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続折々の記 2019④
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12 04 米中の貿易摩擦 国家間の子供の感覚が続く
食糧 穀物大量備蓄、中国の不安 米と貿易摩擦、14億人の確保は
食糧 食糧は「武器」、ソ連崩壊の教訓 米国の禁輸、懸念深める中国
気候危機 温室ガス「ゼロ」
米の選択は大統領選に世界注視
若者に危機感、党内からも異論
12 04 (水) 米中の貿易摩擦 国家間の子供の感覚が続く
昨日郵便箱から新聞を取り出すと、第一面にこの記事が出ていた。
(米中争覇)大連=平井良和記者
食糧 穀物大量備蓄、中国の不安 米と貿易摩擦、14億人の確保は
2019年12月3日05時00分
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14280038.html?ref=pcviewer
【画像】中国・遼寧省大連市の北良港に並ぶ食糧用とみられるサイロ=11月8日、平井良和撮影
中国東北部・大連市の中心部から湾を隔てた対岸の港に、300基を超す巨大サイロ(食糧貯蔵庫)が立ち並ぶ。大きいものは直径32メートル、高さ約46メートル。サイロ群の総容量は200万トンで世界最大級だ。
港の名は北良港。東北部の穀倉地帯から南部へ食糧を送る拠点として、2003年に運用が始まった。13年に国有食糧企業・中糧集団有限公司(COFCO)の傘下に入ると、米国やブラジルから届く大豆などを国内市場に送る中継基地となった。四つの食糧専用埠頭(ふとう)と鉄道の引き込み線があり、中国全土の輸送網とつながる。
サイロ群にはもう一つ重要な役割がある。緊急時の国家備蓄として、60万トンもの食糧を長期保管することだ。こうした備蓄庫は中国全土にある。大連の北約200キロの営口市では、郊外に高さ10メートルを超えるサイロが並ぶ。地元農家によると、毎年秋、新たに収穫された分が運び込まれ、3年前から貯蔵されていた分が市場に出されるという。
ここを管理するのは国有企業・中国儲備糧管理。中国全土に1千カ所近くの備蓄庫を持ち、コメや小麦、トウモロコシ、大豆などを保管する。同社以外にも、地方政府や企業が管理する備蓄庫も数多くある。
備蓄庫に蓄えられたコメは年間消費量の80%、小麦は112%に相当すると米農務省は推計する。国連食糧農業機関が「食糧安全保障の最低ライン」とする17~18%はもちろん、コメで24%、小麦で15%の日本の水準をはるかに上回る。中国だけで世界全体の小麦の備蓄量の半分以上、コメは3分の2を蓄えている計算だ。米政府は需給バランスによる価格決定をゆがめ、「世界の農家に損害を与えている」と批判する。
膨大な備蓄は中国が抱える不安の裏返しだ。昨年7月、米国が中国からの輸入品に追加関税の第1弾を発動すると、中国は報復として米国産大豆などの関税を引き上げた。その約2週間後、中国政府は全国の備蓄庫の一斉点検を指示。米国が第3弾を発動した今年5月には、点検責任者に「隠さず、ごまかさず、問題点を報告せよ」と念を押した。
備蓄をめぐっては、中国政府は総量を公表しておらず、管理者らによる横流しが発覚するたびに、インターネット上で国民から「備蓄庫にちゃんと食糧があるとは思えない」という疑念の声が上がる。17年時点で米国からの食料品輸入は65億ドル(約7150億円)で、米国は最大の供給国だった。貿易摩擦で中国は米国からの輸入にブレーキをかけつつ、それが自身の食糧不足に波及することを警戒している。
中国は食糧生産量で世界一だが、世界最多の14億の人口を抱える。米国の環境活動家レスター・ブラウン氏は1994年、中国では農地拡大は難しく、生産量は減り始めると予測した。この年、中国は不作で収穫量が減り、翌95年にはトウモロコシやコメを大量に輸入。国際価格の高騰を招いたと各国に批判された。
中国政府は96年、「食料自給率95%」を打ち出し、「世界の食糧の安全に脅威は与えない」と宣言した。だが、2001年の世界貿易機関(WTO)加盟で農産物の関税が引き下げられ、経済成長による高級品志向も進んだ結果、10年代初めには世界最大の農産物輸入国になった。
習近平(シーチンピン)国家主席は13年、こうした現状を追認して「95%自給」の看板を下ろした。主食のコメや小麦は自給を維持しつつ、それ以外は輸入品を積極利用するよう方針を転換させた。中国国家統計局によると、13年に約520億ドル(約5兆7千億円)だった食料品の輸入額は、18年には約726億ドル(約7兆9600億円)に達した。もはや後戻りできない状況だ。(大連=平井良和)
(2面に続く)
1面から続く(米中争覇)
食糧 食糧は「武器」、ソ連崩壊の教訓 米国の禁輸、懸念深める中国
【画像】ブラジル中西部カンポベルジ郊外で、地平線まで広がる大豆畑=11月6日、岡田玄撮影
10月上旬、上空から見た米中西部カンザス州は、トウモロコシの黄緑と大豆の茶色のパッチワークで埋め尽くされていた。カンザス、イリノイなど中西部9州にまたがる穀倉地帯は「グレイン(穀物)ベルト」と呼ばれる。
米国の耕作地は中国より広いが、機械化が進み、農家の人数は中国の1~2%にすぎない。安く大量に生産される米国の農産物は第2次大戦後、戦火で荒れた欧州や日本などの同盟国に送られ、食の米国依存を構造化させた。
カンザス州フリントヒルズの大豆農家ドゥエイン・フンドさん(63)は収穫を前に嘆いた。「トランプ大統領は我々の顧客の中国との信頼関係を傷つけ、カーター元大統領と同じ過ちを繰り返している。1980年の穀物禁輸と同じだ」
70年代、米国の農家は空前の好景気に沸いた。冷戦で対立していたソ連が、72年の凶作をきっかけに米国から年間1千万トンを超す穀物を輸入するようになったからだ。だが、ブームは突然終わる。79年、ソ連がアフガニスタンに侵攻すると、翌80年、当時のカーター大統領はソ連への穀物禁輸を宣言。食糧を「武器」に使った。
禁輸は一年余りで空振りに終わった。ソ連がアルゼンチンなどからの輸入を増やしたためだ。一方、米農家の作物は売れなくなった。借金の金利は高騰し、担保にした農地の価値は急落した。
ただ、長期的には米国の狙いは当たった。80年代半ばに原油が値崩れすると、財政難になったソ連は食糧の輸入代金を払えなくなった。ソ連は91年に崩壊した。
中国の食糧政策に詳しいシンガポール・南洋理工大学の張宏洲研究員は「ソ連崩壊の歴史に中国は学んでいる。米国が食糧禁輸をするかもしれないと懸念を深めている」と指摘する。
ソ連でつまずいた米国の大豆生産者団体は82年、北京に事務所を開設。95年に大豆の本格輸出にこぎつけた。2017年には輸出量が約3千万トンになったが、米中の貿易摩擦が始まった18年にブラジル産に押し出されて、半減した。
米国大豆輸出協会のジム・サッターCEOは「売り手としての米国の信頼は傷ついた」と感じる。米国産大豆が他国産より安い時でも、中国のバイヤーは買わない時があった。
中国は自国の食糧確保に強い不安を抱える一方で、「食」を使った政治的影響力を行使している。
中国は10年、ノルウェーのノーベル委員会が中国の人権活動家、劉暁波(リウシアオポー)氏に平和賞を授与したことに反発し、ノルウェー産サーモンの輸入を止めた。南シナ海問題でフィリピンと対立が深まった12年には、同国産バナナの輸入を停止。昨年12月にカナダ当局が米国の求めに応じ、中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)副会長を逮捕すると、カナダ産の菜種と食肉の輸入を相次いで止めた。自国の巨大市場を背景に、「武器としての食料輸入」を振り回している。(フリントヒルズ=武石英史郎)
■巨大市場、米国外しに限界も
11月上旬、ブラジル中西部カンポベルジ。「緑の平原」を意味する町の名の通り、郊外の大豆畑は大地を緑に染めていた。大豆の集積場では早朝、長さ25~30メートルの巨大トレーラーが50台以上、列をつくって開門を待っていた。運転手のシセロ・マガリャンイスさん(53)は「ここは他社より払いがいい。1トンあたり41レアル(約1千円)。他より2、3レアル高い」と語った。
集積場は香港に本社を置く中堅穀物商社ノーブルのものだった。だが、2014年、同社の株の51%を中国の国有企業COFCOが取得。16年に残りの株もすべて取得して買収した。5千ヘクタールの農地を持つ大豆農家ミルトン・ガルグジョさん(50)は今年、生産する大豆の30%をCOFCOに売る契約を結んだ。
カンポベルジでは「穀物メジャー」と呼ばれる欧米系の巨大資本が農家からの買い付けネットワークを築いてきた。かつて米国系大手で働いた穀物ブローカーの男性(57)は「中国は約10年前から自分たちで土地を買って大豆を作ろうとしたが、土地を売る人は少なく、最後は外国人に大規模な土地販売を禁じる法律に阻まれた。そこで目をつけたのが、国際穀物商社の買収だった」と指摘する。
COFCOはノーブルと同時期にオランダ系のニデラも買収し、2社が持つ26カ国の流通網を手にした。国有銀行は少なくとも600億元(約9300億円)を融資。中国版穀物メジャーの誕生を支えた。
ただし、人口14億の中国の巨大な食糧需要を考えれば、最大の供給元だった米国との決別は自らの首を絞めることでもある。中国のコメの生産コストは米国に比べて4割高い。中国政府は農家の生産意欲を保つため、農家から高く買い取り、安く市場に売ってきた。01年以降、中国政府が負担した農業補助金は累計で1千億ドル(約11兆円)に上ると米通商代表部はみている。
中国はコメを自ら作り続けるしかない。コメの年間消費量は1億4千万トン余りに上るが、世界全体のコメ貿易量は年4千万トンしかない。程度の差はあれ、小麦やトウモロコシも輸入には限りがある。食糧問題に詳しい三石誠司・宮城大教授は「穀物の世界では、供給できないものは買うことができない。高品質の農産物を納期通りに大量に輸出できる米国は、中国にとって当面欠かせない」と指摘した。(カンポベルジ=岡田玄)
-20 09 27 (日) 気候危機 温室ガス「ゼロ」、中国の野心
突然中国は-60年温室ガス「ゼロ」のニュースが入った。 米中のせめぎあい駆け引きは、暗黙の裡にニュース化し互いのおもわくを主張している。
子供じみているとはいえ、ことは重大な重みをもっている。 グレタさんの一撃は世界中に波紋を広げている。 ただ、日本では黙って様子を見ているだけなのか? 米の傘下を決め込んでいるのか?
世界からのつまはじきの様子がチラチラ見えているというのに !!
日本国民は国内ニュースで知らされない限り、つんぼ桟敷に置かれている感じです。
温室ガス「ゼロ」、中国の野心
米の選択は大統領選に世界注視
【中国の二酸化炭素排出量の推移と目標】
■Covering Climate Now
◇「Covering Climate Now」は昨年4月に始まった気候変動の報道を強化するキャンペーンです。朝日新聞社を含め、世界のメディアが賛同し、参加しています。
中国が「2060年までに温室効果ガスの実質的な排出量をゼロにする」との目標を打ち出した。最大の排出国の野心的な宣言が各国の背中を押し、米国の「パリ協定」離脱表明で停滞していた温暖化対策が動き出す気配もある。世界は気候危機を乗り切れるか。排出量第2位の米国が11月の大統領選で示す選択に注目が集まる。
「中国が前に踏み出した。世界への力強いシグナルだ」
24日の気候変動対策会合で、第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の議長国・英国のジョンソン首相が称賛した。
2日前の国連総会で、習近平(シーチンピン)国家主席が「30年までに実質的な排出量を減少に転じさせ、60年までにゼロにする」と表明したのを受けてのことだ。習氏はパリ協定について「地球を守るのに必要な最低限の行動だ。全ての国が決定的な一歩を踏み出さねばならない」と述べ、温暖化対策でリーダーシップをとる意欲を強く示した。
パリ協定ができて5年近く。トランプ政権は中国との競争で不利になるとして温暖化対策から背を向け、中国も様子見するように動こうとせず、協定は漂流する恐れが出ていた。
中国の排出量は世界全体の約3割を占める。「実質ゼロ」宣言が、協定の実現性に懐疑的になっていた国々に与える影響は大きい。
グリーンピース中国の李碩氏は「注目度の高い国連総会、しかもトランプ氏の演説の直後に発表をぶつけたことで、中国の気候変動に対する野心と米国の不作為を最大限に対比させることに成功した」と話す。
中国が宣言に踏み切ったのには国内の事情もある。
微小粒子状物質PM2・5で批判が噴出し、政権は環境問題が巨大な政治リスクになることを学んだ。今年、7千万人に被害をもたらした大雨は気候変動の影響が指摘され、対策を迫られている。石炭燃料に頼る古い産業を淘汰(とうた)し、経済構造を転換する狙いもある。
目標達成には排出削減に加え、植林や技術開発などで二酸化炭素を回収する努力が欠かせないが、政府はまだ具体策を示していない。来年からの新たな経済5カ年計画で、どう道筋をつけるかが焦点になる。
国立環境研究所の増井利彦氏は「かなり厳しい取り組みが必要だが、政治的リーダーシップがあれば実現は可能だ。脱炭素と経済成長を両立させる発展経路は、ほかの途上国の参考になる」と話す。
気候変動への深まる懸念は、ほかの国々も共有する。EUは新型コロナからの経済回復を脱炭素化の契機にしようと、温室効果ガスの削減目標を大幅に引き上げた。
そのなかで関心を集めるのが米国の動向だ。大統領選では温暖化を否定するトランプ大統領と、50年の実質排出ゼロを掲げるバイデン前副大統領が争う。
海面上昇の危機にさらされる太平洋のマーシャル諸島のティナ・ステギ気候変動特使は、「米国だろうがマーシャル諸島だろうが、温暖化の影響への対応が日常的な課題になった。大統領選には世界の気候の将来がかかっている」と話す。
(ワシントン=香取啓介、北京=高田正幸)
(2面に続く)
温暖化、トランプ氏無視
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相次ぐ山火事「すぐ涼しくなる」
(1面から続く)
米西海岸では9月、記録的な山火事が広がった。ロサンゼルス近郊でも住宅に迫り、消火は困難を極めた=15日、AFP時事
■ Covering Climate Now
◇「Covering Climate Now」は昨年4月に始まった気候変動の報道を強化するキャンペーンです。朝日新聞社を含め、世界のメディアが賛同し、参加しています。
車の両側には高さ15メートルを超える炎が立ち上り、ほおを照らした。山間の集落は建物が崩れ落ち、乗り捨てられた車が残っていた。「たくさんの爆弾が爆発したようだ。何度も経験しているが、恐ろしい戦場のようだった」
米カリフォルニア州ブット郡に住む映画制作者のナンシー・ハミルトンさん(58)は9月上旬に地域を襲った山火事を語る。郡内で少なくとも15人が亡くなり、今も延焼を続けている。ハミルトンさん宅には、家を失い避難してきた友人たち12人が身を寄せる。一帯は2年前にも85人が亡くなった当時最悪の山火事に襲われた。
「雨は少なくなり、森は乾き、火事は増え続ける。また起きる前に、対策が必要だ。気候変動はまさに起きている」
西海岸で過去最大規模の山火事が続く中、16日にはメキシコ湾から南部にハリケーン「サリー」が上陸した。「壊滅的で命の危険がある洪水がフロリダの一部やアラバマ州南部西海岸で起きます」。国立ハリケーンセンターは警告した。
過去最も多く温室効果ガスを排出し、現在でも中国に次いで2番目の排出国である米国。2016年の大統領選で、温暖化に懐疑的で国際ルール「パリ協定」=キーワード=からの離脱を掲げたトランプ氏が当選した。トランプ氏は環境規制の撤廃・緩和を進め、温暖化についても今月、「気候はすぐに涼しくなる。科学がわかっているとは思えない」と述べ、向き合おうとしない。
米国の気候学者らのプロジェクト「気候インパクト・ラブ」の予測では、今世紀中の温暖化の進展で経済被害を受ける地域は、南部や中西部が圧倒的で最大3割も収入が下がるという。トランプ氏の地盤である共和党支持州と重なる。ブルッキングス研究所は「温暖化の現実に直面するにつれ、政党の態度は素早く変わる可能性はある」と分析する。
相次ぐ災害と気候変動の関係は明確ではないが、エール大の調査では、気候変動が「起きている」と思う米国民が増えている。バイデン氏は「科学を尊重し、気候変動の被害がすでに起きていると理解している大統領が必要だ」と訴え、当選すれば就任1日目にパリ協定に復帰すると語っている。
環境規制、次々と撤廃・緩和
「米国は(化石燃料という)とてつもない富を持っている。(温暖化対策という)夢のために富を失うことはしない」。昨年8月、仏ビアリッツの主要7カ国(G7)首脳会議後の会見で温暖化対策について問われたトランプ氏はこう語った。
米国はシェールガスブームのおかげでエネルギーの純輸出国になりつつある。環境規制は米国の経済成長を妨げ、中国などとの国際競争で不利になる――。トランプ氏は米国を大国に押し上げた力の源泉を手放したくないとの思いがある。今年8月に発表した2期目の公約集でも「エネルギー自立のために規制緩和を続ける」とうたった。
コロンビア大法科大学院によると、トランプ政権の下で、温暖化対策の規制の撤廃や緩和は約160に上る。発電所からの温室効果ガスの排出規制「クリーンパワー・プラン」を撤廃。自動車の排ガス規制緩和や環境影響評価(アセス)から温暖化への影響を外すなどしてきた。
「撤廃や規制緩和の多くが、合理的な分析や証拠に基づいて行われたものではなく、法的に根拠が弱い。政権交代がなくてもいずれ訴訟で覆され、レガシーにはならない」。同大で規制緩和を追っているヒラリー・アイダン研究員は話す。
若者に危機感、党内からも異論
昨年7月、米上院民主党が開いた気候危機特別委員会に、共和党のベテランコンサルタント、フランク・ルンツ氏が出席し、告白した。「2001年に、私は間違っていた」
当時はブッシュ(子)政権で、党の弱点とされた温暖化問題を政治争点化。温暖化の科学的合意はできつつあったが、ルンツ氏はメモで「不確実性を第一の問題として突き続けろ」と説き、今でもトランプ氏をはじめ多くの共和党議員のスタンスになっている。米国の保守層には、政府や科学などの権威への不信が元々あり、個人の行動の変革をせまる温暖化への懐疑論を受け入れやすい土壌があった。しかし、ルンツ氏は「温暖化はリアルだ」と考えを変えた。「私が18年前に書いたものを使ってほしくない。今では正確ではないからだ」
ハーバード大による米国の若者18~29歳が対象の3月の調査では、トランプ政権の温暖化対策への取り組みに反対する人が全体で73%と圧倒した。若い世代は党派を超えて温暖化の脅威を感じ対策に前向きだ。
18年の中間選挙で民主党から最年少で当選したオカシオコルテス下院議員らは、再生可能エネルギー関連産業での雇用創出など「グリーン・ニューディール」を提案した。
バイデン氏も、新型コロナ危機からの経済回復策「ビルド・バック・ベター」(より良く建て直す)の柱に、温暖化対策を盛り込んだ。グリーン・ニューディールを下敷きに、2兆ドルを投資して再エネ拡大やインフラの脱炭素化を進め、50年までに実質排出ゼロを目指すことを掲げる。バイデン氏は「トランプ氏は気候変動を『でっち上げ』だと考えるが、私は『雇用』(のチャンス)だと考える」と語る。
公約集で温暖化に触れていないトランプ氏だが、海面上昇とハリケーン被害が直撃するフロリダ州を中心に、温暖化対策を重視する共和党議員が出ている。(ワシントン=香取啓介)
■日本も選挙後見すえ準備を
電力中央研究所の上野貴弘・上席研究員の話 トランプ氏が再選した場合、米国のパリ協定離脱が長期化し、協定の求心力に悪影響が出る恐れがある。
特に気候変動対策のための途上国への資金援助は、2024年までに新目標について交渉・合意することになっている。資金拠出国の米国が抜けると交渉が難航し、途上国の温室効果ガス削減目標の引き上げが難しくなる可能性がある。
一方、バイデン氏は他国へ削減目標の強化を求めるとしている。日本の現在の削減目標は30年度に13年度比で26%減。引き上げを要求された場合、どうするか考えておく必要がある。
また新型コロナウイルス禍からの復興のあり方も焦点だ。バイデン氏が勝利した場合、削減目標のほか環境に配慮した経済の回復にどう予算を充てていくかも、欧米との競争の観点で日本にとっては大事な話になる。
◆キーワード
<パリ協定> 2015年12月の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択された地球温暖化対策の国際ルール。16年11月発効。温暖化による危機的な影響を防ぐため、産業革命前からの気温上昇を2度よりかなり低く、できれば1.5度に抑えることが目標。そのために今世紀後半に世界全体で温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることをうたう。各国は温室効果ガス削減目標などの対策を練り、5年ごとに点検・見直しする。各国は今年中に目標の更新と、長期目標の提出を求められている。