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続折々の記 2022 ⑧
【心に浮かぶよしなしごと】
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【 06】08/19
     住民全員が監禁された村   ウクライナ・ヤヒドネ村
        闇の中、壁に刻んだ死者の名
     オケラの歌声
     典型的な内憂外患   世界の患い
        防衛予算、事項要求100超 例外扱い、巨額化の可能性
        五輪延期協賛金で便宜か
     旧ソ連の優等生だったウクライナが直面した「失われた30年」

 2022/08/19
住民全員が監禁された村  (ウクライナ・ヤヒドネ村 )
地下室に28日間壊れた心

写真・図版 【住民らが解放された直後の地下室の様子=3月31日、ウクライナ・ヤヒドネ、オルガ・メニャイロさん提供】

 村に一つしかない小学校の屋根は崩れ、窓ガラスは割れていた。

 ウクライナ北部チェルニーヒウ州のヤヒドネ村(クリックして「チェルニーヒウ州 - Wikipedia」で表示)。ほぼ全ての住民が3月、ロシア軍によってこの学校の地下に監禁された。

 木の扉を開き、階段を下りると、薄暗い地下室に絵本や布団が散乱していた。
 壁に手書きで、10人分の名前と日付が記されていた。
 9日 ムジク   10日 インディロ   11日 ルダニ……。
 地下室で命を落とした住民の記録だった。

 「ここに28日間、350人以上の住民がロシア軍によって閉じ込められていたのです」と管理人の男性は言った。

 恐怖の記憶は、いまも住民の心に傷を残している。「あの日々を思い出すと泣きたくなる」と住民の女性は身をすくめた。学校の目の前のアパートに住むハリーナ・フリストンさん(72)は「学校を見るたびに、すべてを思い出す。つらいです」と言った。

 子どもたちも、トラウマを負った。テチアナ・セメノバさん(40)は解放後、長男マキシム君(7)の異変に気づいた。

 家の壁紙に意味不明な丸や四角を描き続けたり、ロシア兵を描いて「ファシスト!」と言ったりするようになった。

 さらに1カ月が経つと、親の言うことを聞かずに泣きわめいたり、友達と暴力的なケンカをしたりすることが増えた。

 医師の診察を2度ほど受けたが、「笑顔をみせ、自由にさせてあげて。時間が経てば良くなるから」と言われた。

 「この子はまるで、幼稚園児のようになってしまった。医師は待てと言うけれど、もう何カ月も経つ。本当に良くなるのか……」

 ロシア軍の侵攻から、まもなく半年。一見すると、村には平和が戻ったように見える。だが大人も子どもも、心身の傷に苦しみ続けていた。(ヤヒドネ=高野遼)
 (2面に続く)

▼2面
闇の中、壁に刻んだ死者の名
地下に350人、湿気と恐怖と叫び ウクライナ

ウクライナ北部のヤヒドネ村にロシア兵がやってきたのは、3月3日だった。

 兵士らは1軒ずつ民家を回り、地下室に隠れる住民に「学校の地下室に行け」とライフルを突きつけた。

 携帯電話や腕時計は、その場で撃たれて破壊された。「パソコンやスマホを隠していたら、あと10人殺すぞ」と脅された。

 警察官や元兵士だと疑われた男性は射殺された。少なくとも4人にのぼった。

 6日までには、ほとんどの住民が学校の地下室に集められた。大小7部屋に350人以上。最大の80平方メートルほどの部屋には175人が押し込められた。廊下にも人があふれた。

 子供たちは70人以上。最も幼い子は1歳半だった。

 ■電気・食料なく

 地下室での生活は過酷をきわめた。

 横になって寝るスペースはない。小さなベッドに子供たちを寝かせ、多くの大人は座ったまま寝た。

 外は雪が降る寒さ。それでも室内は熱気で蒸し風呂のようになった。電気はなく、どの部屋も、ろうそく1本で明かりをとった。

 トイレもなかった。部屋の隅にバケツを置き、布切れで隠して用を足した。

 やがて食料の備蓄も足りなくなった。ロシア軍がときおり提供するパンや携行食には人が殺到した。

 暗がりの中、時間の感覚も失われていった。幼稚園の先生バレンティナ・ダニロバさん(60)は、鉄のドアに記憶を刻み始めた。

 燃えかすの炭を使い、カレンダーを書いた。毎朝一つ日付を加えた。砲撃の激しい日には下線を引いた。

 隣には、死亡した人たちの名前を刻んだ。

 最初は9日。90歳を超えた男性だった。

 翌10日にもう1人。11日には2人。13日。17日にまた2人……。リストはどこまでも続くように思えた。

 亡くなった人の多くは70代以上だった。地下室には湿気と悪臭が充満した。新鮮な空気が足りなかった。

 ロシア軍が地下室から出ることを許すかどうかは「その日の彼らの気分次第」。外に出られても1日15分ほど。砲撃を恐れ、地下に閉じこもる人は多かった。

 意味不明なうわごとを言ったり叫び始めたりすると、それが死の予兆だった。2日ほどすると、彼らは息を引き取った。

 ロシア軍の許可が出るまで数日間、亡きがらとともに眠ることもあった。

 「誰も生きて帰れないと思っていました。ドアに記録を残したのは、誰かにここでの出来事を伝えるためでした」。ダニロバさんはそう言うと遠い目をした。

 ■酔ったロシア兵

 一方、ロシア兵は学校の1階や民家に陣取った。

 地下に住民が閉じ込められているため、ウクライナ軍は学校に対して砲撃ができない。ロシア軍は住民を「人間の盾」とし、学校を前線拠点にしていた。

 ロシア兵は「あなたたちを解放しにきた」「ナチスはどこに隠れているんだ」と、ロシア政府の主張に沿ったセリフを繰り返した。偽情報を伝えるロシアの新聞を住民に配り、「ウクライナの多くの都市は降伏している」と言いふらした。

 夜になると、酒に酔った兵士が地下室に下りてきた。「俺と遊ぼうぜ」。若い女性は頭を布で覆い、息を潜めてやり過ごした。

 解放の日は突然やってきた。

 30日。いつもより早く、朝10時にロシア軍は地下室の鍵を掛けた。車両が動く音や砲撃音が2時間ほど続き、静寂に包まれた。

 人々は、ドアを破って外に出た。ロシア軍の車両が消え、兵士もいなかったが、状況がつかめずに大半は地下室にとどまった。

 翌日昼、ウクライナ軍の部隊が到着した。住民たちに笑顔が戻った。兵士と抱き合って涙を流した。多くの住民の生存を知り、ウクライナ兵は「まさか生き残っていたとは」と驚いた。

 長期間の監禁で、人々は歩くのも難しくなっていた。足がむくみ靴は切断しないと脱げない人もいた。

 ■「人間の盾」非難

 欧州安保協力機構(OSCE)が7月に発表した報告書は、ヤヒドネの学校で起きた監禁を「非戦闘員を人間の盾に使用した」例だと指摘。ジュネーブ条約に反する行為だと断じた。

 国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」も5月、報告書で「不潔で息の詰まるような状況において不法に民間人を拘束し、食料、水、トイレの利用を制限した」などと指摘。交戦国または占領国の支配下では市民は保護対象になるとする、ジュネーブ条約に反するものだとした。

 ウクライナ検察は戦争犯罪の疑いで捜査を進めている。またトラウマを抱えた住民たちのケアのため、国際NGO「国境なき医師団」などが支援にあたっている。
 (ヤヒドネ=高野遼)



人はいのちをどう考えるのか? 第二次世界大戦後日本兵のソ連抑留者の取り扱いそのまま ……… 頭を抱え込んでしまう。

今朝は雨がなく、秋冷を感じた。 家の前に咲くテッポウユリ四本、前よりは大きい花の一団でした。 自然は人を癒してくれます。



オケラの歌声

低い小さい声 …… ジ … … … …、 静かにこっそり近づいても鳴き止む。 ケラの鳴き声。

 季節をわきまえている「虫の声」 作詞・作曲者不詳

  あれ 松虫が鳴いている
  ちんちろちんちろ ちんちろりん
  あれ 鈴虫も鳴き出した
  りんりんりんりん りいんりん
  秋の夜長を 鳴き通す
  ああ おもしろい虫のこえ

  きりきりきりきり こおろぎや
  がちゃがちゃがちゃがちゃ くつわ虫
  あとから馬おい おいついて
  ちょんちょんちょんちょん すいっちょん
  秋の夜長を 鳴き通す
  ああ おもしろい虫のこえ   『童謡・唱歌 200』p.230

お盆が過ぎ、テッポウユリは家へ来る人を迎えるかのように道から入るとこへ5~6個、戸間口を過ぎての植え込みにも大きいのが5~6個、咲き始めている。 夜になって秋の虫が鳴き始めたと家内は言う。

この歌のような鳴き声ではない。 ジ … … … …、鳴いている主を見たことがない。 PCでいろいろ検索していると、出てきた。 なんとそれは通称『オケラ』だという。 解説にはこう出ている。
何故夜鳴くのか、というのは恐らく昼間は鳥などに見つかりやすくて天敵も多く、身の危険があるためではないかと言われています。 虫の鳴き声にもさまざまな種類がありますよね。 それぞれの種類を聞き分けるためなのでしょう。
虫たちにとっての鳴き声は命を受け継ぐための声であり、私たちには夏の訪れを感じさせてくれる声。
自然界には、私たちがまだまだ知り得ない沢山の不思議がありますね!
『オケラ』が鳴くとは思ってもいなかった。 彼らはいつも土の中で生きているのだから、種を伝承するという命の営みから外れることはないのだ。 こんなことに気がついたのです。 勿論オスが鳴いてると言います。 大自然のいのちの伝承というのは、名も知らない小さな生物にもちゃんとその能力を備えさせているのです。

 2022/08/21
典型的な内憂外患      世界の患い

世に内憂外患なる言葉がある。 国の内外の変転を表わす言葉と理解している。 教師生活で奈良京都を、生徒を引率した旅行するのがこの地方の中学の習わしとなっていた。 奈良猿沢湖畔の旅館に泊まった時、部屋の変額に「世情の変態雲の如し」という言葉に出会った。

世情の変わりゆく様は雲のようなものである、ほんとにそう捉(トラ)える見方があるんだという感覚があってか脳裏にとどまっている。

今朝の新聞の一面を見ると、

  防衛予算、事項要求100超 例外扱い、巨額化の可能性 概算要求へ防衛省調整
  五輪延期協賛金で便宜か 1億円を1000万円に 組織委元理事

大きい見出しだった。 この二つの始まりからの経過は、今までいろいろと報道されてきている。

始めの項目は目に余るバイデン大統領民主主義を守るという旗印で相手を誹謗し戦争を引き起こして暴利をむさぼる手前勝手な振る舞いです。このために世界は右往左往し行方も知らぬ状況となった。
更にこのため、戦争放棄を規定している憲法を否定し予算編成は内緒にこっそりの悪弊をきたしています。 アメリカの勝手な指示を拒否しなければなりません。
これが外患の概要です。

もう一つの記事は、行政をむしばむ金銭関係の問題です。 これは「青木拡憲(ひろのり)容疑者(83)=贈賄容疑で逮捕」一連の記事ですが、この記事に限らず、行政に携わる一部の人たちが行政が持つ権限を悪用して他の人には解(ワカ)らなければいいという泥棒という醜いお金の悪童です。 これが内憂の氷山の一角です。
  
二つの記事を取り上げます。

防衛予算、事項要求100超 例外扱い
巨額化の可能性 概算要求へ防衛省調整

写真・図版  防衛省は来年度予算案の概算要求で、今年度予算比で約4千億円増となる5兆5千億円超とは別に、要求金額を示さない「事項要求」を100項目以上盛り込む方向で調整に入った。政府関係者への取材でわかった。事項要求には「敵基地攻撃能力(反撃能力)」があると見込まれ、射程が長い「スタンド・オフ・ミサイル」の運用も含められる。岸田政権は防衛費の大幅増を目指しており、年末に決まる新たな防衛戦略の内容次第で巨額化する可能性がある。▼3面=長射程ミサイルも

 事項要求は、大まかな予算を要求する概算要求で、例外的に金額を定めず項目のみを盛り込むことが認められたもの。政府は2023年度の予算で、防衛や少子化対策などを対象とすると決めていた。

 防衛費をめぐっては自民党が国内総生産(GDP)比で現在の約1%から2%以上とすることも念頭に、5年以内に抜本的強化する方針を打ち出している。

 政府関係者によると、防衛省は7月に閣議了解された概算要求基準で定められた要求額として5兆5千億円超を見込む。これとは別に、全体で100項目以上にのぼる「事項要求」を盛り込む方針だ。同省では、事前に見通しの立ちにくい米軍関係経費を除けば事項要求は例年ほとんど盛り込まれていなかった。

 事項要求の対象には、スタンド・オフ・ミサイルの量産を始めることも含まれる。攻撃型の無人機の導入も要求するとみられる。サイバー分野の教育を強化するための施設整備や関連部隊の体制強化なども検討しているという。これらについて政府は、年末に改定する「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」の3文書などを踏まえ、予算編成過程で確定することを認めていた。

 防衛省内には多数の事項要求が入ることについて「実質的には青天井となる。盛り込めるだけ盛り込んだ可能性がある」との見方もある。事項要求はコロナ対策などで認められてきたが、不必要な予算が多く計上されたとも指摘される。(成沢解語)

▼3面=長射程ミサイルも
長射程ミサイル、開発図る 敵基地攻撃能力との指摘も 事項要求

 来年度予算に向け、防衛省が金額を定めずに概算要求する100項目以上の「事項要求」には長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」が複数、盛り込まれる方向だ。このミサイルには、政府が保有を検討する「敵基地攻撃能力(反撃能力)」があるとも指摘されている。▼1面参照

 スタンド・オフは「離れている」といった意味がある。各国のレーダーやミサイルの性能が向上する中、相手の射程内に入らず、安全な場所から相手を迎え撃つ重要性が高まっている。それを実現するとされるのがスタンド・オフ・ミサイルだ。

 その一つが、敵艦艇を攻撃するミサイル「12式地対艦誘導弾」の能力向上型だ。現行型は射程約200キロとされるが、能力向上型は射程を1千キロ程度に延ばすことを目指しているという。車両のほか、艦艇や航空機からも発射できるようにすることが決まっており、来年度の概算要求で開発経費を事項要求とする見通し。車両から発射できるタイプについては配備を早め、量産する経費を事項要求する方向だ。

 このほか、離島に配置し、侵攻を受けた別の離島内の目標地点に向けて超音速で飛んでいく「島嶼(とうしょ)防衛用高速滑空弾」の研究費用も事項要求になるとみられる。こちらも配備を早め、量産開始を見込むという。

 音速の5倍以上となる「極(ごく)超音速」で飛び、変則的な軌道で迎撃を難しくする「極超音速誘導弾」の研究についても事項要求とするとみられる。北朝鮮は日本海に向けてこうしたミサイルを含む発射を繰り返しているほか、ロシアや中国も開発を先行させている。

 ただ、こうした技術が進展し、ミサイルの長射程化が進めば、相手国を射程内に収め、いつでも攻撃が可能になる。このため、日本を攻撃しようとしている相手国を攻撃する敵基地攻撃能力としての機能を持つとも考えられている。年末の国家安全保障戦略などの改定で敵基地攻撃能力の保有が決まれば、こうしたミサイルの配備に向けた動きが加速しそうだ。

 ■離島に応急埠頭、設置研究

 中国をにらんで南西重視を維持し、離島に素早く部隊を展開する能力の向上に向けた予算も事項要求となる方向だ。大規模港湾施設がない離島への部隊や物資の搬入をスムーズにする狙いがある。輸送力の強化に向けた複数の項目も盛り込まれるとみられる。

 尖閣諸島を含む南西諸島周辺をめぐっては近年、中国の活動が活発化しており、海軍艦艇による領海侵入も相次ぐ。5月には空母「遼寧」が艦載機の着艦訓練を繰り返したほか、今月には台湾周辺で軍事演習を実施した中国の弾道ミサイルが沖縄周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内に初めて落下した。

 こうした中、自衛隊は離島で起きる有事を想定し、速やかに迎え撃つ準備を整えるため、離島で部隊を素早く展開する能力向上を目指している。重視しているのが、人員や物資の輸送力だ。ただ、南西諸島には大規模な港湾施設のない離島も多く、侵攻された場合の対処が懸念されていた。

 そこで、防衛省はこうした離島の周辺に仮設の「応急埠頭(ふとう)」を置く研究を始めるための予算を事項要求するという。離島に桟橋を設け、その先に仮設の埠頭を設けることを想定し、艦艇が接岸できるようにすることで、部隊と物資の輸送を支援したい考えだ。

 輸送力強化をめぐっては、自衛隊は昨年9~11月、九州に北海道や東北、四国の部隊を集める大規模訓練を実施。民間の輸送力にも輸送業務を発注し、部隊や物資の離島への集積をシミュレートした。その結果、民間船舶が弾薬を輸送する際の手続きが必要となるほか、物資を車両などに積み込む能力が不足していることが明らかになっていた。

 こうした中、輸送機、ヘリコプターなどの輸送力を強化して素早く部隊を展開させる体制を整える費用のほか、物資の補給のため倉庫の整備も進めるための費用も事項要求するという。(成沢解語)

五輪延期協賛金で便宜か 1億円を1000万円に
組織委元理事

 東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件で、大会組織委員会の元理事・高橋治之容疑者(78)が、大会スポンサーだった紳士服大手「AOKIホールディングス」に対し、大会の1年延期に伴う追加スポンサー料(協賛金)の減免でも便宜を図った疑いがあることが、関係者への取材で分かった。1億円とされた追加金をゼロにしようとし、最終的に1千万円になったという。

 東京地検特捜部は、元理事がAOKI側から受けた主な依頼は(1)スポンサーへの選定(2)五輪エンブレムなどを使った公式ライセンス商品の速やかな承認(3)追加協賛金の減免と認定。これら3点で便宜を供与した見返りに計5100万円の賄賂を受け取った受託収賄容疑で逮捕し、調べている。

 東京五輪は2020年7月に開幕予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期された。組織委は各スポンサー企業に追加の協賛金を求め、業務を委託されていた広告大手「電通」が対応した。

 関係者によると、AOKI側は当初、1億円の追加金を提示された。AOKI前会長の青木拡憲(ひろのり)容疑者(83)=贈賄容疑で逮捕=は電通元専務の高橋元理事に相談。元理事は電通側に「ゼロにしてほしい」と掛け合った。電通側はコロナ下の業績悪化を踏まえてAOKIを減額対象にしていたが、「ゼロにはできない」と主張し、1千万円になったという。

 AOKIが18年に大会スポンサーに選定された際の協賛金は5億円で、この時も高橋元理事が相場より安く調整したとされる。

旧ソ連の優等生だったウクライナが直面した「失われた30年」
緊迫するウクライナ情勢、日本人が知らない「失敗国家」の数奇
  2022.2.2(水)
  土田 陽介 土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 ウクライナ情勢が緊迫化している。1991年12月、旧ソ連邦の崩壊伴い独立した現在のウクライナは、典型的な「失敗国家」ないしは「破綻国家」としての歴史を歩んでいる。さらにウクライナは、ヨーロッパとロシアの「緩衝国家」であり、双方の思惑の中で翻弄されるという数奇な運命を辿っている。

  ウクライナ  外務省の情報
  略史、内政、外交、軍事力、一人当たりGDP、経済概況など見るとよい。

 ウクライナを巡る国際政治に関しては、諸賢による分析が数多い。そうした分析とはあえて距離を置き、独立以来のウクライナの歩みを経済面から振り返り、ウクライナという国が持つ特殊性を確認してみたい。こうした作業も、緊迫化するウクライナ情勢を理解する上での一助になると考えられるためである。

 ウクライナの一人当たり名目GDP(国内総生産)は、独立から30年の間、4000米ドル(約50万円)を天井に増減を繰り返している(図1)。その水準は常にロシアの半分以下であり、ヨーロッパ(欧州連合<EU>)の10分の1程度に過ぎない。実質GDPに至っては独立直前の6割程度の規模にとどまっており、非常に厳しい状況だ。

●図1 ウクライナの一人当たりGDPの推移

 それに、ウクライナは世界でも富の偏在が激しい国の一つだろう。ソ連崩壊に伴う混乱に乗じて巨万の富を成した極少数の新興企業家(オリガルヒ)がいる一方で、時代の荒波にさらわれたまま貧しい生活を強いられる人々は数多い。汚職も蔓延し、巨大な規模の地下経済の下で非合法な活動が行われていると言われる。

 ソ連時代のウクライナは、先進的な工業国だった。