(ワインエッセイ集) (追補3) 更新日
: 2002.12.10
化学調味料に対する考え方
化学調味料は日頃出来るだけ使わないようにしておりますが、それでも今の食環境では、結構摂取しているようです、化学調味料についての現状と考え方を纏めてみましたので、料理の際に参考にして下さい。
(題目)
化学調味料とは
化学調味料の是非論争
化学調味料その他の製法の一例
旨味とは
ワインとの相性は
我が家の対処法とお薦めは
(化学調味料とは)
- 化学調味料はグルタミン酸ナトリウム(アミノ酸系)とイノシン酸ナトリウム/グアニル酸ナトリウム(核酸系)などの化合物からできています。食品添加物の表示では、化学調味料・グルタミン酸ナトリウム(MSGと呼ぶ)は「調味料(アミノ酸)」と表示、核酸系などのほかの調味料が混ざったものは「調味料(アミノ酸等)」と表示されることになっています
- 前者の代表には味の素、後者にはハイミー、いの一番などがあります
- その他の調味料で、だしの素類、コンソメ類、中華味(素)類、鶏がらスープ顆粒、ソース類(トンカツソース、ドミグラスソース、チリソース他)、ルー類(カレー、シチュウ他)、タレ類(焼き肉、蒲焼、ごまだれ他)、濃縮めんツユ、各種ドレッシング、ポン酢、すし酢、醤油、味噌、マヨネーズ、酒、味塩、梅干し、ふりかけ類などと、
加工食品の、即席めん、即席スープ類(味噌汁も)、かまぼこ等の練り製品、缶詰類、ソーセージ、ポテトチップス、せんべい、つくだ煮、珍味、漬物、キムチ、ご飯、ポカリスエットなどで、
成分表の一部に、小さく「調味料(アミノ酸等)」と書かれているのが多く見られれますが、これは化学調味料が含まれているものです
- 化学調味料のMSGだけよりも、核酸系調味料を加えた「複合調味料」のほうが、ずっとうま味が出てくるので、調味料(アミノ酸等)」と書かれた複合調味料や加工食品が多くなっているのです
- 健康指向の食材、自然食品や生協などには化学調味料や添加物の使われていない製品も多々見かけます
(化学調味料の是非論争)
私の記憶が正しければ、30数年以上前から母親に「化学調味料を使いすぎると体に良くないよ」と言われた覚えがあります。その後はずっと、昆布、かつお節、だしじゃこでだしをとり、化学調味料はやむを得ない時にだけ補助的に使い、使い過ぎないよう気をつけてはいました。
数十年経ってもこの論争はエスカレートしても決着はしていないようで、化学調味料を使った食品が増える一方、無添加の食品も盛んに売り出されています。
現在では、個人の健康への考え/味の好み/関心度合/経済性/時間などで選択されているようですね。
害や毒性を指摘する内容を羅列すると
- 諸外国でMSGの毒性や有害性を指摘する学術論文は多い
- 1回に1.5〜12gとると顔面圧迫感、灼熱感、倦怠感、手足のしびれなどが起きる
- グルタミン酸塩は脳神経へ異常を来たす恐れがある、特に胎児/乳幼児の脳形成期に悪影響の恐れがある、性成熟異常、性ホルモンの減少などの不安、妊娠率が低くなる
- 高温の料理で発ガン物質が出来る、250℃以上の温度になると危険、から揚げなど油とともに加熱すると180℃でも出来る。天然の食品中のグルタミン酸では量が少なく、発ガン物質は見つからない
- グルタミン酸ナトリウム3gが食塩1gに相当するので塩分のとり過ぎにつながる
- 核酸はあらゆる食品に多かれ少なかれ含まれている栄養素だが核酸系調味料の過剰摂取は体質によっては痛風を患いやすくなる(肉食も原因の一つだが)
- 以前、米国で中華料理症候群という症候が騒がれ、MSGが生命に危険があるとか、ある種の人々に食後何らかの反応(頭痛、胸部から首、肩、腕にかけての熱感やしびれや圧迫感、脱力感や眠気)を引き起こすこと(一過性)があるということが騒がれたことがある
- 日本でも化学調味料を大量に使う中華料理店のラーメンや中華料理を食べたあと、唇がシビレたり、胸焼け、背中痛を起こす人がたまにはいるようです(体質的に敏感/アレルギー的反応?)、又舌の敏感な人は味の幻覚が起こり、味が分からなくなることもあるらしい
反論の内容を羅列すると
- 現時点では、健康に悪影響があるという証拠はない、とくに主成分のグルタミン酸は、こんぶなどにも含まれているもので、体内に入ったからといって問題があるとは思えない
- 「中華料理店症候群」は摂取後一時間以内に頭痛や頬の紅潮などの症状を訴えることがあるというのが主なもので重大な症状は一件もなかった、MSGはある種の人々に食後何らかの反応を引き起こすことがあるが一般的には健康に影響はないとされた。アメリカ医学会とFAOとWHOの合同委員会がが健康に悪影響なしと判断した。ECの食品科学委員会がMSGを毎日摂取しても問題はない、乳幼児にも問題はないと判断した(グルタミン酸は母乳中にかなり高濃度で入っている)、
中華レストランでは大きなオタマでバシャッと化学調味料をすくってフライパンに放り込んでいることがあり(50〜60gは楽に入ってそう)、これが問題視されたようです
脳に悪いとかビタミン欠乏を引き起こすとかいった事実はなく、安全性に問題はないと結論しています、等々
- 「MSG加熱で強い発ガン物質も生成される」については、蛋白質やアミノ酸を高温で加熱するといろいろな変異原性物質ができる(肉や魚を加熱し焦がしても同じ)、MSGだけではない
- 害があるという論文には科学的根拠に乏しい等々
その他
- 世界保健機関(WHO)は、1日6g以上のMSG摂取は健康障害の不安があるとしているが、使用基準はないようです
- このような化学調味料を、日本の人々は一人あたり一日1.5g程度摂取しているのだそうです(極力摂取しない人もいるので、多く使う人とではこの数値は上下に大巾な開きがあるでしょう)
- 日本人は一日に数百mgもの核酸を体に入れているようで、日本では近年急増しているようです、肉食も原因の一つですが、核酸系調味料が大々的に使われ始めたのが大きな原因のようです、よほど気にしていないと核酸を過剰摂取(痛風の原因)しています
(化学調味料その他の製法の一例)
- 以前、石油合成法で作られていた頃、発ガン物質が混じっていると指摘されたことがあったようですが、近年は発酵法が主体のようです
- 原料はさとうきびなどから砂糖を精製する過程で出来た最終廃糖を微生物(菌)でアミノ酸に変え、その後、精製/中和/濃縮/結晶/乾燥して作られます(この過程で化学薬品が使われるらしい)、この化学薬品以外は自然に存在するものよりも純粋なアミノ酸が出来るようです
- 核酸系も微生物を使い、ほぼ同様の作り方のようですが、放射線などで人工的に変異させたイノシン生産能力の非常に強い「変異株」を使って発酵させているらしい
- かつお節の製造工程で、かつおを煮る時に失われる旨味を補足するのに化学調味料を添加したり、その煮汁からカツオエキスを抽出することもあり、この場合の化学調味料の添加は表示しなくてよいらしい (これだと自分でだしをとった場合でもゼロではないようですよ)
- 煮干し製造工程の段階で酸化防止剤(BHA/ブチルヒドロキシアニソール/発ガン性がある)が使用されていることもあるようです
(干物にも使われるケースがある)
- 製法による善し悪しは素人にはよく分りませんし、その他の食品添加物のことまでも考えて(調べて)、食生活をすることは難しいですね
(旨味とは)
- 味には辛さ、甘さ、酸味、苦味の基本の4つの味覚に加えて、第5の味覚である「旨味」の受容体が舌にあることが最近になって米国の大学の研究チームにより発見された、その中でも料理が旨いと感じさせるのに大きく貢献するのは「旨味」です
- 和食料理の味の中心である「だし」は、だし取によって旨味成分が抽出される、その代表はグルタミン酸(アミノ酸系)、イノシン酸(核酸系)、グアニル酸(核酸系)、コハク酸(その他系)の四つで、水に溶け出しやすい成分です
- グルタミン酸は昆布から、イノシン酸は煮干し/かつお節から、グアニル酸は干し椎茸から、コハク酸は貝類から抽出されます。これは和食に限ったことではなく、西洋料理、中華料理でも食材は違っても同様です
- イノシン酸(核酸系)の旨味物質とグルタミン酸(実際にはナトリウム塩)が同時に存在するときに強く旨味を感じる相乗効果があります、この旨味成分は料理の内容や具により、組み合わせて美味しく感じるのです (煮干しでだしをとりシジミの味噌汁を作ると言うように)
- 日本茶の玉露や煎茶にはテアニンという茶特有のアミノ酸が含まれています(お茶の旨味成分である)、最近、かつおのだし汁(イノシン酸)に煎茶を加えると旨味が数倍上がるということを知りましたが、同様の効果でしょう
- 化学調味料も旨味成分ですが、工業的なプラントで製造されたものです、昆布からだし取りしたグルタミン酸と化学調味料とは基本的には同じ物なのですが、異なるのは化学調味料のグルタミン酸が純粋なもの(刺激が強い)なのに対し、昆布からだし取りした場合はグルタミン酸以外にも他のアミノ酸成分(僅かですが)と昆布特有の風味が加わることでしょう、精製塩と天然塩の味の違いとよく似ています
- 料理をだし取りによって行うと昆布やかつおの自然な風味が加わります
- 化学調味料の味を本当に旨いと感じるかどうかは個人の好みの問題でしょう、甘味や塩味の度合の好みでも、育ちや人により様々なのと同じです
- 中華料理は使われる食材からの旨味が豊富なのに、何故、化学調味料を大きなオタマでバシャッとすくってフライパンに放り込むような大量の使い方をしてきたのでしょうか、たしかに中華料理と化学調味料の相性は良いのは分るのですがね、レシピを見ても堂々と使うよう記載されているのも多いようですし、テレビでも手で掴んで放り込むのも目にします、化学調味料を一切使用しないという中華料理店もあります
- 化学調味料を使い過ぎた料理は、まず一口目が美味しく感じられるですが、食べていくうちに上顎がスーッとしてきて、胸焼けを起こすような感覚が出てくるようです
- 化学調味料に限らず調味料(塩、砂糖、油など)は健康も考えて取り過ぎないよう使う必要があります
- 素材そのものが持つ味を料理に出す場合には、自然のだしでさえ、利かし方を薄くすることだってあります、純粋な強い化学調味料や砂糖や塩を多く使うと自然の恵みの味わいがすっ飛んでしまいます
- 日本酒はアミノ酸やコハク酸が豊富で、調味料として和食だけでなく、洋食、中華料理にも使います、料理用の日本酒は添加物があり、吟醸酒は旨味成分が少なくなっていますので、普通の日本酒を料理に使うことをお薦めします、日本酒はこれ以外に、素材を柔らかくしたり、素材に染み込み出てくるときに内部の香りを引き出してくれます、コハク酸の作用で魚の生臭さも消す効果があります
(ワインとの相性は)
- 酒全般的に言えますが、旨味成分のみでは相性が良いものではありません
- チーズの白い斑点はグルタミン酸ナトリウムです(化学調味料ではない)、素材と共にワインとも相性がいいですね
- 中華料理にワインは欠かせないというのが、このホームページでの主張ですし、化学調味料と食材の組み合わせでの相性は決して悪くありません、特に白ワインと好相性です
- 日本料理はアミノ酸の食文化といわれています、魚に多く含まれるノイノシン酸が日本酒に多く含まれるグルタミン酸と相乗効果で旨くなります、白ワインも負けてはいません、白ワインにはコハク酸が多く含まれています
- 昆布とかつお節でとっただし汁を使った料理は白ワインと好相性です
(我が家の対処法とお薦めは)
- 現代の食生活で、化学調味料の摂取をゼロにすることは、自給自足に近い生活をしないかぎり無理でしょう、外食も出来ませんしね、化学調味料が入ってない表示であっても、実は入っていたりすることもあるようです、要するに化学調味料の使い方と取り過ぎが問題なのです
- 家庭では昆布、かつお節、煮干しでだしをとり、冷蔵庫の常備材としておくことをお薦めします、我が家では切らしたことはありません、味噌汁、お吸い物、めん類のだし、各種料理に使うのですぐに無くなります、化学調味料はやむを得ない時にだけ補助的に使い、使い過ぎないよう気をつけています
- 化学調味料の代わりに、化学調味料と食塩の無添加のかつおだし、こんぶだし、いりこだし(粉末)もあるので、使うと良いでしょう (この場合でもゼロでない可能性があります)
- 健康指向の食材、自然食品や生協などを利用することも良いでしょう
- 大衆中華料理店では、ラーメンの汁は残す(塩分の取り過ぎのみでなく)、油と化学調味料を大量に使う可能性のある中華料理の外食は程々にする、化学調味料を一切使用しないという中華料理店もありますが、油も考えているかどうか?
健康にやさしい油の選び方 も参考にしてください
- コンビニ、ファーストフード、お惣菜、シングル食品などの食事や、カップ麺などを毎日食べるのは化学調味料の摂りすぎにつながります
- 大衆食堂では味噌汁は極力飲まない、うどんやそばのだし汁も極力残すとよいでしょう
- 現代の食生活では化学調味料を知らず知らずのうちに摂り過ぎていますので、少なくとも家庭での毎日の食事作りでは、だしをとらずに白い化学調味料やだしの素をパッパと使う習慣はやめることをお薦めします、あまり神経質になることもないと思いますが、大いに気にするくらいがよいのです。
ページトップへ
ホームページ(表紙ヘ)