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折々の記 2009 A

【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】02/02〜        【 02 】02/03〜
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【 01 】02/02

  02 02 不法な金融危機の原因は何か
 
02 02(月) 不法な金融危機の原因は何か

お金の亡者たちのあくなき欲望のために世界中に不幸をもたらした金融危機とは、いったい何が原因なのでしょうか?

今ではおおよその原因や経過がわかっているにもかかわらず、政治家の人たちからここをこうしなくてはならないという意見をちっとも聞くことがない。

百年に一度などと麻生総理自身がうそぶいている。 災害ならばいざ知らず、ことは人為的なことであり、世界中が不安と不幸に落としこまれた現実を修正する方法があるのではないか。

日本の政治家はそのことに触れたがらない。 奇怪なことです。

お金の亡者の金融システムについて、日本人らしい解決策を提起すべきです。 

いろいろな意見を調べてみました。

@ 行政書士中村和夫の独り言  2009年1月10日
A 金融危機の原因で米仏に一致した認識なし  2008年10月31日
B ダボス会議が開幕 初日から経済悲観論強く  2009年1月28日
C 米国の金融危機は、なぜ起こったのですか?(前編)  2008年10月1日
D 米国の金融危機は、なぜ起こったのですか?(中編)  2008年10月16日
E 米国の金融危機は、なぜ起こったのですか?(後編)  2008年11月5日
F アメリカ金融危機の本質は何か  2008年10月22日
G アメリカ金融危機から世界金融危機へ、、その原因とは?   2008年10月12日
H [トピックス]クドリン露財務相の談話:「金融危機の原因と今後の見通し」  2008年10月03日
I NHKスペシャル アメリカ発 世界金融危機   2008年10月11日



@ 行政書士中村和夫の独り言   2009年1月10日   経済危機の原因はいつも金融機関?


 今回起こった世界的な経済危機の原因は、米英系の投資銀行と呼ばれた金融機関が世界中にばらまいたサブプライムローンなどのクズ債権を組み込んだジャンクボンド(クズ債)が原因だといわれています。

 サブプライムローンとは、組んだ住宅ローンの担保となっている住宅の担保価値が上がったから、更なる資金をお貸ししましょうと、新たなるお金を貸し付けた部分のローンをいいます。つまり、住宅価値が上昇し続けて、その住宅が第三者に高値で転売できるのであれば成り立つシステムでした。これは、1988年日本で起こったバブル経済と全く同じ論理だったのでした。

 当時日本では、銀行すべてが狂ったように融資競争に明け暮れていました。不動産は値が下がることは無く、株価もまだまだ上がるであろうから根抵当権限度額(担保不動産の抵当権価値)をもっと引き上げますので、どんどん借りて下さい。株式投資はどうですか?マンション投資もOKですよ!なんだったら無担保で1億までなら短期でお貸ししますよ!なんて調子で、毎日のようにさまざまな銀行の融資課長兼支店長代理が会社に来ていました。

 このようなどこか狂った実体性の薄い経済活動に大きな疑問を感じていた私は、財務担当の兼任責任者として限度額の拡大どころか、逆に下げて欲しいと融資課長に言ったのでした。確かに、クレジットカードの利用限度額を少なくして欲しいというようなものですから、

 「もったいない!銀行に勤めて何十年になりますが、そんな依頼を受けたことが無い!正気で仰っているのですか!オーナーはご存じなのですか?」と融資課長

 「ええ、オーナーには既に了解は貰ってあります。借金は借金ですから返さなければならない訳ですし、やはりオーナーの大事な資産ですから・・・。それに、私の居たM国では、原油価格がどんどん上昇するという間違った判断から国が破綻してしまいましたからね。」と私

 「そんな!!!ここは日本ですよ!土地の値段は下がった事なんて一度も無いのですよ。今、有効に投資して行かなければ勿体ないでしょう!」と再び融資課長

 「いや、核家族に子供が一人しかいない現状で、数十年経てば両親の家2軒に対して子供達夫婦1組ですから、不動産は必ず余ります。ですから、どう考えてもこのまま行くとは思えませんから限度額を下げて下さい!」と、とうとう限度額を下げさせてしまいました。その時の融資課長の憮然とした態度がとても印象的でしたが・・・。

 日頃冷たい金融機関に、「あなた住む住宅の価値が上がりましたから、XX万ドルまでならばいつでもご融資致します。きっと、ご自宅の価値は更に上がることでしょうから、ご自宅を転売されたなら、このご融資額も含めた以上の価格で売れることは間違いなしです!新車や家具、或いは、ドレスなどお客様が欲しかったお買い物などにどうぞお使い下さい!」こんな調子で、アメリカのサブプライムローンという貸出を増やしていったのだと聞いています。

 問題は、こういった人々への融資が限界となり、不動産価格上昇に陰りが見えたと同時に、こんどは何百万人にものぼる英語も碌に話せないような中南米系移民にまで融資対象を広げて、問題の先送りを始めたことでした。

 そして、更なる元凶ともいえる、このような非常にリスクの高い債権を複雑に組み込んだジャンクボンド(クズ債)が、金融工学の名の下で世界各国に売りさばかれていったのでした。日本でも銀行などの金融機関や証券会社、生損保、年金等の運用機関などの機関投資家のみならず、企業や、はたまた大学といった余剰資金を有する組織までもが標的になりました。

 「現状の低金利の中で、金利や配当を生まない多くの剰余資金を多く抱えた組織は財務的には大問題です。株式は乱高下するリスクはありますが、こういった金融工学に基づいたファンドを資産として保有されない事は、株主や出資者へ対する背任行為ですよ!」などと、XXマン・XXザースなどの投資銀行のセールスマンが言ったとか・・・。

 1929年に起こった恐慌も金融機関にそそのかされた企業経営者が本業そっちのけで、株式相場や不動産投資にのめり込み、本業である物作りを忘れてしまった結末だったといわれているのです。

 本来、企業の資金調達手段であった株式が投機の対象となっている現状と、それを助長するような優遇税制ばかりが景気対策として提案され、そればかりが目に付くのは本末転倒も良いところです。個人のデイ・トレーダーを含めて、短期株式売買の繰り返しという、いわゆる非生産的な投機行為に優遇税制を与えることは、いずれは再び金融破綻を繰り返す原因を助長するだけのような気がします。

 金融機関は、飽くまでも製造業などの産業のサービス部門でなければいけない筈です。XXマン・XXザースのような会社では、何億・何十億といった高給取りのトレーダーや役員のような人々が我が世の春とばかりに街を跋扈し、毎日六本木界隈辺りで高級シャンパンを空けられるような社会になってはいけないと私は思うのです。最近は音沙汰のないXXファンドの△上さんやら○○衛門さんなども似たような種類の人達です。また、今では消滅してしまった長銀・興銀・日債銀などに居たエリート行員達などもしかりです。もし、それが国家の政策として導入出来ないような政府であれば、今後その国の経済は必ず衰退し、再び破綻して行く運命にあると私は本気で思っています。



A 金融危機の原因で米仏に一致した認識なし、米政府高官


【10月31日 AFP】米大統領経済諮問委員会(Council of Economic Advisors、CEA)のエド・ラジア(Ed Lazear)委員長は30日、世界的な金融危機に対処するため来月15日に米ワシントンD.C.(Washington D.C.)で開かれる金融サミットをめぐり、危機の原因について米仏両政府の認識が一致することはないだろうとの見解を示した。

 ラジア委員長は「われわれは(金融危機の)原因について、さまざまな見解をもっている。わたしも自らの見解をもっているが、フランスも同様に原因についての見解をもっているはずだ。必ずしも一致する必要があるか、わたしには確信がない」と述べ、金融サミットの開催目的について「われわれが恐らく最善だと思う分析に関して何らかの結論を出すため」との考えを示した。

 フランスは現在、欧州連合(EU)の議長国で、米仏両政府間で基本的な認識の違いが明らかになれば、金融サミットの協議に支障をきたす恐れもある。   発信地:ワシントンD.C./米国 (c)AFP



B ダボス会議が開幕 初日から経済悲観論強く - 47NEWS(よんななニュース)


スイスのシンクタンク、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)が28日、同国東部の保養地ダボスで開幕、景気の先行きに慎重な意見が相次ぎ悲観論が強まった。会議は約40カ国の政府首脳や財界トップ、学識経験者が金融危機に動揺する世界経済の動向や気候変動問題への対応などを5日間にわたり議論する。

 28日は日米欧の有力エコノミストや金融当局OBらが経済問題を中心に意見交換した。午後は中国の温家宝首相とロシアのプーチン首相が講演する予定だ。

 米著名投資家のソロス氏は講演で「世界が直面している危機はこれまでとまったく異なる。金融市場の崩壊は予想できなかったし、問題の大きさは(世界恐慌後の)1930年代よりひどい」と厳しい認識を示した。

 米証券大手モルガン・スタンレーのスティーブン・ローチ氏も「世界経済が抱える試練を過小評価してはならない」と警告。米メディア大手ニューズ・コーポレーションのルパート・マードック会長は「危機は悪化しつつあり、米国などの景気刺激策が効くかは分からない」と懸念を示した。   2009/01/28 22:14 【共同通信】

もっと知りたい ニュースの「言葉」

ダボス会議(2008年1月26日)スイスの民間経済研究機関「世界経済フォーラム」が毎年1月、スイス東部の高級保養地ダボスで開く年次総会。各国の政財界や非政府組織(NGO)の指導者、文化人らが国際的課題をめぐり意見を交わす。主要国首脳会議(サミット)の議長国首脳には特別に講演の機会が与えられ、国際社会に発信する格好の場となっている。最近では2005年にブレア英首相(当時)、07年にメルケル・ドイツ首相が出席した。

世界経済フォーラム(2004年4月30日)スイスのジュネーブに本部を置き、世界の主要企業の会費で運営されている。ドイツ生まれの経営学者クラウス・シュワブ博士が創設。1971年以来、スイスのダボスで年次総会が開かれ、この総会が「ダボス会議」と呼ばれる。ヨルダンでは昨年6月にも臨時の年次総会を開催、米国からはパウエル国務長官らが出席した。



C 米国の金融危機は、なぜ起こったのですか?(前編) 2008年10月1日


増資の不調が株売りを呼ぶという図式

今年(2008年)9月に米国で発生した連鎖的な金融危機は、ひとことで言えば、例のサブプライムローン問題による損失(評価損)の計上がもたらしたものです。サブプライムローン問題では、どこの誰が、どの程度のリスクを抱えているのか分からないと言われてきましたが、そのリスクの一部が今回、目に見えるかたちで現れてきたわけです。

米国の金融危機について理解を深めるために、ここでは以下の3つの観点から、その要因を探ってみたいと思います。

(1) 個別の金融機関の問題(財務内容の悪化、株価の下落など)
(2) 米国政府の金融危機への対応と、それに対する市場の反応
(3) 投資銀行のビジネスモデルおよび米国型資本主義の弊害

まず(1)について、9月15日に経営破綻した米国第4位の大手証券会社リーマン・ブラザーズと、同16日に政府の管理下に置かれることが決まった米国保険最大手のAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)の例を見てみましょう。両者に共通するのは「サブプライムローン関連の損失が拡大 → 増資の不調 →株価の下落 → 信用不安による短期資金のショート」という図式です。

リーマン・ブラザーズは、2008年3〜5月期決算で純利益が上場以来初の赤字を記録しました。9月10日には、6〜8月期決算においてサブプライムローン問題にともなう評価損など78億ドル(約8,400億円)を追加計上し、2四半期連続で赤字に陥ることを発表。この間、韓国政府系の韓国産業銀行との増資交渉が不調に終わると、リーマン株への売りが殺到します。9日から12日までの4日間で株価は実に80%も下落。結果として同社は負債総額6,130億ドル(約64兆円)という米国史上最大倒産に追い込まれました。

リーマン・ブラザーズは元来、債券ビジネスに強みをもつ証券会社でしたが、近年はとくに住宅ローンや商業用不動産ローンの証券化業務に注力する傾向にありました。たとえば同社が保有していた商業用不動産関連資産は、総資産の約8%に相当する500億ドル(約5兆2,000億円)で、他の大手銀行や大手証券よりも高い割合となっています。これらは証券化商品の原資産として保有していたものですが、住宅バブルの崩壊をきっかけに急速に値下がりし、サブプライムローン関連商品の在庫(売れ残り)とともに、巨額の損失を抱え込む一因となったようです。

体力を超えたハイリスクの事業拡大

一方のAIGは、今年2月末に111億ドル(約1兆1,600億円)という巨額損失を計上するなど、サブプライムローン関連の損失が膨らみ続け、2008年4〜6月期まで3四半期連続で赤字に転落。7〜9月期も100億ドルを超える損失を計上する見通しとなり、9月15日には格付け大手3社がAIGの格付けをいっせいに引き下げました。

これを受けて同16日にAIGの株価は一時、前日比マイナス74%にあたる1.25ドルまで下落します。AIGは資本不足を補うため、100億ドル規模の増資計画を発表しましたが、引き受け先の目途はたたず、最終的に米国当局はAIGに対して最大850億ドル(約9兆円)の緊急融資をおこない、同社を政府管理下に置くことを決定しました。

本業の生損保事業は利ざやが薄いうえに契約が思うように伸びないため、AIGはここ数年、住宅ローン担保証券への投資や証券化商品の保証業務など、事業の多角化を進めていました。なかでも同社が力を注いだのが、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)と呼ばれる金融派生商品の取引です。CDSは企業向け融資や証券化商品が焦げ付いた際に、その損失を肩代わり(保証)するもので、いわば信用リスクの保険のようなもの。

AIGによるCDSの保証残高は4,000億ドル超と、自己資本(780億ドル=約8兆2,680億円)の5倍以上に達していたほか、同社は自己資本に匹敵する規模の住宅ローン担保証券も保有していました。サブプライムローン問題や米国景気の低迷により、CDSの保証金支払い要求が増加したうえ、保有する住宅ローン担保証券の価値も下がりました。こうした自らの体力を超えた事業拡大が、同社の経営を急速に悪化させた大きな要因と考えられます。

このように金融機関の問題を個別に見てみると、リスクの高い事業に傾斜した結果として、起こるべくして起きた金融破綻とみなすこともできます。ただし、「不信の連鎖」とも言える今回の米国金融危機は、どうもそれだけでは説明がつきそうにありません。(2)や(3)の観点を含めて次回以降、さらにこの問題の本質を考えてみたいと思います。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。



D 米国の金融危機は、なぜ起こったのですか?(中編)2008年10月16日


米国政府の場当たり的な対応が不信を呼んだ

前回に引き続き、米国の金融危機について考えます。今回のテーマは「米国政府の金融危機への対応と、市場の反応」です。

米国の金融危機において特徴的なのは、金融の大前提であるはずの「信用」が、ほとんど消滅に近いところまで失われてしまったことです。市場にあふれた不信感がパニック的な混乱を呼び、慌てた米国政府が何か対策を打ち出すと、それがまた市場の疑心暗鬼につながるという「負の連鎖」が続いています。

その発端は、今年(2008年)9月に米国政府が複数の金融機関に対しておこなった「救済のあり方」にあったと考えられます。9月7日に米国政府は、経営危機に陥ったファニーメイ、フレディマックという2つの政府系住宅金融公社に対して最大2,000億ドルの公的資金枠を設定し、政府の管理下に置くことを発表しました。ところが前回ご紹介したとおり、9月半ばにはリーマン・ブラザーズを救済せず、倒産に追い込む一方で、AIGには救済の手を差し伸べました。

実はAIGについても、米国政府は一度は救済を拒否し、他の民間金融機関に融資を要請しています。このように米国政府が民間金融機関の救済をためらった背景には、安易な救済による金融機関のモラルハザード(企業倫理の欠如)を警戒したことや、11月の大統領選挙を控えて、米国議会内に「私企業の救済に国民の税金を使うべきではない」という意見が根強かったことなどがあるようです。しかしながら、米国政府の一貫性に欠けた場当たり的とも言える危機対応のあり方は、かえって市場の不安や不信を増幅し、「次のターゲットさがし」を誘発していきます。

9月後半には、財務内容が比較的健全と見られていた米国証券1位のゴールドマン・サックスと、同2位のモルガン・スタンレーも株価が急落。両者は9月21日に銀行持ち株会社へと移行しました。専業証券会社としての看板を捨てる代わりに、FRB(米連邦準備理事会)の監督下に入って資金供給が受けやすくなる道を選んだのです。あわせて、ゴールドマンは米国の著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏などから100億ドルの出資を、モルガンは三菱UFJフィナンシャル・グループから最大で9,000億円規模の出資を、それぞれ仰ぐことになりました。

金融安定化法案の実効性にも疑問符が

金融機関のあいだに生じた疑心暗鬼も深刻です。金融機関どうしが短期の資金を貸し借りする際に基準となるLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の米ドル3カ月物金利は、リーマン・ブラザーズ破綻後の9月16日から上昇を始め、従来の2倍近い高水準で推移しています。これは「取引相手の金融機関がいつ破綻するか分かない」という不安が高まり、相手の信用度に関係なく、短期資金の貸し出しそのものを手控える動きが広がったからです。市場ではドル資金が枯渇した状態となり、欧米の銀行を中心にドル資金の調達が非常に難しくなりました。

これを受けて、日米欧の主要6中央銀行は9月18日に総額1,800億ドルのドル資金を自国市場に供給する緊急対策を発表しましたが、その後もドル資金取引は事実上、マヒした状態が続きます。日米欧の中央銀行は9月29日にドル資金の融通枠を倍増しましたが、この間、欧州では資金繰り難による金融機関の破綻のうわさが駆け巡り、金融機関の株価が暴落。欧州各国で大手・中堅の銀行が相次いで政府管理下に入るなど、混乱は拡大の一途をたどっています。

さらに信用崩壊が決定的となる事件がありました。米国政府は9月19日に、最大7,000億ドルの公的資金を使って金融機関から不良資産を買い取ることを柱とする「金融安定化法案」を打ち出します。ところが、あろうことか、この法案が29日に米下院で否決されてしまいました。「マネーゲームに踊った金融機関を巨額の税金で救うのか」という米国民の不満に、下院の議員たちが反応した結果です。

9月29日のニューヨーク株式市場では、ダウ工業株30種平均が前週末終値比でマイナス777.68ドルと、過去最大の下落幅を記録します。10月3日にはようやく金融安定化法案が成立しましたが、「公的資金による不良資産の買い上げだけでは金融機関の自己資本不足を解消できない」との懸念から、その実効性を疑問視する声が強まりました。

10月8日には米欧など主要国の中央銀行が協調して政策金利をそれぞれ0.5%下げる同時利下げを実施。10日には日米欧の7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が開催され、金融危機の収束へ向けた5項目の行動計画をまとめましたが、市場の混乱は収まりません。10日のダウ平均は約5年半ぶりに8,000ドル台を割り込み、日経平均株価の終値も8276.43円と約5年4カ月ぶりの安値を記録します。

結局のところ、米国政府の金融危機への対応について、市場はその具体策の欠如やスピードの遅さ、ひいては本気度の弱さを見透かしているのでしょう。この問題が解決に向かうには、従来型の発想やメンツに縛られない、米国政府の抜本的な意識改革が求められるのだと思われます。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。



E 米国の金融危機は、なぜ起こったのですか?(後編)2008年11月5日


高レバレッジ経営にまい進した投資銀行

米国の金融危機の影響は、当初の想像をはるかに超えて大きくなりつつあります。金融危機は欧州や日本をはじめ世界各国に広がり、実体経済にも影響を及ぼして、世界的な景気後退が現実味を帯びてきました。新興国では資金の海外流出が進み、アイスランドやハンガリーなど、「国家の破綻」が危惧される国さえ出てきました。もはや金融危機のレベルを通り越して、世界的な経済システム危機の様相を呈してきたと言えるかもしれません。

そもそもの発端は、言うまでもなく米国のサブプライムローン問題です。しかし、市場関係者のあいだでは「サブプライムローンが原因にならなくても、遅かれ早かれ他の金融商品や市場の問題が同じような危機を招いたはずだ」という意見も聞かれます。すなわち今回の金融危機の根っこには、世界の金融や経済が抱える構造的な問題点があった、というわけです。

その一例として、投資銀行のビジネスモデルや米国型資本主義の弊害を指摘することができると思われます。

欧米の投資銀行は近年、ローンを小口に分割して販売する証券化ビジネスや、デリバティブ(金融派生商品)などの複雑な取引を通じて高収益を上げてきました。とくにここ数年は、負債を自己資本の何十倍にも膨らませる「高レバレッジ経営」(レバレッジ=テコの原理)が、投資銀行の代名詞のようになっていました。

レバレッジ経営では、たとえば以下のような投資がおこなわれます。金利が4%の証券化商品(4年満期の債券)に投資をする場合、手持ちの自己資金が50億円しかなくても、金利3.8%で950億円を借り入れて(期限6カ月)、1,000億円分の投資をおこないます。50億円だけ投資した場合の年間利回りは4%ですが、1,000億円を投資して借入金の金利を差し引いた場合の年間利回りは次のようになります。

収入:1,000億円×0.04=40億円
支出:950億円×0.038=36.1億円
収益:40億円−36.1億円=3.9億円
利回り:3.9億円÷50億円=7.8%

このように、投資銀行は短期の借り入れを繰り返しながら金利差を抜く、いわゆる「サヤ取り」のビジネスを大掛かりに展開しました。結局はこの高レバレッジ経営がサブプライムローン問題を通じて破綻し、投資銀行は窮地に追い込まれたのです。投資銀行のビジネスモデルは今後、大きな変容を余儀なくされることでしょう。投資銀行業務そのものは存続しても、かつてのような高収益はもはや期待できません。M&A(合併・買収)の助言・仲介など、「産業再編を支援する黒子」としての本来的な役割へと回帰していくことになりそうです。

金融が本来の役割を離れて肥大化した

より高い収益源を求めた投資銀行の行動は、今日の金融市場や世界経済のあり様を象徴しているように思われます。たとえば、世界的に低金利が続いて収益機会が乏しくなるなか、投資銀行をはじめとする米国の金融サービス産業は、短期利益を求める株主のプレッシャーを最前線で受け続ける存在でした。極論するならば、株主も暴走を始めていたわけです。これは株主利益を偏重する、米国型資本主義の弊害と言えるかもしれません。

米国は80年代半ばから90年代以降、金融工学をはじめとする先進のテクノロジーを用いて、金融部門で多額の収益を上げてきました。その稼ぎで米国は世界中からモノを買い、大幅な貿易赤字を生むことになります。一方で、中国などの新興国はもちろん、日本も米国への輸出によって経済成長を維持してきたのです。米国の過剰消費を支える金融は、自由化・グローバル化・工学化という流れのなかで、経済活動の潤滑油という本来の役割を離れて、経済活動の主役にのし上がっていきます。

その過程で、「すべての経済問題は市場が解決する」という市場原理主義や、「リスクを取った責任は自己で負う」という自己責任の原則、「富の最大限化は市場の力に委ねるのが最良であり、政府は極力手出しを控えるべき」といった信条などが世界中に喧伝され、金融市場の正しさや万能さが強調されました。しかしながら、今回の金融危機において、これら米国流の金融資本主義を代表する価値観はいずれも覆されたり、懐疑の目にさらされています。

要するに、金融の「富を生み出す」という側面が過剰にクローズアップされ、肥大化しすぎた反動が、今回の金融危機だったのではないでしょうか。これまで世界経済を牽引してきた、金融を核とする米国型経済モデルが危ういものとなったいま、新たな経済モデルや世界秩序の構築を模索するプロセスが始まったと言うこともできます。同時に、金融が生み出す本来の経済的価値とは何なのか、もういちど世界中がじっくりと考え直す必要もあるでしょう。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。



F <森永卓郎の経済探偵録>アメリカ金融危機の本質は何か(2008年10月22日更新)


今(08年)アメリカで起きている金融危機は、サブプライム・ローンという個別の金融商品の問題ではないと森永氏は分析している。アメリカの抱える問題の本質はいったい何なのであろうか。

アメリカの大手証券の経営はガタガタ

9月15日に米国証券業第4位のリーマン・ブラザーズ証券が経営破たんして以降、わずか半月の間に、アメリカの金融業界は、血の気が失せるほど、すっかり表情を変えてしまった。

リーマン・ブラザーズが破綻した同じ日に証券第3位のメリルリンチは、バンクオブアメリカに身売りした。さらに23日には、証券第2位のモルガン・スタンレーに対して三菱UFJフィナンシャル・グループが出資を決めた。三菱UFJの出資額は最終的に9500億円となり、モルガン・スタンレーの資本の21%を保有することになった。そして翌24日には第1位のゴールドマン・サックスが5300億円の公募増資を行なうと発表した。ゴールドマン・サックスはウォーレン・バフェット氏の投資会社バークシャー・ハザウェーにも5300億円の優先株を発行しており、合計1兆600億円の資本調達が行なわれることになる。

米国証券業界では、半年前に第5位のベーア・スターンズ社が、JPモルガンに身売りをしており、これで、わずか半年の間に全米第3位から第5位の証券会社が姿を消し、上位2社も1兆円規模で新たな資本を受け入れざるを得なくなった。総崩れと言ってもよいほど、アメリカの大手証券の経営はガタガタになっている。

それだけではない。9月25日、経営難に陥っていた貯蓄貸付組合最大手のワシントン・ミューチュアルが業務停止命令を受け経営破たんした。アメリカの銀行史上最大規模の経営破たんだった。そして、29日、経営危機に陥っていた米銀第4位のワコビアもウェルズ・ファーゴとの合併を模索している。金融危機は銀行部門にも広がったのだ。

さらに、9月29日には、金融機関が抱える不良債権を最大75兆円買い取る金融安定化法案が、造反議員が続出したために、米議会下院で否決されたことを受けて、ニューヨークダウは、同時多発テロ直後の暴落を上回る777ドルという史上最大の下落を演じた。

問題はサブプライム・ローンだけか

このまま行ったら世界恐慌になると言われるアメリカの厳しい金融危機は、サブプライム・ローンのこげつきが原因だと言われる。もちろん、きっかけは、サブプライム・ローンなのだが、サブプライム・ローンに限定して考えると問題が不鮮明になってしまう。

アメリカの住宅投資は日本円で70兆円程度だ。これがすべて住宅ローンでまかなわれていたとしても、住宅ローンのなかでサブプライム・ローンの占める割合は2割だから、年間のサブプライム・ローンの供与額は14兆円となる。サブプライム・ローンのブームは3年程度だったから、融資総額は42兆円だ。ただし、融資がこげついても、担保となっている住宅を処分すれば半分近くが回収できるから、損失はせいぜい20兆円台ということになる。

ところが、今回の金融危機で、世界の金融機関が自己資金を使って行なった損失処理は、すでに30兆円を超えている。つまり、サブプライム・ローンの損失処理は、数字の上ではすでに完了していると考えてもよいのだ。

もし、問題がサブプライム・ローンだけであれば、大手証券会社や銀行が破綻や救済合併に追い込まれるはずがないし、米国政府が75兆円もの資金を使って不良債権を買い取る必要もないはずだ。それなのに、なぜいま金融危機が起きているのかと言えば、信用バブルの崩壊がサブプライム・ローン以外にも広がっているということしか考えられない。

実際、IMF(国際通貨基金) のストロスカーン専務理事は9月24日に「今回の金融収縮に伴う損失は世界で138兆円に達する」という見通しを明らかにした。この数字が正しければ、サブプイライム・ローン以外に100兆円以上もの損失が出ていることになる。

得体の知れない「高利回り・低リスク」の証券

一体何をやったのか。その具体的内容は、アメリカの金融当局にしか分からない。ただ、アメリカの金融機関は、サブプライム・ローンだけでなく、普通の住宅ローン、自動車ローン、クレジットカードのローン、さらには商業用不動産から病院まで何でも証券化してきた。しかも、投資家からの資金に何倍もの借金を加えて投資金額を水増ししてきた。さらに、金融工学を使って、それらの証券を「ブレンド」し、得体の知れない「高利回り・低リスク」の証券として売り出したのだ。それらの証券は、格付け会社が高い格付けを与えたから、金融機関は安心して買ってしまった。高利回り・低リスクなどということは本来あり得ない。

レバレッジ(てこ)を使って、資金を5倍に増やせば、収益も5倍になるが、リスクも5倍になる。例えば、不動産に投資する証券の場合、資金を5倍にして投資すると、不動産が20%値下がりしただけで、その5倍、つまり100%の損失が出る。つまり、全損になってしまうのだ。

実際、アメリカの住宅価格はすでに2006年のピーク時と比べると20%以上下落している。地域によっては不動産価格の下落率が50%を超えているところもある。こうした値下がりが、レバレッジによって増幅されると、金融機関があっという間に債務超過になってしまうということは、十分にありうる事態なのだ。

つまり、いま起きているアメリカの金融危機は、サブプライム・ローンという個別の金融商品の問題ではなく、アメリカがこの20年間膨張させてきた信用バブルが崩壊に向かっているという問題なのだ。このことは、アメリカが行なってきた金融資本主義、金融立国ということ自体が、砂上の楼閣だったということを意味している。

アメリカの金融危機の日本への影響

日本にとって、アメリカの金融危機の影響は、(1)アメリカの景気低迷とドル安(円高)に伴う輸出低迷で、日本の景気がさらに後退して給料や賞与が減少する、(2)金融機関の保有する債券が減価することで、銀行の自己資本が毀損し、その結果、貸し渋りや貸しはがしが強化される。その結果企業倒産が増える、(3)企業がリストラを進めるために、失業率が上がり、新卒や中途での就職が困難になる、という3つのルートで現われるだろう。

ただ、もっと問題なのは、日本がこれまでアメリカの経済的繁栄をにらみながら、日本の経済システムや金融システムをアメリカに合わせて変革してきたという事実だ。小泉内閣が断行した不良債権処理というのは、まさにその思想の下で行なわれた政策だ。しかし、金融資本主義が崩壊していくなかで、日本の構造改革自体を見直していかないと、今後の経済運営が覚束なくなってくる。いま日本に求められているのは、金融が実物経済を支配するのではなく、実物経済のサポートを金融が行なう、ごく普通の経済システムだろう。



G アメリカ金融危機から世界金融危機へ、、その原因とは? - livedoor Blog(ブログ)2008年10月12日


この2週間のアメリカ発金融危機による、世界的株価暴落、為替変動はめまぐるしいものがあります。

4日には欧州財務閣僚による対応策、11日にはG7 財務大臣等による対応策が協議されています。

しかし、決定的な対策が打ち出されたかと言うと、、??疑問符が残ります。

これら財務大臣による協議結果は、

「金融危機は世界のすべての市民に深刻な影響を与えている」と危機の認識を示し、「世界中の国が協調して迅速に行動する必要がある。米国は金融危機に対処するため率先して特別な役割を担う用意がある」との発表に留まっています。当り前な、差し障りのない回答です。

 結局、決定的対策がない事を各国が認識している、、と言い換えても間違いありません。

日本では大和生命が破綻倒産しました。

しかし、これはアメリカ金融危機の根源であるサブプライムローンの直接影響を受けたのではなく、世界的金融危機による株価暴落による含み損増加によるものです。

間接的にサブプライムローンの影響を受けたものです。今後さらに株価が下がれば同様の含み損増加倒産が増えていくでしょう。

私たちは現在アメリカ発金融危機による世界金融危機に晒されていますが、ここで何故アメリカでここまで大きな金融危機が発生したか、、その原因をしっかり把握しておくことが今後の対応を考えるに当り重要だと思います。

G7の発表もスカッとしたものではありません。それには理由があります。その理由とは今回の金融危機の規模と、それを誘起した原因が尋常ではないからです。

まず住宅を購入する場合、物件価格に対し頭金となる貯蓄の有無、個人の所得能力と支払能力などを調査し、物件を担保とし銀行などから借り入れる(ローンを組む)のが普通です。

また、住宅購入とは、庶民にとっては人生における最大級の買い物であり、庶民の住宅購入とは投機的なギャンブルではなく、そこへ安定的に生涯住み着く、、という考え方がある筈です。

これは洋の東西を問わず普遍的なものではないかと思います。

アメリカでは2000年頃、白人人口の4分の3が住宅保有者であるのに、有色人種(黒人、プエルトリカン、エイジアン等)は住宅保有率が50%に満たない事を受け、住宅購入、保有の促進を目指した背景があります。

これを受け、低所得者への購入を促進するサブプライムローンが創設されています。

サブプライムローンは、物件価格に対し頭金となる貯蓄の有無、個人の所得能力と支払能力などの従来の購入者基準を下げた仕組みのローンです。

<続きをご覧ください>毛病葱

この結果、アメリカの住宅ローンは、2001年の600兆円を皮切りに、各年100兆円ずつ増加し、2005年にはローン残高が1,000兆円までになっています。その後、2006年には1,150兆円、サブプライムローン問題が発覚した2007年の1,200兆円をピークとし2008年も同様の1,200兆円ローン残高となっています。

単純に年間100兆円のローン(=資金)が住宅建設へ流れる訳ですから、インフレ状況(=住宅価格高騰)を引き起こします。

これが住宅バブルの構造です。

毎年住宅価格が上昇する、、債務者(ローン借入者)が支払い不能となった場合でも、住宅を売り飛ばせば債権者(ローン貸付銀行など)は、担保設定時の価格よりも高い値段で住宅が売れる環境であり、負債は発生しない、、

これがバブル期におけるサブプライムローンリスクの対処方法でした。

一方、毎年100兆円を超える住宅ローン増加、、一戸3,000万円平均の住宅なら年間350万戸の新築住宅が増えたことになります。

2001年以降2008年まで、1,200兆円に相当する住宅戸数は、4,000万戸、、

想像がつきませんが、1戸に平均3人住むとすれば、、1億2千万人を受け入れる戸数、、

日本人口がそっくり入ってしまうほどの規模です。。そんな現実がアメリカでは起こっていたわけです。

バブル崩壊はこれら4,000万戸のうち、どの位の規模か実数は判りませんが、抵当流れが起こり出した時期からはじまります。

抵当流れとは、債務者が住宅ローン支払い不能となり、債権者(銀行など)が住宅を取り立てた住宅です。

この抵当流れ住宅が増加し出した時点、、2003年頃から住宅価格上昇が止まり始め、、所謂ターニングポイントで、これ以降は価格が低下します。

抵当流れ、、即ち、ローン支払いが不能者にまでローンを組んでいた、、という事ですね。

これが顕在化し出したのが2003年以降であり、その後住宅価格は下がり始めます。バブル崩壊の兆候です。

 2003年の住宅ローン総額は、約800兆円、、2008年時点でのローン総額は1,200兆円、、

最悪を考えると、この差、1,200兆円−800兆円=400兆円、、

 なんと400兆円の抵当流れ物件が予想され、こうなると住宅市場への資金流れはますます停滞(=住宅価格低下)、さらに資金流入が困難(=住宅価格低下)、、とNegative Spiralへ突入します。

アメリカの住宅バブル崩壊とサブプライムローンによる不良債権増加は以上のメカニズムによると考えられます。

 この住宅バブル成長期には不動産関連株価や、ローン会社、銀行、証券、保険などの各会社株価が上昇を続け、他産業の不調を補いながら、Dow平均株価を押し上げて行きました。

このバブルを利用し、証券会社や個人投資家などは、レバレッジにより株取引を行い、実数の10倍、100倍あるいはそれ以上の株式利益を挙げる、、

という、まさにこの世の春を謳歌するほどの利益を得た筈です。

しかしこの利益謳歌も、抵当流れ住宅が増え出し住宅価格が下がり始めると、レバレッジが災いし、10倍、100倍の損失を被ることになります。

 そうなれば、Dow平均株価も低下し、、

と、危機的金融状態状況を引き出すことになってしまいます。

 長くなりましたが、アメリカ金融危機=Dow平均株価下落=住宅バブル崩壊とサブプライムローンの関連が大枠でリンクし、金融危機原因輪郭が見えてくると思います。

まったく予断を許さない状況です。記事を書いている瞬間に様々な変化が起こり、現在を書いているつもりが、過去を書いている、、そんな状況です。

すこし様子を見ながら、このアメリカ金融危機がどの様に世界へ蔓延したか、、そのメカニズムを次回考えてみようと思います。

今日も最後までありがとうございました。

毛病葱<気に入りましたらお願いします!>



H [トピックス]クドリン露財務相の談話:「金融危機の原因と今後の見通し」  - IBTimes(アイビータイムズ) - 世界の最新ビジネスニュース  2008年10月03日 23:13更新


 ロシアのクドリン財務相は、現在アメリカ経済が陥っている危機の根本的な原因は、景気後退の波であると述べた。同財務相は、旧約聖書から、7年間の豊作の後、7年間の飢餓が襲来するとエジプト人に予言したヨセフの夢説きの一説を引用し、現況をなぞらえた。また、クドリン財務相は、「アメリカは、景気後退局面にある。つまり、今後、半年、もしかすると、より長期にわたって、アメリカのGDPは低下するだろう。アメリカのGDPが減少を示したのは、2001年が最後であった」と言及した。これは、投資会社FINAMが協賛して、ヴェドモスチ紙が開催した会合での談話である。

   クドリン財務相は、流動性向上を目的に図った措置が、多少、経済成長率を支え、景気の後退を延引したもののそれに対抗するだけの効果はなかったと指摘した。また、種々の指標も今回の景気後退が前例のない深刻なものであることを示している。現在、ダウ平均は、10000ポイントの水準で推移している。クドリン財務相は、それが、2002年の水準である7700ポイント以下まで下落するだろうとの見解を示した。ロシア市場が、こうした下落基調から逃れるには、原油価格の上昇が前提条件であるが、今のところ、そうした流れにはないため、ダウ平均の下落傾向に追従する形となるだろう。クドリン財務大臣は、「当然、アメリカの景気後退は、世界の経済成長、及び新興国市場にも波及するだろう」と述べた。

   今回の問題の本質を明らかにし、ロシアの危機を解消するため、クドリン財務大臣は、事の起こりと出所を明確に示すべきとし、その標的として、サブプライムローンを挙げた。同財務大臣は、「現在、金融業界で発生している諸問題は、景気後退と共に、サブプライムローンの大量貸し出しによって、誘発されたものである」と指摘した。

   ここで、クドリン財務大臣は、例として、2000年代に入ってからの景気後退を引き合いに出した。2000年代初頭、アメリカは、政策金利を1%まで引き下げるという大胆な措置を取った。これに関して、クドリン財務大臣は、「政策金利を引き下げることで、景気のてこ入れを図ろうとしたのだろう」と解説した。いわゆる「バッドローン」の貸付は、この政策金利の引き下げを皮切りに広がった。そして、こうした「バッド・ローン」を商品化し、販売する必要性が生じた。サブプライム問題とは、大量の安い資金を経済に供給することによって、住宅ローン需要を高めようとしたアメリカ政府の作為によって生じたと言える。その結果、サブプライム・バブルがもたらされた。しかし、インフレ(大臣は、安い資金が大量に経済に投下される場合、インフレ率が加速するだろうと考える)が進行する中、信用度の低い債務者に対する貸付は、貸し倒れとなった。

   2000-2005年、アメリカの住宅着工件数は、2000年以前の5年間と比較して、2倍に増加した。この数字を見れば、銀行の不良資産が膨らんでいったことも一目瞭然である。クドリン財務大臣は、「バブルが弾けた結果、サブプライムローンは、まったく無価値と化してしまった。サブプライムローンが、アメリカの景気後退に、一層、拍車をかけた」と指摘する。

   周知のように、今回の金融危機は、アメリカ国外にも波及している。クドリン財務大臣は、「インフレの加速には、政策金利の引き上げが有効であると考えられるが、現在のような条件で、FRBが政策金利の引き上げに踏み切ることは不可能である」と述べる。こうした厳しい状況で、インフレが進行し、銀行及び経済全体にとって、リスクが増すことは必然である。

   さらに、クドリン財務大臣は、「アメリカは、負のスパイラルに入り込んでしまったようだ。信用の収縮、貸付の低下に続いて、生産活動の減少、そして、今後半年間はダウ平均の下落が見込まれる」と述べる。

   ロシアが世界経済に統合されているということは、自動的に、世界経済への依存度が高くなる。これは、資本市場に限ったことではない。クドリン財務大臣は、「今後数年における経済成長率は、低迷することが予測される。経済が持ち直してくるのは、2010年頃になるだろう。また、エネルギー需要が縮小することも、ロシアに影響を及ぼすだろう。従って、原油価格の大幅な下落とそれに伴う資本流入額の減少は避けられないだろう」との見解を示している。

   クドリン財務大臣は、現在のロシア経済は、悪条件にとらわれていると述べた。今後のロシアの経済発展は、国内成長要素の活性化・維持に対して、どのように取り組むかによって決まってくるだろう。クドリン財務大臣は、「現段階で、もっとも重要な課題は、世界金融危機の圧力に屈しないということである」と結論した。

※この記事は、日本初のロシア株 取扱証券会社であるARUJI GATE証券株式会社の提供です。
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I NHKスペシャル アメリカ発世界金融危機への疑問  真理のある民主主義を目指す経済社会論


NHKスペシャル アメリカ発 世界金融危機    2008年10月11日(土) 午後8時〜8時45分   総合テレビ

世界中から巨額の資金を集め、リスクの高い金融商品で運用していたアメリカのビジネスモデルが崩壊。
世界は深刻な経済危機に陥っている。 危機の背景と今後の行方を探る。

<自分のコメント>

本日、8時のNHKスペシャルでアメリカ発、世界金融危機という特集が組まれた。
2京2000兆に膨張した金融経済が、6600兆円の実体経済を振り回している。
アメリカで創造されたドルが、アメリカ人の購買を促進し、アメリカへ輸出する新興国の商品が購入され、それが再び、景気の良いアメリカに再投資されるという国際金融の流れが紹介されていた。

そして現在の金融恐慌の最大の原因となった不動産融資の証券化とサブプライム。
悪質なサブプライムローンなどは単品では証券として販売しにくいため、その他の優良なローン債権、例えば自動車ローンやカードローン、延滞率の少ないプライムローンなどと組み合わせ、証券化した(ローン債券の投資信託のようなもの)。更に、その証券化されたものを、他の証券化商品と何重にも組み合わせ、セット販売された。
その結果、サブプライムローンのような悪質な金融商品が、他の証券化商品と何重にも混ざってしまい、どの証券化商品がどれくらいのリスクがあるのかがわからなくなってしまっている。

また、リーマンブラザーズに代表される投資銀行が積極的に行っていた、レバレッジ投資についても紹介された。90年代から元手の資金の何倍もの借金を行い、投資し、借入金よりも高い利回りを出し、収益をあげるレバレッジ型投資が盛んになった。
ウォール街では元本の30倍くらいのレバレッジ投資が普通になっていたという。

現在、証券化商品とレバレッジ型投資の損失が急激に拡大しており、優良資産が不良資産にいつ化けるか分からないこと、そして金融経済の規模が実体経済に比べて、あまりにも巨大化している事が現在の金融危機の問題であるということだった。そしてバブルはアメリカだけではなく、ヨーロッパでも中国でも起こっていた。サブプライム問題は世界金融バブル崩壊の発端に過ぎなく、事の本質は金融業界の規制緩和、暴走にあるということが述べられていた。

三菱東京UFJの水野和夫エコノミストは、今後アメリカの住宅価値の下落は2〜3年は続くだろう、と予測していた。

証券化商品に対する保険をかけたCDS市場についての特集は組まれていなかったが、45分という時間制限がある中で、金融危機の分析がわかりやすく説明されていた点は良かった。

しかし事の起こりの原因については、大きな誤解をさせるような表現があった。何故、不動産の証券化が異常な規模で拡大したのかについて、現場の営業報酬のせいだ、と元日銀のエコノミストが述べられていた。
この答えに納得する人はほとんどいないだろう。
サブプライムや証券化商品を販売すれば高い営業報酬が与えられたのは事実だ。
しかし、それが今回の金融バブルの主要な原因の一つと言われると違うだろう。
現場の営業マンが頑張って販売したからバブルになったというのは、原因と結果の掛け違いだ。

原因は、銀行の不動産融資の債権化、証券化にある。

銀行が融資をすると、融資をした分だけマネーが増える。これを信用創造と呼ぶ。この機能があるのは、商業銀行だけであり、他の業界にはマネーを作る能力は無い(FRBから資金を借りられる一部の証券会社のような例外はある)。借りる側はすぐに融資されたマネーを使う。なぜなら、銀行の融資には金利がついているからだ。不動産の社長が銀行から融資を受ければ、不動産の売買にその資金を使うだろう。(製造業や他業種にはまわさないだろう)そのため、銀行が不動産業界に融資を増やせば、その額だけ不動産取引が増える。ここにバブルの原因がある。

銀行の不動産融資の証券化は、それまで銀行の融資に規制をかけていた、貸し倒れリスクと自己資本比率規制のたがを外してしまった。貸し倒れリスクは融資した銀行ではなく、ローンを証券化した金融商品を購入した投資家が引き受けることになった。自己資本比率は、銀行が融資を行うと減少するようになっているが、不動産融資を債権化することで帳簿上から消してしまった。 その結果、銀行は不動産業界に融資を行い続け、証券化市場が急拡大し、金融市場が異常な規模に巨大化した。その額は2京2000兆円で、実体経済6600兆円の約4倍近くなる。

銀行が融資をいくらでも行うことが出来るシステムを創り上げたのが、金融バブルの最大の原因だろう。

その責任はシステム設計者たちにある。つまり、FRBや政府にある。

その事について触れられず、現場の営業報酬の責任にしたのは、何か意図があったのだろうか?と勘ぐりたくなる。
番組の流れとしては、金融バブルが起きたのは、金融バブルに踊ったみんなのせいだ、と責任の所在が無くなっている。
番組で発言していたFRBの理事は、金融バブル時の中央銀行の政策は間違っていなかったと述べていた。

結局は原因について殆ど触れられなかったということだ。

原因ついて触れないなら、番組を見ている人たちは責任の所在も金融の実態も理解できないままになる。
これは立派な情報コントロールだろう。

世界経済を崩壊させかねない危機を作り出した所在について明らかにしなければ、市民が自分たちの利益になり、良心に基づいた判断を行うことなど出来ない。