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続折々の記 2023 ①
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【 08 】02/09
  トルコで大地震  いまも続く
  トルコ・シリア、死者1.1万人超 大地震  
     「救助隊来ない」悲痛な捜索
  気球撃墜念頭「国を守る」バイデン米大統領  一般教書演説
     バイデン氏、団結訴えたが 共和党からブーイング

 2023/02/09
トルコで大地震   いまも続く
   https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230209/k10013975421000.html

【随時更新】トルコ大地震 死者1万1700人 発生から72時間迫る
2023年2月9日 5時14分

トルコ南部のシリア国境近くで6日に起きた地震では、これまでにトルコとシリアの両国であわせて1万1700人以上が死亡しました。生存率が急激に下がると言われる、発生から72時間が迫る中、現地では懸命な捜索・救助活動が続いています。

現地の状況や、各国の救援の動きなど最新情報をまとめています。
(※日本とトルコとの時差は6時間 原則日本時間で表記します)

トルコ南部で6日未明に発生したマグニチュード7.8の地震やその後も続く大きな揺れによって、トルコ南部や隣国のシリアでは広い範囲で多数の建物が倒壊しました。

日本時間の9日午前10時すぎで、生存率が急激に下がると言われる、発生から72時間となるのを前に現地では懸命な捜索・救助活動が続いています。

今回の地震で甚大な被害を受けたトルコ南部カフラマンマラシュでは、日本の国際緊急援助隊の先発隊18人が現地入りし、8日は、壊れた4階建ての建物に10人以上が取り残されているという情報をもとに、生存者がいないか確認を進めていました。

カフラマンマラシュでは、いたるところで建物が倒壊し、道路が塞がれていることも多く、救助活動の大きな妨げとなっています。

国際緊急援助隊救助チームの山本英昭団長は「非常に大きな地震で国際的な支援が必要だ。余震もあり厳しい状況だが、被災者に寄り添った支援をしていきたい」と話していました。

日本時間の9日午前2時半の時点で、トルコ政府の発表では、これまでにトルコ国内で9057人が死亡し、5万2900人以上がけがをしています。

また、シリアの保健省によりますと、シリアでは、北西部を中心にこれまでに1262人が死亡したということです。

このほか、シリアの反政府勢力の支配地域で救助活動を行う団体によりますと、こうした地域で少なくとも1400人が死亡したということです。

これらの発表によりますと、一連の地震による死者はトルコとシリアの両国であわせて1万1700人以上にのぼっています。

震源に近いトルコ南部のアパート倒壊現場では

震源に近いトルコ南部カフラマンマラシュに入った日本の緊急援助隊が捜索を行っている、アパートの倒壊現場では、8日、多くの市民が活動の様子を見守っていました。

アパートの3階に、姉とその家族のあわせて4人が取り残されていると話すトルコ人の男性は「地震の直後に、倒壊したアパートの中から姉が何かをたたいて音を出したり、私の名前を呼んだりしているのを聞いた。近所の人たちと救出を試みたが、うまく行かなかった。とにかく生きて助け出されるのを願うばかりだ」と話していました。

「水も電気もない。あらゆるものを必要としている」

甚大な被害を受けたトルコ南部カフラマンマラシュの市街地でも、救助活動を見守る人たちの姿がありました。

このうち4階建ての集合住宅が倒壊した現場の近くでは、気温1度の寒空のもと、市民がたき火で暖をとりながら、険しい表情で救助活動を見つめていました。この集合住宅は4階部分の外壁が崩れ落ちてキッチンや居間がむき出しになり、下の階は完全に押しつぶされています。

この部屋で家族と13年間暮らしたウール・エルマさん(30)は、親類や近所の知り合いが今もがれきの中に取り残されているとした上で「彼らがなんとか助かって欲しいという思いでここにいます」と話していました。

エルマさんは今の暮らしについて「水も電気もない。いま、人々はあらゆるものを必要としている」と述べ、インフラの早期の復旧を求めていました。

「極めてまれな”双子地震”発生か」 専門家
筑波大学の八木勇治教授は世界各地で観測された地震計のデータをもとに、トルコ南東部の大地震の断層の動きを解析しました。

八木教授によりますと今回の地震の震源域にはアルファベットのVを横に倒したように交わる2つの断層があります。

このうち、最初に地震が起きたのは南西から北東にのびる東アナトリア断層帯です。日本時間の6日午前10時すぎに、マグニチュード7.8の大地震が起きました。このとき1分ほどかけて北東の方向へと地下の岩盤の破壊が広がり、長さおよそ50キロ、およそ10メートルにわたって大きくずれ動いたとみられることが解析の結果から明らかになりました。

そのおよそ9時間後には最初の大地震の震源から100キロほど北に離れた東西に走る断層でマグニチュード7.5の地震が発生しました。この断層も長さ40キロほどおよそ10メートルにわたってずれ動いたとみられています。2つの断層の交わる角度はおよそ30度です。八木教授はこうした鋭角に並ぶ断層帯で短期間に規模の大きな地震が相次ぐことは珍しいと指摘しています。

筑波大学 八木勇治教授

「断層の延長線上で別の地震が起こることはよくあるが、鋭角に交わった断層で短い間に地震が続くのは極めてまれだ。トルコ南東部はほかにも断層が複雑に並んでいて、一回の地震でエネルギーをすべて解放しきれていない可能性がある。今後の活動に注意が必要だ」。

がれきの下から少年少女 救出
トルコ南部のシリア国境近くで起きた地震では、トルコとシリアの両国で多くの建物が倒壊するなどの被害が出ています。こうした中、シリアの北西部の反政府勢力の支配地域で救助活動を行う団体はシリア北部で、6日、倒壊した建物のがれきの中から子どもたちが救助隊員に救出される映像を配信しました。

このうち下半身ががれきに埋まってしまった女の子は、救助隊員に「怖くないよ」などと、励まされながら、助け出されていました。また、がれきなどの間にできたわずかな隙間に取り残された男の子も救助隊員に救出されていました。

国境なき医師団「戦争で疲弊のシリアにさらなる困難」
国際NGO「国境なき医師団」は、地震を受けてシリア北西部ですでに医療支援を始めています。現地の医療施設は患者の対応でひっ迫していて、地震発生後の数時間でおよそ200人のけが人を治療するなど、対応にあたっているということです。

「国境なき医師団」の現地活動責任者のセバスチャン・ゲイ氏は「今回の地震は、長年の戦争で疲弊しているシリア北西部の人々にさらなる困難を突きつけています。この大災害の規模に見あった国際的な援助が必要です」とコメントしています。

また、「国境なき医師団」では、シリア北西部イドリブにいたスタッフ1人が自宅のがれきの下で亡くなっているのが見つかったということです。

震源近くにいた日本人「経験したことない揺れ 早く支援を」
シリア難民の支援にあたる国際NGO「難民を助ける会」のトルコ事務所に駐在している樋口正康さんは地震が起きたとき、トルコ南部の震源に近い地域にいました。

NHKの取材に応じた樋口さんは地震当時の様子について「ポーンという音があって揺れが始まり、人が叫んだり、ものが倒れたりした。経験したことのない揺れが30秒から1分ほど続いた」と振り返りました。

そして、1日たった現地の様子について揺れを感じる地震がいまも続き、雪も積もっているとした上で「建物によっては崩落の危険性があるから入ってはいけないと言われ、車の中や公園のベンチで寝た人が多かったと聞いている。寒さで大変だったのではないか」と話しました。

また「私が把握しているかぎり、きのう、水のほか缶詰など保存できるものは売れてしまい、ほとんど店に残っていない。個人商店ではすぐに営業を再開するのは難しいのではないか」と話し、物資の不足が懸念されると指摘しました。

そして、樋口さんは毛布などの防寒具や子ども向けのおむつなどが必要だとして、国際社会に支援を呼びかけました。また、被災した地域にはシリアの難民も多く暮らしていて樋口さんは「シリア難民はより生活が苦しくあまり長くは待てない状況なので、早く支援が届くことが重要だ」と話していました。

17:30ごろ トルコとシリア両国で計5000人以上死亡
トルコ政府によりますとこれまでに3419人が死亡し、2万人以上がけがをしたということです。また、倒壊した建物は5700棟を超えるということです。

一方、シリアでは、保健省が北西部を中心にこれまでに812人が死亡したと発表しているほか、北西部の反政府勢力の支配地域で救助活動を行う団体は少なくとも790人が死亡したとしています。

これらの発表によりますと、一連の地震による死者はトルコとシリアの両国であわせて5000人以上にのぼっています。

日本在住のクルド人「現地で雪 少しでも早く支援を」
東京・北区でレストランを経営するクルド人のチョーラク・ワッカスさんは現地時間の6日早朝に起きたマグニチュード7.8の地震の震源とされるトルコ南部のガジアンテプ付近から北に40キロほど離れたカフラマンマラシュに家族や親類が住んでいます。

7日、チョーラクさんは親類に通信アプリで連絡をとり、現地の家族や親類が無事であることを確認しました。ただ、現地の親類は雪が降る中、自宅が倒壊して中に入れなくなり車の荷台に暖房器具をのせ過ごしているということです。

現地の親戚の男性は、「いまは雪が降りとても寒いです。自宅が倒壊して住む家がありません。寒さがとても困ります」と話していました。チョーラクさんは、「無事を確認できてほっとしましたが現地ではまだ支援の手が届いていない状況のようです。少しでも早く支援が届いてほしいです」と話していました。

トルコ南部の日本人女性「東日本大震災の横浜より大きな揺れ」
神奈川県出身でトルコ南部のメルシンに住む日本人の女性の落合リザさん(34)に当時の状況を聞きました。落合さんが暮らすメルシンは、現地時間の6日早朝に起きたマグニチュード7.8の地震の震源とされるガジアンテプ付近から西におよそ200キロ離れています。

落合さんは地震が起きた時、自宅のアパートの部屋で寝ていましたが徐々に揺れが大きくなり、バルコニーから外を見るとほかの人たちが避難していたため急いで外に出たということです。

落合さんは、「真っ暗で大雨の中、靴も履かずに逃げました。東日本大震災の時は横浜市にいましたが、その時よりも大きな揺れを感じました。トルコは耐震性のあるビルが少ないので自宅が崩れると思い不安になり避難しました」と振り返りました。

その後、落合さんは知人の車の中で数時間過ごして自宅に戻りましたが、家のなかの家具が倒れ余震が頻繁に起きていたため、近くのホテルに避難したということです。落合さんによりますと、今のところ、滞在しているホテルの周りでは建物が壊れるなど大きな被害は見られないということです。

一方、現地で必要な支援については「ここから車で1時間ほど離れたアダナという地域では家が崩れて帰れない人が多いようです。いまは寒い時期なので毛布など防寒具が必要だと思います」と話していました。

韓国 緊急救護隊 約110人派遣へ
今回の地震で、韓国政府は、陸軍の部隊や外務省の職員、救助隊員などで構成する緊急救護隊を、トルコに派遣することを決めました。

救護隊は当初60人規模の予定でしたが、被害が拡大していることを受けてさらに人数を増やし、およそ110人を派遣するとしています。派遣時期についてトルコ側と協議をした上で、医薬品などの緊急支援物資とともに軍の輸送機で出発できるよう準備を進めています。

また、トルコに対して500万ドル、日本円でおよそ6億6000万円規模の人道支援を行うほか、大きな被害が出ている隣国のシリアに対しても、国際機関からの要請があれば支援を行う予定だとしています。

中国 約7億8000万円相当の支援へ
国営の中国中央テレビによりますと、中国政府は、今回の地震を受けてトルコに対して、あわせて4000万人民元、日本円でおよそ7億8000万円相当の支援を行うということです。

この額には、救援隊や医療隊の派遣のほか、救援物資の提供などにかかる費用が含まれているとしています。また、シリアとも救援物資の提供について調整を進めているとしています。

15:00ごろ トルコ・シリア両国の死者4900人以上に
トルコの防災当局によりますと、これまでに3381人が死亡し、2万人以上がけがをしたということです。また、倒壊した建物は5700棟を超えるということです。

一方、隣国のシリアでは保健省がシリア北西部を中心にこれまでに769人が死亡したと発表しているほか、北西部の反政府勢力の支配地域で救助活動を行う団体は少なくとも790人が死亡したとしています。

14:00ごろ 避難所のテントに多くの市民「寒く 支援が必要」
トルコ南部のアダナ市内にある市場や隣接する公園には、避難所が設けられています。避難所には災害対応にあたる当局のテントがいくつも設置され、多くの市民が身を寄せていました。

50代の女性は「息子家族5人が住む住宅が倒壊して、今も助けが来ない。政府には救助を急いでほしい。テントは寒く、支援が必要です」と泣きながら訴えていました。

また、避難していた20代の女性は「地震は本当に大きな揺れで恐ろしかった。家にいるのが怖いのでここに避難しています。助けが必要です」と話していました。

13:00ごろ 建物倒壊 たき火で暖をとる市民の姿も
トルコ南部のアダナでは複数の建物が倒壊し、地震の発生から24時間余りがたった7日午前(現地時間)も救助活動が続けられていました。高層住宅が倒壊した現場では大型の重機を使ってがれきを取り除き、取り残されている人がいないか、慎重に確認しながら作業を進めていました。

通りでは、寒さをしのごうとたき火で暖をとる市民の姿もあちらこちらで見られました。

日本で働くトルコ人男性 “親族と連絡取とれず”
愛媛県内で働くトルコ人の男性はいまも現地で連絡のとれない親族がいるということで、不安な心境を語りました。トルコ人のムラット・ダスキランさんは、17年前に来日し、松山市で英語教育を行うインターナショナルプリスクールを経営しています。

両親は被災地から離れたイスタンブールに住んでいて、地震のあとすぐに連絡がつながりましたが、被災地に近い地域に住む叔父やいとこは、メッセージを送っても返信が来ないといいます。インターネットなどで現地のニュースを常に確認しているというムラットさんは「叔父たちが心配で、このようなことが起きてとても悲しいです。現地はいまの時期とても寒く、被災した人たちが早く助かってほしいです」と話していました。

7日は、園に通う子どもたちと地震で犠牲になった人への哀悼の意を込めて、トルコの国旗やハートをあしらったクラフト作品を作ったということで、「私にはいまこれぐらいしかできません。とにかく被害が広がらないよう心から祈っています」と話していました。

11:00ごろ トルコ・シリア両国の死者4300人以上に
トルコの防災当局によりますとこれまでに2921人が死亡しました。また、倒壊した建物は4700棟を超えるということです。

一方、隣国のシリアでは保健省がシリア北西部を中心にこれまでに711人が死亡したと発表しているほか、北西部の反政府勢力の支配地域で救助活動を行う団体は少なくとも700人が死亡したとしています。

これらの発表によりますと、トルコとシリアの両国での死者はこれまでに4300人以上に上っています。現地ではその後も地震がたびたび起きていて、被害の拡大も懸念されています。

警視庁 救助隊派遣へ 救助犬も
トルコ南部のシリア国境近くで発生した地震で警視庁は7日、現地での救助活動などに当たる警察官や救助犬を派遣することになりました。

派遣されるのは、特殊救助隊などに所属する警視庁の警察官13人と救助犬4頭です。部隊は、7日夜、日本を出発し、すでに派遣されている国際緊急援助隊と現地で合流した上で、捜索や救助などに当たるということです。

9:50ごろ 松野官房長官「現時点までに邦人の被害情報なし」
松野官房長官は閣議のあとの記者会見で「現時点までに在留邦人の生命や身体に被害が及んでいるとの情報には接していない。地震発生直後に注意を呼び掛けるメールを発出しており、今後も情報収集や在留邦人の安全確保に万全を期すとともに、被害を受けた地域への必要な支援を検討していく」と述べました。

8:00ごろ トルコ・シリア両国の死者3790人に
トルコの防災当局によりますとこれまでに2379人が死亡し、1万4000人あまりがけがをしたということです。一方、隣国のシリアでは保健省がシリア北西部を中心にこれまでに711人が死亡したと発表しているほか、北西部の反政府勢力の支配地域で救助活動を行う団体は少なくとも700人が死亡したとしています。トルコとシリアの両国の死者はあわせて3790人となっています。

シリアでも救出活動続く(シリア北部アレッポ)
国連総会では冒頭に1分間の黙とう
現地時間の6日に開かれた国連総会の会合では冒頭、1分間の黙とうがささげられました。このあとグテーレス事務総長は演説で、国連として緊急支援を行うと表明した上で、各国に対しても「被害を受けたすべての人たちを支援するため連帯して協力しよう」と呼びかけました。

一方、シリアのサッバーグ国連大使は6日、ニューヨークの国連本部で急きょ記者会見を開き「地震によってシリアは壊滅的な状況にあり、支援のために国連のあらゆる努力を結集するよう要請している」と述べ、シリア政府として国連とすべての国連加盟国に対し、医療サービスや避難所、それに食料などといった支援を要請したことを明らかにしました。また「支援はシリア政府と調整することができ、その準備ができている」と述べ、支援はあくまでもアサド政権を通じて行われるべきだという考えを示しました。

6:45ごろ トルコとシリアの両国の死者3700人超に
トルコの防災当局によりますとこれまでに2316人が死亡したということです。一方、隣国のシリアでは保健省がシリア北西部を中心にこれまでに711人が死亡したと発表しているほか、北西部の反政府勢力の支配地域で救助活動を行う団体は少なくとも700人が死亡したとしています。トルコとシリアの両国の死者はあわせて3727人となっています。

6:30 南部都市のマンション倒壊現場で捜索続く
地震で被害を受けたトルコ南部の都市アダナにあるマンションの倒壊現場では、現地時間7日未明、救助隊が重機を使って建物のがれきを取り除きながら、行方がわからない人の捜索にあたっていました。

周辺では、未明にも関わらず、倒壊したマンションの住民らが心配そうな様子で捜索の様子を見守っていました。

いとこがこのマンションに暮らしているという男子大学生は「いとことは兄弟のように育った仲です。とにかく現場にかけつけましたが、まだ起きていることが受けとめられません。いとこやその妻、それに3歳の息子の行方がわかっておらず、無事でいてくれることを願うばかりです」と話していました。

国際赤十字・赤新月社連盟 募金を呼びかけ
スイスのジュネーブにある国際赤十字・赤新月社連盟は6日緊急の声明を発表し、被害が出ているトルコとシリアの人たちを支援するため、国際社会に対し、募金を呼びかけました。声明では「被災地での支援の必要性は、分刻みで高まっていて、救助隊はがれきの下に閉じ込められた生存者の救出を急いでいる」としています。その上であわせて7000万スイス・フラン、日本円にして、およそ99億1900万円を集めたいとしています。団体では「人道支援を行うための世界的な連帯を強化していくことが、この先、数週間から数か月にわたる復旧には不可欠だ」と訴えています。

4:30ごろ トルコ・シリア両国の死者3000人超に
トルコの防災当局によりますとこれまでに1762人が死亡し、1万2000人あまりがけがをしたということです。また、倒壊した建物は5600棟を超えるということです。一方、隣国のシリアでは保健省がシリア北西部を中心にこれまでに593人が死亡したと発表しているほか、北西部の反政府勢力の支配地域で救助活動を行う団体は少なくとも700人が死亡したとしています。トルコとシリアの両国の死者はあわせて3055人となっています。

4:00すぎ 南部の都市アダナの空港には救助隊が続々と
トルコ南部の都市アダナの空港には、現地時間6日夜遅く、日本時間の早朝、レバノンやルーマニアなど被災地で救助にあたる各国の部隊が資機材を持って続々と到着していました。このうち、レバノン軍の男性は「被害が大きいようなので、しっかり任務を果たしたい。長い滞在になりそうだ」と話していました。また、空港には親族と連絡が取れずに急きょ帰国した人の姿もあり、南部アンタキヤに住むトラック運転手の男性は「親戚から自宅が全壊したと連絡があったが妻と4人の子どもと連絡が取れない。どうか無事でいてほしい」と話していました。

集合住宅も多数倒壊(トルコ南部ハタイ県)
米 バイデン大統領がトルコにチーム派遣へ
アメリカのホワイトハウスによりますと、今回の地震を受けてアメリカのバイデン大統領は6日、トルコのエルドアン大統領と電話で会談し、犠牲者に哀悼の意を表すとともにトルコにすみやかにチームを派遣し、救助活動やけが人の対応などにあたると伝えたということです。また、バイデン大統領が発表した声明によりますと、シリアについてもアメリカ政府が支援する人道支援団体がすでに対応を進めているとしています。

OCHA=国連人道問題調整事務所が現状の報告書
この中で「今回の地震は、人道支援に頼っている410万人が暮らすシリア北西部の地域に大きな影響を与えた。人道支援を頼りにしている人の多くは女性と子どもだ。被害を受けた地域は、コレラの発生に加え、大雨や雪など、冬の厳しい天候による影響も同時に受けている」として、国際社会に支援の必要性を訴えています。

フランスやイタリアも救助隊などの派遣を発表
フランス政府は、被災地に136人の救助隊員と10頭の災害救助犬を派遣したと発表しました。一方イタリアの防災当局は現地時間の6日、NHKの取材に対し、緊急支援物資を積んだ航空機が、トルコの空軍基地に到着したとした上で、消防士などで構成された30人のチームが被災地で捜索や救助にあたると述べました。また今後、医薬品などの支援物資を被災地に送るほか、7日にはテントや食料などの緊急支援物資あわせて12トンを積んだ航空機がトルコに向けて出発するとしています。

ロシア シリアとトルコに救助隊派遣へ
ロシア大統領府は現地時間6日、今回の地震をうけてプーチン大統領がシリアのアサド大統領と電話会談を行い、犠牲者に哀悼の意を表すとともに必要な支援を行うことを申し出たということです。これに対しアサド大統領は謝意を示して申し出を受け入れたため、ロシア非常事態省の救助隊が数時間以内に派遣されることになったとしています。

さらに、ロシア国防省によりますと、ショイグ国防相がシリアに駐留するロシア軍に対して被災地の支援を指示し、300人以上のロシア兵が作業に参加しているということです。また、ロシア大統領府によりますと、プーチン大統領はトルコのエルドアン大統領とも電話会談して、支援を申し出たということでエルドアン大統領は謝意を示し、ロシアの救助隊を受け入れるようトルコの関係当局に指示したとしています。

台湾 130人の捜索救助隊派遣へ 最初の40人が出発
今回の地震を受けて台湾当局は総勢130人からなる捜索救助隊を編成し、このうち40人を6日夜遅く、桃園国際空港からトルコの被災地に派遣しました。残りの90人も7日に出発するということです。また、台湾当局は、被災者の救援にあてるための現金20万ドル、およそ2600万円をトルコ政府に贈ることも表明しました。

23:00ごろ トルコ・シリア両国の死者2300人
6日にトルコ南東部で発生した一連の地震では、現地の防災当局によりますと、これまでにトルコ国内で1498人が死亡したほか、隣国シリアでは保健省などによりますと815人が死亡し、両国の死者はあわせて2313人となりました。

23:00ごろ 日本から国際消防救助隊第1陣18人出発
外務省によりますと、国際消防救助隊にはおよそ75人が派遣される予定で、このうち18人が第1陣として6日午後11時すぎに羽田空港からトルコのイスタンブールに向かいました。

派遣された隊員には消防や警察、それに海上保安庁のほか、JICA=国際協力機構の職員も含まれています。また7日以降、第2陣を派遣する方針で、関係機関と調整を進めているということです。

国際緊急援助隊は2017年に360人あまりが死亡したメキシコ中部の地震や、2011年にニュージーランド・クライストチャーチで起きた地震の際にも派遣され、倒壊した建物の下敷きになった人たちなどの救助にあたりました。

また、1万7000人以上が死亡した1999年のトルコ西部の都市、イズミットを震源とするマグニチュード7.4の地震でも現地で救助にあたったということです。

英政府 捜索・救助隊と医療チームを派遣
イギリス政府はトルコ政府の要請を受けて被災地に捜索・救助隊と医療チームを派遣することを決め、現地の6日夜に到着する予定だと発表しました。

捜索・救助隊は隊員76人と災害救助犬4頭からなり、がれきの中から人を捜す音響探知機や、コンクリートを切ったりがれきを持ち上げたりする特殊な器材を使って救助活動にあたるということです。

クレバリー外相は「必要に応じてさらなる支援をする用意がある」とコメントしています。また、シリアについては国連と連携して緊急の人道支援を行うとしています。

岸田首相がお見舞いのメッセージ
岸田総理大臣は6日夜、エルドアン大統領宛てにお見舞いのメッセージを発出しました。
この中では「地震により多くの死傷者が生じたことに大変心を痛めています。亡くなられた方々に心からの弔意を表するとともに被災された方々にお見舞い申し上げ、被害に遭われた方々の早期回復をお祈り致します。日本は現地のニーズを踏まえて、トルコが必要とする可能なかぎりの支援を行う用意があることをお伝えします」としています。

21:00 トルコ・シリア両国の死者は1600人超に
トルコの防災当局によりますとこれまでに1014人が死亡し、5300人あまりがけがをしたということです。また、倒壊した建物は2800棟を超えるとしています。隣国シリアでは、保健省がシリア北西部を中心にこれまでに403人が死亡したと発表しているほか、北西部の反政府勢力の支配地域で救助活動を行う団体は少なくとも221人が死亡したとしています。トルコとシリアの両国の死者はあわせて1638人となっています。

EU 加盟国から救助チームの派遣を発表
EU=ヨーロッパ連合は6日、加盟国のフランスやオランダ、ギリシャやブルガリアなどから救助チームをトルコに派遣したと発表しました。さらなる支援についてもトルコの当局と調整しているということです。また、シリアについても人道支援の用意があるとしています。

専門家「建物の耐震性低く新たな被害発生も」
トルコの地震に詳しい名古屋大学地震火山研究センターの田所敬一准教授は「トルコの東部にはアラビアプレートとアナトリアプレートがぶつかり合う東アナトリア断層という大きな断層があり、地震が多い地域だ。今回はプレートの境界付近で起きた『横ずれ』と呼ばれるタイプの地震と考えられる」と話しています。

田所准教授は、1999年にトルコ北西部で発生したマグニチュード7クラスの大地震の調査を踏まえ、「トルコなど中東ではレンガを積み重ねた構造の建物が多く、非常に崩れやすく耐震性の低い建物がほとんどなので被害も大きくなると思う」と指摘したうえで、現地からの映像では1999年の地震のようにレンガの建物が大きく崩れている印象があるとしています。

最初の大地震の震源付近で再びマグニチュード7クラスの大地震が発生するなど断層に沿うように地震が続いていて、今後も規模の大きな地震に注意が必要だと指摘しています。

19:30ごろ 再びの大地震で被害が拡大 建物の倒壊も
現地ではその後も地震が続いていて、トルコの防災当局によりますと日本時間の6日午後7時半ごろ同じカフラマンマラシュ県を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生したということです。

南東部のディヤルバクル県で撮影された映像には、重機などを使った救助活動が行われる中、近くの建物の一部が音をたてて崩れ落ちる瞬間がとらえられています。

(マグニチュードは後に修正されています)
また、同じ南東部にあるマラティヤ県で撮影された映像にも、建物が崩れ落ちる様子や、近くにいた人たちが土ぼこりから間一髪で逃れる様子が写っています。

仏 マクロン大統領「緊急支援提供の準備」
トルコで起きた地震を受けてフランスのマクロン大統領は6日、「フランスは、現地の人々に緊急支援を提供する準備ができている。私たちの思いは地震で亡くなった人たちの遺族の皆さんとともにある」とツイッターに投稿しました。

ロシア プーチン大統領「支援提供 準備できている」
ロシア大統領府によりますと、今回の地震をうけて、プーチン大統領は6日、トルコのエルドアン大統領とシリアのアサド大統領にそれぞれ弔電を送り、犠牲者に哀悼の意を表しました。そのうえで両首脳に対して「必要なすべての支援を提供する準備ができている」と伝えたということです。

ロシアは、内戦が続くシリアでアサド政権に軍事支援を行うためフメイミム空軍基地などに軍の部隊を駐留させていますが、ロシア国防省は6日発表した声明で、ロシア軍の施設や戦闘準備態勢に地震の影響はないとしています。

16:00すぎ 松野官房長官「在留邦人の被害情報なし」
松野官房長官は、記者会見で「亡くなられた方々やそのご家族に心からの哀悼の意を表するとともに、負傷された方々にお見舞いを申し上げる。被害状況は確認中であり、それを踏まえ必要な支援を検討していく」と述べました。

一方で「現時点までに、在留邦人の生命・身体に被害が及んでいるとの情報には接していない。現地当局と連携しつつ、現地大使館が情報収集に努めているところで、在留邦人には注意を呼びかける領事メールを発出した」と述べました。

日本のNPOもスタッフ現地派遣へ
トルコ南東部のシリア国境近くでマグニチュード7クラスの大地震があったことを受け、日本国内でもNPOが医師や看護師を現地に派遣することを決めるなど支援の動きが出ています。

現地にスタッフを派遣するのは広島県に本部があるNPO「ピースウィンズ・ジャパン」で災害救助の経験がある医師2人、看護師1人を含むスタッフ5人が6日夜、日本を出発するということです。

被災地では、現地の支援団体と協力してけが人の手当てや必要な支援物資の調査などを行う予定だということです。

トルコ 過去にも大きな地震
トルコでは、これまでも大きな被害が出る地震が起きています。
▽1999年8月には、トルコ西部の都市、イズミットを震源とするマグニチュード7.4の大地震が起き、1万7000人以上が死亡しました。
▽2011年10月には、イランとの国境に近い東部のワン県の周辺で地震が起きて、600人以上が犠牲になっています。
▽2020年10月には、トルコとギリシャの間のエーゲ海を震源とする地震が起き、100人以上が死亡しました。
トルコメディアは、今回の地震について、1999年以来の大地震とも伝えています。

アメリカが関係機関に支援検討を指示
アメリカ・ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は、現地時間の5日に声明を発表し「アメリカはトルコとシリアでの破壊的な地震を深く憂慮している。われわれは、あらゆる必要な支援を提供する用意をしている」と述べました。その上で、バイデン大統領が被災地への支援策を検討するようアメリカ国務省傘下のUSAID=アメリカ国際開発庁や関係機関に指示したことを明らかにしました。

14:00ごろ トルコ・シリア両国で死者100人超か
トルコの防災当局によりますと、この地震でこれまでに少なくとも76人が死亡、440人がけがをしたと言うことです。また、隣国シリアの国営メディアは、シリア国内でこれまでに42人が死亡したと伝え、トルコ国内とあわせて少なくとも100人以上が死亡したと見られます。

11:30すぎ トルコ大統領がSNSに投稿
トルコのエルドアン大統領は6日、「この災害を最小限の被害で抑え、一刻も早く共に乗りきれるよう願う」と自身のツイッターに投稿しました。エルドアン大統領は捜索・救助活動を行うチームを被災地にただちに派遣したとしています。

10:00すぎ M7.7の地震発生
トルコの防災当局によりますと、6日午前4時すぎ、日本時間の6日午前10時すぎに、南東部カフラマンマラシュ県を震源とするマグニチュード7.7の地震が発生しました。震源の深さは7キロと推定され、この地震で広い範囲で建物が倒壊するなどの被害が出ていて、現地では救助活動が続いています。
(マグニチュードは後に修正されています)

 2023/02/09
トルコ・シリア、死者1.1万人超 大地震  

 トルコからシリアにかけて発生した大地震で、トルコのエルドアン大統領は8日、死者が8574人に上ると発表した。アナトリア通信が報じた。シリア側では2802人の死亡が確認されており、死者は計1万1千人を超えた。生存率が急激に低下するとされる発生後72時間が迫るなか、懸命の救助活動が続く。

 当局発表によるとトルコの負傷者は4万人を超えた。捜索、救助にあたる人員は9万6千人に上り、海外の援助隊5309人が入った。日本の国際緊急援助隊も南部カフラマンマラシュで活動している。(ヨハネスブルク=遠藤雄司)

 ■がれきの奥から声が、頼りは素手

 震源地に近いカフラマンマラシュに7日夕、入った。

 「この奥で声が聞こえたんだ」。夕闇の中、男性3人がコンクリートのがれきの隙間を、携帯電話の明かりを頼りに、素手でこじ開けようとしていた。

 「向こうでは遺体がみつかったそうだ」。がれきの山の反対側では、男性たちが集まり、がれきの中から遺体を引き出そうとしている。遠巻きに見ていた女性4人が、泣きながら祈りの言葉を繰り返していた。

 9階建てアパート8棟が倒壊したという、ラジオの情報をもとに訪ねた新興住宅街。アパート群が崩れてできたがれきの山は、野球場一つ分ほどもあるように見えた。何棟倒れたのか、数えることすら困難だ。

 やがて、救急車がサイレンを鳴らして走ってきた。「生存者だ。おばあさんだ」。先導の警察官が言った。

 ガソリンスタンドの屋根にはアパート1棟が倒れかかっている。崩れずに残った残骸のかなり上の方に、すでに亡くなったとみられる人の足が見えた。

 警察官の一人は「生存者の捜索を優先し、遺体は後回しにせざるを得ない」と悔しそうに語った。(カフラマンマラシュ=武石英史郎)(9面に続く)

9面 トルコ、倒壊相次ぎ人手不足
「救助隊来ない」悲痛な捜索

写真・図版  (1面から続く)
 「このビルは8階建てで、32部屋に70~80人が住んでいた。昨日はここだけで10人は救助された」

 7日夕、マグニチュード7を超す大地震の震源に近く、アパート群が倒壊したトルコ南部カフラマンマラシュの住宅街。ウール・ジャンチェリッキさん(32)はそう話すと、赤い屋根だけが残る1棟を指さした。弟夫妻が4階部分に住んでいて安否が分からない。

 「弟とは地震の前夜にビデオ通話で話したのが最後だ。もちろん生存を願っているが、願うだけでは意味はない」と話し、「ここでいま捜索活動をしているのは住民の親族で民間人だ。救助隊が来ない。当局には私たちの声が届かない」と訴えた。

 被災現場に医療チームや警察官はいるが、本格的なレスキュー活動は始まっていない様子だ。がれきを取り除くために動いている重機は5台ほどだ。

 上層から下層まで押しつぶされた1棟では、がれきの一番下のあたりの空間から数人が入り込み、捜索を続けていた。

 その一人、シナンさん(40)は「がれきが上から崩れてくる。早くクレーンが来てくれるといいのだが」とこぼす。クレーンは辺りが真っ暗になった午後6時過ぎに到着したが、その日の作業は断念した。

 市内では民間の大規模病院のほか、目抜き通りに立ち並ぶビルの倒壊が相次いだ。生存率が急低下するとされる発生後72時間が迫る中、アパート群の倒壊現場に救援の手がなかなか届かない一因となっている。

 倒れた1棟の3階に母と弟が住んでいたというズルフィキャル・アイクンさん(44)は、アパート群は同じ建設会社が2004年に分譲したものだと話す。コンクリートの破片を拾い上げると、「握るとボロボロと崩れる。手抜き工事だったのでは」と憤った。(カフラマンマラシュ=武石英史郎)

 2023/02/09 中国へ対抗意識、前面
気球撃墜念頭「国を守る」 バイデン米大統領   一般教書演説

写真・図版 【図版】バイデン政権は外交・内政を組み合わせ、覇権の維持を図る

 バイデン米大統領は7日、連邦議会で年に一度、内政・外交の成果と課題を示す一般教書演説を実施した。中国の習近平(シーチンピン)国家主席を名指しして「専制主義国家は弱まっている」と指摘。半導体など軍事と密接に関わる分野で産業政策を推し進め、同盟国と協力して対抗する構想を示した。▼国際面=団結訴えたが

 「はっきりさせておきたい。先週明らかにしたように、中国が我々の主権を脅かせば、我々は国を守るために行動する」

 バイデン氏は演説で、数日前の4日、米本土上空に飛来した中国の気球を米軍に撃墜させたことを念頭にそう強調した。後ろで見守る民主党のハリス副大統領が席を立ち、拍手を送る。バイデン氏の発言には、気球の問題を機に自らへの批判や対中強硬論が勢いを増すなか、対応の正しさを訴えたいとの思惑がにじんだ。

 米中対立は、軍事と経済・先端技術の覇権争いが複合する形で激しさを増してきた。バイデン氏はこれまで、競争が不測の事態に発展しないよう、中国側との対話も重視してきた。演説でも、習氏に対して直接、「米国が求めているのは紛争ではなく、競争だ」と伝えてきたと説明。米国の国益にかなう場合は中国と協力するとの姿勢も示した。

 ただ、中国側との対話や、関係の安定化に向けた具体策には踏み込まなかった。中国への言及が限定的だった昨年に比べても、中国への危機感や、同盟国と連携して対抗する重要性を強調する場面が目立った。

 「私が就任する前、中国が力を増し、米国が世界で失敗しているという話だった。だが、今は違う」

 バイデン氏は、米国の覇権が衰えたという見方も否定した。中国を「専制主義国家」とし、「民主主義国家は強くなった。専制主義国家は弱くなった」と主張。習氏を名指しして「習近平の立場になろうとする世界の指導者がいるのなら名前を挙げてほしい」と語気を強めた。そんな指導者が実際にはいないほど、中国が厳しい環境にあるとの見方だ。

 米国にとっては、アジアで日韓などと結ぶ二国間条約と、欧州で参加する北大西洋条約機構(NATO)を通じた集団防衛体制が、中国やロシアにはない安全保障上の強みとなってきた。バイデン氏はロシアのウクライナ侵攻についても米国が「NATOを結束させ、世界的な連携を構築した」と主導的な役割を強調。「太平洋と大西洋の友好国の間で橋がつくられてきている」と評価し「今や米国は、中国や世界のどの国と競争するうえでも、ここ数十年で最も強い立場にある」との自信を示した。

 バイデン氏は、他国の侵略を防ぐため米軍の近代化を進めていると強調。さらに「同盟国も力を増し、さらに多くの支出をし、より多くのことに取り組んでいる」とも指摘した。日本に直接は言及していないが、バイデン政権は防衛費の増額を決めた対応を歓迎しており、日本のこの変化も念頭に置いた発言だった。

 ■ハイテク技術、進展阻む戦略

 トランプ前政権を引き継いだバイデン氏は、経済・社会政策を通じた米国社会の融和と、中国などに対抗する外交とを組み合わせながら推進しようとしてきた。バイデン氏は演説で「(中国との)競争の勝利を通じて、我々は団結すべきだ」と率直に語った。

 バイデン氏はコロナ危機からの回復途上にあった米経済について、「1200万人の雇用の創出」を実績として強調。昨年に実現した半導体産業育成の立法にも触れた。米国内で半導体生産を強めるメーカーなどに、計約520億ドル(約7兆円)を補助金として出す。バイデン氏は「この新法で、全米で数十万人の雇用をつくる」と述べた。

 トランプ氏が台頭する要因にもなった米中間層の困窮を踏まえ、「取り残され、透明人間のように扱われた多くの人々」(バイデン氏)に向けた経済政策を訴えたいとの狙いがある。あわせて、軍事とも密接に関わる半導体などの分野で国家主導の産業政策を進め、米中のハイテク競争を勝ち抜こうとしている。

 昨年成立させた法律には、補助金を受ける企業に対し、10年にわたって中国への投資を原則禁じる規定が盛り込まれている。高性能半導体は、軍事技術の決め手となる人工知能(AI)や高速通信に欠かせない。バイデン氏は「先進技術を保護するために、同盟関係に投資し、同盟国と協働する」とも述べた。日欧などと連携し、中国の技術的な進展を阻もうとする戦略だ。(ワシントン=高野遼 清宮涼 榊原謙)

根深い対立 一般教書演説
バイデン氏、団結訴えたが 共和党からブーイング

写真・図版 【図版】バイデン政権は外交・内政を組み合わせ、覇権の維持を図る

 バイデン米大統領は7日の一般教書演説で、国内の政治対立を乗り越え「(中国との)競争の勝利を通じて団結すべきだ」と訴えた。だが、米国社会の分断を反映した党派対立は根深く、下院を制する共和党の議員からやじが飛ぶ場面もあった。大統領の権力が議会に厳しく制約される米国で、内外に課題を抱えたバイデン氏の政権運営は容易ではない。▼3面参照

 バイデン氏は登壇すると、昨年の中間選挙で下院の多数派を奪還した共和党のマッカーシー議長と握手した。3年前、トランプ前大統領は当時のペロシ下院議長(民主)が差し出した手を無視し、握手しなかったことがあるが、まずは融和ムードを演出した。

 バイデン氏が最初に強調したのは、コロナ禍からの回復を目指した政権発足以降の経済面の成果だ。「1200万人の新規雇用を生み出した。これまでの大統領が4年間で創出した雇用よりも多い」と語り、失業率が歴史的な低水準になっていることも強調した。

 超党派の立法で大型のインフラ投資などを実現させた実績も訴えた。今年1月にテネシー州で黒人男性が警察官に暴行され死亡した事件に触れて警察改革を呼びかけたり、薬物の過剰摂取や銃規制、「心の健康」対策への対応を求めたりと、米国社会に横たわる幅広い社会課題に言及した。

 ただ、今後の2年間は民主党が大統領府と上院を握る一方、共和党が過半数を得て下院を支配する。このため、バイデン政権が大型の財政支出を伴う国内政策を新たに進めることは難しい。党派を超えた協力を呼びかけるバイデン氏に対し、両党の議員がともに拍手を送る場面は、対中政策やウクライナ支援に言及した際など、わずかだった。

 特に対立が顕著に表れたのは、バイデン氏が共和党について、社会保障や公的医療保険の縮小を求めているなどと批判したときだ。議場の共和党議員からは「うそつき」などと声が上がった。演説中にブーイングややじが繰り返され、演説終了後には、拍手もせずにバイデン氏に背を向けて退場する共和党議員の姿も目立った。複数の米メディアが、近年、大統領の演説中に対立する政党からやじが飛ぶことが多くなっていると伝えている。

 バイデン氏の訴えた「実績」も、有権者からは必ずしも受け入れられていない。米紙ワシントン・ポストと米ABCニュースが2月に発表した世論調査では、回答者の6割が、程度の差はあれ、バイデン氏の大統領在任中の成果について評価していなかった。

 バイデン氏は近く、次期大統領選への出馬を正式に宣言するともみられている。ただ、すでに80歳ということもあり、世代交代を求める声もあがっている。

 トランプ前政権で大統領報道官を務めたアーカンソー州のサラ・サンダース知事は、バイデン氏の一般教書演説の後、「民主党は何兆ドルもの無謀な支出をし、山のような借金をした。(不法移民が流入する)国境危機も史上最悪の水準で起きている」と批判した。

 ■ウクライナ支援「過剰」派増える

 議会でも比較的、超党派の支持が得られてきたのが、ロシアが侵攻したウクライナに対する武器などの支援だ。ただ、ここでも党派対立の火種はくすぶる。

 侵攻開始の直後に一般教書演説があった昨年に比べ、今年の演説では、ロシアやウクライナへの言及は限定的だった。それでもバイデン氏は、米国が主導して「北大西洋条約機構(NATO)を結束させ、世界規模の連合を構築した」点の意義を強調。ウクライナという主権国家に一方的に侵攻したロシアの行為が、米国や世界の真価を試すものだったと指摘した。

 バイデン氏は米国が掲げる民主主義の重要性を強く訴え、米国が「専制政治から自由に生きる権利」や「民主主義の擁護」といった理念を守るために立ち上がったと訴えた。さらに、議場で演説を聴いていた駐米ウクライナ大使に「米国は一丸となって貴国を支援しています。必要な限り、あなた方に寄り添い続ける」と語りかけた。

 ウクライナ支援をめぐっては、米議会も従来はおおむね足並みをそろえ、バイデン政権の方針を支持してきた。ただ、巨額支援に懐疑的な勢力を党内に抱える共和党が下院で多数派となり、今後には不安も残す。

 ウクライナ支援に対する世論も党派による分断が深まっている。ピュー・リサーチ・センターによると、1月の調査で支援を「過剰」とみる共和党支持者は40%に上り、昨年3月の9%から大幅に増えた。民主党支持者では、昨年3月の5%から増えてはいるものの15%にとどまっている。(ワシントン=望月洋嗣 合田禄 下司佳代子)

 ■<考論>低迷する支持率、内政に重点 渡辺靖・慶応大教授

 昨秋の中間選挙の結果、上院は民主党、下院は共和党が過半数の議席を持つ「ねじれ」の状態での演説だったためか、全体として党派対立をあおらず、結束を促そうとする演説という印象を受けた。

 国民のために超党派で協力しようとする政権側に対し、一部の共和党の議員が妨害しているという図式を打ち出す戦略を持った、巧妙な演説だったと思う。

 昨年はロシアのウクライナ侵攻の直後だったので外交・安全保障に時間をかけて演説していたが、それ以前と比べても今回は内政問題の比重が大きい。2024年の大統領選を前に支持率が低迷するなか、実績をアピールするために、有権者にとってあまり身近ではない外交・安全保障への言及が短くなったのではないかと考えられる。

 内政問題については、トランプ前政権時からよく使われてきた「忘れられた人々」という言葉を使い、中間層や労働者に寄り添う姿勢も打ち出した。一方で、前政権と比べ富裕層や大企業に対する態度の厳しさは際立っていたと感じる。

 興味深かったのは、バイデン氏が中国について言及すると、議員らから「USA、USA」と声が上がった一方、ウクライナ支援については比較的、盛り上がりに欠けていたように見えたことだ。中国に対しては党派によらず強硬姿勢が共通しているが、ウクライナについては一部の議員に「支援が過剰」という声があることを反映しているようだった。(聞き手・日高奈緒)

 
 
https://www.historyjp.com/allindex/ https://www.hotsuma.jr.jp ◆下平評
◆日付  2023/00/00
  

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