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研究室

Yの悲劇(1)

海外の名著が日本でドラマ化されるのはよくあること。なかでもコーネル・ウールリッチ、カトリーヌ・アルレーなどサスペンスの大御所は御馴染みといったところ。しかし、かつて、あの黄金期を代表する作家の一人の作品が国内でドラマ化されたことをご記憶の方は少ないかもしれません。そう、あの『Yの悲劇』が。しかも、探偵役に石坂浩二を配し、設定等すべて日本に置き換えて。一体どんな仕上がりだったのか? というわけで、現時点で分かる限りのことを書き出してみました。

※基本的にネタバレには抵触していませんが、ある程度ストーリーに迫る内容です。


タイトル Yの悲劇
監督 杉田成道 脚本 清水邦夫
プロデューサー 銭谷功/道祖土健 音楽 佐藤勝
制作年 1978年 放送局 CX
キャスト 石坂浩二・八千草薫・夏目雅子・江原真二郎・左幸子・金子信雄・村松英子・武原英子・中条静夫・土部歩・夏桂子・伊豆肇・遠藤義徳

なんと、あの『北の国から』を手がけた杉田成道氏の作品とのこと。俳優陣も豪華です。音楽を担当した佐藤勝氏は、サントラ界では名を知られた方だとか。脚本を担当した清水邦夫氏は戯曲作家であり、テレビのシナリオも手掛けていた方だそうで、『ゼロの焦点』のドラマ化などにも関わったんだとか。

さらに、ikuさんのご協力もあって、ストーリーについて次のことが分かりました。


*ストーリー*
舞台はそっくり日本に置き換えられています。役者も当然日本人。ハッター家は矢ヶ崎家に、舞台は蒲郡ホテル(現:蒲郡プリンスホテル)に置き換えられています。ストーリーもラストが少し異なっているようです。 探偵役(石坂浩二)が事件に駆り出されることになったきっかけは、事件を担当した警部が探偵役の叔父だったことにあるようです。さらには、警部の娘(夏目雅子)も調査に加わることになります。夏目雅子は、どうも石坂浩二演じる探偵の助手的な存在になるようです。 ikuさんによると、ドラマは矢ヶ崎弥太郎(原作:ヨーク・ハッター)の死体が海で発見され、船で引き上げられるところから始まります。その後、耳の聞こえない探偵役が調査に駆り出され、ハンデのために犯人に突き飛ばされるなどトラブルに遭いながらも、事件の謎を追い続ける。 そして、第二の事件が起こります。


おおまかなストーリーは原作通りのようです。最後はあの犯人がああなるわけです。ほかにもいくつかこのドラマに関して分かった面白い点を挙げてみます。

  • 探偵役がいつもセーターを着ている。ラストに夏目雅子が「いつもセーターを着ているのは、寒いからでしょ、心が?」と言うらしいですが、視聴者から「セーターを着ているのは不自然」という投書があったそうで、あとで番組制作者が新聞に「このラストがあったために番組で取り上げられなかった」とお詫び文を載せたそうです。
  • ドラマ中、石坂浩二が鎧を着る場面があるそうなんですが、この鎧、1969年にNHKのドラマ『天と地と』の中で、石坂浩二が着たのと同じ鎧だったんだそうです。
  • ドラマの中の第二の事件の凶器は、原作とは違います。
  • 凶器が原作と異なるのは、やはり日本版ゆえ? その凶器を見た探偵が「これ、裏から見るとYに似てますね」と言うそうです。

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