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続折々の記 2022 ②
【心に浮かぶよしなしごと】
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【 04 】03/20~     【 05 】03/21~     【 06 】03/24~
【 07 】03/26~     【 08 】03/26~     【 09 】03/30~

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【 07 】03/26
    田中宇の国際ニュース解説   世界はどう動いているか
       ◆米連銀がQEやめないので実体経済が破綻してるのに株が上がる
       ◆コーカサスで和平が進む意味耕
       プーチンの策に沿って米欧でロシア敵視を煽るゼレンスキー
       ウクライナで妄想し負けていく米欧
       ◆米連銀はQEやめてない。それでもドル崩壊するのか?
       優勢になるロシア
       ウクライナ難民危機の誇張
       ◆ロシアは中国と結束して延命し、米欧はQE終了で金融破綻
       優勢なロシア、行き詰まる米欧、多極化する世界
       ◆ドルはプーチンに潰されたことになる
       ロシアは意外と負けてない(2)
       ◆ロシアは意外と負けてない
       ウクライナがアフガン化するかも

 2022/03/26
田中宇の国際ニュース解説    【2022年3月25日】➡【2月27日】
   https://tanakanews.com

◆米連銀がQEやめないので実体経済が破綻してるのに株が上がる
 【2022年3月25日】米連銀FRBの3月23日時点の資産総額は9兆0120億ドルで、前週より82億ドル増えた。3週連続の増加だ。連銀がドルを過剰発行してその資金で債券などを買って金融相場をテコ入れするQE策をいまだにこっそりやっていることは確実になった。最近の連銀の資産増加の最大要素は不動産担保債券MBSの増加で、金融界が発行したMBSの購入は前から連銀QEの中心だ。この資金で金融界が株を買ってつり上げる。連銀は表向き3月9日にQEをやめたことになっているが、その後も発表せずに平然とQEを続けている。QEの継続は連銀が毎週木曜日に発表する数字を見れば明らかなのだが、マスコミもオルトメディアも報じていない。連銀にQE中止を言わせてきた米政界も黙っている。

◆コーカサスで和平が進む意味
 【2022年3月23日】ロシアの南にあるコーカサスで、これまで米英が扇動してきた国際紛争があちこちで和解に向かっている。トルコとアルメニア、トルコとギリシャ、アルメニアとアゼルバイジャンという3つの紛争の当事国たちが、3月に入って和解に向けた外相会談などを行っている。3つの紛争はいずれも米英が、トルコやロシアを弱体化させておくために煽ってきた。米英の覇権が強い限り、3つの紛争も続く構造になっていた。今回、3つの紛争の当事国たちが和解交渉を進めている。これは、これまでトルコやロシアを弱体化してきた米英が、逆に影響力を喪失していることの現れだ。ロシアのウクライナ戦争も、2014年以降ウクライナを支配していた米英が力を喪失していく中で、ロシアがウクライナを影響圏として奪還する動きとして起きている。

プーチンの策に沿って米欧でロシア敵視を煽るゼレンスキー
 【2022年3月22日】プーチンは、ゼレンスキーが米欧日の議会で演説してロシア敵視を扇動するのを、自分の戦略に沿った好ましいことと考えている。ゼレンスキーはロシアに言われたとおりに米欧でロシア敵視を煽るほど、戦争後もウクライナ大統領でいられる可能性が高くなる。米欧日の上層部には、ロシアとの石油ガス資源の関係が切れてしまうと自国経済が破綻するので避けたいと思っている勢力がかなりいる。ゼレンスキーの演説は、そうした米欧日の上層部の思惑を破壊し、米欧日が好戦的なロシア敵視のポピュリズムに流されてロシアとの関係を完全に切って経済的に自滅していく方に事態を押しやる。

ウクライナで妄想し負けていく米欧
 【2022年3月20日】ウクライナでロシア軍が作戦をゆっくり展開しているのは、ウクライナの市民や都市を破壊しないようにしつつ、敵方の極右民兵団だけを潰せるようにしているからだ。それなのに欧米のマスコミ権威筋は「露軍はウクライナで苦戦し負けている」と勝手に間違った妄想を展開・喧伝し続け「ロシアが負けているのだから米欧NATOがウクライナの領空を露軍から奪還して飛行禁止区域を設定できる」と勘違いしている。

◆米連銀はQEやめてない。それでもドル崩壊するのか?
 【2022年3月18日】連銀は、3月9日でQEをやめたと伝えられてきたが、実は何も発表しなまま、いまだにQEをやめずに続けている。米欧は自滅的な対露制裁によって今後コモディティ不足やインフレがひどくなるので株や債券の下落傾向が続くが、QEが続いている限り大暴落の金融崩壊にならない。実体経済はどんどん悪化するが金融バブルは延命し、世界の通貨体制はブレトンウッズ2の債券金融システムのままで、3の非米多極型のコモディティ本位制に移行していかない。

優勢になるロシア
 【2022年3月16日】ロシアはゼレンスキーと交渉を続け、降参して政権内からロシア敵視勢力(米傀儡の極右ネオナチ)を追放すれば大統領職にとどめてやるなどと持ちかけ続け、米欧からの支援を期待できなくなったゼレンスキーはロシアの要求を受け入れ始めている。この流れの中で、NATO加盟をあきらめるという今回のゼレンスキーの発言が出てきた。ロシアは、ウクライナの非武装中立化と非ナチ化(米傀儡追放)という露軍侵攻の目的を達成しつつある。ゼレンスキーの側近は、早ければ1-2周間、遅くても5月までにロシアと和解すると言っている。

ウクライナ難民危機の誇張
 【2022年3月15日】ロシアはゼレンスキー大統領を留任させたまま、ウクライナを反露から親露・露傀儡に転換させて、ウクライナ戦争を終わりにしたい。ロシアは、ウクライナをできるだけ手付かずのまま親露に転換させたいので、ウクライナの市民が死んだり難民になるのを望んでいない。ロシアはウクライナの諸都市を破壊して廃墟にしたいんだという見方は大間違いである。だがこれから米欧が不利になるほど、米欧日の報道は現実からの乖離がひどくなる。

◆ロシアは中国と結束して延命し、米欧はQE終了で金融破綻
 【2022年3月11日】ウクライナ戦争が長引くほど、中露は結束し、米国は中露への制裁を強め、世界経済は中露側と米欧側に分裂していく。石油ガスなど資源の多くは中露側が持っている。大消費地帯である中国もインドも中露側だ。米欧側の強みは債券金融システムの巨大な資金力だが、そのちからは今、米連銀がインフレ対策としてQEを停止するので破綻寸前だ。QEをやめたら債券金融システムはバブル崩壊する。米欧側は強みを喪失し、生活必需品である石油ガス鉱物を中露側に握られ、経済破綻して敗北していく。中露側も経済難は続くが、地下資源と実体経済の成長構造があるので米欧をしのいで台頭していく。混乱の中、世界が多極型に転換する。

優勢なロシア、行き詰まる米欧、多極化する世界
 【2022年3月9日】もし米欧が今回のような決定的なロシア外し・対露制裁をやらなかったら、中国はそれほどロシア寄りにならなかった。しかし米欧は決定的にロシアを外した。中国は、外されたロシアを丸ごと受け取る以外に選択肢がない。中国がプーチンを助けなければ、プーチンは弱体化して政権転覆され、ロシアはプーチン以前のような米英傀儡に乗っ取られた国になる。中央アジア諸国も米国側に奪われ、地政学的に中国自身が弱体化させられてしまう。だから中国がプーチンを見捨てることはない。ロシアは中国の10分の1しか人口がいない。中国がロシアを経済的に助けるのは簡単だ。2-3年ぐらいなら、中国は余裕でロシアの戦争を支援できる。

◆ドルはプーチンに潰されたことになる
 【2022年3月6日】これから起きる米欧経済の破綻とドル崩壊は、QE中止と、流通網など供給側起因のインフレが原因なのだが、多分マスコミではそう報じられない。米欧の経済破綻はプーチンのせいだ、と言われるようになる。QEをやめてもインフレはおさまらないのだから、米連銀はQEをやめる必要などない。QEをやめなければ、いくらインフレになっても金融バブルは維持されて崩壊しない。QEは悪政だが、やめたら金融崩壊するのだから無意味にやめるのは大馬鹿だ。コロナ以降、マスコミは正気を失い、諜報界に操作されるまま、過激で稚拙な「ぜんぶプーチンが悪い」の絶叫を続けている。QE停止によるこれからの米国側の金融崩壊も、目くらまし的にプーチンのせいにされ、本質が隠される。

ロシアは意外と負けてない(2)
 【2022年3月4日】多極化によるロシアの台頭と米国の衰退によって、東欧におけるロシアとEUの影響圏の境目が西の方に移動していく。EUは、早く対米自立してロシアとの話し合って新たな影響圏の境界を確定せねばならないのだが、それが全くできていない。EUが動かない分、米国がロシアを挑発し、ロシアが力づくで境界線を変更する挙に出たのが今回の戦争だ。米国の衰退と覇権の多極化は止められないので、ウクライナがロシアの影響圏に戻ることも止められない。

◆ロシアは意外と負けてない
 【2022年3月2日】ロシアは米欧から排除されても孤立しない。むしろロシアは、多極化に先鞭をつける重要な役割を果たしていく。ロシア(と中国)は近年、サウジ主導のOPECと組み、世界の石油ガスの利権を米国側から奪うためのOPEC+を形成している。OPECは米国の傀儡だったが、OPEC+は非米組織へと転向した。ロシアは孤立するどころか逆に、サウジやイランや中国などと組み、米欧が買う石油ガスの価格をつり上げてインフレを加速させ、ドル崩壊や米欧の経済窮乏、政権転覆・トランプ再登板などを引き起こしていく。


上記のうち◆印がついている項目は、今のところパソコンの具合が破綻しているので以下のように詳細を再現できません。 パソコンのメールが回復すれば、大事な◆印の詳細が読めれるはずです。
そうでなくても、下記の項目を読み進めていくと、過去の情報が確認できるのです。 なんとかメールを回復したいと思っています。

プーチンの策に沿って米欧でロシア敵視を煽るゼレンスキー

2022年3月22日   田中 宇
ウクライナのゼレンスキー大統領が2週間ほど前から、米英独伊カナダイスラエルなど、ロシア敵視の欧米諸国の議会でビデオ演説し「ロシアとの戦争に参加し、対露経済制裁を強化してほしい。プーチンを許すな」と求めている。日本の国会でも3月23日に演説する。この展開に関して私が抱いている疑問は、ゼレンスキーが世界に対してロシアと戦争してくれ、経済制裁してくれと扇動しているのに、それによって脅威を受けているはずのロシアが、ゼレンスキーの通信手段を切断して封じ込めることもせず、世界にロシア敵視がばらまかれるのを黙認していることだ。ロシアはゼレンスキーのビデオ演説を妨害しようとしたが失敗したのか。そんなことはない。ロシアはウクライナの制空権を奪り、ゼレンスキーの居場所も知っており、ゼレンスキーと世界との通信手段を破壊できる。それをしないロシアは、ゼレンスキーがロシア敵視を世界にばらまくことを意図的に容認している。 (In Address to Congress, Zelensky Pleads for Help With War Against Russia)

前回の記事に書いたように、すでにロシアは軍事的にウクライナの敵(主に極右民兵団)に対して勝利している。ゼレンスキーが世界に呼びかけても、ロシアの制空権を破って対露戦争を辞さずにウクライナに戦闘機を送り込んでくれる国はない。ゼレンスキーの演説を聞いた各国の議員たちは、国内の人気取りのため熱狂的に賛同する演技をするが、それだけだ。各国とも、やれる対露経済制裁はすでにやっているが、ロシアは持ちこたえ、むしろ欧米を逆制裁して困らせている。米欧はこれ以上ウクライナを助けられず、ゼレンスキーはすでに敗北が確定している。 (ウクライナで妄想し負けていく米欧)

ゼレンスキー自身、すでにNATO加盟をあきらめると表明するなど、ロシアとある程度の合意ができる状態になっている。ロシアは、ウクライナの非武装中立化と、米英傀儡の極右勢力(ネオナチ)の排除を侵攻の目標にしているが、前者はゼレンスキーのNATO非加盟宣言で達成され始め、後者は露軍が極右民兵団を大体退治したことでメドがついている。 (Moscow, Kiev get closer on Ukraine’s neutral status – top Russian negotiator) (優勢になるロシア)

ゼレンスキーは、クリミアとドンバスをウクライナに戻さない限りロシアと和解しないと言っており、これが今の対立点になっているが、これはいずれどちらかが折れることで解決できる。ウクライナがロシアの傀儡国として安定すれば、重要なセバストポリ露軍港があるクリミアをウクライナに戻すことも安保的に可能だ。ドンバスも戻せる。ドンバスがウクライナに戻る代わりにクリミアはロシア領のままにするという折衷案もありうる。領土問題は解決できる。 (Zelensky reveals compromise he won’t make) (ロシアは正義のためにウクライナに侵攻するかも)

ゼレンスキーは、ロシアと和解することで今後もウクライナの大統領でいられる。5月までに露軍による極右掃討が完了し、仕方がないので降参しますと言ってゼレンスキーはロシア傀儡の大統領として続投する。露軍は撤兵する。米国は2014年にウクライナを政権転覆したが、ロシアは政権転覆をやっておらず民主主義を尊重しました、と言える。ゼレンスキーが大統領として続投したければ、ロシアを敵視せず黙っていた方が得策だ。 (Kremlin: Reports Of Major Progress In Ukraine Talks "Wrong", Biden's Putin Remark "Unforgiveable")

しかし実際のゼレンスキーは、ロシアとの和解の道が見え出した直後から、欧米諸国の議会の巨大モニターに出て、ロシア敵視と対露参戦と経済制裁を扇動する演説を開始した。演説しても戦況を好転できないと最初からわかっているのに、である。ゼレンスキーは間抜けなのか。しかも、ロシアもゼレンスキーの大胆不敵な行為を黙認している。プーチンも間抜けなのか。いやいや、ゼレンスキーもプーチンも狡猾な策士だろう。むしろ、何か裏があると考えた方が良い。 (Russia officially withdraws from Council of Europe)

プーチンのロシアは、ゼレンスキーが米欧日のロシア敵視を扇動することを嫌がっていると思いきや、むしろ逆に好ましいと思っているかのような動きをしている。たとえばロシア政府は、ゼレンスキーの日本演説の前日である3月22日に、北方領土に関する日本との和平交渉を中断し、日露間のビザなし交流や共同経済活動も停止すると発表した。ロシアは、わざわざゼレンスキー演説の前日を選んで日本との関係断絶を発表した。ロシアが日本との関係を悪化させたくないなら、ゼレンスキー演説の前日にロシアがやるべきことは、日本に対する融和姿勢を見せることだ。それなのにロシアは正反対に日露関係を断絶し、ゼレンスキーと一緒になって日露関係を悪化させている。ロシアは、日本がロシア敵視を強めることを望んでいるかのようだ。 (Russia scraps peace-treaty talks with Japan)

ここで、さらに根本的な問いが生まれる。そもそも米欧日がロシアを強烈かつ長期に経済制裁し続けることは、ロシアにとって不利、米欧日にとって有利なのか??。これまでの私の記事を読んできた人々はすでに答えを知っているはずだ。米欧日がロシアを強烈に経済制裁し続けると、米欧日は石油ガスや鉱物資源が足りなくって経済が破綻していき、中国インド中東諸国などは米欧から距離を置いてロシア側に流れていって米欧抜きの多極型・非米型の新世界秩序を形成していき、米欧側(米国覇権)とロシア非米側が分離した状態が長引き、米欧側が金融崩壊を引き起こして破綻していく。ロシアの立場は、この多極化で強化される。 (ロシアは中国と結束して延命し、米欧はQE終了で金融破綻)

プーチンは、こうした多極化の急伸を引き起こすため、米欧に強烈な対露経済制裁をやらせることを一つの目的として、今回の劇的なウクライナ戦争を起こした観すらある。プーチンが2月24日に、ウクライナの東部2州だけでなく全土を占領(制空権奪取)する衝撃の策をあえて挙行した目的は、米国や中国などを巻き込んで世界をロシア側と米欧側に分裂させ、石油ガス資源を持っているロシア側が勝つ地政学的な巨大紛争と大転換を引き起こすためだったと考えられる。 (優勢なロシア、行き詰まる米欧、多極化する世界)

案の定、米国は逆上し、ロシアだけでなく親露的な態度をやめない中国まで経済制裁してやると米国が息巻いている。米国が中国への経済制裁を強めたら、中国はロシア寄りになる傾向を強め、プーチンが望む多極化の急伸が現実になる。こうしたプーチンの逆転発想の大戦略をロシア市民が理解しているのか不明だが、露国民の70%が露軍のウクライナ作戦を成功と思っている。プーチンの策は露国民に十分支持されている。 (Полагают, что военная операция для российских войск скорее проходит успешно 70% граждан) (Putin Addresses Huge Pro-War Rally At Moscow Soccer Stadium)

プーチンは、ゼレンスキーが米欧日の議会で演説してロシア敵視を扇動するのを、自分の大戦略に沿った好ましいことと考えているだろう。ロシア側が直接もしくは間接的にゼレンスキーを動かして米欧日で演説させている可能性すらある。この場合、ゼレンスキーはロシアに言われたとおりに米欧でロシア敵視を煽るほど、戦争後もウクライナ大統領でいられる可能性が高くなる。ゼレンスキーは対露制裁に参加している諸国でのみ演説し、中立諸国を説得して反露に転じさせようとはしていない(演説を断られている)。ゼレンスキーは、対露制裁の参加諸国にもっと過激な対露制裁をやらせて自滅させようとしている。 (Zelensky attacks ‘hypocrites’ in address to Canada’s parliament)

米欧日の上層部には、ロシアとの石油ガス資源の関係が切れてしまうと自国経済が破綻するので避けたいと思っている勢力がかなりいる。ゼレンスキーの演説は、そうした米欧日の上層部の思惑を破壊し、米欧日が好戦的なロシア敵視のポピュリズムに流されてロシアとの関係を完全に切って経済的に自滅していく方に事態を押しやる。これまで米国のロシア敵視に表向き同調しつつ、日本の国益を重視してロシアとの関係を何とか親密に保ってきた安倍晋三らの自民党は窮地に立たされている。 (ドルはプーチンに潰されたことになる)

日本は今後、国内へのガス供給元として必要不可欠なサハリン2の天然ガス事業を放棄しかねない(今のところ放棄しないことになっているが)。日本がサハリン2を放棄したら、その分の利権は中国に取られてしまい、二度と日本に戻らない。日本人はこの先ずっとガス不足に苦しむことになる。世界の石油ガス鉱物の利権の多くは、すでに中露側に取られている。米欧日は、中露を敵視する限り、石油ガス鉱物が大幅に足りない状態が続く。ゼレンスキーは、米欧日を自滅させるためにロシア敵視の演説をして回っている。欧州人たちは、欧州人自身の暮らしを自滅に導き、核戦争も辞さずにロシアと戦争してほしいと欧米に求めているゼレンスキーに、ノーベル平和賞を与えようとしている。まさに1984的。すばらしい。 (European leaders want Zelensky nominated for Nobel Peace Prize)

ウクライナで妄想し負けていく米欧

2022年3月20日   田中 宇
米共和党系の軍事専門家ダグラス・マクレガー(Douglas Macgregor)が、ウクライナでロシア軍が作戦をゆっくり展開しているのは、ウクライナの市民や都市を破壊しないようにしつつ、露軍を攻撃してくる敵方の極右民兵団(ウクライナ内務省傘下のアゾフ大隊など。ネオナチ)だけを潰せるようにしているからだ、と指摘している。それなのに欧米のマスコミ権威筋は、「露軍がウクライナで苦戦し負けている」と勝手に間違った妄想を展開・喧伝し続け、「ロシアが負けているのだから米欧NATOがウクライナの領空を露軍から奪還して飛行禁止区域を設定できるはずだ」と勘違いしている、とマクレガーは言う。 (American military expert explains ‘slow’ Russian advance in Ukraine) (Macgregor: Washington Wants War To Continue As Long As Possible In Hopes To Overthrow Putin)

私が見るところマクレガーは正しい。NATO内で、米政府やNATO事務局は、マスコミの方が妄想で実は露軍が勝っていることを知っているので、「ウクライナに飛行禁止区域を設定するのは不可能だ。核戦争の世界大戦になってしまう」と言っている。だが、間違った妄想の方を軽信してしまっているバルト三国やポーランドなど東欧の政府議会、それから米欧全体のマスコミとその軽信者たちは「早く飛行禁止区域を作れ」と叫び続けている。もし今後、東欧のどこかの国が事態を甘く見誤って戦闘機をウクライナに入れようとして露軍に撃墜され、NATOの5条が発動されて米国がロシアと戦争する義務を負った場合、米国はNATO5条を無視して動かず、米国がこの不履行をやった時点でNATOの信用が崩壊する。 (NATO Unity Faltering as Calls Grow for a No-Fly Zone Over Ukraine)

マクレガーによると、プーチンは開戦時から露軍に対し、ウクライナで市民を殺したり市街を破壊することをできるだけ避けつつ任務を遂行せよと命じてきた。米欧のマスコミ側の人々は「マクレガーはロシアのウソのプロパガンダを軽信しているだけだ」と言っているが、実のところ、マスコミ側の人々の方が間違っている。ロシア人にとってウクライナ人は同じ民族に近い半同胞であり、ウクライナにはロシア系も多いので、ロシア軍ができるだけウクライナの市民や街区を破壊せずに任務を遂行したいの当然だ。 (Tell Me How Ukraine Ends)

2014年に米英が起こしたマイダン革命の政権転覆後、ウクライナは米諜報界が軍事訓練して育てたロシア敵視の極右民兵団に席巻され、彼らがウクライナのロシア系住民を殺して街区を破壊する内戦を開始し、ウクライナ系に対しても略奪などをやり続けてきた。極右はゼレンスキー側近などウクライナ政府の上層部にも入り込んできた。米諜報界は、育成した極右を通じてウクライナを事実上植民地支配してきた。ロシアは、ウクライナの極右を退治したかったが、米国はロシアよりはるかに強く、最近まで手出しできなかった。 (8-Year Secret CIA Training Program in Eastern Ukraine Helped Prepare for Russian Invasion)

最近、米国の覇権が急低下し、コモディティのインフレも激化して、米露が対決したらロシアが勝ちうる状況になったので、今回の戦争になった。米政府は露軍侵攻の前に米欧の大使館や諜報要員をすべてウクライナから撤退して支援を突然に打ち切り、ロシアに有利な状況を作ってやっていた(米国は隠れ多極主義的だ)。この流れから見えるものは、露軍のウクライナ侵攻の目的がロシア政府の公式発表の通り、ウクライナの非武装中立化(米英傀儡からの脱却)と非ナチ化(米英に操られた極右勢力の排除)であると考えるのが自然ということだ。ロシアやプーチンの主張は全部ウソだと言っているマスコミとその軽信者(今や日米欧の人々の大部分)の方が間違っている。私が見るところ、ウクライナは以前のような米英の傀儡国であり続けるより、今回の戦争でロシアの傀儡国に戻った方が安定して平和になる。 (Putin Addresses Huge Pro-War Rally At Moscow Soccer Stadium) (バイデンがプーチンをウクライナ侵攻に導いた)

マクレガーによると、露軍はすでに、あちこちにいるウクライナ側の軍勢(正規軍と極右民兵団。主に極右)のすべてを包囲し、補給路を断っている。極右は露軍に包囲された状態で、住民を「人間の盾」にして立てこもっている。この状態で露軍が極右を攻撃すると市民が死ぬので、露軍は極右を包囲したまま、ウクライナ政府と交渉して人道回廊を作って市民を包囲網の外に避難させ、その上で極右を投降させるか、潰そうとしている。だから、露軍は極右を包囲したまましばらく動きを止めている。米欧諸国がウクライナに携帯用地対空ミサイルのスティンガーなどを送る話になっているが、ウクライナの軍勢は、露軍に包囲され補給路を断たれているため、それらの兵器を受け取れない。ウクライナ空軍はすでに設備のほとんどを露軍に破壊された。米欧は、ウクライナ側が潰されかかっている戦況を変えられない。 (Kremlin Responds To US Claim Putin "Frustrated" Over Ukraine Operation, Says Military Was Told 'Avoid Storming Major Cities') (ウクライナ難民危機の誇張)

マリウポリの劇場を露軍が空爆したと米欧日のマスコミが喧伝しているが、これはたぶん意図的な誤報=プロパガンダだ。マリウポリの市役所はウクライナ側で、彼らが言ったウソをマスコミが意図的に鵜呑みにして大騒ぎしている。マリウポリの劇場は地下に防空壕がある。極右が劇場を占拠し、防空壕に避難した市民を人間の盾として使いつつ、極右は上階に兵器を置いて陣取り、露軍を攻撃していた。露軍はそれを知っていたのでマリウポリの劇場を攻撃していない。劇場を爆破したのは極右だ。その後、マリウポリの劇場から無傷の市民が多数救出されたが、その一方で死者の存在は報じられていない。負傷者1人だけ報道された。ウクライナ側と米欧マスコミはロシアを極悪に描くため、死者がいたらすぐ大々的に報じるはずだ。続報しだいだが、死者数が少ないか、誰も死んでいない可能性すらある。 (Ukraine backtracks on Mariupol theater claims) (Azov battalion militants blow up Mariupol theater building — Defense Ministry)

露軍機は、ウクライナ領空に入らず、ロシア領空内からウクライナを空爆している。ウクライナ極右のもとにスティンガーが届いたとしても、それで露軍機を撃墜できない。露軍機は日々の攻撃でウクライナの領空に入っていないので、ウクライナの領空が飛行禁止区域に指定されても、露軍はそれと関係なくウクライナを空爆し続けられる。飛行禁止区域の設定を守るため、東欧諸国などのNATO軍機がウクライナ上空に来て、それを露軍が攻撃するとNATOとロシアの戦争になる。しかしすでに述べたように、NATO加盟の東欧諸国がロシアと開戦しても、米国はNATOの義務を履行せず、参戦しない。NATOが崩壊して一番困るのは東欧諸国だ。だから東欧諸国もロシアと戦わない。もう誰もロシアと戦わないが、インチキな戦争報道だけはガンガン続く。コロナのときと同様、そのうちマスコミの巨大なウソに気づく人が増えていく。 (Graham introduces resolution urging Biden to help send jets to Ukraine) ("No Such Thing As No Fly Zone Lite": Pentagon Rejects Zelensky's 'Close The Sky' Request)

ウクライナ戦争でロシアが負けているという、米欧日のマスコミ権威筋がばらまく大間違いの妄想は、米欧日にとって不利な状況を今後いろいろ引き起こす。近いうちにロシアが負けて米欧に降参し、プーチン政権が転覆されて米英傀儡政権に戻るので、ロシアからの石油ガスの輸出が再開されるだろう、とか。これもトンデモな妄想だ。ロシアは勝った状態のまま、米欧の妄想をあえてそれほど打ち消さず、この状態を長引かせることで、米欧を主に経済面で窮乏させ、米国覇権を自滅させていきたい。プーチンはこれを意図的にやっている。現状が長引くほど、米欧日は窮乏する。マスコミはプーチンのうっかり傀儡になっている。これも隠れ多極主義者の意図のうちだろう。 (優勢なロシア、行き詰まる米欧、多極化する世界)

ウクライナ難民と称する人々がドイツやフランスにどんどん入ってきているが、仏マスコミによると、フランスに来ているウクライナ難民の3分の1はウクライナ人でなく、北アフリカや中東から来た難民のふりをしたアラブ人の出稼ぎ者たちだ。こうした偽装難民の多くは、何年も前からフランスなど西欧に住んでいるが自分の都合で来たので市民権を得られていないアラブ人で、どさくさ紛れに自分の地位を引き上げたい。さもありなんだ。さあ、みんなでウクライナ難民を助けるために献金しよう!!。カネを出さないやつはプーチンの傀儡とみなすぞ。マスクはもうしなくていいからね。 (30 Per Cent of ‘Ukrainian Refugees’ Are Actually From Other Countries) (White House Says It’s Running Out of Money for Covid After Congress Reroutes Cash to Ukraine)

今回の指摘を出したマクレガーはトランプの側近だった。トランプは彼を駐ドイツ大使にしようとしたが米議会に阻止されて失敗した。トランプは政権末期、マクレガーに国防総省の顧問をやらせていた。最近マクレガーは、共和党系のFOXテレビのタッカー・カールソンの番組によく出ている。民主党や軍産エスタブ系のマスコミがばらまいてきた新型コロナのインチキ報道のウソを暴いたカールソンは今、同じマスコミ勢力がばらまいているウクライナ戦争のインチキ報道のウソを暴いている。マクレガーは、それに貢献している。マクレガーは以前から、親露的だと非難されてマスコミや軍産民主党からボロクソに誹謗中傷されてきたが、誹謗中傷してきた側の方がウソつきだった感じだ。ロシアゲートのウソや、ハンター・バイデンの不正行為をめぐる話からもそれが感じられるが、それらはあらためて書く。 (Why a former Trump appointee’s pro-Russia rhetoric matters) (Greenwald: Russian Invasion Has Elevated "Treason"-Mania To Never-Before-Seen-Heights)

優勢になるロシア

2022年3月16日   田中 宇

ウクライナのゼレンスキー大統領が3月15日、NATO加盟をあきらめざるを得ないと表明した。ウクライナはNATOに加盟したかったが、ウクライナを自国の影響圏に入れておきたいプーチンのロシアが激しく反対して2月24日から軍事侵攻してウクライナの制空権を奪い、米国などNATO諸国がウクライナを軍事支援できないようにした。バイデンの米国は、米軍やNATO軍がウクライナに派兵すると米露核戦争になるのでやらないと表明し、ウクライナの制空権をロシアに奪われているので、米NATOはウクライナへの武器支援も表明だけで実施できなかった。ゼレンスキーは「今のNATOはとても弱い。兵力を送ってくれると思っていたのに何もしてくれなかった」とNATOを非難している。 (Zelensky Says Ukraine Must Accept Fact That It Won't Join NATO) (NATO ‘never looked weaker’ – Zelensky)

米国は派兵や武器支援の代わりに、ロシアに対して石油ガス輸出阻止などの強烈な経済制裁を発動したが、これは逆に欧州諸国をエネルギー不足に追いやってしまい、結局ドイツなどはエネルギーの対露依存をやめられなかった。ドイツの首相は10日ほど前、ゼレンスキーに「ウクライナはNATO加盟できない。貴殿はロシアに譲歩するしかない」と申し渡している。ロシアは欧米に輸出しない分を中国に買ってもらえるし金融支援も受けられて大して困らず、対露制裁は欧米側を自滅させるだけの失策になっている。 (Ukraine’s NATO Membership 'Will Not Take Place': German Chancellor) (ロシアは意外と負けてない)

その間にも、ロシアはゼレンスキーと交渉を続け、降参して政権内からロシア敵視勢力(米傀儡の極右・ネオナチ)を追放すれば大統領職にとどめてやるなどと持ちかけ続け、米欧からの支援を期待できなくなったゼレンスキーはロシアの要求を受け入れ始めている。この流れの中で、NATO加盟をあきらめるという今回のゼレンスキーの発言が出てきた。ロシアは、ウクライナの非武装中立化と非ナチ化(米傀儡の追放)という露軍侵攻の目的を達成しつつある。ゼレンスキーの側近は、早ければ1-2周間、遅くても5月までにロシアと和解すると言っている。 (Zelensky Meets with Prime Ministers of Poland, Czech Republic & Slovenia in Kie)

ゼレンスキーから弱体化したと非難されたNATOの事務総長はあわてて「兵器供給や軍事演習など、同盟諸国に対する強化策を本格的にやります」と宣言したが、口だけっぽい感じが漂っている。 (NATO chief announces major ‘strengthening’ of the alliance)

3月15日には、ポーランド、チェコ、スロベニアの首相たちが列車でキエフを訪問し、ゼレンスキーと会った(ウクライナ上空は露軍が外国からの飛行機の飛来を禁じている)。ポーランドなどはロシア敵視の国で、ロシアに譲歩して傀儡になろうとしているゼレンスキーの動きを何とか止めるためにやってきたようだ。ポーランド首相は、人道支援物資をウクライナ市民に配布する目的でNATOが武装した平和維持部隊をウクライナに陸路で送り込むことをNATOに提案しようと思うがどうかとゼレンスキーに持ちかけた。それが実現したら、ウクライナ入国後に露軍に空爆され、米露世界大戦になってしまう(だから実現する可能性はゼロ)。ロシアとの和解に向かっているゼレンスキーは返答を避けた。開戦直後なら歓迎されたかもしれないが、話を出すのが(意図的に)遅すぎる。 (Polish, Czech & Slovenian Leaders Head To Kiev By Train In Show Of Support To Zelensky) (Polish minister wants armed NATO ‘peace mission’ in Ukraine)

ウクライナがロシアの傀儡国に戻ると、ロシアは、今回の戦争でロシアを敵視しまくったポーランドやエストニアなどの東欧諸国に対して各種の仕返しの意地悪をやりそうだ。だからポーランドはゼレンスキーをロシアの傀儡に転向させたくないし、断末魔的に、NATOに地上軍をウクライナ派兵させるという危険(というより非現実的)な策を言っている。エストニア議会は3月14日、NATO諸国の議会として初めて、NATOがウクライナ上空を飛行禁止区域に設定して露軍から制空権を奪う試みをやるべきだと決議した。これまた断末魔的な非現実策である。 (First NATO Country Calls For No-fly Zone In Ukraine)

3月15日にはロシア政府が、米国のバイデン大統領と側近たち、息子のハンター・バイデン、2016年の大統領候補で対立候補のトランプにロシアのスパイの濡れ衣をかけるロシア敵視の策略(ロシアゲート)をやって勝とうとして失敗したヒラリー・クリントンなどに、ロシア入国禁止などの制裁を科した。これは開戦翌日の2月25日に米国がプーチンらロシアの要人を制裁したことの報復だ。タイミング的に、ゼレンスキーがNATO加盟をあきらめると表明し、ロシアが米国に対してぐんと優勢になった直後に報復措置を出したことは興味深い。ハンター・バイデンは、父親のバイデンがオバマ政権の副大統領だった時に、父親の名代としてウクライナ側から賄賂をもらっていた疑いで有名だ。プーチンは、米国でヒラリーや民主党本部によるロシアゲートの不正が捜査されて暴かれつつあることを把握した上で要人制裁リストを決めている。 (Russia Imposes Sanctions Against Joe Biden & Hillary Clinton, Other Top US Officials)

米国では金融バブルの膨張を維持する唯一最大の策だった米連銀のQE(ドルを過剰発行して債券などを買い支える策)が3月9日に終わり、ちょうど5月ぐらいまでに金融崩壊が起きるかもしれない状態になっている。このタイミングは、ゼレンスキーの側近が言うところの、ウクライナがロシアと和解しそうな時期(遅くとも5月)と一致している。金融は水物なので時期がずれるかもしれないが、ウクライナとロシアの和解も時期がずれるかもしれない。 (ロシアは中国と結束して延命し、米欧はQE終了で金融破綻) (ドルはプーチンに潰されたことになる)

米国の金融システムが崩壊すると、世界は、米国系の債券金融システムが支配していたニクソンショック以来の「ブレトンウッズ2体制」から、中露イランサウジなど非米化した諸国が持つ石油ガス鉱物穀物などコモディティの利権が支配的になる多極型の「ブレトンウッズ3体制」に転換していく。これは元米連銀(現クレディスイス)のアナリストであるゾルタン・ポズサーが言っていることだ。プーチンのウクライナ侵攻は、米欧がロシアへの経済制裁によって自滅的にコモディティの利権を手放すことを引き起こし、これからの転換の引き金を引いた。プーチンが、QEの終了に合わせるタイミングでウクライナに侵攻したことも非常に重要だ。 (Credit Suisse Strategist Says We're Witnessing Birth of a New World Monetary Order) (US commodity crisis to give rise to new world order, says Credit Suisse’s Zoltan Pozsar)

米欧日のマスコミ権威筋は今回、ロシアを極端に敵視する妄想にからめとられ、米欧日がロシアに持っているコモディティのすべての利権を放棄すべきだとヒステリックに叫び続けている。米欧日が放棄したコモディティの利権は中国側に買い取られていく。これからのブレトンウッズ3の体制下で米国は覇権を失い、米欧日が貧しい国になり、中露イランは豊かな国になっていく。米欧日がコモディティ利権を自滅的に手放して新体制を実現するために、マスコミ権威筋の馬鹿げたロシア敵視の妄想が必要になっている。 (優勢なロシア、行き詰まる米欧、多極化する世界) (金融大崩壊への道)

この手の状況は初めてでない。マスコミ権威筋はコロナ危機に際しても、コロナの脅威を誇張・扇動して人々を恐怖に陥れて冷静な判断をできなくして、都市閉鎖や休業要請やPCR強制など、コロナ対策になっておらず無意味に米欧日の経済を自滅させるだけの超愚策を延々とやらせた。その結果、消費が中心の米欧日の経済が大幅にへこみ、QEのやりすぎでドルに対する負担が急増し、米国覇権の終焉を早めた。中国はいまだにときどき強烈な都市閉鎖をやっているが、これは習近平が自分の権力を強化するために喜んで都市閉鎖やゼロコロナ策をやっているのだと考えられる。 (コロナ帝国の頓珍漢な支配が強まり自滅する欧米) (ロシアを「コロナ方式」で稚拙に敵視して強化する米政府)

米欧日のマスコミ権威筋が、コロナと並んで妄想を扇動して経済を自滅させる策をやってきたもう一つの分野は地球温暖化対策だ。化石燃料の利用は気候変動にほとんど関係なく、温暖化人為説は無根拠なのに、マスコミ権威筋は化石燃料利用のせいで劇的な温暖化が起きるという妄想を人々に信じさせ、それを妄想だと言う者たちを無力化し、欧米諸国が石油ガスの利権を世界的に放棄し、原発を止めてしまう自滅策をやるように仕向けた。その結果、石油ガスの利権は中国など非米諸国の側に転がり込み、今回のウクライナ戦争を機に、石油ガスの利権を非米側に渡して原発も止めてしまった欧米諸国が決定的な負け組になっていく覇権転換の流れを作った。 (欧米の自滅と多極化を招く温暖化対策) (英米覇権の一部である科学の権威をコロナや温暖化で自滅させる)

マスコミ権威筋が妄想を扇動して米欧日の諸国に自滅策を強要させてきたのは、偶然の産物でなく意図的なものだ。米欧日のマスコミ権威筋の上位にいる米諜報界(深奥国家)が、米国覇権の崩壊と多極化を引き起こすためにマスコミ権威筋を動かしてきたと考えられる。今回のウクライナ戦争は、その流れの総仕上げになっている。 (エネルギーが覇権を多極化する)

その他、今回の記事で書きたいこととして、昨日の記事に書いたウクライナの避難民の関連で追加の話がある。ロシア政府の防衛省が、ウクライナ人でロシアへの避難を希望する人が260万人いると発表している。この260万人は、ウクライナからポーランドやルーマニアなど西方の欧州諸国に越境避難したとされる公式数250万人の難民とは別の人々である。 (More than 2 million people asked Russia for evacuation - Defense Ministry) (ウクライナ難民危機の誇張)

ウクライナ人のうち親露的な人々(ロシア語を母語とするロシア系住民と、母語はウクライナ語だが親露的でロシア語も話せるウクライナ系親露住民の合計)は、東部のドンバス2州(約400万人)や北東部の元ロシア領を中心に全人口(4000万人)の4割ほど(1600万人ぐらい?)と思われるが、彼らはマイダン革命後の内戦下で、ウクライナ軍部に浸透したロシア敵視の極右から嫌がらせや略奪発砲などをされるようになり、ロシアへの移住を希望する人が増えた。ロシア政府は数年前から、ドンバス2州で70万人の希望者にロシア旅券を発行した。2州の自動車のナンバープレートはロシア国内をそのまま走れる。 (ロシアは正義のためにウクライナに侵攻するかも)

今回、ロシア軍が侵攻後、ウクライナの2000の市町村でロシアへの避難を希望する人を募ったところ、3月5-7日の3日間だけで200万人が申請したとタス通信が報じている。その後、3月13日には264万人に増えた。戦争中のウクライナで侵略軍である露軍が3日間に200万人の申請を受け付けることなどできるのかと疑われるが、親露派が行政府をおさえている市町村もけっこうありそうだし、侵攻のずっと前から露政府がウクライナ親露派の越境希望の申請を受け付けていた可能性もあるので、260万人の登録はあり得ないことでない。この260万人は難民でなくロシア旅券を持ち得る人々だ。ポーランドなど東欧の反露諸国の政府が出している難民数は誇張されている可能性が高い。ロシア政府が出している避難希望者数も、東欧側の難民数と同水準にして「ロシアも頑張っているんだ」と言いたい戦争プロパガンダかもしれない(越境者でなく希望者なので適当な数字を出しやすい)。だが、そうでなくて実際の希望者数かもしれない。 (Over 2.6 million people asked Russia to evacuate them from Ukraine - ministry) (В Минобороны России заявили о 2,6 миллиона обращений украинцев об эвакуации в РФ)

ウクライナ難民危機の誇張

2022年3月15日   田中 宇
ウクライナ戦争で250万人のウクライナ市民が難民としてポーランドなど近隣諸国に流入していると喧伝されている。私は、250万という人数などウクライナ難民危機の全体像が、かなり誇張されているのでないかと思っている。250万人のうち170万人がポーランドに流入したことになっているが、ポーランドはロシア敵視の国だ。露軍侵攻で発生した難民数が多いほどロシアに汚名を着せられて好都合だ。スロバキア、ルーマニアなど、他の難民流入諸国もロシアと敵対している。敵の極悪さを誇張するプロパガンダは、戦争の当然の特徴の一つだ。ポーランドなどが難民数を誇張するのは当然だ。誇張されていないと思う方が間抜けだ。国連は各国が出してきた数字を合計しているだけだ。 (Situation Ukraine Refugee Situation)

開戦前からの1か月ほどの間に、ポーランドに170万人の難民が流入したとなると、大きな難民キャンプをいくつか作らねばならないが、そういったものは作られていない。代わりに難民たちは、ポーランド人の家に民泊したり、町の体育館を開放してもらっているそうだ。「ロシアの極悪と対照的なポーランド人の隣人愛」を、米欧マスコミが称賛している。だが、民泊や体育館だけでは170万人のごく一部しか収容できない。実際は、民泊や体育館で事足りるぐらいの難民数なのでないか。ポーランドの対ウクライナ国境の町プシェミシルは人口が6万人だ。 (Locals in Poland are taking Ukrainian refugees into their homes)

ウクライナから難民の多くは鉄道で近隣諸国に越境していると報じられている。時刻表によると、ウクライナの首都キエフからポーランド国境近くのリヴィウまでは毎日20-30本の列車がある。これらのすべてに難民が満員に乗って逃げているとして、1日の総数は2-3万人だ。1か月で170万人になるには少なすぎる。後述するように、実際の列車は満員でもない。鉄道の話でいうと、ポーランド政府はドイツ行きの列車にウクライナ難民を乗せて送り出しており、ドイツ政府がポーランド政府に、やめてくれと要請した。ドイツのマスコミによると毎日1.5万人の難民がポーランドから押し寄せているという。この人数も、ドイツとポーランドの間の鉄道の旅客容量の多くを占めていると思われ、誇張が感じられる。 (EU state asks Poland to halt Ukrainian refugee trains – minister) (Timetables for the trains with already started ticket sale)

少し前、ウクライナ政府は露軍侵攻で2千人以上の市民が殺されたと発表したが、国連が発表した死者数はその8分の1の249人だった。ウクライナ政府は被害を8倍にするプロパガンダを発していた。ポーランドなどウクライナ周辺のロシア敵視諸国が発表している難民総数も8倍の誇張だとすると、難民総数は170万人でなく22万人になる。雑駁だが。 (ロシアは意外と負けてない 2)

ロシアはウクライナで難民の発生をできるだけ抑える策をとっており、それはおおむね成功している。そのため、ウクライナの難民危機の話の方がロシア敵視の誇張だと思える。ロシアは、ウクライナを親露国(傀儡国家)に戻したい。2014年に米国がマイダン革命を起こしてウクライナを政権転覆してロシア敵視・米英傀儡の国に変えるまで、ウクライナはおおむね親露的だった。ロシアは開戦時にウクライナの空軍力をほぼ全滅させ、制空権を握っている。制空権を奪われているので米欧はウクライナに軍事支援できない。ウクライナ側は戦闘手段の多くを失ったので露軍と戦えない(極右の民兵団が住民を人間の盾にして露軍を攻撃してくるだけ)。ゼレンスキー大統領(米傀儡)のウクライナ政府はロシアに対して降参するしかないが、ゼレンスキーの親分である米国は降参を許さず、事態が膠着している。 (Israeli PM advises Zelensky to accept Putin’s demands)

米欧は対露制裁として、ロシアから石油ガス穀物鉱物などを輸入するのをやめることにした。事態が膠着したままあと1-2か月経つと、米欧でエネルギー危機や穀物不足がひどくなり、米欧経済が立ち行かなくなる。英国は4月から軽油は配給制にせざるを得ないそうだ。ドイツはロシアからの天然ガス輸入をやめられないと表明しているが、ドイツがロシアと縁を切らないと米国から敵視されNATOの内部崩壊になる。事態が膠着したままだと、困るのはロシアよりも米欧とくに欧州諸国だ。ウクライナでは現在、極右の人間の盾作戦以外の戦闘は起きていない。それも露軍に封じ込められつつある。あとはエネルギーや穀物の不足に困窮した米欧が、ゼレンスキーにロシアへの降参を許すまで、露軍がウクライナの領空を封鎖し続けるだけだ。 (Experts Warning That Fuel May Soon Be RATIONED As Early As Next Month Due To Shortages In UK) (Stoltenberg Says Ukraine's NATO Membership Was Never "Imminent" Or "On The Agenda")

ロシアはゼレンスキー大統領を留任させたまま、ウクライナを反露から親露(露傀儡)に転換させて、ウクライナ戦争を終わりにしたい。ロシアは、ウクライナをできるだけ手付かずのまま親露に転換させたいので、ウクライナの市民が死んだり難民になるのを望んでいない。ロシアはウクライナの諸都市を破壊して廃墟にしたいんだという見方は大間違いである。だが今後、米欧が不利になるほど、米欧日の報道は現実からの乖離がひどくなる。 (Western Media "Are Either Delusional Or Lying Through Their Teeth")

ウクライナで現在、露軍を攻撃しているのは正規軍でなく、ウクライナ政府内務省(諜報機関)配下の極右民兵団だけだ。ウクライナ内務省は米諜報界の傀儡であり、極右民兵団は2014年のマイダン革命以後に強化された、ロシアとロシア系住民を敵視するための米傀儡組織だ。極右民兵団は、ウクライナ諸都市の住宅街に兵器を持ち込み、住民を「人間の盾」にする国際法違反・人道犯罪の戦法でロシア軍を攻撃してくる。また、ウクライナ東部や北部の対露国境近くの諸都市にはロシア系住民が多く住み、極右民兵団はロシア系住民を狙って攻撃してくる。露軍は、これらの極右からの攻撃に対処せねばならない。 (Shoigu Tells UN Chief Ukrainian Neo-Nazis Use Civilians as Human Shields)

露軍はウクライナ政府と交渉し、極右民兵団が入り込んで「人間の盾」にされている住宅街の住民を住宅街の外に強制的に避難させるための「人道回廊」を作っている。ウクライナ政府が住民を避難させた後、さらに極右が攻撃してきた場合は露軍が反撃する。市民は死なないが街区は破壊される。しかし、ウクライナ内務省傘下の極右が撃ってきたのだから露軍としては正当防衛だ。この手の展開の一つが、マリウポリで露軍が破壊した無人の(極右だけが立てこもっていた)小児科病院だった。この件で非難されるべきはロシアでなく極右民兵団を擁するウクライナ政府だ。マリウポリは、すでにウクライナから分離独立したドネツク州にあるが、ウクライナ側が掌握してきた。 (Putin Calls on Macron, Scholz to Pressure Kiev to Stop Crimes by Nationalist Battalions)

米欧日の報道では、露軍がウクライナ諸都市に作った人道回廊を通って強制的に避難民にさせられたウクライナ市民が、ポーランドなどに難民として逃げているかのような図式が描かれている。だが、人道回廊が設けられる諸都市の合計で避難民はおそらく10万人以下だ。キエフ郊外のホストメル国際空港を占拠した露軍を目がけて極右が攻撃してくるイルピン以外の人道回廊の指定地は、ウクライナの東部と北部にあり、東部や北部に多く住むロシア系住民が難民として移動するなら、行き先はポーランドでなくロシアだ。ウクライナのロシア系市民は、ロシア国籍をもらえるので難民にならない。人道回廊の指定地以外のウクライナでは激しい戦闘が起きていない。首都キエフで戦闘になっているのは空港近くのイルピンだけだ。後述する動画も示しているように、他の市街地は無傷だ。ウクライナの極右民兵が人道犯罪の人間の盾戦法をとるので人道回廊が必要になっていることを、米欧日のマスコミは報じない。マスコミこそ人道犯罪組織だ。 (Ukraine hopes to open 9 humanitarian corridors, get aid to besieged Mariupol) (Escobar: Cutting Through the Fog Masking 'A New Page In The Art Of War')

ウクライナ戦争の余波として欧州がこうむる人的な災難は、人数が誇張されている難民の流入よりも、ウクライナを加勢する名目でこれからシリア北部などから連れてこられるISアルカイダの民兵団(テロリスト集団)の方だ。シリア北部には、シリア内戦でシリア政府軍に負け、トルコ軍に守られて避難生活をしているISアルカイダの勢力が1万人ぐらいいる。トルコ当局にとってお荷物なので厄介払いしたい。ウクライナに義勇軍として行かせて厄介払いできるとトルコにとって好都合だ。もともとISカイダを育てたのは米国であり、トルコは米国に頼まれて動いてきた。これから米トルコの取り計らいでISカイダの軍団がポーランドに送り込まれてくるかもしれない。 (Kiev's Intel Service Seeking to Involve Syrian Militants in Ukraine Conflict) (シリア内戦終結でISアルカイダの捨て場に困る)

しかし、ロシア軍はISカイダがウクライナに入ってくるのを阻止する。ISカイダより先に欧州人の義勇兵たちがポーランド国境近くのウクライナ側に入って訓練施設を作ったが、ロシア軍が3月13日にこの施設を空爆して35人の義勇兵らを殺した。今後ISカイダがウクライナに入っても、露軍に空爆されて殺される。ISカイダはウクライナに入れず、ポーランドにとどまることになる。ウクライナ政府は義勇兵たちに国籍を付与すると言っており、ポーランドに来たISカイダはウクライナの旅券をもらう。彼らはウクライナ人として、一般市民の難民に混じってポーランドから独仏など他のEU諸国に行ける。これから数百人、数千人のISカイダがポーランドに来ると、EUは大量のテロリストを自由行動させることになる。911直後の、欧州各地で爆弾テロが発生した事態が繰り返される。欧州は、ロシアからの石油ガス穀物の輸入が止まってエネルギーや食糧が危機になるだけでなく、ISカイダのテロリストたちの来訪も受け、ますます無茶苦茶になっていく。これは欧州の自業自得である。 (Russian Missiles Strike Ukrainian Military Training Base Near Polish Border) (Foreign fighters eligible for Ukrainian citizenship: Interior Ministry)

今回の記事はもともと、英国のブロガーであるレズ・ルーサー(Lez Luthor)が3月4日から9日まで開戦後のウクライナに入って旅行してみたところ、難民が大量に移動している感じがなく、キエフ市街地では意外に平穏な市民生活が続けていることを確認した、という動画集の旅行記「ウクライナへの道」(The Road to Ukraine)について紹介し、自分なりの解説を試みるために書き始めたものだ。Lez Luthorという名前は、スーパーマンの宿敵Lex Luthorのxをzに替えた筆名のようだ。彼はコロナワクチン非接種だが、問題なく英国からポーランドに飛行機で行って24時間の通過ビザをもらい、ウクライナにもふつうに入国できた。 (Illusion Warfare Report: The Road to Ukraine)

ルーサーは3月3日、ポーランドの国境の町プシェミシルからウクライナのリヴィウに鉄道で入国したが、プシェミシルとリヴィウの両方の駅で、何社かのテレビ局のクルーたちが、混雑した駅舎に難民が押し寄せているかのような光景を撮影・実況している光景に出くわした。実のところ、駅全体は大して混雑しておらず、駅前や街頭も閑散としており、マスコミが難民危機が起きているかのような演出をして事実と異なるニュース映像を作っていることをルーサーは発見した。ボランティアが人々に食料などを配っていたが、そのホールに入るドアを一箇所だけにして人々が殺到している感じを醸成してテレビ局のカメラが撮影し、難民危機が起きているかのような映像を作っていた。 (同じもの)

ウクライナの鉄道は通常運行しており、切符も簡単にネット予約して買えた。ウクライナからポーランドに向けて大量の人々が移動している事実はなかった。キエフでは自家用車が通常どおりに走り、スーパーマーケットには商品がたくさんあった。ただ銀行のATMはすべて止まっていた。クレジットカードは使えた。長距離の鉄道は自由に乗れたが、キエフの地下鉄は駅に当局の保安要員がいて乗る人の身分証明書を確認していた。ルーサーは逮捕されることを恐れ、地下鉄に乗れなかった。人道回廊があるキエフ郊外のイルピンに行こうとしたが、タクシーが警戒して外国人を乗せてくれず、地下鉄もダメなので行けなかった。キエフでは一度戦車の通行を見たのと、空襲警報を一度聞いたが、それだけで、空爆や戦闘機の上空飛行などは全くなかった(露軍は迎撃を避けるためロシア領内からウクライナを空爆している)。 (US Official Says Many Russian Warplanes are Firing Missiles into Ukraine from Inside Russian Airspace)

ルーサーはスマホで町などの光景を隠し撮りした動画をいくつも載せている。これらは本物なのか?。違う場所、違う日にちの撮影でないのか。それを考察するために今回の記事を書いてみた。そして、すでに書いたように、ルーサーの動画と関係ない全体像から考えて、ウクライナの難民危機は誇張されている。マスコミは、意図的に誇張・歪曲した報道を続けている。だからマスコミ報道でなく、ルーサーの動画の方が本物である可能性が高い。コロナワクチン接種拒否者を信用できるのか、などといまだに思う人がいるかもしれない。しかし、政府の言いなりでワクチンを何度も接種している人の方がマスコミ権威筋のプロパガンダを鵜呑みにしているわけで、話が逆である。

優勢なロシア、行き詰まる米欧、多極化する世界

2022年3月9日   田中 宇
国連事務局が職員あてのメールで、ウクライナの事態を「戦争」とか「侵攻」と呼ぶことを禁止し、公平性を保つために「紛争」とか「軍事攻撃」と呼ぶよう求めていることが3月8日に報じられた。メールは同時に、国連職員がインターネットでの書き込みで、ウクライナを支持する意味でウクライナ国旗の絵をつけるのをやめるよう要請している。国連はロシアを非難せず、中立の姿勢をとることにした。 (UN BANS staff from referring to Ukraine as a 'war' or 'invasion' in a bid to avoid angering Russia) (UN refrains from calling Ukraine conflict ‘war’ or ‘invasion’)

今回のウクライナの事態をめぐっては、米欧日(米国側)が「戦争・侵攻」という言葉を多用してロシアを非難・敵視している半面、中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカといったBRICS諸国や、中露と親しい非米諸国は、戦争や侵攻という言葉を使うことを否定し、ロシアへの非難や敵視も拒否し、中立な姿勢をとっている。この図式に当てはめると、国連は、米国側でなくBRICS非米側の傘下に入ったことになる。今回、国連を主導する5大国(安保理常任理事国、P5)のうち米英仏は米国側で、中露は非米側であるが、国連自身は非米側に入った。国連では、米国より中露の方が強いことが示されている。3月1日に国連人権理事会でロシア外相のビデオ演説が始まると100人ほどの各国代表が抗議の退席をした事件もあったが、国連の流れはそちらの方向でない。 (About 100 UN Diplomats Walk Out Of Address By Russia's Lavrov)

(私から見ると、露軍とウクライナ軍・民兵団の間で戦闘が起きているのでこれは「戦争」だと思うし、露軍がウクライナに越境して進軍したのだから「侵攻」だと思う。戦争や侵攻という言葉は中立的な意味で使える。私は2014年以来のウクライナの事態に関してロシアより米国の方がはるかに悪く、米英が加害者で、ロシアとウクライナは被害者だと考えているが、それと別の話として、今後もウクライナの事態に対して戦争、侵攻という言葉を使うのをやめない) (ロシアは正義のためにウクライナに侵攻するかも)

国連がウクライナの事態を戦争・侵攻と呼ぶのをやめたのとほぼ同時に、習近平の中国も、戦争・侵攻という言葉を使わないことにしたと発表し、ロシアを制裁・敵視することにも反対を表明した。国連がウクライナを戦争と呼ばなくなったのは中国の意向が大きい感じだ。ここ数年、中国は国連での影響力が飛躍的に増大し、コロナになってからは国連が中国の傀儡機関になった観すらある。中国はBRICSや非米諸国の盟主でもある。中国側が世界を席巻し、米国側が孤立していく感じが増している。 (Xi Tells Macron & Scholz China Opposes Russia Sanctions, Warns Crisis "Spinning Out Of Control")

サウジアラビアが主導するアラブ連盟も2月28日に、ロシアを非難することを避けつつ「ウクライナ問題は話し合いで解決すべき」とする中立宣言の決議を出している。アラブ連盟は少し前まで、サウジやUAEやエジプトやヨルダンなど米傀儡諸国の集合体だったが、いまや対米従属をやめて非米諸国の側に転向している。サウジやUAEなどアラブ連盟には産油国がいくつもあるが、それらの石油利権は今や米国よりも中国に近い存在になっている。サウジのMbS皇太子は、バイデンからの電話に出ず、代わりにプーチンと電話している。 (Saudis, UAE Refuse To Take Biden's Calls To Discuss Ukraine Situation, Talk To Putin Instead) (Saudi Crown Prince Gives Biden The Cold Shoulder: "I Do Not Care" What He Thinks)

そんな状況なのにバイデン米大統領は、ロシアから石油ガスを輸入しない対露制裁をやる分の石油輸入の穴埋めとして、サウジからの輸入を増やしたいと考え、春にサウジを訪問することを検討し始めた。以前の米国は電話1本でサウジから石油をいくらでも買えたのに、今では米大統領がサウジを訪問して媚びないと売ってもらえない。これまで米国はさんざんサウジに意地悪してきたので、サウジは露中の側に転向した。今ごろ間抜けぶりをさらして何やってんだ、もっと戦略的に動けよ、という感じだ。米国は、かなり前から覇権国として失格だ。それなのに同盟諸国がぶら下がり続けたので、米国はますますダメになった。 (White House Mulls Biden Visit To Saudi Arabia To Plea For More Oil)

米国はロシアだけでなく中国も猛烈に敵視しているが、中国から見ると、こうした米国(欧日)の戦略は「腹立たしい」というよりも「間抜けだなあ。馬鹿じゃないか」という感じだ。習近平は、米欧が今のように強烈にロシアを経済制裁し続けると、ロシアでなく世界(主に米国側)の金融システムやエネルギー体制、経済そのものが破綻するぞと警告している。中国はロシアと経済関係を続けるので、欧米が買うはずだったロシアの石油は中国が買う。ロシアはこの日に備え、ウラルの石油を西(欧州)にも東(中国)にも送れるようになっており、バルブを開け閉めするだけだ。ロシアは開戦前の2月に、手持ちの中国国債を中国政府に売る形で戦費を得ている。ロシアは自国の石油ガス鉱物を担保に中国から軍資金を借りている。今後も、中国に売ったり借りたりするかたちでロシアは資金を得られる。工業製品なども中国から調達し続けられる。ロシアは、欧米から経済制裁されても大して困らず、欧米に石油ガスや鉱物資源を売らない報復的な逆制裁をやっている。 ( Xi Tells Macron & Scholz China Opposes Russia Sanctions, Warns Crisis "Spinning Out Of Control")

10年以上前から世界の石油ガス利権は、米欧側から中露側に移転する傾向が続いてきた。米欧側は、地球温暖化の妄想に取り憑かれ、米国のシェール革命(実はコスト高)もあり、石油ガス利権をどんどん放棄してきた。今やサウジもイランもイラクもカタール(ガス大国)も非米側だ。アフリカの石油利権も中国が買い占めた。米国側はイラクを占領したのに石油利権をとらず、中国に持っていかれた。全く馬鹿だ。米欧側は石油ガス利権を放棄して中露側に与えてしまった挙げ句、今回の対露制裁をやり出した。実は最初から米欧側が負けている。おそらく今後ずっと、米欧日が買える石油ガスの値段は下がらない。米欧日の生活水準は下がっていく。中国は経済大国であり続ける。すでに勝負はついている。 (反米諸国に移る石油利権) (歪曲が軽信され続ける地球温暖化人為説)

もし米欧が今回のような決定的なロシア外し・対露制裁をやらなかったら、中国はそれほどロシア寄りにならなかっただろう。しかし米欧は決定的にロシアを外した。中国は、外されたロシアを丸ごと受け取る以外に選択肢がない。中国がプーチンを助けなければ、プーチンは弱体化して政権転覆され、ロシアはプーチン以前のような米英傀儡に乗っ取られた国になる。中央アジア諸国も米国側に奪われ、地政学的に中国自身が弱体化させられてしまう。だから中国がプーチンを見捨てることはない。ロシアは中国の10分の1しか人口がいない。中国がロシアを経済的に助けるのは簡単だ。2-3年ぐらいなら、中国は余裕でロシアの戦争を支援できる。ロシアは見返りに石油ガス利権を中国にくれる。中国は、米欧に外されたロシアを喜んで丸ごと受け取る。そうすれば米欧は石油ガスを買う先がなくなり自滅していく。中国は好きなように多極型世界を運営していける(中国はコスト高な世界覇権など要らない。多極型を好む)。中国にとってこんなおいしい話はない。 (中露の非ドル化) (中露に米国覇権を引き倒させるトランプ)

中国に助けられて勝算があるので、プーチンは今回の戦争でとても強気だ。米欧から経済制裁されても態度を軟化せず、ウクライナが非武装の中立国(米英の傀儡に戻らないようロシアの監視下にある国)になるまで戦争(特殊作戦)を続けると言っている。プーチンは、仲裁役をかって出たイスラエルのベネット首相が驚くほどの不動の強気だ。マスコミは「プーチンの誤算」みたいな記事を出しているが、誤算したのは米欧の方だ。ロシア国内でのプーチンの人気は下がらず、むしろ上がっているようだ。ロシア政府が3月11日に自国と世界のインターネットの間に中国製のファイアーウォールを挟み込むという話もある。ビザやマスターカードが撤退し、ロシアのクレジットカードは中国の銀聯になった。ロシアは「中国化」して生き延びる。 (Putin Signs Countermeasure Decree Limiting Russian Exports After Biden's Russian Oil Import Ban) (Putin mulls mass mobilization to push his Ukraine objectives. Oil hits $139)

ロシア政府は「欧州がロシアを制裁し続けるなら、ロシアはドイツやフランスに天然ガスを送っているノルドストリーム1のパイプラインを止めるぞ」と言い出している(2は不稼働になったが、1は10年ぐらい稼働している)。ドイツのエネルギー源の半分近くがロシアのガスだ。ノルドストリーム1を止められたら、ドイツは経済的に殺されてしまう。フランスも同様だ。開戦直後はロシアに対して強硬だった独仏が、ここにきて急に対露和解的になっている。死にたくないから融和的になるしかない。ドイツは「ロシアからの石油ガス輸入がないとやっていけないので、わが国はロシアを制裁しません」と宣言した。ドイツ首相はウクライナ側に「貴国はNATOに入れません」と宣告した。フランスのマクロン大統領は「ロシアの人々の尊厳は守られるべきだ」と言って対露和解の姿勢を強めている。習近平は、独仏に対して一緒に和解交渉を仲介しようと誘ったと言っており、中独仏が(米国抜きで)ロシアとウクライナの交渉を仲裁しているようだ。 (French President Calls for Respecting Russia, Its People) (Russia "Weaponizes Energy", Warns It Could Cut Off European Gas Supplies Via Nord Stream 1)

中独仏は、ウクライナのゼレンスキー大統領に譲歩しろと加圧しているようでもある。ゼレンスキーは3月8日、NATO加盟をあきらめ、クリミアのロシア帰属を認め、ドンバスの分離独立を認める方向でロシアと話し合っても良いと言い出している感じだ。ロシア側はそれらの3点だけでなく、ウクライナの権力構造を、大統領が権力を握っていた従来の構図から、大統領はお飾りで首相が権力を握る構図に転換し、ゼレンスキーはお飾りの大統領として残り、新たに強権を持つ首相にロシアと親しい政治家を就ける案を飲めとゼレンスキーに要求しているらしい。ゼレンスキーは、失権するが最低限の延命はできる。 (Zelensky Ready To 'Discuss & Find Compromise' On Crimea, No Longer Insists On NATO Membership) (Zelensky Expresses Readiness to ‘Discuss and Find Compromise’ Regarding Status of Crimea, Donbass)

ゼレンスキーがロシアの要求を飲めばウクライナ戦争は終わっていき、米欧とロシアとの制裁合戦は終わり、石油ガスの価格が下がる。だが、本当にそうなるかどうか怪しい。米大統領府は、対露制裁が引き起こすガソリンなどの高騰は長期化しそうだと言っている。間もなくゼレンスキーがロシアと和解しそうなら、米国がこんな予測を言わないはずだ。今後、中独仏が和解を成功させそうになると、米国が邪魔して潰すのでないか。米国は諜報界の隠れ多極主義者に動かされている観が強く、米欧とくに欧州がロシアとの制裁合戦に負けて潰れていく展開をこっそり好んでいる。中露も、欧米が自滅して自分たちが強くなる多極化を好んでいる。ゼレンスキーが譲歩してロシアとウクライナが和解したとしても、米国による過激な露中敵視が続くとか、他のシナリオもあり得るが、ウクライナをめぐる対立自体はたぶん長引く。 (White House Says U.S. Needs to be Prepared for Long, Difficult Road Ahead, ZeroHedge: Carnage Everywhere As Market “Begins To Break)

バイデンの米国はロシアから石油ガスなどを買わないことにしたが、それを穴埋めするため、これまで敵視・制裁してきた南米の産油国ベネズエラと和解することを模索している。米国がユーラシア大陸のロシアと縁を切り、代わりに南米ベネズエラから石油を買うことは、米国の「西半球化」「孤立主義」を意味している。きたるべき多極型世界において米国は、西半球つまり南北米州の地域覇権国になる。米国でバイデン政権を操っている勢力(諜報界=深奥国家)は、米国の西半球化、世界の多極化を誘導しているように見える。 (Biden Plans To Ban Russian Oil Imports But Buy It From Moscow’s Allies Instead of Producing It At Home)

これを田中宇の妄想と切って捨てられない現実が、少し考えると見えてくる。米国はロシアからの石油を輸入しなくても、ベネズエラやカナダや米国内シェール油田の石油があるので何とかなる。米国は、世界が多極型になっても米州内で自活できる。しかし欧州は対照的に、ロシアから石油ガスを輸入し続けないとやっていけない。すでに述べたように、イランやサウジなど中東の産油国は、以前よりはるかに非米側であり、欧州に石油ガスを売ってくれるとしても以前よりかなり高い値段になる。これまでのように中露イランを敵視したままだと、誰も欧州に石油ガスを売ってくれない。欧州が行き詰まって米国に相談しても、米国は何もしてくれず、「うちは西半球の国だからね」と言われる。 (Now Courted By Biden, Socialist Strongman Maduro Hails "Cordial" US Talks For Oil Supplies)

欧州だけでなく日本も同様だ。中露と敵対し続けていると石油ガスを得られなくなっていく。サハリン油田は大事にすべきだ。ロシアや中国で服を売り続けるユニクロが、これからのビジネスモデルとして正しい。逆に、軍産傀儡の道を行く楽天の経営者は、今後の世界が見えていない(軽信者ばかりの日本国内向けだけの演技なら、こっちの方が良いのかな?。一億総自滅。哀しいね)。多極化を妄想と言って軽視していると、日本はしだいに貧しくて行き詰まった状態になっていく。今ならまだ間に合う。それとも一億総自滅の方が楽か?

ロシアは意外と負けてない(2)

2022年3月4日   田中 宇
これは「ロシアは意外と負けてない」(田中宇プラス)の続きです。

欧米日マスコミは、ウクライナの諸都市がロシア軍の攻撃で破壊されて廃墟になっているかのような報道をしている。廃墟になっているならウクライナの市民が数万人の単位で死んだはずだ。しかし国連が発表した、3月2日まで戦闘で死んだウクライナ市民の総数は249人だった。この死者数は、ロシア軍がウクライナの市街地をほとんど攻撃していないことを示している。ロシアは、ウクライナ政府との交渉が続いている限り、これ以上の侵攻をしない。攻撃してくるのはウクライナ極右民兵団の方であり、露軍は極右を潰すための反撃をしている。露軍と極右の戦闘で、498人の露軍兵士と2870人以上のウクライナ極右民兵(政府軍を含む人数だが、政府軍は戦っていない)が死んだと露政府が発表した。戦闘のほとんどは露軍と極右の間で行われており、ウクライナ市民はあまり巻き添えにされていない。極右は市街地に入り込み、市民を「人間の盾」にする非人道戦術で露軍を攻撃してくるが、露軍は市民をできるだけ殺さず、極右だけを殺すようにしている。だから市民の10倍の極右が戦死している。プーチンは、ウクライナでの軍事作戦が予定通り進んでいると発表したが、多分それは正確だ。 (UN confirms number of civilian casualties in Ukraine) (Putin: Special Op in Ukraine Going According to Plan)

ウクライナ政府は3月2日、露軍侵攻で2千人以上の市民が殺されたと発表したが、国連が発表した死者数はその8分の1の249人だった。戦争当事国が敵を悪く見せたがるのは自然だから、8倍ぐらいの誇張は理解できる。キエフでは市長が「キエフは露軍に包囲されている」と表明したが、その後撤回した。米欧日のインチキ報道と裏腹に、露軍はまだキエフを包囲もしていない(これから包囲するとは言っている)。 (Kiev’s mayor says city ‘encircled,’ then backtracks) (Who are Ukraine’s far-right Azov regiment?) ウクライナ極右よりも不正で卑怯なのは、米欧日のマスコミやそこに出てくる外交専門家ら権威筋だ(私はコロナ以降、マスコミから妄想屋扱いされているので幸いにも権威筋ではありません。今後も妄想屋扱いの継続を希望します 笑)。マスコミ権威筋は、ウクライナ極右が非人道な人間の盾戦術をやっていることも批判していない。欧米日マスコミよりRTなどロシア側の報道の方が頼りになる。RTを信用する奴はロシアの傀儡だと言われるが、そういうことを言う人はきちんと国際情勢を見てこなかった人だ。コロナ以降、欧米日のマスコミは信用できない質の悪いものになっており、今回のウクライナ戦争の報道も、なぜそう報じるかね??、と驚くほど間違ったものになっている。説明の歪曲を超えた「ウソ」を喧伝している(コロナの時から)。マスコミは信用できないと感じる人が増えている。米英マスコミは、以前は「狡猾」だったが、今は「劣悪」である。日本のマスコミは、コロナまで「中立」を意識していたが、今回のウクライナ戦争では完全な「米傀儡」になっている。中立報道の姿勢は「ロシア傀儡」とみなされて消失した。 (Putin Is Waging a Halfway War and It’s Showing) (Russia is now exclusively a ruble country)

ロシア関連で米国のマスコミ権威筋が格段におかしくなったのは、2月16日にAP通信社が「ゼロヘッジはロシアのプロパガンダを流す悪いやつだ」という趣旨の報道をしたあたりからだ。2月24日の露軍侵攻より前に、すでにトンデモな状況が始まっていた(この順番の逆転は、裏読みする際にとても大事だ)。「ロシアのスパイ、傀儡」のレッテルは、トランプや共和党、ゼロヘッジをはじめとするオルトメディアの全体に対して貼られている。マスコミ権威筋は、自分たちの見方に同調しない者たち全員に対してロシア傀儡のレッテルを貼って潰しにかかる。そしてマスコミ権威筋自身は、全く劣悪で間違った見方を流布する。自分たちのプロパガンダに同調しない人々の発言に、プロパガンダやニセニュースのレッテルを貼って潰しにかかる。非同調者は、ユーチューブやツイッターの登録を抹消される。コロナの時もそうだった。トランプの時もそうだった。当然ながらマスコミ権威筋は市民から信頼されなくなり、自滅している。 (US accuses financial website of spreading Russian propaganda) (Putin is NOT crazy and the Russian invasion is NOT failing)

日本では、非同調者が潰されずに無視嘲笑されるだけなので、かなりましだ。逆に言うと、だから日本では、現状がトンデモであると主張して追い詰められてさらに声高に主張する人々が大勢出てこない。カナダや米国で急増するワクチン強要反対の「トラック隊」みたいなのが出てこない。コロナ愚策の強要回避の時と同様、日本の自民党官僚独裁筋は、米諜報界から要請された対決の構図(=自滅策)を作らず、曖昧化戦略に徹することで自分らの権力を守っている。 (コロナ独裁と米覇権を潰すトラック隊) (コロナ帝国と日本)

一昨日の有料記事に書いたように、今回のロシア敵視、とくに対露経済制裁の過激化は、ロシアを潰す前に多極化を引き起こす。ロシアだけでなく中国、インド、ブラジル、南アフリカというBRICSの諸大国は、これまでの米単独覇権体制と異質な、BRICSとEU、米国といった複数の極(地域覇権国)が対等に立ち並ぶ多極型の世界がこれから出現することを予測・予定している。すべてのBRICS諸国が、今回の侵攻に対してロシアを非難することを拒否している。中国やインドは、ロシアが使えなくなったドルやユーロでなく、相互の自国通貨でロシアと貿易し続けていくと発表している。BRICS諸国は、これまで「欧米側」であると思われてきたインドやブラジル、南アを含め、米覇権を軽視しており、きたるべき多極型の世界を重視して、ロシア敵視を拒否している。今回の戦争が多極化を加速させることが感じ取れる。 (Will China Stay Quiet on Ukraine?)

多極型の体制下では、ひとつの極が他の極の利益を大きく損なう行為が許されない(それによって体制の安定を維持する)。米国が今回、欧米全体の経済システムを巻き込んで究極の対露制裁を発動し、ロシア勢が米欧に持っている資産をすべて没収し、ロシア人が欧米と取引できないようにしたことは、多極型の体制下では許されない行為だ。逆に、ロシアがウクライナに侵攻して中立化もしくは傀儡化することは、一つの極の内部の紛争なので黙認される。 (The Eazy-Peazy Ukrainian Alternative – Partition)

米国はこれまでも、イランや北朝鮮を米覇権の経済システムから排除する経済制裁をやってきた。だが、ロシアはこれからの多極型世界の極の一つであり、これまでの米中心の世界でも国連の5大国の1つだった。イランや北朝鮮は「極」でない(イランは中東の4大国・地元4極の一つだが)。今回のことで、ロシアだけでなく中国などBRICSの全体が、米国の経済システムをそのまま多極型世界の経済システムとして使うことができないと思い知った。 (Sanctions Are Going To Devastate Russia Economically, But They Are Going To Devastate Us Economically Too)

米国が中露など他の極の利益を尊重するなら、従来の米国中心のドル基軸通貨性など金融システムをそのまま多極化後の世界システムとして使い続けることがあり得た。だが米国はこの四半世紀、ロシアや中国を敵視しすぎた。ドルなど米国のシステムは、QE終了が引き起こすこれからの金融崩壊とともに終わっていく。世界は911以来、米覇権体制が自滅的に崩れて多極型体制に転換する多極化の過程にある。今回の戦争は、多極化と米覇権の自滅を加速する。 ("Don't Get Too Excited" - Bill Gross Warns Investors That Surging Inflation Will Topple Stocks)

戦後の米覇権下のブレトンウッズ体制では、世界中の各国政府や中央銀行がドルやユーロや円などの主要通貨の資産を外貨準備として持ち、自国通貨の価値が下がった時に外貨準備を売って為替相場を立て直して危機を逃れるシステムがあった。ロシアや中国の政府や中銀群は、ドルの口座を米連銀に持つ形でドル建て資産を米国に預託し、自国通貨の有事に備えてきた。外国の政府中銀が預託している資産を凍結しない不文律が、この制度を維持するために機能していた。だが今回、米連銀は対露制裁の一環として、ロシアの政府中銀が米連銀に預託しているドルの口座を凍結した。加えて米当局は、ロシアの当局や大企業がドルを使うことを全面禁止にした(米連銀は以前からドルの国際決済を監視してきた)。 (The Second Cold War Is Here, And Supply Chains Will Be The Front Lines)

今回は問題がロシアのウクライナ侵攻だが、矛先はいずれ中国にも向けられる。米国はロシアだけでなく中国も敵視し、台湾問題を扇動して中国を怒らせている。米国が今後どんどん台湾問題を扇動していくと、いずれ中国は台湾を武力で制圧して併合せざるを得なくなる。今回米国がロシア敵視を扇動してウクライナに侵攻させたのと同じ流れだ。中国が台湾に侵攻すると、米当局は中国の政府や企業がドルを使うことを禁じ、中国勢が米欧に持っている在外資産が凍結される。中国は世界最大の債権国であり、中国が欧米に持っている全資産を凍結するとなると、その衝撃はロシア制裁よりはるかに大きい。世界の金融システムだけでなく実体経済も壊れてしまう。米国は、ロシアを制裁したが中国は制裁しない、などという甘い話にはならない。大統領に返り咲きそうなトランプの(元)側近(KT McFarland)は「中国はロシア並みに大きな脅威だ」とわめいている。 (China, Russia Pose Unprecedented Strategic Threat To US: Former Trump Adviser)

ロシアは今回、米覇権下の金融システム全体から追い出された。実のところ、追い出されたというよりロシア自身が離脱を決めたのだということも前回記事に書いた。今回の対露制裁を踏まえ、中国が先制的に米中心の世界金融システムから離脱し、ロシアなどBRICSや非米を束ねて非米型の決済や投資のシステムを作ろうとするのは自然な流れだ。 (Russia sanctions could backfire on EU economy – European Commission)

習近平は、いずれ来る米国からの経済制裁に備える安全保障のために、先制的に、ドル建ての取引をすべてやめ、中国の企業や人々が「米国側」に投資するのをやめさせねばならないと考えているのでないか。習近平は、就任直後から株式市場の下落を誘発・容認し、恒大の破綻を引き起こすなど、不動産バブルも意図的に潰してきた。中国はトウ小平から習近平まで、米国中心の国際金融システムの一部になり、株や不動産の金融バブルを膨張させてきたが、習近平はそれを壊している。習近平は以前から多極化を予測し、中国を米国中心の金融システムから離脱させようとしてきた。今回米国がロシアを金融システムから外したのを見て、中国は今後、米国からの分離とBRICS側の独自システムの拡大を加速する。 (金融バブルと闘う習近平) (中国を社会主義に戻す習近平)

今回、インドが対露制裁への参加を拒否したことは、日米豪印のクワッド(4か国)による中国包囲網の失敗も意味している。インドは中国と和解したわけでないが、中露(BRICS、多極側)と欧米(米覇権側)のどちらの仲間になるかと問われてインドは中露をとった。クワッドは空中分解した。今後、安保と経済の両面で米国覇権の低下に拍車がかかる。安倍晋三が米国に核兵器の日本への配備と日米共有を公式にお願いしようと提案して問題になっているが、この提案も米国の覇権低下に呼応したものだ。核兵器を米国と共有し、米覇権が衰退して世界が多極化した後も日本に核兵器が残るようにしたいのだろう。中国が猛反対するので日米核共有は困難だ。2025年にトランプが米大統領に返り咲いたらやってくれるかも。安倍は日本の米中両属化を進めた人でもあり、多極化の中で日本の将来を考えていろいろ言ってみている感じだ。 (米国の中国敵視に追随せず対中和解した安倍の日本) (中国と和解して日豪亜を進める安倍の日本)

欧州ではコソボ(ロシアの仲間であるセルビアの仇敵で米傀儡国)が、自国への米軍基地の新設とNATO加盟を米国にお願いした。これも多極化への対策だ。米国の覇権が下がるほど米国にすがりつこうとしている。EUはウクライナとグルジア(ジョージア)の新規加盟に前向きの姿勢を見せたが、これも、多極化によるロシアの台頭と米国の衰退によって、東欧におけるロシアとEUの影響圏の境目が西の方に移動してきそうなので、先手を打って過大なことを言ってみたのだ。これからウクライナやグルジアはロシアの影響圏に戻っていく。セルビアはロシアの傘下でコソボを奪回しようとする。EUは、早く対米自立してロシアとの話し合って新たな影響圏の境界を確定せねばならないのだが、それが全くできていない。EUが動かない分、米国がロシアを挑発し、ロシアが力づくで境界線を変更する挙に出たのが今回の戦争だ。米国の衰退と覇権の多極化は止められないので、ウクライナがロシアの影響圏に戻ることも止められない。 (Kosovo asks for permanent US base, NATO membership) (Georgia signs EU membership bid) (EU outlines its priority on Ukraine)

ウクライナがアフガン化するかも

2022年2月27日   田中 宇
ロシアが侵攻したウクライナ戦争は、開戦日の2月24日にロシア軍が電撃的にウクライナの空軍を破壊して制空権を強奪した後、膠着的な感じになっている。政治的な水面下の動きが起きていると思われるのだが、何が起きているのかほとんど漏れてこない。ウクライナには以前から、ロシア敵視のウクライナ系ナショナリスト勢力(極右ネオナチ)から、ロシア系などの親ロシア勢力までの諸勢力がいる。極右は米英諜報界に支援されてウクライナの諜報機関を握ってきた。ゼレンスキー大統領も極右の側近たちに囲まれている。ウクライナの極右は、イスラエルの入植者と似て、ナショナリストと言っているが本質はそうでなく、ロシアに打撃を与えることを最優先にしている。彼らの本質は極右というより米英のスパイだ(エリツィン時代のロシアのオリガルヒとか、コソボのKLAも同質)。彼らは米英諜報界の後ろ盾があるので強い。(イスラエルの入植者も米諜報界の後ろ盾があり、イスラエルの安定や繁栄よりもアラブ人・パレスチナ人の排除を最優先にしつつ権力を牛耳り、その結果イスラエルは安定から遠ざかり亡国の際にいる) (敵にガスを送るプーチン)

ロシアは、ゼレンスキー大統領が今の混乱の中で極右(ネオナチ)の側近たちを排除して個人で権力を握り、その上でゼレンスキーが「ウクライナは対露非武装の親ロシア国家になった」と宣言することを望んでいる。これが、ロシアの求める「非武装、非ナチ化」である。これを達成するにはまず、ゼレンスキーが自分を囲んでいる極右の側近たちを排除せねばならないが、それが失敗している可能性がある。ロシアは今年初め、カザフスタンで似たような謀略をやって成功している。カザフスタンで起きた暴動は、ロシアから離反して欧米と親しくしてきた独裁者ナザルバエフ(安保会議長)が、配下のトカエフ大統領に引責辞任させられる権力内の下剋上を引き起こしたが、この下剋上はロシアが誘発したものでないかと私は勘ぐっている。 (カザフスタン暴動の深層)

トカエフは、暴動鎮圧時のどさくさ紛れにロシアとくっついてナザルバエフを蹴落として自分がカザフの親露権力者になった。ロシアは、カザフスタンを反露国から親露国に転じさせた(目くらましとしてトカエフは今回、露軍のウクライナ侵攻に協力しないと表明した)。同様にロシアは今回、ウクライナで露軍侵攻のどさくさ紛れに、極右(米英諜報界)の傀儡だったゼレンスキーが極右を切り落として親露の権力者に転向して政治的に延命することを狙っているのでないか。大統領がゼレンスキーのままなら、欧米も「ロシアがウクライナを政権転覆して傀儡政権を作った」と非難できない。

今回ロシアがウクライナで「カザフスタン方式」を成功させる可能性を高めたのは、2月11日から米国が「ロシアが攻めてくる」と大騒ぎし、英欧諸国を引き連れてウクライナ駐在の外交官や諜報部員たちを全員出国させたからだ。これまでウクライナの極右を支援強化して権力に就かせていた米英勢が、突然に引き揚げていってしまった。その2週間後、露軍が侵攻してきて制空権を奪い、外国勢がウクライナを支援することが不可能になった。ロシアはウクライナの極右幹部(米英スパイ)たちが権力から排除されて一掃(投獄?)されるまで、ウクライナから出ていかない。ウクライナの極右は政治的・諜報的に「兵糧攻め」にされている。 (バイデンがプーチンをウクライナ侵攻に導いた)

ゼレンスキーが露軍に追い詰められつつ、自分の政権から極右を排除して「浄化」し、代わりに親露系(ロシアのスパイ)の政治家や政策立案者たちを側近として登用する「改革」をやり、その上でゼレンスキーがウクライナの非武装中立化を宣言すれば、ロシアが求める「非武装化と非ナチ化」が成就する。選挙で選ばれたゼレンスキー大統領が続投したまま「民主的」に親露側へと換骨奪胎される。逆に、あと2-3週間たってもウクライナ上層部の人事異動などの動きがほとんど起こらず、ゼレンスキーが露軍侵攻前と同じ側近たちに囲まれて「ロシアと戦う」と宣言し続けていたら、極右の延命であり、カザフスタン方式でウクライナを親露側に転換するロシアの謀略は失敗した可能性が高くなる。

ウクライナの極右は、母国をアフガニスタンやシリアみたいな内戦状態にして、ロシアを地上軍による占領の泥沼に引きずり込み、プーチンが世界からもっと非難されるようにして、露軍のウクライナ占領を失敗に追い込みたい。ウクライナ極右は、政府軍とは別の武装民兵団を持っており、彼らは米英諜報界の軍人たちから各種の特殊作戦の訓練を受け、装備を供給されてきた。たとえゼレンスキーが政権中枢から極右を排除し、政府軍が露軍と戦うことをやめさせても、極右民兵は政府の言うことを聞かず、独自の装備を出してきて露軍を攻撃する。 (Putin tells Ukrainian military to ‘take power into their hands’)

すでに極右民兵は、首都キエフなどの住宅街の中にトラックに積んだ地対空砲を持ち込み、住民を「人間の盾」として使いつつ、上空の露軍機を攻撃したりしている。露軍機が極右に反撃すると「露軍機がキエフの住宅街を空爆した」という話になり、欧米日のマスコミがロシア敵視を喧伝する。ウクライナ極右が住民を人間の盾として使う非道なテロリストの戦法をしていることは無視される。欧米日のマスコミは、米英諜報界が発する歪曲情報を鵜呑みにして喧伝する。マスコミは諜報界の傀儡であり、その点で同じく米英諜報界の傀儡であるウクライナの極右勢力と「義兄弟・同志」の関係にある。マスコミは自分たちの本性を語らないし、ウクライナの本質も報じず、歪曲を喧伝し続ける。 (US Officials Make Grim Prediction for the Fall of Kyiv: Report)

ウクライナ極右の一部は政府軍の部隊の中に兵士や将校として入り込み、政府軍の動きを内側から監視・統制することもやっている(イスラエルで入植者が国軍を乗っ取ってきたやり方と似ている)。ウクライナ人の中にはロシアを敵視したくない人々や、極右支配を嫌う人々(親露派と、反・反露派)も国民の半分ぐらいいる。ロシアは、ウクライナ政府軍内のそうした親露系の将校や兵士たちが極右支配に反逆するクーデターを起こすよう呼びかけている。しかし、今のところ極右支配への反逆は起きていない。その理由についてロシア国防省は、政府軍の内部にいる極右勢力が、反乱しそうな親露系の兵士や将校を諜報機関に通報し、排除(私刑に?)しているからだと言っている。ウクライナは極右に乗っ取られている。大統領も兵士も、極右に反逆することは難しい。極右を強化してきた米英諜報界がウクライナを去った今、この困難性がいつまで続くか、という話でもある。 (Russian MoD: Kiev Applies Same Methods as Terrorists, Uses Civilians as Human Shields)

ウクライナは、極右に乗っ取られたままだと「アフガン化」しかねない。欧米のNATO諸国は、ウクライナに大量の武器弾薬を送り込むと言っている。ドイツはスティンガー(携帯式地対空誘導ミサイル)を500発と、携帯式の対戦車砲を1000発をウクライナに供与する。オランダもスティンガー200発、対戦車砲50発を送る。ベルギーやチェコ、スロバキアも似たような兵器を送る。これらはウクライナの誰が使うのか。これらの携帯用の兵器は、政府軍などの正規軍が使うというより、ゲリラや民兵団など非正規軍が使うものだ。スティンガーなどが活躍するのは非正規戦争の戦場だ。今後のウクライナでロシア軍と戦う主な勢力は、政府軍でなく、非正規軍である極右の民兵団だ。彼らは市街地に立てこもり、住民を「人間の盾」として使いつつ、アパートのバルコニーや屋上の影や、公園の木立の間から、ロシア軍の飛行機や戦車を狙って撃ってくる。その時に、ドイツやベルギーなどが供給したスティンガーなどの携帯用兵器が使われる。 (Russia's Military Announces Bigger "Advance In All Sectors" As Zelensky Vows Ukrainians Will Fight)

この住宅地に立てこもる極右民兵団にロシア軍が反撃すると、アパートが破壊され、住民が死傷する。美しいキエフやその他のウクライナの街が、カブールやベイルートやアレッポみたいな廃墟になっていく。何万人かのウクライナ市民が死に、その何10倍かの市民が家を壊されて難民になる。ウクライナは非正規戦争になり、アフガン化する。この戦争を起こしたのはロシアだ、プーチンだ。米欧日のマスコミや権威筋(諜報界傀儡)が勝ち誇って非難する。ドイツやオランダやベルギーといった人権重視の美しい国々がこれからウクライナに供給するスティンガーなどは、このように「活用」されていく。欧州市民はさぞ嬉しいだろう。 (In "Devastating" Move, US Weighs Sanctions On Russia's Central Bank As Germany Backs "Targeted" Removal Of Russia From SWIFT)

スティンガーは1970年代に米軍産が開発し、ソ連軍が侵攻して支配していたアフガニスタンで、米諜報界が支援してソ連軍とゲリラ戦をさせていたイスラム民兵団(ムジャヘディン、聖戦団)に使わせた。山間の聖戦団を空爆しにくるソ連軍のヘリコプターや飛行機を聖戦団がスティンガーで撃墜し続け、ソ連にとって戦況が不利になり、1989年のソ連軍の撤退と、その直後のソ連崩壊へとつながった(その後、めぐりめぐって聖戦団はタリバンになり、米国自身がアフガン占領の泥沼にはまることになったが)。スティンガーはソ連を潰した。プーチンは、ソ連崩壊から10年後にロシアの権力者になり、20年かけてロシアを立て直した。しかし、またもやロシアはスティンガーの悪夢の前に立たされている。勝ち誇る敵は今回も米諜報界である。 (The War to Reshape European Security Has Begun)

ウクライナの制空権はロシアが握っている。ドイツなどNATO諸国は、スティンガーを空路でウクライナに送り込めない。ポーランドから陸路で入れる話が出ている。しかし、NATOからの輸送トラックがウクライナに入ったら、その時点でロシア空軍に空爆される。これら正規のルートは使えないが、非正規のルートなら使える。ポーランドもロシア敵視の国だ。ウクライナの極右が一般市民のふりをしてポーランドに行き、スティンガーを一本ずつ持ち、検問所を迂回してウクライナに戻り、そのまま一般の荷物に紛れ込ませてキエフなどまで運べれば、うまく戦場に持ち込める。パキスタンから聖戦士が山を越えてアフガニスタンにスティンガーを運び込んだ昔話に似ている。ウクライナを占領するロシア軍がポーランドとの国境線を厳重に管理できれば、この非正規ルートも阻止できる。

ロシアは、ドイツなどがウクライナにスティンガーを送り込むことを阻止できるもう一つの方法も持っている。それは、ロシアからドイツなどへの天然ガスの供給を止めることだ。ドイツなど欧州諸国は、暖房や発電などエネルギー源のかなりの部分をロシアからの天然ガスに頼っている。ロシアが天然ガスの送付を止めたら、その日から欧州は大混乱になる。ロシアはウクライナで市民を殺さないように戦争している。だが、ドイツなどがウクライナにスティンガーを送り込むと、極右がそれを使ってウクライナの戦争を、市民が大量に死ぬものに変えてしまう。ロシアが欧州に送るガスを止めて「ウクライナに軍事支援しないと約束するまで欧州にガスを送らない」と宣言することは、ウクライナ市民の生命と資産を守るための、ロシアによる人道策である。まだスティンガーはウクライナに送られていない。記者発表されただけだ。 (NATO sending more weapons to Ukraine – Stoltenberg)

今や軍産を押しのけて多極派が牛耳っているとおぼしき米諜報界は、プーチンを奮起させて欧州へのガスを止めさせて欧露関係を大転換させるために、スティンガーという「ソ連殺し」の名前を意図的に出してきたのでないか。今日決まったSWIFTからロシアを追放する話も、3月1日から米連銀がQEをやめた後に起きそうな米金融崩壊・ドル崩壊を「プーチンがSWIFT追放の報復としてドルを潰した」「プーチンが米国の覇権を引き倒した」「ぜんぶプーチンが悪いんだ」という話にするために米諜報界がやらせた観がある。ロシアはずっと前からSWIFT追放の準備をしてきたのであまり困らない。 (All Russian Banks Under Sanctions Will Be Excluded From SWIFT, German Gov't Says) (Inflation Alert! The Russia/Ukraine Conflict Is Being Set Up As A Scapegoat For Continued Accelerating Inflation)

ロシア敵視の総本山だったはずの英国は「NATOはウクライナに積極介入すべきでない」と言いだしている。今起きていることはマスコミ権威筋が喧伝する「プーチンの大誤算」でなく逆に「プーチンの勝利、NATOの自滅」になりそうだ、と英国は懸念している。イラク戦争などと同様、隠れ多極主義的なにおいがする。 (UK Says NATO Forces Must Not Play Active Role in Ukraine)

ウクライナで起きている水面下の政治的な動きとして推測できるものは、ロシア系勢力が勃興するかどうかとか、南東部を分離独立させるノボロシアの謀略とか、ほかにもいくつかあるのだが、今日の記事はここまでにする。 ('Glory To Novorossiya! The Second Great Slavic Reconquista Has Begun')