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折々の記 2015 ④
【心に浮かぶよしなしごと】

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  05 25 核会議決裂   世界は転落の一途へ
  05 25 ミャンマー ロヒンギャ問題   寝耳に水

 05 25 (月) 核会議決裂   世界は転落の一途へ

第一次世界大戦と第二次世界大戦の反省が生かされることがない。 日本も前車の轍を繰り返す方向へ思いっきり舵を切り始めた。 戦争を反省する気配はまったくない。

対戦争への方法論にのみ終始して、「日本の憲法=戦争放棄」という、戦争による甚大な悲劇を再来させないという議論がまったく見えてこない。

戦争の悲劇について、条理を尽くして検証することが足りないからだろうと私は思います。

経済優先の理論に押しまくられ、他国との友好と連携などは国会の論議にも登場しない。 一人ひとりの発言者の心の中に、世界平和を一番大事にしているという信念が見えてこないのです。

戦争放棄を願う日本は、なぜ「戦争はやめましょう」という主張を国際社会へ向かって発言しないのでしょうか !!!  テレビからも新聞からもほとんど聞こえてきません。

私たち一人ひとりが戦争(=武器商人の利益と戦争従事者の死傷、破壊、家庭の悲劇しか残らない)の検証を学んで、私たち一人ひとりが心の奥深くにユネスコの願いや戦争の因果を刻みこみ、平和の砦を築き上げて国の将来についてすすんで発言しなければなりません。




   ① 遠のく「核なき世界」 NPT会議が決裂(5月24日)
   ② (時時刻刻)核軍縮、土壇場で暗転 NPT会議(5月24日)
   ③ イスラエルの「核」で溝 米は擁護・アラブ反発 NPT決裂(5月24日)
   ④ (社説)核会議決裂 拡散への危機感高めよ(5月24日)
   ⑤ 被爆者ら失望・憤り NPT会議決裂「何も前進なし」(5月24日)
   ⑥ (@イスラエル)サイバー「先進国」(5月23日)
   ⑦ 被爆地訪問の提案を削除 NPT文書素案、中国要求(5月23日)
   ⑧ (社説)NPT会議 暗雲払う道筋を(4月26日)


2015年5月24日05時00分
① 遠のく「核なき世界」 NPT会議が決裂
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11771036.html?iref=reca

 ニューヨークの国連本部で開かれていた核不拡散条約(NPT)再検討会議は22日、約1カ月にわたる議論の成果をまとめた最終文書を採択できないまま閉幕した。核軍縮分野の合意も成果として残らず、非保有国からは強い不満が出た。NPT加盟国間の亀裂は深まり、核軍縮の流れは停滞しそうだ。▼2面=土壇場で、7面=アラブ反発、8面=社説、34面=被爆者は

 会議は先月27日に始まり、約190の加盟国が世界の核軍縮と核不拡散、原子力の平和利用について協議し、最終文書の採択を目指してきた。だが、22日の最終会合で、フェルキ議長は「努力を尽くしたが、会議は最終文書を採択できなかった」と述べた。

 最終文書の採択は、「核のない世界」を掲げるオバマ米政権が、中東を非核地帯とするための国際会議の開催手法に反対し、不可能になった。英国とカナダも米国の動きに同調した。

 核保有国に時間を区切った核軍縮を求めてきたオーストリアのクメント軍縮大使は、会議が決裂したことに「とても残念だ」と述べた。米国はNPT非加盟で核を持つイスラエルへの配慮から、反対に回ったとみられており、核保有国と同盟を結ばない非同盟運動の代表は「NPT非加盟国のために、米国がNPT会議の全会一致を妨害する姿勢に驚いた」と批判した。

 世界の核兵器の約9割を持つ米国とロシアがウクライナ情勢などで対立し、中国も核戦力を強化するなど、核軍縮の機運は低下している。一方、会議では多くの国が、核の非人道性や核兵器禁止を訴えた。最終文書案にもそうした動きを反映する文言が残ったが、会議の決裂で、これらの「成果」は国際合意にはならなかった。(ニューヨーク=金成隆一、松尾一郎)

 ◆キーワード

 <NPT再検討会議> 5年に1度、核不拡散条約(NPT)の運用状況を検討するために開かれ、NPTの実効性を高めるための最終文書の全会一致の採択を目的とする。2000年は核廃絶への「明確な約束」など核軍縮に関する13方策を盛り込んだ文書が、10年は核廃絶への64の行動計画などを盛り込んだ文書が採択された。


2015年5月24日05時00分 (時時刻刻)
② 核軍縮、土壇場で暗転 NPT会議
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11771013.html

 5年に1度、核軍縮の進展などを点検する核不拡散条約(NPT)再検討会議は、最終文書案の採択に失敗し、決裂して幕を閉じた。約1カ月の会議では、核保有国と、核軍縮の停滞にいらだつ非保有国との溝も埋まらなかった。NPT体制が揺らぐなか、日本の役割も問われている。▼1面参照

 ■米、イスラエルに配慮 中東非核構想、停滞のまま

 22日午後5時すぎ、国連本部。1カ月に及んだ会議の最終の全体会合が予定の2時間遅れで始まった。

 集まった各国代表団の手には、同日未明に配布された最終文書案。加盟国の求めで繰り返し文言が修正された文書案が何とかまとまったことで、核軍縮の専門家らの間には「ここまできて4週間の会議をぶちこわす勇気のある国はないだろう」と採択を楽観する見方も出ていた。

 全体会合で最初に演説したアラブ諸国代表のチュニジアは「文書案には懸念が残るが、賛成する準備はできている」と採択への同意を表明した。

 しかし、2番手の米国の演説で会議の決裂は決定的になった。米オバマ政権で核軍縮・不拡散政策を担うゴットメラー国務次官が、関係者の4週間にわたる協議の苦労をねぎらった後、「しかしながら、この文書案には合意がないと言わねばならない」。静まり返った議場に向け、最終文書案に「残念ながら同意できない」と言い切った。

 この瞬間、全会一致での採択の可能性が消えた。傍聴席には悲鳴も響いた。

 米国の不同意の理由は、文書案に盛られた中東非核地帯構想の国際会議に関する記述だ。この構想は、1995年のNPT再検討会議で採択されたが、20年間進展がなく、エジプトなどは大きな不満を募らせてきた。非公開の協議の末、最終的な文書案には来年3月1日までの会議開催が盛り込まれたが、米国は「恣意(しい)的な期限だ」と批判し、受け入れなかった。

 中東の非核地帯構想の国際会議が開かれれば、中東で唯一の核保有国とされるイスラエル(NPT非加盟)がやり玉に挙げられることは確実だ。オバマ米政権は、事実上の同盟国であるイスラエルへの配慮から、会議の開催手法に反対したとみられる。

 オバマ大統領は22日、ワシントンでユダヤ系米国人の集会に出席し、「イスラエルの安全保障に対する私と米国の責任ある関与は、今も今後も揺るぎない」と述べた。

 一方、米国は、会議でも取り上げられた核兵器禁止条約をめぐる議論の盛り上がりに抵抗するため、採択を止めたとの見方もある。ある専門家は「米国は中東問題を理由に会議を決裂させたが、真の狙いは核軍縮の議論の成果を文書に残さないことだったのではないか」と語った。

 岸田文雄外相は23日、「被爆70年の節目の年に開催された会議で最終文書の合意に至らなかったことは大変残念」と、広島市で記者団に語った。岸田氏は「核兵器のない世界に向けた取り組みに悪影響がでないようにNPDI(日本を含む非核12カ国のグループ「軍縮・不拡散イニシアチブ」)メンバー国と協力しながら引き続き努力していく」とも語った。

 ■「非人道性」の訴え、拡大 「核の傘」日本、存在感示せず

 今回の再検討会議では、核軍縮が進展しない現状に業を煮やす非保有国が、「核の非人道性」を訴えて、核保有国に「義務と責任、スケジュール」を伴った核軍縮を迫る場面が目立った。

 この人道的アプローチを推進するのは、エジプト、メキシコなど「新アジェンダ連合(NAC)」の6カ国を中心に百数十カ国に及ぶ。代表格のオーストリアのクメント軍縮大使は、人道的アプローチに同意する国の数が「(国連加盟国の)大多数を占める」と演説で言及した上で、核保有国との間の信頼性の欠如を指摘した。

 人道的アプローチの広がりは、前回2010年の最終文書で核兵器使用の「壊滅的な人道的結果」が盛り込まれたことが背景にある。13年から14年末までにオスロ、メキシコ、ウィーンの3カ所で核兵器の人道的影響に関する国際会議が開かれた。その参加国など159カ国の支持を前面に出して、今回の会議でオーストリアは核禁止条約の制定も呼びかけた。

 一方、核保有国側は、こうした動きが拡大することに警戒を強めている。

 今回の再検討会議の会合で、米国は「『過半数』の意見に言及する発言者がいるが、そんな大衆迎合主義はピントがずれている」と反論。ロシアは「核兵器を十分に扱った経験がない国の考えだ」、中国は「(核の人道的影響が)特定の国々に、一方的な歴史解釈のために使われることを望まない」などと非難した。

 フランスは特に鋭く反応し、過去3回の人道的影響に関する会議の成果について、「人道分野に新しい知見は何もない」などと切り捨てた。

 10年のNPT再検討会議で採択された最終文書には、核不拡散などに向けた64項目の行動計画が盛られた。そのうち核軍縮関連は22項目を占め、核兵器の保有数開示といった「透明性」を確保することなどを求めている。だが、複数の非核保有国の外交官は、核軍縮の計画は過去5年間で「ほとんど何も達成されていない」とみている。

 「核のない世界」を唱えるオバマ政権の主導で進んだ米ロの核軍縮も、ロシアのクリミア併合宣言などで米ロ関係が悪化したこともあり、停滞している。中国は核兵器の近代化を図っているとされ、北朝鮮の核開発問題も解決は見えない。インド、パキスタンは、NPT非加盟で核を持つ。

 非保有国は、こうした現状への危機感を募らせる。今回の再検討会議の決裂で大きな逆風に見舞われたが、「核の非人道性」を訴えて核軍縮を働きかける動きは、今後も続きそうだ。

 核保有国と非保有国の溝が深まる中で開かれた会議に、日本は双方の「橋渡し役」を自任して参加した。しかし、米国の「核の傘」に依存する立場から、核兵器禁止の動きには加わらず、存在感は示せなかった。 (ニューヨーク=金成隆一、松尾一郎、田井中雅人)


2015年5月24日05時00分 
③ イスラエルの「核」で溝 米は擁護・アラブ反発 NPT決裂
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11771107.html?iref=reca

 ニューヨークの国連本部で開かれていた核不拡散条約(NPT)再検討会議が決裂した背景には、イスラエルの核を念頭においた「中東非核地帯構想」をめぐる各国の立ち位置の違いがある。▼1面参照

 エジプト代表は22日、全体会合で「数カ国が、特に米国が最終文書の採択を止めている」と批判。中東の非核化への取り組みが妨害されたとして、全会一致の仕組みの「乱用だ」と痛烈に米国を批判した。

 イスラエルの核保有は公然の秘密だが、同国は肯定も否定もしない戦略をとり、NPTにも加盟していない。それが、周辺国からの攻撃を抑止する効果を持ったとされる。イスラエルは約80発の核弾頭を保有すると推定される一方で、周辺国の核保有は認めない方針をとり続けてきた。

 中東や北アフリカ諸国などで組織する「アラブ連盟」は1995年、イスラエルのNPT加盟を求める決議を採択。同年のNPT再検討会議では、中東非核地帯の創設やイスラエルのNPT加盟を促す「中東決議」が採択された。

 核を持たないエジプトを中心とするアラブ諸国はその後も、イスラエルの核保有を問題視した。2010年の再検討会議では、中東非核地帯構想を実現するための国際会議を12年に開催することで合意。「核なき世界」を掲げるオバマ米政権が、エジプトなどと水面下で折衝した結果だった。

 しかし、その後の進展はなく、アラブ諸国は今回の再検討会議でも構想の実現を求めた。イスラエルは4月末に出した声明で、中東地域の「幅広い安全保障課題」をめぐる対話を求めてきたとした。

 今回、米国が最終文書案に同意しなかったのは、事実上の同盟国であるイスラエルに配慮したため。イスラエルの有力紙ハアレツの元論説委員アキバ・エルダール氏は、オバマ米政権にとって大詰めのイラン核協議の最終合意が最重要だが、「(核協議に反発する)ネタニヤフ首相や米共和党を敵に回したくはないだろう」とみていた。

 イラン核開発に反発する国々を中心に、中東地域で「核ドミノ」が広がることを懸念する声も上がる。イスラエルの国家安全保障研究所上級研究員エミリー・ランダウ氏は「サウジアラビアなども核保有に向かう可能性がある」と語った。 (エルサレム=渡辺丘)

 ◆<考論>核廃絶の「約束」実現を 南アフリカ国連大使、アブドル・ミンティ氏

 南アフリカが提案した1995年の核不拡散条約(NPT)の無期限延長は、核保有国が核軍縮を進める代わりに非保有国が不拡散に努める取引(グランドバーゲン)だったはずだ。00年の再検討会議の最終文書では、核保有国は核兵器を廃絶する「明確な約束」をした。

 しかし、核保有国は核兵器を減らすと言うばかりで、具体的な一歩を踏み出していない。NPTは「核保有国のための条約」だと見なされてしまうだろう。

 フランスは今回の会議で「世界の人口の55%は核抑止に依存する国々に暮らしている」と述べたが、核抑止力に頼る国の政府の政策を国民が必ず支持しているとみなすのは誤りだ。

 70年代に2度、広島・長崎を訪れて被爆者に会った。世界が過ちを繰り返さない唯一の道は核兵器を廃絶することだけだと聞いた。核保有国が自身の安全保障のために核兵器を保有し、同盟国の安全保障にも拡大する現状は、核拡散を推進しているとも言える危険な状態だ。

 「核の傘」の下にいない多くの国々は「どうしてあなたたちの安全のためだけに核兵器が必要で、私たちには必要ないのか」と問い始めている。

 ◆<考論>日本、つなぐ役割果たせ 大阪女学院大学大学院教授・黒沢満氏

 ここ数年、非核国による3回の「核兵器の人道的影響に関する国際会議」の開催や共同声明などの「人道イニシアチブ」が大きな流れになってきた。大多数になった非核国・人道グループに対して、仏ロを中心とする核兵器国側に危機感が強まり、今回のNPT会議では強硬な態度に出た。

 2010年の最終文書には「壊滅的な人道的結果」という文言が1カ所だけだったが、今回は当初案からは後退したものの、「人道」の文言が7カ所ほど出てくる。この流れは加速するだろう。

 今回は

  (1)包括的核兵器禁止条約交渉の開始を求める非同盟運動(NAM)

  (2)人道を基礎に法的枠組みをも追求する新アジェンダ連合(NAC)

  (3)人道とともに安全保障も考慮に置く日豪など(NPDI)

  (4)安全保障のみを考える核保有国

という四つのグループが絡み合って、新しい考え方も出てきて、面白い議論ができたのではないか。

 人道グループの中で、共同声明を主導したNACなどの159カ国と、「核の傘」にある豪州などの26カ国が対立しているが、両方の声明に賛同している日本は、両者をつなぐ役割を果たすことを考えるべきだ。 (いずれも聞き手・ニューヨーク=田井中雅人)


2015年5月24日05時00分 (社説)
④ 核会議決裂 拡散への危機感高めよ
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11770945.html

 核兵器の拡散を食い止めるのは、地球を次世代へ渡す全世界の責務である。

 その道筋を話し合う5年に1度の国際会合が、何の成果も出せずに終わった。ニューヨークで続いていた核不拡散条約(NPT)の再検討会議である。

 加盟国の合意をまとめる最終文書をめぐり決裂したことは、NPT体制の持続性に大きな疑問符をつけることになった。

 国際社会は、重大な危機感をもたねばなるまい。今後、NPT体制の修復をめざす努力を各国が一段と強めるべきだ。

 同時に、必ずしも会議の合意だけに頼らず、協力できる国々で核廃絶をめざす活動を盛り上げることにも力を注ぎたい。

 会議の決裂は、表面的には中東の非核化をめぐる文言が主因だった。イスラエル寄りの立場をとる米国などがアラブ主導の文言に同意しなかった。

 だが、事態の本質は中東問題ではない。最も深刻な問題は、核保有国と非核国の対立の溝が、もはや隠し通せないほど深まったことにある。

 会議で、核兵器の非人道性を強調する非核国の主張に対し、核保有国は次々と難色を示し、表現を弱めることに腐心した。

 NPTは核保有を米ロ英仏中にだけ認める代わり、その5カ国に誠実な核軍縮交渉を義務づけている。だが実際には、軍縮に消極的どころか、核による脅しを発言する国まで出て、非核国の不満は高まっている。

 NPT非加盟のイスラエルやインド、パキスタンはすでに核を保有し、北朝鮮の身勝手な核開発も続いている。これ以上、核に走る国を許しては一気に連鎖反応が起きかねない。世界の状況は危うさを増している。

 ただ今回の会議では、核の非人道性の論議が正面から取り上げられ、各国の理解が進んだ。非人道性を根拠に核を違法化する「核兵器禁止条約」など、新たな法的枠組みを探る動きを日本ももっと後押しすべきだ。

 日本が提案した広島、長崎への各国指導者らの訪問も、地名は削除されたものの趣旨は最終文書案に盛り込まれていた。

 日本政府は、核保有の5大国を含む世界の指導者や軍縮専門家、若者らを招き、非人道性を積極的に訴え続けてほしい。

 日本を含め、安保面で他国の「核の傘」のもとにある非核国には矛盾がつきまとう。だとしても、被爆国日本が非人道性に口をつぐむことは許されない。

 最終文書案に従い、安保上の核兵器の役割を減らす。そして核兵器の違法化をめざす。その目標へ率先して進むべきだ。


2015年5月24日05時00分 
⑤ 被爆者ら失望・憤り NPT会議決裂「何も前進なし」
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11771016.html

 核不拡散条約(NPT)再検討会議が決裂した。「核兵器禁止条約」の文言などが削除された最終文書さえも採択できず、核兵器廃絶を願う被爆者らに失望や憤りが広がった。▼1面参照

 現地に約50人の代表団を送った日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳(てるみ)事務局長(83)は「被爆70年の年に何も前進がなく残念。いかに核保有国の国民に非人道性を伝えるか、真剣に考えなくては」と危機感を示した。

 広島市の市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」の森滝春子共同代表(76)は、核兵器の法的規制を訴えるオーストリア政府の誓約に100カ国以上が賛同したことに、「この新しい潮流に市民が結集するしかない」と話した。

 会議で核兵器禁止条約の交渉を始めるよう訴えた広島市の松井一実(かずみ)市長は「極めて残念だ」とのコメントを出した。

 各国の指導者に被爆地への訪問を呼びかけた長崎市の田上富久市長は「失望している。NPT体制への信頼が揺らぐ可能性もある」と記者団に話した。


2015年5月23日00時00分 連載:特派員リポート
⑥ (@イスラエル)サイバー「先進国」
     http://digital.asahi.com/articles/ASH5P12QJH5NUHBI032.html?iref=reca

■特派員リポート 渡辺丘(エルサレム支局長)

 紛争のイメージがつきまとうイスラエル。一方で、近年はハイテク分野の技術の高さから世界の注目が集まり、「第2のシリコンバレー」とまで呼ばれるようになった。中でも、国の安全保障や経済活動への影響が大きいサイバーセキュリティーの分野への取り組みを強化し、存在感が大きくなっている。

 イスラエル首相府の国家サイバー局によると、同国には250以上のサイバーセキュリティー関連企業があり、約半数がこの5年以内に設立された新興企業だ。2014年には約30社で2億ドル(約240億円)の民間投資を呼び込んだ。これは、サイバーセキュリティー分野の世界の民間投資の1割に相当する。14年から15年第1四半期にかけて、14の関連企業が10億ドル(約1210億円)で買収された。サイバーセキュリティー関連の製品やサービスなどの輸出額は昨年30億ドル(約3630億円)に上るという。

 今年3月下旬には、イスラエル最大の商業都市テルアビブで、サイバー攻撃対策の大規模な見本市「サイバーテック」が開かれた。2年目となる催しには、同国有数の軍事企業から斬新なアイデアをアピールする新興企業まで150社以上が出展。50カ国以上から訪れた8千人以上の企業関係者らに自慢の商品やサービスを売り込んだ。

 人口約800万人の小国ながら、最先端技術を生み出すイノベーションに強い理由として、よく指摘されるのが軍との関係だ。イスラエルでは、通常は高校卒業後の18歳から、男性は3年、女性は2年の兵役義務がある。中でも選抜試験でえりすぐられた最高の頭脳が集まるのが、サイバー攻撃への対応や情報収集などを担う「8200部隊」や軍事技術を開発する「タルピオット」と呼ばれるエリート組織だ。

 こうした場で訓練を受けた若者たちがその後、民間で起業したり、軍事企業を支えたりしている。軍時代の絆は強く、政府や民間、大学などの間の人材の流動性も高いという。

 陸、海、空、宇宙に続く「第5の戦場」と呼ばれるサイバー空間での攻撃に対する脅威の認識は、非常に高い。サイバーテックの会場に現れた国家サイバー局トップのマタニア局長は、各国の取材記者に「我々は興味深い周辺環境にいる」と思わせぶりに語った。

 具体的な「敵」を問われると、イランやレバノンのシーア派武装組織ヒズボラなどの名前を挙げ、サイバー攻撃への警戒心を隠さなかった。

 イスラエル自身、攻撃への関与が指摘されたこともある。米ニューヨーク・タイムズは11年、米国・イスラエル両政府が関わったとみられるコンピューターウイルス「スタクスネット」の存在を報じた。

 スタクスネットは、イラン核施設で核物質を濃縮するために必要な遠心分離器1千基を停止に追い込むなど、核兵器開発を遅らせるための障害を引き起こす「成果」を挙げたとされる。だが、サイバー攻撃は攻撃元の特定が難しいことが特徴で、どの国も関与を認めることはまずない。

 私が日本との協力について尋ねると、マタニア局長は「米国、ロシア、中国がサイバー分野の超大国だが、イスラエルもサイバー防衛技術の発展に努め、世界の先進国の一つとなった。我々の経験と特別な努力を日本に提供したい」と意気込みを語った。国家サイバー局の関係者によると、日本から会場を訪れた約10社と協議の場を持ったという。

 サイバーテックに出展した、防衛装備品を扱うイスラエル企業は、サイバー攻撃の覚知から対処までのサービスを売り込む。担当者によると、2年前から日本とのビジネスも始めたという。「多くのサイバー攻撃を受けている日本の政府や企業はリスクを感じており、イスラエルの高い技術を求めている。日本は私たちにとって非常に重要な市場です」と担当者は言った。

 広大な会場には、日本の企業関係者の姿もあった。出展企業のブースで熱心に話を聞き、「イスラエルの技術に関心を持っている」と口をそろえた。

 日本とイスラエルのベンチャー企業をつなぐコンサルティング会社「コランダムイノベーション」の取締役CTOで早大客員教授の武田健二さんによると、不正アクセスを防ぐファイアウォールの技術も元はイスラエル発祥だという。「日本企業はこれまで米西海岸シリコンバレーにアンテナを立ててきたが、イスラエルとは付き合いがほとんどなかった。イスラエルはシリコンバレーよりも成熟する前のベンチャー企業にアクセスできる」とイスラエル企業との提携の意義を語った。

 日本でも近年、政府機関や大企業などを狙ったサイバー攻撃が相次いでいるが、対策は他の先進国と比べて進んでいるとは言えない。日本とイスラエル両国のビジネス関係者とも「サイバー攻撃の対象になりやすい」とみるのが、5年後に迫った五輪開催だ。「対策を急ぐ日本と高い技術を持つイスラエルは、重要なビジネスパートナーになり得る」と指摘する。

 日本企業は伝統的に湾岸のアラブ諸国を重視し、中国や韓国などと比べてイスラエルとの関係強化に慎重な面があった。だが、昨年2月に経団連の代表団がイスラエルを訪問するなど風向きは変わっている。

 同5月、ネタニヤフ首相が訪日した際に安倍晋三首相との間で合意した共同声明では、安全保障に関する首脳級の対話を初めて実施したとし、防衛当局間の交流拡大やサイバーセキュリティーに関する対話への期待などを表明。茂木敏充経済産業相(当時)は7月、イスラエルでネタニヤフ首相と会談し、サイバーセキュリティーの協力を進めることで合意し、11月にはイスラエルの政府高官が日本を訪れて事務レベルで初めて具体的な協議をおこなった。

 ただ年が明けて、イスラエルのサイバーセキュリティーやハイテク関連の視察を予定していた日本企業が訪問をキャンセルする動きもあった。企業関係者によると、イスラエルとは直接関係がないものの、過激派組織「イスラム国」(IS)による日本人人質事件の影響で中東訪問自体に慎重になったという。イスラエル軍とパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの昨夏の大規模な戦闘も、日本企業に少なからぬ動揺を与えた。イスラエルに駐在する日本企業の関係者は「安心してビジネスが出来ることが大前提」と言う。

 一口にサイバーセキュリティーといっても、国の安全保障に関わる重大な攻撃から、企業や個人の活動を脅かすものへの対策など幅広いことは言うまでもない。イスラエルの先端技術をめぐる動向は世界の関心事だが、日本がとりわけ安全保障面で具体的にどのような協力を進めていくのかも、また国際社会の注目を集めそうだ。

     ◇

渡辺丘(わたなべ・たかし) エルサレム支局長。2003年入社、東京本社社会部、国際報道部などを経て15年1月から現職。日本では防衛・外交、公安警察などを取材した。35歳。


2015年5月13日16時30分
⑦ 被爆地訪問の提案を削除 NPT文書素案、中国要求
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11751870.html?iref=reca

 国連本部で開催中の核不拡散条約(NPT)再検討会議で、核軍縮を扱う委員会が12日、最終文書の素案第2稿を加盟国に配った。当初案は世界の指導者らに被爆地を訪ね、被爆者の証言を聞くよう提案していたが、今回は丸ごと削除された。中国が削除を求めたことを認めた。

 8日付の最初の素案は、次世代への記憶の継承を扱う段落で、原爆投下から70年の節目に世界の指導者や軍縮の専門家、若者に「核兵器使用の壊滅的な人道上の結末を自分の目で確認し、生存者(ヒバクシャ)の証言に耳を傾けるため」に広島や長崎への訪問を提案していた。岸田文雄外相が先月27日の開幕日での演説で、指導層らの広島、長崎の訪問を提案しており、この案は外相の意向を反映した内容になっていた。

 第2稿から被爆地訪問の提案が削除されたことについて、中国の傅聡軍縮大使が12日、記者団に「日本政府が、日本を第2次世界大戦の加害者でなく、被害者として描こうとしていることに同意できない」と述べ、NPT会合で削除を求めたことを明らかにした。韓国を含め「少なくとも12カ国」が賛同したという。(ニューヨーク=金成隆一)


2015年4月26日05時00分 (社説)
⑧ NPT会議 暗雲払う道筋を
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11770945.html

 核兵器の拡散を食い止めるのは、地球を次世代へ渡す全世界の責務である。

 その道筋を話し合う5年に1度の国際会合が、何の成果も出せずに終わった。ニューヨークで続いていた核不拡散条約(NPT)の再検討会議である。

 加盟国の合意をまとめる最終文書をめぐり決裂したことは、NPT体制の持続性に大きな疑問符をつけることになった。

 国際社会は、重大な危機感をもたねばなるまい。今後、NPT体制の修復をめざす努力を各国が一段と強めるべきだ。

 同時に、必ずしも会議の合意だけに頼らず、協力できる国々で核廃絶をめざす活動を盛り上げることにも力を注ぎたい。

 会議の決裂は、表面的には中東の非核化をめぐる文言が主因だった。イスラエル寄りの立場をとる米国などがアラブ主導の文言に同意しなかった。

 だが、事態の本質は中東問題ではない。最も深刻な問題は、核保有国と非核国の対立の溝が、もはや隠し通せないほど深まったことにある。

 会議で、核兵器の非人道性を強調する非核国の主張に対し、核保有国は次々と難色を示し、表現を弱めることに腐心した。

 NPTは核保有を米ロ英仏中にだけ認める代わり、その5カ国に誠実な核軍縮交渉を義務づけている。だが実際には、軍縮に消極的どころか、核による脅しを発言する国まで出て、非核国の不満は高まっている。

 NPT非加盟のイスラエルやインド、パキスタンはすでに核を保有し、北朝鮮の身勝手な核開発も続いている。これ以上、核に走る国を許しては一気に連鎖反応が起きかねない。世界の状況は危うさを増している。

 ただ今回の会議では、核の非人道性の論議が正面から取り上げられ、各国の理解が進んだ。非人道性を根拠に核を違法化する「核兵器禁止条約」など、新たな法的枠組みを探る動きを日本ももっと後押しすべきだ。

 日本が提案した広島、長崎への各国指導者らの訪問も、地名は削除されたものの趣旨は最終文書案に盛り込まれていた。

 日本政府は、核保有の5大国を含む世界の指導者や軍縮専門家、若者らを招き、非人道性を積極的に訴え続けてほしい。

 日本を含め、安保面で他国の「核の傘」のもとにある非核国には矛盾がつきまとう。だとしても、被爆国日本が非人道性に口をつぐむことは許されない。

 最終文書案に従い、安保上の核兵器の役割を減らす。そして核兵器の違法化をめざす。その目標へ率先して進むべきだ。

 05 25 (月) ミャンマー ロヒンギャ問題   寝耳に水

ビルマ国内はいったいどうなっているのか?

日赤看護婦長をしていた母からビルマインパール作戦での話を聞いたことがある。

現地人のカレン族が参加して救護活動に応援してくれたという。 彼女たちは素直で人柄もよくとても助かったと聞いていた。 それに「ビルマの竪琴」の映画も見ていたので、ビルマに対しては好感すら感じていたのです。

軍事政権下での政治によって今日のような少数民族に対する抑圧があったことは、寝耳に水のような驚き以外にない。



Google による検索結果
ミャンマー ロヒンギャ問題
① ロヒンギャ - Wikipedia
   ja.wikipedia.org/wiki/ロヒンギャ
ロヒンギャ(英: Rohingya people、またはロヒンジャー)とは、ミャンマーのラカイン州(旧アラカン州)に住む人々である。 目次. 1 概要. 1.1 名称; 1.2 居住; 1.3 宗教; 1.4 語源; 1.5 生業; 1.6 人口; 1.7 民族. 2 難民問題. 2.1 歴史的経緯; 2.2 現状; 2.3 課題. 3 来歴 ...

② 東南アジアの無国籍少数民族ロヒンギャの悲劇 - 一人ひとりが声 ...
   www.alter-magazine.jp/index.php?東南アジアの無国籍少数民族ロヒン...
ミャンマーからバングラデシュに逃れたロヒンギャ族難民の約千人が数隻の小船でマレーシアを目指したが、途中でタイ海軍に拿捕され、乗っていた難民は近くの島に連行されて .... ここに、人権という視点だけでは捉えきれない、宗教・民族問題の複雑さがある。

ニュース トピック
③ ミャンマー政府が国際会議参加へ 「ロヒンギャ」難民問題
   日本経済新聞‎ - 1 日前
【ヤンゴン=松井基一】29日にバンコクで開かれるミャンマーの少数民族「ロヒンギャ」の 難民問題を議論する国際会議に、ミャンマー政府が代表を送ることがわかった。国際 社会がミャンマーによるロヒンギャへの弾.

   国際社会の非難に反論=ロヒンギャ問題でミャンマー高官 - エキサイトニュース
      Excite‎ - 2 日前
   ロヒンギャら墓穴139カ所 人身売買でマレーシア当局が捜査
   産経ニュース ‎ - 8 時間前
   「ミャンマー ロヒンギャ問題」の他のニュース

④ ビルマ西部:ロヒンギャ問題の背景と現実 | ヒューライツ大阪 ...
   www.hurights.or.jp/archives/newsletter/sectiion3/2010/03/post-96.html
もちろん、長らく閉ざされてきた軍事独裁国家(タンシュエ議長)ビルマは、その他にも民族問題・内戦・麻薬・核疑惑などの問題を抱えている。 いわゆる「ロヒンギャ問題」は、17年を費やしてビルマ全土を回ってきた筆者にも手つかずの取材課題であった。

⑤ ロヒンギャ問題(ロヒンギャモンダイ)とは - コトバンク
   https://kotobank.jp/word/ロヒンギャ問題-685299
デジタル大辞泉 - ロヒンギャ問題の用語解説 - ミャンマーにおいて、イスラム系少数民族のロヒンギャ族が国籍を与えられず、移動・結婚の制限、労働の強制、恣意的課税、財産没収など、さまざまな制約・差別・迫害を受けている問題。仏教徒のラカイン族との間 ...

⑥ 少数民族「ロヒンギャ」 難民問題が浮上 :日本経済新聞
   www.nikkei.com › 特集 › 超サクッ!ニュースまとめ
11 時間前 - ミャンマー西部に住むイスラム教徒「ロヒンギャ族」が難民となり、国際的な問題になっている。

⑦ ロヒンギャ問題、ミャンマーが反発 「差別ない」:朝日新聞デジタル
   www.asahi.com/articles/ASH5J4R4WH5JUHBI00S.html
2015/05/16 - ミャンマーに住むイスラム教徒のロヒンギャ族らが乗った船が周辺国に漂着している問題で、ミャンマーのイェートゥ情報相は16日、朝日新聞の取材に「これは難民問題ではなく、周辺国との間で起きている違法な人身...

⑧ ミャンマー イスラム教徒ロヒンギャ族問題で強まる海外からの ...
   blog.goo.ne.jp/azianokaze/e/422f77198e499405b947ef132ac61acb
2012/08/19 - 6月14日ブログ「ミャンマー ロヒンギャ問題への、スー・チーさんら民主化運動関係者の積極的関与を ... ただし、イラン国営メディアの報道ということで、イスラム教徒のロヒンギャ族側に立っている可能性には留意する必要があります

⑨ ロヒンギャもんだい【ロヒンギャ問題】の意味 - 国語辞書 - goo辞書
   dictionary.goo.ne.jp › 国語辞書
ロヒンギャもんだい【ロヒンギャ問題】とは。意味や解説、類語。ミャンマーにおいて、イスラム系少数民族のロヒンギャ族が国籍を与えられず、移動・結婚の制限、労働の強制、恣意的課税、財産没収など、さまざまな制約・差別・迫害を受けている問題。仏教徒の ...

⑩ 国際社会の非難に反論=ロヒンギャ問題でミャンマー高官 (時事 ...
   headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150524-00000050-jij-asia
2 日前 - 【バンコク時事】ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャ族難民をめぐる問題で、ミャンマー大統領府高官のゾー・テイ氏は24日付のタイ英字紙バンコク・ポストに掲載された寄稿文で、「ミャンマーは問題の根源ではない」と主張し、同国政府 ...

⑪以降は省略


メールマガジン「オルタ」
②東南アジアの無国籍少数民族ロヒンギャの悲劇

一人ひとりが声をあげて平和を創る      メールマガジン「オルタ」
   http://www.alter-magazine.jp/index.php?%E6%9D%B1%E5%8D%97%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%81%AE%E7%84%A1%E5%9B%BD%E7%B1%8D%E5%B0%91%E6%95%B0%E6%B0%91%E6%97%8F%E3%83%AD%E3%83%92%E3%83%B3%E3%82%AE%E3%83%A3%E3%81%AE%E6%82%B2%E5%8A%87
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 民主化の流れがようやく国際社会で認められはじめたミャンマーで新たな火種が燃え上がった。ベンガル湾に臨む西部ラカイン州でのイスラム教徒ロヒンギャ族と仏教徒アラカン族(ラカイン族)との民族対立である。

 ロヒンギャ族とみられる若者にアラカン族の少女が暴行された報復として、ア ラカン族がロヒンギャ族が乗ったバスを襲撃して10人を殺害。この事件を発端に6月から7月にかけて民族暴動が燃え盛り、6月末時点で100人以上が死亡、 3千棟以上の住宅が焼き打ちで破壊され、9万人以上が難民となった。

 襲撃の多くは治安当局に守られた仏教徒アラカン族によるもので、被害者のほ とんどはイスラム教徒のロヒンギャ族である。

 ボートでバングラデシュ側に逃れたロヒンギャ族も多いが、バングラデシュ政 府は受け入れを拒み、700人余りの難民が乗ってきた20隻以上の船をミャン マー側に追い返した。

 ミャンマー政府は外国人記者の入域を禁じるなど徹底した報道管制を敷いてい て、その後の状況は詳らかでない。
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◇◇ 避難の行方も阻まれて
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 ロヒンギャ族の受難は、だが、今回に限らない。1970年代と90年代、軍 事政権による強制労働や暴行、財産没収、移動制限による教育や商業活動の妨害などの迫害を受け、バングラデシュに数十万人が逃れ出ている。その後も難民の流出は絶えないが、2009年には次のような事件が国際社会の注目をひいた。

 ミャンマーからバングラデシュに逃れたロヒンギャ族難民の約千人が数隻の小 船でマレーシアを目指したが、途中でタイ海軍に拿捕され、乗っていた難民は近くの島に連行されて棒で殴られるなどの暴行を受けたうえ、エンジンを取り外し た小船に載せられて公海上に放置された。

 暴風雨の中で船は離ればなれになったが、数日後、そのうちの446人が乗っ た4隻の小船がインド沿岸警備隊によって保護され、190人が乗った1隻の小 船はインドネシア海軍によって救助された。しかし数百人は行方不明のままとな った。

 タイ政府は、事実を否定しながらも国際的な非難を浴びたが、南部で分離独立を主張するイスラム系反政府勢力と戦っているタイとしては(本誌101号、拙稿 参照)、イスラム移民の流入に神経を尖らせる事情もあった。
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◇◇ 国籍のない追われる民
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 このような迫害を受けつづけるロヒンギャ族とはいったい何者であろうか。

 バングラデシュ国境近くのラカイン州の一部に暮らすイスラム教徒の少数民族で、70万から150万人いるとされる。

 多民族国家のミャンマーだが、政府はロヒンギャ族を国内の少数民族として認 定せず、バングラデシュから移動してきたベンガル系の「不法移民」として扱い、 国民として認知しないため、無国籍状態に置かれている。主要民族のビルマ族を はじめ仏教徒が9割を占める国民の多くも、政府と見解を共有し、イスラム教徒ロヒンギャ族への差別意識は強い。

 一方、その出自とされるバングラデシュでは、流入の絶えないロヒンギャ族を一部、難民と認定して、国連運営キャンプの設営を認めながらも、周囲の仮設キ ャンプに暮らす20万人ほどについては「不法移民」としてミャンマー政府に引き取りを求め、収監や強制送還をくりかえしている。

 どちらの国から存在を拒否されるなんとも不安定な立場の人びとだが、その背 景には複雑な歴史がある。
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◇◇ 不条理には歴史あり
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 かつてロヒンギャ族は東インドのベンガル地方(現在のバングラデシュ)に住んでいたが、15世紀から18世紀にかけてビルマ西海岸に栄えたアラカン王国に傭兵や商人として移ってきた。イスラム教徒のロヒンギャ族と仏教徒のアラカ ン族は平和に共存し、王朝はベンガル湾のイスラム諸王国との貿易推進のため、イスラム教徒の名前を騙ることさえあった。

 19世紀前半にはインドから侵入した英国の植民地政策によって、仏教徒地主が継承してきた農地がイスラム教徒の労働移民にあてがわれた。このことによっ て仏教徒対イスラム教徒の対立構造が顕著になる。

 第2次大戦で進軍した日本と英国は、日本側が仏教徒、英国がキリスト教徒や イスラム教徒と、宗教別に構成された軍を創って戦わせたことから、両者の対立はもはやぬきさしならぬものとなった。

 ビルマ族やアラカン族など仏教徒が主導権を握った独立後、ロヒンギャ族は窮 地に立たされるが、それでも、1950年代のウー・ヌ政権下では市民権を与え られて特別行政区を安住の地とするが、62年に軍事クーデターで政権を奪った ネウィン将軍施政下の82年に制定された国籍法によって国籍が剥奪され、無権 利状態に置かれることとなった。

 さらに、88年の民主化運動や90年の選挙で、ロヒンギャ族がアウンサンス ーチー氏らの民主化運動を支持したことから、軍事政権による財産没収や強制労 働などの弾圧がいっそう厳しくなり、現在に至っている。

 ロヒンギャ族を含め非仏教徒系の少数民族からも期待の高いアウンサンスーチ ー氏だが、しかし、政治家として自由を得て初の外遊となったタイや欧州での発 言では、むしろ軍を擁護するニュアンスが色濃く、少数民族側の失望を買った。

 民主化をすすめるにはいまも実権を握りつづける軍の協力が不可欠だと彼女は考えているだろうし、まして、大多数が仏教徒である国民の多くがバングラデシ ュからの不法移民とみなすロヒンギャ族の肩をもつことは、国民の自分への支持を傷つけかねないとの計算もあったことだろう。
 ここに、人権という視点だけでは捉えきれない、宗教・民族問題の複雑さがある。

 最後にひとつのエピソードを加えたい。

 東インド(ベンガル地方)の一部は47年のインド・パキスタン分離独立でパキスタンの領土となるが、71年に独立してバングラデシュになる。そのさい、多くの仏教徒アラカン族がミャンマー(当時はビルマ)側に移り住んだが、コックスバザール周辺には少数派となった仏教徒アラカン族がいまだに住んでいる。
ミャンマー側のアラカン族に迫害されてバングラデシュに逃れてきたロヒンギャ難民たちを支援しているのが、じつはこれらの残留アラカン族なのである。「同じ少数民族として困っている人を見過ごしにはできない」というのが彼らの心情である。
 (筆者・荒木重雄は社会環境学会代表)