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https://essay-hyoron.com/essay8.html
た 世界は日本化する Essay 8 (2009/5/15)
<和戸川 純>・・・ニックネイム
このエッセイの後編として、エッセイ45 「世界が日本人に注目している」 を書きました。ここで書いたことが、6年後の世界にどう反映されているのかを、知ることができます。
日本人が知らない日本人に対する世界の期待
このエッセイのタイトル「世界は日本化する」は、日本人の意思とは無関係に、自然の成り行きとして、日本化という方向へ世界は動く、というニュアンスになる。しかし、筆者はもっと積極的に、「日本人は、世界を日本化させなければならない」という意味も、含めたい。
世界の人たちは、意識をするしないにかかわらず、日本的な精神を受け入れようとしている。 これを、日本人が積極的に後押しするならば、日本の国際的な立場が強まるばかりではない。世界に安定と平和をもたらすために、日本人は大きな貢献をすることができる。大げさに言えば、人類史において、日本人が、一つの時代を作り上げることが可能になる。世界は日本化する
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このように書き出すと、何事にも控えめ、かつ受動的な気質を伝統的に持っている日本人は、違和感を感じるかもしれない。
そこで、日本人に自信を持たせるような、事実の列挙をこれからやることにする。多くの日本人が知らない、日本人に対する海外での高い評価が含まれる。
勿論、海外での高い評価を知ったからといって、うぬぼれてはならない。 「うぬぼれることのない日本人」が、世界視野で見たときに、日本人の突出した長所になるのだ。
日本人に対する、世界からの期待を客観的に知ることは、世界をリードするための最初の一歩になる。日本人が世界に対する自らの役割を果たすならば、先が見えなくなっている世界に、希望をもたらすことができる。これを目標にしたい。
このための行動は、冷静な判断に基づいていなければならない。
アングロ・サクソンの現実離れした自意識
人類史において、覇権国家が次々に変わってきた。
精神的・肉体的な強いエネルギーに裏打ちされた、野望、策略、暴力をもとに、アングロ・サクソンは、近代史において世界制覇を成し遂げた。 産業革命が、汎地球的な活動を容易にする技術を、アングロ・サクソンにもたらしたことが、そのような世界制覇を助ける時代背景になった。
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自分に過ちがあることが解っていても、自己を徹底的に正当化するディベートが、当たり前になっているアメリカ人。勝つことが正義なのだ。敗者は、どのように高い倫理に裏打ちされていても、弱者として消え去るのみ。
アメリカの各大統領の演説においては、一点の疑念をはさむ余地もなく、アメリカが完璧なグレート・カントリーということになる。大局的な判断において過ちを犯すことはなく、常に世界をリードする大国。その価値観の前に、世界はひれ伏さなければならない。
オーストラリアでも、メディアや個人は、自国をいつもグレート・カントリーと言う。移民がオーストラリア社会を批判すると、「グレート・カントリーへ来て文句があるならば、自分の国へ帰れ」と、言われてしまう。
「グレート・カントリー」という言葉が出た途端に、全ての思考と議論が停止してしまう。
日本人の現実離れした自意識
それに対して、日本人が自国を「グレート・カントリー」と言うのは、聞いたことがない。 今や、極端な国粋主義者でさえも、日本を「偉大な国」とは言わない。
日本人は何か問題があると、即座に「すみません」と謝ってしまう。自分が正しいと思っていても、種々の状況判断から、まず謝ることを選択してしまう。
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外国人から批判を聞くのが好きで、外国人が書いた、日本人に対する辛口の論評がベスト・セラー本になったりする。
山本七平が、いささかふざけた響きのあるペン・ネーム、イザヤ・ベンダサンを使って書いた「日本人とユダヤ人」。最初は、日本人についての外国人が書いた辛口評ということで、話題になった。
日本人の心理は、劣等感の方向へ完全に傾いているわけではない。劣等感と優越感の間で微妙に揺れ動いている。
ヨーロッパの伝統や文化、それに人間に対して、歴史的にコンプレックスを持っている。ヨーロッパ系の人たちの日本批判には、関心を持つが、アジア系の人たちからの批判には、聞く耳を持たなかった。それどころか、「日本人はアジア人とは違う」と言われることに、快感を感じていた。アジアから抜け出て、少しでもヨーロッパに近づくことが夢だった。
ところが、今や時代は大きく動いている。中国や韓国を初めとするアジアの国々が、経済的のみならず、文化的にも大きな力を持つようになってきた。韓流へのあこがれに象徴的に見られるように、アジアの国が、あこがれの対象になる時代が来た。アジアの国に対して、コンプレックスまでも感じるようになった。
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他の国の人たちに比べて、この自虐的とも見える日本人の精神構造は、世界の中においては欠点にもなる。日本人の立ち位置を、日本人自身が客観的に見つめなければならないときに、判断を狂わせる。客観よりも主観を優先させてしまうからだ。
イタリア人聖職者を驚かせた日本人の正直さ、潔癖さ
世界の人たちは、日本と日本人をどのように見ているのか?
これを客観的に知ることによって、日本人は世界のために、効果的な貢献をすることができるようになる。その貢献は、日本人自身に大きな見返りを与える。
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昨年7月に、フィレンツェ大聖堂の壁面へ、学生を含む3人の日本人が落書きをした。この落書きが、日本で大問題になった。
この事件のあとで、大聖堂のイタリア人責任者はとても驚いた。落書きをされたことに驚いたのではない。日本人のリアクションに驚いたのだ。
自国民による落書きを恥じて、証拠の写真を学校側に送った日本人観光客。それにただちに反応して、大学側は、落書きをした犯人に厳重処分を下した。そればかりではない。大聖堂に謝罪をし、修理・補修の申し込みまでしたのだ。
大聖堂の責任者には、大学側の対応に驚いている暇はなかった。落書きとは全く関係のない大勢の日本人が、謝罪の手紙やファックスを、大聖堂へ大量に送ってきたのだ。
大聖堂の壁面には、イタリア人を含む各国の人たちが書いた、大量の落書きがある。しかし落書きに謝罪をしたのは、日本人が初めてだった。
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大聖堂ばかりではない。イタリアの大都市には、バスや電車の側面、あるいは建物の壁など、至るところに落書きがある。イタリア人には、落書きをすることに罪の意識はない。それどころか、疑われても決して自分の罪を認めない。責められても、決して謝ることはない。
イタリア人から見て、日本人は考えられない程、正直で潔癖なのだ。大聖堂の責任者は、日本人がこのようなリアクションを取ることを、予想していなかった。
大聖堂側は謝罪のみで十分として、修復費用の申し出を断った。同時に、大聖堂の責任者は、イタリア人は日本人を見習うようにと、自国民へアピールを出した。
各種の好感度調査で日本人はトップ・クラス
1.ツーリスト調査で1位
ヨーロッパのホテル業者の間では、伝統的に日本人ツーリストの評判がいい。2007年のツーリストに関する調査で、 ヨーロッパの1万5000のホテルが選んだベスト・ツーリストは、日本人だった。2位のアメリカや3位のスイスを、大きく引き離していた。
日本人は、「マナーを心得ていて、他人に対する振る舞いはていねい」、「ホテルの部屋をきれいに使う」、「とても静かに行動する」など、好印象を与えている。
ホテル・マンが特に評価したのは、日本人は、ホテルに直接的な苦情を言うのではなく、間接的な要望として、自分の気持ちを伝えることだった。ヨーロッパの人にはない、そんな遠慮深さが強い印象を与える。
ちなみに2位のアメリカ人は、「一番たくさんお金を使う」、「チップの額が多い」という点で、評価された。
最下位はフランス人で、「旅先の国の言葉を使おうとしない」、「地元の料理を試そうとしない」という点が、嫌われている。 ロシア人は、「周囲の人たちを無視して、大声を上げながら徘徊する」ことを、嫌われている。
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2.国際好感度調査で1位
タイム誌による、今年初めの国際好感度調査においても、日本人は1位になった。
この調査は、世界56か国の12万人を対象にして、大掛かりに実施された。
好感度ランキングを見ると、1位日本、2位ドイツ、3位シンガポール、4位アメリカ、5位中国などとなっている。
日本の経済力と、科学研究を重視する姿勢が、世界各国から高く評価されている。同時に、 国際問題の解決に武力を使わず、攻撃的な言辞を用いないことも、良い印象を与えている。
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3.世界平和度指数で5位、G8の中で断然トップ
Vision of Humanityという国際機関と、エコノミスト誌の調査部門が協力して、140カ国の政情や治安状況を分析する、世界平和度指数がある。2008年度版では、日本は前年と同様に、5位になった。 5位というランクは、高いとはいってもトップではないので、特に驚くべきことではないと考える人がいるかもしれない。
しかし、これは調査の内容をよく知る人にとっては、驚くべきことなのだ。
1位アイスランド、2位デンマーク、3位ノルウエー、4位ニュージーランド、5位日本、6位アイルランド、7位ポルトガル、8位フィンランド、9位ルクセンブルグ、10位オーストリア。
なんと日本以外は10位まで、ヨーロッパ系の人たちが住む小国なのだ。 11位に、やっとG8加盟国のカナダが入っている。14位ドイツ、36位フランス、49位イギリス、97位アメリカなど、大国のランクは日本よりもはるかに低い。
日本は、隣国と緊張関係にはあるものの、重大犯罪が少なく、政情も比較的安定していることなどが、評価された。
主要国の中で、日本の評価が際立って高いことが、BBCのコメンテーターにはとても不愉快だった。ニュース・ショーで、手持ちの時間の間、評価機関の委員にずっとかみついていた。このかみつかれた評価委員は、オーストラリア人だった。このオーストラリア人は、日本がいかに平和で安全な国であるかを、一生懸命に説明することになった。
日本のマスコミは、何か事件が起こると、微に入り細に入りいっせいに報道をする。それで、日本は凶悪犯罪がとても多い、というような印象を持ってしまう。オーストラリアなどでは、凶悪犯罪の報道には自主規制がかかっていて、報道だけでは凶悪事件が多いようには感じられない。日本が世界とは異なるこんな現実がある。
ただし、 民主主義のレベルについては、評価が低かった。特にメディアの自由度は、最悪の評価になっている。 5位に甘んじていてはならない。日本にも改善すべきところはあるのだ。
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4.平和貢献度調査で1位
一昨年に、BBCが世界中で行なったアンケートでは、 世界平和へ最も貢献している国として、カナダと並んで日本がトップになった。 BBCのコメンテーターは、自社のこの調査結果を知らなかったに違いない。
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5.インドの重要相手国調査で3位
先日、日本の外務省が、インドの有識者を対象にして、対日意識に関する面接調査をおこなった。この調査のやり方から判断をすると、客観的な調査とは言いにくいが、 最も重要なパートナーとして、日本は、アメリカ、ロシアに次ぐ3位になったことを書いておく。
インドが、急成長する新興国として頭角を現すまでは、日本人は、インドをアジアの貧困国としか見ていなかった。逆にインド人は、植民地時代に宗主国イギリスから、多大な影響を受けたために、自分たちを、アジアの一員としてよりも、ヨーロッパの一員として考えることを好んだ。
インドIT産業のレベルの高さ、急成長するインドを投資先として考える日本人の増加、日本企業の進出などがあって、インドに対する日本人の見方が変わってきている。同時に、インド人の間でも、日本への期待が高まっていることは事実だ。
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6.世界腐敗認識指数で18位
Transparency Internationalは、イギリスに本部を置くNGOで、各国にある支部と連携しながら、世界の汚職・腐敗と戦っている。この組織は、専門スタッフの協力のもとに、毎年各国の腐敗認識指数を発表している。
2008年に、日本のランクは、180か国中、前年の17位から18位に下がった。日本よりもランクが低いのは、19位アメリカ、23位フランス、55位イタリアなどだ。上位には、同点1位のデンマーク、ニュージーランド、スウエーデン、そしてスイス、オランダ、オーストラリア、カナダ、ドイツ、イギリスなどが入る。
日本については、政官業の癒着が、腐敗の根源として指摘されている。 腐敗度を重視する調査なので、上にあげたいろいろな調査よりも、日本のランクは低くなってしまった。
日本人に対する世界の高い期待
全体的に見れば、日本の国際的な評価は極めて高いと、言える。特に G8のような大国の間だけで比べれば、日本は抜きん出て高い評価を受けている。 いささか自虐的な日本人からすれば、このように高い評価を受けていることは、予想外なはずだ。
日本に対する高い評価は、世界が、世界に対する日本人の貢献に期待をしていると、読みかえることができる。日本人は劣等感を捨てていいのだ。それどころか、 世界を積極的にリードできる外部環境が、既に整っている。
日本人が期待される時代背景
なぜこのようになったのかを、少し考えてみよう。
日本人が高い評価を受けるようになった背景として、攻撃的なアングロ・サクソンの世界覇権の時代が、終焉に近づいたことをあげてもいいと、思われる。
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世界はとても小さくなってしまった。情報はアッという間に世界を駆けめぐる。1日もあれば、世界のほとんどのところへ行くことができる。多国間貿易のネットワークは、網の目のように世界中に張りめぐらされた。
優位に立つ民族や国家が征服できるところは、地球上には存在しなくなった。アングロ・サクソンの野望を展開できる場所は、なくなったのだ。
同質の情報を共有し、判断に優劣がなくなった人間が、過密なほど、地球上に存在するようになった。「そこのけ、そこのけ、お馬が通る」は、もはや通用しない。
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現在の世界人口は68億人、人口密度は1平方キロ50人だ。
日本は1平方キロ336人。世界平均の6.7倍となり、世界第34位だ。
ランクの上からは、トップクラスではないように見える。しかし、人口密度が日本よりも上位にある国々は、マカオ、モナコ、シンガポールのような都市国家や、マルタ、バーミューダのような小島国家がほとんどなのだ。面積が日本よりも大きいのは、インドだけだ。インドの人口密度は364人で、日本とほぼ同等になっている。
日本の特徴は、世界の主要国の中で、数字が示す人口密度が高いことだけではない。
日本人は、小さな島嶼のさらに小さな山間の平地で、生活をずっと続けてきた。居住可能地における人口密度は、極端に高くなるが、周囲に山があるために、そこから逃げ出すことはできなかった。その山あいの平地で得られる食料は、限定される。
相互扶助の精神で助け合うことでしか、生き延びる方法はなかった。闘争で問題を解決しようとすれば、小さな社会は崩壊した。結果として、穏やかな譲り合いの精神が確立された。
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世界を見ると、人間の生存に必要な水が極端に不足している土地が、広大な広がりを見せている。水資源の心配が全くない日本のような国は、特異な例外になる。
この地球上における居住可能な土地は、日本が歴史上ずっと経験してきたような、過密状態になってきた。水資源は既に乏しくなっている。食料資源も地下資源も枯渇する。 資源が貧しい島嶼で、日本人が全歴史を通して経験してきたことを、世界が今体験し始めている。 日本人の精神や、生きるための知恵が受け入れられる下地が、でき上がったのだ。
出口が見えないキリスト教世界とイスラム教世界の凄惨な対立
狩猟民族と遊牧民族の戦いは、血で血を洗っても、決して終わることはない。 東西冷戦は、政治・経済体制が互いに異なる、ソ連が主導する共産主義国家と、アメリカが主導する資本主義国家間の争いだった。それは、主義・主張がからんだ国際的な権力闘争だ。今考えれば、単純な争いだったことになる。
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現在は、国境が消えた世界で、凄惨な歴史にいろどられた、キリスト教を奉じる欧米と、イスラム教を奉じるアラブ世界の、民族と宗教がからんだ対立になっている。これに政治と経済がからむ。
民族と宗教の問題は、合理的な思考を超えたところにある、怨念の感情を人々の間に持ち込んでしまう。血で血を洗う、抜き差しのならない戦いの出口は見えない。核兵器が拡散すれば、世界各地で、大規模な破壊が繰り広げられることが、予想される。
東西冷戦時代には、厭戦気分に落ち込んだ若者たちが、世界各地でデモをおこなった。あるいは、自国が前線になって、全てが破壊されることを恐れたドイツ人の若者が、オーストラリアのようなヨーロッパから遠く離れた国へ、合法的にあるいは違法に移り住んだ。
現在のキリスト教世界とイスラム教世界の戦いにおいては、戦場は限定されていない。オーストラリアでも、テロが発生したりしている。
こんな殺し合いを前提にした世界を、根底から変えたいと考える若者が増えるのは、当然の成り行きだ。平和への希求は、生への願望と結びついて、本能の奥底からあふれてくる。
日本人の精神が世界を救う
日本人が気づく前に、世界の人たちが、本能的に日本人の価値を認め始めたことは、皮肉といえば皮肉だ。 対立を避けながら、互いに助け合って生きてきた農耕民族の日本人は、今から世界で大きな貢献をできる。
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日本のアニメ、漫画、ゲーム、Jポップ、現代アートなどのポップ・カルチャーは、欧米やアジア各国の若者の間で、cool(かっこいい)として受け入れられ始めた。
世界のテレビで放映されているアニメの65%が、日本製なのだ。感受性の高い、子供や若者の心理に与える日本アニメの影響は、とても大きい。日本的な価値が、知らず知らずの間に、これらの人たちの心に刷り込まれていく。
ゲーム・ソフトの開発に携わっている飯野賢治は、「日本のポップ・カルチャーの強みはごちゃまぜなこと」と、言う。人種や階級、宗教などにとらわれずに、多彩な人や生き物が出てくるアニメ。暴力もエロも純愛もいっしょくたにしたゲーム。各国の音楽をごちゃまぜにしたJポップ。これらが、海外の人々の目には魅力的に映る。
純日本的では距離がありすぎて、受け入れる者は構えてしまう。しかし無国籍ならば、容易に受け入れることができる。しかもそこには、日本人の精神が反映されている。そんな精神が必要とされる、今という時代において、日本で生まれたカルチャーが、世界で受け入れられるようになったことは、自然の成り行きともいえる。
アニメを通して入った日本のお宅文化が、世界中の若者の間で受け入れられている。このお宅文化は、やさしさを基調にしている。終わりのない憎しみや殺し合いを嫌悪する若者は、喜んでこのお宅文化に飛びつく。
子供や若者の心に与えられた影響は、世代から世代へと受け継がれ拡大していく。日本的なものを受け入れることによって、日本的な感覚が植えつけられていく。
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「おしん」が世界中でヒットしたことも、忘れてはならない。「おしん」はとりわけアジア諸国で今でも人気が高いが、エジプト、アフガニスタン、イランのような、イスラム国家においても大人気だった。
苦難に会っても、決してあきらめない粘り強さが、共感を生んだばかりではない。義理を大事にし、人間として、他人を思いやることの意味は何かと問いかけるところに、人々は新鮮な驚きを感じた。
このようなストーリーが受け入れられることからも、アングロ・サクソンの闘争世界よりも、日本的な調和世界を受け入れる方向へ、世界の人たちの心が動いていることが分かる。
日本人ができる世界への積極的な貢献
自分たちの立ち位置を、世界の中で確保することが、必要なばかりではない。血塗られた、おぞましい闘争がはびこる世界を変えるために、日本人は、どのようにして世界へ影響を与えればいいのだろうか?
その具体的な戦略は?
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人の世で、全ての物事を動かしているのは人。 日本に通じ、日本に好意を持っている外国人の数を増やすことが、日本のためにも世界のためにも、重要な長期戦略になる。
具体的には、まず留学生の受け入れだ。良質の教育を与えることによって、将来はその国のリーダーになることができる人材を、日本で育てる。
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日本の教育を、外国人にとって魅力的なものにしなければならない。そうでなければ、そもそも留学生は日本へは来てくれない。
日本の教育に魅力がなければ、政府が打ち出した、留学生の受け入れ枠を満たすことは難しい。文科省が立てた計画に示されている、留学生数達成のために、授業料を安くしたり、特別な奨学金を出すようなことをするのは、止めたほうがいい。
お金を出しても、人の心を買うことはできない。教育費の捻出で苦労をしている国民からは、この種の政府援助に対して、厳しい反発を受けることになる。
外国人にとって魅力的な教育は、日本人自身にとっても魅力的だ。優秀な外国人が育つ教育ならば、優秀な日本人も育つ。すなわち、この戦略は日本人自身のためにもなる。
これは、ただ単にお金を出すことよりも困難だが、やらなければならないことだ。
もっとも、 政府がお金を出さなければならないという現実が、日本に住んでいる日本人にはある。OECD各国の中で、対GDP比での教育に対する公の予算は、日本が最低なのだ。 国の教育軽視が、こんな形でこんなところに現れている。これには大幅な改善が必要だ。
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留学生獲得に成功している、オーストラリアの例を見てみよう
大学によって授業料に差があるので、メルボルン大学を例に取る。留学生の学費にはディスカウントがなく、学部によって差はあるが、平均して年2~3万ドルになる。これに対して、オーストラリア人学生には国の補助があるために、留学生の3~4分の1の6000~7000ドルとなる。
留学生の数は多く、メルボルン大学などは、アジアの大学かと錯覚をするくらいに、アジア系の若者を、キャンパスの至るところに見かける。留学生の国家歳入への貢献は大きく、資源、農産物、観光に次いで、歳入の第4の柱が教育になっている。
オーストラリア人よりもはるかに多くの学費を払わせていながら、留学生が多い理由の一つとして、やはり教育の質があげられる。自分の頭で考え、大きな努力をしなければ、学生は良い成績を上げられない。大胆な発想でエッセイを書けば、高い評価が得られる。学生に最大限の努力を求め、その努力に対しては大きく報いる教育システム。
それともう一つ、オーストラリアが英語国であること。 英語で教育を受ければ、卒業後に世界のどこでも職探しができる。日本語で教育を受けたのでは、日本以外の国で職を探すのは難しい。
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日本では、若年人口の減少と共に、学生数が不足する大学が出てきた。今後このような大学は更に増える。これらの大学が英語のみで授業をするようになれば、アジアなどから、多くの留学生を間違いなく引きつけることができる。世界で活躍する英語力のある日本人を育てるためにも、そのような大学には大きな意味がある。
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日本の教育改革を言うのは簡単だが、 画一的な教育システムが当たり前になっている日本で、教育者自身が自ら変わらなければ、抜本的な改革はできない。 英語で授業をすることの意味を認めても、英語力のある教授陣の確保は困難だ。予算の増額には、大胆な政治決断が必要になる。
しかし、日本人の長所を自覚した上で、日本人の精神が必要とされている、世界の状況を的確に判断し、人類のために貢献をするという強い意思を持てば、できないことではない。人間のやることだ。人間にできる。
チャンスは、日本人が気づく前に日本人に与えられている。
<和戸川 純>
https://essay-hyoron.com/essay45.html
ち 世界が日本人に注目している Essay 45 (2009/5/15)
<和戸川 純>・・・ニックネイム
6年前に 「世界は日本化する」 を書きました。予想通りに、世界の日本化が深く進行しています。
世界には、いろいろな世論調査があります。世論調査という鏡は、日本の長所も短所も映し出します。長所を知れば、日本人が世界の日本化を加速でき、世界はもっと平和になります。
日本人の民族的な特性は、災害をもたらす厳しい自然環境下で、長い時間をかけて形成されました。ユーラシア大陸は、「人間災害」と言ってもいい、民族の生き残りのための、厳しく残忍な戦いの歴史に彩られています。この違いには、とても大きな意味があります。
日本のイメージ 2015年7月27 -
「国家イメージ」ランキング第1位 大規模調査で4年連続1位
【国家イメージ2010年=米タイム誌】 米「タイム」誌が、「国家イメージ」に関する大規模な世論調査を毎年行っていた。2010年には56か国に住む12万人に質問をして、主要20か国の国際的なイメージをランクづけした。この年の発表が最後になったので、ここでは2010年の結果を示す。
順位 国 名 点数 1 日本 77 2 ドイツ 72 3 シンガポール 71 4 アメリカ 64 5 中国 62
2010年の調査では、100点満点のうち77点を獲得した日本が、総合1位になった。 特筆に値するのは、2007年から4年間連続して1位になったことだ。
日本のイメージが良い理由として、技術的にも経済的にも発展した国であると同時に、ODAなどで他の国々へ経済援助をしていることがあげられる。また戦争で問題を解決しようとしない、平和愛好国であることも、高い評価につながっているようだ。
国のイメージは、そこに住んでいる国民の印象によっても影響される。 日本人には、道徳を守る穏やかな人たちという良いイメージがある。
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この世論調査は、アメリカの代表的なメディアによる大規模なものだ。5位という、他のほとんどの世論調査よりも高い評価を受けた中国が、この調査の結果に強い関心を示した。
中国の軍事情報メディア「鼎盛軍事網」によると、「日本よりも中国のイメージのほうが良い」と答えたのは、中国人とパキスタン人だけだったという(「モーニングスター・サーチナ」)。
人民日報のオンライン版に「人民網」がある。「人民網」日本語版の2012年6月7日号で、「世界で高い評価を受けている日本製品や、清廉潔白な官僚が多いこと、それに政治の透明性が保たれている社会機構が評価されて、日本がトップになった」と編集者が述べた。また「中国の経済が成長しても、思い上がったり逆に自分を過小評価したりしてはならず、さまざまな角度から自分や日本を見つめ、自分のなすべきことを見つけるのが一番重要」とも指摘した。
日本人を見て自らを戒める中国人のジャーナリストがいることを、日本人としては記憶に留めておきたい。もっとも日本をダシにして自国を批判している気配が、この編集者には感じられる。
「国別ブランド」ランキング第1位 技術と文化に高い評価
【「国別ブランド」2014-15年= 米「フューチャー・ブランド」社】
順位 国 名 1 日本 2 スイス 3 ドイツ 4 スウェーデン 5 カナダ 6 ノルウェー 7 アメリカ 8 オーストラリア 9 デンマーク 10 オーストリア 12 イギリス 14 シンガポール 17 フランス 18 イタリア 20 韓国
米企業調査会社「フューチャー・ブランド」が、頻繁に海外旅行をする旅行者を調査して、毎年「国別ブランド」のランキングを決定している。「フューチャー・ブランド」は、「国のブランド化は企業ブランドと同様に、消費者の行動に影響を与える」と考えている。「消費者には、自分がすばらしいと思っている国の製品を買う傾向がある」という意味だ。
2014-15年に、17か国の旅行者2530名から意見を収集した。この調査結果から、調査対象国になった75か国のうち22か国が、ブランド指定を受けた。
日本は2010年6位、2011年4位、2012-13年3位と確実に順位を上げてきて、2014-15年ではついに総合1位になった。
以下スイス、ドイツ、スウェーデン、カナダ、ノルウェー、アメリカ、オーストラリア、デンマーク、オーストリアと、ヨーロッパ系の人たちが多く住む国が続いた。2位のスイスは、自然の美しさ、高い生活水準、高度な技術、効率的な金融サービスなどで高い評価を受けた。3位のドイツは、テクノロジーを中心にして、日本に似た評価を受けた。
評価の対象になった分野は「暮らし」、「価値観」、「ビジネス」、「文化」、「観光」、「生産品」だった。
日本人は「文化的にユニークで、立ち止まることなく常に向上し続けている」ことが、注目された。 日本の「家電・自動車などの最先端技術」、「医療・教育」、「遺産・文化・芸術」が、高く評価された。日本から連想される企業は、任天堂、ソニー、東芝、パナソニック、日立製作所、トヨタ自動車、本田技研工業など、消費者に近い大企業だった。
「フューチャー・ブランド」の論理を借りれば、 「日本がすばらしい国なので外国人は日本製品を買い、日本製品がすばらしいので日本という国を好きになる」。
日本以外のアジアの国では、14位シンガポール、20位韓国の2か国が20位以内に入っている。
「国家ブランド指数」ランキング第6位 政治の影響で順位やや低下
【「国家ブランド指数」2014年= 独「GfK」社 】
順位 国 名 1 ドイツ 2 アメリカ 3 イギリス 4 フランス 5 カナダ 6 日本ノルウェー 7 イタリア 8 スイス 9 オーストラリア 10 スウェーデン 27 韓国
独市場調査会社「GfK」が、「国家ブランド指数」に関する調査をインターネットを通じて毎年行っている。2014年には50か国を調査対象にし、20か国に住む2万人以上から回答を得た。
調査分野は「文化」、「国民性」、「観光」、「輸出」、「統治」、「移住・投資」の6分野・23項目だった。
前年に2位だったドイツが、2014年に1位になった。公正で有能な政府、効率的な投資環境、高度な社会的平等などが高く評価された。メルケル首相のもとにEU諸国を先導するドイツのリーダーシップも、高い評価に貢献したと思われる。
総合で前年まで1位だったアメリカが、2位に下がった。「世界の平和と安全への役割」の項目が19位と低くなったことが、総合順位の低下に貢献したと思われる。
日本は6位になった。2010-11年が5位で2012年以降は6位になっている。
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「国別ブランド」ランキングと調査の名称は似ているが、「国家ブランド指数」ランキングでは、日本の順位が低いだけではなく、最近になって順位が下がる傾向がある。
調査分野や調査対象者が異なるために、このような違いが出る。 「国家ブランド指数」のほうが、政治や国民性への評価が反映されやすくなっている。日本の政治への信頼性の低下が、「国家ブランド指数」のより低い評価につながっていると思われる。
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韓国は「国別ブランド」ランキングでは20位だったが、「国家ブランド指数」ランキングでは順位が下がり、27位だった。「輸出」部門が13位になったのに対して、「国民性」への評価が低く、34位になったことが総合順位を下げたと思われる。
「国家ブランド」の評価を高くしたい韓国は、大統領直属の「国家ブランド委員会」を2009年に立ち上げた。けれども活動に問題があって、2013年にこの委員会を廃止した。
「国際競争力」ランキング第6位 政府債務が深刻な問題
【「国際競争力」2014年 =スイス「世界経済フォーラム」】
順位 国 名 指 数 1 スイス 5.704 2 シンガポール 5.645 3 アメリカ 5.544 4 フィンランド 5.501 5 ドイツ 5.488 6 日本 5.473 7 香港 5.456 8 オランダ 5.454 9 イギリス 5.415 10 スウェーデン 5.408 14 台湾 5.252 26 韓国 4.958 28 中国 4.891
ダボス会議を主催するスイスの研究機関「世界経済フォーラム」が、この国際世論調査を毎年実施している。
「国際競争力」は、「国の生産力のレベルを決定する諸制度、政策、諸要因のセット」と定義されている。国の競争力の概念を作り上げる、12の分野を包含する調査データから指数を算出する。12の分野とは「制度」、「インフラ」、「マクロ経済環境」、「医療・基礎教育」、「高等教育・職業訓練」、「商品市場の効率性」、「労働市場の効率性」、「金融サービス」、「技術的即応能力」、「市場規模」、「ビジネス洗練度」、「イノベーション」だ。政府の透明性も考慮の対象になっている。
2014年の調査対象国は144か国で、日本は総合6位になった。前年から順位を3つ上げた。
日本の順位が高かった分野は、1位「ビジネス洗練度」、4位「イノベーション」、4位「市場規模」、6位「インフラ」、6位「医療・基礎教育」などで、1分野を除いて全分野が22位以内に入った。
「マクロ経済環境」の順位が極端に低く、144か国の中で後進国並みの127位になった。「マクロ経済環境」が、日本の総合順位を引き下げる大きな要因になっている。
「マクロ経済環境」には政府債務が含まれるので、先進国で最大の債務を持つ日本は、このような評価を受けてしまう。 政府債務が増えると、税などの経済活動に有効な政策が打ち出されにくくなる。法人税が高いことなどを意識していると思われる。
税率を下げるだけではなく、競争力強化のためには、岩盤規制の緩和や労働市場の解放などが必要になる。
総合1位は6年連続でスイスだった。分野別では1位「労働市場の効率性」、2位「ビジネス洗練度」、2位「イノベーション」が高い評価を受けている。最も低い評価を受けたのは39位「市場規模」だが、人口が800万人なのでこれは仕方がない。
日本以外でアジアから10位以内に入った国は、2位シンガポールと7位香港だった。
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日本人の感覚では、スマホや家電などで日本の負けが続くので、韓国の国際競争力は高いと判断しがちだ。けれども11位以下のアジアの国々は、14位台湾、20位マレーシアとなり、26位にやっと韓国が出てくる。韓国への評価は意外に低い。中国は28位だ。
韓国や中国は、輸出競争力はあっても輸出品目に大きな偏りがある。両国は国内に困難な問題を抱えている。韓国は組織・機構や金融市場の発達が遅れている、と評価された。中国は先端技術の開発に問題があるばかりではなく、技術の公開が不十分と判断された。
「世界に良い影響を与えている国」ランキング第5位 中国、韓国から低い評価
【「世界に良い影響を与えている国」= 2014年 英「BBC放送」】
順位 2012年 2013年 2014年 1 日本 ドイツ ドイツ 2 ドイツ カナダ カナダ 3 カナダ イギリス イギリス 4 イギリス 日本 フランス 5 中国 フランス 日本 6 フランス EU EU 7 EU ブラジル ブラジル 8 アメリカ アメリカ アメリカ 9 ブラジル 中国 中国 10 インド 韓国 南アフリカ
英「BBC放送」が世界の新聞社などと協力して、毎年各国のイメージを調査している。2014年には面接または電話で質問をし、世界22か国の2万数千人から回答を得た。
回答者は、各国について「良い影響を与えている」と考えているか、「悪い影響を与えている」と考えているかを答えた。それらの評価に対する回答者の割合で、各国の順位を決定した。
2014年に「良い影響を与えている」と評価された国と地域は、10位までに、ドイツ60%、カナダ57%、イギリス56%、フランス50%、日本49%、EU47%、ブラジル45%、アメリカ42%、中国42%、南アフリカ39%が入った。
2014年に日本は5位に下がった。2012年1位、2013年4位と最近は毎年順位を下げている。 日本のランク・ダウンの主な原因として、中国、韓国から悪い評価(尖閣諸島・慰安婦問題)を受けていることをあげられる。
2014年に中国人の90%、韓国人の79%が、「日本は世界に悪い影響を与えている」と回答した。
日本を悪いと評価した国の第3位はドイツで、回答者の割合は46%なので、中国、韓国の割合は突出して高い。なおドイツが3位に入った主な理由は2つある。1.福島第一原発の事故後に、ドイツが原発全廃を決めたのに対して、日本は再稼動を画策している。2.韓国、中国との間での歴史問題の処理がまずい。
以上の理由で日本に対するドイツの世論が悪化していることが、他で指摘されている。日本は世界の誰もが納得する政策を取り入れ、誰もが納得する行動を取らなければ、友を敵に回してしまう。
日本への評価は「経済」、「工業製品」、「サービス」、「伝統と文化」などの分野で高い。
日本を良いと評価した人が多い国は、1位ナイジェリア72%、2位インドネシア70%、2位ブラジル70%、4位アメリカ66%、5位イギリス65%、6位ペルー59%、6位ガーナ59%、6位オーストラリア59%だ。 上位8か国の中にアフリカの国が2か国入っている。アフリカの人たちは、アフリカを植民地にしたことのない、非ヨーロッパの高度先進国に、好意を持っているようだ。
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2012年から2014年にかけて、10位以内の国々で順位を大きく下げたのは、日本と中国だけだ。
中国は2012年の5位から2013-14年には9位になった。 2014年に中国を悪いと評価した回答者の割合が最も高かった国は、日本ではない。自動車などで中国が重要な輸出相手先国になっている、ドイツだ。 2位の日本は、回答者の73%が中国を「世界に悪い影響を与えている」と回答したのに対して、1位のドイツは76%だった。3位フランス68%、4位アメリカ66%と続く。
サイバー攻撃を受けているアメリカはともかく、中国とは領土問題がないヨーロッパの2か国が、日本と同じくらいに、中国が「世界に悪い影響を与えている」と見ていることに注目したい。
韓国を厳しく見ている国にも同じような傾向がある。ここでも1位はドイツ59%なのだ。2位はスペイン50%、3位フランス46%。
韓国が「悪い影響を与えている」と評価した国の順位では、日本は意外にも9位だった。韓国人の79%が日本を悪く見ているのに対して、韓国を悪く見ている日本人は37%しかいない。「大国中国は世界に大きな悪影響を与えているが、中等度の韓国にはそれほどの影響力はない」、と日本人は考えているのかもしれない。このようなクールさは、世界と対峙するときにとても大事になる。
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以前は「日本を最も評価しないのは日本人」と言われた。今でもまだ日本の今と未来を悲観的に見ている人たちが多い。けれどもそれは次第に変わりつつある。日本が「良い影響を与えている」と答えた日本人は、2008年に36%だったが、2014年には50%になった。
日本人は特定の国だけを高く評価することがない。この比較的低い割合50%で、日本人が良いと評価する国の順位では1位になった。日本人が「世界に良い影響を与えている」と考える国の2位はイギリス47%で、3位はドイツ46%だった。
「世界に最も良い影響を与えている国は自国」と考えている人たちが、日本人を含めて世界には多い。
「自国が世界に良い影響を与えている」と思っている人たちの割合が高い国から、順に並べる。1位中国85%、2位カナダ81%、3位ロシア77%、4位イギリス71%、5位フランス70%、6位ドイツ68%、6位韓国68%、8位アメリカ66%、8位ブラジル66%、10位インド56%、11位日本50%。
このランキングでは日本は2008年に最下位だったが、2014年には下から3番目に浮上した。ここにも次第に自信をつけ始めた日本人の姿が見える。
「世界平和度指数」ランキング第8位 G7大国の中で断然1位
【「世界平和度指数」2014年 = 英「エコノミスト」紙】
順位 国 名 指数 1 アイスランド 1.189 2 デンマーク 1.193 3 オーストリア 1.200 4 ニュージーランド 1.236 5 スイス 1.258 6 フィンランド 1.297 7 カナダ 1.306 8 日本 1.316 9 ベルギー 1.354 10 ノルウェー 1.371 17 ドイツ 1.423 34 イタリア 1.675 47 イギリス 1.798 48 フランス 1.808 101 アメリカ 2.137 108 中国 2.207 152 ロシア 3.039
英「エコノミスト」紙、「インスティテュート・フォー・エコノミクス・アンド・ピース」、「ビジョン・オブ・ヒューマニティ」が、各国の平和度を毎年調査している。2014年には162か国を対象にして24分野に渡って調べた。テロ・暴力・犯罪・内戦や政治などの国内状況と、軍事費・兵器輸出や戦争などの対外状況が分析された。平和度を相対的に数値化し、平和維持への不安要素が大きいほど指数が大きくなる。
2014年の調査では、日本は順位を前年よりも2つ落とし、8位だった。 2011年、2012年に3位の評価を受けたが、以後毎年順位を下げている。
安全保障関連の法律が制定され、自衛隊の海外派遣が容易になるにつれ、日本の順位が更に下がることが予想される。 世界第5位の軍事力を保有するとされる日本。平和愛好国としての今までの評価が、良すぎたのかもしれない。
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政府の情報開示が進んでいたり、政官業などの腐敗が少ないほど順位が上がりやすい。面積が小さく人口の少ない、政治的に安定した国が上位に入りやすい。
1位から6位までは、アイスランド(人口32万人)、デンマーク(560万人)、オーストリア(850万人)、ニュージーランド(450万人)、スイス(800万人)、フィンランド(540万人)と、人口1000万人以下の小国が続く。7位がカナダ(3500万人)で8位が日本(1億2700万人)。日本以外の「大国」では、17位にやっとドイツ(8100万人)が入っている。
8位にまで順位を下げたとはいえ、中くらいの国に過ぎないカナダを除くと、日本はG7の中ではまだ断然トップだ。大国の中で次に高い評価を受けたのはドイツだが、順位は17位と低い。 以下大国は、イタリア34位、イギリス47位、フランス48位。覇権国アメリカの順位は101位でなので、108位の中国と余り変わらない。
この順位からも日本の特殊性が明確になる。世界へ大きな影響を与えている「大国」の中では、日本の平和貢献度が群を抜いている、と判断されている。世界平和への日本の貢献度が評価されていることは、平和への貢献を世界から期待されていることを、意味する。
アメリカは人種問題や日常的な銃撃戦など、国内に多くの治安上の不安要素を抱えている。それにイスラム過激派によるテロの不安が加わった。国外では、世界のあちらこちらで戦闘に巻き込まれているだけではない。世界最大の兵器輸出国でもある。
軍事力を使って世界に影響を与えようとする、アメリカに対する評価は厳しい。軍事力では世界に完全な平和をもたらすことができないことを、誰もが知っている。
強大な軍事力は強大な敵を作る恐れがある。かつてアメリカの強大な敵はソ連だった。現在は中国が強大な軍事国家として台頭しつつあり、モスレム過激派が世界の処々で覇権国家アメリカに挑戦している。
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大国の中では、日本の平和への貢献度が別格であることを認められている。中国の台頭があって安全保障に関する議論が激しくなったが、このような国際的評価を受けていることを、しっかりと頭に入れておきたい。
日本人は、日本人のやり方で世界の平和と安全にもっと貢献できる。ただ単に自国が戦争に巻き込まれないようするだけではなく、世界を平和にするための努力を積極的に行いたい。 平和な歴史を長期に渡って育んできた日本人は、戦いよりも協調のもとに生きる知恵を持っている。
「腐敗認識指数」ランキング第15位 政官業の癒着が問題
【「腐敗認識指数」2014年 = NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」、「アジア開発銀行」、「世界銀行」、「ベルテルスマン基金」、「フリーダムハウス」、「世界経済フォーラム」など】
順位 国 名 指数 順位 国 名 指数 1 デンマーク 9.20 12 ドイツ 7.90 2 ニュージーランド 9.10 14 イギリス 7.80 3 フィンランド 8.90 15 日本 7.60 4 スエーデン 8.70 15 ベルギー 7.60 5 スイス 8.60 17 香港 7.40 5 ノルウェー 8.60 17 アイルランド 7.40 7 シンガポール 8.40 17 バルバドス 7.40 8 オランダ 8.30 17 アメリカ 7.40 9 ルクセンブルク 8.20 26 フランス 6.90 10 カナダ 8.10 69 イタリア 4.30 11 オーストラリア 8.00 100 中国スイス 3.60 12 アイスランド 7.90 136 ロシア 2.70
汚職を監視するNGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」が、「アジア開発銀行」、「世界銀行」、「ベルテルスマン基金」、「フリーダム・ハウス」、「世界経済フォーラム」など10余りの機関と協力して、この世論調査を実施している。2014年には175か国を調査対象にした。世界中のビジネスマンと分析専門家などが、調査に応じたとされる。
13種類のアンケート調査の報告書が、分析のための対象になった。各国の「賄賂」、「汚職」、「人権侵害」などが、調査分野に入っている。公務員と政治家の腐敗・汚職レベルを指数化している。実証的なデータではなく腐敗を「認識」という観念で示す理由は、「表面的な腐敗だけではなく、暗部に隠された腐敗も含めて把握しようとしているから」、と説明されている。
2014年の日本の順位は15位だった。17位アメリカ、26位フランス、69位イタリアよりも上位とはいえ、10位カナダ、12位ドイツ、14位イギリスよりも順位は低い。
日本については、政官業の癒着が腐敗の根源として指摘されている。 日本よりも順位が低いアメリカの官庁の査察官が、企業を査察するときは、夜の接待は勿論、昼食時に社員食堂を使うことさえも拒否する。勿論、歳暮や中元の習慣はアメリカにはない。天下りにも抵抗がない日本の順位がアメリカよりも上なので、日本に対しては評価が甘過ぎると考えたほうがいい。
2004年に7.0だった日本の「腐敗認識指数」が、2011年には8.0になった。2014年に7.6と改善したが、 メディアを通じての国家権力に対する国民の注意深い監視が、常に必要だ。 私たちは独裁国ではなく民主主義国に住んでいる。政官業の癒着から生じる腐敗に対しては、いくら厳しくしてもし過ぎることはない。
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中国は2011年の75位から毎年順位を下げ、2014年には100位になった。
中国政府はこの結果に不満だ。外務省の報道官が、「中国の腐敗対策の取り組みが成果を上げていることは明らかで、国民から正当な評価を受けている」と述べた。西側のメディアが、習政権の反腐敗運動を、純粋なクリーニングではなく権力闘争の一環と見ていることには、気づいているはずだ。報道官の発言は、中国政府の表の見解を代弁したものに過ぎない。このあたりが中国の限界になる。
それにしても兆円単位の資産を懐に入れてしまう、中国共産党幹部の壮大な腐敗には、心底驚かされてしまう。日本人には、逆立ちしてもそこまでの壮大な汚職はできない。
日本人の印象 -
「ベスト・ツーリスト」ランキング第1位 秩序を重んじる日本人に高い評価
【「ベスト・ツーリスト」2009年 = 米「エクスペディア」社 】
順位 国 名 点数 順位 国 名 点数 1 日本人 71 8 アメリカ人 46 2 イギリス人 52 10 デンマーク人 44 3 カナダ人 51 10 ノルウェー人 44 4 ドイツ人 50 10 フィンランド人 44 5 スイス人 48 10 ベルギー人 44 6 オランダ人 47 19 イタリア人 41 6 オーストラリア人 47 27 ランス人 31 8 スウェーデン人 46 ― ― ―
世界最大の米オンライン旅行会社「エクスペディア」が、欧米、アジア・パシフィックの4万軒のホテルのマネージャーにEメールで質問を送って、ベスト・ツーリストの調査を行った。最も新しい2009年の調査では、4557軒のホテルから回答を得た。
ツーリストの評価は、9つの項目で「最良」から「最悪」という判定をしてもらい、点数で示した。
日本人が2位以下に大きな差をつけ、ベスト・ツーリストとして3年間連続で1位の評価を得た。 日本人は、90ポント満点のうち71ポイントを獲得した。2位のイギリス人は52ポイントだった。日本人以外では14位までヨーロッパ系の人たちが占め、アジア系では15位にタイ人が入った。アジアの中では日本人の突出ぶりが目立っている。
項目別では 「行儀が良い」、「礼儀正しい」、「部屋をきれいに使う」、「騒がしくない」、「不平が少ない」などで、日本人が1位になった。 「ベスト・ドレス」は4位、「チップなどの気前の良さ」は5位だった。「現地の言語を話す」は下から数えたほうが速く、ワースト3位だった。海外で言葉に苦労している日本人の姿が見える。「不平が少ない」のも、言葉が不自由なことと関係しているかもしれない。
イギリス人は全体的に高い評価を受けたが、「苦情が多い」ために総合点を下げた。英語国民なので、苦情があればいくらでも自由に申し出ることができる。
27位で総合最下位になったフランス人は、項目別では「おしゃれ」の3位が最高だった。それ以外では「現地の言葉を話そうとせず、無礼な上にけちで、苦情が多い」と散々な評価を受けた。
2009年の調査には中国人とインド人が入っていなかったが、2008年、2009年の調査では、中国人、インド人、フランス人だけで、ワースト3位以内を占めた。
「世界で一番親切な国」ランキング第1位 圧倒的な1位
【「世界で一番親切な国」2011年 = シンガポールNPO「シンガポール親切運動」割合:回答者%】
順位 国 名 割合 1 日本 69 2 タイ 36 3 シンガポール 32 4 オーストラリア 25 5 アメリカ 19
2011年に、シンガポール政府公認のNPO「シンガポール親切運動」が、シンガポールの国民・永住権取得者約1000人に、聞き取り調査をした。他人に最も親切な人たちが住むと思う国を、3か国選んでもらった。
69%という圧倒的な数の回答者が、「最も親切な国」という評価を与えたのは、日本だった。
2位は「ほほ笑みの国」を自任するタイ36%、3位シンガポール、4位オーストラリア、5位アメリカの順になった。同NPOは、「日本人の礼儀正しさが、好印象につながっている」と分析している。自国が3位になったのは意外で、「親切な国と評価されるようにするのが、今後の課題」としている。
報道に対する評価 -
「世界報道自由度」ランキング第61位 民主主義の根幹・情報開示に大きな問題
【「世界報道自由度」2015年 = 仏NGOジャーナリスト組織「国境なき記者団」】
順位 国 名 指数 順位 国 名 指数 1 フィンランド 7.52 12 ドイツ 11.47 2 ノルウェー 7.75 34 イギリス 20.00 3 デンマーク 8.24 38 フランス 21.150 4 オランダ 9.22 49 アメリカ 24.41 5 スウェーデン 9.47 60 韓国 26.55 5 ニュージーランド 10.06 61 日本 26.95 7 オーストリア 10.85 73 イタリア 27.94 8 カナダ 10.99 152 ロシア 44.97 9 ジャマイカ 11.18 176 中国 73.55 10 エストニア 11.19 ― ― ―
ここまでは各種国際世論調査での日本の順位が低いとはいっても、上位グループの中では相対的に低い、という程度のものだった。しかし 「世界報道自由度」ランキングでは、「日本は先進民主主義国としては絶対的に低い評価を受けている」、と結論づけざるを得ない。
2015年に、世界180か国中で61位になったのだ。
パリのNGOジャーナリスト組織「国境なき記者団」が、この調査を実施している。世界中のジャーナリスト、法律専門家、人権活動家などが、各国における報道の自由のレベルを評価する。これらの評価者へ送られる50の質問への回答から、指標が作成される。「法的支配」、「検閲」、「ジャーナリストへの暴力」などが調査分野に入っている。「メディアの独立性が高く、多様性や透明性が確保され、法規制や自主規制などが少ないほど報道の自由度が高い」、と判断される。
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日本は2010年にそれまでで最高の順位11位を獲得した。けれども、 2011年の大震災時に発生した福島第一原発事故での情報隠しや、2013年に成立した特定秘密保護法の影響によって、順位が急低下した。原発事故では、官民一体となった強力な原子力ムラの前で、メディアが無力なことが白日の下にさらされた。 外国人ジャーナリストなどを排除する、記者クラブの閉鎖性が問題になった。
日本のマスコミには、官が与える情報だけを大衆へ流す傾向がある。それだけではない。戦場や被災地などの危険な地域へ自社の記者を派遣しない。海外のメディアやフリー・ジャーナリストを情報源とする自主性のなさが、大きな問題として指摘されている。CNNの記者のからだを張った報道から、少しは学んではどうだろうか?
特定秘密保護法が成立したことにより、無気力なマスコミの記者がさらに無気力になる、と海外の専門家が判断している。原発再稼動に関するマスコミの報道が体制寄りなことや、「政権批判をするメディアはつぶしてしまう」という自民党議員の発言に対して、強力な反論を展開しないマスコミを見ると、海外の専門家の心配が現実になる可能性が大きい、と判断せざるを得ない。
2015年は70位の香港よりも順位は上だが、60位の韓国よりも下だ。このままでは順位がどんどん下がり、香港よりも下になる恐れがある。
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こんな日本のメディアの姿勢をずっと前から心配していた、アメリカ人の親日家がいる。高度成長期の1970年代に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を書いた、エズラ・ヴォーゲルだ。当時ハーバード大学の教授で、この本を書くために日本に2年間滞在した。日本の社会システムを絶賛しながらも、メディアに対しては次のような厳しい批判を展開した。
「日本の新聞は国際・国内ニュースを詳しく報道するが、大新聞にはほとんど見解の相違がない。官僚の汚職が起こっても、官僚機構のイメージを損なうという理由で、デスクが記事を握りつぶすことがある。集団の一員は代表的な意見に合わせて自分の意見とする。指導者への批判を避ける。膠着を打ち破ろうとする人が出てこない。これが日本の民主主義への脅威になる」
「世界報道自由度」ランキングで今批判されていることが、40年前にヴォーゲルによって指摘されていた。日本のジャーナリズムには構造的な欠陥があることを、ジャーナリスト自身が認め、抜本的な改革に乗り出さなければ、日本の未来が暗くなる。
国家権力は、警察や軍隊などの実力組織を意のままに動かすことができる。裁判、徴税、社会福祉などで、一人ひとりの国民の生活を左右することができる。民主主義国では、ジャーナリズムがこの強大な国家権力を監視・批判することを、求められている。ジャーナリストの最も重要な使命が、権力を監視することと権力への批判なのだ。
これをやらなければ、日本のジャーナリズムは、独裁国の中国や北朝鮮のジャーナリズムと同じように、骨抜きになる。「腐敗認識指数」ランキングでも政官業の癒着が批判されている。報道の自由度の低さと相まって、日本の民主主義は危機的状況にある、と判断せざるを得ない。
「新聞・雑誌やテレビに対する信頼度」ランキング第1位 疑いを持つことのない国民性
【「新聞・雑誌への信頼度」2010-14年 = 国際NPO調査機関「ワールド・バリューズ・サーベイ」割合:「非常に信頼・やや信頼」回答者% 】
順位 国 名 割合 1 日本 45.5 2 フィリピン 34.5 3 中国 34.3 4 韓国 22.2 5 シンガポール 17.8 6 チリ 7.7 7 ウクライナ 6.2 8 ブラジル -7.0 9 タイ -10.0 10 ドイツ -10.3 22 ニュージーランド -42.6 23 ルーマニア -43.0 24 スロベニア - 52.6 25 アメリカ -52.8 26 オーストラリア -65.4
社会科学者が中心になっている、国際非営利調査機関「ワールド・バリューズ・サーベイ」がある。活動の一環として、80か国以上で「新聞・雑誌やテレビに対する信頼度」に関する世論調査を行っている。各国1000-2000人の個人が回答する。
調査は5年おきに実施され、2010-2014年の「新聞・雑誌への信頼度 」ランキングでは、 日本が圧倒的な1位になった。 日本人回答者の45.5%が、新聞・雑誌の報道を「非常に信頼する?やや信頼する」と答えたのだ。特に高齢者に、新聞などの従来型メディアを信頼する傾向がある。2位のフィリピンは34.5%だった。
「テレビへの信頼度 」ランキングでは日本は3位になった。「世界報道自由度」ランキングで示されたように、 日本のメディアに対する海外の目は厳しいが、日本人自身は外国人とは正反対に、自国のメディアをとても高く評価し信頼している。
視点を少し変えてこの結果を考察すると、「日本人は国家権力に操作されやすい」と結論できる。メディアを含めて社会的に権力を握っている勢力にとって、疑いを持つことのない一般の日本人は、とても操作しやすい。
「世界報道自由度」ランキングで見たように、日本のメディアには権力者の隠蔽体質に異を唱えない傾向がある。それに加えて報道の受け手である国民が、無批判に報道を信じてしまっている現状が、世論調査で示された。これは大きな警鐘として捉えなければならない。
「新聞・雑誌への信頼度 」が高い国々は、以下フィリピン、中国、韓国、シンガポールとアジアの国々が続く。この上位にある国々の政治状況を考慮すると、警鐘は極めて現実的であることが分かる。
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なおこの調査での最下位の国、即ち自国の新聞・雑誌の報道を信じない人たちが最も多い国は、オーストラリアだった。65.4%のオーストラリア人が「余り信頼しない?全く信頼しない」と答えた。信頼しない人たちが住む国の順位は、以下アメリカ、スペイン、ポーランド、スロベニアと続く。 ヨーロッパ系の人たちには、報道をまず疑ってかかるという姿勢がある。このような国々では、国家権力にとって世論操作がやりにくいことになる。
総務省も、日本人だけを対象にした同様な調査を行っている。2014年の調査では、日本人の70.6%が新聞を「全部信頼できる」または「大部分信頼できる」と答えた。この調査で疑いを持つことのない日本人の姿が、より鮮明に浮かび上がった。
観光地としての魅力
「旅行者による世界の都市調査」総合的な満足度東京第1位 旅行者が満足する街東京
【「旅行者による世界の都市調査」2014年 = 米旅行サイト「トリップ・アドバイザー」】
順位 国 名 指数 1 東京 9.11 2 ニューヨーク 9.02 3 バルセロナ 8.94 4 イスタンブール 8.94 5 プラハ 8.90 5 ウィーン 8.89 7 ベルリン 8.88 8 ローマ 8.86 9 パリ 8.84 10 ドゥブロヴニク 8.81
世界最大の旅行クチコミサイト「トリップ・アドバイザー」が、旅行者が満足する街についての調査を行っている。2014年には、世界の主要37都市を訪問した5万4000人の旅行者が質問された。「観光・ショッピングの満足度」、「街の清潔さ」、「公共交通機関」、「地元民の親切さ」など16項目を、0-10点のスコアで評価してもらった。
日本人の常識的な判断からは、パリ、ニューヨーク、ロンドンなどがトップ争いをしそうだ。けれども前回の2012年に続き、東京が総合で第1位になったのだ。
「トリップ・アドバイザー」が調査対象にした世界の37都市は、各国の主要な都市で主に首都が選ばれた。日本は東京が対象になった。京都は調査対象にはならなかった。京都も入っていれば順位が高かったと思われる。
東京が1位になった項目は、「現地の人の親切さ」、「街中の清潔さ」、「公共交通機関」、「タクシーの総合的なサービス」、「総合的な満足度」の5項目だった。 2位になった項目は「一人旅のしやすさ」、「タクシー運転手の親切さ」、3位は「レストランの評価」、「ナイトライフの満足度」、5位は「ショッピングの満足度」、8位は「ホテルの評価」、「街中の移動のしやすさ」、「家族旅行のしやすさ」で、16項目中13項目がトップ10に入った。11位以下の項目は、11位「文化に対する評価」、13位「観光やアクティビティに対する評価」、そして20位が「コストパフォーマンスの良さ」だった。
急激な円安が進んだのは2014年秋以降だった。円高の時期に調査されたので、「コストパフォーマンスの良さ」が最下位になったと思われる。
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2012年に「トリップ・アドバイザー」が作成した「東京アクティビティ人気ランキング」によると、上位10位のうちの4件が、家庭料理教室だった。日本人には当り前だが、外国人には新鮮なアクティビティが魅力的なのだ。また2011年にオープンした、日本人にはなじみの薄い「ロボット・レストラン」の噂が、ネットのクチコミなどで広がり、外国人旅行者の間で大人気だ。このレストランの客の8-9割が外国人だという。
他の調査によると、昼間は真面目なサラリーマンが、数時間後に酔っ払って駅前を歩く2面性に、外国人は驚く。これなどは日本人には全く予想外の反応だ。
「世界最良の都市」ランキング京都第1位 世界で最も魅力的な街京都
【「世界最良の都市」2015年 = 米「トラベル・アンド・レジャー」誌】
順位 国 名 点数 1 京都(日) 91.22 2 チャールストン(米) 89.84 3 シェムリアップ(カン) 89.57 4 フローレンス(伊) 89.43 5 ローマ(伊) 88.99 5 バンコク(タイ) 88.91 7 クラコフポー(ポー) 88.69 8 バルセロナ(スぺ) 88.59 9 ケープタウン(南ア) 88.27 10 エルサレム 88.18
米旅行雑誌最大手「トラベル・アンド・レジャー」が、読者投票で「ワールド・ベスト・アウォード」を毎年実施している。同誌は月100万部を発行し、読者層には高所得者が多いと言われる。
「風景」、「文化・芸術」、「レストラン・食べ物」など6分野で、各都市を採点する。 2015年に京都は91点の高得点を得、2014年に引き続いて1位になった。 京都は、2012年9位、2013年5位と確実に順位を上げていた。2014年に、日本の都市としては京都が初めて1位になった。
京都は、 歴史的建造物と自然が一体になっていることが、高く評価された。旅行者は京都でとても落ち着くことができる。また精進料理や舞妓などの独自の文化が、魅力になっている。
点数を見ると、京都が群を抜いて高い評価を受けていることが分かる。91点台の点数を取り、2位に1点以上の大きな差(1.38点)をつけた。2-4位は89点台、5-10位は88点台だった。2位のチャールストンと10位のエルサレムとの点差は1.66点で、この中に9都市が入っている。このため2位以下の順位は毎年変わりやすい。
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「旅行者による世界の都市調査」とは異なり、「世界最良の都市」ランキングでは東京は10位以内にランクインしなかった。
「世界の都市調査」では、首都などの大都市が調査対象になったが、「世界最良の都市」ランキングでは、回答者は好みの街を自由に選ぶことができた。そのためにチャールストン、シェムリアップ、フローレンスなどの特徴のある街が、上位に入った。3位に入ったカンボジアのシェムリアップは、アンコール遺跡群の観光拠点になっている街だ。回答者には、大都市以外のところを旅する、歴史的な建造物などに興味を持っている、旅慣れた人たちが多かったと思われる。
東京は、アジア地区ではトップ10に入った。1位京都、2位シェムリアップ、3位バンコク、4位東京、5位香港、6位シンガポール、7位ハノイ、8位上海、9位ホーチミン、10位ニューデリーとなった。
「旅行・観光競争力レポート」第9位 安心して生活できる日本の順位上昇中
【「旅行・観光競争力レポート」2015年 = 国際機関「世界経済フォーラム」】
順位 国 名 指数 1 スペイン 5.31 2 フランス 5.24 3 ドイツ 5.22 4 アメリカ 5.12 5 イギリス 5.12 6 スイス 4.99 7 オーストラリア 4.98 8 イタリア 4.98 9 日本 4.94 10 カナダ 4.92 17 中国 4.54 29 韓国 4.37
ダボス会議の「世界経済フォーラム」が、2年毎に調査を実施している。各国の旅行・観光業の競争力を測るために、14分野を約100の項目で評価し、指数化している。各国で投資判断を行う上級管理層・経営幹部を対象にして実施したアンケート調査の結果が、評価のために併用されている。
日本は、 141か国のうちで2015年に過去最高の総合9位になった。2009年の25位を底に、2011年22位、2013年14位と確実に順位を上げてきた。 海外へ開かれた国にするための努力が、少しずつ実を結びつつあるようだ。
調査の名称とはやや異なり、この世論調査では、各国の経済・ビジネス環境も主要な調査分野に入っている。そのためG7の全7か国が10位以内に入ったと思われる。
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日本が高い評価を受けた項目は以下のようになる。 1位が「テロの少なさ」、「健康・衛生・医療」、「顧客対応度」、「鉄道インフラ」。 2位が「殺人率の低さ」、「旅行・観光業関連企業の多様性」、「観光企業戦略の妥当性」、「企業研修の充実」、「口承・無形遺産数」で、3位が「初等教育の就学度」、「バス・タクシー等交通ネットワーク」、「企業・消費者間におけるインターネット取引」、「ブロードバンド加入率」だった。
「日本は安全で衛生的な国、旅行がしやすく、独自の文化遺産が豊富」と判断されている。 国民の教育程度が高く、顧客への対応が洗練されていて、インターネットの利用も進んでいることが、理解された。ネット環境の高度化により、ビジネスがやりやすくなった、と評価されている。
逆に 順位が低い項目は、100位「施工許認可に要する日数」、106位「人口に対する空港密度」、111位「査証の免除」、112位「外国人雇用の容易度」、115位「税率の総合的な低さ」、122位「購買力平価の低さ」、126位「燃料価格の低さ」、129位「外国人企業幹部への観光旅行の勧め」、130位「雇用・解雇の柔軟度」、131位「絶滅危惧種の割合の低さ」などだ。
調査された国の数が141か国なので、日本が100位以下にランクされたこれらの項目は、先進国日本への厳しい警告と考えられる。
河岸や海岸をコンクリートで固めることによる自然破壊や、社会を硬直化させている岩盤規制が批判されている。 この調査は円安になってから行われたが、外国人は日本の物価は高いと判断している。
日本の消費税は他の先進国に比べて低い、としばしば言われる。けれども税金は消費税だけではない。法人税を含めて、日本の総合的な課税は厳しい。車を持てば複数の税金がかかり、車検時にはまた税金。オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシア、中国、香港、イタリア、スウェーデン、スイス、カナダなど相続税のない国は多いが、日本の相続税は世界最高だ。
外国人の受け入れ体制が不十分なことも、日本の未来に暗い影を投げかけている。 外国人に指摘されるまでもなく、日本人はこの国の繁栄のための長期戦略を立てなければならない。
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私には個人的に驚く調査項目があった。「外国人企業幹部への観光旅行の勧め」がそれだ。日本はこの項目では129位と低い評価を受けた。1位はニュージーランドだ。
ビジネスで日本を訪れた外国人は、仕事を終ったあとで日本国内を観光旅行したい。それは日本人ビジネスマンが海外へ出張したときのことを考えれば、容易に理解できる。
異国でリラックスして休暇を楽しむ。そんな時間を持てるように、企業戦士の皆さんは、外国人のビジネス・パートナーにぜひ気配りをしてほしい。そんな気配りが、皆さんのビジネスの成功に間違いなく貢献する。何しろダボス会議の「世界経済フォーラム」が、このことを重視しているのだ。
移住先としての魅力
外国人が見た日本人および日本の国の印象は、総体的にとても良いと言える。特にG7のうちの大国6か国の中では、日本への総体的な評価は群を抜いて高い。
人口減少が始まった日本は、国の繁栄のみならず高齢者への福祉の観点からも、今後は移民受け入れを真剣に考えなければならない。ところが他の国の高齢化も始まっている。今後高齢化が進む国が劇的に増えていく。中国でさえも、人口減少と高齢化が現実の問題として、意識され始めた。 若くて有能な移民の取り合いが、ヨーロッパなどで目立ち始めた。外国人の日本への印象はとても良いが、その印象に突き動かされて日本へ移住したいと思う外国人が、大勢いるのだろうか?若くて有能な移民の取り合いで、日本は他国に勝てるのだろうか?
「住みたい国」ランキング第13位 外国人の受け入れ体制が不十分
【「住みたい国」2013年 = 米「ボストン・コンサルティング」社 割合:回答者% 】
順位 国 名 割合 1 オーストラリア 34 2 カナダ 27 3 アメリカ 24 4 スイス 21 5 ニュージーランド 14 5 スウェーデン 13 7 ドイツ 13 8 イギリス 11 9 デンマーク 9 10 ノルウェー 8 11 フランス 8 12 イタリア 7 13 日本 7 14 シンガポール 6 15 オランダ 6
米「ボストン・コンサルティング」社が、2013年に「住みたい国」の順位を決める世論調査をした。調査対象の国に住む人たちを除いて、各国2500人が回答を求められた。即ち結果は当該国にとっては外国人による評価になる。住みたい国を1-3位まであげてもらい、1-3位にあげた回答者の数を各国について合計し、世界に対する各国の割合を計算した。一人3か国あげたので合計は300%になる。
34%の回答者が住みたいと答えたオーストラリアが、1位になった。以下カナダ、アメリカ、スイス、ニュージーランド、スウエーデン、ドイツ、イギリスと続く。英語圏とヨーロッパの国々が上位を独占した。
アジアでは14位のシンガポールを抜いて、日本が13位になった。調査対象国は20か国なので、アジアでトップとはいえ日本の順位は真ん中よりも下になる。
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自国も調査対象にした場合は、他の先進国と同様に、日本人も「住みたい国」のトップに自国をあげる。81%の日本人が住みたい国として日本をあげた。2位になったのはオーストラリアだが、住みたいと答えた日本人は29%で、自国に比べればはるかに少ない。
住みたいと思う理由を16項目に渡って質問した。日本人は、日本を住みたい国と思う理由として、「自然・気候」をあげた人たちが54%、「法律・安全規制の整備」47%、「医療を受けやすい」45%、「医療の質」22%などとなった。
外国人は、日本に住みたいと思う理由として、「教育の質」52%、「経済的な豊かさ」32%、「長寿」30%、「法律・安全規制の整備」27%などをあげた。外国人の判断で評価が低くなった項目は、「異なる文化・宗教を受け入れる」11%、「コミュニティ・連帯意識」11%、「気候」10%、「医療を受けやすい」8%、「政治的自由」3%、「男女平等」2%だった。
外国人は「医療・教育のレベルが高く、安全で豊かな日本」を高く評価している。しかし日本では「女性や社会的弱者(マイノリティ)の立場が弱く、社会的な連帯意識が乏しい」、と判断している。 「旅行・観光競争力レポート」で指摘されたことが、「住みたい国」ランキングでも問題になっていることの意味は重い。
「海外移住者調査」第18位 住みにくさを実感している外国人居住者
【「海外移住者調査」2014年 = 英「HSBCエクスパト・サーベイ」】
順位 国 名 指数 1 スイス 0.55 2 シンガポール 0.53 3 中国 0.53 4 ドイツ 0.53 5 バーレーン 0.51 5 ニュージーランド 0.50 7 タイ 0.49 8 台湾 0.49 9 インド 0.49 10 香港 0.48 11 カナダ 0.48 17 ロシア 0.45 18 日本 0.45 23 フランス 0.41 30 アメリカ 0.38 31 イタリア 0.37 33 イギリス 0.35
「HSBCエクスパト・サーベイ」が海外移住者を対象に実施している、世界最大の移住者調査だ。2014年には34か国の約9300人が質問を受ける対象になった。生活の質、経済、子供の育てやすさなどが調査された。
移住した理由のトップ5は、「就業のため」38%、「生活改善のため」31%、「結婚のため」31%、「新しい挑戦のため」31%、「収入アップのため」20%だった。調査対象者の職業は、「銀行・保険・金融」17%、「教育」11%、「通信・IT」9%、「建設・エンジニア」9%などだった。年齢別では、「18-34才」28%、「35-54才」46%、「55才-」25%。
このような移住者の社会的環境と移住の理由から、経験豊かな専門職の人たちが、より良い仕事を求めて国境を越える姿が見えてくる。そして移住者の65%が、移住する前よりも所得が増えたと答えた。
住みやすい国としてスイスが1位になった。就業機会があって給与水準が高いことや、仕事と生活のバランスを保てることが評価された。スイス移住者の47%が、「住んでいる地域の経済状況に満足している」と答えた。
アジアではシンガポールが2位になった。スイスに似た環境がシンガポールにはある。中国が3位だった。所得が大幅に増えたことを満足の理由にあげた移民が多い。さらに日本よりも上位にあるアジアの国々として、タイ、台湾、インド、香港、ベトナムがある。
日本は34か国のうちで18位だった。真ん中程度の順位というだけではなく、アジアの7か国が日本よりも上位にあることに、ショックを受ける人がいるかもしれない。この調査結果から、「移民争奪戦において、日本は有利な立場には立っていない」、と結論しなければならない。
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今までに述べた世論調査も考慮すると、 日本は外側から見たイメージは良く、観光旅行などの短期滞在は快適にできるが、「住みたい国」ランキングで13位になったように、「日本永住は難しそうだ」と考えている外国人の多いことが分かる。
「海外移住者調査」での順位はさらに下がって、18位になった。日本に住んでいる外国人は、「思っていた以上に日本に住むことは難しい」、と判断しているようだ。
移民に来てもらい、社会に溶け込んで永住してもらうために必要な政策を、導入しなければならない。同時に、隣近所に外国人を受け入れるための日本人の心構えが、必要になる。
総合1位のスイスが、分野別ランキングでは2位「経済」、5位「経験」、10位「子育て」だった。 総合18位の日本は、分野別では4位「子育て」、16位「経験」、25位「経済」になり、子育てのしやすさで健闘した。子育て世代の移住者が多いので、子供の安全と教育を大事する人たちには、日本はとても魅力的な国だ。移民受け入れの体制をしっかりと作り上げれば、日本が必要とする移民が来てくれることになる。
「経済」が34か国中25位と低くランクされている。外国人に対する就業支援や給与水準の改善が望まれる。
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ここでアメリカとイギリスに注意を向けたい。アメリカが「住みたい国」ランキングで3位、イギリスが8位になったのはうなずける。ところが「海外移住者調査」では、両国とも日本よりも順位がずっと低く、各々30位、33位なのだ。調査34か国のうちで最下位はエジプトだが、両国ともエジプトの順位に近い。
「夢の国アメリカは、住んでみると予想していたよりもはるかに住みにくい」、と移住者が感じていることになる。期待がとても大きかったので、期待とは異なる現実を見て失望が大きくなってしまった、という心理的な側面もあると思われる。
ところが移住者の「現居住国に住み続けたい割合」では、イギリスが72%で4位、アメリカは71%で5位になった。日本は10位以内に入っていず、アジアではタイが10位になっている。
この調査結果は、「大きな夢を持って移住したアメリカとイギリスは、決して理想の国ではなかったが、他の多くの国よりも住みやすいのでこのまま住み続けたい」、と思っている移住者が多いことを示している。
まとめ:日本の総合評価
【日本の総合評価】
世 論 調 査 名 順 位(年) 最近の
トレンド日本のイメージ ↓↓ ↓↓ ↓↓ 国家イメージ 1(2010) → 国別ブランド 1(2014-15) 上向き 国家ブランド指数 6(2014) → 国際競争力 6(2014) 上向き 世界に良い影響を与えている国 5(2014) 下向き 世界平和度指数 8(2014) 下向き 腐敗認識指数 15(2014) 上向き 日本人の印象 ↓↓ ↓↓ ↓↓ ベスト・ツーリスト 1(2009) → 世界で一番親切な国 1(2011) - 報道に対する評価 ↓↓ ↓↓ ↓↓ 世界報道自由度 61(2015) 下向き 雑誌やテレビに対する信頼度(日本人) 1(2010-14) - 観光地としての魅力 ↓↓ ↓↓ ↓↓ 旅行者による世界の都市調査 東京1(2014) → 世界最良の都市 京都1(2014) 上向き 旅行・観光競争力レポート 9(2015) 上向き 移住先としての魅力 ↓↓ ↓↓ ↓↓ 住みたい国 13(2013) - 海外移住者調査 18(2014) -
伝統的な文化遺産を大事にしながら、高度な技術を発展させた日本人に対する外国人の評価は高い。海外へ出ても礼儀を忘れない日本人に、外国人は強い印象を受ける。穏やかな日本人が住む平和な国は世界のモデルになる。
一人ひとりの人間としては、日本人はすばらしい評価を受けている。けれども、政治を含む社会システムには大きな問題があることを、調査結果が示している。 政官業が癒着しているだけではなく、権威に弱いメディアが、日本の闇に光を当てるようなことをちゅうちょしているのだ。「世界報道自由度」ランキングで、先進国の中では極めて低い順位になる61位という評価を受けた。この厳しい警告に、日本人は耳を傾けなければならない。
日本の政治への評価の低さが、「国家ブランド指数」ランキングの順位をやや下げることにつながった。また巨額な政府債務が、「国際競争力」ランキングに負の影響を与えている。「腐敗認識指数」ランキングでは、政官業の癒着が日本の順位低下の原因になっている。日本の負の部分は、報道を批判することなく受け入れる傾向が日本人にあることによっても、生み出されている。権力者が世論操作をしやすい環境ができ上がっている。
社会システムの問題は、短期滞在の外国人観光客にはほとんど無関係だ。外国人観光客は、安全に旅行ができる伝統文化が豊かな日本を楽しんでいる。特に京都は世界最良の都市として、圧倒的な1位の位置を保っている。
ただし観光客の動きは京都や東京にかたより過ぎている。もっと多くの都市や自然資源へ目を向けてもらえるようになれば、さらに多くの観光客を海外から呼ぶことができる。
「一時滞在にはとても良い国だが、移住して住むことは難しい」、と外国人は判断している。 言葉の問題だけではなく、就業などの社会システムに問題があって、日本社会へ入り込みにくいのだ。
世界の若年人口はこれから減少し始める。短期滞在者が好印象を持っているからといって、日本が必要とする有能な若年労働者が、日本への移住を決断してくれるわけではないことを、日本人としては肝に銘じておきたい。
日本を好きな習近平 裏側の顔
最後にこんなことを書いておこう。
安倍首相と初めて会ったときの仏頂面と日本に対する厳しい言動を、四六時中マスコミで見聞きしている日本人は、習主席が日本嫌いのような印象を持ってしまう。けれども 習は他の多くの外国人と同じように、本当は日本を好きなのだ。
習が、副主席になって選んだ最初の外遊先が日本だった。 2009年12月のことだ。
このとき習は天皇に会うことを熱望した。ところが主席ではなく副主席と格が低いことと、天皇に会いたいという申し込みを、来日前1か月を切ってから行ったので、宮内庁が断った。来日の1か月以上前に申し込まなければならない、という規則があるのだ。 習は、当時の民主党政権の後ろ盾小沢一郎に熱心に頼み込んだ。小沢が裏で動いたおかげで、習は天皇に会うことができた。習は大喜びで帰国した。
人民日報のオンライン版に「人民網」日本語版がある。習の日本訪問の記事が、今でも削除されずにそこに残されている(2009年12月16日)。要旨は以下のようだ。
「習副主席は、天皇に胡主席からの心からの挨拶と祝意を伝えた。胡は前年に日本を訪問し、中日関係を全面的に推進した。天皇は一貫して中日関係を気遣ってきた。天皇の初めての中国訪問では、中国人に素晴らしい印象を残した。四川大地震の後の天皇からの慰問電、日本政府・各界からの貴重な支援は、中国人に対する天皇と日本人の友好を形にするものだった」
<和戸川 純>