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続折々の記 2021④
【心に浮かぶよしなしごと】
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【 09 】05/25
総務省幹部らと会食54件 外資規制違反を報告「認定」
総務省接待、伝票は「S社」 東北新社、隠語で会食記録
多難な信頼回復 新たな接待判明 公務員と会食、禁止表明
がん細胞をウイルス攻撃、治療薬承認へ
昨日の新聞に載っている記事は次の通りです。
2021/05/25
外資規制違反を報告「認定」 東北新社調査委
総務省幹部らを繰り返し接待していた放送関連会社「東北新社」が24日、特別調査委員会(委員長・井上真一郎弁護士)の調査報告書を発表した。 総務省幹部ら13人と計54件の会食があり、東北新社側が費用を支出したと認定。 同社の外資規制違反については2017年8月初めに同社が把握した当時、総務省側に報告していたと認定するのが「合理的だ」とした。 ▼3面=伝票は「S社」、9面=多難な信頼回復
認定した会食には、総務省が2月に公表した調査では判明していなかった会食も20件含まれる。 一連の会食について調査委は「コンプライアンス上重大な問題がある」と結論づけた。
調査委が注目したのが、同社の木田由紀夫執行役員(当時)と、当時の衛星・地域放送課長の17年8月28日の会食。 この課長には後日、プロ野球の観戦チケットも提供していたと認定した。 この課長は井幡晃三・現放送政策課長。
この時期は、東北新社が放送法の外資規制違反に気づいた直後にあたる。 報告書では17年8月4日に同社内で違反が判明し、同月9日までに総務省情報流通行政局総務課長に報告したほか、同月18日に衛星・地域放送課長を訪ね、違反状態を前提に報告・相談をしたと認めるのが合理的とした。
違反発覚後の会食について、調査委は「不当な働きかけを行う強い必要性、動機があったとは認められない」としつつ、「不当な働きかけの対価と評価される可能性があることに思い至らなかった点は軽率」と断じた。
外資規制違反について、井幡氏を含む総務省の当時の担当幹部らは「報告された記憶はない」などと説明してきた。 この「食い違い」も含め、総務省は、外部弁護士らによる検証委員会で、一連の接待が行政に与えた影響を調べている。 検証委は来月上旬にも一定の判断を示す見通しだ。
■報告書のポイント
・2015年11月以降、総務省幹部らに対する計54件の接待会食を確認
・不当な働きかけは確認できないが、昼に得られない情報取得が目的との疑念を持たれる可能性は否定できない
・菅義偉首相の長男の同席は、会食の会話を盛り上げるためで、何らかの働きかけの意図は認められない
・2017年8月に社内で外資規制違反が発覚した後、執行役員(当時)らが総務省の衛星・地域放送課長(同)らに報告・相談したと認定するのが合理的。 この課長とは直後に会食し、後日プロ野球チケットも提供
・直後の会食で近接する手続きが話題になったと考えるのが自然。 コンプライアンス上重大な問題
▼3面=伝票は「S社」 2021/05/25
東北新社、隠語で会食記録
東北新社が24日に公表した特別調査委員会の調査報告書で、2017年8月に同社が把握した外資規制違反について、総務省側に報告されていた可能性が強まった。問題のさなかに行われた新たな接待や野球チケットの提供まで明らかになり、放送行政への影響はなかったのか、疑念は深まるばかりだ。▼1面参照
S社――。東北新社の経理伝票には、総務省を指す隠語を使い、幹部らとの会食を記録していた。東北新社側も国家公務員倫理法に反しうる「後ろめたさ」を意識しつつ、接待をしていた様子が浮かび上がる。
その東北新社で外資規制違反が発覚したのは17年8月4日。「かなり深刻な事態になるかも」とのメールが総務部内で流れ始めたという。
当時の関係者への聞き取りや社内メールの確認などをもとにした調査委の報告書には、当時の様子とともに、総務省側への報告を示唆する事実が記されている。
8月15日には、当時の社長らに違反が報告され、衛星放送事業を子会社に承継し、違反状態を解消する方策も決定。このときの会議資料には、この事業承継について「(総務省の)情報流通行政局総務課長に確認済み」と記されていた。これが当時の総務課長に違反を伝えたと調査委が考えた根拠の一つだ。報告したとされる木田由紀夫執行役員(当時)も外資規制への抵触を口頭で伝えたと説明しているという。
8月18日に木田氏が総務省の衛星・地域放送課長を訪ねたことは、社内メールや交通費の精算履歴から確認。総務省の問題認識を尋ねる顧問弁護士に対し、総務部担当者が「総務省に問題ない旨確認を得ている」と返信するメールも見つかった。
これらを踏まえ、調査委は、違反状態を含む報告や相談を総務課長と衛星・地域放送課長にしていたと大筋で認めた。
放送法では、外資規制違反があれば、総務相が認定を取り消さなければならないと定めている。総務省の当時の担当幹部はこれまで、報告を受けた覚えはないと否定してきた。総務省は24日、朝日新聞の取材に「正確かつ徹底的に調査を進めていく」と回答した。違反を当時も知っていたとすれば、重大な問題に発展する可能性がある。
■担当幹部に野球チケットも
報告書では、この問題のさなか、当時の担当幹部たちが接待を受けていたことも明らかになった。
「よそさまの報告書について答える立場にない」
野球チケットを渡されたと指摘された当時の衛星・地域放送課長の井幡晃三氏(現放送政策課長)は朝日新聞の取材にそう答え、新たな接待の有無には触れなかった。
報告書によると、木田氏と井幡氏が会食したのは17年8月28日。井幡氏の衛星・地域放送課長への「就任祝い」目的だった。プロ野球の話題で盛り上がり、後日、東京ドームの観戦チケットが提供された。9月27日には、課長の上司にあたる当時の官房審議官も接待された。どちらも外資規制違反から抜け出すための事業承継が進むさなかのことだ――。
これまでの接待は会食が中心で、「意見交換」との建前が成り立った。だが、仕事とは無関係とみられる野球チケットの供与には総務省の同僚からも「言い逃れが難しくショックが大きい」との言葉が漏れる。
2月に処分を受けた総務省幹部らは、違法な会食は他にないと説明していたはずだった。だが、衛星放送の担当幹部らへの接待が新たに判明し、「相手が利害関係者とは思わなかった」との当初の釈明への疑念もさらに強まる。
総務省では現職幹部144人を対象に、接待の有無を洗い出す調査が続いている。6月上旬にも公表する方針だが、追加処分が出される可能性は強まった。(山本知弘、藤田知也)
■東北新社と総務省をめぐる主な出来事
<2016年10月> 東北新社がBS4K放送の認定申請
<17年1月24日> 総務省が東北新社を放送事業者に認定
<8月4日> 東北新社内で外資規制違反が判明
<★18日> 木田由紀夫執行役員(当時)らが総務省の井幡晃三衛星・地域放送課長(同)に違反を前提に報告・相談か
<★28日> 木田氏らが井幡課長と会食。プロ野球の話で盛り上がり、後日、東北新社の持つ野球チケットを提供
<9月11日> 東北新社が1日設立の子会社へのBS4K放送の事業承継を総務省に申請
<10月14日> 総務省の認可を受け、東北新社がBS4K放送事業を子会社に継承。違法状態を解消
<18年12月> 子会社によるBS4K放送を開始
<21年2月初旬> 週刊文春の報道で東北新社による総務省幹部らへの接待が発覚
<24日> 総務省が幹部ら11人を処分
<3月12日> 東北新社が申請時点から外資規制違反の状態だったとして、総務省が子会社の認定を取り消すと発表
<4月30日> 子会社のBS4K放送が終了
<5月24日> 東北新社が同社の特別調査委員会の調査結果を公表
(★の項目は東北新社の特別調査委の調査結果による)
▼9面=多難な信頼回復 2021/05/25
東北新社、公務員と会食、禁止表明
放送関連会社「東北新社」は24日、一連の接待問題に関する特別調査委員会の調査報告書を受け、再発防止策に取り組む考えを示した。報告書では、総務省への新たな接待も明らかになり、信頼回復は容易ではない。衛星放送をめぐる環境も厳しく、多難な再出発となりそうだ。▼1面参照
東北新社は同日公表した「対応方針」で、公務員との会食を原則禁止とすると表明。社内に「コンプライアンス再構築委員会」を設け、外部の専門家を社外取締役に招く方針を示し、中島信也社長ら取締役の減給処分も公表した。
東北新社は2月26日に二宮清隆社長が引責辞任。接待した執行役員らは役職を解任・辞任し、菅義偉首相の長男も懲戒処分を受けた。今後は中島社長率いる新体制のもとで、信頼回復と事業の立て直しを急ぐが、課題は山積している。
東北新社は菅首相と同郷の秋田出身の創業者が1961年に創立。映画やテレビ、CMなどの制作で知られる老舗の映像制作会社だ。80年代から放送事業に参入し、一昨年亡くなった創業者は業界の重鎮として知られた存在だった。ただ、多チャンネル化とデジタル化が進むなか、多くの衛星チャンネルは視聴世帯の獲得に苦戦。ここ数年は「ネットフリックス」などの動画配信サービスにも押され、業績は厳しい。
2021年3月期の売上高は前年比11・7%減の528億円。純利益は8億円で前年から半減した。外資規制違反で認定が取り消されたBS放送「ザ・シネマ4K」を4月末に停止し、5億円超の損失を計上した影響が大きい。
4Kの衛星放送は総務省の旗振りで18年12月に始まったが、民放各局にとっては経営の重しだ。設備投資やコンテンツ調達の負担が重いうえ、受信可能な世帯が少ないためだ。東北新社にしても「国の施策に協力するという判断」(調査報告書)だったが、同社の4K衛星放送は会員が700世帯にも満たなかった。
厳しい懐事情も踏まえ、総務省の有識者会議「衛星放送の未来像に関するワーキンググループ」は昨年12月、衛星利用料金の負担低減を進めるべきだとする報告書案をまとめた。だが、衛星放送の担当課長を含む多くの出席幹部が東北新社から接待を受けていたこともあり、報告書の正式決定は遅れている。
2021/05/25
1年後生存率、6倍
【説明】がんウイルス療法のしくみのイメージ
ウイルスを使ってがん細胞を破壊する治療薬が、承認される見通しになった。厚生労働省の専門部会が24日、製造販売の承認を了承した。臨床試験(治験)では標準治療と比べて1年後の生存率が6倍になるなどの延命効果が示された。がんに対するウイルス治療薬が承認されるのは国内で初めて。▼3面=遺伝子改変で「味方」
審査期間が通常より短い国の制度が適用された。今後、薬を患者に使ったうえで7年間データを集め、有効性と安全性を改めて確認する条件がついた。
この薬は、第一三共などが開発したがん治療薬「デリタクト注」。対象となる病気は脳腫瘍(しゅよう)の一種「悪性神経膠腫(こうしゅ)」で、脳内の細胞ががん化することで起きる。中でも代表的な「膠芽腫(こうがしゅ)」は国内に推計2500人程度の患者がいる。脳腫瘍の中でも進行が早い。
脳の腫瘍内に、特殊なウイルスを一定間隔で最大6回注入する。東京大医科学研究所の藤堂具紀(ともき)教授がヘルペスウイルスの三つの遺伝子を改変し、体内に注入したときにウイルスががん細胞内のみで増殖し、がん細胞を攻撃するように設計した。正常な細胞ではウイルスは増えない。
治験では抗がん剤などの標準治療後に効果が十分でなかったり、再発したりした膠芽腫の患者が対象になった。13人の中間解析結果では1年後の生存率が92・3%で、単純比較はできないが一般的な標準治療後の生存率15%よりも大幅に高かった。19人でみた生存期間の中央値は約20カ月だった。1施設だけの結果で生存率を評価するのは難しかったが、腫瘍の縮小効果の分析などを含め有効性があると判断された。(市野塊)
▼3面=遺伝子改変で「味方」 2021/05/25
ウイルス利用、がん治療薬承認
悪性度の高い脳腫瘍(しゅよう)に対する国産初のがんウイルス治療薬が承認されることになった。新型コロナウイルスの影響でこの1年ですっかり悪役になった「ウイルス」だが、ウイルスの遺伝子を改変して「味方」にすれば、がん治療に利用できる。次世代のがん治療法として世界的に注目されている。▼1面参照
がん細胞とウイルスは「体内の免疫をかいくぐって、どんどん増えたい」という性質が一致している。ウイルスにとって、がん細胞の中は「何もしなくても勝手に増やしてくれる」という最高の環境だ。お互いの特徴をいかした治療が、がんウイルス療法と言える。
ウイルスをがん細胞の中で増やしてがん細胞を壊し、次のがん細胞に感染して同じことを繰り返させる。さらに、ウイルスが壊したがん細胞のかけらを自分の免疫が認識すれば、がん細胞に対する全身の免疫が高まる。転移する割合も減る可能性がある。
ウイルスは正常な細胞にも感染するため、がん細胞のみで増えさせるようにすることが課題だった。この点で治療に大きな進歩をもたらしたのが、遺伝子組み換え技術の発展だ。
がんウイルス治療に詳しい鳥取大の中村貴史准教授(遺伝子治療学)は「世界的にこの治療でかなりの数の治験が進んでいるが、いずれも遺伝子組み換え技術によって正常な細胞でのウイルスの増殖を制御できている」と話す。
理論上はさまざまな臓器のがんに応用可能だ。将来的に、手術や抗がん剤、放射線治療の前に、ウイルス療法でがんを小さくしたり、免疫を高めて治療効果を上げたりすることも考えられる。中村さんは「欧米では非常に激しく競争されている分野で、確立すれば治療の選択肢が増える。今回の了承は起爆剤となり、大きな革新となるだろう」と話す。(後藤一也、瀬川茂子)