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続折々の記 2022 ⑫
【心に浮かぶよしなしごと】
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【 07 】11/15~     【 08 】11/17~     【 09 】11/20~
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【 05】11/10
     次世代半導体の国産化めざす新会社  Rapidus(ラピダス)
        理系学生は争奪戦、工業大学に行列 「IT専門でなくても構わない」
     バイデン氏「巨大な赤い波はなかった」  米中間選、混戦安
     トランプ氏「とてつもない成功収めた」  米中間選、混戦安
        勝者みえぬ接戦 安堵のバイデン氏、迫る下院の「ねじれ」
        激戦州「熱狂なき選挙」上院で共和敗北、ペンシルベニアの最終盤は
        (社説)米中間選挙 民主大国のゆがみ正せ
     米中間選挙で大規模不正の可能性   2022年11月10日  田中 宇
   
 2022/11/11 朝日新聞デジタル記事
次世代半導体の国産化めざす新会社    Rapidus(ラピダス)
   https://digital.asahi.com/articles/ASQCB6W0SQCBULFA02K.html?iref=comtop_Topnews2_02
   土居新平、若井琢水2022年11月10日 21時43分

写真・図版 【写真・図版】顕微鏡を通して見た半導体の電子回路=2021年5月25日、米ミネソタ州ブルーミントン、青山直篤撮影

 トヨタ自動車やソニーグループ、NTTなどの国内大手企業8社が、次世代半導体の国産化をめざす新会社に、共同で出資することがわかった。量子コンピューターや自動運転、人工知能(AI)などに使う先端半導体の量産技術を確立する狙い。幅広い製品に使われる半導体は、経済安全保障上も重要度が増しており、政府も補助金を出して支える。

 複数の関係者によると、新会社にはNEC、キオクシア(旧東芝メモリ)、ソフトバンク、デンソー、三菱UFJ銀行も出資。「Rapidus(ラピダス)」の社名で設立済みで、11日にも正式に発表する。

 社長には、米ウエスタンデジタルの日本法人トップを務めた小池淳義氏が就いた。半導体製造装置大手の東京エレクトロン前社長の東哲郎氏も役員に入る。AIや自動運転に欠かせない先端半導体の技術開発に取り組み、国内での早期の量産化をめざす。

 あらゆるハイテク製品に欠かせない半導体をめぐっては、経済安全保障の観点から政府が主導して国産化を進めている。今回の新会社の設立にも、政府の深い関与がうかがえる。

 経済産業省は6月、世界的半導体メーカーの台湾積体電路製造(TSMC)とソニーグループなどが熊本県につくる工場に、最大4760億円の補助金を出すことを決めた。

 キオクシアや、米大手マイクロン・テクノロジーの国内工場への投資計画にも相次ぎ支援を表明。国内で一定程度の半導体を安定的に確保できる体制の構築を急いでいる。次世代半導体の開発や量産技術の確立は、工場誘致の次のステップとなる。

 日本は素材や製造装置には強みがあるが、先端半導体の生産能力では米国や台湾、韓国に後れをとる。この弱点を克服するため、米国との外務・経済閣僚による「経済版2プラス2」で7月、半導体分野での連携を強めることで合意。米企業との共同研究を進めるため、産業技術総合研究所や理化学研究所、東大などによる研究開発組織を立ち上げると決めている。

 西村康稔経産相は日米での共同研究開発のための拠点を設けることを近く発表する。米IBMなどが参加する見通しで、2020年代後半の実用化をめざす。(土居新平、若井琢水)

新会社への出資が見込まれる8社
トヨタ自動車、ソニーグループ、NTT、NEC、ソフトバンク、デンソー、キオクシア、三菱UFJ銀行

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理系学生は争奪戦、工業大学に行列 「IT専門でなくても構わない」
   https://digital.asahi.com/articles/ASQBP362PQBDULFA006.html?iref=pc_rellink_03
   三浦惇平2022年10月21日 11時23分

 デジタル化が進んでIT人材が幅広い業界で求められるようになり、理系学生の採用競争が激しさを増しています。文系学生に比べて「短期決戦」で就職活動に臨む傾向もあり、企業側は求める専門性を持つ人材にいち早く出会おうと工夫を凝らしています。(三浦惇平)

採用意欲が高まる中、企業は理系人材の採用に苦戦しています。記事の後半では、人気が高まる理系学生の就職活動の傾向や、目当ての人材を獲得するための企業の工夫を紹介します。

「ITとは縁遠いイメージの企業」も興味

 10月の「内定解禁」が直前に迫った9月29日、企業の採用担当者と、大学などの就職担当者による情報交換会が東京都内で開かれた。83校が設けたブースのなかで、企業の担当者が列をつくったのは、10校ほど参加した理工系大学だ。

 「ITが専門でなくても構いません。興味関心のある学生はいませんか」

 芝浦工業大学(東京都江東区)のブースを訪れた採用担当者からは、そんな質問が飛んだ。友野範久就職・キャリア支援部長は「コロナ禍で仕事のやり方が変わって社内のITインフラが整備され、DX(デジタル化による変革)を進める会社も増えた。ITを使い慣れている理工系の学生の人気は高まっている」と話す。

 ソフトウェア設計などを専門的に学ぶ学生だけでなく、機械工学系の学生でもITスキルを評価されるケースが増えたという。研究のためにデータをとりまとめる経験を積んでいたり、プログラミングを身につけていたりするためだ。

 IT人材を求める業種は幅広い。食品や運輸、物流業界といった「ITとは縁遠いイメージの企業」(友野さん)からも声がかかるようになったという。

 この日はブースを訪れる企業が途切れず、約4時間で90社近くと面談した。友野さんは「理工系人材が活躍できる場はどの業種にもある。私たちも企業との接点を増やし、広い業界に学生を送り出したい」と意気込む。

 一方、参加した企業側からは焦りの声も聞かれた。名古屋市のシステム開発会社はエンジニア6人の採用をめざしているが、3人しか内定していない。採用担当者は「学生が内定をもらう時期はどんどん早くなっている」と嘆いた。

 コロナ禍からの経済の回復を受け、企業の採用意欲は文系理系を問わず高まっている。リクルートの調査では、10月1日時点の大学生の内定率は93・8%で、前年同期より1・4ポイント上昇した。

「短期決戦」の理系就活

 就職情報会社ディスコが5月に約900社に実施した調査で、理系人材の採用に苦戦していると答えた割合は46・4%と、文系学生(28・8%)を上回った。松本あゆみ研究員は「文系と理系の学生は7対3の割合とされ、そもそも理系は母数が足りない。それに加えてIT人材の需要が飛躍的に高まった」と説明する。

 理系学生は学校や教授の推薦で就職するケースもあるが、同社の調査では16・3%にとどまる。大多数は自由応募だ。

 ただ、5月以前に就活を終えた学生が文系は55・1%なのに対し、理系は74・6%にのぼる。説明会に参加したり面接を受けたりする企業数も、理系学生は文系より少ないという。松本さんは「研究に時間がかかる分、就職活動に時間を注ぎたくない。接点を持つ企業を絞る傾向にある」とみる。

 そのため企業側は、早い段階で理系学生との接点をつくり、専門性をいかせる場があることをアピールしようとしている。

 家具大手ニトリホールディングスは20年から、IT関連に特化したインターンシップ(就業体験)を始めた。「先端的なIT業務ができることを実感してもらう」(広報)ため、ECサイトの新機能を提案したり、店舗の業務プロセスを効率化するシステムを構築したりしてもらうという。

 小売り大手イオンは、横浜市立大学と20年から連携。データサイエンス学部の3年生を対象に、同社のグループ会社でデジタルマーケティングなどを5日間実習する機会を設けている。

 企業と理系学生をつなぐ民間サービスも広がりつつある。

 「LabBase(ラボベース)」(東京)が運営するサイトでは、学生が研究内容や論文の発表歴などの情報を無料で登録できる。企業側がその内容を見て、興味のある学生を「スカウト」する仕組みだ。

 このサービスは、加茂倫明代表(27)が17年に始めた。自身も東大の工学部生で、熱心に研究に取り組んでいた先輩が、就活はうまくいかずに悩んでいた姿を見て、理系学生がきちんと評価されるサイトをつくろうと考えたという。

 今ではサイトに登録する学生は累計5万人を超え、利用する企業は約600社にのぼる。

 同社の宮崎航一さんは「すばらしい開発をしていても、学生に知られていないのが課題という企業も多い。(同社のサイトでは)企業側からアプローチできるため、認知度の低い中小企業の利用も増えている」と語る。

 一方、学生側にとっては、自身の専門性をいかせる企業がわからないケースが多く、企業から声をかけてもらうことで必要とされていると気づけるという。

 2022/11/11
バイデン氏「巨大な赤い波はなかった」
トランプ氏「とてつもない成功収めた」

米中間選、混戦
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S15471131.html?ref=pcviewer

写真・図版  米中間選挙は投票日翌日の9日も開票作業が続いた。連邦議会の下院選は、トランプ前大統領が強い影響力を持つ共和党が過半数に迫る状況が続くが、上下両院とも大勢は判明していない。バイデン大統領の民主党と共和党とが接戦を展開した上院選では、南部ジョージア州で12月6日に決選投票が開かれることになり、どちらの党が上院を掌握するのか、約1カ月間、定まらない可能性もある。▼2面=善戦に民主安堵、7面=熱狂なき選挙、12面=社説

 中間選挙では大統領の政党が苦戦するのが通例だが、今回は接戦に持ち込んだ選挙区が多く、結果の確定に時間を要している。物価上昇などバイデン政権にとって不利な要素も多かった割には民主党が善戦したとの見方も広がっている。

 バイデン氏も9日の会見で「報道や専門家が予測していた『巨大な赤い波(共和党が席巻する状況)』はなかった」と述べた。2024年の大統領選について「再び立候補する意向だ」としつつ、来年初頭にも正式に判断すると説明した。

 一方、トランプ氏はFOXニュースの取材に「我々はとてつもない成功を収めた」と語った。自らが推薦した候補の多くが当選したと主張し、「誇りに思う」と評価。次の大統領選への出馬表明を念頭に置く「15日の重大発表」についても変更はないとした。

 米CNNによると、上院(定数100)は中西部ウィスコンシン州で共和党が勝つ見通しが固まり、米東部時間10日午前(日本時間10日午後)時点で、民主党が48議席、共和党が49議席を確保した。上院の主導権を握るには、ハリス副大統領(民主)が上院議長を務める民主党は50議席、共和党は51議席が必要となる。いずれの党も、残るジョージア、ネバダ、アリゾナ3州のうち2州で勝てば上院を掌握できる情勢だ。

 AP通信は9日、ジョージア州での得票が、両党の候補とも州法に定められた過半数に至らず、12月6日に決選投票を実施すると報じた。片方の党がネバダとアリゾナ両州で勝たない限り、上院の支配権はジョージアの決選投票で決まる。

 下院選は、CNNによると10日午前10時半(日本時間11日午前0時半)時点で定数435のうち民主党が191議席、共和党が209議席を確保した。事前の情勢調査で見込まれていたほどの勢いはないが、共和党の優勢が続いている。

 下院の支配が共和党に移れば、内政・外交両面で制約は大きくなる。バイデン氏は会見で「選挙結果がどうなろうと、共和党と協力する用意がある」と語った。(ワシントン=合田禄)

▼2面=(アメリカ中間選挙2022)善戦に民主安堵
勝者みえぬ接戦 安堵のバイデン氏、迫る下院の「ねじれ」      
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S15471046.html?ref=pcviewer
   2022年11月11日 5時00分

写真・図版 【写真・図版】政権と議会が「ねじれ」状態になると

 米中間選挙は、上下院ともに「勝者」がみえない異例の接戦となった。民主党が下院を失えばバイデン政権にとって痛手だが、党内では予想外の善戦に安心感も広がる。大勝を逃した共和党では、選挙の顔となったトランプ前大統領への批判も噴き出し始めた。▼1面参照

 投票日から一夜が明けても、米メディアでは選挙の勝者を明示できない展開が続いた。米紙ワシントン・ポストは「民主党はサプライズ勝利を喜ぶが、パワーバランスは宙に浮く」と評した。

 両党のうち前向きな雰囲気が目立つのは民主党の方だ。事前に劣勢が伝えられていただけに、「大敗」という最悪の事態を免れた安堵(あんど)感が強い。

 9日午後、ホワイトハウスの記者会見場に現れたバイデン氏の顔には笑顔が垣間見えた。「共和党が下院を支配するとしても、小差になるだろう。我々は30~50議席を失うと予測されていたが、それは起こりそうにない」と語った。

 ペロシ下院議長(民主)も「明らかに下院の民主党は期待を超えている」と前向きに評価した。

 ただ、民主党は少なくとも下院では過半数を明け渡す可能性が高い。大敗は免れたが、議会とバイデン政権の「ねじれ」が生じ、残り2年の政権運営は困難になる見通しだ。

 バイデン政権は人工妊娠中絶の権利の法制化を目指してきたが、実現は難しくなる。社会福祉や気候変動といった重視する政策においても、議会が予算の決定権を握るため、合意を得られる見通しは乏しい。

 さらに上院も共和党に過半数を許せば、裁判官や政府高官などの人事承認権を握られる。

 下院の特別委員会では、昨年1月の連邦議会襲撃事件をめぐるトランプ氏の関与について調査を進めてきた。だが共和党は同委員会を解散させ、アフガニスタンからの米軍撤退や移民問題への対応、バイデン氏の次男ハンター氏の外国でのビジネスをめぐる問題などの追及に乗り出す方針だ。バイデン氏を弾劾(だんがい)訴追しようとする動きもある。

 一方で、共和党側も自由に議会を動かせるわけではない。法案成立には大統領の署名が必要だが、バイデン氏は「私は拒否権のペンを持っている」と明言する。「ねじれ」となれば議会は行き詰まり状態となる可能性が高い。歴代の米政権も中間選挙後に「ねじれ」に陥ることが多く、バイデン政権は気候変動対策などの大型法案の成立を急いできた。今後は大統領の権限が広い外交面などに力を入れることも考えられる。(ワシントン=高野遼)

 ■トランプ氏への懐疑、党内からも

 予想に反して共和党の議席が伸び悩んでいることを受け、米国内ではトランプ前大統領への批判的な見方も出始めた。

 トランプ氏は200人以上の共和党候補に自身の「推薦」を出し、中間選挙の「陰の主役」として注目を集めてきた。ところが、カギとなる接戦ではトランプ氏推薦の候補が苦戦するケースが目立つ。トランプ氏が各地で応援演説を繰り返したことで、かえって無党派層に共和党が敬遠されたとの指摘もある。

 CNNのジム・アコスタ記者は9日、トランプ前大統領の顧問の話として、トランプ氏が「激怒」し、「みんなに怒鳴っている」とツイートした。

 トランプ氏はSNSへの投稿で、自身への批判を「フェイクニュース」と一蹴する。だが、保守派の論客やトランプ氏の周辺からも「共和党はトランプ氏の後を追って崖から転落した」といった厳しい評価が報じられている。

 今後の関心は、2年後の大統領選にも向けられる。

 トランプ氏は中間選挙前日の7日夜、「15日にとても大きな発表をする」と宣言。選挙での共和党の大勝の勢いに乗って、大統領選への出馬を正式に表明するシナリオを描いていたとみられる。だが複数の米メディアは、12月にジョージア州で上院選の決選投票が終わるまでは「大きな発表」を延期するよう求める声が周囲からは出ていると報じている。

 トランプ氏と対照的に、今回の選挙で評価を高めた人物もいる。フロリダ州知事に再選したデサンティス氏だ。世論調査では、次期大統領選の共和党候補としてトランプ氏に次ぐ人気を誇り、44歳と若手のホープだ。知事選では59%の得票を集め、早々に当選を確実にした。本人は大統領選への立候補について明言を避けているが、党内では「待望論」が高まっている。

 両者は近い関係にあったが、最近は「対立」関係を強調する報道も目立つ。選挙戦終盤にトランプ氏がフロリダ州で集会を開いた際にも、デサンティス氏の姿はなかった。

 トランプ氏が出馬宣言を急ぐ背景には、デサンティス氏ら他候補に先んじることで、党内の候補者指名争いをリードする思惑もあるとみられている。

 今回の選挙では、トランプ氏への忠誠を示す候補も多く当選しており、党内で影響力が高まるとの観測もある。幾度もの逆境を乗り越えて力を発揮してきたトランプ氏だけに、今後の出方に注目が集まっている。(ワシントン=高野遼)

 ■増える郵便投票、集計反映に時間 アリゾナ州では8割

 選挙の真の「勝者」がわからず、権力の重心が不明確なまま米政界は動き出す。なぜ結果の集計にここまで時間がかかるのか。

 まずは、接戦で票差が小さく、判定に慎重にならざるを得ないためだ。ロイター通信とCBSニュースによると、上院選で結果が見えていないネバダ州は、集計作業が数日間かかると予想されていた。郵便投票などが増えていることも影響している。アリゾナ州では、有権者の約8割が郵送による投票を選ぶという。

 米紙ワシントン・ポストによると、下院選でまだ結果が出ていない選挙区が多く残るカリフォルニア州では、選挙日の消印がある投票用紙は、11月15日まで集計が可能だ。郵便投票は民主党支持者が使う傾向がある。直接投票された投票用紙を先に集計し、後から郵便投票を開票すると、最初は共和党候補が優位でも、後に逆転することがある。

 ワシントン・ポストは、AP通信の選挙担当者が「今年は各州でどの政党の支持者が、どのような方法で投票したかが不明確なので、判定が難しい」と語ったと報じた。(ワシントン=合田禄)

▼7面=(アメリカ中間選挙2022)熱狂なき選挙
激戦州「熱狂なき選挙」
上院で共和敗北、ペンシルベニアの最終盤は
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S15471147.html?ref=pcviewer
   2022年11月11日 5時00分

 米中間選挙で、バイデン大統領の民主党による善戦を象徴する激戦州となったのがペンシルベニアだった。引退した共和党上院議員の議席を争う選挙区で、トランプ前大統領の推薦候補は民主党候補に敗れた。何が勝敗を分けたのか。最終盤の戦いを追った。

 ■集会に「Trump」

 7日、投開票日前夜。トランプ氏の推薦を受けた心臓外科医のメフメット・オズ氏(62)は州東部ペンズバーグで集会を開いた。参加した看護師のリサ・フレイムさん(52)は「経済はひどいし、犯罪は深刻だ。国には変化が必要だ」とオズ氏を支持する理由を挙げた。トランプ氏の推薦も後押しになったという。

 オズ氏の集会には、次の大統領選への出馬を求める「Trump 2024」などと書かれた帽子をかぶる人たちが多い。聴衆のほとんどが、トランプ氏の支持者のように見えた。

 健康情報番組の司会を務めたオズ氏は全米で高い知名度を持つ。だが共和党内の保守層からの人気は高くなかった。トランプ氏の推薦が、混戦となった共和党の予備選を勝ち抜く大きな要因となった。

 トランプ氏にとっても、中間選挙の結果を自らの大統領選への再出馬に向けた起爆剤とするため、知名度の高いオズ氏は好都合だった。トランプ氏は選挙戦最終盤の11月5日、ペンシルベニア州に応援演説に入った。「この国の分け目の投票になる」と強調。オズ氏とトランプ氏は、互いに利用し、利用される関係だった。

 ■推薦が逆効果に

 だが、オズ氏は予備選を終えた後、トランプ氏と距離を取る動きも見せてきた。幅広い層に支持を広げる戦略だったとみられる。

 オズ氏は7日の集会では、急激な物価上昇(インフレ)や犯罪の増加、薬物問題を取り上げて民主党を批判。抽象的な理念よりも身近な懸念に働きかけた。「私は政治家ではなく、心臓外科医だ。団結して、命を脅かす問題に取り組んできた。分断はしない」

 「分断」を避けることを強調し、「ワシントン(米政界)にバランスをもたらす」と繰り返し訴えたのは、トランプ氏への批判に配慮したかのようだった。

 それでも、オズ氏への支持は広がらなかった。

 8日に州東部の投票所を訪れた建設業のジム・ドゥマイさん(61)は、民主党に入れた。長年共和党を支持し、2020年の大統領選でもトランプ氏に投票した。だがトランプ氏の言動を「恐ろしい」と感じ「トランプが支援する候補には投票しない」と決めたという。トランプ氏の推薦が逆効果も生んでいたようだ。

 ペンシルベニアは、大統領選のたび共和、民主候補が接戦を演じる「スイングステート(揺れ動く州)」だ。16年の大統領選ではトランプ氏が勝利し、20年にはバイデン氏が制した。

 州内には、米東部の名門ペンシルベニア大学があるフィラデルフィア都市圏から、「ラストベルト」(さびついた工業地帯)に含まれる西部、保守的な農村部まで多様な地域を抱え込む。都市と農村が、民主党と共和党との最も顕著な分断線になってきた。民主党側はオズ氏の追い上げに危機感を持ち、農村部や無党派層への支持を広げることに躍起だった。

 ■ばらばらの争点

 7日昼、州東部のノーサンプトン郡を歩いた。非営利団体「スタンズ・アップ」のパトリック・ワルゴーさん(25)が、上院選の民主党候補ジョン・フェターマン氏(53)への投票を呼びかけ、戸別訪問をしていた。

 「あなたにとって、何が一番の問題ですか?」

 ワルゴーさんが尋ねて歩く。応じた女性は、「人工妊娠中絶の権利が一番大事だ。こんなに大事な選挙はない」と答えていた。

 取材した有権者のうち、共和党と民主党の支持者では、重視する争点が全く異なっていた。民主党に投票した人たちからは、今年6月に連邦最高裁が人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めない判決を出したことを懸念する声が多かった。

 ただ、民主党も支持基盤を広げたとは言いがたい。共和党、民主党の双方にとって、「熱狂なき選挙」だったようにも見えた。有権者からは「どちらからも選びたくない」との声も聞かれた。

 ノーサンプトン郡の民主党委員長、マシュー・マンシー氏(44)は懸念する。「(米連邦議会議事堂の襲撃事件のような)政治的暴力が起き、うんざりし、投票に行くかどうかを決められない人もいる」

 ペンシルベニア州は2年後の大統領選でも再び接戦となり、全米の選挙結果を左右する可能性が高い。民主、共和の両党とも、現状に不満を抱える人たちにどう言葉を届け、信頼を取り戻せるのかが問われる。(ペンズバーグ=清宮涼)

▼12面=(社説)
米中間選挙 民主大国のゆがみ正せ

 極端へと流れる政治潮流に一定のブレーキもかかりつつ、社会の分断は深刻さを増す。そんな米国の姿を映し出したのではないか。この大国の民主主義の行方を憂慮せざるをえない。

 米政権4年間の半ばで行われる中間選挙があった。事前の予想に反して野党共和党の伸びは鈍く、与党民主党と伯仲したまま開票が続いている。

 約40年ぶりの物価高騰は与党に強い逆風だった。一方、民主主義の価値や女性の権利などを強調したバイデン大統領の訴えは一定の効果を表した。

 とりわけ、最高裁が今年、長年定着していた妊娠中絶の権利を認める憲法判断を覆した問題は大きかった。行き過ぎた保守化に対する危機感が、与党への支持をつなぎとめたようだ。

 だが、バイデン氏が「民主主義にとって良い日だ」と語ったのは楽観的すぎる。与野党が拮抗(きっこう)する議会と大統領府との関係は一層険しくなるだろう。

 党派を超えて民主的統治の基本が問われよう。共和党候補者の相当数は、バイデン氏が当選した前回大統領選の結果を認めない立場を打ち出した。

 昨年の議会襲撃事件はすでに世界に警鐘を鳴らした。さらに自らの利害で選挙結果を否定する人物が重要な公職に就くことは、政治の前途を危うくする。

 終始強気の言動で注目されたのはトランプ前大統領である。多くの候補を選挙否定論にくみするよう仕向け、共和党内での根強い政治力を示した。

 近く次回大統領選への出馬を宣言するともいわれるが、共和党はこのまま「トランプ党」と化すのか問われている。健全な保守政党たりえるか重大な岐路にあると心得るべきだ。

 分断の病は深刻だ。下院議長宅が襲われるなど、政治への暴力や脅しが増えた。地方政治も過激化し、南部の州が大勢の移民を北部に移送する騒ぎが起きた。最高裁批判も過熱し、統治機構全体の信頼が揺らぐ。

 10月に公表された米国家安全保障戦略は、中国やロシアへの対処とともに、自らの民主主義の堅持を課題に挙げた。冷静かつ的を射た認識である。この危機感を与野党で共有し、政治のゆがみを正すべきだ。

 国内の政争は対外政策にも影を落とす。ウクライナ戦争や中東和平、北朝鮮など重要懸案への対応が大きくぶれるようでは米国の威信は衰え続ける。

 米政界の関心は2年後の大統領選へ向かうが、誰が次期政権をめざそうとも、民主主義の原則を軽んじる国の未来は暗いことを肝に銘じるべきだ。政争に明け暮れ、内向きに傾く米国に注がれる国際社会の厳しいまなざしを自覚してもらいたい。

 2022/11/11
米中間選挙で大規模不正の可能性    2022年11月10日  田中 宇

田中宇の国際ニュース解説 詳細

2022年11月10日  田中 宇
11月8日に投票された米国の中間選挙(連邦と州の議会、州知事の選挙)で、民主党側(+諜報界)によって大規模な不正が行われた可能性が増している。米国は地方分権が強く、選挙管理の政策決定も州ごとに行われている。民主党が権力(議会多数派と知事)を握る諸州では、トランプが「負けた」前回2020年11月の総選挙(大統領と議会の選挙)の数か月前から、コロナ対策などを口実に、郵送投票制度の大幅導入や開票作業の改定(改悪、選挙不正の容易化)が進められた。2020選挙は、広範な不正が行われた結果、再選されるはずだったトランプが落選し、連邦議会の上下両院の多数派も民主党になった。権力を握った民主党側は、選挙制度を公正に戻そうとする共和党側の動きを封じ込め続けた。共和党内では民主党側と結託してきた軍産系の勢力がまだ強く、彼らはトランプ派に党を乗っ取られるぐらいなら民主党側による選挙不正を黙認した方がましだと考えている。そのため、選挙不正の再発を防ぐ共和党内の動きも鈍くなった。 (Midterm Red Alert: Expect the Steal in These Dem-Run States☛(翻訳文はこちらです)https://www.revolver.news/2022/11/2022-midterm-election-expect-the-steal/)<(翻訳の一部分です)ネバダ州は今年初めてオールメールになり、それに伴うすべての潜在的な問題が発生します。ワシントン州、オレゴン州、コロラド州もすべて郵便であり、これらの州でのレースは盗まれるリスクが高くなります>(This started with a single location. Then a few. Now, it's sounding as if this is widespread and very serious.☛このサイトの翻訳の一部分は次の通りでした)
投票率は非常に高く、マリコパでは非常に早いです。これは本当に深刻な問題です。投票者は、投票用紙を部屋の隅にある箱に入れたままにして、後で適切に処理されることを期待する必要はありません。
これは一連の管理の悪夢であり、簡単に悪用できます。
そして、どうか、これが大したことではないふりをするために、通常のロジャーズ氏のような容疑者は必要ありません。
それはそうです、そして誰もこれほど素朴ではないので、大げさなBS.
マリコパは他の郡と一緒に投票率が非常に重いだろうと言われました#ElectionDay。
修正する必要があります。
予備選挙中のマリコパとピナルの問題により、選挙当局は、#ElectionDayの大規模な投票率に備える必要があることを非常に明確にするデータベースの議論を提示されました。
彼らは知っていた。これは全く受け入れられません。
よくやった、カーターセンター。
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このような経緯で、2020選挙で民主党による不正を可能にした、歪曲された選挙管理体制はそのままになり、今回の中間選挙まで温存された。単に温存されただけでなく、民主党が握ってきたネバダやワシントン、オレゴンなどの諸州では、引き続きコロナ対策を口実とした郵送投票制度の拡大が行われ、民主党による選挙不正が2年前よりもさらにやりやすくなっている。投票日に共和党支持者が投票所に行ったところ、すでに郵送投票したことになっていると言われて投票を拒否される事態が相次いでいる。 (Expect the Steal in These Dem-Run States - Revolver News) (米民主党の選挙不正(要クリック))

今回の中間選挙では、投票日に投票機が故障する事態も広範囲に起こった。米国の投票機は、選挙管理者が不正を施したプログラムに差し替える手口などにより、選挙不正を行えることが20年前から判明している。トランプ以前、2大政党は談合していたので、民意に関係なく、その時の状況に応じて2大政党が交渉して与党を決める傾向があり、この政治体制下では、投票機で不正が行えることがむしろ望ましかった。2016年にトランプが登場し、2大政党の談合体制を米国覇権ごと破壊し始めた後、米国の選挙不正システムは談合用でなく、トランプとその一派を排除するために「活用」され続けている。 (Analysts Raise Alarm: Election ‘Wholly Manufactured by Langley’) (不正が横行するアメリカ大統領選挙(要クリック)) (A HREF="https://tanakanews.com/210414election.htm">ずっと続く米国の選挙不正疑惑(要クリック))

トランプ派は、民主党側(民主党+共和党軍産派+軍産マスコミなど)が構築した米国の選挙不正システムの全容を把握できていないようだ。そのため、トランプ派は自分たちが圧勝すると思ったのに、ふたをあけてみると、選挙不正システムによって勝利を阻まれたり限定的にされたりしている。米国の民意としては、民主党支持者のより多くが、バイデンや左翼による党支配と政策失敗に失望し、民主党から離れている。民主党の若手の星だったツルシ・ガバード(トゥルシー・ギャバード)の離党が象徴的だ。選挙不正がなければ、中間選挙は共和党の圧勝だった。票差が大きいので、選挙不正をやっても、共和党の勝利を覆せず、圧勝を辛勝に変えることしかできない。だが民主党側としては、辛勝に変えるだけで十分だ。共和党内は「隠れ民主党側」である軍産系がまだ強いので、トランプ派を封じ込め続けられる。 (中間選挙で米国が変わる?) (不正選挙を覆せずもがくトランプ) ( AOC Humiliated At Town Hall In Viral Clip: 'Why Can't You Be More Like Tulsi Gabbard?')

中間選挙の開票には今後、数日から数週間かかると予測されている。時間をかけて少しずつ開票結果を出していくことで、民主党系の諸州を中心に、ニセの投票用紙の束を適宜追加するなどして不正の度合いを調整し、最終的な「共和党辛勝」もしくは「民主党の意外な勝利」の形を作っていける。大統領選挙が先日行われたブラジルは、米国と人口が同規模だが投票終了後3時間で結果が出た。最先進国のはずの米国で結果を出すのに何日も何週間もかかるのは、無能というよりも意図的なことだ。 ("Protest, Protest, Protest!" Trump Calls For Action Over 'Complete Voter Integrity Disaster' At Polls) (US state will count potentially fake ballots - court)

トランプ派は各所で選挙不正を指摘して提訴などしていくのだろうが、2020選挙と同様、不正を覆すことは困難だろう。今後も、少なくともトランプ派が共和党内の軍産系を無力化するまでは、米国の選挙不正システムが稼働し続ける。マスコミも民主党側なので、共和党が自分たちの負けを認めたなくないので選挙不正があったとウソを言っているだけだと喧伝し続ける。 (There May Not Be A 2024 Election) (Midterms Roundup)