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続折々の記 2022 ⑤
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【 07 】06/27
     時の流れ  新聞記事と田中宇
        物価高、英国から日本に思うことは
        (天声人語)投票所へ行く理由
        G7、ロシアの金禁輸へ 物価高など議論 サミット開幕
        人口減の地方、過疎化は止められるか
        若者を元気にする政策必要
     厚かましいバイデン大統領
     プーチンの偽悪戦略に乗せられた人類   田中宇の国際ニュース解説

 2022/06/27
時の流れ   新聞記事

2022年6月26日 (深論 参院選の先に)
物価高、英国から日本に思うことは
   ライター・ブレイディみかこさん
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S15335671.html?ref=pcviewer

 参院選は怖い。政治取材に20年以上かかわっての実感だ。参院選は、衆院選と違って、政権そのものを選ぶ仕組みではないが、時の政権の推進力となることもあれば、失速のきっかけともなりうる。今回の参院選はどのようなインパクトを日本の政治にもたらしうるのか。考えるヒントを求めて、民主政治の母国とも言われる英国に長く住むライターのブレイディみかこさんと語り合った。

 今回の参院選では、円安や物価高への対策や、防衛力のあり方、コロナ後を見据えた社会の立て直し――などが争点になりそうだ。

 ブレイディさんは「コロナ禍の後に来るのは貧困禍だ」として、英国でも物価の上昇が深刻化していると強調。ジョンソン政権の支持率低下は生活苦を強いられている庶民の怒りの表明だとの見方を示す一方で、野党が党内でもめている間に「与党政治に苦しむ人たちが置き去りになっている」とも分析した。

 日本の近年の参院選で印象に残っているのは、重度障害者の議員が誕生したことだと振り返り、「英国議会には様々な年代の男女がいて、人種も様々で、性的指向も様々。多様な当事者を議会に送ることは、社会的包摂力をめざす政治の第一歩だ」と語った。

 ブレイディさんはベストセラー「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」が多様性の時代を生きるヒントになると話題を呼び、「エンパシー」という言葉が注目された。「他人の感情や経験などを理解する能力」などと訳される。ブレイディさんは「今の日本の政治は、他者に対するエンパシーの足りなさが、今とは違う未来への想像力の足りなさにつながっているのかもしれない」と指摘。子ども政策などを例に挙げ、「エンパシーのある経済」と、その先にある「安心できる社会」を考えてはどうか、と提案した。(政治部長・林尚行)

 ◇参院選を機会に、報道各部の部長がさまざまな世界の方に会い、日頃の問題意識を共有してもらいながら論を深め、投票の際に考えるヒント、選挙の先まで見通す視点を探ります。(3面に続く)

▼3面 (深論 参院選の先に)
世界、コロナ禍の後は貧困禍

 林 参院選は政権選択選挙ではありませんが、結果として政権の命運を左右したり、政策推進力の強弱を決めてきたりしました。ただ今回の選挙では、野党間の足並みの乱れもあって「与党対野党」という単純な構図になっていません。

 ブレイディみかこさん 英国は保守党と労働党というほぼ二大政党制。近年、野党・労働党は党内でもめている間に、与党政治に苦しむ人たちが置き去りになっていますが、ブレア政権の誕生は印象に残っています。サッチャー、メージャー両氏が率いた保守党政権が古くさく見えたとき、国民に今までと違う若々しい未来を与えた。与党の批判と身内でもめているばかりでは人気は得られない。未来を感じさせる新しいことをやらなければいけないのではないでしょうか。

 林 円安や原材料費の高騰で物価が上昇する一方、給与は上がりません。岸田政権も国民が納得できる対策を打てていないのが現状です。参院選を前に「経済」がリアルな関心事になっているように思います。

 ブレイディさん 英国ではすでに物価は上昇していて、「コスト・オブ・リビング・クライシス(生活費の危機)」という問題が起きています。「ヒート・オア・イート(暖まるべきか、食べるべきか)」という流行語も生まれました。(英国で強まる)ジョンソン政権への批判は、生活苦に陥った庶民の不平等への怒りの表明だと思います。コロナ禍の後に来るのは貧困禍と言ってきましたが、経済問題は日本だけでなく世界的なイシューです。

 林 著書では、「エンパシー」というキーワードで多様性を描かれています。

 ブレイディさん 日本が旧態依然と受け止められるのも、視野の狭さが垣間見えるからでしょう。自分の意見とは違う人がどう考えているか想像してみれば、今と違う世界につながるのではないでしょうか。

 林 エンパシーは「他人の感情や経験などを理解する能力」などと訳されますね。日本政治には与野党ともにエンパシーが足りているのか、疑問を感じます。

 ブレイディさん エンパシーのある経済が大事で、例えば、日本の消費税のあり方は経済弱者へのエンパシーに欠けていないか。最もエンパシーを働かせてほしいと思うのは、子ども政策です。今の日本の政治は子どもが無視されているのではないか。若い世代をしっかり育てないと未来はありません。(参院選に向き合う)キーワードで言えば、「安心できる社会」ではないでしょうか。
     *
 ぶれいでぃ・みかこ 1965年生まれ。ライター。96年から英国ブライトン在住。著書に「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」「両手にトカレフ」など。

 ■安心できる社会、物差しに 政治部長・林尚行

 参院選に、どのような補助線を引いて報じればいいのか。いつも悩んできた。民主政治の母国と言われる英国から多様性をテーマにした著書を世に送り出したブレイディみかこさんに、解を聞いてみたかった。今回の参院選後、物価高対策やアベノミクスの総括、「新しい資本主義」の具体化、防衛力のあり方など、岸田政権を待ち受ける政策テーマは山積みだ。「与党か野党か」という単純な構図ではなく、「エンパシーのある経済」「安心できる社会」を実現できるか、という物差しで補助線を引き、投票先を考えてもいいかもしれない。そう思った。

2022年6月26日
(天声人語)投票所へ行く理由

 選挙と聞いて、日本で最初に連想するのは何だろう。候補者ポスターか、にぎやかな選挙カーか。参院選で公示後初の週末となった昨日、都内で街頭演説を聞きながら考えた
▼先月の総選挙で政権交代したオーストラリアでは間違いなく、焼きたてのソーセージである。「デモクラシーソーセージ」と呼ばれ、投票所でボランティアが焼く。現地で特派員をしていたころ、私も選挙取材で必ず食べた
▼タマネギと一緒にパンにはさんで500円ほど。売り上げは地域の福祉活動などにあてられる。これが楽しみで、大人も子供も投票所へ向かう。9割近い投票率に「一番貢献しているのはソーセージかもね」と、地元の政治学者は笑った
▼実は豪州で、投票は法律で義務づけられている。とはいえ、だれもが罰金を払いたくなくて投票へ行くわけではない。すでにひとつの文化として定着していて、どうせ行くなら楽しもうという発想なのだ
▼政権奪還が決まってすぐ、アルバニージー新首相は日米豪印の首脳会議のために東京へ飛んだ。核兵器禁止条約会議へのオブザーバー参加も決めた。選挙がもたらす勢いや変化も投票への動機付けになっているのだろう
▼前回の参院選では、投票率が5割を切った日本。都内の街頭演説には、有力政治家らも応援に駆けつけた。耳を傾ける聴衆に、投票意欲はかき立てられているだろうかと考える。暑さに頭がぼーっとして「投票所でたこ焼きはどうかな」などと思ってしまう自分が恥ずかしい。

2022年6月27日
G7、ロシアの金禁輸へ 物価高など議論 サミット開幕

 主要7カ国首脳会議(G7サミット)が26日、ドイツ南部エルマウで、3日の日程で開幕した。ロシアのウクライナ侵攻が続くなか、ロシアからの新たな金の輸入禁止で一致する見通し。ウクライナへの支持と対ロ圧力の強化を明確に示す場となる。▼2面=支援疲れ懸念、4面=開催国の憂い

 ドイツのショルツ首相が議長を務め、日本、米国、英国、フランス、イタリア、カナダ、欧州連合(EU)の各首脳が参加。初日は物価高が懸念材料となっている世界経済の現状や気候変動対策、世界のインフラ投資などについて議論した。

 金の輸入禁止はロシアの資金調達能力に影響を与える狙いだ。英政府の26日の発表によると、金はロシアの主要な輸出品で、昨年の輸出額は126億ポンド(約2兆円)に上る。禁輸には日米英とカナダが合意。サミットで独仏伊にも参加を促す。国際的な金の取引はロンドンが中心で、ロシアの金取引を市場から締め出すことで「プーチン(大統領)の戦争マシンの心臓部を攻撃する」(ジョンソン英首相)という。

 26日の議論では世界の中・低所得国のインフラ整備に向け、G7として5年で計6千億ドル(約81兆円)の投資を目指すことで合意。岸田文雄首相は日本が650億ドル以上を担うと表明した。中国が巨大経済圏構想「一帯一路」の下で進める巨額のインフラ事業が、途上国に過剰債務問題などを引き起こしているとの認識がG7側にはある。透明性の高い手法で対抗する。

 こうしたなか、ロシアと中国は「非米欧」の枠組みづくりを鮮明にする。

 中国の習近平(シーチンピン)国家主席は23日、中ロ印など新興5カ国(BRICS)首脳会議で、加盟国の拡大を図る方針を初めて明言した。翌日にはイランやインドネシアなど13カ国を加えたオンライン首脳会議を主宰し、対米欧を念頭に結束を呼びかけた。「先進国クラブ」のG7に対抗しようとする狙いが強くにじむ。

 中国の訴えにロシアも足並みをそろえる。プーチン大統領はBRICS首脳会議の演説で「多極化を目指す上で、BRICSのリーダーシップが求められている」と強調し、米欧に対抗する陣営としての役割に期待を示した。(エルマウ近郊=野島淳、フランクフルト=榊原謙、北京=高田正幸)

▼2面=支援疲れ懸念
(時時刻刻)G7、支援疲れ懸念 物価高が生活直撃、市民不満

 ロシアのウクライナ侵攻に対し、主要7カ国(G7)をはじめとする米欧や日本は、制裁強化などで対抗してきた。しかし、制裁が増幅させた物価高が自国の市民生活を直撃し、「支援疲れ」を懸念する声が出始めている。一方、ロシアでは秋以降に制裁の影響が本格化するという見方があり、「根比べ」になりそうだ。▼1面参照

 英国のジョンソン首相は2度目のキーウ(キエフ)訪問から帰国した今月中旬、「『ウクライナ疲れ』が出てきたとき、我々は彼らが必要とする回復力を提供し続けると示すことが重要だ」と記者団に述べた。

 北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は侵攻が「何年も続く可能性に備えなければならない」と独紙で警告した上で、物価高でコスト負担が大きくなる中でも「ウクライナ支援の手を緩めてはならない」と述べた。

 指導者たちの相次ぐ発言の背景にはウクライナへの「支援疲れ」が市民の間に見え始めていることがある。

 シンクタンク「欧州外交評議会」によると、欧州10カ国の世論調査で、「政府はウクライナの戦争に力を入れすぎ、自国民が直面する問題に十分に力を注いでいない」と答えた人は42%で、「ちょうどよい」(36%)、「わからない」(19%)を上回っていた。

 背景には、制裁の副作用で自分たちの生活も苦しくなっていることへのいら立ちがある。G7はロシアのウクライナ侵攻を止めようと、経済制裁を強めてきた。とりわけ、ロシアの収入源として大きな天然ガスや石油、石炭などエネルギー輸出を断つ道を探ってきた。だが、ロシアの排除は市場の需給バランスを崩し、石油やガス価格が高騰。「エネルギー危機」懸念が、各国の記録的な物価上昇(インフレ)を生んでいる。

 G7の英国ではインフレ率が9%を超え、40年ぶりの高水準にある。米国も5月まで3カ月連続で8%を超えた。経済協力開発機構(OECD)は今月上旬の経済予測で、加盟38カ国の今年のインフレ率を8・5%と昨年末の予想から約2倍に修正した。一方、世界の経済成長率は3%で1・5ポイント引き下げた。(エルマウ近郊=金成隆一、ロンドン=和気真也)

 ■各国政情、影響にじむ

 物価高は、各国の政情に影響し始めている。

 ドイツでは5月、ショルツ首相が所属する社会民主党(SPD)が二つの州議会選で相次いで大敗した。

 フランスでは今月19日、総選挙で、マクロン大統領の与党連合が過半数を大幅に下回る敗北を喫した。

 いずれもウクライナ危機に伴う物価高やエネルギー高騰への不満が、敗北の一因とみられている。

 最大のウクライナ支援国である米国のバイデン米大統領は、戦争は長期化して「いずれ(ロシアとの)根比べのようになるだろう」との見通しを示す。

 車社会の米国では特にガソリン価格の高騰が響き、バイデン氏の支持率は40%を割る。11月の中間選挙で与党・民主党は議席を減らすとみられている。

 野党・共和党には、巨額のウクライナ支援を疑問視して政権を揺さぶる動きもある。トランプ前大統領は5月、「民主党はウクライナに400億ドル(約5兆4千億円)を送ろうとしているが、米国の親たちは子どもたちに食事をさせるのさえ大変なのだ」と訴えた。トランプ氏に近い議員候補からは「米国第一」を求める声が目立つ。

 ウクライナ支援を続けるには米議会での予算承認が不可欠だ。中間選挙後に共和党が議会で多数を握れば、支援が減速する可能性が現実味を帯びる。

 日本でも、制裁の「副作用」としてエネルギー価格高騰の影響が広がる。家庭の電気代は昨年より2割ほど高くなった。参院選でも物価高は大きな争点だ。岸田文雄首相は「有事の価格高騰だ」として、政府の失政ではないことを強調して批判をかわそうと躍起だ。

 首相は26日のG7サミットで、「エネルギー、食料を中心にロシアのウクライナ侵略という『外的ショック』による物価高騰が世界各国の経済を襲っている。G7は支援や制裁の結束のみならず、各国の国民生活を物価高騰から守るための結束を強めていかなければならない」と訴えた。(エルマウ近郊=高野遼、池尻和生、今泉奏)

 ■対ロ制裁、効果は秋以降か

 物価高にあえぐ欧米を、ロシアは冷ややかに見ている。プーチン大統領は17日の演説で、「危機は欧州連合(EU)の低所得者層を直撃している」と述べた。

 米欧は、ロシア政府の海外資金の凍結や、ロシアの大手銀行を国際的な決済システムから排除するなどの制裁を科してきた。

 だが、モノ不足への懸念で4月に17%を超えたインフレ率は、6月は一時マイナスになるまでに安定。通貨ルーブルの為替相場も、1ドル=75ルーブル前後から一時150ルーブルに急落したが、今は約53ルーブルまで上昇している。

 英国際戦略研究所(IISS)のマリア・シャギナ氏は、ロシアの経済指標が持ち直したのは「米欧の制裁が最大の収入源である石油や天然ガス輸出を止められていないことと、ロシアの中央銀行が巧みに対応したため」とみる。フィンランドの研究機関CREAの推計では、ロシアの原油や天然ガス輸出による収入は、侵攻後の100日間で930億ユーロ(約13兆円)。価格高騰が有利に働き、欧州が減らした一方、中国とインドが増やしていた。

 ただ、シャギナ氏は「安定は表面的で、制裁は実体経済に徐々に効いている」と指摘する。ロシア国内からも懸念の声は上がる。エリツィン政権時代に経済相を務めたアンドレイ・ネチャーエフ氏は、輸入品の在庫が6~7月ごろになくなり、「秋には多くの商品が値上がりする」とみる。

▼4面=開催国の憂い
G7開催国の独、足元にも憂い 対ロ、板挟みの首相 煮え切らぬ世論

 主要7カ国首脳会議(G7サミット)が、26日から3日間の日程でドイツ南部エルマウで始まった。議長のショルツ首相はロシアによるウクライナ侵攻が長引くなかで、西側諸国の結束をリードする役割を担う。だが、足元ではエネルギー価格の高騰などで厳しい政策運営を迫られている。▼1面参照

 「ロシアのウクライナに対する残虐な戦争は国内にも影響を及ぼしている。私たちが買う多くの物がより高価になった。だからこそ、私たちは覚悟を決めなければならない」。ショルツ氏はG7サミット開幕前日の25日、国民向けのビデオ演説でこう訴えかけた。

 「新しい試練は一緒に乗り越えなければならない」とし、ロシアへの資源依存からの脱却と同時に、長期的な化石燃料の使用からの脱却をG7首脳らと一緒に目指す決意を示した。

 ドイツは天然ガスや石炭の輸入の約半分、石油の3割をロシアに依存してきた。ウクライナ侵攻後の対ロ制裁で各国と足並みをそろえ、年内のロシア産原油の禁輸など、資源の「脱ロシア化」を進めている。

 だが、ロシアに対抗措置を取られ、主要パイプラインからの天然ガスの供給を一気に6割も削減され、供給不安が一気に高まった。地球温暖化対策のため停止を進めてきた石炭火力発電所の使用を一時的に増やさざるを得ない状況だ。

 公共放送ZDFの6月中旬の世論調査では、「物価や賃金が最も重大な問題」との回答が3月以降で初めて、「ウクライナ問題」を抜いてトップになった。

 ショルツ氏は2月のロシアの軍事侵攻後、「時代の転換点だ」と述べ、これまでのドイツ政府の姿勢を一気に変えた。殺傷能力のある武器をウクライナに供給し、自国の軍事費も大幅に増やした。当初はこうした果敢な姿勢が評価されて一気に支持率を上げた。

 だが、制裁強化の代償ともいえる物価高にさいなまれ、政権支持率はじり貧だ。特にショルツ氏の出身母体の社会民主党(SPD)は西部の最大州を含め、5月にあった二つの州議会選で連敗するなど、苦しんでいる。

 一方で、対ロ姿勢が甘いとの批判も浴びており、板挟みだ。ウクライナへの武器供給は「約束はしても、実際に届くのが遅い」と国内外から苦言を呈された。

 ロシアのプーチン大統領との対話を続けてきたことも、ロシアへの遠慮が残っているのではないかとウクライナや中東欧諸国から不信の目でみられた。「煮え切らない」とうつる姿勢も、支持率が持ち直さない一因だとみられる。

 ただ、煮え切らないのは世論も同じだ。公共放送ARDの6月初めの世論調査では、政府は「ロシアに強硬な姿勢を示すべきだ」との回答は50%で前月より2ポイント減ったが、「ロシアを刺激しないよう、より慎重になるべきだ」との回答も43%あり、同3ポイント増えた。

 G7は、ウクライナ支援や物価高などの問題にどこまで踏み込めるのか。国内からも厳しい目がショルツ氏に注がれそうだ。(エルマウ近郊=野島淳)

2022年6月27日 (深論 参院選の先に)
人口減の地方、過疎化は止められるか
   島に移住したコスプレイヤー、小林奈生さん
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S15335944.html?ref=pcviewer

 人口176人、高齢化率8割超、平均年齢70歳。子どもゼロ、スーパーもない。山形県・酒田港の北西39キロ沖に浮かぶ飛島(とびしま)にこの春、23歳の女性が就職した。1周10キロの小さなこの島に最近、若い人がぽつりぽつりと移住してきている。日本の未来を想起させる人口減の「最先端」で、いったい何が起きているのか。

 「少子化対策に全力で」「子育てしやすい環境を」――。今回の参院選で多くの候補者が口にしている。少子化やそれに伴う人口減少が、日本の将来の重い課題だからだ。とりわけ地方では人口減のスピードは速く、過疎化で存続を危ぶむ自治体もある。

 人口も経済も伸び盛りのベトナムで記者として4年を過ごし、いま、日本で地域ニュースを発信するネットワーク報道本部にいる私は、実際に島を訪ねてみることにした。人口減にあえぐ日本を元気にするヒントがあるのでは、と思ったからだ。

 対談の相手は、春に島の振興を手がける合同会社「とびしま」に就職し、旅館で働きはじめた小林奈生さん(23)。福島県南相馬市出身。新しい時代をリードする10代~20代半ばのいわゆる「Z世代」だ。同級生たちが東京を目指す中、地方を選んだ。

 「島には自然以外は何もないけど、その分、何でもできる。ないならつくる」

 移住して早々、伝統神事の舞踊を継承した。今度は趣味のコスプレをいかした撮影イベントを企画。日本のアニメやゲームのキャラクターに扮するコスプレは世界でも人気が高い。そして島には美しい海岸や岩場など絶好の撮影スポットがいくつもある。

 出生率が落ち、人口減の流れを止めることは難しい。それでも「地方を志す若い人はいる。この新しい風をいかせば、過疎にはならないのかなって。若い人に任せてくれるなら、何かしたい」。気負いはないが、前向きだ。(ネットワーク報道本部統括マネジャー・佐々木学)(3面に続く)

▼3面 (深論 参院選の先に)
若者を元気にする政策必要
   小林奈生さん

 佐々木 飛島の平均年齢は70歳。どうして移住を。

 小林さん 海と自然のきれいさに一目ぼれして。大学で民俗学を専攻し、地方を歩くことも多かった。就職活動のとき、島の活性化に取り組んでいる合同会社「とびしま」が募集をかけていたんです。

 合同会社「とびしま」は、島の若者や移住者らが活性化を目指して2013年に設立。若手スタッフを集めカフェや旅館の運営、除雪作業などを請け負う。宮城県の仙台高等専門学校と漂着ゴミを回収するロボットの開発も。

 佐々木 島に来てさっそく、伝統神事の「天狗(てんぐ)舞」の継承者になりました。

 小林さん はい。継承者を探していると聞き「踊ってみたい」と。4月の例大祭に間に合わせ、直前の5日間に猛練習して。モダンバレエやフラダンスを習っていた経験が役立ちました。女性の踊り手は初めてだそうで、島のおばあちゃんたちから「じょんだじょんだ」(上手だ上手だ)と言われ、うれしかったです。

 佐々木 「コスプレイヤー」なのですよね。

 小林さん コスプレは大学時代に趣味で始めました。会社の上司に話したら、イベントをやろうと。9月24日に開催の予定です。非日常の場所で非日常の格好をする。気軽に「島に来てみたい」というきっかけになればと思います。

 佐々木 飛島は、もともと「野鳥の聖地」。そこに「コスプレの聖地」が加わる。ロボット開発の「テックアイランド」でもある。全国の地方では過疎化が進んでいますが。

 小林さん そこにも魅力あるものがきっとある。何もしないのはもったいない。若い人に任せてくれるなら何かしたいな、って。

 佐々木 「とびしま」には「有給休暇3カ月」の制度があるそうですね。

 小林さん はい。冬場は観光客がほとんどこないので。島でいろんなことするためには、外での経験や、資格をとったり勉強したりすることが大事。そのための3カ月にしたい。

 佐々木 地方創生では移住者を呼んで永住させることを想定しがちですが、飛島はそこが緩やか。「出入り自由」みたいな。若いときに島で暮らし、子育てでいったん島を出て、また戻るというのもありですね。無理をしないところに、持続可能性を感じます。

 小林さん 子どもが減っても、「地方で頑張ってみたい」と地方を求める20代、30代がいる。こうした「新しい風」をいかせば、過疎にはならないのかなって。

 佐々木 参院選でも少子化や地方創生が議論されています。でも、若い人の関心が薄いような。

 小林さん 候補者は実際に票になる年配者向けの政策を掲げる、だから若者が興味を示さない、という負の循環になっている気がします。私たちのような取り組みをしやすくする環境を整え、若者を元気にする政策が必要だと思います。
     *
 こばやし・なお 1999年生まれ。福島県南相馬市出身。東北芸術工科大で民俗学を学ぶ。居合道、民俗舞踊、コスプレをたしなむ。太刀を擬人化したゲーム「刀剣乱舞」の「推しキャラ」は燭台切光忠(しょくだいきりみつただ)。伊達政宗が愛用した刀だ。

 ■新しい風を政治にも ネットワーク報道本部統括マネジャー・佐々木学

 働き手不足を外からの若手で補う▽人を呼び込む仕掛けをする▽AI(人工知能)やITを活用する――。小さな離島での挑戦だが、これからの人口減社会をデザインするうえで示唆に富む。

 社会問題への意識が高く、既存の価値観にとらわれないとされる「Z世代」。震災を経験した小林さんにも、地域への優しいまなざしや、自分の「やりたい」を追求するのびやかさと強さを感じた。

 未来の主役は彼女、彼らの世代だ。「新しい風」を、政治の場にも吹かせていくことが必要だと感じた。

2022/06/28
厚かましいバイデン大統領

米国の支持率も40%に低下している。 理由は解らないにしても、ウクライナ支持を世界中に広げようとしています。

言葉を換えれば、戦争を世界中に広げようとしている、と言ってもよい。 こんな世界の政治指導者がそのままいうことをみんな聞いているのはどうしてなのか?

最高に大事にすべき道徳律は人を殺してはならないということでしょう。 その意味は、いのちを最高に大事にする道徳律に発しているのです。 ふざけた大統領です。 最悪の大統領です。 はじくそな大統領と言わざるを得ません。

プーチンの偽悪戦略に乗せられた人類

2022年6月24日   田中 宇
今回のウクライナ戦争の、私にとって理解困難な謎の一つに「なぜロシアは2月24日の開戦時に、異様に大規模な全面戦争をいきなり始めたのか」というのがある。ロシアが今のウクライナ戦争で達成したいことは、ウクライナの極右政府や軍が東部2州(ドンバス)のロシア系住民をいじめたり殺したりしていたのをやめさせることだ。開戦前、ロシアの政府や軍は、ドンバスを助けるために軍事的なことをほとんどしていなかった。ロシアの軍や諜報機関の要員たちが私服でロシアからドンバスに越境して露系民兵団の顧問をしていただけだ。露軍はドンバスに入っていなかったし、兵器の支援もしていなかった(民兵団はウクライナ軍からの転向者が持ってきた兵器で戦っていた)。次の段階として、露軍がドンバスを助けるなら、まず兵器を越境支援するとか、露軍がウクライナ全土でなくドンバスだけに侵攻するといった展開が予測された。私はその線に沿って開戦を予測する記事を開戦前の今年1-2月に書いた。 (ロシアは正義のためにウクライナに侵攻するかも) (ロシアがウクライナ東部2州を併合しそう)

だが、2月24日に実際に露軍がウクライナに侵攻した時、露軍は電撃的にウクライナ全土の制空権を奪い取り、ドンバスだけでなくキエフに北部などにも地上軍を入れた。露政府が発表したウクライナ侵攻(特殊作戦)の目的は、ドンバス露系住民の保護だけでなく、それよりはるかに広範な、ウクライナ全体の非武装中立化と極右勢力排除(非ナチ化)だった。私は、ロシアが一足飛びにウクライナ全土を戦争の対象にしたので驚いた。露軍が東部ドンバスだけに侵攻しても米国側は猛烈な対露制裁をやるのだろうから、それならロシアとドンバスを安全にするために非武装中立化や非ナチ化、全土の制空権剥奪といった大きな目標を掲げたのでないかと考えたりした。 (ロシアは意外と負けてない)

もし2月24日に露軍がウクライナ全土でなく東部ドンバスだけを侵攻対象にして、ドンバスの露系住民がそれまでの8年間に米国傘下のウクライナ極右政権からいかにひどいことをされてきたかを世界に向けて強調して説明していたら、ロシアは今のように米国側から猛烈に敵視されなかったかもしれない(単に米国側に無視されて極悪のレッテルを貼られて終わっていたかもしないが)。これまでドンバスの露系住民をひどい目に合わせてきた「犯人・黒幕」は米国だ。ロシアは被害者の側だった。米国が2014年にウクライナに諜報的に介入して親露政権を転覆して米傀儡の極右の反露政権を就任させた後、極右政府はドンバスなどの露系住民に前政権が与えていた自治を剥奪し、弾圧してドンバスで内戦を勃発させ、8年間で14000人の露系を殺した。米国はこの8年間、ウクライナを傀儡化してロシアの在外邦人である露系住民を殺し続ける「ロシアを怒らせる策略」を続けてきた。 (優勢なロシア、行き詰まる米欧、多極化する世界)

ウクライナとロシアは別々の国だから、何の前提もなければロシアがウクライナに侵攻したら「戦争犯罪」になる。だが歴史的に見ると、ウクライナとロシアは1990年のソ連崩壊まで、ソ連という1つの国の中にあった。ソ連崩壊後も、ウクライナを含む旧ソ連各国にそれぞれ一定数のロシア人(露系住民)が住んでいる。露軍の重要なセバストポリ軍港があるクリミアが、ウクライナに属していたりする(ウクライナ系の権力者だったフルシチョフが1954年にクリミアの帰属を変更した)。ソ連崩壊後、ウクライナとロシアが別々の国であるには、ウクライナがロシア敵視にならず、国内の露系住民を大事にして、露軍がセバストポリ港を使うことを承認し続けることが必要だった。米国は、これを崩す目的で2014年にウクライナの政権転覆を扇動・実現して露敵視の極右政権を就かせ、露系住民の人権を剥奪し、セバストポリ港を露軍に使わせないと新政権に言わせた。米国はウクライナを傀儡化してロシアに宣戦布告したも同様だった。ロシアは正当防衛としてクリミアを分離独立させてロシアに併合した。露系住民の保護は後手になった。 (ウクライナ戦争で最も悪いのは米英)

歴史的な経緯をふまえると、ウクライナとロシアが別々の国であることは「事実の半分」でしかない。残りの半分は、この8年間のように米国がウクライナを傀儡化してロシア敵視をやらせた場合、ロシアが軍事的な報復をやることが「侵略戦争・人道犯罪」」でなく「正当防衛」である、ということだ。

しかし同時にいえるのは、ロシアが2月24日の開戦で東部ドンバスだけでなくウクライナ全土を軍事行動の対象にして、露系住民の保護だけでなくウクライナの非武装中立化や非ナチ化を軍事行動の目的にしてしまったため、上で述べた歴史的経緯を踏まえた正当防衛という見方が吹き飛んでしまい、ロシアが突然にウクライナを侵攻する戦争犯罪をおかした、という話だけが世界に流布することになった。「極悪なロシアを絶対に許すな」「プーチンを戦争犯罪者として裁かねばならない」「プーチン政権が潰れるまでロシアを徹底的に経済制裁せねばならない」という話になっている。この点でプーチンのロシアは大失敗した。・・・・・。そうなのか??。 (濡れ衣をかけられ続けるロシア)

常識的には、世の中から「善人」「正義」とみなされれば成功だし強い。「悪」とみなされれば失敗であり弱い。常識的にはそうだ。だがロシアの場合、突然「外国」であるウクライナに大々的に軍事侵攻して「悪」「極悪」のレッテルを貼られ、米国側から猛烈に経済制裁されたものの、経済制裁はロシアでなく米国側に石油ガス資源食料類の高騰と物不足・経済破綻をもたらす半面、ロシアはインド中国など非米諸国との結束を強めてむしろ経済的に強くなっている。軍事的にも、米国側がいくらウクライナを支援してもロシアの優勢はゆるがず、すでに露軍はドンバスやクリミア周辺を安定的に占領し、軍事作戦(侵攻)を成功させている。米国側が「極悪なプーチンのロシアを許すな」と叫んで厳しい対露経済制裁を続けるほど、米国側は経済的に自滅し、ロシアは非米諸国と結束して覇権の多極化を進めて成功していく。ウクライナでは露軍が支配地域をじわじわと広げて勝っていく。 (ノボロシア建国がウクライナでの露の目標?)

プーチンがドンバスだけでなくウクライナ全土を対象にする派手な侵攻劇を展開し、米国側が激怒してロシアに極悪のレッテルを貼って極度に経済制裁するように仕向けたことが、ロシアの優勢と米国側の自滅につながっている。プーチンは、あえて派手な侵攻劇を展開して極悪者になることで、経済と軍事の両面でロシアを勝たせ、米国側を自滅させている。プーチンはもしかして、常識的には大失敗である派手な侵攻劇を意図的に展開し、米国側がロシアに極悪のレッテルを貼って自滅的な対露制裁をやるように仕向ける「偽悪戦略」を事前に考えたうえで実行し、成功しているのでないか。 (ウソだらけのウクライナ戦争)

露軍がウクライナ侵攻を成功裏に進めていることは、ウクライナ市民の死者数の少なさにも表れている。国連(OHCHR)が6月16日に発表したところによると、2月末の開戦以来の戦闘で4509人のウクライナの一般市民が死んだ。最近の記事で私は、ウクライナ市民の死者総数が5000人ぐらいでないかと書いたが、それよりさらに少ない。露軍は4か月の戦闘で4509人しかウクライナ市民を死なせていない。同時期に露軍は1万-2万人のウクライナ兵士を殺したことを最近の記事に書いた。露軍は開戦当初から、ウクライナの市民や街区や耕作地をできるだけ破壊せず、ウクライナの軍隊だけ破壊して非武装化と非ナチ化を効率的に進めると言っていたが、そのとおりにやっており、露軍の作戦は成功している。米軍はイラクで200万人(人口の1割)、アフガニスタンでも50万人以上を殺している。露軍が殺した数と桁が全然違う。殺した数から言うと、米国こそ戦争犯罪を重ねる極悪の国だ。 (Ukraine War Hits Grim Milestone As Civilian Deaths Surpass 10,000: UN 題名が間違い) (すでに負けているウクライナを永久に軍事支援したがる米国)

プーチンは先日のサンクトペテルブルクの経済フォーラムで、非米諸大国のゆるやかな同盟体であるBRICSのうち、最近やる気がない南アフリカをのぞいた4か国(露中印伯)と、インドネシア・イラン・トルコ・メキシコという大きめの4か国を合わせた8か国を、新たなG8と名づけることを提唱した。日本など米国側の「旧G8」がロシアを敵視して追い出してG7に戻ったので、それへの復讐としてロシアが非米諸国を束ねて新G8を作った。米国側の旧G8はインフレと経済破綻で急速に衰退して時代遅れの存在になっており、これからは非米側の新G8の時代だ、というのがプーチンの言いたいことだ。 (US policies led to ‘new G8’ – Moscow) (Putin says Russia is building the new world order right now)

こんな風にロシアはウクライナ開戦後、軍事的にも経済的にも予定通りに勝利・成功している。開戦時に派手な侵攻劇を展開する「大失敗」をやったことが、今後の経済面の「大成功」につながっている。派手な侵攻劇は「失敗」でなく意図的な「偽悪戦略」だったと考えられる。プーチンは米国側の親露政治家たちから「なぜあんな派手な侵攻劇をやって極悪のレッテルを貼られる大失敗をやってしまったのか。ロシアを擁護したくてもできないよ」と言われているらしく、最近「キエフなどウクライナ全土を軍事作戦の対象にする戦略は、私が命じたことでなく、軍の上層部の希望で進めたことだ」などと言い訳している。ロシアは重要なことを全部プーチンが決める。キエフへの派手な侵攻劇は、軍だけで決めて実行できるものでなく、プーチンが決めた策略である。プーチンは「大失敗しちゃったよ。ぽりぽり。でへへ」とニヤニヤしている。 (Putin: Era of Unipolar World Has Ended Despite Attempts To Preserve it at Any Cost) (米欧との経済対決に負けない中露)

近現代の人類の戦争では、オスマン帝国や日独からサダム・フセインまで、負ける側が戦争犯罪者として極悪のレッテルを貼られてきた。覇権を持つ英米はいつも正義で、いつも勝者だった。ベトナムやイラクやアフガンで米軍が極悪な戦争犯罪をやって敗退しても、マスコミ権威筋は米国に敗北や極悪のレッテルを貼らず、米国は無傷のまま次の戦争を展開してきた。日独の戦争犯罪は、戦時プロパガンダをそのまま「事実」にした誇張歪曲捏造だらけだが、今でも日独は極悪のレッテルを貼られたままだ。戦争犯罪は真偽と関係なく永遠の汚名だ。永遠の土下座。そのような常識からすると、プーチンの偽悪作戦はコペルニクス的転回だ。完全洗脳で軽信的な日独の人々(とくに知識人)には理解不能で想像もつかないだろう。 (権威筋や米国覇権のゾンビ化)

英米は、戦争をめぐる善悪関係を絶対的なものにしているので、米国側(英米傀儡)の人々は勧善懲悪の善悪観念に縛られ、プーチンのロシアを永久に極悪の戦犯とみなし、米国側を自滅させロシアを強化する極度の対露経済制裁をやめられない。欧州などはエネルギー資源不足になって窮乏しているが、対露制裁をやめるのでなく、制裁を続けるふりをして抜け穴を作って必要な資源類をこっそりロシアから輸入し続けている。米国側のネオコンや、その傀儡であるゼレンスキーとかが「もっとちゃんとロシアを制裁しなきゃダメだ」とネジを巻き直し続け、米国側の経済自滅を加速している。最近はリトアニアが、EUの対露制裁の一環として、ロシア本土から飛び地の領土であるカリーニングラードへの物資の輸送を止め始めており、それへの報復としてロシアが欧州へのガスなどの輸出をさらに減らし始めている。米国側、とくに欧州の経済自滅がこれからひどくなる。 (Germany accuses Putin of trying to sow 'chaos' by slashing Europe's gas supplies) (Oil Giants Warn Of Much Higher Prices For The Next 3-5 Years Amid Lack Of Supply)

このように大成功している偽悪作戦は、プーチンや側近群らロシア人の発案なのか??。私の勘では、そうでなく、米国の諜報界のネオコンら隠れ多極派の発案だと思われる。多極派は、米国の覇権を自滅させて世界を多極化するために、ベトナムやイラク・アフガン戦争などで米国の政府や軍に稚拙で過激で残虐な殺戮を手がけさせて失敗させ、世界の人々が米国に愛想を尽かし、米国が自滅するとともに対米自立する国々が増えて覇権が多極化する流れを作ろうとした。だが実際は、親米だけでなく非米的な諸国まで、米国が覇権を保持していた方が便利だと考えて米国の残虐な戦争犯罪から目をそらし続け、善悪が歪曲された状態を容認し続けた。 (ポスト真実の覇権暗闘)

米国はいくら極悪な戦争犯罪を重ねても人類から見てみぬふりをされ、ネオコンの隠れ多極化策は失敗し続けてきた。米国は何をやっても悪にされず、対照的に、米国が敵視した諸国は濡れ衣もしくは針小棒大に極悪にされる。それならば、その善悪歪曲の構図を逆手にとって、ロシアがウクライナで見かけだけ派手な侵攻劇(実際の市民の死者は戦争として僅少)をやって戦争犯罪のレッテルを貼ってもらい、それをテコに米国側が自滅的な対露制裁をやって覇権を失って多極化するというシナリオはどうだろう、良いじゃん、やろうぜ、とネオコンとプーチンが意気投合し、実行してみたら大成功して今の事態になっているのでないか。 (米諜報界を乗っ取って覇権を自滅させて世界を多極化)

プーチンの偽悪戦略は、中国など非米諸国を米国側と分離させて覇権の多極化を進めるための策でもある。世界が今のように米国側と非米側に分裂しておらず、米国覇権下の世界単一市場だった従来、世界各国は米国側と非米側のどちらに属すか二者択一で決める必要などなかった。だが今や中立は許されず、非米諸国はロシアと結束せざるを得ない。否応なく多極化が進む。 (中立が許されなくなる世界) (Russia Overtakes Saudi Arabia As China’s Top Oil Supplier)

今後の時代、ロシアや中国への敵視は、資源を入手できなくする馬鹿者の態度だ。日本では、右翼が対米従属の一環として昔からソ連ロシア敵視であり、彼らは米覇権崩壊とともに存在そのものが消えていきつつある(代わりにちゃんとした右派・保守派が出てくればいいのに、右の人々は米覇権衰退にも気づかずダメなままだ)。他方、左翼政党はかつて中露に寛容だったのに、最近になって中露敵視に転向しており、こちらも米英ネオコンのうっかり傀儡の馬鹿者になっている。諜報界肝いりの国際共産主義運動から発生したくせに、ちゃんと世界を見ていない。 (覇権の暗闘とイスラエル)

プーチンの偽悪戦略について長々と説明したが、これは私が開戦直後から直感的に思って書いてきたことでもある。私の文章を読んで敏感に理解する読者にとっては同じことの繰り返しだろう。だが、教条的な日本の左翼さま・知識人たちとかジャーナリストさま方とか、自分の頭は柔軟だと思い込んで実は全くそうでない人々は、どのように説明しても理解してもらえず、だってプーチンは無実のウクライナに侵攻したでしょ、極悪でしょ、などと、うっかり傀儡的なことを言ってくるのだろう。新聞とかテレビとかが言っていることは最近まったく頓珍漢、というか最悪だ。最大の戦争犯罪者とは実のところ、戦争反対とか地球温暖化対策とかコロナワクチンを全員にとか、インフレ対策として利上げすべきだとか言っている、永久に軽信的な人々だと思う。


こんな見方があったのだろうか。 そう理解すればその理解のほうが正しいのではないか。
だが、敵味方の対立観は地球の温暖化がどう進んでも解決にはならない。
やっぱり「みんなの為にいのちを懸ける」、それが真剣に考えなければならない道筋だろう。
やっぱり、アメリカ大統領はとんでもない厚かましい人に違いない。