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折々の記 2011 F

【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】11/12〜     【 02 】11/12〜     【 03 】11/14〜
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【 06 】12/22

  12 22 世界の均質化がもたらすもの
  12 25 田中宇の国際ニュース解説
  
 12 22 (木) 世界の均質化がもたらすもの

     http://globe.asahi.com/worldeconmy/111120/01_01.html
     朝日新聞GLOBE (グローブ)|World Economy―先読み世界経済

       [第65回]   「均質化」する世界市場 日本企業はリスク取る覚悟を  松本大 Matsumoto Oki 

世界の均質化がますます実感できるようになってきました。 人は誰しも物質の向上を求め、そしてそれが可能性を持っていることがわかり、それが根底にあって政治の均質化を願うようになりました。 文化の均質化も価値観の均質化もこれからどんどん進んでいくと考えられます。

知っての通り日本の繊維産業は経済の後進地域の国々へ、高いところの水が低いところへ流れていくように、拡散していきました。 技術水準が高い日本の先進産業にしても水が低いところへ流れ去るのと同じように、賃金の安い後進国へ流れ去っていきます。

お化粧にしても化粧文化という言葉はないにしても、日本の化粧品が他国へどんどん拡散しています。 日本の食文化にしても同じように他国へ拡散していきます。

企業家は国内ではその収益が少ないとわかってくれば、約束をして他国へいって儲けようとするようになりました。 そしてそれがFTPとかTPPという国家間の取り決めへと進み、今の金融のゆがみを作ってまいりました。 格差社会という人間性にはあってはならない様相が、法的にも守られる仕組みにしなって自由経済が悠然と闊歩することとなりました。

こうした世情にあって、私たちは歴史的にも稀な大災害に出会いました。

東日本の大震災にであって人々の心に高まってきた温かい人間愛に満ちた心の世界を、世界の変化にどう対処させていったらいいのでしょうか?

私たちはこのようなときに、人のもつべき品性の尊さにハッと気づいたのです。

人が本来持っている温かい情操を、金儲けの欲に満ちた人たちに踏みにじられてはならないのです。 老生の心配はユネスコの初代事務局長を勤めたジュリアン・ハクスリー(Julian Huxley)の言葉です。


人は知識によって世界を制覇するかもしれない。 だがその知識によって亡びるかもしれない。


※ 智識を世界に求め ・・・

こうした日本の状況の中で脳裏をかすめたのは「知識を世界に求め、大いに皇紀を振起すべし」という言葉でした。

これは五箇条の御誓文の五番目にある言葉です。 内容の一つ「智識を世界に求め」については、横井小楠「国是三論」に「智識を世界万国に取て」とあり、ここから採られたものといわれています。 二つ目の「大いに皇紀を振起すべし」は明治の変革の心意気に通用する表現であり、現代では通用しません。 大事なのは前段の「智識を世界に求め」であり、後段の「大いに皇紀を振起すべし」は用がありません。

この方針は鎖国政策をとってきた江戸時代から、文化的に進んでいた西欧の文物を積極的に取り入れようとした考えを表記したわけですね。 そして東洋において日本は、清国のように西洋列国にあちこち食いちぎられたような租借地になることを免れました。

もともと日本でも古代中国から文物を取り入れてきており、「井の蛙大海を知らず」という諺も知識としてはみんな知っていたようです。 このことは 『荘子』 の中の

   「井蛙不可以語於海者、拘於虚也」

   [井蛙(せいあ)は以って海を語るべからず、虚(きょ)に拘(なず)めばなり]

という教えから出ているものです。

さて、こんにちに於いてさえ、人一人の知識の泉というものは、大海から見ればほんの小さな谷の岩間から滴るわずかな水を求めているようなものです。

私たちはこの「井蛙セイアの教え」をわすれ、己ひとり、ほかの人よりも多くを知っているという独り合点に気付かないのです。 手前勝手になりやすいのです。 負けん気も大事ですが、すべてに通じる公道ではありません。

ではどうしたらよいのでしょうか?


世界情勢のアンテナからより良いアンテナから受信することです その一つが【ここ】にある


先ずは、これが答えの一つです。

この田中宇さんのHPは、1996年に始まっていますから、15年余になっています。 この初期段階の情報にしても、お金もちの動きや格差社会の情報が事細かく情報として流されています。



試みに1999年、38才の頃の国際金融危機に関するニュース解説を開いてみましょう。

◇               ◇               ◇               ◇               ◇

世界中で広がる貧富の格差
http://tanakanews.com/990628richpoor.htm
1999年6月28日 田中 宇

 犯罪事件が起きて、犯人探しをするときに、まず思いつく一つの推理方法は、事件によって得をした人が犯人である可能性が高いのではないか、というものだ。こうした発想は、一般の刑事事件だけでなく、もっと大きな規模の、政治的な変動や国際問題にも応用することができる。

 たとえば、なぜNATO軍がユーゴスラビアを爆撃したのか、という疑問は「空爆で誰が得したのか」という問いに結びつく。コソボやセルビアの指導者や人々は、全く得をしていない。そして反面、武器をどんどん作って儲けたかった欧米の兵器産業は得をしたはずだ、と考えれば「兵器産業がアメリカ政府や議会筋に働きかけて空爆になったのではないか」という推論になる。

 最近、この推論方法が当てはまると思った問題が「1997年以来の国際金融危機はなぜ起きたか」ということを「誰が得をしたか」で推し量るということだ。

 アメリカの投資銀行であるメリルリンチ社などが、最近発表したレポート「World Wealth Report」によると、100万ドル(1億円強)以上の資産を持っている人は、世界に600万人(人類の0.1%)いるが、彼らの資産は昨年1年間で平均12%増えた。つまり、世界各地で金融危機が続いている間にも、大金持ちの人々は、ますます金持ちになっていた、というのだった。

 一方、国連が昨年9月に発表した報告書「Human Develpoment Report」によると、世界人口の6分の1にあたる10億人以上の人々が、貧困ライン以下の貧しい生活をしている。

 そして、世界全体でのモノの消費量は全体として増えているものの、人類のうち豊かな20%(12億人)が、全世界の消費の86%を独占している反面、最も貧しい20%の人々は、わずか1.3%しか消費していない、としている。

 国連はまた、6月23日に発表した別の報告書の中で、「世界経済は立ち直りつつあるものの、多くの人々の収入や生活水準は下落を続けている」と警告している。

 これらのことから言えるのは、国際金融危機は結局のところ、大金持ちをますます富ませ、貧乏人をますます苦しめる結果を生んでいるということだ。つまり、国際金融危機で得をしたのは大金持ちであり、ということは、金融危機を誘発したのは、大金持ちの代理人であるアメリカの国際金融機関ではないか、という、ときどきあちこちで言われる推論が正しい可能性があるということになる。

アメリカの好景気が世界格差を広げた

 なぜ、金持ちの人々がますます富むことができたのだろうか。その理由の一つは、アメリカで株価上昇や好景気が続いていることにある。

 国際金融危機の発生は、それまで金融の新興市場であった東南アジアや中南米、ロシアなどの相場を暴落させたが、それは新興市場から資金が一斉に引き上げたということであり、その資金は「世界で最も安全だ」と思われているアメリカの株や債券に流れ込み、アメリカの株高と好景気の背景となった。

 100万ドル以上の資産を持っている世界の600万人のうち、58%はアメリカと西ヨーロッパに住んでいる。彼らの多くは、米国の株高などによって、資産を増やしたのだった。

 また、この600万人のうち、20%は日本を含むアジアに住んでいる。全世界の金持ちの資産増の平均が12%だったのに対し、欧米に住んでいる金持ちの資産増加は17%と高い一方、アジアに住んでいる金持ちの資産増加は10%と、比較的低い。とはいえこれは、アジア経済が低迷していることを考えると、驚きの数字である。

 たとえばインドネシアでは、対ドルの為替相場が、以前の5分の1にまで下落してしまったが、金持ちの人々は、以前から資産の多くをドルで持ち、アメリカなどで投資していた。

 だから、アジアの大金持ちも、自国経済崩壊のマイナス影響より、アメリカの好景気のプラス影響を受けることができた。それが、資産10%増の背景にある。

 アメリカを中心に、先進国の株価を全体として見ると、昨年10月以来、全ての株の合計額で、7兆ドル分も値上がりしている。そして一方、世界の発展途上国の半年分の経済活動(GDP)を合計した金額は5兆ドルだ。

 アメリカの過去半年間の株の値上がり分で、発展途上国の全員を食わせて、おつりが来てしまうのだ。貧富格差のすさまじい現実が表れている。

350倍の給料格差

 とはいえ、アメリカの人々がすべて豊かになったかといえば、そうではない。米国民の間でも、貧富の格差は広がる一方だ。たとえば、アメリカ人で最も多くの給料をもらっている10%の人々と、最も少ししかもらっていない10%のとの給与格差は、1979年には3.6倍だったが、96年には5倍に広がっている

 「上の10%と下の10%」との比較ではなく、「経営トップと平均的な社員」との賃金格差では、アメリカの大企業では350倍になっているケースもあるという。

 どうやら世界の貧富の格差が拡大した背景には、ソ連が崩壊し、お題目だけでも平等社会を目指していた社会主義システムが世界中で見捨てられ、代わりにアメリカ流の自由主義競争社会システムが導入されたことも、ありそうだ。現在のアメリカ式システムが貧富格差を拡大させることは、アメリカ国内ですでに実証されているからである

 アメリカ流のやり方を世界に広げた人々の作戦が上手だったのは、「金持ちは庶民の敵だ」という人々の考え方を「頑張れば私も金持ちになれる」という夢にすりかえて、貧富格差につながりやすい経済の「自由化」を、世界中で進めることに成功した点だ。

 そんな夢が世界の人々にばら撒かれ出したのは、ベルリンの壁が崩壊してからなのだろうが、あれから10年たち、富むのはもともと金持ちだった人々だけだ、ということが分かってきた

 かつて、貧富の格差に対して憤りを感じたひとびとは、社会主義革命を目指したのだが、その社会主義はすでに「死語」になっている。今後、現状に対して矛盾や憤りを感じる人々が増えていったとき、かつての社会主義のように、現状を覆そうとする新しい思想が、また出てくるのだろうか。まだ、その輪郭は見えない

貧しい人々に追い討ちをかける自然災害

 貧しい人々を苦しめているのは、金融の問題だけではない。過去数年間、世界各地で増え続けている洪水、干ばつ、砂漠化、地震などの自然災害もまた、発展途上国での貧困を広げる原因となっている。

 6月23日に国際赤十字が発表した報告書「World Disasters Report」( http://www.ifrc.org/pubs/wdr/ )によると、世界の自然災害の年間被害者は、最近の6年間で50万人から550万人へと、10倍以上に増えている。

 そして昨年は、内戦など武力紛争で家や仕事を失って援助が必要になった人々より、自然災害の被害者で援助が必要になった人々の方が多い、という結果になった。中東やアフリカ、バルカン半島などで地域紛争が増えているにもかかわらず、それ以上に自然災害が増えたということだ。

 昨年の大きな災害といえば、インドネシアの大干ばつと山火事、中国の揚子江の大洪水、中央アメリカを襲ったハリケーン「ミッチ」などがある。

 こうした大災害の結果、被災地の人々は、家や仕事を失って、やむなく仕事を求め、大都市の周辺にある貧民街やスラム街へと出て行くことになる。今や、世界で10億人が、貧民街に住んでいるという。

 災害が増えた原因には、南太平洋での「エルニーニョ」の発生から、地球温暖化、森林破壊など、いくつかの原因が指摘されている。(世紀末だ、ということも一因か?)

 自然災害による死者の96%は、発展途上国の人々だ。ここにも、豊かな国と貧しい国との、絶対的な格差が表れている。



    @ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B2%A7%E5%AF%8C%E3%81%AE%E5%B7%AE
       貧富の差 - Wikipedia

    A http://homepage3.nifty.com/ronten/gap.htm
       経済格差とその源泉

@の貧富の差について

 貧富の差を是正する方法については、次の二通りの方向性が考えられると、至極当然のことが解説してあります。

   1.富裕層により多くの負担を求める、もしくは貧困を解消して差の程度を減らす
   2.貧富の元になる財産(の一部)を共有化して、そもそも貧富の差という概念をなくす

 論理的な考え方をしていくとすれば、この二つともこの基本的立場を土台にしておらなくてはなりません。

Aの経済格差とその源泉について

 この頁を開いてみるとわかるけれど、ゼロスタートからの発想で人の生涯の所得格差について話を進めています。
 従って土地、建物、などの不動産や株券、預貯金などの動産という既得財産については言及していません。

 言い換えれば、歴史的な既得財産から生ずる所得などは対象外になっております。



 12 25 (日) 田中宇の国際ニュース解説

ニュース解説の中でも異質なほどに大局的な、マクロの視点からの解説が発信されました。

それは題して 次のようになっています。

     「中国包囲網と矛盾する米朝対話」 2011年12月23日 田中 宇

ではそれを保存しておきます。



金正日の死より、その直前に進展した米朝交渉と、その先に6カ国協議の再開が予定されていたことの方が重要だ。6カ国協議が達成されたら、日本にとっても大変だ。南北や米中対立が解消され、在韓米軍と在日米軍は「グアム以東」に撤退していく。日韓は対米従属からアジア重視に転換せざるを得ない。韓国と北朝鮮は、米中の監督下で連邦的な体制を強める。韓国は親中国の色彩を強め、北朝鮮は中国式の市場経済化を進める。極東の秩序は中国主導になっていく。

◇               ◇               ◇               ◇               ◇

中国包囲網と矛盾する米朝対話

2011年12月23日   田中 宇

 金正日の死は、08年に彼が倒れて以来予測され、金正日自身によって政権世襲の準備が進められていた。ある程度の準備が整っていたようなので、12月17日の彼の死は、北朝鮮の崩壊につながりそうもない。それは、前回の記事に書いたとおりだ。私から見ると、金正日の死そのものより、その直前に米国が北朝鮮と進めていた米朝交渉と、その先に6カ国協議が予定されていたことの方が重要だ。 (金正日の死去めぐる考察)→ 2011.12.21の解説 ー下平記入・以下略

 米朝は、金正日の死の2日前、北京での交渉で、北朝鮮が核兵器開発を廃棄する見返りに、米国が食料支援を再開することを合意した。金正日が死んだ後も、彼の死が大して重要でないかのように、米朝交渉の延長としての、6カ国協議の再開に向けた動きが続いている。米国は、北朝鮮の新政権と交渉を継続することを表明した。中国政府系の研究者が、6カ国協議の再開が近いと指摘した。韓国政府の6カ国協議担当の代表は、北京に向かった。韓国の李明博大統領は、これまで中国の胡錦涛主席と会談したことがなかったが、来年早々に訪中することにした。これらは、6カ国協議の再開が近いことをうかがわせる。 (South Korean President to Visit China)→ 2011.12.19の解説

 6カ国協議を再開しようとする国際的な試みは、今年の3−4月ごろから続けられていた。米朝と南北が対話を再開し、敵対を和解に変えていくプロセスが始まったら、米国が6カ国協議の再開を主導するという、米中協調型のシナリオだった。夏から秋にかけて、米朝対話は何度か行われた。 (◆米中協調で朝鮮半島和平の試み再び)→ 2011.4.25の解説

 だが、韓国の李明博政権が、北と敵対して軍事主導の対米従属を続ける「1周遅れのネオコン戦略」に固執し「天安鑑沈没事件について北が謝罪しない限り、北と対話しない」という姿勢だったので、南北対話の方が進まず、6カ国協議を再開できなかった。 (◆金正日の訪中と南北敵対の再開)→ 2011.6.7の解説

 その後、今秋から李明博政権(与党ハンナラ党)に対する支持率が低下し、10月下旬のソウル市長選挙でハンナラ党の候補が破れたため、ハンナラ党は12月に入り、それまでの北朝鮮敵視をやめることを決め、次期大統領候補に親北派の朴槿恵を返り咲かせた。これによって、韓国が南北対話を行う方向に転換し始めた。 (◆北朝鮮6カ国協議再開に向けた動き)→ 2011.9.28の解説

 それに合わせて米国が北朝鮮との交渉を進め、交渉がまとまっていよいよ6カ国協議の再開を宣言しようという時に、金正日が死んでしまった。しかし、死後の米国や韓国の対応を見ていると、金正日の死を乗り越えて、6カ国協議の再開に向けた動きが続きそうだ。動きが再開するとしたら、北朝鮮の喪が明けた来年の正月以後だろう。

▼6カ国協議の成功は対米従属の終わり

 6カ国協議は、北朝鮮が核兵器開発を放棄するとともに、韓国と北朝鮮が和解して朝鮮戦争の正式な終戦を宣言し、在韓米軍が撤退し、朝鮮半島の安保体制は、日米韓と朝中露との冷戦型の対立構造を脱却し、代わりに6カ国(日米韓朝中露)が協調する東アジアの新安保体制を作る方向性だ。米軍のプレゼンスが縮小し、日韓は対米従属からアジア重視に転換せざるを得なくなる。 (アジアから出て行くアメリカ)→ 2004.6.15の解説

 6カ国協議の枠組みを創設した米国の前ブッシュ政権が、そうした方向性を打ち出した。オバマ政権は、前政権が打ち出したこの方向性について、肯定も否定もしていないが、6カ国協議は依然として中国主導であり、オバマ政権は6カ国協議の意味について前政権を継承していると考えられる。要するに6カ国協議は、米国と中国が朝鮮半島の和解で協調する方向性だ。しかしこの方向性は、最近の米オバマ政権が採っているとされる中国包囲網の強化策とは、正反対の方向だ。 (アジアのことをアジアに任せる)→ 2006.10.31の解説

 米国のオバマ大統領は11月中旬にアジア諸国を歴訪した際に「今後はアジア太平洋地域を最重視する」と宣言した。同時に米国は、中国と東南アジア諸国が対立する南沙群島問題に東南アジアの肩を持って介入し、豪州に海兵隊を恒久駐留させることを決め、中国抜きのアジア太平洋の自由貿易協定TPPの創設を推進するなど、中国包囲網を強化している。オバマのアジア最重視策とは、つまるところ中国包囲網の強化なのだと、日本などで理解されている。 (米国の「アジア重視」なぜ今?)→ 2011.11.20の解説

 しかし、中国包囲網を強化するのが米国の新戦略であるとしたら、それは米国が北朝鮮と交渉して6カ国協議の再開を目指していることと矛盾している。中国包囲網と6カ国協議のどちらか一つの方向性が、イメージ先行の見かけ倒しの「演技」であると考えられる。どちらかが見かけ倒しだとしたら、6カ国協議でなく、中国包囲網の方だろう。中国政府は世界最大の米国債の保有者なのに、米政府が中国を敵視する包囲網を作るのは頓珍漢だ。中国を敵視するなら、先に米国の財政を黒字化することが必要だ。 (米国が誘導する中国包囲網の虚実)→ 2011.10.5の解説

 オバマの中国包囲網は、裏側に日本のTPP加盟や米韓FTAの話が存在している。TPPやFTAは、米政府に政治影響力を持っている米国の産業界が、日本や韓国の経済利得の一部を収奪するための方策であり、日韓が対米従属策の裏返しとして米国が中国包囲網を強めることを望んでいるので、オバマは「中国包囲網を強めてやるから日韓はTPPやFTAに入り、米企業を儲けさせてくれ」と言っているにすぎない。 (◆貿易協定で日韓を蹂躙する米国)→ 2011.12.21の解説

 法外な高値であるうえ性能に疑問がある米国製の新型F35戦闘機を、日本や韓国が大量購入させられるのも、同じ構図に見える。「中国包囲網」は、米国の詐欺商法の「だまし文句」に見える。詐欺商法をやる米国は悪質だが、対米従属に固執して、だまされるすきだらけの日韓の間抜けさの方が主たる原因である。TPPも米韓FTAもまだ交渉の途中なので、日韓が本当に米企業に収奪される構図を定着させてしまうかどうかは、まだわからない。 (Japan selects troubled F-35 as new fighter jet)→ AFPの新聞

 もし来年6カ国協議が進展し、北朝鮮が核兵器を廃絶するとともに、米朝と南北が和解する動きが進むと、それは極東における冷戦構造がようやく終わることを意味する。東アジアにとって日本の敗戦以来の大きな転換となる。 (朝鮮半島を非米化するアメリカ)→ 2007.2.6の解説

 ブッシュ政権の米国は、北朝鮮に「核兵器開発の設備が北朝鮮に存在しないことを立証できなければ、核廃棄したとみなせない」という無理な条件をつけていた(国内のどこにも核兵器開発施設を隠していないことを立証するのは、どんな国でも不可能だ。イラクのフセイン政権は、この理屈を使って潰された)。しかし、今後の米国は、北の核廃棄の検証方法について、現実的で寛容なやり方をするだろう。北が「核廃絶しました」と宣言して、以前にやった象徴的な原子炉冷却塔の爆破解体と同程度のパフォーマンスをやれば、それですむのでないか。 (北朝鮮核交渉の停滞)→ 2008.1.29の解説

 東アジアの冷戦構造の上に座って蓄財や権力を維持する勢力は、米国にも韓国にも、北朝鮮にも日本にもいる。これらの勢力が今後、いろんな手を使って、6カ国協議の進展を妨害するかもしれない(金正日の死は、その一つだったのかも)。以前に米中が和解しそうだった1950年には、朝鮮戦争が起きて米中の敵対構造が固定化された。今回もどんでん返しがあり得る。

 だがもし今後、大したどんでん返しもなく、6カ国協議の目標が達成されたら、日本にとっても大変なことになる。南北や米中対立が解消され、在韓米軍と在日米軍は「グアム以東」に撤退していく。韓国と北朝鮮は、米中(特に中国)の監督下で、連邦的な体制を強める。韓国は親中国の色彩を強め、北朝鮮は中国式の市場経済化を進める。極東の秩序は中国主導になっていく。 (North Korea May Adopt China-Style Economic Reforms, Mobius Says)→ 2011.12.23の解説

 日米同盟は空洞化する。小沢一郎が09年秋にやろうとした、対米従属からの離脱や官僚支配解体の策が、いずれ再燃するかもしれない(最近の大阪の選挙は、地方からの官僚支配への反逆といえる)。米国は台湾への関与をますます弱め、台湾は年明けの総統選挙で誰が勝っても、中国に吸収される方向になる。

 日本政府は従来、北朝鮮の拉致問題について、北朝鮮が日本を納得させる目的でどんな対応をしても「北が言っていることはウソばかりで、よこした証拠はインチキだ」という不信の態度を貫き、拉致問題を解決不能なものに押しやっていた。これは、北への敵視を続ける対米従属策の一環だった。官僚機構が、金丸信の北朝鮮訪問のような政治主導の日朝和解を阻止するためにも、拉致問題の構図が維持されていた。 (北朝鮮6カ国合意と拉致問題)→ 2007.2.16の解説

 しかし今後6カ国協議が進展するとしたら、日本は拉致問題に拘泥することが国際的に許されなくなる。もしくは、日本の官僚機構が、対米従属の代わりに鎖国策をとり、拉致問題に固執することで、意図的に6カ国協議の体制から日本だけ外れていく道を選ぶかもしれない。 (日米安保から北東アジア安保へ)→ 2008.6.24の解説

 来年から再来年にかけて、ユーロ危機が一段落すると、ドル買いの方に煽られていた資金の流れがゆるみ、米国の債券金融システムが再度くずれ、ドル崩壊が起きるかもしれない。貧富格差の拡大など、米国の社会不安も拡大する方向だ。米政府はそれらのことに追われ、米国は混乱し、朝鮮半島や東アジアのことを中国に任せる傾向を強めそうだ。6カ国協議の再開は、そういった流れの一つと見ることができる。 (北朝鮮問題で始まる東アジアの再編)→ 2003.9.3の解説




一読してみると、 ウゥ〜ン! 凄い! の一語に尽きる衝撃です。 すべてを検証すべきでしょうが、そんなことは不可能です。

なかほどの

   東アジアの冷戦構造の上に座って蓄財や権力を維持する勢力は、米国にも韓国にも、
   北朝鮮にも日本にもいる。 これらの勢力が今後、いろんな手を使って、6カ国協議の
   進展を妨害するかもしれない(金正日の死は、その一つだったのかも)。 以前に米中
   が和解しそうだった1950年には、朝鮮戦争が起きて米中の敵対構造が固定化された。
   今回もどんでん返しがあり得る。

この解説を読んでいると、岡倉古志郎の「死の商人」を想起してゾッとします。 また、終わりから三節目の

   日本政府は従来、北朝鮮の拉致問題について、北朝鮮が日本を納得させる目的で
   どんな対応をしても「北が言っていることはウソばかりで、よこした証拠はインチキだ」と
   いう不信の態度を貫き、拉致問題を解決不能なものに押しやっていた。 これは、北
   への敵視を続ける対米従属策の一環だった。 官僚機構が、金丸信の北朝鮮訪問の
   ような政治主導の日朝和解を阻止するためにも、拉致問題の構図が維持されていた。

この解説はそのまま受け止めたいと老生はおもいました。 北朝鮮と日本の経緯はかなり意図的のようにも感じていました。 その一つは、小泉総理が訪朝し一時帰国という約束で連れ帰った人たちをそのまま日本にとどめたことです。 総理の約束が国際間において破られたのですが、それについての国内のメディアも識者もマスコミでは取り上げもしなかったのはおかしなものでした。

ともあれ、マクロの立場で事実の推移を検証すべきなのです。 歴史を正視できないとすると、将来に禍根を残すことになる。 ユネスコが危惧する無知と偏見が多ければ多いほど、戦争を繰り返すことになります。

真実の追及は、理屈が多いとか難しいことを話題にするとか、そんな感情的な角度でへし曲げてはならないのです。