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続折々の記 ⑤
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【 07 】06/15【04】の続き
04 日本の富裕層が「先進国で最も税金を払ってない」
05 元国税局員が教える「株や不動産以外で金持ちになる」方法とは?
2021年6月15日
03 富裕層が「税金逃れ」に使う「汚いやり方」
●税金は貧乏人に払わせればいい
富裕層が激増している要因のひとつに「税金」がある。
金持ちが金持ちでいられるのは、税金が大きくモノをいっているからなのだ。
あまり知られていないが、このところ富裕層の税金は大幅に下げられている。
バブル崩壊後、消費税や社会保険料など「庶民の税金」は段階的に引き上げられているが、富裕層の負担すべき所得税、法人税、相続税などは、激減されている。
前著『税金を払わずに生きてゆく逃税術』にも詳しく書いたが、金持ちにとって最大の敵は税金である。だから、彼らはありとあらゆる手を使って税金から逃れようとするのだ。
実は貧乏人というのは、税金に無頓着な人が多い。
貧乏人だってお金は大好きで、それなりに執着してはいるのだが、税金に関しては無関心である。
たとえば、フリーターはあまりお金を持っていないことが多いのだが、そのほとんどが税金にはまったくお構いなしだ。
フリーターなどが同じ職場で一定期間以上働いている場合、給料から税金が源泉徴収されているものの、年間の収入が少ないときは、その源泉徴収された税金は申告によって戻ってくる。
彼らの場合、確定申告をすればたいていは税金が還付されるのに、還付申告に来るフリーターは非常に少ない。
還付額は、少ない人でも1、2万円、多い人では10万円近くの税金が戻ってくる場合がある。フリーターにとって、その額けっして少なくないはずだ。
しかし、フリーターの多くは、その情報を知らなかったり、面倒くさがったりして、申告しない。
いっぽう、金持ちの世界ではそんなことは絶対にない。その多くは税金に関してとことん研究し、無駄な税金をビタ一文余計に払ったりはしないからである。
なぜ金持ちが税金に渋いかというと、彼らは「税金は費用対効果が低い」ことを知っているからだろう。 だから、政治献金などは気前よく行うくせに、納税は1円でも抑えようとする。
つまり、金持ちたちは、自分のお金をどのように費やし、何をすれば得になるのかを非常にシビアに計算しているのだ。
「金持ちから1円の税金を取るのは、貧乏人から1万円取るより難しい」のである。
金満家たちは政治に圧力をかけて、税金を安くさせることも厭いとわない。 というより、長年そういう努力をしてきた。
その結果、現在の日本の税制は「金持ち天国」という状態になっているのである。
●アンフェアに生きなければ金持ちになれない
金持ちが使っている節税方法とは、まっとうな手段だけではない。
アンフェアな方法を公然と使い、税金を逃れているのである。
税金の話は一般の人にはなかなかわかりにくい。 だから金持ちがいかなる手口を使っているのか、あまり表面化することはない。
しかし、彼らが採っている方法というのは、本当に「汚い」のである。
金持ちは、フェアなことをやっていれば、経済社会のなかで勝ち残れないということを知っている。 だから、はたから見ればアンフェアなことでも、金持ちは平気でやってのけることが多い。
逆に言えば、「アンフェア精神」を持っていなければ、金持ちにはなれない、ということだ。
この社会には、「金持ちになりたい」という「普通の人」があふれている。
そういう人のほとんどは、フェアな方法で金持ちになることを望んでいる。 不当な手段を使ってまで金持ちになろうという人はそう多くはないし、まず普通の人の場合、そのような情報自体を知らず、選択肢に入っていないことが多い。
しかし、金持ちはそうではない。
彼らは、「アンフェアな方法こそ金持ちになる道」だということを知っており、それを何食わぬ顔で実行しているのである。
とりわけ、富裕層の掟である「アンフェア精神」が最もよく表れている分野が「税金」である。
先ほども触れたように、日本で億万長者が急増している大きな理由のひとつが「税金」なのだ。
金持ちの数が増えた理由には二つある。
ひとつは「収入をアップさせた人が増えたこと」、もうひとつが「彼らが増えた収入をそのまま残していること(税金をあまり払っていないこと)」である。
税金を払わずに増収入分を最大限に確保している人々が次々と誕生しているからこそ、ここまで日本に金持ちが増えたのだ。
あまり語られることはないが、昨今の日本の税制は、金持ちの優遇に大きく傾いている。 ざっくり言えば、金持ちの税金が大幅に下げられているのだ。
そこで大きくモノをいっているのが、富裕層の「アンフェア精神」なのである。
●税務署と企業が手を組む究極の官民癒着
金持ちの行っているアンフェアな方法のわかりやすい例として、「天下りの受け入れ」があげられる。
「天下り」には他にもさまざまなカタチがあり、一般の人が想像する以上に広く行われている。
たとえば、建設関連業者が県庁の土木課などのOBを非常勤職で雇い入れておくのは、ごくごく普通のことである。 OBを雇い入れているというだけで、公共事業が得やすくなるからだ。
90年代の公共事業全盛期などには、社員数名の小さな工務店でも、天下り役人を雇い入れている会社がざらにあった。 最近は、公共事業がずいぶん減ったので、さすがにそういう企業は少なくなったが、なくなったわけではない。
そして、税金を安くするために、税務署OBを顧問にするということは、現在も非常によく行われている。
日本の税務には、「税理士」という制度が設けられている。 税理士とは、企業や市民が税金の申告をする際に、その申告書をつくってくれる人のことだ。
税理士試験に合格してなる人もいるが、最も多いのは国税OBである。国税に20数年以上勤務すれば、自動的に税理士資格がもらえるのだ。
この制度をうまく悪用してきたのが、金持ちたちである。
企業が税理士を使うとき、何を期待するかというと、もちろん税務をみてほしいこともあるが、それよりも税務署との交渉役としての働きである。
その際、どうせ国税OBに依頼するなら、「なるべく高い地位にいた人にお願いしよう」ということになる。 資金力のある人が裁判を行うとき、元検事の弁護人、いわゆる「やめ検」に弁護を依頼するのと同じだ。
だから、税務署長や副署長は、企業から顧問として受け入れられることが慣例化しているのである。
以前は、税務署が管内の企業に対して「今度、うちの署長がやめるのだけれど、顧問として雇ってくれないか」と打診までしていた。その「要求」を受けいれる企業は、当然ながら、税務署に手心を加えてもらおうと考えていたはずだ。
また税務署のほうも、税務署長を雇ってくれた企業に、そうそう厳しいことは言えない。はっきり言って税務署OBの税理士を顧問にしていれば、調査の手はかなり甘くなる。
税務署としても、上司や先輩だった人が顧問をしている会社に対して、そう無茶なことはできない。 特定のOB税理士の顧問先には「税務調査に行かない」という暗黙の了解もあったりする。
官民の癒着もいいところである。
信じられないかもしれないが、これは事実である。
この大企業への税理士あっせん制度は、数年前に国会で問題にされたため、平成22年に、表向きには廃止された。
しかし、いまでも内々では行われている。
この制度に関しては、国税職員の間でも常々疑問に思われているのだが、最高幹部のやっていることなので、なかなか廃止できない──それが実情なのである。
2021年6月16日
04 日本の富裕層が「先進国で最も税金を払ってない」
●富裕層にだけ大減税が繰り返されている
金持ちがやっていることは、国税を丸め込んで税金を負けさせるだけではない。税金制度そのものを、自分たちに有利なものに直させているのだ。わかりやすく言えば、金持ちの税金だけが安くなるように、政治家に働きかけているのである。
ほとんどの日本国民が知らない間に、高額所得者の税金はこの30年間で大幅に下げられてきた。信じがたい話かもしれないが、ピーク時に比べて40%も減税されてきたのである。
バブル崩壊後の日本は景気が低迷し、それに少子高齢化も進んだため、我々は消費税の増税や社会保険料の負担増に苦しんできた。「だったら当然、富裕層の税金も上がっているんだろう」と思っている人が多いだろう。
しかし、そうではないのだ。実は富裕層の税金は、ずっと下がりっぱなしなのである。その減税の内容を説明しよう。
所得が1億円の場合の税率
1980年 所得税75% 住民税13% 合計88%
2015年 所得税45% 住民税10% 合計55%
このように所得が1億円の人の場合、1980年では所得税率は75%だった。しかし86年には70%に、87年には60%、89年には50%、そして現在は45%にまで下げられたのである。そればかりではない。住民税の税率も、ピーク時には18%だったが、いまでは10%となっている。
このため、最高額で26.7兆円もあった所得税の税収は、2009年には12.6兆円にまで激減している。国は、税源不足を喧伝して消費税の増税などを計画しているが、そのいっぽうで、富裕層の税金は半減させているのだ。
なぜなら、富裕層による政治への働きかけが大きくモノを言っているからだ。金持ちは圧力団体を使って、政治献金をちらつかせることで、税制を自分たちに有利なように導いてきたのである。
●日本の金持ちは欧米の半分も払っていない
こう反論をする人もなかにはいるだろう。
「日本の金持ちの税金は元が高いのだから、減税されてもいいはずだ──」
たしかに日本の富裕層が払っている税金の「名目上の税率」は、他の欧米諸国に比べて高い。
しかし、そこにはさまざまな抜け穴があって、実質的な負担税率は驚くほど低くなっている。
むしろ、日本の富裕層は「先進国で最も税金を払っていない」と言えるのだ。
先進国では個人所得税の大半を高額所得者が負担している。
国民全体の所得税負担率が低いということは、すなわち「高額所得者の負担率が低い」ということに等しい。
つまり、日本の富裕層は、先進国の富裕層に比べて断トツで税負担率が低いということなのである。
日本の富裕層は、名目の税率は高くなってはいるけれど、実際に負担している額は非常に低い。それはなぜか。日本の税制では、富裕層に関してさまざまな抜け穴があるからだ。
開業医が税金の上で非常に優遇されていることはすでに述べたが、開業医以外の富裕層にも、ちゃっかり抜け穴が用意されているのである。
●投資家の納税額はサラリーマンの平均以下
富裕層が潜り抜ける税金の抜け穴で、最も目につくのが「配当金」である。
株をたくさん保有している金持ちは、多額の配当金を得ている。しかし、この配当金に課せられる税金も実は非常に安いのである。
普通、国民の税金は所得に比例して税率が上がるようになっている。これは「累進課税」と呼ばれるシステムだ。
たとえば、サラリーマンや個人事業などの収入があった場合、所得の合計額が195万円以下ならば所得税と住民税合わせて税率は15%で済むが、1800万円以上あった場合は50%となる。
収入が多い人ほど、税負担が大きくなる仕組みである。
しかし、株主への配当金だけは、その累進課税から除外されているのだ。
つまり、配当の場合は、どれだけ金額が高くても一定の税率で済むのだ。数十万円の収入しかない人も、数十億円の稼ぎがある人も同じ税率で済むのだ。
しかも、その税率は著しく低い。
実は、株の配当や売買による収入について、所得税はわずか15.315%(復興特別税含む)しかかからない。何億、何十億の配当をもらっていても、たったそれだけである。
これは、平均的な年収のサラリーマンに対する税率と変わらない。
上場企業の株を3%以上保有する大口株主の場合は、20.42%となるが、上場企業の株を個人で3%以上持っているというケースはあまりない。そうならないように、一族で株の保有を分散するからである。
また、たとえ3%以上持っていたとしても、わずか20%程度の所得税で済むのだ。
しかも、住民税は5%しかかからない。
上場企業の株を3%以上保有する大口株主の場合は、普通の人と同じように10%となるが、それ以外の株主、投資家は5%で済むのだ。
住民税は、通常は一律10%かかる。サラリーマン1年生でも10%の住民税を払っているのだ。
にもかかわらず、投資家だけが半額の5%とは……税制面でも、金持ちは優遇制度の恩恵を受けまくっているのだ。
●世界の非常識がまかり通る日本
日本がここへきて格差社会になったのは、この投資家優遇が大きな要因だと言える。
考えてみてほしい。毎日、額に汗して働いているサラリーマンの平均税率が15%程度であるいっぽう、株を持っているだけで何千万円、何億円も収入がある人の税率も、同じく15%なのだ。
しかも、住民税に至っては、サラリーマンが一律10%なのに対し、配当所得者は半額の5%なのである。
これで格差社会ができないはずはない。
こんなに投資家を優遇している国は、先進国では日本だけである。
イギリス、アメリカ、フランス、ドイツなどを見ても、配当所得は金額によって税率が上がる仕組みになっており、日本の数倍の高さである。
アメリカは、現在のところ時限的な優遇措置をとっているので、最高税率が14%となっているが、本来は50%の税率が課せられている。またアメリカでは、住民税が資産に応じて課されるため、必然的に大口投資家のような資産家は多額の税金を払わなければならない。
住民税が5%で済むということはないのだ。
まさに、日本は世界の非常識がまかり通る「金持ちに優しい国」なのである。
2021年6月16日
05 元国税局員が教える
「株や不動産以外で金持ちになる」方法とは?
●ワーキングプアが増殖する世界一の金持ち国
現在の日本において、普通の人が金持ちになることは非常に難しい。
株などの投資で儲けるのは至難の技だし、不動産経営や起業で資産を形成するにはよほど能力がないと無理である。いまの日本では、「金持ちの家に生まれなければ、金持ちになれない」という法則が固まりつつある。
では、普通の人が金持ちになれる方法はまったくないのか?
いや、実はあるのだ。
というより、数値的に見れば、いまの日本人は簡単に金持ちになれる。
日本は、実は世界一の金持ち国なのである。
日本の個人金融資産残高は現在1800兆円である。一人あたりの金融資産は1000万円を大きく超え、アメリカに次いで世界第2位である。
しかも、これは金融資産だけの話であり、これに土地建物などの資産を加えれば、その額は莫大なものとなる。
また日本は、対外準備高も全ヨーロッパの2倍もあり、国民一人あたりにすると断トツの1位である。対外純資産は、約3兆ドルで世界一だ。また、日本は世界一の債権国でもある。
つまり「日本人は世界一の金持ち」と言っていい。
だから、平均的な収入、資産がありさえすれば、本当は十分に金持ちになれるのだ。
個人金融資産が平均で1400万円以上、4人家族なら一家で6000万円近くの金融資産を持っている日本人は皆、理屈から言えば「半ミリオネア状態」である。
しかし、ほとんどの人はそんな実感を抱いておらず、実際にそういう状態でもないはずだ。と言うより、日本人の大半は金持ちどころか、かなり貧しい国の国民と同様の生活をしている。
平均的な収入のある人でも、子供二人を育てるのは大変である。平均以上の収入があるのに、子供二人を育てられない国というのは世界でもあまりない。
また日本では、毎日きちんと仕事をしているのに、住む場所さえままならない「ワーキングプア」と呼ばれる人たちが大勢いる。さらに極めつけは、日本では毎年2万人もの自殺者がいる。
これは世界最悪のレベルである。しかも、その多くは経済的な要因だとされているのだ。
世界一の金持ちなのに、国民のなかにはワーキングプアや経済的理由による自殺者が相当たくさんいる。これはいったい、なぜなのか?
●給料が欧米並みになればよい
その答えは、実は明白である。日本のサラリーマンの給料が下がっているからだ。
日本人の平均給与は、この20年間で20ポイントも下がっている。前述したように、財界はバブル崩壊以降、労働者の雇用をおろそかにし、賃金を上げない方針をとってきたからだ。
この20年のうちには、「いざなみ景気」という戦後最長などと喧伝された好景気の時期もあった。にもかかわらず、サラリーマンの給料は上がるどころか下がっていたのだ。
そして先進国のなかで、この20年間で給与が下がっているのは、先進国ではほぼ日本だけなのである。どの先進国も「リーマンショック」を経験し、同じように不景気を経てきたのに、である。
OECDの統計によると、ほぼすべての先進国において、給料は上がっている。EUやアメリカでは、20年前に比べて平均収入が30ポイント以上も上がっている。
日本だけが20ポイントも下がっているのだ。数値的に欧米と比べれば、なんと50ポイントも給料が低いのである。
いっぽう、この間に、企業は内部留保金(貯金)を増やし続け、株主の配当は4倍にも激増させている。
逆に言えば、日本のサラリーマンは、すぐにでも金持ちになれるということでもある。
いまより、給料が50ポイント上がれば、ほとんどのサラリーマンはかなり豊かな、金持ちの気分を味わえるはずだ。
しかも、それはけっして無理な話ではないのだ。日本の企業が他の先進国並みの給与水準にすれば、すぐに達成できるからだ。
そして、日本の企業は、そういう資金的な体力は十二分に持っているのだ。
●サラリーマンは無力だと諦めるのは早い
それにしても、なぜ日本人の給料は下がり続けたのか?
これは、経団連や政治の責任でもある。それなのに、サラリーマンたちは何ひとつ文句を言ってこなかった。それはそれで自己責任という面がある。
サラリーマンは、日本社会のなかで圧倒的多数を占めている。「これだけ好景気が続いているんだから給料を上げろ」と強く主張すれば、通らないはずはなかったのだ。
なぜ主張できなかったかと言えば、現在のサラリーマンはまったく団結していないからである。
サラリーマンは圧倒的多数ではあるが、一人ひとりの立場は非常に弱い。会社に雇われている立場なので、どうしてもそうなってしまう。
この問題は、実は昔から指摘されてきたことである。
しかし、団結すればサラリーマンは相当な権力を手にすることができるはずだ。
「サラリーマンが団結するなんて無理」
「そういうのは面倒くさい」
と思う人も多いだろう。
「この著者は、左翼の回し者か」と疑う人もいるかもしれない。
しかし、冷静に考えて欲しい。
これまで、「金持ちは徒党を組むことで自分たちの利権を守ってきた」ことをいくつもの例を示して紹介してきた。逆に言えば、金持ちは徒党を組むことができたから、利権を維持しえたのである。
大きな力を持っているはずの金持ちでさえ、徒党を組まないとやっていけないのだ。金の力を持っていない普通の人々が徒党を組まなければ、武器を持たずに戦うのと同様である。
徒党を組むことができないのならば、この厳しい経済社会を一人で戦い生きてゆくことになり、必然的に負けてしまうのだ。それは火を見るより明らかである。
金持ちは「徒党を組む」という努力をしている。普通の人が、その努力をしなければ、絶対に金持ちに勝つことはできないのである。
●金持ちに対抗して徒党を組むべし
サラリーマンには、そもそも「徒党を組める環境」が整っている。法律で「団結権」というものが与えられているからだ。
団結権とはつまり「団結して労働組合をつくって、会社と交渉する権利」である。これがあれば、サラリーマンはけっこう強く主張することができる。
しかし最近、労働組合はあまり機能していない。組合への参加率が非常に低いので、あまり発言権がないのだ。
参加率が低いのは、いろいろ理由があると思われるが、その第一に、労働組合が現実離れした政治闘争ばかりやっていて、肝心のサラリーマンの待遇改善などを疎かにしてきたという側面がある。
労働組合のバックには、左翼系の政治団体がつき、これがかなり官僚主義的だった(共産主義とは、煎じ詰めれば巨大な官僚主義だった)。
そんな組織に加わろうとするサラリーマンがだんだん減っていくのは、自然な流れだったと言える。
はっきり言って、これまでの労働組合はまったく魅力的ではなかったし、そこを経営側につけこまれて切り崩され、組織率が低下していったわけだ。
でも、これからの経済社会、やはりサラリーマンは団結するべきだと筆者は考える。富裕層や企業はどんどん自己保身に走っているのに、サラリーマンだけが丸腰で、しかも一人ずつ戦うのは不利というものだ。
だから今後は、新しい時代にマッチした、新世代型の労働組合、言うなれば「スマート・ユニオン」をつくるべきだ。
あなたがこれまで抱いていた「労働組合」の概念は、ここでいったんリセットしていただきたい。
▼大村大次郎(Ohmura Ohjirou)
大阪府出身。国税局で10年間、主に法人税担当調査官として勤務し、退職後、経営コンサルタント、フリーライターとなる。執筆、ラジオ出演、テレビ番組の監修など幅広く活躍中。『税金を払わずに生きてゆく逃税術』(悟空出版)、『あらゆる領収書は経費で落とせる』(中公新書クラレ)など著書多数。また、経済史の研究家でもあり、別のペンネームで30冊を超える著作を発表している。