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続折々の記 ⑤
【心に浮かぶよしなしごと】
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【 06 】06/14
       米主導G7、中ロと競る   
       土地規制法案採決、最後までドタバタ   
       土地利用を国が規制する新法「土地規制法」   
       【下平記】   

2021年6月13 (時時刻刻)
米主導G7、中ロと競る
   ワクチン10億回提供「交換条件なし」

 英国で開催中の主要7カ国首脳会議(G7サミット)は世界へのワクチン提供を掲げ、結束をアピールする。インフラ投資を含め、バイデン米大統領が主導する形で、途上国への影響力拡大を図る中ロを意識した戦略だ。ただ、中ロへの姿勢にはG7内でも温度差がある。▼1面参照

 「(コロナ禍から)社会全体で立ち上がり、より良い復興を果たす必要がある」。議長国である英国のジョンソン首相は初日の会合で、こう訴えた。

 新型コロナの感染による死者数は世界で約378万人にのぼり、社会や経済に大打撃を与えている。ジョンソン氏はG7のリーダーシップにより、危機を克服する意気込みを示した。

 会合では、G7と招待国の韓国、豪州、インド、南アフリカが来年にかけて、新たに10億回分以上のワクチンを、途上国を中心に世界に提供することで合意。アフリカなどに生産拠点を拡大する構想も描く。

 さらに、「ワクチン開発期間を100日以内に縮める」「ウイルスや感染症の国際的な監視網づくり」「世界保健機関(WHO)改革と機能強化」などを盛り込み、開催地の名前をつけた「カービスベイ宣言」も採択する見通しだ。

 G7が一致して「公約」をまとめた背景には、欧米がワクチンの「買い占め」で批判される中、独自の「ワクチン外交」で存在感を強めてきた中国やロシアの存在がある。

 中国は80以上の途上国にワクチンを提供。輸出も含めて3億5千万回分にのぼり、「世界で最も多くのワクチンを対外的に提供した国」(汪文斌外務省副報道局長)と主張。ロシアも自国ワクチンのスプートニクVの承認国が世界で60カ国を超えると国際貢献を訴える。

 一方で、中国にはワクチン提供の代わりに、台湾との関係見直しを他国に迫っているとの批判がある。バイデン氏は「我々はワクチン提供と引き換えに、便宜供与や譲歩を求めて圧力をかけることはしない」と強調する。(コーンウォール=金成隆一、北京=冨名腰隆)

 ■「民主主義陣営」の拡大狙う

 今回のサミットは終始、米国主導だ。

 「民主的なシステムが人々に貢献し続けられるか。今回のG7サミットは、それを証明するためのものだ」。米政府高官は11日、記者団にこう強調した。

 バイデン氏は外交課題を「民主主義VS.専制主義」の闘いと位置づけてきた。英国到着直後の演説では「民主主義の時代は終わったという考えを信用させてはならない」と指摘。20分あまりで「民主主義」「民主的」といった言葉を13回も使った。

 さらに、際立つのがG7として打ち出す内容を米国が相次いで先行して発表する姿勢だ。中低所得国への巨額のインフラ投資も12日の協議開始前に公表。米政府高官は「(中国とは)別のビジョン、アプローチを提供したい」と強調した。世界へのワクチン供給をめぐっても、米国が5億回分の寄付をいち早く表明。米国には、影響力を強める中国に代わって民主的で透明性のある選択肢を世界に示し、各国を「民主主義陣営」に取り込みたい思惑がある。

 英国のジョンソン首相は、G7に招待の4カ国を加えた11カ国を「D(デモクラティック)11」と呼んだ。民主主義の価値を共有するグループを拡大したい意図が見える。

 バイデン氏はG7サミットに続き、北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合(EU)の各首脳会議に参加する。同盟国との結束強化を「追い風」とし、ロシア・プーチン大統領との初会談に臨む日程だ。

 10月には中ロも入る主要20カ国・地域(G20)首脳会議がある。日本外務省関係者は「中国に国際的なルールを守ってもらうため、G20で何を約束させるか。それを結束して打ち出す場が今回のG7だ」と話す。菅義偉首相もG7会合で、東シナ海・南シナ海での一方的な行動、人権状況など中国をめぐる問題に深い懸念を表明し、連携を呼びかけた。

 ただ、米国が「民主主義VS.専制主義」の構図を強調することで、世界を二分する懸念もある。米政府高官は「各国に『我々か中国か』を選択させるということではない」と説明する。(高野遼=コーンウォール、佐藤達弥)

 ■独仏は米と温度差

 中国やロシアに対する姿勢には温度差がある。

 サミットでは12日、中国への対応が中心的な議題の一つとなった。米政府高官によると、バイデン氏などが対処を求めたのに対し、複数の首脳からは、より協力的な関係を目指すべきだとの意見が出たという。

 ドイツのメルケル首相は11日、G7の開幕にあわせて「(バイデン氏と同じ)価値観に基づく多国間主義を支持することを強く訴える」などとする声明を出した。欧州各国は中国の海洋進出を念頭に、艦船の派遣などでインド太平洋への関与を深めてきている。

 だが、ドイツには中国が最大の貿易相手。気候変動など共通の課題もある。声明でも「すべての人の力が必要。気候保護や生物多様性の分野は中国を抜きに解決はできない」とした。

 ロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム2」でも、エネルギー安全保障が揺らぐとの懸念を示す米国に対し、「民間のプロジェクトだ」と繰り返す。

 フランスも米国一辺倒ではない。マクロン大統領は10日の会見で「インド太平洋地域の戦略で、どこかの国に追随するアプローチを採ることはない」と明言。中国への警戒心を共有しつつも、「我々の方針は中国に属国化されることでもなければ、米国に同調することでもない」と語った。

 D11でも、北朝鮮問題をにらんで韓国は、中国を刺激しないよう腐心する。

 5月のG7外相会議の共同声明には、4月の日米首脳共同声明とほぼ同様の表現で中国を意識した「台湾海峡の平和と安定」が明記されたが、今回盛り込まれるかは不透明。日本政府関係者は「欧州の台湾への関心は、日米ほど高くない」と漏らした。(野島淳=ベルリン、疋田多揚=パリ、安倍龍太郎)

 ■中国「偽の多国間主義」

 中国は、バイデン政権による民主主義国再結集の呼びかけに警戒を強める。その姿勢が前面に出たのが、11日に開かれた楊潔チー(ヤンチエチー)共産党政治局員とブリンケン米国務長官との電話協議だ。楊氏は「『小グループ』の利益を目指すのは偽の多国間主義だ」と強く牽制(けんせい)した。

 中国はトランプ前政権に振り回されたが、トランプ氏がG7などを軽視したのは好都合だった。バイデン政権は「不確実性こそ消えたが、価値観外交を基軸とする意味ではやっかいだ」(中国外交筋)とみる。

 中国外務省は12日、楊氏がブリンケン氏との会談で「新疆ウイグル自治区の問題はテロへの対応に過ぎない。香港の選挙制度整備も愛国者統治を確かにするもので、世界の通例だ」と説明したと追加発表。その狙いを、外交筋はこう話す。

 「米国は中国内政の問題をイデオロギーや人権に落とし込み、西側諸国をまとめようとしている。米国と他国の間にくさびを打つために、強く反論していく必要がある」(北京=冨名腰隆)

2021年6月16日
土地規制法案採決、最後までドタバタ
   押し切る与党、野党批判

 自衛隊基地や原子力発電所の周辺、国境離島などの土地の利用を規制する法案について、与党が15日夜、参院内閣委員会で採決に踏み切った。基地の周辺住民などの私権制限にかかわる法律にもかかわらず、調査対象や処罰対象などがあいまいなことに野党からは批判が相次いだが、与党は衆参合わせて二十数時間ほどの審議で押し切った。

 「審議をするほどに矛盾、問題点がボロボロと露呈し、法律の体をなしていないことが明らかになっている。それが質疑打ち切りの動機ではないか」

 この日の参院本会議。森屋宏内閣委員長(自民党)の解任決議案に対する討論で、共産党の田村智子氏は疑問を投げかけた。

 与党が一気に採決へと動いたのは参考人質疑が終わった14日の夕方。内閣委理事会で森屋委員長が同日中の採決を提案した。

 これに立憲民主、共産両党は森屋委員長の解任決議案を提出して対抗。しかし、与党は15日の参院本会議で解任決議案を否決し、同日中の委員会と本会議で採決を行うことを決めた上で、異例となる午後7時半すぎからの審議を始めた。

 小此木八郎領土問題担当相は「(安全保障上の)不安は雲をつかむようなものでもあった。まずは調査しようというのがこの法案の目的だ」と理解を求めた。

 これに対し、立憲の杉尾秀哉氏は、与党推薦の参考人が「条文案を読むだけでは様々な臆測が広がる恐れがあることを痛感した」と懸念を示したことを指摘。「こんな状況で採決していいのか」などと批判した。

 一方、野党側も足並みが乱れた。国民民主党は法案に賛成し、立憲、共産が提出した委員長解任決議にも賛同しなかった。立憲の参院執行部は、小此木氏の問責決議案提出も検討したが、国民が「あり得ない」と提出を拒否。一丸となって対抗することはできなかった。(鬼原民幸、小手川太朗)

2021/06/17
土地利用を国が規制する新法「土地規制法」

 自衛隊基地や原子力発電所など安全保障上の重要な施設周辺の土地利用を国が規制する新法(土地規制法)が16日未明の参院本会議で可決、成立した。通常国会は同日、延長されることなく150日間の会期を終えて閉会した。菅義偉首相は東京五輪・パラリンピック後に衆院解散をすることを検討している。自民党内では、9月に任期が切れる首相の党総裁任期を延長する案も出ている。▼3面=消えぬ懸念、27面=「監視強まる」

 土地規制法の成立は16日午前2時半ごろ。自民、公明、日本維新の会、国民民主各党が賛成した。条文のあいまいさによる私権制限などを懸念する立憲民主、共産両党が議院運営委員長の解任決議案を提出して対抗した。会期延長を避けたい与党は、緊急事態宣言下で、異例の日付をまたぐ国会運営で押し切った。

 同法は、安全保障上重要な施設周辺や国境離島を「注視区域」「特別注視区域」に指定して利用を規制する。特別注視区域では、一定の面積以上の土地や建物の売買時に氏名や国籍の事前届け出を義務づける。

 ■土地規制法の概要

 ◆自衛隊や米軍基地などの防衛関係施設、海上保安庁施設、原発など重要インフラ施設などの周囲1キロや国境離島を「注視区域」に指定。政府が土地や建物の所有者を調べられる
 ◆とくに重要性の高い施設周辺は「特別注視区域」に指定し、一定面積以上の土地や建物の売買の際、事前の届け出を義務づけ。違反したら懲役や罰金
 ◆調査で施設侵入の準備や電波妨害などの違反があれば勧告や命令を出し、従わない場合は刑事罰を科す

▼3面=消えぬ懸念
条文規定あいまいなまま 土地規制法成立

写真・図版 【写真・図版】土地規制法、積み残された課題

 自衛隊基地周辺などの土地の利用を規制する法律が16日未明、成立した。政府は、外国資本が安全保障上重要な地域の土地を購入していることへの「不安」を理由に挙げるが、条文の規定はあいまいで広く住民に規制がかかる恐れがある。一連の審議では、与党推薦の参考人からも懸念が示されたが、政府・与党は数の力で押し切った。▼1面参照

 「不安とリスクが立法事実という法律はなかなかないよな」

 16日午前2時半すぎ、同法の成立を見届けた内閣府幹部は、こう周囲に漏らした。15日夜の最後の委員会審議でも、法律の必要性や正当性を根拠づける「立法事実」を問われた小此木八郎領土問題担当相が、「不安は雲をつかむようなもので、まずは調査しようという目的」と苦しい答弁を強いられていた。

 同法は安倍政権が「安全保障等の観点」を理由に昨年7月の「骨太の方針」で打ち出したもので、それを引き継いだ菅政権が今国会に提出。自民党保守派が強く成立を求めていた。

 安全保障上の観点から一定の規制をする必要性については多くの与野党が認めているが、問題は基地周辺などの住民に広く規制をかける政府がまとめた法律の中身だ。

 与党の公明党も当初、「大半の方々は純粋に土地取引をしている。もっと他の方法はないか検討していく必要がある」(北側一雄副代表)と主張。提出は政府提出法案の期限を超えた3月26日にずれこんだ。

 国会審議では、条文のあいまいさが次々と浮き彫りになった。

 まず、規制の対象地域だ。新法では「重要施設」の周囲1キロや国境離島を「注視区域」に指定し、土地や建物の利用状況を調べ、持ち主を調査できる。司令部機能がある自衛隊基地など、特に重要な地域は「特別注視区域」とし、一定面積以上の土地や建物を売買する際、事前に氏名や利用目的の届け出が義務になる。

 ただ、政府は検討している対象地域のリストの開示を拒んだ。どこに住む市民が調査の対象になる可能性があるのか明らかにしなかった。

 一方で、原子力発電所や自衛隊が共有する空港などを想定する重要インフラ施設の対象については、内閣官房審議官が「柔軟かつ迅速に検討を続ける」と述べ、鉄道や放送局などへの拡大にも「将来的にありうる」と含みを持たせた。

 次に、調査の範囲もあいまいだ。具体的な内容は、成立後のこれから政府が「政令」で決めるため、国会審議では詳細が明らかにならないままだった。

 小此木氏は「思想・信条などに係る情報収集は想定していない」と説明した。ただ、内閣官房審議官は「条文の規定では排除されない」と答弁し、可能性を否定しなかった。野党側は「基地や原発に反対する住民が常時監視される可能性がある」と指摘した。

 また、罰則の対象になる行為も定かではない。

 同法では、重要施設の機能を妨害するような違反があれば、勧告や命令が出され、従わなければ懲役を含む刑事罰が科せられる。

 しかし、条文には具体的な「機能阻害行為」は例示されず、成立後に政府が閣議決定する基本方針で示されることになっている。

 立憲の木戸口英司氏は16日未明の参院本会議で「政府は『機動的』と表現するが、あまりに白紙委任的な法案でとても賛成できない」と批判した。

 こうした新法のあいまいさには、参院内閣委で14日に行われた参考人質疑で、政府の有識者会議に参加し、与党が推薦した参考人までもが、「条文案を読むだけでは様々な臆測が広がる恐れがあることを痛感した」と発言。3人の参考人がそろって懸念があることを指摘した。

 その一人である弁護士の馬奈木厳太郎(いずたろう)氏は「政府丸投げ法案を成立させるようであれば、国会は何のためにあるのかという話になる」と疑問を投げかけた。(鬼原民幸、小手川太朗)

▼27面=「監視強まる」 2021/00/00
「どんな影響が」「監視強まる」 土地規制法成立

 米軍・自衛隊の基地周辺や国境離島などに住む人々の情報を国は調べることができる――。そんな土地規制法が16日未明、成立した。広く市民に網がかけられるという危惧が審議では繰り返されたが、国会延長もなく、採決が強行された。▼1面参照

 国会審議では、条文の規定があいまいだ、という指摘が繰り返された。

 「あいまい」の一つは、どこが対象地域になるのか、だ。条文が具体的に挙げているのは、米軍・自衛隊・海上保安庁の施設周辺と国境離島。国はほかに、原発や自衛隊との共用空港の周辺も想定するが、条文に明記はしなかった。

 多くの地元では「寝耳に水」なのが実態だ。

 東京電力柏崎刈羽原発がある新潟県刈羽村。原発敷地の周辺には住宅や事業所、大規模スーパーもある。だが長く反原発運動を続けてきた村議は「どのような影響を及ぼすのかわからないまま、法律が成立した。もっと情報がほしい」と語った。

 米軍や航空自衛隊の三沢基地のある青森県三沢市。ここでも多くの市民は、わがことと思えていないのが実情だ。買い物中の60代の女性は「そんな法律ができたことは知らない」。

 参院議員会館で16日にあった抗議集会では、千葉県松戸市の岡本優子市議が、未明の採決を「暴挙」と批判。市内には陸上自衛隊の駐屯地があるが「法律について知らない地方議員が多すぎる」と話した。

 「あいまい」の二つ目は、対象地域の人々の何を調べるのか、だ。氏名や住所以外の項目は、国が政令で決める。

 仙台市の堤智子さん(74)は「国民への監視が強まるのでは」と懸念する。

 陸上自衛隊の情報保全隊は2004年ごろ、自衛隊のイラク派遣に反対する人たちの集会の情報を収集。公にしていない本名や職業も集めていた。堤さんが行った集会の情報もあった。「恐怖と気持ち悪さを感じた」

 土地規制法は、土地の利用者に妨害行為などの恐れがあれば、やめるよう勧告できる、としている。「その人の思想信条まで調べなければ『恐れ』があるかどうか判断できない。暴走するのは目に見えている」

 沖縄県の地元2紙は16日朝刊の社説で、懸念を表明した。琉球新報は「法案は、外国人が土地を所有すること自体は規制せず、基地周辺で暮らす自国民を監視対象にする内容にすり替わってしまった」とし、名護市辺野古で続く反対運動も妨害行為とみなされかねないと危惧した。

下平記

時事ニュースで報道される記事を見ていると、国民の将来に寄せる思いなど無視した世界のご寝押し政治そのままの動きをしていることに腹が立ちます。

税金の徴収に始まり、昔よく言われたエンゲル係数とコロナ禍の問題、それに世界全体にかかわる地球の温暖化、政治家はこうした国民の心配を無視して議論を進めています。 世界のリーダーたちは普通の平民の思いを無視しているというほかはないのです。

国政選挙の目当ては何でしょうか? そのことを最大の目標にしてお金の使い方や制度を考えてほしいのです。 民主的などという言葉は使ってはならないのです。 いのちをこそ大事にしてほしいのです。