これぞ日本センス。…という感覚が否めません。日本国内で編纂された“安楽椅子探偵もの”ばかりを集めたミステリ・アンソロジーです。しかも、編者は数々の名アンソロジーを編んでこられた各務三郎氏。そのため見事にツボを押さえた選出です。 一見、ベタベタな探偵の顔ぶれではありますが、初心者もこれを読めば安楽椅子探偵とは何か、が分かること受けあいです。
そもそも、安楽椅子探偵の定義すら明確に定まっているわけではない(探偵が事件現場へ赴くことなく事件を解決する、ということぐらい)のに、そのへんを曖昧にしたままの見切り発車とも思えますが、“趣向”好きのミステリファンにとってはかなり成功した部類かもしれません。ミステリほど数多くのアンソロジーを生んだジャンルはないと思いますが、そのミステリにおいても際立った1冊だと思います。
タイトル | 作者 | 原題 | 備考(探偵) |
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ザレスキー公爵の復活 | M・P・シール | The Return of Prince Zaleski | プリンス・ザレスキー |
フェンチャーチ街の謎 | バロネス・オルツィ | The Fenchurch Street Mystery | 隅の老人 |
フィリモア・テラスの殺人 | 〃 | The Robbery in Phillimore Terrace | 〃 |
折れた剣 | G・K・チェスタトン | The Sign of the Broken Sword | ブラウン神父 |
舗道の血痕 | アガサ・クリスティー | The Bloodstained Pavement | ミス・マープル |
とんでもない殺人 | レックス・スタウト | Murder Is No Joke | ネロ・ウルフ |
九マイルは遠すぎる | ハリー・ケメルマン | The Nine Mile Walk | ニッキイ・ウェルト |
ママ、涙を見せる | ジェイムズ・ヤッフェ | Mom Sheds a Tear | ブロンクスのママ |