですから、税収が増えることは悪いことではないのです。財務省の試算によると、1円の円安で法人税収入は900億円増えるそうです。”
しかし、業績が悪くなる企業もあります。 輸入を業者や、原材料の多くを外国からの輸入に頼っている企業などです。 特にこの影響を受けているのが中小企業です。 また、都市部に比べて地方のほうが円安の負担を受けやすいという問題もあります。
適正な為替レートで安定させる円安対策をしていかなければならいのは明らかですが、根本的な解決は為替レートの変動に影響を受けないような産業への業態転換しかないと思います。
★アベノミクス「第3の矢」への期待
アベノミクスは第3の矢といわれる成長戦略で踏み込み不足のところがあります。 成長戦略は大きく4つの項目に分かれています。
“稼ぐ力を取り戻すこと、担い手を増やすこと、岩盤規制の撤廃、その他のエネルギーや観光など ”
です。 それぞれ見ていくと
1 稼ぐ力を取り戻すこと
“法人税引き下げか決まり、コーポレート・ガバナンスも進んでいる。 政府の賃上げ要請もある程度効果が出ている。”
ということで、これに関しては進んでいます。
2 次の担い手を増やす
安倍政権になってから日本が初めて50年後に1億人を維持するという人口の目標を掲げました。
“合計特殊出生率を1.43から1.8まで早期に上げる その後、2.07までもっていく ”
というものです。 フランスでも出生率は上がりましたし、本気で取り組めば実現できると思います。 ただし、出生率を挙げても効果が出るまでには時間がかかります。 その間のつなぐ労働力として、女性と高齢者に焦点があたっているのです。 「女性が輝く云々」といった事を言っていますが、そもそもそんなことを言わなくても女性が安心して働ける社会を創造してこなかったのがおかしいわけです。 まぁ、遅いとはいえようやく取り組み始めたことに関しては評価しましょう。
3 岩盤規制の撤廃
岩盤規制の撤廃で成長しようというのは農業や医療関連分野もありますが、我々一般的な労働者にとって注目なのはホワイトカラー・エグゼクティブ(残業代カット)でしょう。 この法案は「過労死法案」などと揶揄されていますが、
“本丸は正社員の解雇ルールの明確化 ”
です。
“いままで日本の企業は正社員の解雇ルールが明確化されていないために採用を絞ってきた面があります。そのしわ寄せが若年労働者に行き、子どもを産み育てる世代の雇用所得環境が悪化して出生率の低下につながっていますので、そこを変えなければいけません。”
実は労働資源の流動性を高め、なおかつ出生率アップの秘策となる可能性を秘めています。 やりようによっては、日本社会を一気に活気づける法案となるかもしれません。
★「デフレ脱却で経済成長」は本当か
最後に「デフレ脱却で経済成長」は本当にできるのかという点です。 この論点に関してはいまだにデフレ反対派が必死で反対しています。
ピケティ理論の r > g をもとに考えると
“一般的なマクロ経済でいう r は長期金利の利回りです。デフレの時の日本経済はどうなっていたかというと、経済成長はマイナスですから、実質金利が高くなっていました。そうなると r > g はより広がりやすくなります。 ピケティはデフレを想定していませんが、デフレからインフレに持って行くことは格差の是正につながります。”
ここから考えると
“ r > g がより増幅されることによって格差が広がります。アベノミクスは名目の金利を下げて成長率をあげようとしているわけですから、 r > g を縮小しようとしていることになります。そういう意味では、アベノミクスは r > g の差を縮小しようとしている政策という見方もできます。”
デフレから脱却することは基本的にピケティ理論とも合致します。 ただ、デフレから脱却することで全てが解決するのではありません。 アベノミクスで日本経済の構造を変え、財政健全化を実現した後に控えているのが社会保障制度の効率化です。 世代間の格差、世代内の格差の壁を打破して
“人生で成功した人に応分の負担をしてもらうことが、これからのアベノミクスの重要な作業になります。”
この点がまさにピケティ理論の真骨頂。 "再配分"をいかに実現するかです。 ここまで到達すればアベノミクスは成功だったといえるのではないでしょか。
図解 ピケティの「21世紀の資本」 (イースト新書Q) 永濱 利廣
目次
はじめに 原著を忠実に読み解けば、日本経済の未来も見えてくる
序章 日本人はピケティから何を学ぶべきか
第1章 ピケティが考える「資本主義」のカラクリ
第2章 ピケティが考える「資本」のカラクリ
第3章 なぜ「資本」の格差は生まれるのか
第4章 なぜ「所得」の格差は生まれるのか
第5章 なぜ「持てる者」と「持たざる者」の格差は生まれるのか
第6章 なぜ「持てる者」がさらに儲かる社会になるのか
第7章 「格差社会」に特効薬はあるのか
第8章 日本経済の「格差」のカラクリ
第9章 日本の「格差社会」を解消する処方箋