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続折々の記 2023 ②
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【 02 】02/03
  バイデン大統領への批判 の続き  解説のデータ
    自滅させられた欧州
    コロナ対策やめて世界経済の中心になる中国
    (Satire Or Serious: "Why Didn't The Unvaccinated Do More To Warn Us?")
  君が代
  海行かば

 2023/02/03
    解説のデータ・三編

前ページの冒頭は次のように始まりました。


 2023/02/01
バイデン大統領への批判 の続き    

1月31日の田中宇発信の「田中宇の国際ニュース解説 世界はどう動いているか」の解説には、

   米国の軍産複合体系の権威あるシンクタンクであるランド研究所が
   「ウクライナ戦争を長引かせると米国の国益にならない。早く終わ
   らせた方が良い」と主張する論文を発表した。


の記事を載せた。

世界情勢が目まぐるしく変わっている実情から、私は違う解説を載せているかもしれないと思い、URLを開いてみたら上の記事が目に飛び込んできた。
これは凄い、 バイデンが息まく勝手我儘に辟易したから、やっぱり世界全体の人々の心の内を思う意見が飛び出すのは当然と言えば当然のことと小おどりしたい思いになった。 早速パソコンへ取り上げました。
ウクライナ戦争をやめたくてもやめられない米国側
 【2023年1月31日】ウクライナ戦争の和解交渉はない。停戦できないから延々と戦争が続く。戦争が続くほど中露が結束し、日本を追い越して世界最強の製造業を持つ中国は、安くて大量なロシアの石油ガス資源類を得てますます強くなる。中露のまわりにサウジやイラン、BRICSなど、他の資源諸国や大市場諸国も集まり、非米側は米国側の先進諸国をしのぐ経済力を持って台頭していく。世界は米単独覇権体制から、多極型の覇権体制に転換していく。ウクライナを早く停戦させれば米覇権の解体・喪失を防げるかもしれないが、ゼレンスキーが了承しないので停戦できない。ランド研の警告は正しいが無視される。
ところが見出し解説の最後に「ランド研の警告は正しいが無視される」の意見をそえていた。
しかし、この論文の反応は池の中に投げられた小粒な石としても、この波紋は世界の識者へ大きな波紋として伝わるに違いないのです。 では、田中宇のニュースの詳細を見ていきます。


ウクライナ戦争をやめたくてもやめられない米国側

2023年1月31日   田中 宇
米国の軍産複合体系の権威あるシンクタンクであるランド研究所が「ウクライナ戦争を長引かせると米国の国益にならない。早く終わらせた方が良い」と主張する論文を発表した。「戦争を長引かせるな」(Avoiding a Long War)と題するこの論文は、ウクライナ戦争が長引くほど、対露経済制裁の反動で世界のエネルギーや食糧の価格が高騰して米国に不利になり、軍事と経済の両面での米国のウクライナ支援のコストも上がると言っている。また戦争が長引くほど、ロシアと中国との結束が強まって中国に有利になるし、米国がウクライナ支援に資金と国力を取られるほど、米国は中国と敵対するための余裕が不足し、中国が米国を押しのけて台頭することを阻止できなくなると警告している。 (Avoiding a Long War) (Ukraine - RAND Study Sees Risks In Prolonged War)

(Avoiding a Long War)や(Ukraine - RAND Study Sees Risks In Prolonged War)など各節の末尾に括弧で示してあるのは、解説しているデータを示しています。
この二つは、(長い戦争を避ける)と(ウクライナ-ランド研究所のの調査では、長期にわたる戦争のリスクがみられます)の訳語がついているデータです。
必要であるデータを見たいときは、「ウクライナ戦争をやめたくてもやめられない米国側」のURL<https://tanakanews.com/230131ukrain.htm>から情報を呼び出し、(括弧)をクリックすれば、すべての情報データを読むことができます。
私はこの二つは大事ですから、印刷して保管しました。50頁余になりました。

ベトナム戦争で親米勢力にゲリラ戦をやらせて共産側に徹底抗戦することを提唱するなど、昔から無謀な好戦論で有名なランド研が、今回のような現実論を主張することは異例だ。米国側は、米欧政府高官からマスコミまでの権威筋のほとんどが「ロシアを潰すまでウクライナを支援してこの戦争を続けるべきだ」という好戦論を叫んでいる。最近は、NATO諸国がウクライナに新型の戦車を送るべきだという話になり、それを嫌がるドイツ政府が非難されている。戦車の次はNATO諸国が戦闘機をウクライナに送るんだという話も出ている(ウクライナ上空の制空権は露軍が握っており、戦闘機がウクライナ領空に入った途端にロシアと交戦になる)。NATOの将軍(オランダ人のRob Bauer)は、NATOがロシアと戦争する準備ができているとまで言っている(ウソだが)。ランド研の現実論は、ほとんど無視されている。 (New RAND Study Breaks From US Hawks, Warns Against "Protracted Conflict" In Ukraine) (Allies Angry At German 'Indecision' On Tanks For Ukraine Amid Russian Gains In East & South)

米国やNATOは、ロシアと直接交戦できない。したら核戦争になりかねない。米NATO(米国側)は、直接ロシアと交戦するのでなく、ウクライナを軍事支援し続けるだけだが、それだと露軍を打ち負かせず、戦争が長引く。ロシアとウクライナをうながして停戦・和解交渉させる道もあるが、ゼレンスキーのウクライナは、ロシアが占領地(ウクライナ東部2州とクリミア)をウクライナに返還しない限り交渉しないと言っている。占領地の住民の大半はロシア系であり、ロシアは同胞の安全を守るため返還に応じられない(返還したらゼレンスキー傘下の極右勢力がロシア系住民を売国奴とみなして殺害する)。ゼレンスキーはプーチンらロシア高官たちを戦犯として国連などで裁くことも要求しており、プーチンらに着せられた罪状は濡れ衣ばかりなので、当然ながら露側は拒否している。 (Will the war in Ukraine inevitably freeze?) (ロシアが負けそうだと勘違いして自滅する米欧)
  ………………

前ページの資料補説のための資料は次の三つです。

自滅させられた欧州

2022年7月30日   田中 宇
ウクライナ戦争は、欧州を自滅させた。今年2月末にロシアがウクライナ侵攻を開始したとき、米国の最上層部である諜報界は、石油ガス輸入停止など厳しい対露経済制裁を行えばロシアは短期間で経済破綻し、ウクライナでの露軍の稚拙な作戦展開と相まって、ウクライナや欧米の勝利とプーチン政権の崩壊を実現できると自信満々だった。EUや独仏の上層部はその見方を軽信し、米英主導の対露制裁とウクライナ軍事支援に全面的に乗った。だが米諜報界は、米国覇権・欧米支配の体制を自滅させたい隠れ多極派に乗っ取られており、対露経済制裁とウクライナ支援でロシアを倒せるというシナリオは、欧米とくに欧州を自滅させるための歪曲話だった。 (ロシアが負けそうだと勘違いして自滅する米欧) (米諜報界を乗っ取って覇権を自滅させて世界を多極化)

欧州経済はロシアからの石油ガスに強く依存している。代わりの輸入先の開拓には10年以上かかる。ロシアからの輸入を止めたら欧州経済は破綻に瀕する。欧州の上層部はそれに気づき、ロシアからの石油ガス輸入を止めると口で言いつつ実は輸入を続けるというウソ戦略をとった。だが同時に欧州は、米国の言いなりでウクライナに兵器を送り続けるなどロシア敵視を続けたため、ロシアは報復として欧州に石油ガスを送る量を減らし続けた。ロシアから欧州への天然ガスの最大の輸送路であるノルドストリーム1パイプラインは先日の定期点検後、流量が平常の20%にまで減らされた。欧州はロシア敵視をやめず、深刻な天然ガス不足が今後も続くことが確定的だ。欧米の指導者や分析者の中には、これで欧州の対露制裁の失敗が確定したと宣言する者たちが増えている。ハンガリーの親露的なオルバン大統領などがそうだ。 (Ukraine Is Losing The War... And So Is Europe) (Hungary’s Orban says EU sanctions on Russia have failed)

米諜報界は傘下の米英マスコミを使ってウクライナ戦争の報道を歪曲し、ロシア軍が惨敗して自暴自棄になって街区の破壊や市民の殺戮などの戦争犯罪をガンガンやったかのような話が世界に流布した。だが実際のロシア軍は、当初から現在までウクライナでの作戦を成功裏に進めており、街区の破壊も市民の殺害も最小限にとどめている。国連によると、ウクライナ市民の戦死者数は、開戦から5か月近く経った7月12日にようやく5000人を超えた。毎月平均千人ずつしか市民が死なない戦争は珍しい。露政府が「戦争」でなく「特殊軍事作戦」と呼んでいるのは理解できる。米国はイラクやアフガニスタンで開戦から5か月間で10万-20万人ぐらいずつ殺した。ロシアは、最終的にウクライナを自国の傘下に入れたいので、街区破壊や市民殺害をできるだけやらない作戦を遂行し、成功している。 (Civilian Toll in Ukraine Conflict Passes 5,000 Mark, UN Says) (資源の非米側が金融の米国側に勝つ)

ウクライナの街区を破壊したのは露軍でなく、ウクライナ軍内のアゾフ大隊など極右民兵勢力だ。ウクライナ市民の半分かそれ以上は、ロシアを敵視していない親露派か中立派だ。ロシア敵視の極右民兵団はロシアを敵視しない自国民を嫌悪し、街区の破壊や市民の殺害を積極的に展開し、それをロシア軍の仕業だとウクライナ当局が言い、米国側のマスコミが鵜呑みにしてロシアを極悪に報道し、多くの人が報道を軽信した。破壊や殺戮の戦争犯罪を犯したのはロシアでなく、ウクライナの極右民兵団と、極右を背後から操ってきた米英諜報界である。 (ウクライナ戦争で最も悪いのは米英) (すでに負けているウクライナを永久に軍事支援したがる米国)

ソ連崩壊で独立したウクライナには、露軍港があるクリミアやドンバスなどロシア系の領域がいくつもあり、ウクライナがロシア敵視になるとロシアの安全保障が脅かされる状態だった。それを知りつつ米英は2014年にウクライナを転覆して反露な極右政権を作り、ドンバスでの殺戮や、クリミア露軍港使用禁止策をやらせた。ロシアがウクライナを奪還しようとするのは正当防衛だった。2014年からの全体をウクライナ戦争としてみると、侵略者は米英である。ロシアは悪くない。 (濡れ衣をかけられ続けるロシア) (まだまだ続くロシア敵視の妄想)

欧州の上層部は、このようなウクライナ戦争の真の構図を知っていたはずだが、NATOとしての対米従属の国是を重視し、米国が敷いた善悪逆転のロシア敵視路線に乗った。それでNATO・米国側が勝ってロシアを譲歩させられるなら、それでも良かった。しかし実のところ、ウクライナ戦争での米国側楽勝のシナリオは最初から、米諜報界の隠れ多極派が仕掛けた落とし穴であり、その路線に入り込んだ欧州は案の定、経済と安保の両面でひどく自滅させられ、経済が大不況への道をたどり、市民の多くが窮乏生活を強要され始めている。 (ドイツの失敗) (ロシア敵視が欧米日経済を自滅させ大不況に)

ウクライナの極右政権を軍事支援し、ロシアを経済制裁して潰そうとする策は、最初からうまくいかない詐欺的な策だった。欧州がそれに乗ったのは馬鹿だった。ロシアは今後、ウクライナで実質的な占領地をさらに拡大していく。すでに露軍がウクライナ軍を追い出してウクライナからの分離独立状態が確立したドンバス2州だけでなく、その周辺のロシア系住民が多い地域でも住民投票を行い、ウクライナからの分離独立を進めていく。いずれ、ドンバスから沿ドニエストルまでのウクライナ南部の全体が、ノボロシアとしてロシアの影響下に入れられていく。それを止める方法はもうない。米露核戦争に発展しかねないので、米軍が直接ウクライナに出ていくことはない。米軍が出ていかないので、ロシアの動きは止められない。 (ノボロシア建国がウクライナでの露の目標?) (Media Miss Major Moves On Russia-Ukraine)

ウクライナは、東部と南部をロシア側に取られていく。残されたウクライナ西部は、歴史的にポーランドとのつながりが深い地域だ。ウクライナのネオナチなど極右勢力の支持者は、もともと親ポーランドの西部に多かった。ウクライナの極右政権は2月の開戦後、ポーランドの傘下に入る傾向を強めている。ウクライナとポーランドの政府は相互の人的な行き来を自由化しており、ウクライナ西部はポーランドに編入されていく感じだ。ロシアがウクライナの東部と南部を取ったら、ポーランドが残りのウクライナ西部を併合し、ウクライナという国がなくなってしまう可能性がある。プーチンの側近であるロシアのメドベージェフ元大統領が「今の事態(戦争)が終わるときウクライナはなくなっているかもしれない」と言っている。もしくは、小さくなったウクライナがポーランド傘下の国として残るかもしれない。 (Ukrainian MPs approve ‘special status’ for Poles) (Ukraine may disappear from world map ‘as a result of current events’ - Medvedev)

どちらにせよ、欧州など米国側が開戦時に軽信していた「ウクライナがクリミアを奪還し、プーチンのロシアが潰れる」というシナリオの実現性は、すでに確定的にゼロになっている。米国側はもうロシアに勝てないのだから、ロシアを経済制裁して石油ガスの輸入を止め続ける意味もない。ロシアは、米国側に輸出していた石油ガスをインド中国など非米側に輸出できるので経済制裁が続いてもかまわない。困っているのは、石油ガスが足りなくなっている欧州など米国側の方だ。欧州がロシアの石油ガスの輸入を止め続けると、欧州自身の経済の自滅がひどくなり、社会や政治も崩壊していく。制裁を続けても、ロシアの拡大とウクライナの縮小は止められない。むしろ欧州が対露制裁をやめて、ロシアと和解して石油ガスの輸入を再開するとともに、ロシアとウクライナの間を仲裁すれば、ロシアはこれ以上ウクライナでの支配地を拡大せず、ウクライナの領土がこれ以上削られずに平和を実現できるかもしれない。欧州は、ロシア敵視をやめることで石油ガス不足を解消でき、経済社会政治の自滅も防げる。 (ロシアの優勢で一段落しているウクライナ) (複合大戦で露中非米側が米国側に勝つ)

しかし、この方法も多分うまくいかない。欧州(EU、独仏)がロシア敵視をやめると、米英とウクライナが欧州を猛然と非難し、敵視すら開始する可能性がある。ウクライナの極右政府は米英の傀儡であり、欧州の言うことなど聞かない。ゼレンスキーはドイツを馬鹿にしている。EUの中でも、ポーランドやバルト三国などはロシア敵視をやめることに強く反対する。独仏がロシア敵視をやめようとすると、その時点で米英と鋭く対立してNATOが崩壊し、ポーランドなども反対してEUも内部崩壊する。この崩壊によって米国側の全体が弱体化し、米国覇権の低下と露中の台頭・多極化に拍車がかかる。独仏が米国覇権や欧米優位の世界を壊したと非難される。 (US fears for EU unity amid gas cuts) (How A Russian Gas Freeze Would Curtail European GDPs)

そもそも、独仏やEUの上層部、政界官界マスコミなどエリート層には、米諜報界の傀儡勢力がたくさんいて、その傀儡たちが、欧州がロシア敵視をやめようとすると猛反対して阻止する構図ができている。欧州は米諜報界に入り込まれ、そもそもロシア敵視をやめることなどできない。欧州がロシア敵視をやめるとしたら、それは今後もずっと欧州がロシア敵視を続けてロシアからの石油ガス輸入が止まり続け、欧州の経済社会政治が今よりもっとひどく自滅していき、独仏など欧州各国で次々とエリート系の政権が選挙で転覆され、エリート支配を壊すポピュリストたちが政権を取って、その後の長いエリート層との政争に勝ってからだ。そこに行き着くまで何年かかるのかわからない。その間に米国の政治崩壊や金融バブル崩壊も起こりうる(日本はずっと自民党政権で安定し続けているだろうが)。 (日米欧の負けが込むロシア敵視) (European Gas Soars As Russia Throttles NS1 Flows To just 20% Of Capacity)

先日、ドイツの左派(SPD)のシュレーダー元首相がロシアを訪問し、ロシア側(プーチン?)と会談してロシアから欧州へのガス輸出の再増加をお願いしている。シュレーダーは親露派で、ノルドストリームのパイプライン建設計画の推進者だった。彼は、2月のウクライナ開戦後、ドイツや欧州のエリート層全体が強烈なロシア敵視を開始した後も「欧州はロシアの石油ガスなどが必要だ」と言って親ロシアを貫き、欧州のマスコミ権威筋などから猛烈に非難されても態度を変えなかった。今後、欧州のエリート層がロシア敵視をやめられずに経済社会政治の自滅が加速していくと、シュレーダーのような親露派の出番が再び出てくる可能性が増す(安倍晋三のように殺されなければ)。左派エリート政党であるSPDがシュレーダーの親露路線を再び受け入れれば、ドイツはポピュリスト政権にならずに親露派に転向(出戻り)しうる。 (German ex-chancellor Schroeder in Moscow, Putin meeting possible) (Ex-German Chancellor Schroeder arrives in Russia for talks on gas supplies)

どのような道をたどるにせよ、そこまで行くにはかなり時間がかかる。欧州は、今よりもっと崩壊しないと対露制裁をやめられない。ロシアが早くウクライナで支配地を拡大し、ウクライナがロシアとポーランドに分割されて国家消滅するのが早いと、欧州など米国側がロシア敵視に見切りをつけるのも早くなる。展開が早いと、米国覇権・欧米優位体制の崩壊があまり進まないうちにウクライナ戦争の構図が終わり、米国覇権が温存されてしまう。プーチンも米多極派も、それを望んでいない。プーチンはおそらく、米国覇権・欧米優位の体制が完全に壊滅するまでウクライナ戦争の対露制裁が続き、中途半端でなく完全に多極型の世界が出現することを望んでいる。だからロシアは、ウクライナでの軍事作戦をできるだけゆっくり進め、米国側が対露制裁を続けて自滅していくウクライナ戦争の構図をできるだけ長引かせている。ウクライナ戦争の構図は、少なくとも来年まで続く。3年ぐらい続くかもしれない。 (プーチンの偽悪戦略に乗せられた人類) (Russia Will Now Help Ukrainians "Get Rid Of Regime," Lavrov Says)

プーチンは米国覇権の崩壊と多極化を望んでいる。その方がロシアが封じ込められず、発展するからだ。米国の資本家層の意を受けた米諜報界の隠れ多極派も、世界の非米側の地域が発展できる多極化を望んでいる。プーチンと米多極派がどの程度結託しているかはわからない。相互に連絡をとらなくても多極化を進められる。欧州は、今回のウクライナ戦争の前から、非現実な地球温暖化への対策としての自滅的なエネルギー政策の強要(効率的な化石燃料の禁止と、非効率な自然エネルギーの拡大)、新型コロナ対策としての都市閉鎖の超愚策をやらされるなど、米諜報界がマスコミ権威筋やエリート層を巻き込んでやらせたいくつもの謀略によって、経済的に自滅させられてきた。米国だけを潰しても、欧州など同盟諸国が米国を助けて覇権を維持してしまうので多極化できない。欧州と米国を同時に潰すことが必要だ。そのための欧州自滅策として、ウクライナ戦争の対露制裁はとてもうまくいっている。 (制裁されるほど強くなるロシア非米側の金資源本位制) (ひどくなる大リセット系の嫌がらせ)

コロナ対策やめて世界経済の中心になる中国

2023年1月9日  田中 宇
昨年末まで厳しい都市閉鎖や検疫体制など「ゼロコロナ」の超愚策を続けてきた中国が、年明けからコロナ対策を大幅に緩和している。中共は、それまで3年間続けてきた世界有数の厳格な隔離と抑止と検査の体制を一気に解除し、日本並みの緩やかな規制に引き下げた。デジタルIDと結びつけて全人民の健康状態や行動履歴を監視するスマホのシステムも、使われる場所を減らした。人々がコロナ検査を受けねばならない頻度も下げた。感染しても隔離センターに強制収容せず、自宅にいられるようにした。中国への入国時の検査も1月8日から大幅に緩和した。 (Point Of No Return: Beijing's Move To Covid Coexistence Is Here To Stay)

昨年末から、PCRなどの検査で陽性になっても、軽症ならそのまま出勤や外出を許されるようになった。軽症でも感染者がうろうろすると他人に感染し、全人民がコロナに感染してしまうと(過度に)心配する中国の人々は「政府はゼロコロナ策をやめて、代わりに『ゼロ非コロナ策』(コロナにかかってない人をゼロにする策)を始めた」と揶揄しているという。 (How China Changed Its Zero-COVID Policy To A 'Zero Non-COVID' Policy)

中共がゼロコロナ策の放棄を発表したのは12月7日だが、その直前の昨年11月後半に、中国各地でゼロコロナ策に反対する人々が抗議行動を展開した。中共は昨年、10月下旬に開いた共産党大会で習近平の独裁を強化することを決めたが、その重要な党大会の前に、習近平の独裁に反対する党内の勢力(トウ小平主義を信奉するリベラル派、親米派)の動きを抑止するため、コロナ感染者が増えたことにして、都市閉鎖など厳格なコロナ規制(超愚策)を強めた。この規制強化に反発した市民たちが共産党大会の後、反対運動を強めた。習近平の独裁を批判する動きに発展しそうな中で、中共はゼロコロナ策を緩和することを決めた。その流れを見ると「市民運動が習近平を譲歩させてゼロコロナ策をやめさせた」という「解説」ができあがる。 (Protests Are Spreading In China As Backlash Grows To The Communist Nation’s Lockdowns) (習近平独裁強化の背景)

実のところ、米国側(米欧日)のマスコミが好んだこの解説は間違いだ。中共は、共産党大会終了後、ゼロコロナ反対の市民運動が始まる前の11月2日に、コロナ対策の最適化と称して、ゼロコロナ策を緩和する方向性を打ち出している。中共はその後、その線に沿ってゼロコロナ策を緩和してきた。市民運動はむしろ、コロナ対策を緩和したい中共の意に沿うものとして煽動・展開され、中共は「コロナは引き続き大変な病気だが、人民が規制緩和を望むのなら仕方がない。緩和してあげよう」という政策転換の口実を得て、ゼロコロナ策をやめていった。 (Faced with a new wave of Covid, China is opening its borders – was Beijing left with no other choice?)

中共(やその他の国々)のゼロコロナ策は、新型コロナの感染拡大を止める政策でない。ゼロコロナは、感染拡大を止める効果がほとんどない「超愚策」である。すでにコロナは重篤性が低く、放置するのが得策な風邪の一種である。中共は、習近平の独裁強化に反対する党内の動きを潰すためにゼロコロナを展開してきた。そして、昨年10月の党大会で、習近平は独裁体制の強化に成功した。習近平の登場より前に中共の権力を握っていたトウ小平の弟子たちは権力を奪われ、習近平にとって脅威でなくなった。習近平はゼロコロナを続ける必要がなくなり、市民運動を適当に扇動してゼロコロナ反対をやらせ、それに呼応するかたちでゼロコロナ策をやめた。 (China Shifts Covid Policies As Previously Announced - NYT Falsely Claims Protesters' Victory)

習近平がコロナ対策を大幅に緩和したもう一つの(より大きな)理由は、中国経済の高度成長を再開するためだ。中国は今年から、コロナ対策を大幅に緩和して無規制に近づけていくので経済が再活性化する。習近平の計画は、中国経済を再活性化するだけでなく、これまで経済的に対米従属してきた状態を離脱し、米国側に依存しない非米型の経済に転換しつつ高度成長を再開したい。 (In Huge Policy Reversal, China Will Ease "Three Red Lines" Rule To Kickstart World's Biggest Asset Bubble)

トウ小平以来の中国は、米国側の製造業の下請けをして経済成長してきた。儲けた資金は米国の債券などに投資されて米国に還流し、人民元は為替がドルにペッグ(相場固定)していた。改革開放策の中国は、経済的に対米従属だった。中共上層部で権力を握るトウ小平の弟子たち(江沢民や胡錦涛)は、トウ小平の遺言に沿って経済の対米従属を守っていた。だがイラク戦争やリーマン危機の後、米国は政治経済両面で覇権が弱まり、いずれドルや債券金融システムがバブル崩壊することが不可避になった。中国がいくら経済成長しても、対米従属的な経済体制をとる限り、いずれ米国が金融崩壊する時に、中国も共倒れになる。それはまずい。 (中国の権力構造)

2013年に、トウ小平が遺言した後継者(江沢民と胡錦涛)でない初の権力者として就任した習近平は、中国経済を対米従属から離脱させるために、自分の独裁権力を強化し、共産党上層部の対米従属な先輩たちを無力化していった。先輩たちを無力化せずに習近平が経済の対米自立を強行したら、先輩たちと米当局のスパイが結託して中国を混乱させ、習近平を潰しただろう。2020年春からのコロナ危機で、中共は感染拡大防止策の口実で人々の行動が監視し、人の移動を制限したが、これらは習近平が党内の反対派や米国のスパイの動きを封じる策だった。これらが奏功して習近平は独裁を強化し、その過程は昨年10月の党大会で完了した。党大会の閉会日、習近平の隣りに座っていた胡錦涛が、習近平から密かに命じられた警備員たちによって議場外に連れ去られたのが象徴的だった。 (習近平独裁強化の背景)

習近平は、党大会で独裁を確立し、中国経済を対米自立させる策を自由にやれるようになった。1ヵ月後の12月初めに習近平はサウジアラビアを訪問し、OPECが石油ガスをドルでなく人民元で決済すること、OPECの主な売り先を米国側から中国側(非米諸国)に替えていくことに道を開いた。同時期に中共はゼロコロナ策を中止し、今年から中国経済は高度成長を再開し、サウジやロシア、イランなどから旺盛に石油ガスを買い集めて産油国を喜ばせ、非米諸国の結束を強化する過程に入る。習近平のサウジ訪問と、ゼロコロナ策の中止は連動した政策であり、だから同時に進められている。 (China Using ‘Petroyuan’ in Oil Imports May Lead to New World Energy Order) (多極化の決定打になる中国とサウジの結託)

中国は今年からゼロコロナ策を放棄して経済成長を再開し、消費市場もしだいに活況になるが、対照的に欧州など米国側の多くの地域はひどい不況とインフレ再燃・金利上昇による経済難が続く。中国は、世界で最も経済が再活性化していく地域になる。中国は世界の実体経済の中心になっていく。米国側の企業は、旺盛な消費を再開する中国に製品を売りたいと希望する。中国側は歓迎だ。しかし、一つだけ条件がある。それは「中国を敵視する国からは買いません」ということだ。そう。米英や独仏カナダ豪州など、米国側の多くの国は、米国(隠れ多極派)に扇動されて中国への敵視を強めている。米国側の覇権を守るため、中国の台頭を抑止せねばならならない。そのような姿勢をとる限り、米国側の諸国は中国(や、中国と結託する非米諸国)と取引できない。 (Refashioning a new East Asian order)

習近平は、中国人が米欧日のブランド品よりも国産品を好むよう、愛国心の煽動など再洗脳につとめている。中国はしだいに米国側から何も買わなくてもやっていけるようになっている。中国製品は品質が向上し、非米諸国で良く売れるようになった。中国は非米諸国から石油ガスなど資源類を買い、非米諸国に工業製品などを売る。中国が主導する非米諸国は、米国側の先進諸国を疎外しつつ、自分たちの側だけで経済を活性化していく。独裁を確立した習近平は、米国側と決定的に敵対して世界を見事に2分割したロシアのプーチンと協力し、世界を大転換していく。 (中露が誘う中東の非米化) (ドルを否定し、金・資源本位制になるロシア)

中共は今回、感染拡大防止を口実とした監視アプリを全人民のスマホにインストールさせて維持してきた監視システムの使用頻度を減らし、使わない傾向をとり始めている。コロナ危機開始後、このシステムは永久に稼働して人々を監視・管理し続けると予測されていた。中国だけでなく、米欧からインドまで世界中で、監視カメラ網や顔認識システムやワクチン旅券やCBDC(中銀デジタル通貨。現金廃止)など、人々の活動や状況を徹底的に監視する体制が、コロナ対策やテロ対策を口実に組まれている。中国は、監視体制が世界最強だった。習近平はそれを放棄するのか??。自分の独裁が確立し、党内に大きな敵がいなくなったから監視はもう要らないとか??。別の理由をつけて監視体制が継続するのか??。このあたり、今後の観察が必要だ。 (コロナ対策の国民監視システムを国際的につなぐ) (通貨デジタル化の国際政治)

中国ではしばらく前からCBDCのデジタル人民元の利用が拡大されてきたが、最近、中国人民銀行(中央銀行)の元幹部が、デジタル人民元の実験が失敗していると認める発言をしている。人々はデジタル人民元を使いたがらない。デジタル人民元は、人々がどこで何を買ったか全部把握できる最強の監視システムだ。中共は強権を発動できるのに、デジタル人民元の利用を人々に強要しないのか。カネの亡者である中国人にそれを強要すると共産党が潰されるとか??。毛沢東は人民の財産を好き放題に没収できたのに「あらゆる政策を毛沢東よりうまくやれる」と豪語する習近平が人々にCDBCを強要できない??。違うよね。 (Former Chinese Central Banker Admits Results Of Digital Yuan Experiment "Not Ideal") (Anything Mao Can Do I Can Do Better: Xi Jinping)

もしかすると中共はむしろCBDCの実験を中止し、これまで続けてきたWEFとの結託、大リセットへの参加もやめてしまうつもりなのかもしれない。中共は今回、大リセットの大黒柱であるコロナの愚策も放棄した。WEFの大リセットは米国側を自滅させるのが目的であり、米国側の自滅がもう決定的なので、中共にとって大リセットやWEFそのものが用済みになっているとも思える。 (Why China Sucks: It's A Beta-Test For The New World Order) (米諜報界が中国のために作る世界政府) (世界の決済電子化と自由市場主義の衰退)

中国を敵視する国は、中国と貿易できなくなっていく。そんな中、日本では、岸田首相の訪米の露払いで米国に行った西村経産大臣が、覇権主義の民主党シンクタンクCSISでの講演で、G7を中国敵視のための機関にしたいという感じの話をした。経済を再活性化する中国で儲けたいと日本企業が思っている時に、日本企業のために動く大臣であるはずの西村が、日本企業を困らせる中国敵視の構想をぶち上げる。西村は、中国と仲良くして日本を米中両属のバランス戦略に導いた安倍晋三の親近者だったはず。安倍が死んで、裏切りを始めたか??。いやいや。 (Japan Minister Calls For New World Order)

そうではなく、西村は米国に加圧されて中国敵視の構想を言わされたのだろう。あの発言を東京で発したら、中共が報復に動くかもしれないが、発言はワシントンDCで行われた。日本は対米従属せざるを得ない哀れな敗戦国なので、大臣の訪米時には、米当局が言わせたいことをそのまま言わなきゃならんのです。日本政府は、中共にそう釈明できる。あの発言はむしろ、安倍晋三の米中両属のバランス戦略に沿ったものといえる。両属政策に沿って、林外相は親中派として残しておきたいので、中国敵視発言をせねばならない露払いの訪米は西村が引き受けたとか。西村が米国で中国敵視の演説をしたので、岸田は訪米時に中国敵視の発言を言わなくても良くなった。西村は、岸田の露払いを見事に果たした。 (安倍元首相殺害の深層) (中国が好む多極・多重型覇権)

(Satire Or Serious: "Why Didn't The Unvaccinated Do More To Warn Us?")
風刺または深刻:「なぜワクチン未接種者は私たちに警告するために
もっと多くのことをしなかったのですか?」

タイラー・ダーデン
金曜日, 27月 2023, 07 - 29:<> 午後
世界中で膨大なレベルのガスライティングが行われていることを考えると、以下がCOVID危機全体の中で最も深刻なリフレーミングなのか、それとも私たちが今まで読んだ茶番劇のナラティブマネージャーの論説に対する最も満足のいく風刺的な見方なのかを判断することは困難です。

彼らは知っていました:なぜワクチン未接種者は私たちに警告するためにもっと多くのことをしなかったのですか?

ワクチン未接種者は、私たちが知らなかったことを知っていました。彼らのうちの何人かはあまりにも少なすぎました。ほとんどは何も言わなかった。今、彼らの手にはたくさんの血が流れています。

世界がCOVID-19パンデミックの壊滅的な影響を受け入れるのに苦労している中、表面化し続けている<>つの質問は、ワクチン未接種者が注射の潜在的な危険性について私たちに警告するためにもっと多くのことをしなかった理由です。

善意の市民が並んで正しいことをし、COVID19ワクチン接種を受けている間-今では善よりも害を及ぼすように見えます-彼らのワクチン未接種の友人は待機し、彼らにそれをさせました。彼らのうちの何人かはあまりにも少なすぎました。何も言わない人もいました。

彼らは私たちが知らなかったことを知っていましたが。

私たちの血は今彼らの手にあります。

それらは強い言葉です。しかし、ワクチン未接種者は、ワクチンの潜在的な副作用に関する重要な情報にアクセスできました。彼らは、重度のアレルギー反応、血栓、およびその他の深刻な健康上の合併症のリスクについて知っていました。彼らはワクチンが私たちに免疫を与えないことを知っていました。彼らはそれが効果的ではなく、善よりも害を引き起こす可能性があることを知っていました。

彼らはそのすべてを知っていましたが、私たちに警告する代わりに、ワクチン未接種者は沈黙を守ることを選びました。彼らは別の見方をし、ワクチンの潜在的な危険性について発言しないことを選択しました。彼らは(当時)正しいことをした何百万人もの善良な人々を死と病気に陥らせました、そして多くのアンチバクサーは彼らのコイントスがどのように正しい賭けであったかについてオンラインでさえ誇張しました。より悪魔的な人々は、彼らが同意しない人々に「後押しされる」ようにさえ促しました。

それはあまりにも明確になりました。ワクチン未接種の沈黙は、予防接種を受けた私たちに深刻な結果をもたらした、危険で社会病質的で無責任な決定でした。

そして沈黙は、結局のところ、同意です。

ワクチン未接種者が自分たちの行動に責任を持ち、私たちの残りの部分と協力してこの危機の解決策を見つける時が来ました。彼らの利己主義と行動の欠如が私たちのコミュニティに害を及ぼし続けるわけにはいきません。ワクチン未接種者がステップアップして正しいことをする時が来ました。

ワクチン未接種者は、道徳的な物差しによって、潜在的なリスクについて警告するために、つまり私たちの健康について情報に基づいた決定を下すのを助けるために、より多くのことをすべきでした。そして、彼らは今、私たちの許しを求めなければなりません。

そして、心に手をつないで、私たちは彼らにそれを与えるかもしれません。

私たちは善良な人々だからです。私たちがそれらの注射をしたのは、それが正しいことだったからです-そうでないまで。

◆下平  このデータについて、一度読んでみると何だこれは? と思うが、資料になっているのは著者が風刺画を専門とした人であり、いくらアメリカにしても直接の反抗文章は書けなかったのでしょう。 推察するに、コロナについては人為的なものだという風評が最初からあったことを読んだことがあります。 実際にも田中宇のニュースサイトでもこうした表現が随所に出てきていました。


君が代

作詞 古歌(『古今和歌集』初出) 作曲 林廣守、奥好義
採用時期  1880年(明治13年)10月26日(非公式)
1888年(明治21年)(対外正式公布)

概要
10世紀初頭における最初の勅撰和歌集である『古今和歌集』の「読人知らず」の和歌を初出としている。世界の国歌の中で、作詞者が最も古いといわれている。当初は「祝福を受ける人の寿命」 を歌ったものだが、転じて「天皇の治世」を奉祝する歌となった。1869年(明治2年)に薩摩琵琶の『蓬莱山』にある「君が代」を歌詞として選んだ歌が原型となっている。

その後1880年(明治13年)に宮内省雅楽課が旋律を改めて付け直し、それをドイツ人の音楽教師フランツ・エッケルトが西洋和声により編曲したものが、1893年(明治26年)の文部省文部大臣井上毅の告示以降、儀式に使用され、1930年(昭和5年)には国歌とされて定着した。1999年(平成11年)に「国旗及び国歌に関する法律」で正式に日本の国歌として法制化された。

海行かば

『海行かば』(うみゆかば)は、日本の国民歌謡の一つ、歌曲、合唱曲。特に太平洋戦争中は準国歌、第二国歌とも呼ばれた(ただし、法的に認められたものではない)。

詞は、『万葉集』巻十八「賀陸奥国出金詔書歌」(『国歌大観』番号4094番。『新編国歌大観』番号4119番。大伴家持作)の長歌から採られている。作曲された歌詞の部分は、「陸奥国出金詔書」(『続日本紀』第13詔)の引用部分にほぼ相当する。

この詞には、1880年(明治13年)に当時の宮内省伶人だった東儀季芳も作曲しており、軍艦行進曲(軍艦マーチ)の中間部に聞くことができる。戦前においては、将官礼式曲として用いられた。

当時の大日本帝国政府が国民精神総動員強調週間を制定した際のテーマ曲。信時潔が日本放送協会の嘱託を受けて1937年(昭和12年)に作曲した。信時の自筆譜では「海ゆかば」である。

放送は1937年(昭和12年)10月13日から10月16日の国民精神総動員強調週間に「新しい種目として」行われたとの記録がある。本曲への国民一般の印象を決定したのは、太平洋戦争時にラジオ放送の戦果発表(大本営発表)が玉砕を伝える際、必ず冒頭曲として流されたことによる(ただし、真珠湾攻撃成功を伝える際は勝戦でも流された)。ちなみに、勝戦を発表する場合は「敵は幾万」、陸軍分列行進曲「抜刀隊」、行進曲『軍艦』などが用いられた。

なお、桜美林学園は創立以来、1958年(昭和33年)まで「海ゆかば」の旋律を校歌に採用していた。

  歌詞

  海うみ行ゆかば 水み漬づく屍かばね
  山やま行ゆかば 草くさ生むす屍かばね
  大おほ君きみの 辺へにこそ死しなめ
  かへりみはせじ

歌詞は2種類ある。「かへりみはせじ」は、前述のとおり「賀陸奥国出金詔書歌」による。一方、「長閑には死なじ」となっているのは、「陸奥国出金詔書」(『続日本紀』第13詔)による。大伴家持が詔勅の語句を改変したと考える人もいるが、大伴家の「言立て(家訓)」を、詔勅に取り入れた際に、語句を改変したと考える説が有力ともいわれる。万葉学者の中西進は、大伴家が伝えた言挙げの歌詞の終句に「かへりみはせじ」「長閑には死なじ」の二つがあり、かけあって唱えたものではないか、と推測している。

原歌  陸奥国に金を出す詔書を賀す歌一首、并せて短歌(大伴家持)

葦原の 瑞穂の国を 天下り 知らし召しける 皇祖(すめろき)の 神の命(みこと)の 御代重ね 天の日嗣(ひつぎ)と 知らし来る 君の御代御代 敷きませる 四方(よも)の国には 山川を 広み厚みと 奉る 御調宝(みつきたから)は 数へえず 尽くしもかねつ しかれども 我が大王(おほきみ)の 諸人を 誘ひたまひ よきことを 始めたまひて 金かも たしけくあらむと 思ほして 下悩ますに 鶏が鳴く 東(あづま)の国の 陸奥(みちのく)の 小田なる山に 黄金ありと 申したまへれ 御心を 明らめたまひ 天地(あめつち)の 神相(かみあい)うづなひ 皇御祖(すめろぎ)の 御霊(みたま)助けて 遠き代に かかりしことを 我が御代に 顕はしてあれば 御食国みをすぐに)は 栄えむものと 神(かむ)ながら 思ほしめして 武士(もののふ)の 八十伴(やそとも)の緒を まつろへの 向けのまにまに 老人(おいびと)も 女めの童児(わらはこ)も しが願ふ 心足らひに 撫でたまひ 治めたまへば ここをしも あやに貴み 嬉しけく いよよ思ひて 大伴の 遠(つ神祖(かむおや)の その名をば 大来目主(おほくめぬし)と 負ひ持ちて 仕へし官(つかさ)
海行かば 水漬く屍 山行かば 草生す屍 大君の 辺にこそ死なめ かへり見は せじ
と言立(ことだて)て 丈夫の 清きその名を 古(いにしえ)よ 今の現(をつつ)に 流さへる 祖(おや)の子どもぞ 大伴と 佐伯の氏は 人の祖の 立つる言立て 人の子は 祖の名絶たず 大君(おほきみ)に まつろふものと 言ひ継げる 言(こと)の官(つかさ)ぞ 梓弓(あずさゆみ) 手に取り持ちて 剣大刀(つるぎたち) 腰に取り佩(は)き 朝守り 夕の守りに 大君の 御門の守り 我れをおきて 人はあらじと いや立て 思ひし増さる 大君の 御言(みこと)のさきの聞けば貴み