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続折々の記 2022 ⑦
【心に浮かぶよしなしごと】
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【 08】08/07
     七夕さま   
     原爆77年、No more 、atmic bomb    悲しい現実の世態
     海峡、ペロシ・ショック 訪台、米の台湾関与強化映す   〔中:米〕
     中韓の思惑それぞれ 米との距離にらみ外相会談   
     「中国は信頼を裏切った」剛腕アメリカ大使が怒りの直言!   

 2022/08/07
七夕さま     古代からの文化

7月7日は七夕(たなばた)。 折り紙で七夕飾りを作ったり、短冊に願い事を書いて、手芸の上達などを願います。 そんな七夕という行事には、どんな意味や由来があるのでしょうか。
織姫と彦星って天の川のどのあたり? 七夕飾りってどんな種類があるの? この日に食べるご飯はそうめん? そんな七夕のいろいろを解説します。

● 七夕とは?七夕とは?

・ 七夕ってどんな日
七夕とは、織姫(おりひめ)さまと彦星(ひこぼし)さまが天の川を渡って、1年に1度だけ出会える7月7日の夜のこと。短冊に願い事を書いて、笹竹に飾り付けます。 雨が降ると天の川が渡れない」ともいわれて、てるてる坊主をつるした人も多いのでは。 かつては旧暦の7月7日だったので、現在でいうところの8月上旬~下旬ごろ。昔は晴天率の高い行事だったのです。
月の動きに基づく旧暦では、7日は必ず半月。その月も22~23時ごろには西に沈むため(※地方により多少時間がずれます)、夜半には天の川がよく見える日だったようです。 新暦の現在では、7月7日は日本の多くが梅雨のさなかですね。すごくざっくり平均すると、晴れる確率は3割ぐらいです。でも、東海地方や山口県などには、「雨が降った方が縁起がいい」という言い伝えも残っています。

・ 七夕の歴史・由来
七夕のお話は、中国古代の民間伝承がもとになっています。 織姫と彦星は、中国風だと織女(しょくじょ)、牽牛(けんぎゅう)。 ちなみに韓国やベトナムにも七夕があります。
日本には、奈良時代に宮中儀式として伝わり、織姫が機(はた)織りの上手な働き者だった…という内容から、手芸や裁縫の上達を願う風習につながりました。 星に願い事をする原型はここから始まっています。
時代が下って江戸時代になると、七夕は「五節句」の一つとされ、幕府公式の祝日でした。 寺子屋などでは紙の短冊に願い事を書き、読み書きの上達を願ったようです。 鳥居清長が1795年ごろ描いた浮世絵には、いろんな形の短冊が描かれていますね。
ちなみに七夕と書いて「たなばた」と読むのは、日本では古来、神事などに使う高貴な布を織る行為をたなばた(棚機)と呼んでいたため。 本来なら「しちせき」と読む外来語に、「たなばた」という大和言葉を当てたようです(他にも諸説あります)。

・ 織姫と彦星の伝説
国を超えて広く伝わる織姫と彦星のお話には、いろんなバリエーションがありますが、以下の内容はほぼ共通しています。
天帝(神様)の娘である織女は、機織りが上手で働き者の女性。 天帝は、同じく働き者で牛飼いの牽牛と引き合わせました。 二人はひと目で恋に落ち、結婚しました。
ところが結婚すると遊んでばかりで、働かなくなるという結果に。 怒った天帝は二人を天の川の両岸に引き離しましたが、織女が泣いて悲しんだため、年に1度、七夕の夜にだけ会うことを許すようになった…というあらすじです。
ちなみに、織女星(しょくじょせい)はこと座のベガ、牽牛星(けんぎゅうせい)はわし座のアルタイル。 どちらも1等星で明るい星です。
日本では7月上旬から見えやすくなり、9月上旬ぐらいまでよく観察できます。 七夕のころだと、20~22時ごろ、東の空の下の方に見え始めます。 はくちょう座のデネブを加えて、「夏の大三角」とも呼ばれています。
農業に適した季節になると明るくなるので、農業や養蚕などをつかさどる星と考えられました。 もっとも観察しやすいのは8月上旬で、やはり旧暦の七夕のころ。
そんな旧暦の七夕を、国立天文台は「伝統的七夕」と呼んで毎年公表しています。 ちなみに、2021年の伝統的七夕は、8月14日(土)です。

● 七夕飾りとは?

・ 七夕飾りの意味
色とりどりの短冊や、いろんな形の飾りを笹竹に吊す七夕飾り。 昔は高ければ高いほど星に願いが届くと考えられ、屋根の上まで高くかかげていたようですよ。
折り紙で作る七夕飾りにはいくつかの種類があり、「七つ飾り」と呼ばれます。 それぞれにこんな意味が込められています。
▶吹き流し  機織りやお裁縫の上達を願う飾りです。 かつての宮中儀式で、五色の糸を長い針に通してお供えしていたものを、紙で表現したものです。
▶くずかご  清潔、倹約を意味しています。 七夕飾りを作るときに出た紙くずを入れて飾ることも。
▶網(あみ)飾り  漁業の網(あみ)から生まれた飾りです。 大漁を祈願しています。
▶折鶴  家内安全や、長寿を願う飾りです。 千羽鶴にする場合もあります。
▶巾着(きんちゃく)  金運の上昇や、貯蓄を願って飾ります。 財布の場合もあります。
▶紙衣(かみこ)  折り紙で作った人形や着物の形のもののこと。 裁縫の上達を願うほか、病気や災いの身代わりになってもらうという意味もあります。
▶短冊  「五色の短冊」に願い事を書いて飾ります。 五色とは、赤・黒(紫)・青・白・黄のこと。

・ 五色の短冊の意味
「五色の短冊」とよく言いますが、なぜ五色なのでしょう?
五色は、古代中国の「五行説」という自然哲学からきています。 万物のすべてを構成すると考えられた5つの元素に、それぞれ色を当てはめたものです。
  火(炎)=赤
  水=黒
  木(植物)=青
  金(鉱物)=白
  土(大地)=黄
のちに、青は緑も含むようになり、黒は縁起が悪いとして高貴な色である紫が用いられるようになっています。

● 七夕に食べる料理

・ 索餅(さくべい)
七夕の食べ物といっても、特に思い付かない人も多いのでは。 でも、ちゃんとあるのです。
伝統的なものの一つが「索餅(さくべい)」。 小麦粉や餅粉をひねって揚げたお菓子で、唐の時代に日本に伝わりました。 今でも奈良県では「麦縄」と呼ばれ、親しまれています。
・ そうめん
索餅が、だんだんと進化していったものがそうめん。 例えば宮城県仙台市では今も、400年の伝統を持つ「仙台七夕祭り」が行われていて、そうめんが定番の食べ物です。
そうめんには色つきのものもあるので、五色の短冊にちなんで「五色そうめん」にすると、七夕らしさが演出できますね。
・ かりんとう
索餅にもっとも近いお菓子が、かりんとうです。 かりんとうは唐菓子(とうがし・からくだもの)が原型とも、スペインの南蛮菓子がルーツともいわれています。
東北地方のかりんとうはバラエティ豊富。 秋田県には短冊形や落ち葉の形のかりんとう、 岩手県には渦巻き形のかりんとうがあり、どれも個性のあるおいしさです。

※ まとめ
七夕のいろいろ、いかがでしたでしょうか。 地域ごとの言い伝えや伝統にも思いをはせつつ、天の川を眺めてみたいものですね。

【参考文献】
宮本常一『歳時習俗事典』八坂書房、2011年
宮沢敏子『日本の香りと室礼』八坂書房、2019年

 2022/08/09
原爆77年、No more 、atmic bomb     悲しい現実の世態

いのちを瞬時にして奪う近代兵器。 瞬時でなくとも、ピストル一丁の使用にしても命を奪う近代兵器である。

いのちを奪うこと自体、やってはならないし許してはならない。 いのちこそ、生きものの本尊であり、モーゼはこれを神と表現した、私はそう思っている。

今日は長崎原爆その日であった。 一昨年前から何処からやってきたのかテッポウユリが我が家の前で咲くようになった。 今年は数がふえて指では数えきれない。 お盆が近づいて長い花の蕾をどれも準備しています。

テッポウユリはどうして人の前にきて綺麗な花をみせてくれるのか? いのちの素晴らしさを感ずるのです。

No more 長崎 !!

人間界の醜態はいのちの世界から見れば、悲しい限りなのです。
以上終り

 2022/08/10 (時時刻刻)
海峡、ペロシ・ショック 訪台、米の台湾関与強化映す  〔中:米〕

写真・図版 【ペロシ米下院議長訪台をめぐる主な経緯】

 ペロシ米下院議長が台湾を訪問して9日で1週間が経った。猛反発する中国は台湾周辺での大規模な軍事演習で応じ、中台統一に向けた歩みを進める構えを見せる。米国の台湾戦略も、現状からの見直しが浮上する。「ペロシ・ショック」が米中関係と世界にもたらした影響は、深刻さを増しそうだ。▼国際面=台湾「屈しない」

 ペロシ米下院議長の台湾訪問から6日が経った8日。訪台をめぐる一連の動きに沈黙を保ってきたバイデン米大統領が重い口を開いた。

 「台湾の状況を心配しているか」。記者団から尋ねられたバイデン氏は、中国の台湾周辺での軍事演習といった対抗措置を念頭に「懸念はしている。(中国が)これ以上のことをするとは思っていない」と答えた。ペロシ氏の訪台の判断の是非については、「彼女の判断だ」と述べるにとどめた。

 米側に不信感を強める中国に反論するように、バイデン政権の高官らは「米国の台湾政策に変わりはない」と、連日会見で繰り返している。

 ただ実際には、ペロシ氏の訪台は、バイデン政権が台湾への関与を強めつつあるなか、軌を一にするようにして行われた。

 「世界で専制主義と民主主義の争いが起きている」

 ペロシ氏は3日、蔡英文(ツァイインウェン)総統と会談後の記者会見でこう述べ、台湾との連帯がこれまで以上に必要だと強調した。「民主主義対専制主義」という対立構図は、バイデン氏が中国やロシアを念頭に掲げてきたものだ。

 中国による台湾への武力侵攻も、台湾の独立の動きも望まず、現状維持を求める米国は、台湾への防衛の意思を明確にしない「あいまい戦略」を守ってきた。だがこの戦略は、バイデン政権下で変わりつつあると受け止められている。

 バイデン氏は今年5月の会見で、台湾有事の際に台湾防衛のために軍事的に関与する意思を問われ、「イエス」と明言した。

 米アメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・マッツァ研究員は、「バイデン氏個人には、台湾防衛の意思があるようだ。米国の政策は変わっていないが、戦略のあいまいさは以前より減っている」と指摘する。そんななかでのペロシ氏の訪台は、「中国の台湾侵攻時に、米議会は米国が台湾を防衛することを支持するだろう、と中国側に受け止めさせるものだった」とみる。

 背景にあるのは、中国による台湾侵攻への警戒感の高まりだ。米インド太平洋軍のデービッドソン司令官(当時)は昨年、2027年までに中国が台湾に侵攻するおそれがあると指摘。11月に中間選挙が控えるバイデン政権は、台湾をめぐって米中関係がさらに緊迫する事態を避けようとしているが、今後の戦略は見えない。米国内ではペロシ氏の訪台を疑問視する声も出ている。(ワシントン=清宮涼)

 ■中国、「中間線」越え 統一へ布石

 中国は、「激怒」のポーズを示しつつ着々と布石を打つ構えだ。

 中国軍の軍事演習で、台湾海峡をめぐる力の均衡は破れつつある。1995~96年以来の「台湾海峡危機」再来を予感させる。

 6日、中国軍が公表した写真には、艦船の甲板で兵士が双眼鏡をのぞく先に台湾の軍艦と台湾本島とみられる海岸線が写っていた。台湾メディアは、写っているのは台湾東部・花蓮の電力プラントだと伝えた。

 台湾国防部(国防省)によると、中国軍は4~7日の演習で、台湾海峡の中央に設けられた暗黙の休戦ライン「中間線」も100回以上、越えた。中国の国防大学教授の孟祥青少将は、国営中央テレビで「いわゆる『中間線』を徹底的に打ち破った」と語った。

 5日、中国外務省が今回の事態を受けて打ち出した8項目の対米報復措置には、米中両軍の実務者協議や海上安全協議の枠組みの停止も盛り込まれた。

 中国政府系のシンクタンク幹部は停止になった枠組みについて「台湾海峡危機の教訓を踏まえて90年代末から築かれたものが中心だ」と説明する。このままなら双方の信頼関係は崩れ、一触即発の当時の局面に戻る含意を持つ、という。

 中国の猛反発の根源はなにか。対米関係が専門の北京の国際政治学者は「『一つの中国』原則を骨抜きにする米国の動きを、いつまでも黙認するわけにはいかないからだ」と解説する。

 昨年のバイデン政権の誕生で、中国側はトランプ政権以来の緊張が緩むと期待したが、米国は対中敵視をむしろ強めた。台湾への武器供与は今年だけで4回に上り、前政権の要人の訪台も相次いでいた。

 「火遊びをする者は必ず自らを焼く」

 習近平(シーチンピン)国家主席は7月28日の首脳協議で、バイデン氏にこう伝えた。ペロシ氏の訪台が踏み越えてはならない線だとのメッセージだったが、あえなく無視された。共産党大会を控えた中国政治の最も敏感なタイミングとも重なり、中国側は「米国による公然たる挑発」(王毅〈ワンイー〉国務委員兼外相)と受け止めた。

 首脳間の信頼が失われ、対立に歯止めをかけることは一層難しくなっている。

 習氏は党大会で続投を決め、その先の5年の任期で悲願の中台統一に本腰を入れるとの見方が根強い。台湾周辺の大規模演習は、統一に向けたシナリオの一環とみることができる。中国外交筋は「想定されていた動きが早まっただけとも言える。米国は中国の戦略的意図を完全に見誤った」と話す。中国軍の台湾周辺での活動が常態化する、との懸念も高まる。当初「7日まで」と予告された軍事演習は、9日も続けられた。(北京=高田正幸、冨名腰隆)

▼国際面=台湾「屈しない」
中韓の思惑それぞれ 米との距離にらみ外相会談

 韓国の朴振(パクチン)外相が9日、訪問先の中国山東省青島で王毅(ワンイー)国務委員兼外相と会談した。台湾問題をめぐって米中の亀裂が深まる中、韓国は米国との関係を強めながら、中国との関係も維持したい立場だ。一方の中国には、米韓の関係強化にくさびを打ちたい思惑がある。会談では、半導体などの供給網の安定的な管理に向けた協力を確認した。

 5月に発足した尹錫悦(ユンソンニョル)政権で外相に就いた朴氏の訪中は初めてとなる。

 韓国にとって中国は最大の貿易相手国で、主力産業の半導体の輸出先でも4割を占める。一方で、中国に頼らない供給網づくりをめざす米国は、米韓関係の強化を志向する尹政権に代わった韓国を中核に引き込む動きを見せている。

 ただ、半導体大手の幹部は「米国にシフトしていくが、時間はかかる」と話す。尹政権の高官は「米国だけではなく、中国や日本を含めた立体的な協力関係の維持に努める」と、米国の思惑とは一線を引く。朴氏も王氏との会談では、半導体分野で中国を重視する立場を伝えたとみられる。

 また、韓国外交省によると、会談で朴氏は「北朝鮮が挑発ではなく対話を選択するように、中国が建設的な役割を果たしてほしい」と求めた。韓国は、北朝鮮の後ろ盾の中国との安全保障分野での余分な摩擦は避けたいのが本音だ。ペロシ米下院議長の訪台で米中の亀裂が深まる中、尹大統領は訪韓したペロシ氏と「休暇中」を理由に面会せず、電話協議にとどめた。

 一方の中国には、米韓の接近に歯止めをかけたいとの考えがある。4日に台湾問題で日中外相会談を中止しながら、朴氏を迎えたことは待遇の良さを物語る。

 とは言え、中国では米韓関係を重視する保守系の尹政権が、文在寅(ムンジェイン)前政権のように米中のバランスをとるとの見方は少ない。東アジアの国際関係に詳しい北京の研究者は「文政権と比べて米国寄りになることは間違いない。振り幅をいかに少なくするかだ」と話す。

 中国の懸念は、在韓米軍への高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD〈サード〉)の追加配備だ。北朝鮮に対抗するため尹氏は大統領選で追加配備に言及していた。中国は自国の安全保障に深く関わるとみて注視する。(ソウル=鈴木拓也、北京=高田正幸)

「中国は信頼を裏切った」剛腕アメリカ大使が怒りの直言!
   「文藝春秋」編集部 - 5 時間前

 今年1月に着任したラーム・エマニュエル駐日アメリカ大使(62)は、アメリカの政界では剛腕として名を馳せ、「ランボー」の異名を持つ。大学在学中から政治活動に没頭。民主党陣営での選挙活動と資金集めで驚異的な実績をあげ、若くして頭角をあらわした。

 1993年、ビル・クリントン政権で大統領上級顧問に就任し、ホワイトハウス入りを果たす。当時の上院司法委員長ジョー・バイデン(現大統領)とはそこで知り合った。そして2021年、バイデン政権の発足に伴い、駐日大使に任命された。

 そんなエマニュエル大使は今、覇権主義的な傾向を強める中国に厳しい目を注いでいる。

 中国の何が問題なのか、そして日米同盟は中国とどう対峙すべきなのか?――米民主党きってのタフネゴシエイターが「文藝春秋」のインタビューに答えた。

中国は最大の国際ルール侵害者

 まずは、覇権主義的な傾向を強める中国について、率直な意見を聞いた。するとエマニュエル大使はニヤリと笑みを浮かべて「その質問に答え終わるのには来週火曜日までかかるから、覚悟して下さい」と前置きしつつ、こう答えた。

エマニュエル大使:中国については多くの人の理解が追いついていない部分が多いと思うので、アメリカとしては率直に話をすべきだと思います。

 過去20年間、国際ルールに基づくシステムにおいて、最も恩恵を享受してきたのは中国です。それと同時に、国際ルールに対して最も多くの侵害を行ってきたのも中国にほかなりません。

 中国は正しい決断、投資をしたおかげで、何百万人という中国の人々が貧困から脱することができました。

 ただその過程の中で、ルールを侵害し、他国の知的財産などを盗み、他国をいじめ、抑圧するような行為を繰り返しています。ですから中国の国民が恩恵を享受できた一方で、別の面ではこのシステムを壊す行為を繰り返してきたのです。

――スリランカがデフォルトに陥りました。やはり中国の「一帯一路」政策の犠牲者でしょうか?

大使:スリランカだけでなく、パキスタン、ラオス、エチオピア、ザンビアなど巨額の債務に苦しむ国々をみると、ひとつのパターンが浮かび上がってきます。いずれの国も、中国から押しつけられた巨額の負債によって押しつぶされそうになっています。結果として、これらの国々は経済的成長やポテンシャルの芽を摘まれてしまっているのです。どの国でも状況は似通っています。

 なぜこんなことになってしまったのか。最大の理由は、これらの国々の政府が悪い決断を下したことです。また中国は透明性と説明責任において、国際的な基準で行動していない。これが問題の本質です。

中国に「一度騙されたら次はない」  では、中国が世界の貿易市場の枠組みに参加するには、どのような条件をクリアする必要があるのか? これについても、エマニュエル大使の答えはきわめて辛辣だった。

大使:アメリカでは「一度騙されたら次はない」といったような意味合いの表現を使うことがあります。

 中国がWTOに加盟して我々はどのような教訓を得たでしょうか。中国は守るべきルールを全て破りました。中国のような経済的スパイ活動を行う国は他に存在しません。中国のような知的財産の窃盗を行う国もありません。市場原理に逆らう形でルールを変え、自分達だけがトクをするようなことは、中国以外の国はしていません。

 これらを踏まえれば、世界の貿易市場の枠組みに中国を迎え入れることや、また中国がそれらのルールを守ると期待することは現実的ではないと思います。

 でも、これは中国自身が下した決断です。他国はルールを守り、中国を迎え入れようとしましたが、中国はその信頼を裏切るという決断を自ら下したのです。

 私が議員だった頃、大工用の脚立を製造している企業が選挙区にありました。しかし、中国はその企業の特許を盗み、中国政府の補助金を使ってコピー商品を格安に大量生産して販売したのです。私はその企業を助けようとしていたのですが……。このように中国は知的財産、テクノロジー、ビジネスモデルを盗むのです。そんなことをしておきながら、なぜ友好国がいないのかわからないといったことを言っているようですが、それは幾度も信頼を裏切ってきたからにほかなりません。

世界を中国の思い通りにすることは許さない

 そんな中国に対抗する安全保障および経済の枠組みとして、QUAD(日米豪印戦略対話)の役割が期待されている。だが、ロシアによるウクライナ侵攻について、インドと他の加盟国の間ではロシアに対する温度差が指摘されている。この点について、エマニュエル大使はどう受け止めているのか? すると、「その質問、冗談でしょう?!」といたずらっぽく笑い、QUADの協調に絶対の自信を見せた。

大使:QUADは確立された枠組みであって、考えが似通った国々によって構成されています。根幹の目的、そしてベースになっているのが、「自由で開かれたインド太平洋」の維持です。

 中国はQUADを警戒しています。なぜならQUADは、中国に同盟国が無いことや中国が孤立していることを際立たせ、さらに世界のあり方を中国の思い通りにすることを許さないからです。軍事的・経済的な理由だけではありません。アメリカ、日本、オーストラリア、インドが一体となった「政治力」が中国にとって脅威なのです。脅威と見られることはQUADの意図するところではないのですが、中国は脅威とみなしています。その理由は、世界のあり方について、QUADによって中国の主導権が奪われると見ているからです。

――では、インドとの温度差は克服できると?

大使:ずばりYESです。

安倍元首相のレガシー

 インタビューの中でエマニュエル大使が繰り返し言及したのは、「自由で開かれたインド太平洋」という言葉だった。

大使:「自由で開かれたインド太平洋」……この哲学・戦略の名付け親は、まさに安倍元首相でした。この言葉は、いまや誰もが口にする言葉です。オーストラリアや日本のリーダー、インドの政府関係者、欧州の人々に至るまで、皆が口にしています。今では我々は何の疑問も持たず日常的にこのフレーズを使っていますが、これこそ安倍元首相のレガシーと言えると思います。

 私たちは「自由で開かれたインド太平洋」やQUADなど、安倍元首相が作り我々に残してくれた枠組みの中で、様々なことを実行に移していきます。安倍元首相は素晴らしいレガシーを残しました。

――では、「自由で開かれたインド太平洋」のために、日米同盟はどのように進化するべきなのか?――エマニュエル大使が忌憚なく語ったインタビュー「中国は信頼を裏切った」は、8月10日発売の「文藝春秋」9月号に全9ページにわたって掲載されている。
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2022年9月号)〔早速平安堂へ注文済〕