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続折々の記 ⑤
【 01 】田中宇
【 02 】田中宇
【 03 】田中宇
【 04 】田中宇
【 05 】田中宇
【 06 】田中宇
【 07 】田中宇
【 08 】田中宇
【 09 】田中宇
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【 04 】
ロシア・ウクライナ関連記事集
ロシア・ウクライナ関連記事集
田中 宇
◆ドルを否定し、金・資源本位制になるロシア
【2022年4月5日】ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ戦争で米国覇権(米国側)から排除・敵視されたことを機に、世界の中で米同盟諸国でない非米的な国々を誘い、ドルの支配に象徴される米国覇権を拒否する非米地域・非米連合を作ろうとしている。プーチンは石油ガス鉱物農産物の資源の利権を持つ諸国の多くを非米側に取り込みつつ、非米側の経済システムを米国覇権から自立・隔離した、金地金や資源と通貨が固定相場で連携している「金・資源本位制」にしていきたい。
ルーブル化で資源国をドル離れに誘導するプーチン
【2022年4月3日】欧州は今後、ロシアからガスの送付を減らされて困窮し、最終的にガス代をルーブルで払う。それはイラン、イラク、サウジアラビアなど産油する非米諸国がロシアを見習って、米国側に石油ガス代金の決済をドルでなくイラン・リヤルなど自国通貨建てで払ってくれと求めることを誘発する。ロシアは最近、イランに対し、一緒に米国の経済制裁を迂回していこうと持ち掛けている。イランは大喜びだ。プーチンの策略が成功し、米国が避けたかったドルの基軸性と米国覇権の低下が引き起こされる。
ガスをルーブル建てにして米国側に報復するロシア
【2022年4月1日】欧州や日本は、ルーブルもしくは金地金でロシアにガス代を払うことになる。米国側は、プーチンの言うことをきかないわけにいかないことを露呈していく。この展開を見ている中国やインドや中東アフリカ中南米などの非米諸国は、ロシアとの関係を切らずに維持する傾向を強める。
◆現物側が金融側を下克上する
【2022年3月29日】ウクライナ戦争によって劇的に始まった徹底的な米露対決は、これまで下位にいて米英から虐げられてきた現物コモディティの国だったロシアが、同様に虐げられてきた他の非米諸国(新興諸国、現業諸国、コモディティ産出国)を巻き込んで、上位にいた米国側(米欧日、先進諸国)に対する下克上をやり出したことを意味する。現物コモディティの利権を握っている非米諸国は、これまで下位にいたものの、結束すれば世界のコモディティ利権の大半を握っている。今回のように非米側が結束すると、金融で世界を支配してきた上位の米国側と対決して勝ち、米英覇権を転覆して非米側が世界の主になる多極化を成功させられる。
◆世界を多極化したプーチン
【2022年3月28日】開戦前、ロシア軍はウクライナ東部2州に入るぐらいで、ウクライナ全体の制空権を奪って支配することはやらないだろうと予測されていた。露軍が東部2州に入るだけだったら、米国は今回のように世界を二分してしまう強烈な対露制裁をやらず、限定的な経済制裁にとどめただろう。プーチンは、世界を驚かすウクライナ全体の電撃支配をあえて挙行することで、米国が強烈な対露制裁をやって世界を二分してしまうことを誘発した。プーチンは世界を二分し、中国やBRICSなど非米諸国の全体を米国覇権から決別させた。米国覇権は「世界全体」から「世界の一部」に格下げされた。プーチンは世界を多極化した。
ロシアが負けそうだと勘違いして自滅する米欧
【2022年3月26日】米欧の権威筋が「ロシアはウクライナから敗退してもうすぐ崩壊する」と、事実と反対のことを誇張して妄想するほど、現実の米欧は経済的に自滅する傾向になる。そのためロシア政府は、米欧側が妄想する「ロシアは間もなく崩壊する」「露軍はウクライナで苦戦している」という大間違いな話を、あえて否定せず野放しにし、むしろ自ら間違った情報を流すことまでやっている。
◆コーカサスで和平が進む意味
【2022年3月23日】ロシアの南にあるコーカサスで、これまで米英が扇動してきた国際紛争があちこちで和解に向かっている。トルコとアルメニア、トルコとギリシャ、アルメニアとアゼルバイジャンという3つの紛争の当事国たちが、3月に入って和解に向けた外相会談などを行っている。3つの紛争はいずれも米英が、トルコやロシアを弱体化させておくために煽ってきた。米英の覇権が強い限り、3つの紛争も続く構造になっていた。今回、3つの紛争の当事国たちが和解交渉を進めている。これは、これまでトルコやロシアを弱体化してきた米英が、逆に影響力を喪失していることの現れだ。ロシアのウクライナ戦争も、2014年以降ウクライナを支配していた米英が力を喪失していく中で、ロシアがウクライナを影響圏として奪還する動きとして起きている。
プーチンの策に沿って米欧でロシア敵視を煽るゼレンスキー
【2022年3月22日】プーチンは、ゼレンスキーが米欧日の議会で演説してロシア敵視を扇動するのを、自分の戦略に沿った好ましいことと考えている。ゼレンスキーはロシアに言われたとおりに米欧でロシア敵視を煽るほど、戦争後もウクライナ大統領でいられる可能性が高くなる。米欧日の上層部には、ロシアとの石油ガス資源の関係が切れてしまうと自国経済が破綻するので避けたいと思っている勢力がかなりいる。ゼレンスキーの演説は、そうした米欧日の上層部の思惑を破壊し、米欧日が好戦的なロシア敵視のポピュリズムに流されてロシアとの関係を完全に切って経済的に自滅していく方に事態を押しやる。
ウクライナで妄想し負けていく米欧
【2022年3月20日】ウクライナでロシア軍が作戦をゆっくり展開しているのは、ウクライナの市民や都市を破壊しないようにしつつ、敵方の極右民兵団だけを潰せるようにしているからだ。それなのに欧米のマスコミ権威筋は「露軍はウクライナで苦戦し負けている」と勝手に間違った妄想を展開・喧伝し続け「ロシアが負けているのだから米欧NATOがウクライナの領空を露軍から奪還して飛行禁止区域を設定できる」と勘違いしている。
優勢になるロシア
【2022年3月16日】ロシアはゼレンスキーと交渉を続け、降参して政権内からロシア敵視勢力(米傀儡の極右ネオナチ)を追放すれば大統領職にとどめてやるなどと持ちかけ続け、米欧からの支援を期待できなくなったゼレンスキーはロシアの要求を受け入れ始めている。この流れの中で、NATO加盟をあきらめるという今回のゼレンスキーの発言が出てきた。ロシアは、ウクライナの非武装中立化と非ナチ化(米傀儡追放)という露軍侵攻の目的を達成しつつある。ゼレンスキーの側近は、早ければ1-2周間、遅くても5月までにロシアと和解すると言っている。
ウクライナ難民危機の誇張
【2022年3月15日】ロシアはゼレンスキー大統領を留任させたまま、ウクライナを反露から親露・露傀儡に転換させて、ウクライナ戦争を終わりにしたい。ロシアは、ウクライナをできるだけ手付かずのまま親露に転換させたいので、ウクライナの市民が死んだり難民になるのを望んでいない。ロシアはウクライナの諸都市を破壊して廃墟にしたいんだという見方は大間違いである。だがこれから米欧が不利になるほど、米欧日の報道は現実からの乖離がひどくなる。
◆ロシアは中国と結束して延命し、米欧はQE終了で金融破綻
【2022年3月11日】ウクライナ戦争が長引くほど、中露は結束し、米国は中露への制裁を強め、世界経済は中露側と米欧側に分裂していく。石油ガスなど資源の多くは中露側が持っている。大消費地帯である中国もインドも中露側だ。米欧側の強みは債券金融システムの巨大な資金力だが、そのちからは今、米連銀がインフレ対策としてQEを停止するので破綻寸前だ。QEをやめたら債券金融システムはバブル崩壊する。米欧側は強みを喪失し、生活必需品である石油ガス鉱物を中露側に握られ、経済破綻して敗北していく。中露側も経済難は続くが、地下資源と実体経済の成長構造があるので米欧をしのいで台頭していく。混乱の中、世界が多極型に転換する。
優勢なロシア、行き詰まる米欧、多極化する世界
【2022年3月9日】もし米欧が今回のような決定的なロシア外し・対露制裁をやらなかったら、中国はそれほどロシア寄りにならなかった。しかし米欧は決定的にロシアを外した。中国は、外されたロシアを丸ごと受け取る以外に選択肢がない。中国がプーチンを助けなければ、プーチンは弱体化して政権転覆され、ロシアはプーチン以前のような米英傀儡に乗っ取られた国になる。中央アジア諸国も米国側に奪われ、地政学的に中国自身が弱体化させられてしまう。だから中国がプーチンを見捨てることはない。ロシアは中国の10分の1しか人口がいない。中国がロシアを経済的に助けるのは簡単だ。2-3年ぐらいなら、中国は余裕でロシアの戦争を支援できる。
◆ドルはプーチンに潰されたことになる
【2022年3月6日】これから起きる米欧経済の破綻とドル崩壊は、QE中止と、流通網など供給側起因のインフレが原因なのだが、多分マスコミではそう報じられない。米欧の経済破綻はプーチンのせいだ、と言われるようになる。QEをやめてもインフレはおさまらないのだから、米連銀はQEをやめる必要などない。QEをやめなければ、いくらインフレになっても金融バブルは維持されて崩壊しない。QEは悪政だが、やめたら金融崩壊するのだから無意味にやめるのは大馬鹿だ。コロナ以降、マスコミは正気を失い、諜報界に操作されるまま、過激で稚拙な「ぜんぶプーチンが悪い」の絶叫を続けている。QE停止によるこれからの米国側の金融崩壊も、目くらまし的にプーチンのせいにされ、本質が隠される。
ロシアは意外と負けてない(2)
【2022年3月4日】多極化によるロシアの台頭と米国の衰退によって、東欧におけるロシアとEUの影響圏の境目が西の方に移動していく。EUは、早く対米自立してロシアとの話し合って新たな影響圏の境界を確定せねばならないのだが、それが全くできていない。EUが動かない分、米国がロシアを挑発し、ロシアが力づくで境界線を変更する挙に出たのが今回の戦争だ。米国の衰退と覇権の多極化は止められないので、ウクライナがロシアの影響圏に戻ることも止められない。
◆ロシアは意外と負けてない
【2022年3月2日】ロシアは米欧から排除されても孤立しない。むしろロシアは、多極化に先鞭をつける重要な役割を果たしていく。ロシア(と中国)は近年、サウジ主導のOPECと組み、世界の石油ガスの利権を米国側から奪うためのOPEC+を形成している。OPECは米国の傀儡だったが、OPEC+は非米組織へと転向した。ロシアは孤立するどころか逆に、サウジやイランや中国などと組み、米欧が買う石油ガスの価格をつり上げてインフレを加速させ、ドル崩壊や米欧の経済窮乏、政権転覆・トランプ再登板などを引き起こしていく。
ウクライナがアフガン化するかも
【2022年2月27日】ウクライナは、極右に乗っ取られたままだと「アフガン化」しかねない。ドイツやオランダは、ウクライナにスティンガーなど携帯用の非正規戦争用の兵器を大量に送り込む。今後のウクライナで露軍と戦うのは政府軍でなく、非正規軍である極右の民兵団だ。彼らは市街地に立てこもり、住民を「人間の盾」として使いつつ、アパートのバルコニーなどから、ロシア軍の飛行機や戦車を狙ってスティンガーを撃つ。自衛のために露軍が反撃すると、アパートが破壊され、大勢の市民が死傷する。キエフなどウクライナの美しい街が、カブールやベイルートやアレッポみたいな廃墟になる。
◆敵にガスを送るプーチン
【2022年2月26日】ロシアが、欧州へのガス送付を妨害していた反露政権のウクライナを占領し、ロシアが欧州に送るガスの量が再増加した。ロシアがウクライナを占領しガスルートを再開したので、ドイツはノルドストリーム2が不要になった。ただしこれには決定的な条件がある。それは「ドイツやEUが、ロシアのウクライナ支配を容認し、ロシア敵視をやめること」だ。ガスプロムは欧州に「ウクライナがロシアの傀儡国に戻ることを認めるなら、ガスの送付量をもっと増やせますよ」と言っている。日本の戦国時代の「敵に塩を送る」の策略的な故事と同様、プーチンは「敵にガスを送る」策略をやっている。
バイデンがプーチンをウクライナ侵攻に導いた
【2022年2月25日】米国がロシアの侵攻予定を察知したら、それを公表して当たったことを自慢するのでなく、機密扱いしつつ対応策をとって侵攻を思いとどまらせるべきだった。バイデンは全く逆のことをした。バイデンの未必の故意的な超愚策なウクライナ弱体化策の展開を見て、もしかするとそれまでウクライナ侵攻する気などなかったプーチンが、これなら電撃的に侵攻できそうだと思ってしまった可能性が十分にある。バイデンがプーチンをウクライナ侵攻に導いたことになる。
ロシアを制裁できない欧米
【2022年2月24日。露軍侵攻前に完成し、侵攻発生でボツにした記事】米国がノルドストリーム2の稼働を阻止するなら、代わりに米国から欧州への天然ガスの輸出を恒久に増やすなどの大対策が必須だったが、米国は何もやらなかった。米国はエネルギー面で欧州の安全を保障しなかった。そして今、米NATOに敵視されたロシアが2州の独立を承認して政治的な反撃を開始し、欧米NATOが対露制裁を発動しようとしたら、欧州は、自分たちがエネルギー面ですでにロシアに完敗してとても危険なガス不足・電力不足の状態に陥っているいることを発見し、驚愕している。エネルギー面で欧州をロシアの脅威から守ってやらなかったNATOは、決定的な信用失墜に直面している。
◆ロシアを「コロナ方式」で稚拙に敵視して強化する米政府
【2022年2月18日】米当局が対象物の脅威を極端に誇張し、その妄想に疑問を持つ者たちに危険人物のレッテルを貼って潰し、潰されたくないマスコミ権威筋の大多数が当局の妄想を事実のように報道し始め、当局の妄想を人々が事実として軽信する状況が定着する・・・。この構図はコロナ危機で史上初めて作られた。米当局は今回、コロナ危機の誇張戦略と同じことを、ロシアに対してやり始めている。米政府は「コロナ方式」でロシア敵視の誇張を急拡大し、妄想を事実として定着させようとしている。
ウクライナをロシア側に戻す?
【2022年2月16日】米政府が、ロシア軍がキエフを占領しそうだという妄想に基づいてウクライナから政府要員を総撤退し、カラー革命以来ウクライナで構築した政治諜報の資産を自滅させている。その空白を埋める形で、ロシアがウクライナを再支配していく新たな「逆カラー革命」の流れを作っている。バイデン政権は、米国を自滅させてロシアを台頭させる隠れ多極主義策をやっている。米英勢がいない状態が1年も続けば、ウクライナ政界の多数派はロシア側に戻る。そうなったら米英による奪還は不可能だ。
ロシアがウクライナ東部2州を併合しそう
【2022年2月14日】米国が発する2月16日侵攻説は根拠がある。それは、ウクライナ東部のドネツク、ルガンスクの2州が2014年のウクライナ内戦開始時からずっと宣言し、ロシアに承認を求めてきた「東部2州のウクライナからの分離独立とロシアへの併合」について、ロシア議会が2月14日に審議し、プーチン大統領が東部2州のロシア併合を認めてくれるよう請願する決議を可決する可能性があることだ。
ロシアは正義のためにウクライナに侵攻するかも
【2022年1月24日】欧米に対する自国の優位を感じているロシアの議会では、ウクライナ東部のロシア系住民の自治政府が住民投票などによってウクライナからの分離独立を宣言したら、ロシアがそれを支持する決議案が検討され始めている。クリミアのロシア併合時と同様、分離独立したウクライナ東部の政府がロシアへの併合を望み、ロシアがそれを受け入れることでロシアがドンバスを併合する展開が今後あり得る。
◆カザフスタン暴動の深層
【2022年1月13日】プーチンはトカエフを応援し、トカエフがロシアにこっそり支援されつつナザルバエフを倒す流れを作ろうとしたのでないか。今回の暴徒を裏で組織したのが誰であれ、暴動と並行して激化したトカエフとナザルバエフの権力闘争で、プーチンのロシアはトカエフを支援し、トカエフがナザルバエフを潰す下克上を成功に導いた。プーチンの支持がなかったら、トカエフは権力闘争に勝てなかった。プーチンのおかげで傀儡から権力者になれたトカエフは、今後もプーチンの言うことを聞くだろう。
◆敵視と譲歩を繰り返しロシアを優勢にする米国
【2021年12月17日】米国側がロシアを敵視するほど、ロシアは強くなって国際信用と覇権を拡大し、中露が結束して多極化が進み、米国覇権の衰退が加速する。バイデンの米国が、非現実的なロシア敵視策をぶち上げた後で譲歩する右往左往を繰り返すほど、米国の国際信用が低下し、ロシアが優勢になる。これは意図的な隠れ多極主義の策だ。この状態は来年も続く。
◆エネルギーが覇権を多極化する
【2021年12月2日】産業革命後、内燃機関を動かす化石燃料の供給を世界的に牛耳ることが、覇権国である英米の重要課題となってきた。サウジなど産油国の国防を米軍が担当することで、産油国を対米従属させておき、化石燃料の供給を米国が牛耳ってきた。だが今や、(1)人為説の妄想に基づいて化石燃料を毛嫌いする地球温暖化対策、(2)911やイエメン戦争やカショギ殺害でサウジを敵視する米国の自作自演策、(3)シェール石油ガスの増産によって米国はサウジなど海外からの石油輸入が不必要になり、サウジなどと縁切りできると豪語するシェール革命、という3つの要素により、化石燃料と米国覇権との連動性が切り離されてしまっている。
◆中露と米覇権の逆転
【2021年6月13日】中国とその傘下の一帯一路などの新興諸国は、今後さらに成長して国際的に魅力ある市場になっていく。半面、欧米など先進諸国は、社会成熟化とコロナ危機で経済が縮小し、市場としての魅力が減る。欧米など世界中の国際企業は、先進国市場でなく中国や非米側の市場で儲ける必要が増している。それなのに米国は中国への制裁を強め、中国も報復的な措置をとり始めている。国際企業は、米政府に対して中国制裁に参加するふりをしつつ、中国政府に対しては制裁に参加してないふりをせねばならない。欧州の企業はEUや自国政府に、米国の不合理な中国敵視への参加をやめてくれと言っている。だが、暴力団からと同様、米同盟からの足抜けは難しい。
◆トルコの奇策がウクライナ危機を解決する?
【2021年4月12日】シリアやリビア、ナゴルノカラバフなどで、ロシアとトルコが対立している感じで敵対する別々の紛争当事者を支援し、米欧を追い出して紛争を管理していくやり方を見ると、ウクライナ内戦でも、トルコがウクライナ系、ロシアがロシア系を支援する新体制を作り、それまで米欧がウクライナ系を支援してきたのをトルコが押しのけ、露トルコでウクライナを管理していこうとする新戦略だとわかる。トルコはウクライナに軍事支援することで、ウクライナに言うことを聞かせられるようになった。トルコは必要な時にウクライナのはしごを外し、ウクライナがロシアと和解せざるを得ないように仕向けていける。
◆ロシアを濡れ衣で敵視して強くする
【2021年3月19日】・・・これらの濡れ衣を理由にバイデン政権の米国は、ロシアへの敵視と経済制裁を強めている。この敵視は米国にとってプラスにならず、むしろロシアにとって打撃でなくプラスになる。以前と異なり、今の米国は、ロシアと中国を同時に敵視しているので、米国が中露を敵視するほど、中露は結束して米国に対抗するようになり、結束した中露が米国をしのぐ力を持つようになり、米国より中露の方が強くなる。ロシアは、一国だけだと米国に対抗できなかったが、中国と結束することで米国より強くなれる。
露サウジの米国潰しとしての原油暴落
【2020年4月24日】サウジアラビアとロシアがコロナ危機に便乗し、米国のシェール革命を潰して米国の金融システムと覇権を失墜させようとする策をやっている露サウジ(OPEC+)は米国からの依頼を受けて産油量を減らしたことになっている。だがサウジは、米国との談合前に、大量の原油をタンカーに積んで米国に送り込み、米国の石油タンクを一杯にして、今回のWTIの暴落を誘発した。4月20日のWTIの暴落とマイナス化の一因は、サウジが米国にねじ込んできた石油だ。
国連を再生するプーチン
【2020年1月27日】ロシアのプーチン大統領が、今年じゅうに国連安保理常任理事国の5か国で首脳会談を開こうと提案した。軍産が強かった従来は、安保理も米英仏vs露中の対立構造で、世界を安全・安定化するための建設的な話し合いが無理だった。だが、米国で軍産が弱まり、英国もEU離脱騒動で機能不全である今後、とくに今秋のトランプの再選後は、露中が主導し、米英仏も反対せず、安保理で世界の安全・安定に関して建設的な話し合いができる状況になる。
プーチンの新世界秩序
【2020年1月22日】スレイマニ殺害によって中東の覇権がロシアのものになっていく傾向が加速した直後に、プーチンが憲法を改定して24年以降もロシアの権力を握り続けることを決めた。このタイミングの一致はイスラエルの視点に立つと理解できる。プーチンが失脚したら中東は混乱し、イスラエルの存続もおぼつかなくなる。イスラエルに支持されている以上、プーチンが権力を長期化しても国際マスコミや軍産は非難・妨害しにくくなる。ロシアの権力者はプーチンでなければならない。それはロシアのためでなく、人類のためだ。
米国を中東から追い出すイラン中露
【2020年1月19日】イランからイラクを通ってシリアやレバノンの地中海岸に至る地域では、シリア内戦の終結によって、中国がインフラ整備を手掛けやすい状況になった。イランのスレイマニ傘下の軍勢が事態を安定させ、中国がインフラ整備をして、その代金として中国が中東の石油ガス利権を得る流れだ。その流れを壊す一つの策がトランプのスレイマニ殺害だった。トランプは、中国の下請けをしていたスレイマニを殺害した。トランプは、軍産のふりをした「隠れ多極主義」で、隠れ親イラン・隠れ親中国なので、殺害は逆効果になるように仕組まれているのだが。
NATOの脳死
【2019年11月14日】トランプは、EUに対米自立の好機を与えるために覇権放棄や同盟破壊をやっている。NATOの脳死を指摘した今回のマクロンの発言は、EU上層部が対米自立したがっていることを象徴している。だが、EU内には冷戦時代から受け継がれた軍産傀儡勢力がまだ多く残っており、彼らが邪魔をしているのでEUは対米自立できない。マクロンの発言は、現状に対する苛立ちの表明でしかない。とはいえ、日本にはそれすらない。対米自立したくない日本の官僚機構は、自分たちが世界の状況に無知になるよう仕向け、日本のマスコミは国内のくだらない話ばかり流す。日本人は世界の動きからわざと遅れている。これは上からの意図的な策略なので今後も是正されない。日本も国をあげて脳死状態だ。
プーチンが中東を平和にする
【2019年10月23日】トランプ米大統領による米軍のシリア撤退は、米国からロシアへの中東覇権の大規模な移譲を引き起こしている。私が驚いているのは、覇権移譲の速度が意外と速くしかも広範囲であること、英米のマスコミでこの覇権移譲を指摘するところが意外と多いことだ。覇権移譲が意外と速いのは、米議会でのトランプ弾劾の動きと関連しているかもしれない。
終わりゆくロシア敵視
【2019年7月20日】 ウクライナ問題がロシアの優勢で解決し、独仏とロシアが和解を進めていくのをしり目に、トランプはいずれ、ロシアの天然ガスをドイツに運ぶ建設中の海底パイプライン「ノルドストリーム2」がロシアの脅威を拡大しているのにドイツがそれを容認していると言って、ドイツやEUを経済制裁する。ロシアでなく米国から天然ガスを買えと言う。これは従来型(英国式)のロシア敵視策に見えるが、実はそうでなく、ドイツやEUが米国の命令に反逆・無視するように仕向け、欧州を親ロシアと対米自立に追いやる覇権放棄策だ。
ユーラシアの非米化
【2019年7月8日】 トランプから貿易戦争をふっかけられて非米傾向を強め、ロシアと結束して上海機構を率いる習近平の中国は、長期国際戦略として「一帯一路」を進めている。アフガニスタンは一帯一路の中心的な対象地域だ。中国は必然的に、アフガニスタンの安定と経済発展の主導役になる。トランプが今後進めそうなアフガン撤兵は、まさに習近平を助ける策だ。習近平は、米国が手を引いた後のアフガニスタンやパキスタン、イランなどの安定と成長を引き受けることで、トランプの覇権放棄を助けている。トランプと中露イランは敵対を演じつつ、裏でこっそり連携して多極化を進めている。
ロシアがイスラエル・イラン・アラブを和解させていく
【2019年7月1日】 6月24-25日に米露イスラエルの安保担当高官がエルサレムに集まった安保会議は、米国の退潮とロシア・イランの台頭の中で、今後のイスラエルの国家安全をどう守っていくのかを検討する、歴史的・地政学的に重要な会議だった。今後、米国の中東覇権がさらに消失し、ロシアの中東覇権が拡大する。ロシアは、イスラエルとイランの間だけでなく、イスラエルとアラブ諸国の敵対、その中心であるパレスチナ問題、そしてイランとアラブ諸国との敵対関係も、解消する方向で仲裁していきたい。これらの敵対関係はいずれも、中東の覇権国だった米英・軍産複合体が支配維持のために扇動してきた。米国の覇権低下とともに、敵対関係も崩れていく。
S400迎撃ミサイル:米は中露イランと戦争できない
【2019年6月20日】 ロシア製の高性能な迎撃ミサイルS400が、世界中の非米・反米諸国に配備され始めている。S400は米軍の攻撃をかなりの割合で迎撃できるため、米国が中露イラン側に対して戦争を仕掛けると犠牲が大きすぎる状態になっている。米国は、もう中露イラン側と戦争できない。対米従属=官僚独裁の維持のため、日本のマスコミや専門家はいまだに「米国は天下無敵だ」と喧伝するが、それは間違いである。
米国の覇権を抑止し始める中露
【2019年6月13日】習近平がロシアを訪問してプーチンとの結束を誇示した。これは「トランプが米国の覇権を放棄するなら、中露が米国以外の主要諸国を誘って、経済と安保の両面で、米国抜きの国際協調的な新世界秩序・多極型覇権体制を作ろう」という宣言だ。経済面では今後、米国から経済制裁や懲罰関税を課せられる諸国に対し、中露が「対米従属の経済構造をあきらめてこっち側と協力しませんか」と誘う。安保面では、イラン核問題、パレスチナの中東和平、北朝鮮核問題など紛争解決の主導役を、米国に任せず露中が手がける傾向が増す。
ロシアゲートとともに終わる軍産複合体
【2019年3月29日】「ロシアゲート」は、トランプが犯罪者にされていく疑惑だったが、それが濡れ衣だったとわかった今、次は、米民主党本部やクリントン陣営・オバマ政権・米中枢の諜報界に巣食う軍産複合体・マスコミといった「軍産エスタブ民主党」の勢力が、ロシアゲートをでっち上げてトランプを潰そうとしてきたことが問題になりそうだ。「スパイゲート」と呼ばれているこの疑惑は、これまでの軍産の悪事を暴き、軍産が犯罪者にされていくものだ。ロシアゲートは今後、スパイゲートに変身していく。
ロシア、イスラエル、イランによる中東新秩序
【2019年3月5日】イランやイスラエルは、中東覇権が米国からロシアに移る流れに呼応した動きを続けている。サウジアラビアやトルコなど他の諸国も同様だ。トランプが中東覇権放棄を進めているのに呼応してネタニヤフが米国よりロシアを安保的な提携先として選ぶ傾向を顕在化しているため、軍産(諜報界)がイスラエルの捜査当局を動かしてネタニヤフへの司法圧力を強めている。プーチンは、イスラエルとイランに挟まれて困ったりふりを演じつつ中東覇権を拡大している。
米国からロシア側に流れゆく中東覇権
【2018年10月1日】 ロシアは何度かイスラエルとイランを停戦・和解させようとしてきたが(少なくとも表向きは)うまくいってない。米国が退潮しているので、時間が経つほどイランが優勢になる。すでにイスラエルと国境を接するシリアとレバノンの両方が、地上軍の面でイランの傘下にある。イスラエルは早くイランと和解した方が良い。だが米イスラエルの安保諜報界では、イランを徹底的に敵視するタカ派(親イスラエルのふりをした反イスラエル派)が強く、イスラエルはイランと和解できないでいる。
印パを中露の方に追いやるトランプ
【2018年9月5日】 トランプ政権の米国が、インドとパキスタンの両方を経済制裁する方向に動いている。米国はこれまで、印パのどちらか一方を味方に、他方を敵方にして均衡戦略を続けてきたが、最近は、歴史的に前例のない両方敵視になっている。しかも米国に敵視されるほど、インドとパキスタンはそろって中国やロシアに接近し、米国抜き・多極型の新世界秩序の一員になる傾向だ。印パは、アフガン安定化策での協調を皮切りに和解を試み、70年間続いた敵対を終わらせようとしている。トランプの印パ敵視策は、非米的な方向での印パの和解につながっている。
ロシアの中東覇権を好むイスラエル
【2018年8月25日】 イスラエルは3方向に敵対問題を抱えてきた。南方戦線のガザのハマス、北方戦線のシリアとレバノンのアサドとヒズボラ、東方の西岸のファタハ(PA)との中東和平の3つである。この3つのうち、北方と南方を、すでにプーチンのロシアが解決している。イスラエルはすでに北方において、アサド、ヒズボラ、イランとの間で「冷たい和平」の停戦に入っている。そして今回、南方のガザでも停戦が発行した。速いテンポで安定化が進んでいる。プーチンの采配をトランプが支持する米露協調なので、イスラエル右派も和平を潰せない。いずれ何らかの形で西岸でも動きがある。
MH17撃墜事件:ひどくなるロシア敵視の濡れ衣
【2018年5月28日】 MH17撃墜事件の合同捜査班(JIT)は、事件に関する重要な情報を非公開にしたまま、匿名や出所不明の怪しい情報を積み上げてロシア犯人説を構成している。捜査班のロシア犯人説は、濡れ衣である可能性が高い。米国やNATOが捜査班の情報源になっていることから考えて、これは米政府のロシア敵視策の一環だ。とはいえ捜査班の発表のタイミングや濡れ衣の稚拙さに注目すると、これはトランプによる「濡れ衣のロシア敵視策が稚拙に過激にやることで、これまで対米従属で米国のロシア敵視策に追随してきた欧州(独仏)を親露・対米自立に追いやり、ロシアを隠然と強化する多極化・米覇権放棄策」かもしれない。
ロシアゲートで軍産に反撃するトランプ共和党
【2018年2月26日】 トランプがロシアのスパイだというロシアゲートの疑惑は、米諜報界・FBI司法省・米マスコミといった軍産複合体と民主党が、軍産に果たし合いを挑むトランプを潰すために捏造した無根拠な濡れ衣だ。根拠の大黒柱であるスティール報告書は、クリントン陣営が資金と情報を提供して英国MI6に作らせたものだが、中身がスカスカだ。最近、トランプの覇権放棄策の奏功によって、覇権勢力である軍産の力が低下するとともに、これまで軍産の傀儡だった共和党の主流派がトランプ支持へと寝返り、米議会の共和党勢力がロシアゲートの無根拠性を攻撃するメモを相次いで出し、FBI司法省に反撃し始めた。
米国に頼れずロシアと組むイスラエル
【2018年2月18日】 1月末にネタニヤフがプーチンと会ってイスラエルとイラン・シリア・レバノンの対立問題の解決を頼んだ後、おそらくプーチンの差し金で、シリアとレバノンの大統領が不可侵を約束する書簡をネタニヤフに送った。プーチンの仲裁で停戦交渉がひそかに進むと思った矢先、2月10日にイスラエルとシリア・イランが交戦した。その直後にはイスラエル警察がネタニヤフを起訴すべきと発表した。中東で影響力が落ちた米国を見限ってロシアの側に転向することで、イスラエルの自滅を防ごうとしたネタニヤフの動きを妨害したいイスラエルの右派が、イランの無人機がイスラエルに領空侵犯した話を捏造し、シリア・イランとの戦争を起こそうとした。だがその策謀は、シリアを攻撃したイスラエル戦闘機が、シリア軍によって30年ぶりに撃墜されて終わった。シリアの撃墜成功の裏にロシアの情報提供があった。
中東の覇権国になったロシア(1)
【2018年2月11日】 1月20日にトルコ軍がシリアのクルド人の自治都市に侵攻した件は、事前にロシアが了承していた。アサドを支援するロシアは、米国に頼ってアサド支配のシリアから分離独立していこうとするクルドを嫌っていたがそれを表に出さず、クルドを敵視するトルコのシリア侵攻を裏で認めることで、クルドがトルコに攻撃され、アサドの政府軍に泣きついてくるのを待った。露トルコアサドが、米クルドをへこます構図が進行している。
プーチンが北朝鮮問題を解決する
【2017年9月20日】 プーチンが提案した北をめぐる経済協力案は、北が国連決議に従わないと進められない。米国が北を先制攻撃すると脅し、北は脅されるほど突っ張って核ミサイルの開発を進める現状が続くなら、経済協力も実現しない。だが、今回のプーチン案は、従来の米国と中国が主導してきた解決策と、大きく異なっている。それは、今回の案が北朝鮮に対し「米国に脅されても挑発に乗らず無視して、露中や韓国と一緒に、鉄道やパイプラインをつないで経済開発しようよ」と「米国無視」を持ちかけていることだ。従来の解決案は米中主導だったので、北は米国を無視できず、米国の挑発に乗らざるを得なかったが、プーチン案はそれと正反対だ。
結束して国際問題の解決に乗り出す中露
【2017年7月8日】 中露は、00年に上海機構を作って以来、ユーラシアの安定化を一緒に進めてきた。それをさらに一歩進め、米国が手を出して失敗した北朝鮮、シリア、アフガニスタンなどの再安定化を中露が手がけることで、その地域の覇権を米国でなく中露が持つようにして、多極化を進めつつ世界を安定させようというのが6月のプーチンの提案だった。習近平はこれに賛成し、今回の中露結束の新戦略が始まった。
揺れる米欧同盟とロシア敵視
【2017年6月18日】 欧州諸国が、自国の安全を米国に守ってもらうのでなく、EU軍事統合によって自立的な安保戦略を持つようになると、隣人であるロシアとの関係は、不当に敵視するのでなく、現実を踏まえて協調した方が良いものになる。いずれ、分水嶺的な時期がくる。それを越えると、EUはポロシェンコに対し、ドンバスやクリミアを再獲得するのは無理だから分離を黙認し、現実的な対露関係を築けと要請するようになる。この姿勢は、今回のトランプのウクライナ仲裁の姿勢と同じだ。プーチンの希望とも合致する。いずれトランプは、ウクライナ仲裁に関してEUの協力が得られるようになる。
露イランのシリア安全地帯策
【2017年5月8日】 5月6日、ロシアが主導し、イランとトルコも誘って策定した、シリアの安全地帯策が発効した。シリアの内戦が下火になり、終結に向かっているため、停戦状態を維持する監視団をロシアとイランとトルコで結成する。内戦が再発しかねないシリア国内の4つの地域を安全地帯として設定し、監視団が現場の事態を監視する。米国が敵視する露イランが手がける策なので、米欧日のマスコミは、この安全地帯策を愚策と批判する傾向が強いが、それらは偏向報道だ。今回の安全地帯は、シリア内戦終結への大きな一歩になる。
ウクライナ東部を事実上併合するロシア
【2017年4月26日】 ロシアのラブロフ外相は、ロシアが東部2州の後ろ盾となり、EUがウクライナ政府の後ろ盾となって、双方にミンスク合意に基づく停戦を守らせ、内戦を終わらせていくのが良いと、EUのモゲリニ外相との会談で提案した。欧露会談の翌日、ウクライナが送電を停止して東部との経済関係を完全に断絶し、東部2州を分離してロシアに与える過程が完成した。ウクライナの事実上の二分割が確定し、ロシアが東部自治政府の面倒を見て、EUがキエフのウクライナ政府の面倒を見る新体制が始まったと考えられる。
内戦後のシリアを策定するロシア
【2017年3月24日】 従来のスンニ派懐柔策を放棄し、逆に厳しい「スンニ外し」「シャリア排除」を目指しているのが、ロシアの憲法草案やクルド支持から類推できる、米露が内戦後のシリアのために用意している政治体制だ。テロ戦争の構図を根絶するには、このような非民主的なやり方をとらざるを得ないと考えたのだろう。トルコが求める、クルドとアサドの影響圏の間のユーフラテス流域の従来のISカイダ地域に、ISカイダを排除した後に「穏健なスンニ派アラブ(実はISカイダの焼き直し)」の地域を挟み込むのは、プーチンやトランプが望まないことだった。
ロシアのシリア調停策の裏の裏
【2017年2月3日】 イランのミサイル試射を機に、イラン敵視を強めるトランプ政権。イラン敵視の主導役をネタニヤフに丸投げして押しつけるトランプ。それらにつきあうロシア。しかしロシアは裏で露軍基地の百年租借をアサドと契約。テヘランでは露イラン外交515周年の友好。ロシアは、アフガン、コーカサス、天然ガスでもイランと談合。露イランは齟齬するが敵対せず。米イスラエルにつきあうロシアの演技、現実主義。
まもなく米露が戦争する???
【2017年1月15日】 トランプ就任前後の米露開戦の可能性について、両極な2つの可能性がある。1)何も起こらない。政権交代後、米露和解が進み、米軍がしずかに東欧から米本土に撤退していく。2)戦争発生。トランプにも統制不能になる。下手をすると核戦争・・・の2つだ。しかし、可能性はこれだけでなく、3つ目がある。
プーチンとトランプがリビアを再統合しそう
【2016年12月8日】 リビアは、シリアと並び、オバマ政権の失策の象徴である。だがリビアは今後、トランプがプーチンと協力することで、再統合を成し遂げる可能性が見えてきている。ロシアがリビア東部の軍勢を支援すると、リビア内戦は、西部の優勢から東部の優勢、同胞団の優勢から反同胞団の優勢へと転換する。ロシア軍がリビア東部のベンガジに基地を作る予定との指摘もある。リビアの多くの勢力が、シリア内戦を成功裏に終結させつつあるロシアがリビア内戦も仲裁することを歓迎している。これまで西部のムスリム同胞団を支援していた米国は、トランプの就任とともに東部の反同胞団な勢力を支援するようになり、ロシアと歩調を合わせる。
進むシリア平定、ロシア台頭、米国不信
【2016年12月7日】 露シリア軍は、シリア全土のアルカイダをイドリブに追い込んで集める作戦だ。シリア各地の町や村で、シリア軍の攻撃を受けて追い出されたアルカイダの多くはイドリブに移動している。露シリア軍は、しばらくイドリブを放置する予定だ。露アサドは、アルカイダを穏健派と故意に誤認し続ける米政府を逆なですることを避けつつせず、イドリブ以外のシリアの安定化や再建を加速できる。トランプは「シリアに穏健派などいない。米政府は馬鹿げた誤認をしている」という趣旨の発言を繰り返しているので、いずれ米政府の誤認は解消される。そうしたら、露シリア軍がイドリブのアルカイダを掃討するだろう。
トランプが勝ち「新ヤルタ体制」に
【2016年11月6日】 私が最近注目したのは「トランプが米大統領になると、ロシアのプーチン、中国の習近平との間で、これからの世界秩序に関するサミットを行い、米露中の影響圏の再配置が行われるだろう」という予測だ。これが正しいとしたら、大統領選でトランプが勝つと、世界は「新ヤルタ体制」と呼ぶべき新たな状況に転換する。米国が「非米側」に転向してしまうことでもある。
シリアでロシアが猛攻撃
【2016年9月30日】 ロシアは、今回の米露主導の停戦が、シリアでの最後の米露協調の試みであると考えていた。それが米政権内の好戦派の妨害で失敗し、ロシアは「米国はISカイダを擁護するばかりで戦う気がない。米国と協調しようとする限り、シリア内戦を終わらせられない」と結論づけた。ロシアは米国に気兼ねするのをやめ、シリア政府、イラン系勢力と協力し、本気のテロリスト退治に乗り出した。それが、9月27日からの東アレッポへの猛攻撃の意味だ。ロシアは、オバマの任期末までにシリア全土から反政府武装勢力を一掃する気だ。
ロシアと和解する英国
【2016年9月7日】 英国が敵視をやめると、世界中のロシア敵視が雲散霧消し、露敵視に立脚していたNATOや欧米、英米の同盟関係、米国の欧州ユーラシア支配も、脆弱化・有名無実化してしまう。メイ政権の英政府は、そのあたりの意味を十分に知っている。だからこそ、できるだけ目立たないように対露和解を進めようとしている。
中東和平に着手するロシア
【2016年8月30日】 プーチンが中東和平に乗り出す理由は「イスラエルに恩を売る」ことに加えて「欧米が延々と失敗し続けた中東和平をプーチンが短期間に成功させ、世界を驚嘆させ、ロシアの国際信用を引き上げる」ことがある。ロシアに頼って自国の長期的な安全を確保したいネタニヤフは、ロシア主導の新たな中東和平を成功させてプーチンに花を持たせる何らかの策をすでに考えているのでないか。
ロシア敵視とドーピング
【2016年8月18日】 マクラーレン報告書は、ロシアをまるごとリオ五輪から締め出す目的が先走った「拙速」の観がある。このため、IOCや各種目の国際連盟を納得させることができず、陸上と重量挙げ以外の分野でロシア選手の出場を許す結果になった。独ARDの番組と昨年11月のWADA報告書は、ロシア政府にとって反論不能な強い論拠を持ったものだったが、今年のNYタイムスの記事とWADAマクラーレン報告書は、米国主導のロシア敵視策が目立ちすぎて稚拙さが露呈し、成功しなかった。
ロシア・トルコ・イラン同盟の形成
【2016年8月15日】 プーチンは、クルドをえさにエルドアンを引っ張り込むことで、トルコという、NATOにとって大事な「南の守り」を、欧米側からロシア側に転向させることに成功した。トルコの協力により、シリアの戦後の再建、イラクのテロ排除、非米化、安定化もやりやすくなった。トルコの仲間入りを機に、ロシア、トルコ、イランの3カ国の同盟関係が一気に強化されようとしている。シリア周辺だけでなく、北のコーカサスでも3カ国による安定化策が開始されている。
欧米からロシアに寝返るトルコ
【2016年7月4日】 エルドアンは、ロシアと仲直りする際の「おみやげ」として、難民危機を極限までひどくして、EUを解体に押しやったのかもしれない。外交専門家のダウトオール首相を辞めさせ、難民問題でのEUとの交渉を潰しつつ、外交政策の「常識外れ」をやるフリーハンドを得たエルドアンは、そのうち折を見てNATOからも離脱するかもしれない。EUを壊してロシアに再接近したやり口から見て、エルドアンは、トルコが抜けるとNATOが潰れるような仕掛けを作ってNATO離脱しかねない。
ナゴルノカラバフで米軍産が起こす戦争を終わらせる露イラン
【2016年4月7日】 ロシアとイランは、シリアで結束してテロ組織を攻撃してアサド政権を守る安定化策をやって成功しつつあり、同様の結束で、ナゴルノ・カラバフ紛争を解決しようとしている。米国の軍産が引き起こす国家破壊を露イランが阻止して解決に持っていく構図が、シリアに続いてコーカサスでも繰り返されている。露イランがアゼルバイジャンのアリエフ大統領を説得して紛争の再燃を防げれば、その後のコーカサスは米国でなく、露イランの影響下に入る傾向を強める。
中東を多極化するロシア
【2016年3月16日】 米国覇権で食っている「外交専門家」たちは「多極型覇権なんてうまくいかない。大国間の対立激化で破綻する。覇権は単独体制しかない」と言うが、ロシアがシリアの停戦をまとめ、中東全体を安定化に導こうとしている現状を見ると、米国の単独覇権体制より、ロシアや中国が形成しつつある多極型の体制の方がうまくいくことがわかる。
ロシアとOPECの結託
【2016年3月10日】 OPEC内の中小の産油諸国は「米国勢を追い詰めるのは結構だが、自分たちを財政破綻に追い込まない程度にしてくれ」と、ひどくなる原油安の中で嘆願している。これを放置すると、OPEC内のサウジの指導力が低下しかねない。そこに助け舟を出したのがロシアだった。
米欧がロシア敵視をやめない理由
【2016年2月17日】 米国だけでなく欧州諸国の上層部でも、EU統合派(親露派)と対米従属派(反露派、軍産)が暗闘している。米国に勧められて統合を始めた欧州は、米国に嫌われてまでEU統合を押し進めたいと思っていない。だから、米国の反露策が非常に理不尽でもそれにつき合い、EU統合を遅延させてきた。しかし、欧州が米国の傘下でぐずぐずしているうちに、米国の世界戦略はどんどん理不尽になり、欧州にとって弊害が増えている。シリアでは、大量の難民の発生と欧州への流入を止められず、EU統合の柱の一つである国境統合(シェンゲン条約体制)が破綻しかけている。ウクライナでの欧露対立で、対露貿易に頼ってきた東欧の経済難が進んでいる。
シリアをロシアに任せる米国
【2015年12月21日】 ケリーが訪露してプーチンにロシア主導のシリア問題解決を進めるよう促し、プーチンはそれを実行するが、米政府全体としてはロシア敵視を変えず、ロシアが勝手にシリア内戦に介入しているという解釈をマスコミに書かせる傾向が、以前から続いてきた。今回もそのパターンだ。オバマがこの策を続けるほど、中東は米国でなくロシアが主導する体制に転換していく。
ロシアに野望をくじかれたトルコ
【2015年10月30日】 プーチンは、トルコ軍のシリア侵攻を阻止するため、アサドに頼まれてシリアに軍事進出した。シリア政府軍を強化するなら、ロシアは新兵器や衛星写真など情報の供給、軍事顧問団の派遣をするだけで十分で、露軍の戦闘機がわざわざシリアに駐留して空爆を行う必要はない。露軍がシリアで空爆をしているのは、トルコにシリア侵攻を思いとどまらせるのが主目的と考えられる。
勝ちが見えてきたロシアのシリア進出
【2015年10月22日】 シリアのアサド大統領がモスクワを訪問してプーチンと会った。アサドが自国を離れるのは2011年の内戦開始以来初めてだ。アサドは露軍の空爆についてプーチンに感謝の意を表明した。すでに露シリアの側がテロリストに勝って内戦を終結させる見通しがついていないと、アサドがモスクワに来てプーチンに謝意を述べることはない。すでにシリア露イランは、この戦いに勝っている。
ロシアのシリア空爆の意味
【2015年10月4日】 ロシアの軍事進出は、ISISが退治され、シリアとイラクが露イランの傘下で安定していくという、全く新しい中東の政治体制を生み出している。米欧日のマスコミは、ロシアを意図的に悪者として描くことに執心している。しかし現実を見ると、米英仏のシリアでの空爆が、シリア政府の許可も受けず、国連安保理の決議も経ていない国際法上「違法」なものであるのに対し、ロシアの空爆は、シリア政府の正式な要請を受けて行われている「合法」なものだ。シリアへの軍事進出に関し、ロシアだけが合法で、米欧は違法だ。
ロシア主導の国連軍が米国製テロ組織を退治する?
【2015年9月24日】 米国が過激で無能な策を延々と続けている以上、中東はいつまでも混乱し、何百万人もの難民が発生し、彼らの一部が欧州に押し寄せる事態が続く。このままだと、ISISがアサド政権を倒してシリア全土を乗っ取り、シリアとイラクの一部が、リビアのような無政府状態の恒久内戦に陥りかねない。米国に任せておけないと考えたプーチンのロシアが、シリア政府軍を支援してISISを倒すため、ラタキアの露軍基地を強化して駐留してきたことは、中東の安定に寄与する「良いこと」である。
ウクライナ危機の終わり
【2015年7月30日】 米国が突然、ウクライナの内戦を急いで終わらせようとする動きを始めている。米国がイラン核問題やシリア内戦、ISISなどの中東の諸問題でロシアに頼り始め、中東の解決の主導役をロシアにやってもらう代わりに、ウクライナ問題で米国がロシアに譲歩した、と解説されている。しかしこの筋書きは、よく考えるとおかしい。ロシアは、米国が譲歩する前から、勝手にイランやシリアの問題解決を進めていたからだ。
中露がインドを取り込みユーラシアを席巻
【2015年7月15日】 ここ数年、米国の安保戦略や経済政策が次々と失敗したのに、米国の議会や政権中枢を好戦派や金融界救済派が握り続け、世界の運営を米国に任せておくことが危険な状態になった。中露は、米国覇権の支配を受けない地域を世界で増やす必要があると考え、上海機構やBRICSを拡大した。上海機構には、朝鮮半島、ASEAN、中東アラブ、欧州をのぞく、ユーラシア大陸のほとんどの国が参加している。中露は、今回印パを上海機構に入れ、ユーラシア大陸を席巻した。地政学の定理に従うと、今後の世界を支配するのは、米国でなく、中露ということになる。
米露対決の場になるマケドニア
【2015年5月26日】 米国勢が扇動するマケドニアの政権転覆策は、米国と露中との地政学的な陣取り合戦を超えた、バルカン諸国を民族間の殺し合いや政治混乱に陥れる危険をはらんでいる。諸民族が殺し合った98年のコソボ紛争の再燃があり得る。マケドニアの混乱に乗じて、アルバニアの首相が「いずれコソボを併合する」と大アルバニア主義を示唆する発言を放ち、セルビアが猛反発し、EUはうろたえている。
負けるためにやる露中イランとの新冷戦
【2015年5月17日】 事態は、米国が同盟国を率いて露中イランを封じ込める新冷戦体制の成功に向かっていない。数年前なら、まだ露中イランが弱かったので、新冷戦体制が組みやすかったが、米国は露中イランの優勢が増した今のタイミングをわざわざ選んで、新冷戦体制を構築している。米国はあまりに馬鹿だ。意図的に馬鹿をやっている。新冷戦体制は、失敗することを予定して開始された、隠れ多極主義の戦略だろう。
ウクライナ再停戦の経緯
【2015年2月18日】 ウクライナの事態は、独仏とポロシェンコが米国の過激な好戦策に迷惑し、プーチンと結託して停戦や和平を進めるミンスク協定を推進する半面、米国は和平を無視し、根拠を示さずロシアに軍事侵攻の濡れ衣をかけ、民意の支持を失ったウクライナの極右勢力を支援しつつ軍事介入を試みる不合理な好戦策に固執している。どうみてもプーチンの方が「正義」で、米国が「悪」だ。
ウクライナ米露戦争の瀬戸際
【2015年2月9日】 ウクライナに対する米国の軍事支援が始まると、最悪の場合、米露の軍隊がウクライナで直接交戦し、第三次世界大戦の様相を呈する。米国はNATOとして参戦するから、独仏はロシアと本格戦争せざるを得なくなる。独仏首脳は、この冷戦後最悪の危険事態を看過できず、米国がウクライナ軍事支援を開始する前にロシアとウクライナを和解させようと、モスクワとキエフに飛んだ。
ロシアが意図的にデフォルトする?
【2014年12月25日】 ロシア情勢に詳しい米国の在野の分析者の中には、プーチンが来年、ロシアの政府や民間の対外債務を意図的にデフォルトさせることで、ロシアの金融危機を米欧の金融界に逆感染させ、米欧で金融危機を起こす策略をやりそうだと分析する者が出てきている。露政府がデフォルトを宣言すると、欧米の政府や民間が対抗措置として自国内のロシアの政府や企業の資産を没収凍結し、露側はさらにその報復として自国内の欧米企業の資産を没収凍結するとともに、欧州に対する石油ガスの輸出を停止する。対露債権を多く持つ欧米金融機関の不良債権が増して破綻に瀕し、欧州諸国は石油ガス不足に陥って経済が大きく減速する。
イスラエルがロシアに頼る?
【2014年11月21日】 イラク侵攻とリーマン倒産以来、米国の力が落ち、覇権が露中やEUなどに多極化しつつある。唯一の後ろ盾である米国が弱まる中、イスラエルはいずれアラブ諸国やイランとの和解が必要になる。米国は仲裁者として適切でない。そこで出てくるのがロシアである。イスラエルは今春、ロシアがクリミアを併合し、米国が国連でロシア非難決議を提案した時、票決で棄権に回った。米国がロシアへの敵対を強めても、イスラエルは中立な立場をとっている。イスラエルの外相は昨年から何度もロシアを訪問し「国際戦略を米国だけに依存するのは危険だ」と発言している。
プーチンを怒らせ大胆にする
【2014年11月18日】 イラン核問題の解決は、オバマ政権8年間の集大成といえる事業だ。核問題が11月24日に交渉期限を迎える今ほど、オバマがロシアの協力を必要としている時はない。それなのにオバマは、わざわざ今のタイミングを選んで、ロシアのプーチンをことさら怒らせる挙に出ている。これは一見、矛盾している。しかしよく考えると、オバマはむしろプーチンを怒らせて大胆にさせた方が、イラン核問題(やその他の国際問題)を解決できる。
ウクライナを率いる隠れ親露派?
【2014年9月7日】 ウクライナ政府と東部の親露派が、ロシアなどの仲裁で停戦に合意した。ウクライナで厭戦気運が強まり、停戦は意外と長続きしそうだ。ウクライナでは、内戦の原因を作った好戦的な諸政党への支持が急落している。対照的に支持率が急上昇したのは、ペトロ・ポロシェンコ大統領を支持する政党「連帯」だ。ポロシェンコは、ウクライナを反露から親露に再転換させる策を入念に仕組んできた「隠れ親露派」であると考えられる。
ウクライナ軍の敗北
【2014年9月5日】 ウクライナ東部の内戦で親露派が優勢になり、政府軍が敗北している。しかしウクライナの国防相は敗北を認めず「これからはロシアとの戦争になる」と発表した。これまでのウクライナの内戦を、ウクライナ軍とロシア軍の国際的な戦争に発展させ、米国やNATOにウクライナの味方をしてロシアと戦争させる戦略だろう。ウクライナ軍が負けを認めると、ロシアの仲裁に従って親露派と停戦・和解せよという国際的な圧力がかかる。和解でなく、米欧をロシアと戦わせることで自国を守りたいウクライナの指導者たちは、敗北を認めるわけにいかない。
ロシアは孤立していない
【2014年9月3日】ロシアは、米欧から制裁されるほど、BRICSを新世界秩序として強化する動きに拍車をかける。米欧では、ロシアが制裁されて孤立化を深めていると報じられているが、この見方は米欧の独りよがりだ。対露制裁はロシアの孤立でなく、ロシアがBRICSを動かして世界を多極化し、米国覇権の不安定化につながる。
ウクライナでいずれ崩壊する米欧の正義
【2014年8月24日】 米国側の姿勢の揺らぎに同期して、EUの筆頭国で最大の親露国でもあるドイツで「もう米国の馬鹿げたロシア敵視策につき合って経済難を被るのはごめんだ」という叫びがマスコミで出てきている。ドイツの経済紙ハンデスブラットは8月上旬に「米欧は間違っている」と題する社説を出した。社説は「対露制裁はドイツの国益を損なう。ドイツのマスコミはロシア敵視のプロパガンダをやめるべきだ。現実策(つまり親露策)に立ち戻るべきだ」と主張している。
ウクライナの対露作戦としてのマレー機撃墜
【2014年7月28日】 ウクライナ軍にとってMH17の撃墜は、ドネツクに侵攻すべきまたとない好機を生み出している。この現状と、ウクライナ軍が撃墜して親露派のせいにしたか、もしくは親露派をだまして撃墜させたという、MH17撃墜をめぐるウクライナ軍の謀略を合わせて考えると、一つの推論が出てくる。ウクライナ軍は、膠着していた内戦を自分たちに有利なように進展させ、ドネツク陥落や内戦勝利に結びつけるために、親露派に濡れ衣を着せる目的で、MH17撃墜の謀略をやったのでないかという推論だ。
マレーシア機撃墜の情報戦でロシアに負ける米国
【2014年7月24日】 米政府は、事件発生から4日間、ロシア犯人説を主張し続けたが、根拠となる写真などの資料を何も発表しなかった。証拠を何も発表しないまま、事件に関する筋書きの説明が何度も変化した。国務省の報道官は記者会見でロシア犯人説の根拠を問われ、ウクライナ政府が流した録音や、ユーチューブ映像など、ネットに流布する出所の怪しいものを含む情報類のみを根拠として挙げ、米政府独自の具体的証拠を示さなかった。報道官は、ネットで流布する情報の中には、ロシア犯人説以外のもの(ウクライナ軍犯人説など)もあるのに、なぜ米政府は露犯人説にこだわるのかと問われて怒り出した。
プーチンに押しかけられて多極化に動く中国
【2014年5月26日】 中国は、今回プーチンが駆け込んで来なければ、今後もしばらく米国の覇権に楯突く姿勢を見せなかったかもしれない。中国だけでなくBRICSは全体として、米国の覇権が低下しつつあるので代わりの多極型の世界体制が必要だとの共通認識を持ちつつも、米国の代わりに覇権を負担するのもリスクがあるので、多極化は急がずに進める姿勢をとってきた。しかし米国が起こしたウクライナ危機で、プーチンが米欧との対立に追い込まれ、中国に対して「多極化を予定より早く進めよう」とさかんに誘っている。その対価はガスの安売りだけでなく、もともとロシアの傘下にあった中央アジア諸国において、中国が優先して経済利権を得ることをロシアが黙認することも含まれているという分析も出ている。
内戦になりそうでならないウクライナ
【2014年4月18日】 ウクライナ東部の町では、ウクライナ空軍の戦闘機やヘリコプターが威圧的な低空飛行を続けている。それだけを見ると、今にも本格的な鎮圧が行われて内戦に突入しそうだが、鎮圧行動に不可欠な地上軍は、奪われた装甲車の部隊以外には目撃されていない。空軍は威圧飛行するだけで空爆せず、心理戦に徹している。ウクライナ政府は、本格的な東部襲撃を躊躇しているのでなく、襲撃を試みたものの失敗し、装備や兵士など地上軍の戦力をかなり失い、襲撃を拡大できない状況だ。
ウクライナ内戦の瀬戸際
【2014年4月10日】 東部住民の決起でウクライナは再び緊迫している。東部のロシア系住民、ウクライナ極右政権、米軍産複合体といった、対立する各勢力の中には、緊張が激しくなって内戦化することを求める傾向が強い。ロシア系住民の中には、ウクライナ当局が弾圧を行って東部が内戦化し、ロシアが軍を侵攻させざるを得なくなる方がロシアに併合してもらえて良いと考える者がいる。ウクライナ新政権には、東部が内戦化してロシア軍が侵攻してくると、米国が軍事的にウクライナに肩入れを強めざるを得ず、米欧がウクライナを守る傾向が強まるとの考え方がある。ウクライナの政権転覆を誘発した米国の軍産複合体やネオコンは、東部が内戦になって露軍が侵攻した方が、米露の軍事対立が激化し、米政府が軍事を財政緊縮の例外として扱わざるを得なくなり、軍産複合体が儲かるので良いと考えている。
NATO延命策としてのウクライナ危機
【2014年4月4日】 2月に起きたウクライナの政権転覆は、米国の右派が誘導したものだ。米国が、なぜウクライナを政権転覆して米露対立を誘発する必要があったのかという問いに対する答えになりそうなのが「米覇権構造の一部であるNATOを存続させるため」である。
ウクライナ危機は日英イスラエルの転機(2)
【2014年3月25日】 唯一の後ろ盾だった米国が弱さを見せるので国家戦略を転換せざるを得ないのはイスラエルだけでない。日本も同じだ。日本は、戦後の国是だった対米従属を延命させるための策として、尖閣紛争などで中国や韓国との敵対を煽ってきた。しかしウクライナ危機で米露対立が激化するのと前後して、日本政府は中韓朝との敵対を緩和する動きを開始している・・・
露クリミア併合の意味
【2014年3月20日】 米欧とロシアの関係史をよく見ると、米欧の方が横暴なうそつきで、ロシアの方が被害者だ。冷戦後、米国はNATOを東欧に拡大しないと約束してロシア軍を東欧から撤退させたが、その後米国は約束を守らず、東欧をNATOに加盟させた。今回の危機直前の昨年11月、ロシアはEUに対し、ウクライナも入れた3者間でウクライナの安定について協議しようと提案しが、EUは無視し、逆にウクライナに「EUとロシアとどちらにつくか」と二者択一を強要した。当時の親露的なウクライナがロシアを選択すると、EUは米国と協力してウクライナの政権を転覆した。米欧のロシアに対する横暴やウソは、ソ連崩壊後のロシアが弱く、米国の覇権が圧倒的に強かったからだ。しかし今、米国の覇権は自滅的に崩壊する一方、ロシアは強さを取り戻すプーチンの長期戦略が成功し、今回のウクライナ危機で形勢の顕在化している。
ウクライナから米金融界の危機へ
【2014年3月17日】 ウクライナ危機が米国債やドルの危機につながりそうな点は、ロシア勢が制裁を逃れるために米国債を売った件など最近の出来事によるものでない。もっと長期的で目立たないが本質的な動きによる。今の米国の濡れ衣的なロシア敵視の強化は、こんご米国が自滅的に経済崩壊する際、BRICSが米国の延命を助けたり傍観するのでなく、隠然と米国が覇権を失ってBRICSの世界支配を強める方向の動きをすることにつながる。
米露相互制裁の行方
【2014年3月15日】 ロシアだけで米欧と金融戦争的な相互制裁を行っても、世界的に大した影響はなく、最終的にロシアの負けに終わる。しかし中国、ブラジル、インドなどのBRICSや他の新興市場諸国の中で、ロシアの側につく国が増えてくると、話が違ってくる。BRICSはリーマン危機後、相互の貿易決済で、基軸通貨として弱体化するドルを使わず、相互の通貨や金地金を使う新体制を構築してきた。ドルが基軸通貨として何とか使える限り、ドル崩壊を誘発する気はBRICSになかった。しかし今や・・・
ウクライナ危機は日英イスラエルの転機
【2014年3月11日】 ウクライナをめぐるロシアと米国の対立で、日英イスラエルのJIBS3カ国が、米国の強硬策についていけない傾向を露呈している。3カ国とも表向き米国のロシア制裁に賛成しているものの、実体面で、ロシアに対して強硬な姿勢をとりたがらない。たとえば英国は、米国の対露金融制裁に賛成したものの「英金融界を制裁対象から外すなら対露制裁に賛成する」との条件をつけた。これは事実上「制裁反対」の表明だ。
プーチンを強め、米国を弱めるウクライナ騒動
【2014年3月9日】 ドイツと米国はやり方こそ違え、プーチンのロシアを有利にしている。米国はウクライナの極右に政権をとらせ、クリミアに駐留権があるロシア軍の行動を「侵略だ」と言って騒いでいる。ロシアの行動は問題でないと中国やインド、発展途上諸国が言い出し、過激策を弄する米国の国際信用が昨夏のシリア空爆騒動に続き、今回も失墜している。半面、プーチンの冷静な対応が注目され、国際社会でのロシアの信用が拡大している。ウクライナ問題は、現実的な対応をとるドイツと、ウクライナの安定に不可欠なロシアとの協調で回避されそうだ。米国抜きで、BRICSやEUによって世界の運営が行われる「多極化」が進行する。
危うい米国のウクライナ地政学火遊び
【2014年3月5日】 米国がロシアの覇権拡大を阻止するために引き起こした今回の政権転覆は、ウクライナを国家分裂の危機に陥れた。親米の新政権は、極右ネオナチが治安維持や軍事を握っており、彼らはロシア系国民を排除してウクライナ人だけの国にする民族浄化を目標に、政権樹立直後にロシア語を公用語から外した。ロシア系住民が、極右の政権奪取を見て、ロシアに助けを求めたのは当然だった。
プーチンが米国とイランを和解させる?
【2013年9月17日】 オバマのシリア空爆策を裏の思惑のない、まっとうな戦略と考えると、あまりに稚拙な策である。これだけやり方が稚拙だと、シリア空爆策に裏の意図があったのでないかと考えてみる必要が出てくる。そして、シリア内戦の外交解決の流れを生んだロシアのプーチン大統領は、次にイラン核問題を外交策で解決しようと動き出している。米イランの歩み寄りは、プーチンの外交策と同期している。
米露関係の変化
【2012年6月21日】 米国が、太平洋の国際海軍演習「リムパック」に、初めてロシア軍を正式参加させた。米国はロシアに対し、いくつもの面で気をつかっている。プーチンは、米国の覇権を軽視する態度を崩さないまま、米国の気遣いに乗っている。ロシアがリムパックに参加したのも、ロシアが中国との関係を切って米国の中国包囲網に乗ったのでなく、米国から誘われるとリムパックに参加し、中国から誘われると黄海で中露合同の軍事演習をやっている。
日本をユーラシアに手招きするプーチン
【2012年3月16日】 日本政府は、官僚主導が続こうが、もしくは政界による「真の民主化」が達成されようが、日米同盟の崩壊(空洞化)で対米従属が続かなくなったら、米国をあてにせず独自に中国の台頭と対峙せねばならなくなる。その時、プーチンが発する「中国を台頭させすぎないよう、日露で組もうよ」という提案が、対米従属の眠りからさめた日本人の目に、突如として現実味を持った話に見えてくる。その事態がいつ来るのか、日本の政局からはまだ見えてこない。だがプーチンには、あと12年も時間がある。
多極化の申し子プーチン
【2012年3月14日】 米英中枢に、ロシアを強化して地政学的な逆転を引き起こそうする勢力がいる。その目的は世界規模の「資本の論理」だろう。ユーラシアを外側から支配し、ユーラシアの内側の経済発展を抑止してきた米英の覇権を、ユーラシア内側から転覆させることで、ユーラシアの内側やアフリカ、中南米など、米英覇権が支配力維持のために発展を阻害してきた世界の発展途上諸国の経済発展を誘発し、世界規模の経済成長を実現する長期戦略だと考えられる。この10年、プーチンの登場によって、この戦略は大きく実現した。
プーチンを敵視して強化してやる米国
【2011年12月19日】 ロシアのWTO加盟は米国に不利だが、実のところロシアの加盟は米国が誘発した。WTO加盟にはすべての加盟国の賛同が必要だが、ロシアと敵対するグルジアが反対し、ロシアの加盟を阻止してきた。だが今年11月、米国がグルジアに圧力をかけてロシアと貿易協定を結ばせ、グルジアはロシアのWTO加盟に反対しなくなり、ロシアの加盟が実現した。米国はわざわざプーチンが大統領になる時期を選んでWTO加盟を許す「利敵行為」をしている。
エネルギーで再台頭めざすロシア
【2011年11月11日】 米英中心の国際報道の世界では、ドイツにとって米英が同盟国であり、ロシアは警戒すべき脅威だ。しかし実際のところドイツにとって大きな脅威は、投機筋を使ってユーロを潰そうとする米英の方だ。ドイツが、ノルドストリームを通じ、目立たないかたちでロシアとの協調を深めるのは自然な流れだ。ロシアが石油ガスを世界各地に売って国際政治力を高めていこうとする戦略は、プーチンが00年に大統領になる前から持っていた構想だ。プーチンが大統領に戻ることが内定したのは9月だが、ロシアはちょうどその時期から、エネルギー輸出を使った国際政治戦略を再強化している。
プーチンをめざすアハマディネジャド
【2011年6月12日】 イランのアハマディネジャド大統領の任期は2013年までだ。しかし彼は、自分の娘婿で側近のマシャイエを次期選挙で当選させ、1期4年の大統領をやらせた後、17年に再び自分が大統領に返り咲こうと目論んでいる。このやり方はロシアのプーチン首相から学んだことだ。ロシア大統領も2期8年が上限で、プーチンは大統領を8年やった後、子分のメドベージェフに1期大統領をやらせ、来年の選挙で再び大統領に返り咲こうとしている。メドベージェフは最近、次期選挙に出ないと認めた。とはいえイランでは、大統領より聖職者集団の方が権力を持っている。アハマディネジャドと最高指導者ハメネイらの権力闘争が続いている。
メドベージェフ北方領土訪問の意味 【中国の台頭に反応する周辺諸国(2)】
【2010年11月6日】 前原外相率いる日本は、尖閣紛争を誘発して中国と対立することで、日米が結束して中国と対決する構図を作り、中国と米国がG2として結束するのを防ぎ、日米同盟を防衛しようとした。しかし「日米が結束して中国と対決する構図」は、ロシアから見ると、渇望していた「中露が結束して米国と対決する構図」そのものだった。ロシアは、頼まれていないのに、日中対決の喧嘩に割り込んできて、この喧嘩を「中露と日米の対決」に転換させた。ロシア政府は、対決の構図を持続させるほど、中国との結束を深められるので、国後島だけでなく、歯舞・色丹も訪問すると息巻いている。
ロシアと東欧の歴史紛争
【2010年6月11日】 ポーランドは、ロシアに融和的な米オバマ政権から疎遠にされ、欧州人の多くが「オバマはブッシュより良い」と思っているのに、ポーランド人だけは「ブッシュの方が良かった」と思っている。英国も財政難で国力が落ち、ポーランドは米英に頼りにくくなっている。ロシアはこのすきにポーランドに近づき、カチンの森事件やスターリンに対する歴史観を両国間ですり合わせて歴史観の対立を解消し、ポーランドを米英側から引き剥がして取り込もうとしている。ロシアは、歴史に関するポーランドの主張を受け入れつつも、相手の歴史観をすべて受け入れるのではなく、反論したり、英仏の責任を指摘したりして、論争を残しつつ、歴史観のすりあわせを行っている。
トルコ・ロシア同盟の出現
【2010年5月22日】 トルコはもともとNATOの一員として親米反露の戦略をとっていたが、911後の米国が中東やコーカサスの秩序を破壊する戦略を展開した、これはトルコにとって脅威となったので、静かに国策を転換し、ロシアと組んでコーカサスを独自に安定化し、結果的に米国の影響力を排除する動きを開始している。伝統的にロシアはアルメニアと親しく、トルコはアゼルバイジャンと親しい。ナゴルノカラバフ紛争は、ロシアとトルコがうまく仲裁すれば解決できる。ロシアは、アルメニアとトルコの関係改善を支援する一方で、トルコはロシアとグルジアの関係改善を仲介できる。トルコとロシアは「たすきがけ」の戦略関係にある。
中国の内外(3)中国に学ぶロシア
【2009年10月23日】 ロシアは、伝統的に中国を信用していないので、これまでは、中国共産党に学ぶなどということはしたくなかった。そもそも1910年代から共産党の運営技能を毛沢東ら中国人に教えてやったのはわれわれだ、と考えるロシア人のプライドもある。しかし、ここ1-2年の急激な覇権の多極化の結果、中国は欧米と並ぶ覇権国になっている。「政治独裁の維持したまま経済を自由化して発展する」というトウ小平以来の中国式発展モデルは、世界各地の発展途上国にもてはやされている。この激変の中、プーチンは考えを変え、中国に学ぶことにした。
中国とロシアの資本提携
【2009年9月9日】 中露関係は「文明の衝突」風の長期的な対立の構図を持つので、911後に米国が単独覇権主義を振りかざす中で中露が関係を好転させても、多くの人々は依然として、中露関係の基盤は対立であり、上海協力機構などを通じた中露協調は確固たるものではなく、一時的・便宜的なものにすぎないと考えてきた。しかし最近、この従来の常識をくつがえしそうな新事態が起きている。そのひとつは、ロシアが自国のエネルギー開発に中国の資本参加を認めたことだ。
米露逆転のアフガニスタン
【2009年2月10日】冷戦終結から10年すぎた今、アフガニスタンでの泥沼の占領劇は役者が米露逆転し、米欧(米軍を中心とするNATO軍)が占領の泥沼にはまっている。ロシアは米欧に対し、泥沼から出るための手助けをしても良いと言い出した。ただし、それには条件がある。米欧がロシアに対する敵対的な包囲網を解き、中央アジアやコーカサス、ウクライナなど、ロシアがソ連時代に持っていた周辺地域への覇権(影響圏の設定)の回復を許容するなら助けてやる、とロシアは言っている。
原油安に窮するロシア
【2008年12月31日】プーチンのロシアは原油安によって窮しているが、間もなく窮状から劇的に脱出できるかもしれない。それはイスラエルが起こしたガザ戦争が拡大してイランも巻き込まれそうになり、ペルシャ湾地域の石油供給が不安になって原油価格が高騰しそうだからである。イランとイスラエルが戦争になったら、原油はすぐにロシアの望む75ドル以上まで跳ね上がるだろう。
イラクの石油利権を中露に与える
【2008年9月14日】 中国とロシアは、03年の米イラク侵攻に際し、反対の立場を表明した。侵攻直後、米政府は「米による侵攻に協力賛同しなかった国には、イラクの石油開発など経済の利権を与えない」と公言していた。イラク政府は、米の傀儡政権として作られた。にもかかわらず今回、イラク政府は、中国に石油開発権を与え、ロシアを開発の入札に招待した。
覇権の起源(3)ロシアと英米
【2008年9月3日】覇権国を英から米に移転させるだけでなく、英が作った「欧州諸国は国民国家として発展するが、欧州以外の国々は植民地として発展を制限する」という欧州限定の均衡戦略(小均衡)を、米主導の「世界中に国民国家を作り、世界中を発展させる」という限定なしの均衡戦略(大均衡)に拡大させる動きが、第一次大戦を機に試みられたと考えられる。ニューヨークの資本家たちにも支援されていたロシア革命は、その動きの一つだった。
エネルギー覇権を広げるロシア
【2008年8月5日】 ロシアは、ガスプロムを使って欧州をエネルギー面から締め上げ、反露的な態度をとれないようにして、欧米間の亀裂を深め、欧米中心の支配体制の解体を目指している。この戦略はプーチンが独裁で進めているのではなく、エリツィンが最初に必要性を感じ、適切な進行役としてプーチンを選び出して後継大統領にして、プーチンは経済が得意な側近のメドベージェフを登用してさらに戦略を進めるという、ロシア中枢の長期計画となっている。
米露の接近、英の孤立(2)
【2008年3月25日】 ユーラシア大陸の各地域では、地元の大国が中心になって安定維持や紛争解決をやっていくという多極的な覇権体制が浮上しつつある。ユーラシア全体を米英中心のNATOが面倒見て、米英を敵視するロシアなどを包囲するというイギリスの戦略は、存在する余地がなくなる。NATOがロシアの助けを受けてアフガンから撤退すると、NATOは「安楽死」にいたる。イギリスが戦後60年間、アメリカを操って黒幕的に維持してきたユーラシア包囲網の戦略は終わり、アメリカはようやく昔の不干渉主義に戻れる。
米露の接近、英の孤立
【2008年3月22日】 ブッシュ政権は従来、欧米の軍事同盟であるNATOを率いてロシア包囲網を作り、ウクライナやグルジアといったロシア近傍の旧ソ連諸国をNATOに加盟させる、というロシア敵対策をとってきた。しかし3月17日に、アメリカのライス国務長官とゲイツ国防長官らがモスクワを訪問し、ロシア側と今後の戦略的関係について協議し、米露が劇的に和解しそうな感じが強くなっている。
中露の大国化、世界の多極化(2)
【2007年6月12日】 すでに政治や軍事の分野では、ロシアと中国、中央アジア、南アジア、イランを束ねる「上海協力機構」が強化されている。上海協力機構の枠組みが経済の分野に拡大されれば、ユーラシア版WTOとして機能しうる。欧米諸国の消費力は低下し、代わりに中国やインド、中近東諸国の消費力が上がっている。製造業の面では中国が台頭しているし、エネルギーは中東とロシアにある。ユーラシア諸国は、欧米を無視した経済運営が可能になっている。
エネルギー覇権を強めるロシア
【2007年5月22日】 ロシアのプーチン大統領が主導している天然ガスの非公式な新カルテルは、産油国のみの談合体だったOPECと異なり、中国やインドといった非欧米の消費国が参加している。OPECに対しては、大口の消費国が結束して対抗し、OPEC以外の産油国からの石油輸入を増やたり、石油の国際相場を投機で動かしてカルテル潰しができた。だが新カルテルでは、欧米諸国が結束してカルテルを潰そうとしても、カルテルの側は中国やインドに相対取引でガスを売ればいいだけなので困らない。新カルテルは、欧米中心の世界体制を壊そうとする政治的な画策である。
ユーラシア鉄道新時代
【2007年5月15日】 米英のナショナリズムに立って考えれば、米英中心の世界体制の永続が望ましく、ロシアのランドブリッジ構想は潰され続ける必要がある。だが、世界全体の経済発展を考えると、ロシアがランドブリッジになることは物流の効率化をもたらし、大きなプラスである。つまり、ベーリング海峡トンネルに対し、米英のナショナリストは反対だが、キャピタリスト(資本家)は賛成である。今後も米英の覇権力の低下が続いた場合、トンネル構想が実現していく可能性が高まる。
反米諸国に移る石油利権
【2007年3月20日】 FT紙によると、今や米英の石油会社は世界の石油利権を支配していない。米英のセブン・シスターズは、すでに「旧シスターズ」になってしまっており、代わりに欧米以外の国有石油会社が「新シスターズ」を結成し、世界の石油と天然ガスの利権を握るようになっているという。新しいセブン・シスターズとは、サウジアラビアのサウジアラムコ、ロシアのガスプロム、中国のCNPC(中国石油天然ガス集団)、イランのNIOC、ベネズエラのPDVSA、ブラジルのペトロブラス、マレーシアのペトロナスの7社である。
これより前もありますが、とりあえずここまで作業しました。2022年4月7日に一覧作成開始。