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折々の記 2014 ⑨
【心に浮かぶよしなしごと】

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  11 25 教育2014 格差を考える:1~   
  11 29 選挙について   
  11 30 著作権   

 11 25 (火) 教育2014 格差を考える:1~   

連載記事

 (教育2014 格差を考える:1) 揺らぐ「学べば脱・貧困」
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11473472.html
 (教育2014 格差を考える:2)  男女で、地域で、進学左右
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11474713.html?iref=reca
 (教育2014 格差を考える:3)  「より早く」駆り立てる不安
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11476703.html

 11 29 (土) 選挙について   

 イ 自民へ企業献金42%増 大手、経済政策を支持 13年
     2014年11月29日
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11480753.html
     経団連の政治献金が復活(http://blogos.com/article/94183/)を先に開くこと
 ロ (時時刻刻)献金額、恩恵と連動 潤う証券・車↑、低迷の小売り↓ 自民へ42%増
     2014年11月29日
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11480649.html
 ハ テーマパーク中国進出 キティ・ディズニー・ロッテ… 外資大手が続々計画
     2014年11月29日
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11480664.html
     経済活動は21世紀にはグローバル化し財政政策の変更を示唆している
 ニ 株式時価、中国2位に 日本、円安響き抜かれる
     2014年11月29日
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11480724.html
     アベノミクスは時代遅れの政策、経済の方向は軌道修正を要する時代になった
 ホ (社説)衆院選 TVへ要望 政権党が言うことか
     2014年11月29日
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11480610.html
 ト (ザ・コラム)総理の解散 祖父の眠れぬ夜、真意は 曽我豪
     2014年11月29日
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11480605.html?ref=pcviewpage
     祖父の轍をふむ愚人、わがまま集団孤立の考え方を見よ
 チ (社説)地球温暖化 日本も目標設定急ごう
     2014年11月29日
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11480607.html?ref=pcviewpage
     世界はグローバルな考え方を目指すべきです
 リ (2014衆院選)税に思想はあるか 諸富徹さん
     2014年11月29日
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11480602.html
     「赤信号みんなでわたれば怖くない」寄らば大樹の思考でいると奈落の底に落ちる



新聞に目を通していると、今のままの選挙の趨勢を続けることは、日本にとって人を大事にする民主主義の核心部分についての認識を改めなくてはいけない思いが強くなります。

所得格差はますます大きくなるのに、それの対策が見えてこない。

それにもう一つ。 戦争を拒否する感情はどこの国にしてもあるのに、国家として拒否している国が見当たらない。 日本の憲法が戦争放棄を規定しているが、みんながあれよあれよと言っているうちに武器を作って売る国になってしまっている。 さらに、集団的自衛権の解釈を利用して戦争をできる国にしてしまいました。


この責任はわれわれすべての大人がだらしなかったからでした。

「人を殺してはいけない」 誰がなんと言おうとも、この根底の覚悟は堅持しなくてはならない。

道端の雑草にしてもほかの雑草が生きていくのを妨げるようなことはしません。 家の回りを飛び交う小鳥にしても自分以外の小鳥を殺そうとはしません。 まして自分の子をいとしみ育てる母親は自分の子を殺そうとはしません。

「人を殺してはなりません」 このことはよその国の人を殺してもならない、ということにほかなりません。

人を殺してもいいという考え方は、自分の所属集団を大事にし、その他の集団を大事にしない人の得手勝手な考え方にほかなりません。

こんなことはあってはならないのです。

だけれども、今度の選挙の動きや発言を見たり聞いたりしていると、この原則から逸脱している考え方があちこちにあります。

筋が通らないのです。

いやな選挙です。

『税に思想はあるか』京都大学の諸富徹さんの記事を丁寧に読んでみると、現代社会の財政政策で大事なことを指摘し警告を出しているのです。

戦争放棄の歴史は第一次大戦後の不戦条約に端を発しています。この条約批准の精神はいつ誰がなし崩しにしたのでしょうか。

野呂栄太郎の「死の商人」の検証を政治家はしたのでしょうか。

フランス革命前の大蔵大臣チュルゴーの見解をフランスの政治家たちは実行しようとしたでしょうか。

私の上げた上の三つの疑問の成否は、きわまるところ、金銭欲望を奉じたか否かにかかっていたのです。

今回の選挙結果は既成与党の勝利に終わるでしょうが、獅子身中の虫下しはこれから始めなくてはなりません。



 ヌ 崩れゆく日本経済
     2014年11月24日 田中 宇
     http://tanakanews.com/141124japan.php

 日本銀行が10月末から拡大した量的緩和策(QE。円を増刷し、新規発行の日本国債を全量買い支える策)について、FT紙が「無謀だ」「(円や日本国債の信用が失墜し)過大な円安になり、輸入物価上昇から目標値を大きく超えるインフレとなる悪循環に陥り、国債金利が高騰して財政破綻につながりかねない」と警告する論文を掲載した。 (Japan's stimulus plan is not courageous but foolhardy)

 この記事を書いたのは、カナダや英国、BIS(国際決済銀行)などの中央銀行やOECDの幹部を歴任したカナダ人の経済学者ウィリアム・ホワイトだ。彼は、リーマン危機を予測・警告した人としても知られ、通貨の多極化を進めるG20で独メルケル首相の顧問もつとめている。 (William White - Wikipedia) (William White Website)

 彼によると、日銀の勘定(バランスシート)はQE拡大によって急速に肥大化し、いずれ健全性を示す勘定総額の自国GDP比が、世界の他の諸国の中央銀行をはるかにしのぐ大きさ(不健全さ)になる。日本政府はQEが景気回復になると喧伝するが、QEは景気回復に役立たない。日本の不景気の元凶は少子高齢化(就労する年齢層の減少)だと彼は言う。日本の消費者物価の低下は15年間に4%以下なので、大したデフレでない。(QEが必要な理由とされる)デフレスパイラルが悪化する兆候もない。QEの目標である企業の増産・投資増・輸出増は、いずれも実現していない。中小企業は(もともと輸出産業でなく)QEによる円安で原料高騰の悪影響だけ受けている。日本人は賃金が減り続け(日本経済の牽引役である)消費が減っている。QEは目的を達成できず、不必要な政策だ。

 ホワイトによると、日銀のQEは円安を加速し、輸入価格の高騰が突然のひどいインフレにつながり、円安とインフレが悪循環して止められなくなる恐れがある。インフレで(常にインフレ率を上回る必要がある)長期国債金利が高騰し、政府は赤字増による景気対策ができなくなり、国債の利払いが増加し、戦後の先進国として史上初の財政破綻に陥る。円安がひどくなり、日本政府は外貨準備(多くが米国債として保有)を取り崩して円を防衛せざるを得なくなり、日本政府の売りで米国債金利が上昇する(米政府の財政破綻や債券市場崩壊につながる)。この手の警告は、かなり前から分析者の間から出ていたが「陰謀論者」「金地金おたく」のたわごとと無視されていた。 (米国と心中したい日本のQE拡大) (逆説のアベノミクス)

 しかし今回は、現代の中央銀行制度を創設したアングロサクソンの中央銀行界の要人であるホワイトが、この警告を発している。日本は、この警告を重く受け止めるべきだ。黒田や安倍や、その提灯持ちである「金融専門家」やマスコ(")ミの方が間違っている。最近はグリーンスパンまでが、陰謀論者や金地金おたくと同じことを言い出している。 (陰謀論者になったグリーンスパン)

 今のところ、日本政府の閣僚や幹部の口先介入で円安傾向が止まっている。しかし今後、政府の口先介入で円安を止められなく恐れがあり、そうなると円安・輸入価格上昇・インフレの悪循環の懸念がぐんと増す。為替は1ドル118円で止まったかに見えるが、今年中に120円を割って円安が進むとの予測もある。 (Yen weakness challenges other central banks)

 FTの別の記事は、QEに代表されるアベノミクスが日本の貧富格差をひどくしていると書いている。富の再配分がうまくいく「一億総中産階級」の均一社会が戦後の日本の良さで、それが日本の権力機構である官僚の功績だった。経済成長が鈍化して成熟社会になり、中産階級の消費が経済の主力になった後も、あの均一状態を維持できていたら、日本経済の成長は今よりましだったはずだ。しかし気がつけば、そんな良好な均一性が失われて久しい。日本が戦後の「一億総中産階級」の古き良き状況に戻ることは、決してない。醜悪な格差社会が拡大するばかりだ。多くの日本人が、まだ日本が均一社会だと思っているかもしれないが、それはもはや(報じられるだけの)幻影だ。この日本の崩壊に対し、草の根から転換を引き起こそうとする動きはいくばくかあるが、上からの動きは全くない。 (Abenomics fuels Japanese debate on widening inequality)

 崩壊後の日本を生き続けねばならない若い人は気の毒だ。文句を言わない草食な若い世代に比べ、団塊世代以上の中高年は文句ばかり言う人が多いが、彼らは古き良き均一社会を謳歌できた幸せな人々だ。

「ものづくり(工業生産)」が日本経済を支えているというのは(意図的に煽られた)幻想だ。日本経済の6割は、消費で成り立っている。米国は7割だ。貧富格差が拡大して中産階級が崩壊すると、消費主導の先進国経済は崩壊する。日本はついに不況に再突入したが、この不況は今夏の終わりから少しずつ顕在化していた。不況の引き金を引いたのは、今年4月の消費税の増税だ。消費増税が不況の原因とわかっている以上、来年また消費税を上げたら、不況がさらに悪化することが確実だ。 (Japan Is Dying And We Still Don't Get It?!) (Japan slides into recession, prompting talk of snap election)

 財務省が日銀に送り込んだ黒田総裁は、景気回復のためにQEを拡大したと豪語する一方で、安倍首相に対し、約束どおり消費税を上げろと要求した。消費増税は、財政を握る財務省が万難を排して進めたいことだから、財務省出身の黒田が、財務省(と外務省)の傀儡として首相をやっている安倍を脅したのだろう。しかし、消費減で税収が減って最終的に困るのは財務省だ。黒田の盟友だった経済学者の河合正弘は、今や消費増税に反対している。官僚機構は、自分たちの権力の後ろ盾である米国の覇権がゆらぐ中、近視眼的になっている。世界的にみて、独裁末期によくある症状だ(日本の官僚独裁の末期状態は、米国の覇権崩壊をはさんで今後何十年も続くかもしれないが)。 (Bank Of Japan Warns Abe Over "Fiscal Responsibility" While Monetizing All Its Debt) (Kuroda Ally Flags Warning on Delaying Sales-Tax Increase)

 中産階級の家計を助けるため、財界が主導して大企業の従業員の賃上げを進める動きがある。しかし不況なのに日銀が通貨を過剰発行し、そのうえ賃金を引き上げると、円安による物価高騰と相まって、インフレが短期間で急上昇し、冒頭で紹介したFTの警告が具現化する可能性が強まる。日本経済はかなり行き詰まった状態にある。 (Japan's Last Stand - Portent Of Keynesian Collapse)

 今回の日本の不況は景気循環的なものでなく、不可逆的な悪化だ。不況の基底にあるのは、08年のリーマン倒産以来の債券金融システムの不可逆的崩壊だ。リーマン危機後、日本だけでなく、米欧日先進国を中心に、世界経済の全体が、構造的な経済危機の中にいる。この30年間の米国主導の先進国経済の拡大を支えてきた債券市場の崩壊が、隠されたり延命したりせず露呈すると、今よりずっとひどい状況になる。QEや財政出動、統計指標のごまかしなどで、経済が少しずつ好転しているかのように見せているが、その表層的な見せかけの下には、リーマン倒産後、延命隠匿されているだけの危機が存在している。 (揺らぐ経済指標の信頼性) (米雇用統計の粉飾) (日本経済を自滅にみちびく対米従属)

 日本の不況再突入は、米国覇権の危機を受けた官僚機構の近視眼的な動き(QEや消費増税、財政赤字拡大)によって、表層的な見せかけの維持に失敗した結果だ。事態は今後さらに悪くなるだろう。



 ル ますます好戦的になる米政界
     2014年11月24日 田中 宇
     http://tanakanews.com/141127hawk.htm

 2016年の米大統領選挙に出馬すべく、民主党のヒラリー・クリントン(元国務長官、元上院議員、元大統領夫人)が動いている。ヒラリー陣営は、911後の大統領候補の中で最も好戦的な姿勢をとっている。米議会は、10月の中間選挙で上下院とも共和党が多数派を取り、好戦的な議員たちが席巻している。共和党に負けないよう、ヒラリーは好戦的な政策を以前より明確に強調している。ヒラリーは昨年までオバマ政権で国務長官をつとめ、最も好戦的な閣僚の一人だった。 (Hillary Clinton Joins Republicans in Call for War)

 ヒラリーは大統領選挙に勝つために、できるだけ好戦的にならねばらないと考えているようだ。彼女は今夏、同じ民主党のオバマ大統領を、敵に宥和しすぎる(好戦性が足りない)と批判し始めた。彼女は国務長官時代、シリア反政府勢力に大々的に武器支援してアサド政権を倒すべきだと主張していたが、オバマがそれを拒否しているうちに、アサド政権の政府軍が反政府勢力を掃討し、最近では反政府勢力がISISに合流して反米に転じた。自分の主張通り反政府派に武器支援していたら、こんな失敗にならなかったと、ヒラリーはオバマを批判した。彼女は親イスラエルでもあるので中東和平問題でパレスチナ人だけを非難するし、イランに核兵器開発の濡れ衣を着せて非難するのも得意だ。 (Hillary Clinton takes swipe at Obama over Syria)

 ヒラリーの政策参謀の多くは、夫のビル・クリントン政権で国際戦略を練った人々だ。彼らは「ビーコン戦略社(Beacon Strategies)」という会社に集まり、選挙戦略を練っている。その中のひとりであるレオン・パネッタは、オバマ政権でCIA長官をつとめ、当時はオバマが決めたイラクからの米軍総撤退に賛成する穏健派だった。しかし今では、ヒラリーの参謀として「オバマはイラクから総撤退せず1万人ぐらい米兵を残すべきだった」と、昔と正反対のことを言っている。 (Hillary Clinton prepares to launch the most formidable hawkish presidential campaign in a generation)

 共和党から大統領選に出馬しそうなランド・ポール上院議員も、無理矢理に好戦的な姿勢をとっている。彼は、連邦政府の肥大化や覇権、国際介入を嫌い、他国に介入しない(孤立主義の)小さな政府を希求し、草の根運動から広範に支援されたリバタリアンのロン・ポール元下院議員の息子だ。軍事介入を嫌うリバタリアンは右からの反戦運動で、米国を中東の戦争に引っぱり込むイスラエルにも批判的だ。ランドも上院議員になったころは、海外の米軍基地の縮小や、米政府による対外支援の縮小を提唱していた。「イスラエルへの経済支援を減らすべき」とも言っていた。 (Rand Paul tries to peel away isolationist label)

 しかし彼は、大統領をめざすようになった後「米国は世界に関与(介入)し続けるべきだ。やるに値する戦争は遂行すべきだ」とタカ派的な発言に転じた。イスラエルを支持する発言も繰り返し、対外支援を減らすリバタリアンの姿勢を残すふりをして「イスラエルを攻撃するパレスチナに対する支援を減らすべきだ」と表明し、イスラエル支援の法案も提出して、草の根の活動家たちを失望させている。父のロンポールはイラン核問題が米国の濡れ衣だと喝破しているが、息子のランドは大統領を狙うようになった後「イランは核武装しようとしている」と発言し、濡れ衣をかける好戦派の姿勢に転じた。 (Rand Paul, Israeli Slave, Proposes Cutting Aid to Palestine) (Rand Paul Plays the Israel Card) (Unlike Obama, Rand Paul and Congress have Israel's back)

 ポールは最近、ISISと戦うためにイラクに米地上軍を再侵攻する法案を議会に提出している。米憲法では議会が戦争開始の権限を持つが、議会は真珠湾攻撃後の第二次大戦開戦以来、戦争開始の権限を行使しておらず、常に大統領が開戦してきた。リバタリアンはもともと戦争反対の意味で「大統領が勝手に戦争せぬよう、議会が開戦権限を取り戻すべきだ」と主張してきた。ランドはそれを逆手に取り「議会がISISとの地上軍戦争を開始すべきだ」と言って、好戦的な法案を提出した。 (Rand Paul Demands Declaration of War Against ISIS) (Rand Paul Suddenly Goes Very Silent On U.S. Airstrikes In Iraq)

 ランドは、今年初めに米国のタカ派がウクライナの政権転覆を支援した時に批判していたが、その後、オバマがロシアに融和的すぎると批判してタカ派に転じている。 (Rand Paul's Wild Flip-Flopping On Russia And Ukraine)

 ランドは今夏、ヒラリーを好戦派と非難したが、ランド自身、ヒラリーに劣らず好戦派になっている。ここから読みとれることは、米大統領になりたければ、地上軍侵攻をやりたがり、軍産複合体にすりより、イスラエルを偏愛してパレスチナやイランを濡れ衣的に非難し、ロシアを敵視せねばならないということだ。 (Rand Paul: Hillary Clinton Is A 'War Hawk')

 オバマ自身、かつて軍事より外交を好む穏健派を自称していたが、最近はタカ派に転じている。彼は、駐留軍を一部残すべきだという軍(産複合体)の主張を無視してイラクとアフガニスタンから総撤退した。しかしオバマは中間選挙後、共和党穏健派出身で、イラクとアフガンからの米軍撤退や、防衛費の縮小を担当したヘーゲル国防長官を辞任させた(オバマは超党派的姿勢の象徴としてヘーゲルを共和党から迎え入れていた)。 (A Wartime President: Obama Moves More Hawkish)

 後任に誰がなるにせよ、次の国防長官はヘーゲルよりも好戦的になり、米国の防衛予算もこれまでの減少傾向から増加に転じるだろうと英ガーディアン紙が書いている。 (Obama's new leader at the Pentagon will mean more war - not less)

 オバマはこれまで、アフガン駐留米軍の撤退を続けてきたが、最近政策を転換し、来年駐留米軍を予定どおり減らさず、むしろ駐留米軍の戦闘の範囲を拡大すると秘密裏に決めたと報じられている。 (In a Shift, Obama Extends U.S. Role in Afghan Combat)

 なぜ、911以来の米国の好戦策がイラクやアフガンで失敗したことが確定した今になって、オバマや両党の大統領候補が競うように好戦性を強め、米議会でもマケイン上院議員のようなゴリゴリの好戦派が席巻する事態が起きるのだろうか。

「中間選挙で、米国民がオバマの(穏健的、厭戦的な)政策に愛想を尽かしたことが明確になったからだ」という説明がマスコミなどでなされるが、そんなわけはない。米国民の大半は生活苦がひどくなり、中産階級が貧困層に転落する経済難だ。米国民の大半が政府の防衛費拡大、戦争拡大を支持することはない。米国民が戦争を支持しているという世論調査結果は、マスコミなど調査機関による歪曲が入っていると考えられる。米国では、選挙で不正が行われている疑いも以前からある。米国の政府やマスコミは、景況感や雇用統計、為替や株価の相場を操作する傾向が増している。世論調査や選挙で不正が行われていても不思議でない。 (アメリカで大規模な選挙不正が行われている?) (揺らぐ経済指標の信頼性)

 歴史的に、マスコミは軍産複合体の傘下にある。戦争になると、マスコミは政府の戦争遂行者つまり軍産の言うことを聞かねばならない。第二次大戦後、40年間の冷戦時代や、その後の911以来の14年間、米国はずっと戦争状態だ。世論の歪曲は、軍産複合体が好む好戦派の政治家を有利にする。権力を持ちたい政治家ほど好戦的に振る舞い、軍産にすり寄る。ヒラリーやランドポールは、軍産が采配する選挙不正の構造を知りつつ、その体制下で当選を狙っているのでないか。

 軍産傘下の好戦派が米政界で優勢なのは、今に始まったことでない。冷戦時代も、911後もそうだった。911後の好戦策の失敗が確定した今になって、好戦派が再び優勢になる理由は何か。私が提示できるのは「隠れ多極主義が、好戦策を過剰にやって失敗することで世界の覇権体制を多極化できると考えて軍産傘下の好戦派と合流し、米政界の全体が好戦派になったから」という説明だ。

 これまで何度か書いたが、第二次大戦で覇権国となった米国には、覇権運営のやり方をめぐって2つの系統がある。一つは、国連の安保理常任理事国の5大国制度を作った多極主義で、南北米州は米国、欧州は英仏(独)、ユーラシアはロシア(ソ連)、東アジアは中国(日本)といったように、それぞれの地域の大国が自分の地域を影響圏として持ち、大国間の談合で世界を安定化する体制だ。国連を作ったロックフェラー家などが多極主義を推進してきた。

 もう一つは米単独覇権主義で、米国が欧州を傘下に入れ、ソ連や中国を敵として恒久対立する冷戦構造がその具現化だった。戦後の国際政治体制は当初、多極主義で設計されたが、その後の冷戦開始でクーデター的(赤狩り、容共者たたき)に単独覇権主義に取って代わられた。冷戦を起こして単独覇権主義を推進したのは、軍産複合体(好戦派)と英国だった。

 敵を必要とする単独覇権体制は、敵に仕立てられた地域(中露や途上諸国など)の経済発展を阻害するが、多極型体制にはそれがなく、世界中を経済発展させる利点がある。 (隠れ多極主義の歴史)

 多極主義は潰えたかに見えたが、1972年の米中融和で復活し、1989年の冷戦終結につながった。多極主義者は好戦派のふりをして政権内に入り込み、過剰な好戦策をやってベトナム戦争を失敗に陥らせ、国内外で左派リベラルの反戦運動が激化するよう仕向けて軍産複合体を窮地に追い込み、ニクソンとキッシンジャー(隠れ多極主義者)が中国と和解して冷戦終結への道筋を開いた。負けていた多極主義者は、自分たちの真意を隠して好戦派の中に紛れ込み、好戦策を過激にやって劇的に失敗することで成功した(だから私は彼らを「隠れ多極主義」と呼んでいる)。 (世界多極化:ニクソン戦略の完成)

 冷戦後10年ほど、政治より経済が重要な、例外的な時代が続いたが、911テロ事件という軍産複合体のクーデターを機に、米国はイスラム世界を恒久的な敵に仕立てる「テロ戦争」の体制に入り、単独覇権主義に戻った。しかし早速、隠れ多極主義者が「ネオコン」「タカ派」としてブッシュ政権の上層部に入り込み、彼らは大量破壊兵器の濡れ衣が後でばれる構図を持たせつつ無謀なイラク侵攻を挙行し、軍事と外交の両面で米国の覇権を劇的に浪費させた。 (911事件関連の記事)

 09年から大統領になったオバマは、自滅的に好戦策をやめて外交重視の国際協調策に転換し、イラクとアフガンから米軍を撤退して米国覇権を守ろうとする策を採った。しかし、軍産の側は、アルカイダ系のイスラム過激派勢力を扇動してリビアのカダフィ政権を転覆したり、シリアで内戦を起こしたりして、米軍がリビアやシリアに軍事介入せねばならなくなる状況を作り出した。リビアやシリアの内戦が悪化する中、オバマは両国への本格的な軍事介入(地上軍派兵)を拒否し続けるのが困難になった。そこでオバマが昨夏に採ったのは、シリア問題の解決をロシアに丸投げし、ロシアの監督下でシリア政府が化学兵器を廃棄する多極主義的なシナリオだった。ロシアは最近、シリアのアサド政権を正式に支持する表明を放っている。ロシアの支持を得たので、アサドが転覆される可能性は大幅に減った。 (シリア空爆策の崩壊) (Russia backs Assad in Syria crisis)

 オバマは、イラン核問題についても、イランの濃縮ウランを核燃料化し、兵器としての使用を困難にする工程をロシアが受注し、イランの原子力産業をロシアの傘下に入れることで核問題を解決する多極主義的な策を進めている。イラン核問題の交渉は先日6カ月延長されたが、いずれロシアに任せる形で解決するだろう。オバマは、軍産(好戦派)がシリアのアサドを敵視し、イランに核兵器開発の濡れ衣を着せている構図を受け入れて好戦派に同調しつつ、当然の帰結として事態がうまくいかなくなると、解決策としてロシアに丸投げし、シリアやイランをロシアの傘下に押しやってしまう多極主義をやっている。 (◆イランと和解しそうなオバマ) (プーチンが米国とイランを和解させる?)

 今年6月には、軍産が敵として育てたISISがイラクの大都市モスルを陥落して台頭し、米地上軍がイラクに再介入すべきだとの主張が米政界で増えた。しかしオバマは地上軍の本格侵攻をせず、イランに「ISISとの戦いを拡大してくれるなら核問題を解決してやる」と持ちかけ、イランがイラクを傘下に入れることを容認する多極主義的なやり方で、ISISと戦おうとしている。 (◆敵としてイスラム国を作って戦争する米国)

 軍産(国防総省)は、ISISを中東への恒久軍事駐留の道具(理由)として維持しておきたいので、ISISと本気で戦う気がない。オバマは、自分で直接現場の米軍司令官に命じてISISを本気で潰す空爆を続けている。国防総省の幹部たち(軍産)とオバマとの対立が激化し、ヘーゲル国防長官が辞任に追い込まれた。後任には、元国防次官のミシェル・フルールノアの名前が取り沙汰された。フルールノアは軍事産業とのつながりが深い好戦派で、彼女が国防長官になれば、オバマに対する軍産の圧力が強まりそうだった。しかし下馬評に挙がって数日後、フルールノアは国防長官にならないと表明した。リード上院議員ら他の候補も、国防長官にならないと言っている。 (With Hagel Gone, Does Anyone Really Want to Be Defense Secretary?)

 これが意味するところは、たとえフルールノアが国防長官になっても、彼女や軍産がやりたいように(ISISの温存)はやれず、オバマの命令に従ってISISと本気で戦わねばならず、就任する利得がない、ということだ。ISISを本気で潰す戦いをやるオバマは「好戦的」に見えるが、実のところ逆で、ISISを本気で潰さずのさばらせることが好戦派(軍産)のやりたいことだ。 (◆イスラム国はアルカイダのブランド再編)

 好戦派は今春来のウクライナ危機でロシアへの敵視も強めている。ロシアを敵視し制裁するほど、プーチンは中国との結束を強めて米国の覇権を引き倒そうとする動きを積極化する。中国が外貨備蓄として持っている米国債を売り放つと、米国の覇権は崩壊する。米政界で好戦派が席巻し、米国がロシアや中国を敵視するほど、中露は結束し、ブラジルや南アなども米国に愛想を尽かし、EUを率いるドイツも米国の言うことを聞かなくなり、静かに露中と協調するようになる。 (Merkel offers Russia trade talks olive branch)

 911やイラク戦争のころは、国際的にロシアの影響力は今より少なく、露中の結束もそれほど強くなく、経済面でも中国より米国の方が優勢だった。しかしリーマン危機やオバマのロシア依存の中東政策などを経た今、ロシアの国際政治力と中露結束が強まり、中国は購買力平価でGDPが米国を超えている。米国は、国際政治力が落ち、経済も金融バブル膨張のひどさが顕著になっている。 (◆金融危機を予測するざわめき)

 このように中露と米国の優劣が逆転している中で、米国が以前に増して好戦的になり、中露への敵視を強めると、中露は米国の覇権を崩して多極型の覇権に転換する試みを増強し、今後いずれかの時点でその転換が具現化し、米国で金融危機とドル・米国債の崩壊が起こり、覇権体制の多極化が実現する。これは、米国の多極主義者たちの目標の達成でもある。

 もとから好戦的な軍産(単独覇権主義者)と、好戦策をやることで多極化を達成できる(隠れ)多極主義者という、米国を動かしてきた2つの勢力の両方が、好戦策をやることを望んでいるので、米政界はますます好戦派に席巻されている。イラク占領の失敗以来、一時低調になっていた好戦派が、今また再び台頭してきたのは、中露が結束して強くなり、この局面で米国が中露敵視の好戦策を過激にやれば、中露が本気で米国に対抗し、米国覇権を崩して世界を多極化できるからだろう。米国は今後、単独覇権が崩れるまで好戦的な姿勢をやめないだろう。


 11 30 (日) 著作権   

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