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【 01】11/21
田中宇の国際ニュース解説 仮想通貨とテロ戦争の親密性田
敵基地攻撃能力、初の明言 与党、来週にも合意
敵基地攻撃、論点山積み 攻撃着手時期 ………
2022/11/21
赤ちゃんは母の宝 赤ちゃんはまねの天才
いのちの誕生は母の願いであり、生まれる赤ちゃんは真似(まね)の天才であります。 真似によって自分のすべてを築きあげていきます。 赤ちゃんにとっては真似こそ大事な成長の基本になる世界なのです。
赤ちゃんの真似を思い出してください。 赤ちゃんはよく口のまわりへ口紅をつけるし、幼児になると軽いドアを足で閉めたりする。 すべて自分の周りの真似です。
真似の天才とはどうして言うのか。 天才とはいい過ぎるのではないかと思うかもしれないが、赤ちゃんにとってはこうした動きは、すべて珍しいことであり初めての見たままの体験なのです。 自分も出来るだろうかという行動なのです。 そう考えればその通りだと、誰でも納得できるはずでしょう。 赤ちゃんや幼児にとっては、周りの環境に適応してみようというワクワクした気持ちに満ちあふれているのです。 そうしてみれば、赤ちゃんは天才などという理解の仕方は言い過ぎではありません。
こうした、まねによってすべて自分の世界を築いているのです。
こうした理解ができれば、母親は自分がどうしていいのか、今度は赤ちゃんや幼児に対する考え方と行動の仕方を問題にしなければならないのです。 母親は「どう真似てもらったらいいのか」ということが最大の果たさなければならない行動になってくるのです。
この行動、考え方こそ、母親の最大課題とみていいのです。 その時になって、母親や周囲の人たちの環境をすべて真似て育つ赤ちゃんや幼児の気持ちを最大に尊重してあげる必要があるのです。 こうして環境に適応して生育してくる赤ちゃんや幼児の姿を見れば、真似が如何に大事なことか理解しなければならない筈です。
赤ちゃんや幼児がワクワクして新しい世界になじもうとして一所懸命真似ている、そのことを絶えず母親は考えて、「見られてもいい、聞かれてもいい、行動してもいい、考えてもいい、感じてもらってもいい」それら人としてすべて真似てもらってもいい、そのことを大事に対処すればよいのです。
こうして真似て成長する赤ちゃんや幼児のほんとのことを見ていると、「胎児・赤ちゃん・幼児はみんな天才だ」という言葉の意味を誰でもわかると思うのです。
ですからどんなことでも、見てわかるもの、聞いてわかるもの、さわってわかるもの、喜怒哀楽から話し方にいたるまですべて、真似ができたら微笑んで喜んでやることが大事になるのです。◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 天才という言葉の意味は天が授けてくれた才能をいうのです。 いのちの伝承それ自体に、赤ちゃんが真似ることがインプットされているのです。 私はそう理解しています。
天とは何でしょうか。 西郷隆盛は「敬天愛人」と言いましたし、夏目漱石は「則天去私」の心を大事にしていました。 天とは何なのでしょうか。
シャパンナレッジ(japan knowledge=JK辞書)の「世界大百科事典」項目‘天’(クリック)を見ると詳しく解説しています。 天子様、天皇陛下、天照大神、甘茶で思い出すお寺の天上天下唯我独尊の小さな像も、天の言葉を使っています。
私は朝起きて玄関の錠を開けますが、下駄箱の上の小さなお地蔵さまに向かって合掌し、「私もいのちを大事にいたします。 いのちは大自然に養われ、生物は細胞に支えられ、いのちの願いを生きものの一つひとつに託しています。 いのちの願いとは子孫を残すこととその繁栄を願うことと理解しています」と小声でつぶやくのです。
いのちの親は何でしょうか。 やっぱりいのちであり、そして大昔までさかのぼっても、やっぱりいのちを支えてきたものは細胞のいのちでした。 現代科学の分子生物学の筑波大の教授、村上和雄さんは遺伝子の働きを調べていてその精密さに驚きその構造すべてをとらえることはできないといいます。 そのDNAの能力を something great“なにか偉大なるもの”と言っておられます。
いのちの根源となった細胞は一個で生きていたのです。 そしていろいろ考えて分裂するまでに進化してきたとしか考えようがないのです。 細胞自体、自らの環境に適合するように変化することができる能力を与えられていたのです。 この細胞の能力それ自体、いのちにインプットされていたと、理解して差し支えないと考えています。 こうして、生物の進化という言葉で生きものの変化を表現することになったのですね。 海の中でも高い山でも進化しながら、生物はその環境に適応して生き延びてきているのです。
そして私たちは人類と呼ばれるまでに進化し、今日を迎えているのです。
人類の大脳も進化の道をたどり、大脳組織の多様化が進められて容積はぐんと大きくなって人以外の動物のように生まれるとすぐに一人前の行動に移行できなくなりました。 それまで母親のお腹(ナカ)にいると頭が大きくなって母親が赤ちゃんを産むことができなくなったのです。
人類は進化してきて、人は他の動物と違って未熟児として生まれることになったのです。 このことは、大変大事な意味をもっていました。
赤ちゃんが天才だということの理由は、大脳に備わっている能力が途中で変わってしまうことになるからです。 赤ちゃんが母親のお腹にいるときの場所を子宮と言います。 大事なお宮の中にいるのです。 このことを詳しく解説しているのが、‘誰も知らなかった脳発達のプログラム’を書いたジョセフ・チルトン・ピアスの著書『マジカル・チャイルド』という本です。
その本の第二章の冒頭に
マトリックス(matrix=(他のものの発生・形成・発展のもととなる)母体,基盤)とはラテン語で子宮という意味である。 この言葉から、物質(matter)、原材料(material)、おふくろ(mater)[meitə]〈英〉母親、お母さん 古めかしい表現だがおどけて使われることがある、母親(mother)等の言葉が生まれている。 これらの言葉は、そこから生命が生まれる基本要素、ないし物質的実体に関連している。と述べ、大脳の仕組みの活発化や記憶回路の髄鞘化(記憶細胞をつなぐ回路が太くなってスムーズに他との細胞連携が速やかになる仕組み)が図られると言います。
子宮は新しく形成される生命に、次の三つのものを提供する。 可能性の源泉、 その可能性を探求するエネルギーの源泉、 その探索を可能にする安全な場所、 である。 この三つが揃えば、それはマトリックスとなる。 そして、マトリックスから与えられた安全な場所に立ち、 エネルギーを活用し、 可能性を探索することによって知能が発達するのである。
こうした安定的なマトリックス活動が、生まれてから約束されないと折角の天才的能力活動が生かされにくくなるのです。 この大脳活動は大脳の旧皮質という部分に与えられた素晴らしい成長刺激に反応するというのです。 胎児の環境設定についての実践記録はジツコ・スセディック(旧姓舘林実子)の『胎児はみんな天才だ』で理解することができます。
生後の養育について、仏教では「宿業」という言葉があります。 現代用語では表面的な言葉として伝わったのですが、お釈迦さまはその宿業を大事にしています。
宿業という検索語としてJK(ジャパン・ナレッジ)の辞書をみると、
現世で報いとしてこうむる、前世に行った善悪の行為。すくごう。出典:デジタル大辞泉
一般的な辞書で宿業を調べてみると、どれも同じような説明をしています。 けれどもお釈迦さまが使っていた宿業の意味は、中国の漢字から日本語化された解釈ですから、辞書の意味はお釈迦さまの使った意味とは違っているのです。
インドで使っていた意味では <http://park6.wakwak.com/~y_shimo/momo.1327.html> を見ると前の日以前のすべての結果は、その日現在に現われるというのです。
ですから、赤ちゃんや幼児の環境に在り方によって毎日発達することもできるし、発達しないこともできるのです。 知的発達も、記憶力の発達も、話す言葉の数の発達も、行動の発達も、いい事悪いことすべて一日ごとに真似によって赤ちゃんや幼児は自分のものにしていっているのです。
宿業という意味はそうですから、私は宿業期の養育をみんな誰でも取り組んだほうがいいと考えるのです。 いじめもなくなるし、学業成績は良くなるし、戦争を拒否するようになるし、平和のための仕事に打ち込むようになるのです。
大事なことは、赤ちゃんを取巻くみんなで、取り組むことなんです。 どうしたらいいのでしょうか。
方法はみんなでこのことを理解して、どうしたらいいのかを見つけ出すことであり、それに向かって進むことだと私は思います。 明治初期の五ヶ条のご誓文にも、「広く会議を興し、万機公論に決すべし」を近代化の大事な実行方法として掲げたのです。 これについてもいろいろと考えなければならないことがあります。 宿業教育は誰にとっても一番大事な課題なのです。
以上
2022/11/26
田中宇の国際ニュース解説
仮想通貨とテロ戦争の親密性
今朝の新聞を見てハッとした。 「敵基地攻撃能力、初の明言 政府案」だ。 いつまでアメリカの言う通りのことをするのか? ドルの崩壊が近づいて、中国の覇権、経済が世界をリードし始めているというのに。 総理は何を考えているのか、与党の中にしても覇権の移行期が目前になっているのに、「死の商人」まがいの政治をしているUSAの言い分をハイハイと聞いていくのか。
その思いで田中宇のニュース解説が何とか出ているかもしれないと思って、開いてみたら出でいるではないか。 ドル崩壊の一角が崩れ始めたのではないかという思いで開いてみた。
これまたハッとした。 記事は次の通りである。
◆仮想通貨とテロ戦争の親密性
【2022年11月23日】仮想通貨の大手取引所だったFTXの倒産は、かつてのBCCIの破綻と同様に、諜報界が裏金作りや送金のシステムとして仮想通貨を使っていた構図が用済みになったために起きたのでないか。FTXの破綻が、BCCIの破綻と同様の意味を持つなら、米諜報界が仮想通貨を使って裏金作りや送金を行ってきた構図の破綻がこれから顕在化することになる。
仮想通貨とテロ戦争の親密性
2022年11月23日 田中 宇
ビットコインやテザーといった仮想通貨のシステムは、米諜報界が、テロ戦争や反米非米諸国の政権転覆を進める策の一環として、テロ組織や反政府活動家に送金するために使っていたのでないか。だから、諜報界傘下のマスコミやネット大企業や金融筋は、仮想通貨を誇大称賛するプロパガンダを流し、軽信した投資家たちが資金をつぎ込んでバブルが膨張し、相場が高騰していたのでないか。私は最近、そんな風に思うようになっている。 (FTX: The Dominoes Of Financial Fraud Have Yet To Fall)
いまだに「仮想通貨はすごいものなんだ」と思っている人は私の考えを攻撃してくるだろう。マスコミ情報しか信じない人は、米諜報界がテロ組織や反米非米諸国の政権転覆運動を資金援助してきたという見方すら認めないかもしれない。私からすると、それぐらい気づけよ、という感じだ。FTX倒産など、仮想通貨が崩壊していきそうな今になって仮想通貨の本質を考察しても無意味だとも言われかねないが、大がかりな詐欺やインチキの本質は、それが崩壊する時に見えてくるものでもある。 (Behind The Crypto Scam - "Complete Absence Of Trustworthy Financial Information")
仮想通貨は、ドルなど政府発行通貨に対抗するものと喧伝されていたが、実際の商品購入の支払いにほとんど使えず、結局最後まで通貨として使い物にならなかった。投資の対象としても、債券のように金利を生むものでなく、株式のように現実の事業に裏付けされてもいない。単に、金融界が債券発行やQEで作ったバブル資金で仮想通貨を買って高騰させただけだ。QEや債券の金融バブルが崩壊している今、仮想通貨の相場も下がっている。それらを見ると、仮想通貨に対する称賛が詐欺的な誇張プロパガンダだとわかる。マイニングは投資でなく作業による価値造成であり、その効率は低下し続けており相場高騰の説明にならない。(金鉱採掘を思わせるマイニングの機能が付加されたことからは、仮想通貨が金地金のライバルとして創設されたことが感じられる) (Crypto ‘totally corrupt’)
マスコミ権威筋や金融界の専門家など、仮想通貨を称賛する勢力の多くは、異論をとなえる人々を説得するのでなく、攻撃・恫喝・誹謗して無力化しようとする。この手口は、地球温暖化問題や新型コロナ、ウクライナ戦争、テロ戦争と共通している。これらの諸問題は、いずれも脅威や善悪が諜報界によって誇張・歪曲されており、それを人々にさとられないよう、素朴な疑問や異論を持つ人々を攻撃して萎縮させ、黙らせる心理戦をやっている。学者など、権威を持つ人々がこれらの問題に関して素朴な疑問や異論を表明すると、権威を剥奪されて潰される。権威ある人々は、自らの政治生命維持のため、疑問や異論を表明せず、プロパガンダのシナリオに沿って語る(騙る)ようになる。「専門家の多くに支持されている」として歪曲話がますます権威を持ち、より多くの人を軽信させる(これはネズミ講の策略でもある)。温暖化もコロナもウクライナもテロ戦争も、誇張の裏に米諜報界がいる(それらをひとくくりにしたのがWEFの大リセット。つまりWEFは諜報界の一部である)。仮想通貨は、称賛の手口からみて、背後に米諜報界がいる。 (Crypto Fraud Exposes Woke Capitalism As A Scam)
▼テロ戦争は覇権運営の裏の部分の代表格
米諜報界は米国覇権の運営を担当している。覇権運営の中心は「国際紛争の解決」と思いきや、そうではなく逆に「国際紛争の恒久化」が米諜報界の活動に中心だったりする。イスラム主義などのテロ組織に、こっそり活動資金を供給し、延々とテロをやらせ、テロをなくすためと称して米軍や米諜報界が世界に展開し、そこでまたテロを誘発する。それが「テロ戦争」であり、1990年代以来、米諜報界の活動の大きな柱になっている。テロ戦争の発祥は、1980年代にソ連がアフガニスタンに侵攻・占領した時、米諜報界がアフガンとパキスタンのイスラム主義者(聖戦士)たちに武器や資金を注入してソ連軍と戦わせたことだ。米国(米英)は戦後、ソ連の脅威を誇張し、ソ連を永久に敵視して世界を分割支配する冷戦体制を作っていた。だが、米諜報界が聖戦士を支援してソ連をアフガン占領の泥沼にはめたことで、ソ連は弱体化に拍車がかかって崩壊してしまった。これが米諜報界の「作戦ミス」「誤算」だったのか、それとも軍事覇権を金融覇権に転換するための策略だったのかはわからない。たぶん後者だ。
その場合、米諜報界には軍事覇権派と金融覇権派との暗闘があり、金融覇権派がイスラム主義者を本気で支援してソ連を潰して冷戦を終わらせ、替わりに債券金融システムで米英が儲ける体制を作ったことになる。アフガニスタンのイスラム主義者たちは金融覇権派の肝いりでタリバンを作り、祖国を安定させて中央アジアからインド洋への石油ガスパイプラインを敷いてその使用料収入で食っていこうとしたが、そこで軍事覇権派が邪魔しに入り、子飼いのテロリストたちを動かして自作自演的な911テロ事件を起こし、テロ戦争の開始を宣言し、米軍がアフガニスタンに侵攻してタリバンを蹴散らして20年間占領した。こういう大きな策略には、巨額の裏金が必要だ。裏金を秘密裏に送金するシステムも必要だ。
裏金の原資はいくつかある。最も古くからあるのは、米国防総省の政府予算だ。国防総省は昔から毎年巨額の使途不明金(千ドルで作れる兵器の製造に百万ドルかかったことにするといった水増し金)があり、それらは諜報界の裏金に使われてきたと考えられる。国防総省は多数の企業やシンクタンクに、兵器開発や調査事業を発注しており、その発注金のかなりの部分も裏金に回っていると推測される。 (米軍の裏金と永遠のテロ戦争)
裏金の2番目は、麻薬取引や難民(違法移民)の搬送など、中南米や中東アフリカなど世界各地で行われている違法な事業を米諜報界の傘下の人々が手がけ、それで作った資金をテロ戦争などの裏金に当てることだ。共和党から1989年に大統領になったテキサスのパパブッシュはCIAの人で、政界入りする前はCIAで中南米の麻薬取引の儲けを資金洗浄することも手がけていた。彼は、石油事業を手がけたことからサウジ王家と親しくなり、中南米の麻薬取引で得た資金をサウジ王家にわたし、米諜報界の依頼でサウジ王家が養っていたアフガンのイスラム聖戦士たちの活動資金にしてもらっていた。サウジ王家自身、石油取引で稼いだ巨額資金の一部で、アフガンやチェチェンのイスラム主義者たちを支援し、ソ連やその後のロシアでゲリラ戦やテロ活動をやらせる対米加担策をやっていた。 (麻薬戦争の終わりと米国の孤立主義) (欧州の難民危機を煽るNGO)
中東ではこのほか、イスラム革命後のイランのイスラム主義政権を倒そうとする市民運動も、米諜報界から支援されてきた。米諜報界は「敵を作る作戦」としてイスラム革命自体を支援していた疑いもある(米当局は、フランスに亡命していたホメイニ師が権力者になるためにイランに帰国することを阻止できたはずなのにしなかった)。米諜報界は、イランやイラク、トルコを悩ませたクルド人の分離独立・建国運動も資金援助してきた。アジアでは、中国敵視策として、ウイグル人やチベット人の分離独立運動、香港の民主化運動、それからミャンマーのアウンサンスーチー(彼女自身、英諜報界の系統の人)らの運動などが、米諜報界から資金を注入されてきた。以前の記事に書いたように、アフリカで頻発するクーデターの多くも、米国からの支援を受けている。最近ではウクライナにも、表と裏の両方から巨額の米国の資金が入っている。 (アフリカのクーデター頻発の意味) (米政治家らに横領されるウクライナ支援金)
米諜報界は世界中で地政学的な裏金を必要としている。資金がいくらあっても足りない。米諜報界は冷戦後、自由化された債券金融システム(金融覇権構造)を利用し、通信傍受などで諜報界に入ってくる金融関係のインサイダー情報を使って諜報界の関係者(テロ組織とか、政権転覆を狙う活動家などが)金融取引を行って儲けることで資金供給する新手の資金源が拡大した。儲けた資金は、表の当局の目が届かないオフショア市場やタックスヘイブンに貯蓄され、米諜報界が支援したい世界各地の勢力がそこから資金を得られるようにした。米国などの表の政府当局は、テロ組織が資金を得ることを防ごうとタックスヘイブンへの監視を強めたが、それは表向きだけの話だ。表の当局が、諜報界が支援する勢力をうっかり捜査しそうになると、諜報界が表の当局をやんわり制止し、そこで捜査が止まってしまう。 (タックスヘイブンを使った世界支配とその終焉) (タックスヘイブン潰しと多極化)
地政学的な裏資金の構図は、ごくたまに暴露される。たとえば1991年にBCCI(国際商業信用銀行)が破綻した時だ。BCCIは、パキスタンの銀行家やアブダビの首長らが出資して1972年に作り、ルクセンブルグやケイマンといったタックスヘイブンを網羅して業容拡大し、米諜報界が麻薬取引の儲けを資金洗浄する際に活用するようになった。パパブッシュは1976年にCIA長官だった時にBCCIを積極的に活用した。だが米(英)覇権の中心が軍事から金融に転換し、用済みになった冷戦体制が1990年に終結した後、英当局がBCCIを破綻させ、諜報界の裏金を扱っていたことも露呈した。裏金を扱っている構図が暴露される時は、その構図が用済みになった時だ。
タックスヘイブンを使った世界支配とその終焉
2011年4月19日 田中 宇
英国人のジャーナリストで、ニコラス・シャクソン(Nicholas Shaxson)という人がいる。彼は、英国の王立国際問題研究所(チャタムハウス)の研究員で、チャタムハウスの兄弟機関である米国の外交問題研究会(CFR)が発行するフォーリン・アフェアーズの論文執筆者でもある。チャタムハウスとCFRは、米英中枢のために世界戦略を考える組織だ。シャクソンは、米英中枢から一目置かれる存在といえる。 (Nicholas Shaxson From Wikipedia)
だが、シャクソンが調べて書いていることは、米英の世界戦略を批判する、米英中枢にとって過激な内容だ。彼は以前、西アフリカ諸国の石油利権を米国がどうあさっているかを描き、石油収入を得たアフリカの産油国が豊かにならず、権力者の腐敗や内戦、国民の貧困がひどくなる構造を、石油利権をあさる米欧がアフリカに植え付けていることを批判していた。 (Six Questions for Nicholas Shaxson on African Oil and American Foreign Policy)
そして彼は今、米英の金融界が大きな利益をあげているタックスヘイブン(租税回避地)について「世界にとって有害な存在だ」と攻撃する論文や本を相次いで書いている。 (The truth about tax havens)
▼米国の危機もアフリカの危機も欧州の危機もタックスヘイブンのせい
シャクソンによると、タックスヘイブンが世界にとって有害である理由は、脱税(節税)を可能にするからくりであるという点にとどまらない。タックスヘイブンを使えるのは、資金を国際展開できる大企業や大金持ちの投資家、有力な政治家など一握りの人々であり、彼らがタックスヘイブンを利用して税金を少ししか払わないことが、米英などの貧富格差の増大につながっている。米国の所得税率の上限は35%だが、大金持ちの実質的な所得税率は10%以下だろう。公表されている数字でも、様々な減税措置の結果、米国で最も大金持ちの400人の実質的な平均税率は17%でしかなく、これにはタックスヘイブンに流れた所得が勘案されていない。 (Super rich see federal taxes drop dramatically)
アフリカの人々や政府、企業が持つ資産総額は、アフリカが世界から借りている負債総額をはるかに上回っており、アフリカは本来的に「黒字大国」だ。しかしアフリカの資産の大半は、各国の権力者などが私物化してタックスヘイブンに隠しており、その結果、アフリカは多重債務国の集合体になっている。このような本質は、世界のほとんどの人々の目から隠されている。 (Offshore Banking and Tax Havens Have Become Heart of Global Economy)
昨年から欧州を困窮させているギリシャなどユーロ圏周縁諸国の国債危機も、タックスヘイブンから流入した後、激しく流出した資金が元凶だ。ギリシャに流入した資金の多くは、ルクセンブルグ、英領バージン諸島、アイルランドといったタックスヘイブンを経由しており、資金の流れを統制するのが困難になっている。 (Tax havens at the core of the Greek crisis By Nicholas Shaxson)
このように、世界にとってタックスヘイブンが有害なのは、そこに巨額の資金が秘匿されることで、金に絡んだ世界の問題の本質を見えにくくしているからだとシャクソンは書いている。タックスヘイブンが存在しなければ、米国の財政赤字問題やアフリカの貧困問題、ユーロ圏の金融危機といった世界的な大問題が、完全といわないまでも、かなり解決される。 (Explainer: what is a tax haven?)
▼英国の世界支配の曖昧戦略
シャクソンによるとタックスヘイブン(オフショア金融拠点)に蓄積される資金は、英米が金融を自由化した1985年から爆発的に拡大した。今では、世界の金融資産の半分以上、多国籍企業による投資金の3分の1がタックスヘイブンにある。米国に近い英領のケイマン諸島は、世界第5位の金融拠点で、世界のヘッジファンドの4分の3以上が登記し、ニューヨークの銀行口座の総額の4倍にあたる1・9兆ドルの資金がたまっている。 (The truth about tax havens: part 2)
タックスヘイブンには、英国系のもの(英仏海峡のジャージー島など英王室属領、カリブ海のケイマン、バミューダ諸島など英国海外領地、アイルランド、ドバイ、香港など旧英国領の3種類に、さらに分類される)、欧州大陸系のもの(スイス、リヒテンシュタイン、ルクセンブルグ、モナコ)、その他のもの(パナマ、ガボン、ガーナなど)という3系列があるが、その中で最も大きな影響力と組織力を持っているのは英国系のものだ。 (Book Review; Treasure Islands, By Nicholas Shaxson)
英国系のタックスヘイブンが強力な理由は、それが大英帝国が持っていた世界に対する影響力を維持するシステムを目指す、英国の隠れた国策として行われているからだとシャクソンは言う。英国は2度の大戦に勝ったものの戦争で国力を使い果たし、第2次大戦直後、ほとんど国家破産の状態だった。英国は国力復活のため、米国政府による厳しい金融規制に縛られていた米金融界(ウォール街)の資金をロンドンの金融界(シティ)に流入させて運用して儲けられるよう、1950年代にロンドンをオフショア金融市場として機能させた。
その後この戦略は洗練され、1960年代末に英国は、世界に対する植民地支配を全廃していったのを機に、英仏海峡やカリブ海、アジア地域にある自国の領土や旧植民地を、オフショア金融の拠点(タックスヘイブン)として機能する衣替えを行った。これにより、ロンドン金融街の代わりに、世界各地に点在する旧英国領が、米国など各地から集めて運用し、英国の金融の儲けを維持拡大する機能を果たすようになった。
(英政府がケイマン諸島の議会に信託法を制定させてタックスヘイブン化を開始した1967年は、英国が「スエズ以東」のアジア地域から軍事政治的に総撤退することを決め、その対策としてイスラエルが第三次中東戦争を起こしてアラブ地域を占領した年でもある)
ロンドンのシティがタックスヘイブンのままだと、英国政府は、米国など資金を吸い取られる側の諸国から苦情を言われ、タックスヘイブンで儲ける戦略をやめねばならなくなるが、英国の旧植民地は60年代末以降、法的に英国政府と直接関係ない存在になっており、英国政府は「すでにわが国と関係ない地域なので、わが国としてはどうしようもありません」としらを切れる。英仏海峡の英属領は欧州大陸やアフリカから、カリブ海の英領は米国や中南米から、ドバイやシンガポール、香港などの旧英領はアジアからの資金流入を誘導した。
▼米国を巻き込んだあげくに崩壊
英国の帝国運営は昔から、意図的に法的な曖昧を維持する策略をとっている。ジャージー島、ガーンジー島、マン島といった英国周辺の海域にある英王室属領は法的に英国の外にあるし、ケイマン、バミューダ、バージン諸島、タークス・カイコス諸島、ジブラルタルといった英国の海外領土は、行政長官(総督、弁務官)が英政府の任命だが、立法議会など自治組織があり、法的に英国と別な存在になっている。これらのタックスヘイブンは、経済的に英金融界と強くつながり、地元議会の議員のほとんどは英金融界の代理人である。
英国が植民地のネットワークをタックスヘイブン網に衣替えしていくに際しては、69年から71年にかけて、英政府内で賛成反対の議論があった。中央銀行(イングランド銀行)は金融界の儲けが増えるので賛成だったが、英財務省など財務当局は属領から来る税収が減るので反対した。英外務省は曖昧な態度をとり、最終的に賛成派が勝った。 (The truth about tax havens: part 2)
英国がタックスヘイブンの国際網を形成し、世界から資金を吸い上げ始めた同時期の1971年に、米政府が金ドル交換停止を決め(ニクソンショック)ドルの金本位制が崩れた。その後、世界の通貨体制はG5やG7による先進諸国の協調介入による為替安定策に転換した。私が見るところ、これにもタックスヘイブンが関与している。タックスヘイブンにある巨額資金を英金融界などが動かすことで、一般の人々に手法を知られぬまま、為替相場を隠然と動かすことができる。タックスヘイブン網にある資金が増えると、G7諸国による政府介入すら不必要になる。
1985年には米国が英国と一緒に金融自由化を開始し、それまで厳しい金融規制が特徴だった米国自身が、英国のタックスヘイブン網を活用して儲けることを是認し始めた。これは70年代以降、米国の製造業が日独などに抜かれて衰退し、米経済の活路が金融サービス業しかなくなったことと関係していると思われる。英国系タックスヘイブンのジャージー島に流れ込むアフリカの独裁者たちの資金が急増したのは85年からだったと、シャクソンが書いている。金融自由化は、タックスヘイブンの公然化だった。 (The truth about tax havens)
その後、米国を中心に90年代の金融的な乱痴気騒ぎが始まり、デリバティブなど当局すら実態を把握できない債券金融(影の金融システム)が拡大し、米国自身の内部で巨大なタックスヘイブン(当局が実態把握できず、課税できない金融市場)が急拡大し、課税不能な債券金融界の資金総額が、課税可能な旧来の銀行界を超えるまでになった。
全世界がタックスヘイブン化するかに見える中、そのバブルは07年のサブプライム金融危機を皮切りに崩壊し始め、08年のリーマンショックを引き起こした。その後も債券金融システムは崩壊過程にあり、米連銀の買い支え(QE2)などによって何とか延命しているが、最近はQE2が延長されずに終わりそうだという話になり、ドルや米国債の崩壊感が強まって、ついに4月18日には格付け機関S&Pが米国債を格下げ(AAAポジティブからネガティブへ)した。 (Why S&P's Official Statement is Nothing But a Joke)
BRICの5カ国はドル忌避を強め、ドルの代わりに5カ国の相互通貨で貿易決済する体制を強化することに決めた。タックスヘイブン網と、その進化系である米中心の影の銀行システム(債券金融)は、ドルや米国債など世界金融の全体を巻き込んで、崩壊していこうとしている。 (BRICS Take Aim at dollar)
▼タックスヘイブンは金融兵器
シャクソンは書いていないが、私が見るところ、英国(英米)のタックスヘイブン網には、英米にとって脅威になりそうな国々を金融的に潰す「金融兵器」としての機能がある。タックスヘイブンから新興諸国に資金を大量に流入(投資)させ、バブルを拡大してから急に潰すことで、その国に大打撃を与えられる。90年代以降、メキシコ、東南アジア、韓国、ユーロ圏周縁諸国などが、その被害にあっている。英米にはジョージ・ソロスのように反英的な人もおり、英国がソロスら投機筋に振り回され、ポンドを暴落させられたこともある。金融兵器の操縦桿をめぐる暗闘がある感じだ。
タックスヘイブンの中には、英国の息がかかっていないものもある。たとえばスイスだ。第一次大戦後、欧州諸国が戦後復興のためこぞって増税した時、スイスは永世中立国だったがゆえに戦火に遭わず、復興も必要なかったため増税しなかったことから、周辺諸国より税率が安く、諸国から資金が集まり、それ以来タックスヘイブンとして機能している。スイスは、社会主義者やナチスなど、英国の脅威となる勢力の資金をも受け入れ、英国がタックスヘイブン戦略を強化した80年代以降「ナチスの資金を隠匿したスイスはユダヤ人に巨額資金を賠償し、情報公開してタックスヘイブンをやめるべきだ」と圧力をかけられた。スイス側は「タックスヘイブンとしては君たちの方が悪質だよ」と英国系勢力に言い返している。 (Stolen Assets and the financial system II: in trusts we trust By Nicholas Shaxson)
(タックスヘイブンが隠然とした「金融兵器」であるのと似て、ホロコーストは英米イスラエルの脅威となる勢力を無力化する「倫理兵器」である) (ホロコーストをめぐる戦い)
北朝鮮の金正日一家は、資金の運用先や師弟の留学先としてスイスを愛用しているが、これはスイスが伝統的に英国の逆張りとして社会主義勢力の資金を受け入れていた歴史と関係しているかもしれない。スイスは英国の逆張りとして機能しているが、英国の方が、より隠然と(つまり狡猾に)大規模に(スイスは一国だけだが英国は世界各地に属領の島がある)タックスヘイブンを運営している。 (Tax haven From Wikipedia)
タックスヘイブンは英米関係の裏舞台でもある。南北戦争の時、英国はバハマ諸島を経由して南軍に資金援助した。1930年代以来、米国の犯罪組織がフロリダからキューバをつなぐ資金洗浄のルートを作った。キューバルートは1958年のキューバ革命後、一時的に消えていたが、英国は60年代末からそのルートを再利用し、英国のタックスヘイブンであるバハマやケイマンとフロリダをつなぐ資金洗浄ルートが再開された。フロリダはCIAの大拠点だ。70年代から米国が中南米で展開した「麻薬戦争」(麻薬撲滅の名目で中南米に介入した)も、この資金洗浄ルートが使われた。タックスヘイブンは、米英の諜報機関が外国で政権転覆や介入作戦をやる際の重要なネットワークでもある。 (The truth about tax havens: part 2)
タックスヘイブン網を使った英国の世界戦略の流れを知った後で再考すると、これまで「英国が作ったブレトンウッズ体制をぶち壊した反英的な転換」と私が考えていた71年のニクソンの金ドル交換停止も、実は英国によって誘発された転換だったのかもしれないと思えてくる。タックスヘイブン網という巨大な資金の隠し場所を得た以上、ドルの発行量を限定する金本位制は、むしろ英国にとって邪魔なものになる。米当局にドルをどんどん増刷させ、それがタックスヘイブンに流れ込むほど、英国が隠し持つ金融兵器は強大になる。
▼タックスヘイブン網と相性が良い中国人
半面、タックスヘイブンには「金融兵器」の側面とは別に、新興諸国に経済発展をもたらす資金源の機能もある。たとえば香港は、中国の経済発展のための資金源として長く機能してきた。70年代に中国の発展のための設計図を描いたトウ小平は「英国の手先」である香港を忌避せず、むしろ積極活用し、香港のとなりに新セン市を新設して「中国全土に香港を拡大する」戦略をとった。
中国の共産党や中台の財界人は、華人の隠然ネットワークに似た使い勝手のタックスヘイブン網が大好きで、中国の国有企業はヘイブンに置いた企業で資金調達したり、海外企業に非公式に投資したりしている。中国はタックスヘイブンの凶暴性も知っており、人民元の為替を自由化したがらない。自由化するとヘイブンの投機筋が中国のバブルを拡大して潰す攻撃を仕掛けるだろうからだ。タックスヘイブン網の発展性と凶暴性は、私の以前からの推論である「資本と帝国の相克」とうり二つだ。タックスヘイブンからの資金で中国など新興諸国を発展させるのは資本の論理そのものだし、金融兵器で新興諸国を潰すのは帝国の論理そのものだ。 (資本の論理と帝国の論理)
60年代末に英国がタックスヘイブン網の世界戦略を開始してから85年に米国が英国の戦略に相乗りする時期には、資本と帝国の相克に関する重要な出来事がいくつも起きている。72年のニクソン訪中や71年の中華人民共和国の国連加盟(中華民国の追放)は、中国の台頭という資本家側の策略の基盤を作った。米国主導の89年の冷戦終結は86年ごろから画策されていたが、これも東側地域の経済発展を可能にする資本の論理に基づく戦略の感じだ。「帝国」の側としては、中露が台頭しても金融兵器で潰せると考え、ニクソンやレーガンら米国の行動を容認したのだろう。
半面、今起きている巨大な金融崩壊を意図的なものとして考えると、85年に米国が英国製のタックスヘイブン戦略に積極的に乗って英米協調の金融自由化をやったのは、資本家の側が帝国の側を25年がかりで引っかけて潰す策略だったのかとも思えてくる。85年以降、米英の金融バブルはどんどん拡大し、90年代末から潜在的に不安定になってバブル拡大に拍車がかかり、07年からの崩壊に至っている。ミイラ取りがミイラになった感じで、金融バブルを拡大させた後に潰す金融兵器の手法の犠牲者に、米英自身がなっている。
85年に米英の金融自由化が始まってから07年の崩壊開始まで30年近い歳月があるが、まさにその間に、中国は極貧国から経済大国へと変身し、ロシアやインドなどと合わせ、世界を米欧中心から多極型の政治経済の構造に転換することが可能になっている。これを米英資本勢力による「30年かけた多極化戦略」と見るかどうかが、もはやだれも否定できない現実として存在する多極化を「自然・偶然な流れ」と見るか「意図的な誘導」と見るかの違いとなる。世界の多極化が顕在化する前から、米英発の言説の中に「世界は多極化する」「世界の中心がアジア(ただし日本ではない)に移る」という予言が散見されるのを見てきた私には、多極化が偶然の流れであるとは思えず、意図的な誘導に見える。
▼英国自身がタックスヘイブンを壊す構図
今回の私の分析の源泉となったシャクソンが、チャタムハウスやCFRといった英米中枢の研究機関の関係者であることも、意図的な感じを受ける。シャクソンは、タックスヘイブン網の創設は英国の国家戦略だったと書くとともに、タックスヘイブンの存在自体を非難し、タックスヘイブンで脱税(節税)している多国籍企業にもっと課税すべきだという米英の市民運動を加勢し、途上諸国が多国籍企業にうまく課税できる体制作りを手伝う国際市民運動(Tax Advisers Without Borders)まで作っている。 (Tax Advisers Without Borders - an Invitation By Nicholas Shaxson) シャクソンはタックスヘイブンの本質を暴露するとともに、その存在を潰す方向の市民運動に加勢している。これは英国の帝国的な国益を損なっているが、彼自身は英国の帝国的な国益を代表すると言われるチャタムハウスの関係者である。私は以前から、資本と帝国の相克が、米国と英国の潜在的な対立としてだけでなく、英国内部の論争や暗闘としても起きていると感じてきたが、シャクソンの動きからも、英国内部で資本と帝国の相克がある感じを受ける。米中関係の改善や金ドル交換停止をやったニクソンの戦略を立案し、今もドイツ訛りの高齢者の不明瞭な英語で「世界の中心はアジアに移る」とうわごとのように言うキッシンジャーが、ニクソン政権入りの前にCFRの研究員だったことにも通じるものがある。
リーマンショック直後、米国が世界経済の中心的な意志決定機関をG7からG20に切り替えたが、これもタックスヘイブン網と関係がある転換だ。85年に創設(秘密協定の顕在化)されたG7は、タックスヘイブン網にある巨額資金を使って為替を安定化してドル基軸制を維持する英国主導の手法のお手伝いをする組織だった。対照的に多極型のG20は、当初からドル基軸制の崩壊後の世界体制を提案し、タックスヘイブンやヘッジファンドを規制・禁止する政策を打ち出している。
G20の傘下に入ったIMFは、国際資金取引に課税するトービン税を、国連の財源として提案しているが、トービン税の課税は前提として、世界のあらゆる国際金融取引をIMFが監督する体制を必須であり、タックスヘイブンの秘密性を破壊して情報公開させる意味を持つ。G20と国連は相互補完的に、多極型の世界の上に立つ「世界政府」として機能する戦略を持っており、IMFは世界政府の財務省として位置づけられ、トービン税は世界初の国際課税となる。 (「第2ブレトンウッズ」再び)
G20やIMFのタックスヘイブン規制は今のところ実現していないが、大きな流れの方向は、タックスヘイブンは規制・禁止され、英米覇権やドル・米国債は崩壊し、BRICの台頭が続いて、世界の覇権体制は多極化していく。その一環として、シャクソンによってタックスヘイブン網という英国の覇権の本質が暴露され、同時にS&Pの米国債格下げや金地金相場の史上最高値更新など、いよいよドルや米国債の崩壊感が強まっている。
米共和党系のオルトメディアの一つである「レボルバー」は最近、仮想通貨の大手取引所だったFTXの倒産が、かつてのBCCIの破綻と同様に、諜報界が裏金作りや送金のシステムとして仮想通貨を使っていた構図が用済みになったために起きたのでないかと思わせる記事を出した。レボルバーの記事は、米ドルと等価であり続けることを約束したステーブルコインであるテザーが、米諜報界やテロ組織や麻薬組織が裏金を送金する際に好まれる仮想通貨だと書いている。テザーは、流動性が高いビットコインを経由して為替変動リスクなしに米ドルに換金できる。テザーの最大の大口取引者の一つが、FTXの親会社であるアラメダリサーチだった。アラメダ社は、仮想通貨を使ったデリバティブ取引などで利益を出していた投資会社だ。 (FTX on Steroids: Is "Tether" the Biden World's Crypto BCCI?)
FTXやアラメダリサーチを創設・経営していたサム・バンクマンフリード(SBF)は米民主党とつながりが深いので、諜報界と親密だったと思われる。諜報界がもたらすインサイダーの金融情報に基づいてアラメダ社が投資し、儲けたカネの一部を諜報界に戻すとか、アラメダ社が発案した金融商品を諜報界のプロパガンダ機能が称賛喧伝して儲けさすとか、相互扶助的な動きがあったのでないか。資金の保有や送金を匿名でやれる仮想通貨は、諜報界の裏金システムとしてうってつけだ。最近は表の政府当局が仮想通貨に対する監視を強めているが、すでに述べたように表の当局は、諜報界にやんわり制止されたら、その部分をそれ以上監視しない。 (Is there a link between 'Aid to Ukraine,' the US Democratic Party and the suspicious collapse of the FTX Crypto exchange?)
仮想通貨がもてはやされるようになったのは2011-13年からで、テロ戦争の50年史の中で最近のことだ。アルカイダはすでに下火で、替わりにISISが出てきたころだ。ISISは、アルカイダに比べて米諜報界とのつながりが深く、広報(プロパガンダ)やイメージ作りの技能がアルカイダより洗練されている。アルカイダの時代は既存の銀行システムしかなかったのでBCCI利用だったが、ISISの時代は仮想通貨やデリバティブが裏金作りや送金に利用されるようになったともいえる。 (JPMorgan warns of Bitcoin crash)
FTXの破綻が、BCCIの破綻と同様の意味を持つなら、米諜報界が仮想通貨を使って裏金作りや送金を行ってきた構図の破綻がこれから顕在化することになる。そういう動きがあるのか??。そう思って見ていくと、確かにある。たとえば、米諜報界やイスラエルに支援されてきたイラクやシリアのクルド人は最近、イランやトルコから攻撃されてへこまされる傾向にある。イランやトルコは、米イスラエルからクルド人への支援が減っているのを見て、これまで控えてきたクルドに対する攻撃を最近強めている。トルコはかつて内戦下のシリアで米軍を助けていたが、最近のトルコは米国の中東覇権の低下に呼応してロシアに接近し、アサド政権とも隠然と仲直りして、シリアからの米軍追い出しに協力している。ネタニヤフに戻ったイスラエルも、米国よりロシアを重視している。イランでは反政府運動が炎上しているが、これはイランが中露との結びつきを強め、米諜報界に支援されてきた反政府運動が断末魔的な最期の盛り上がりを見せている、という意味だ。中長期的に、イランの反政府運動は下火になる。 (Protesters Set Fire To Iconic Home Of Islamic Republic Founder Ayatollah Khomeini) (Turkey strikes near US base in Syria after Pentagon calls for de-escalation)
BCCI破綻は、金融覇権体制が軍事覇権体制を押しのけて時代遅れにした時に起きた。今のFTX破綻は、リーマン危機以来のバブル崩壊とQEによる延命策の終了によって、金融覇権体制が終わりつつある時に起きている。今年からのウクライナ戦争によって、世界経済の「現物部門」の大半が非米側に行ってしまい、米国側が持っているのは崩壊寸前の金融バブルだけになっている。金融バブルが崩壊したら、そこから資金注入を受けて膨張していた仮想通貨の全体も崩壊する。米諜報界は金融バブルという大きな資金源を失い、覇権運営の裏金が枯渇して活動が縮小していく。その流れの一つとして起きたのが今回のFTX破綻だと考えられる。
◆下平評
このニュースに使われている外電と既出データの数を見ると、
(FTX: The Dominoes Of Financial Fraud Have Yet To Fall)
(Behind The Crypto Scam - "Complete Absence Of Trustworthy Financial Information")
(Crypto ‘totally corrupt’)
(Crypto Fraud Exposes Woke Capitalism As A Scam)
(FTX on Steroids: Is "Tether" the Biden World's Crypto BCCI?)
(Is there a link between 'Aid to Ukraine,' the US Democratic Party and the suspicious collapse of the FTX Crypto exchange?)
(JPMorgan warns of Bitcoin crash)
(Protesters Set Fire To Iconic Home Of Islamic Republic Founder Ayatollah Khomeini) (Turkey strikes near US base in Syria after Pentagon calls for de-escalation)
(米軍の裏金と永遠のテロ戦争)
(麻薬戦争の終わりと米国の孤立主義)
(欧州の難民危機を煽るNGO)
(アフリカのクーデター頻発の意味)
(米政治家らに横領されるウクライナ支援金)
(タックスヘイブンを使った世界支配とその終焉)
(タックスヘイブン潰しと多極化)
外電数 9 既出データ 7 合わせて 16 のデータのまとめになる。 彼のスタッフは何人なのかわからないが、この前の記事が 11月19日 だったことを見ると、わずか4日しかない。
世界の急激な変化の中で、こうしてニュースで希望者に知らせてくれるのは、至難のことであるがそれだけに感謝しなければならない。 私はこの記事を信頼しています。
ことの根本は、真実かどうかである。 偏見があっては彼の信用が崩れる。 スタッフすべてが崩れるから、できる限り真実を求めているに相違ないのです。 感謝します。
2022年11月26日https://digital.asahi.com/articles/DA3S15485138.html?ref=pcviewer
敵基地攻撃能力、初の明言
与党、来週にも合意
敵のミサイル発射拠点などをたたく「敵基地攻撃能力(反撃能力)」について、政府は25日、安全保障関連3文書の改定に向けた自民、公明両党の実務者協議で、「必要最小限度の措置として行う」などとした政府案を説明した。両党は来週にも敵基地攻撃能力の保有について合意し、政府が年内に改定する安保3文書に盛り込まれる見通しになった。▼4面=論点山積み
敵基地攻撃能力の保有について、政府は「あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討する」(岸田文雄首相)と繰り返し、具体的な内容については言及してこなかった。公式の場で政府が内容を説明したのは今回が初めて。
出席議員や政府関係者によると、政府は与党協議で周辺国による様々なミサイル開発を踏まえ、敵基地攻撃能力を保有する必要性を説明。「現在のミサイル防衛システムでは迎撃が困難な可能性がある」とし、「必要最小限度の措置」を講じるとした。米軍と攻撃目標や攻撃が成功したかどうかなどに関する情報も共有するという。
敵基地攻撃が国際法の禁じる「先制攻撃」にならないよう相手国が攻撃に「着手」したとの認定のあり方、攻撃対象、国会の関与や名称などは引き続き協議する。
公明の石井啓一幹事長は25日の会見で、敵基地攻撃能力について「我が国に対する攻撃を抑止することが大きな目的だ」と前向きな姿勢を示した。(松山尚幹、小野太郎)
▼4面=論点山積み
敵基地攻撃、論点山積み
攻撃着手時期・国会関与・集団的自衛権との関係
敵基地攻撃能力(反撃能力)の政府案が25日、安全保障関連3文書改定に向けた自民、公明両党の実務者協議で示された。自民は政府に保有を提言しており、公明からも表立った反対論は出ず、防衛政策の一大転換が着々と進む。しかし、政府案の詳細は明らかになっておらず、重要な論点も積み残されたままだ。▼1面参照
「着手の時期の整理が必要だ」。25日の与党実務者協議後、公明の浜地雅一衆院議員はこう述べた。
なぜ「着手」が重要なのか。相手が攻撃に着手する前に日本が攻撃すれば、国際法違反の「先制攻撃」とみなされる。公明党は「『着手』認定の厳格化」によって先制攻撃に対する「歯止め」を求めている。
一方、政府や自民は、着手の厳格化は「手の内を明かす」(小野寺五典元防衛相)として否定的だ。攻撃の手法が多様化するなか、幅を持たせたいのが本音だ。
「歯止め」をめぐっては、自衛隊が武力行使するにあたっての手続きも重要になる。
敵基地攻撃は自衛権の行使にあたり、政府は外国から攻撃される「武力攻撃事態」などに認定する必要がある。認定にあたり、政府は武力行使が必要な理由などを記した「対処基本方針案」を作成。国会の承認を得る必要がある。原則は事前承認だが、緊急時は事後承認も認められる。政府は、国会の関与が「歯止め」の役割を果たすとの認識だ。だが、浜地氏によると、25日は「歯止め」まで議論が及ばなかったという。
集団的自衛権との関係も論点だ。政府は今年5月、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされる「存立危機事態」においても敵基地を攻撃することができるとする答弁書を閣議決定している。
「我が国と密接な関係にある他国」で念頭にあるのは同盟国の米国。政府関係者は「『存立危機事態で敵基地攻撃はしない』と米国には説明できない。日米同盟に悪影響を与える」と、除外には否定的だ。25日の協議でも議論になったが、公明は「具体的にどういうケースで必要なのか」と問いかけたものの、政府の回答は持ち越しになった。
名称も決まらなかった。自民は4月、「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と改称するよう政府に提言。ただ、政府は実務者協議で「○○能力」と名称を空欄にして提示した。自民党は「名称ぐらい決めましょう」と持ちかけたが、公明側は「名称は考えたこともなかった」として、党内で議論する考えを示した。
攻撃対象をどこまで広げるかも論点だ。自民党は政府への提言でミサイル発射拠点に限らず、「指揮統制機能等」としている。だが、これらは首都を含む可能性がある。公明党内には「大事なことは必要最小限の措置であること。どこを攻撃してもいいわけではない」との声もある。(田嶋慶彦、小野太郎、里見稔)
◆下平評
田中宇の国際ニュース解説が【11月23日】で、FTXの倒産が知らされたのに、与党内部では【11月26日】敵基地攻撃能力、初の明言という記事を出している。
世界の変化が激流のように日毎に変化するのに、内閣をはじめ与党からの緊急問題としての発言が感じられない。 国会の論戦に、FTXの倒産に基づく日本への影響変化について話題が出てくるかどうか。 もし出てこないとすれば、アメリカの変化に即応することができないばかりか、旧態依然としてアメリカにヘツラウつもりなのかと言いたくなる。
FTXの倒産は世界の大きな地殻変動の表れであるのに。 平和を求めるという国民の約束、憲法はソッチノケにされているとしか言いようがない。