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続折々の記 ⑧
【心に浮かぶよしなしごと】
【 前車の轍・人づくり革命 】 【求メヨ サラバ与エラレン 】 【 ふらつき・臍の緒・戦争放棄 】
【 森友学園・情報の杜(モリ) 】 【 731部隊(戦争の実体!!) 】 【時空は無限】
【 いのちの伝承(生物の本能) 】 【 憲法改正議論 Ⅰ】 【 検索語一覧(3) 】
【 08 】02/08
02/08 時の流れ
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02 08 (木) 憲法改正議論 騒がれる改憲を調べてみる
安倍首相は「改憲は党是」として発言している。 最近の情報によれば、GFQの発案でもなければ、USA政権の発案でもなく、戦争責任を痛切に感じていた天皇の発案であったことが確認され明らかになったいる。 (「折々の記」2018/1/31参照)
もともと安倍首相は、母方の祖父岸信介の憲法改正の想いを引き継いでいた。 現憲法はGHQ押しつけだという考えに立っていた。 この事情は 2017.7.14 の “ ZAKZAK by 夕刊フジ ” の記事(ここをクリック)を読めばわかる。
この “ ZAKZAK by 夕刊フジ ” は【 憲法改正議論 Ⅱ】で展開する
2018/1/31参照 の記事は安倍首相も既に情報として入っていることと思います。 だとすれば、屋上屋を重ねることとなります。 過ちて改めざる、過而不改 論語にある戒めの教えを排することになる。 確証もなく現憲法をGHQの押しつけという間違えを押し通すこととなるのです。
世界中を飛び回る電波に載って、善悪こもごも。正邪ごたごた、その中から役立つ電波を選択収集するのは一朝一石の簡単な仕事ではない。
だが、そうした中で情報を収集している人は、積もり積もって類は友を呼び情報交換も有機的にもなっているようだ。
関係記事
■教えて!憲法 基本のき 1 安倍首相「改憲は党是」(2018/2/6) 2 「最高法規」に反する法律(2018/2/8) 3 「立憲主義」ってなに?(2018/2/9) 4 各章に何が書かれているの?(2018/2/9) 5 国民主権・基本的人権の尊重って?(2018/2/13) 6 9条と自衛隊の関係、どうなっているの?(2018/2/14) 7 憲法は押しつけられたの?(2018/2/16) 8 なぜ改正されなかったの?(2018/2/17) ■憲法を考える 自民改憲草案 ハンガリーで読む:上 「伝統回帰」似通う思想(2016/6/14) ハンガリーで読む:中 国民「まとめあげる」道具に(2016/6/15) ハンガリーで読む:下 「美しい国」立憲主義とは距離(2016/6/16) 「保守」の論理:上 「自民党的な思想」の総括(2016/6/7) 「保守」の論理:中 近代立憲主義と別の憲法観(2016/6/8) 「保守」の論理:下 票にならない、語らない(2016/6/9) 義務:上 権利に条件、「国家の従業員」か(2016/5/25) 義務:中 空気読み黙る「和」、いまも(2016/5/26) 義務:下 国民にも「尊重せよ」、何のため(2016/5/27) 自由:上 責任・公の秩序、自覚求める(2016/5/19) 自由:中 「ほどほど」では、自由でない(2016/5/20) 自由:下 自分の自由、吟味する覚悟も(2016/5/21) 個人と人:上 人権、削られた「獲得の努力」(2016/4/26) 個人と人:中 「利己主義」の抑え役、本来は(2016/4/27) 個人と人:下 「すごい日本人」像、私を縛る(2016/4/28) 家族:上 個人より「家族」、消えた2文字(2016/4/19) 家族:中 「助け合い」実態見ずに期待(2016/4/20) 家族:下 女性の地位向上は個人主義?(2016/4/21) 公の秩序:上 国民向け「道徳」、条文に(2016/4/12) 公の秩序:中 生き方規定、息苦しくないか(2016/4/13) 公の秩序:下 少数派を守るのが立憲主義(2016/4/14) ■憲法を考える/押しつけって何? 1 生い立ち様々、各国で知恵(2016/11/4) 1 64年 調査会、評価踏み込まず(2016/11/4) 2 「自分ではない者」探し、迷走(2016/11/5) 3 「すべて国民」範囲どこまで(2016/11/6) 4 9条改正論にも米の意向(2016/11/9) 5 戦前の家制度、廃止の契機に(2016/11/11) 6 自由の範囲、実践で決まる(2016/11/12) 7 真に押しつけられてるのは(2016/11/15) ■憲法を考える 自衛隊を明記するとは 元内閣法制局長官・阪田雅裕さん(2018/2/7) 国民投票、経験国からの警鐘 首相退陣に追い込まれた英伊を視察、衆院議員団報告書(2018/1/30) 改憲するか、決めるのは国民 法律上の改正手続き…ケンポウさんに聞く(2017/11/28) 「改憲」ってなんのために? 本来はどうあるべきか…ケンポウさんに聞く(2017/10/31) 参議院の性格、位置づけは 都道府県の代表とし「合区」解消する案(2017/9/26) 「9条」をこじらせて 篠田英朗さん、大澤真幸さん(2017/9/12) 釜ケ崎に憲法はあるか 憲法研究者・弁護士、遠藤比呂通さん(2017/8/29) 「全体の奉仕者」どこへ 政治学者・牧原出さん(2017/7/25) 「核保有、否定されず」脈々 政府解釈「必要最小限なら」、学者から疑義(2017/7/25) 自衛隊、変わる受け止め方 「日陰者」から大震災通して「最後のとりで」に(2017/6/27) 自衛隊追記、その先に危うさ 9条改正論 集団的自衛権、新条文で拡大も(2017/5/30) ■この人に聞く 船田元・自民党憲法改正推進本部長代行 発議は早くても19年に(2017/6/15) 高木義明・元文科相 反対一辺倒より積極議論(2017/6/14) 横路孝弘・元衆院議長 70年、今の憲法で支障なし(2017/6/13) 遠山清彦・公明党憲法調査会事務局長 自衛隊明記、簡単ではない(2017/6/9) 下村博文・自民党幹事長代行 改憲向けギアチェンジを(2017/6/8) 石破茂・元防衛相 まず「3分の2」私の趣味じゃない(2017/6/7) 報道、これでいいのか 石橋学さん、林香里さん、山崎拓さん(2017/5/23) 国の財政を律する 藤井裕久さん、片桐直人さん(2017/5/16) ■施行70年 施行70年 条文、柔らかく(2017/5/29) 施行70年 性的少数者、憲法に守られた 「宿泊拒否」違法判断から20年(2017/5/28) 施行70年 獅子舞、かなえた「平等」 参加許されず、差別受けた地区(2017/5/22) 施行70年 子どもの権利は 平湯真人さん、増田ユリヤさん、荒牧重人さん(2017/5/5) 施行70年 憲法は芸術だ 作家・作詞家、なかにし礼さん(2017/5/4) 施行70年 憲法、岐路の70年(2017/5/4) 施行70年 現在地:下 分断、変質する「私たち」(2017/5/4) 施行70年 日本国憲法の運命 東京大学名誉教授・長尾龍一さん(2017/5/3) 施行70年 現在地:中 平和、「非軍事」失い骨抜き(2017/5/3) 施行70年 国民あっての憲法論議(2017/5/3) 施行70年 たどる、制定の原点(2017/5/3) 施行70年 憲法、人生の中に(2017/5/3) ■改憲の足音 1 絵を描く未来、奪った戦争 (2018/1/8) 2 国際貢献、どこまで安全なら (2018/1/9) 3 自衛隊明記案、向かう先は (2018/1/10) 4 自由な暮らし、9条あるから (2018/1/11) 5 議論を敬遠、憲法アレルギー (2018/1/12) 6 平和憲法、沖縄は置き去り (2018/1/13)
2018年2月7日 (教えて!憲法 基本のき:1)
安倍首相「改憲は党是」
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13348062.html
【図版】改憲に対する熱量のイメージ
ことしの政治の最大のテーマは、憲法改正だといわれます。私たちは近い将来、賛成か反対か、改憲案への意思表示を国民投票で迫られることになるかもしれません。そもそも憲法とは何か。何が書いてあるのか。憲法の「基本のき」を全8回でおさらいします。▼3面参照
ここ数年、憲法改正の議論が盛んになった直接のきっかけは、改憲を悲願とする安倍晋三氏が首相になったことだ。
首相は今国会がはじまった1月22日も、「わが党は結党以来、憲法改正を『党是』(政党の根本方針)としてかかげ、長い間、議論を重ねてきた。いよいよ実現するときを迎えている」と決意を語った。
ただし、首相の言い方は、少し大げさだ。
政界で、憲法改正はどのように論じられてきたのだろうか。
1955年に生まれた自民党は、綱領の下にある政綱で「現行憲法の自主的改正」とうたった。これが「党是」といわれるゆえんだが、つねに前面に押し出してきたわけではない。
結党当初、改憲論を主導したのは、鳩山一郎と岸信介の両元首相だ。ともに連合国軍によって公職追放されている間に新憲法が制定されたことを「押し付け」と批判。自らの手で憲法を制定しようと訴えた。
安倍氏の祖父でもある岸氏は、内閣に「憲法調査会」をつくり、自主憲法制定に向けて力を注いだ。だが、60年安保闘争を受けて退陣。後をついだ池田勇人内閣が経済成長優先の路線をとると、自主憲法論は政治の表舞台から消えていった。
70年代に入ると、国会では改憲論自体がタブーになった。9条を中心に多くの国民が憲法を支持し、社会党など護憲政党が一定の勢力を占めていたからだ。
82年には、根っからの改憲論者の中曽根康弘氏が首相になったが、改憲を実行に移せなかった。
◆ 自社歩み寄り、論争に区切り
憲法をめぐる状況に大きな変化が起きたのは、90年代だ。
野党に転落していた自民党が94年、社会党と新党さきがけとの連立で政権に復帰。自衛隊を違憲としてきた社会党の村山富市委員長が首相につき、自衛隊合憲、日米同盟堅持を打ち出した。「自衛隊の最高司令官の首相が違憲だとは言えない」との考えだった。
これにこたえるかのように自民党も方向を変えた。
河野洋平総裁は95年の党大会で「新宣言」を採択。憲法について、「すでに定着している平和主義や基本的人権の尊重などの諸原理を踏まえて議論を進めていく」との方針を打ち出した。自主憲法制定論の事実上の棚上げだった。党内の若手からは「自民党が自民党でなくなってしまう」との強い異論が出たが、戦争経験のある重鎮・後藤田正晴氏が河野氏に力を貸した。
かつてのライバル政党の歩み寄りで、憲法をめぐる政党間の対立はうすれた。9条を中心とした国会での論争はしずまり、区切りがついたと見られた。
◆ 世論が変化、再論議へ
ところが国会での改憲機運が再び高まるのには、そう時間はかからなかった。
2000年、衆参両院に「憲法調査会」がもうけられた。岸政権の時代には内閣の組織だったものが、50年近くの時をへて国会にできた。憲法問題を専門的に議論する場が国会にできたのはこれが初めてだった。
背景にあったのは、世論の変化だ。若い世代を中心に、「憲法改正は必要だ」と考える人たちが増えてきた。社会党に代わる野党第1党の民主党も、議論そのものは拒まない姿勢をとるようになった。
さらに改憲論の中身も、自主憲法制定論から国際貢献のあり方や環境権などの「新しい人権」に軸足が移っていった。
憲法調査会は05年に憲法調査特別委員会へと衣替えし、憲法改正のための国民投票の手続きをルール化した国民投票法を制定した。これで改憲に向けた法的制度が初めて形としてととのった。そして発足したのが改憲原案の審議もできるいまの「憲法審査会」だ。
こうした歴史的な曲折の末にあるのが、安倍首相の改憲論だ。ただし、9条改正にこだわる主張の中身は、60年あまり前に岸元首相がかかげた自主憲法制定論に「先祖返り」しているともいえる。(石松恒、編集委員・国分高史)
▼3面
首相、改憲の答弁時間4倍 昨年淡々、今年は自案アピール
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13348177.html
【図版】衆参予算委員会での憲法改正をめぐる安倍晋三首相の答弁時間と主な内容
通常国会は6日、安倍晋三首相が出席を予定していた衆参両院の予算委員会の序盤戦を終えた。同日までの7日間の予算委での首相の憲法改正関連の答弁時間を朝日新聞が集計したところ、今国会は昨年の通常国会と比べて約4倍に上った。首相は自民党内の議論を見守る姿勢を見せながら、自身が提起した憲法9条への自衛隊明記案の優位性をアピールしている。▼総合5面
今国会、首相が出席した衆参両院の予算委は7日間で計45時間あまり。朝日新聞の集計では、この間に正面から憲法改正を質問したのは延べ7人。首相は26分20秒をかけて答弁した。同じ7日間の衆参予算委で3人の質問者に対して、首相の答弁時間が計6分40秒だった昨年の通常国会と比べて大幅に増えた。質問者一人あたりに対する答弁時間も増え、首相の熱弁ぶりが浮かぶ。
答弁内容にも違いが出た。
昨年は教育無償化や家族のあり方に関する見解を求められ、「具体的な案については憲法審査会において議論すべきだ」など、淡々とした内容に終始した。これに対して、今国会は、首相自身が昨年5月に改正憲法の「2020年施行」を呼びかけたこともあり、踏み込んだ説明が目立つ。
とりわけ、9条1項、2項を残し、自衛隊の存在を明記する案について時間をかけて答えている。首相自らが提起した案だ。
戦力不保持を定める2項を残すことから、「フルスペック(制約のない形)の集団的自衛権の行使は認められないのではないか」と説明。自民党の石破茂・元幹事長らが主張する2項削除案を牽制(けんせい)した。一方、首相案が国民投票で否決された場合、自衛隊そのものの合憲性が揺らぐとの指摘に対しては、「否定されても変わらない」と真っ向から反論した。(笹川翔平)
◆ 首相「憲法、権力の手縛るもの」
安倍晋三首相は6日の衆院予算委員会で、憲法について「いわば権力の手を縛るものだ。同時に国のかたち、理想を語るものでもある」と述べた。首相は1月の施政方針演説で「国のかたち、理想の姿を語るのは憲法だ」と表明。これに対し、野党から「憲法は政治権力を制限するルール」(立憲民主党の枝野幸男代表)と批判されていた。
衆院の野党会派「無所属の会」の原口一博氏の質問に答えた。
▼総合15面
(憲法を考える)自衛隊を明記するとは
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13348020.html
憲法に自衛隊を書いても、今の自衛隊に変更はないと安倍晋三首相は言う。そんなはずはないと野党は言う。自衛隊は変わるのか、変わらないのか。私案を作って、この問いを考える材料を示してくれた人がいる。憲法解釈のプロ、内閣法制局長官を務めた阪田雅裕さんだ。その思いを聞いた。
◆ 特集:憲法を考える
――安倍首相は憲法に自衛隊と書くだけで何も変わらないと言います。条文を変えても変わらないことがあるのでしょうか。
「かつて小泉純一郎総理が国会で、『はっきりとわかりやすいような条文に改めた方がよいのではないか』と言いました。専守防衛の自衛隊を書くだけならば簡単なことですし、むしろ小泉政権の時にやっておくべきだったのかもしれません。しかし、安全保障法制が成立し、現在の自衛隊をそのまま憲法に書くことはとても難しくなりました。憲法9条の解釈が分かりにくい、という点では、私も安倍総理の考えがわからないでもありません。特に、なぜ憲法のもとで自衛隊が許されるのか、なぜ自衛隊は戦力にあたらないかについては、合理的な説明はありますが、誰もがすぐに理解できるものではありません。国会では抽象的な議論ばかりで、条文にしたらどうなるのか、という具体的な議論が足りないように思います」
――シンプルに「自衛隊を保持する」とか「自衛隊は戦力にはあたらない」と書けば、現状の追認になるのでしょうか。
「そう簡単ではありません。それだと、なぜ自衛隊が戦力ではないのかがわかりません。『自衛隊』という名前である限り、何をやっても、どんな装備を持っていても、憲法で認められる存在ということになってしまいます。自衛隊の装備や活動をすべて予算と法律、つまりは政府と国会に白紙委任することになります」
――「自衛のための必要最小限度の実力組織」ならば線引きがはっきりしそうです。
「自衛の概念が一義的ではありません。国連憲章でも自衛権の行使は認められていますが、それとどう違うのでしょうか。集団的自衛権も『自衛』です。日中戦争、太平洋戦争、みな大義は自衛でした。緊張関係が高まると、自衛だといって海外に攻撃に出て行ける余地は必ず残ります」
――本当の狙いはそこにあるかもしれませんが。
「それなら堂々と、正面から国民の判断を仰ぐことが必要です。とりあえずあいまいにしておこうという玉虫色の条文は、将来のために一番よくないことです」
――今の自衛隊を表すならばこうだと阪田さんは私案を発表されています。狙いは何でしょう。
「私の案は、限定的な集団的自衛権を容認した安保法制の内容を、憲法に盛り込むものです。今の自衛隊をそのまま書くのは大変なことですよ、ということをわかっていただきたいという思いがありました。内閣法制局的な発想だと言われるでしょうが、戦力の不保持を定めた2項を残したまま、自衛隊を明記するならばこうなる、と考えた結果です。私の案のような改正案を国民投票にかけることで、安保法制が合憲か、違憲かという問題も決着します」
――この案の考え方を与党は採用するでしょうか。
「難しいでしょうね。安保法制に対する当時の反対運動を考えたら、怖くて出せないでしょう。だから『国を守るための』とか『自衛のための』といった言葉でごまかすことにならないか。私が最も危惧しているのはその点です」
*
――憲法をこう変えたい、と首相が具体的に語ることに何か問題がありますか。
「以前は総理が憲法改正に言及すること自体が憲法尊重擁護の義務に反するとの議論もありましたが、今はそんなことは誰もいいません。総理としてしか得られない様々な外交・軍事の情報を踏まえて、9条がどうあるべきか、自衛隊がどうあるべきかを、国民に問うてもよいと思います」
――首相は、隊員の士気だとか、隊員が子どもから「お父さん、違憲なの?」と聞かれたといった情緒的な説明をします。
「今の自衛隊を書く、と言いながら、今の自衛隊について具体的に説明していません。災害救助や、他国から攻められた時に実力で追い返すという範囲ならば、多くの国民は賛成するでしょう。しかし、安保法制によって海外での武力行使もできるようになりました。それを憲法に書くということがどういうことなのか、総理は本当に理解されているのかどうか」
*
――安倍首相の憲法改正に反対する勢力も受けて立つべし、ということでしょうか。
「立憲民主党の枝野幸男さんは『安保法制を追認するような憲法改正は認めない』と反対していますが、追認しない改正案もありえます。また、安保法制の内容を盛り込んだ私の案のような改正案が国民投票で否決されれば、安保法制は白紙に戻らざるを得ないのです。日本の平和主義のあり方を国民に問う貴重な機会になると思います」
――なるほど、安保法制を実質的に国民投票にかけるということですね。
「政府が60年間、一貫してきた憲法解釈の根幹を変えることは許されないという気持ちは、今も同じです。しかし、安保法制が成立してしまった以上、いくら『違憲だ』『無効だ』と言っていても生産的ではないと思います。違憲訴訟が起きようと、裁判所がまともに取り上げるとは思えません。法律というのは、ひとたび公布、施行されると、『公定力』というものがあって、裁判所などが否定するまでは有効だという前提で効力が生まれるのです。やり方の問題は別にして、憲法改正だと与党が言うのなら、この部分を国民投票にかけたらどうかと私は言いたいのです。そして私の案のもう一つのメリットは、9条に歯止めがかかるということです」
――どういう意味ですか。
「今の9条では、いずれ解釈が広がりかねないという意味で、大きなリスクをはらんでいます。今の9条は、侵略戦争を禁じているに過ぎないという人たちがいます。安倍首相の諮問会議が出した結論はこの立場を取っていました。それを考えると、限定的な集団的自衛権であっても9条にたがをはめることができます」
*
――憲法が一度も変わらなかったことをどう評価していますか。
「多少、マイナスだと思っています。9条の無理な解釈変更を招いてしまったということを考えれば。変えた方がいいことでも、変えないことが癖になってしまいました。ただ、9条以外は、改正の必要がなかったことも事実です。憲法が規定することがとても少ないからです。小選挙区制にしようが、選挙年齢を18歳に引き下げようが法律でできるというのは、他国では考えられません」
――9条の無理な解釈変更を招いたのは、法制局の敗北ですか。
「そうは思いません。公明党の力もありますが、この線で止めたという意味が大きい。内閣法制局のクライアントは内閣しかありません。『そんなことできません』とそっぽを向くわけにいきません。内閣がやりたいことに対して、どうすれば憲法の枠内でできるのかを考えるのが仕事です。法制局にいた時、中曽根康弘総理の靖国神社の公式参拝がありました。正式なお参りは政教分離に反するから無理だが、社頭一礼ならばいいだろうと。そういう葛藤を四六時中しています。究極の姿が安保法制でした。あそこに至った強い圧力を考えると、けんもほろろに批判はできません」
――4年前の国会で、立憲主義について強調されていましたが、今も同じ思いですか。
「参院の予算委員会の公述人として、『多数による少数者への不合理な人権侵害を許さないというのが立憲主義の政治である。法律をもっても許さない、ここまではダメよというのが憲法規範だ。その一部に9条がある』と話しました。宮沢喜一さん、野中広務さんら戦争を経験された政治家は、戦時中、どれほど人権が侵されたかの反省を持っておられ、平和に対する感覚が鋭い方が多かった。今の自民党の改憲草案を見ると、国家よりも先に人がある、という意識が乏しいように感じます」
――9条を改正して「普通の国」になるべきだという人が増えている気がします。
「他に例のない、この日本国憲法のもとで、どんな人的貢献ができるかと、ぎりぎりの知恵を出してきたのがこれまでの歴史です。その『変な』状態をやめたいというのなら、9条2項を削除し、平和主義をやめるしかありません」
――阪田さんは、9条を改正した方がいいと考えますか。
「変えた方がいい、変えない方がいいと言うつもりはありません。今の自衛隊への拒否反応は少ないと思いますが、その自衛隊をそのまま書くことはそれほど簡単ではありません。政治家はごまかしてはいけないし、国民もごまかされてはいけない。その上で改憲がいいかどうか、よく考えていただきたいと思います」 (聞き手・三輪さち子)
◇
さかたまさひろ 1943年生まれ。大蔵省(現財務省)に入り、2004年から06年まで小泉内閣で内閣法制局長官を務めた。弁護士。
◆ 9条改正、阪田私案(3項以降)
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
3 前項の規定は、自衛のための必要最小限度の実力組織の保持を妨げるものではない。
4 前項の実力組織は、国が武力による攻撃をうけたときに、これを排除するために必要な最小限度のものに限り、武力行使をすることができる。
5 前項の規定にかかわらず、第三項の実力組織は、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされる明白な危険がある場合には、その事態の速やかな終結を図るために必要な最小限度の武力行使をすることができる。
2018年2月8日 (教えて!憲法 基本のき:2)
「最高法規」に反する法律、つくれないの?
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13349810.html
【図版】最高法規としての憲法
最高法規としての憲法は、国のグランドデザインであり、主権者である国民が制定している。
国会や内閣は、憲法が粗朶めているきまりに反する法律や命令を作ることはできない。
法律は、国民が守るルールを国会が制定し内閣が執行する。
規則や命令は、法律に基づいて、国の機関が制定する。
法律や規則、命令が憲法に反しているかどうかは、裁判所が判断する。 日本国憲法は98条でみずからを「最高法規」と位置づけている。憲法がさだめているきまりに反する法律や命令をつくることはできないということだ。
でも、「最高法規」の意味を、日々の生活のなかで感じるのはむずかしい。憲法とは何か。ほかの法律とはどう違うのか。日本国憲法ができたときのことを振り返ると、わかりやすいかもしれない。
日本は第2次世界大戦に負けた後、明治時代にできた大日本帝国憲法(明治憲法)の改正を、日本を占領した連合国軍総司令部(GHQ)にせまられた。政府がGHQの草案をもとにつくった改正案は、帝国議会での審議で修正が加えられ、日本国憲法ができた。
憲法の制定経緯そのものについては、多くの研究がある。しかし、当時の吉田茂内閣が同時に「臨時法制調査会」をもうけて、たくさんの法律づくりや法改正を大急ぎで進めたことは、それほど知られていない。
国をおさめる権力を持つ主権者が天皇から国民に代わる。貴族院を廃止して新たに参議院をもうける――。新憲法の規定に合わない法律をあらためなければならなかった。皇室典範や内閣法、民法、刑法、戸籍法。臨時法制調査会が法律づくりや改正のポイントをまとめたのは主な法律だけで約20にのぼったという。
法律や命令が憲法に反していないか、審査するのが裁判所だ。その権限を「違憲立法審査権」といい、最終的な権限をあたえられている最高裁判所は「憲法の番人」と呼ばれる。これまでも法律のさだめを無効としたり、改正をせまったりした。
その一例が、遺産相続のときに、結婚していないカップルの間に生まれた子(婚外子)の取り分を、結婚したカップルの子の半分とする、とさだめた民法の規定だ。人種や信条、性別などで差別されない「法の下の平等」をうたう憲法14条に反しているとして、最高裁が見直しをせまった。
両親や祖父母などを殺害した場合に通常の殺人より重い刑とする刑法の「尊属殺人」規定も、14条に照らして無効とされた。
憲法とは、平等や自由といった個人尊重の原理をしめしたものともいえる。
この原理に反する法律を無効とする最終権限を最高裁にあたえることで、最高法規としての安定性をたもっている。しかも、法律は衆参両院の過半数の賛成で変えられるが、憲法改正には衆参両院で3分の2以上の賛成で憲法改正を発議し、国民投票で有効投票の過半数の賛成を得ることが必要だ。「改正しづらい=硬い」という意味で、硬性憲法と呼ばれる。
条文を変えられないため、歴代内閣は平和主義をさだめた9条の読み方を変え、自衛隊の増強や海外派遣を進めた。解釈改憲だ。安倍内閣は歴代内閣が禁じてきた集団的自衛権の行使を認める解釈改憲をおこない、強い批判をあびた。(岩尾真宏)