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折々の記 2015 ⑧
【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】09/28~     【 02 】10/02~     【 03 】10/03~
【 04 】10/17~     【 05 】10/20~     【 06 】10/21~
【 07 】11/02~     【 08 】11/10~     【 09 】11/17~

【 03 】10/03

  10 03 うれしいニュース   ~日本発・ファインバブル革命~
  10 05 米韓、北朝鮮への対応   周辺事態を承知していること
  10 06 田中宇の国際ニュース解説(09 27に続く)   世界はどう動いているか

 10 03 (土) うれしいニュース       ~日本発・ファインバブル革命~

NHK クローズアップ現代を開いてみたると、次のようなうれしい記事が出ていた。


No.3712 2015年10月6日(火)放送
小さな泡が世界を変える!?~日本発・ファインバブル革命~
     出演者  検討中
     http://www.nhk.or.jp/gendai/yotei/#3712

直径ナノレベル~0.1ミリほどの微細な泡を液体に注入すると、信じられないような効果が生まれる―ウルトラファインバブル(極小の泡)を使った技術で様々な産業に革新が起こりつつある。

   ナノ   【nano-】国際単位系(SI)で、メートル法の単位の前につけて10億分の1
   レベル  【level】1 水準、程度
   ウルトラ 【(英)・(ドイツ)ultra】[語素]名詞の上に付いて、過度の、極度の、超
   ファイン 【fine】複合語をつくる。 1 みごとな、すばらしい、など  2 精密な
   バブル  【bubble】1 泡。あぶく。また、泡のように消えやすく不確実なもの。
極小酸素は養殖魚や農作物の成長を促進し、魚のサイズを2倍にまで伸ばす。

極小窒素を水揚げした魚に使えば、雑菌の繁殖を抑え、食品の保存期間を5倍に延長させる。

界面活性効果で工業製品の洗浄力は薬品を上回り、最新医療ではウィルスや細菌を破壊、一部高温状態にすれば醸造・発酵にも活用できるなど、様々な効果が確認されつつある。

環境に優しく低額投資で応用が広がるこの技術、日本で20年ほど前から研究が始められ、最近一気に実用化が進んだ。

開発の主体となっているのは地方の中小企業や大学だ。

国際標準つくりへ向けての全国の連携も始まった。

日本が独走する「バブル革命」、驚きの可能性を探る。



2015/10/04 現在
「ウルトラファインバブル」検索結果
     約 32,300 件 (0.12 秒)
     https://www.google.co.jp/?gws_rd=ssl#q=%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%96%E3%83%AB
     ウルトラファインバブルに関連する検索キーワード
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キーワード「ウルトラファインバブル」の検索結果 ①~⑳まで

① ウルトラファインバブルとは | 株式会社ナノクス [NANOX Co.,Ltd ...
     http://www.nano-x.co.jp/about-ufb
② ウルトラファインバブルとは| IDEC(アイデック)株式会社
     jp.idec.com/ja/technology/finebubble/aboutfinebubble.html
③ 日本発 驚異の泡! ウルトラファインバブル - NHKオンライン
     www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp515.html
④ 大きな潜在市場を秘めるウルトラファインバブル・テクノロジー ...
     techcorporation.co.jp/.../大きな潜在市場を秘めるウルトラファインバブル/
⑤ ウルトラファインバブルとは 株式会社Ligaric
     www.ligaric.co.jp/about_nanobubble.php
⑥ FBIA 一般社団法人 ファインバブル産業会
     www.fbia.or.jp/
⑦ ファインバブル - 日刊工業新聞
     www.nikkan.co.jp/is/news/140217.html
⑧ サイエンスZERO「日本発 驚異の泡! ウルトラファインバブル ...
     blog.goo.ne.jp/newnonasi8523/e/c2ede3cec69808f37bf99ceada0c3aa6
⑨ 直径100~200nmの微細気泡、ウルトラファインバブルが広範な ...
     venturewatch.jp/20140117.html
⑩ IDEC ウルトラファインバブルの測定風景 - YouTube
     www.youtube.com/watch?v=tbjlNVqTvBc
⑪ ウルトラファインバブル関連銘柄 | ニュース屋さん@日本株式投資
     news830.com/archives/11041
⑫ ウルトラファインバブル気液混合装置 || 神鋼エア-テック ...
     shinko-airtech.com/ufb-mixer.html
⑬ 環境関連装置 | 製品情報 | ミクロ技研株式会社
     www.micro-eng.co.jp/products/list/environment/
⑭ ファインバブルとは?|ファインバブル学会連合
     www.fb-union.org/about.html
⑮ サイエンスZERO ウルトラファインバブル 8月30日 バラエティ ...
     varadoga.blog136.fc2.com › 未分類のバラエティ動画
⑯ [PDF]経済産業省委託 平成24年度国際標準化推進事業 ナノ ...
     www.meti.go.jp/meti_lib/report/2013fy/E003666.pdf
⑰ バブル発生技術の相違点|技術紹介|超高濃度ファインバブル ...
     www.tosslec.co.jp/bubble/tech01.html
⑱ サイエンスZERO ウルトラファインバブル 8月30日 Youtube ...
     youtubeowaraitv.blog32.fc2.com/blog-entry-72664.html
⑲ 《お知らせ:夢の扉 ウルトラファインバブル》|トップメッセージ ...
     www.sun-capitalmanagement.co.jp › トップメッセージ
⑳ [PDF]ファインバブルに関する日刊工業新聞記事
     www.kibanken.jp/standard/pdf/nikkan_0217.pdf

それぞれの検索結果へアクセスして必要なデータをゲットする。



① ウルトラファインバブルとは | 株式会社ナノクス
     http://www.nano-x.co.jp/about-ufb

HPを開くと右側に下記のようなタイトルが出ています。 ジャンプしてみると、驚くほどの技術の紹介が展開されています。

テクノロジー
   ウルトラファインバブルとは
   ウルトラファインバブルの特性と効果
   低酸素ウルトラファインバブル海水の応用
   高酸素ウルトラファインバブル海水の応用


導入実績とお客様の声
   ナノクス製品導入実績一覧
   「新鮮保つ君®」の導入実績&お客様の声

お知らせ
   ニュースブリッジ北九州に特集されました
   サイエンスZEROに特集されました
   ホームページをリニューアルしました

注目記事
   研究機関向け超高密度ウルトラファインバブル(ナノバブル)発生装置「ナノクイック®」
   研究開発用ウルトラファインバブル水の販売
   ウルトラファインバブル冷塩水処理器「新鮮保つ君®」


 10 05 (月) 米韓、北朝鮮への対応       周辺事態を承知していること

けさ新聞を見て北朝鮮への米国の対処の仕方を知った。


2015年10月5日
対北朝鮮、ゲリラ戦に備え 米韓、大規模作戦からシフト
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11999890.html

 米韓両軍が朝鮮半島有事の際の軍事計画で、これまで想定してきた大規模な地上戦から、ゲリラ戦・局地戦に力点を置くよう作戦計画を変化させている。北朝鮮軍とのゲリラ戦を想定した新たな作戦計画を立て、局地戦や北朝鮮の体制崩壊に備えた作戦を以前より重視する方針という。核施設が統制できなくなる事態になれば、国連決議なしで北朝鮮に侵入する構えだ。▼3面=局地戦想定

 複数の米韓関係筋によると、従来は朝鮮戦争のような地上戦の全面戦争を想定した作戦計画を中心にしてきたが、今後に向けて、ゲリラ戦の要素を多く盛り込んだ新たな計画「5015」を策定している。

 北朝鮮軍が不意打ちの武力挑発を多用する戦力に変化してきたことに対処するとともに、暗殺や誘拐、特定の施設破壊を任務とする特殊部隊を重視。戦線を広げずに犠牲者を抑え、戦費の負担を軽くするためだ。

 韓国陸軍特殊戦司令部は9月23日、国会議員らに「戦略的な重要施設」を攻撃する特殊部隊の編成を進めていると明らかにした。北朝鮮に致命的な打撃を与える目的で、金正恩(キムジョンウン)第1書記の身柄拘束や北朝鮮の重要軍事拠点などへの攻撃を想定する。

 一方、米韓両軍は全面戦争に至る前の段階で、北朝鮮を局地的に空爆することを想定した作戦計画「5026」も持つ。従来の空爆作戦に特殊部隊などを加え、局地戦を想定した計画を拡充している模様だ。

 軍事関係筋の一人は「米国は今後、『5026』と北朝鮮が崩壊した場合の作戦計画『5029』を重視していくのではないか」と語った。「5029」の想定で米国が特に憂慮するのが、北朝鮮の核兵器や核物質が流出する事態で、国連決議などの手続きなしに行動を開始する方針という。

 自衛隊は朝鮮半島有事の際、補給や捜索・救難などで米軍を支援する日米の共同計画を持つ。ただ、自衛隊は安全保障関連法の成立で役割を大きく転換したが、有事対応の前提となる米韓両軍の計画の詳細は把握していない。韓国軍と自衛隊との間に軍事情報を共有する協定がなく、日本が韓国軍の同意なしに実態を知るのは難しい。(ソウル=牧野愛博)


▼3面=局地戦想定
米、局地戦を想定 北朝鮮軍の困窮背景
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11999853.html

【写真】米韓両軍による上陸訓練=今年3月30日、韓国南東部・浦項
【図版】北朝鮮の主な核関連施設/米韓両軍の主な作戦計画
      主な核関連施設(高緯度から)
        豊渓里  ・核実験場
        亀城  ・ウラン鉱山
        泰川  ・20万KW級権視力発電所(計画)
        寧辺  ・ウラン濃縮施設 ・実験用軽水炉(建設中?)
                  ・5千KW黒鉛減速炉 ・再処理施設 ・5万KW級原子力発電所(計画)
        順川  ・ウラン鉱山 ・ウラン鉱石精錬施設
        平山  ・ウラン鉱山 ・ウラン鉱石精錬施設
      主な作戦計画
        5015 → 全面戦争にゲリラ戦を加味した新計画
        5026 → 局地戦を想定した計画
        5027 → 全面戦争を想定した従来の計画

 米韓両軍による朝鮮半島有事に備えた軍事計画の変化は、通常兵力の低下した北朝鮮軍が暗殺や破壊活動、大量破壊兵器の開発に力を入れる現実に合わせるものだ。米軍再編による部隊規模の縮小とともに、無人機や特殊部隊を多用する局地戦に移行したいオバマ政権の思惑もある。▼1面参照

 金正恩(キムジョンウン)政権下の北朝鮮軍は、兵器の更新がままならず、軍事力の低下が著しい。最新鋭の戦闘機でも30年以上も前の旧型機のため、核兵器などの大量破壊兵器開発や、潜水艦や航空機で韓国に侵入して暗殺や破壊活動を行う特殊部隊の育成に力を入れている。

 韓国国防省によれば、北朝鮮特殊部隊は約20万人に上る。米韓が全面的な地上戦を想定した従来の作戦計画「5027」に代わり、ゲリラ戦を想定した「5015」に力点を置くのは、こうした北朝鮮軍の戦い方に備えるためとみられる。

 軍事関係筋によれば、局地戦を想定する作戦計画「5026」はもともと空爆に限定していたが、米国はイラク戦争や過激派組織「イスラム国」(IS)対策の教訓から、空爆だけで決定的な勝利は得られないと判断。特殊部隊も参加させる戦略に傾いた。

 オバマ政権は、アフガニスタンやイエメンなどで、犠牲者を抑える無人攻撃機や特殊部隊を多用。米韓関係筋の一人は「米国は戦争を限定的に行い、早く終わらせたいようだ」と語る。

 「5026」に盛り込まれる作戦は、大規模兵力の投入を避け、精密爆撃や特殊部隊によって致命的な打撃を与え、短期間で勝利を目指す考えに基づくという。

 ブッシュ前政権からの米軍再編で事実上の兵力削減となり、2003年に約3万8千人いた在韓米軍が現在、約2万9千人にまで減ったことも関連する。特殊部隊は、非合法な活動で国際的な批判を浴びる一方、戦線拡大や犠牲者を抑え、戦費の負担を軽くする効果がある。

 ■国連決議なく侵入へ 核リスク懸念

 北朝鮮の体制崩壊に備えた作戦計画「5029」は(1)大量破壊兵器の管理不能(2)大量難民の発生(3)飢饉(ききん)など人道問題の発生(4)北朝鮮内での人質事件(5)内戦の発生――などを想定する。

 米韓両軍は「5029」を00年代初めに整備したが、修正・改良に力を注ぐ見通し。金正恩体制の不安定さが指摘されることも理由だ。正恩氏は張成沢(チャンソンテク)国防副委員長や玄永哲(ヒョンヨンチョル)人民武力相ら側近を相次いで粛清。千英宇(チョンヨンウ)・元韓国大統領府外交安保首席秘書官のように「国の崩壊はないかもしれないが、正恩政権の交代はありうる」との意見もある。

 複数の軍事関係筋によると、北朝鮮が核兵器や核物質を統制できなくなった場合、米韓両軍は国連決議などの手続きを経ずに行動を始め、北朝鮮領内に侵入する方針だ。大量破壊兵器の流出の恐れにつながり、国連憲章が定める自衛権を主張できると判断しているためだ。米軍の大量破壊兵器除去専門部隊が捜索・管理にあたり、韓国軍が支援する想定だ。

 ただ、米韓両国は北朝鮮内の核兵器の位置や統制システムを十分には把握していない。米韓両軍内には、核兵器の除去に手間取り、北朝鮮軍や同じく介入する可能性がある中国軍との衝突を懸念する声もある。

 また、米韓両国と日本の間でどの程度の情報共有ができるかも焦点だ。韓国は、北朝鮮も自国の領土と主張。安全保障関連法の成立後、緊急事態でも自衛隊が韓国の同意なしに、北朝鮮の領海や領土に立ち入ることはできないと強調している。(ソウル=牧野愛博)

 ■「大量破壊兵器、流出防ぐ任務」 米シンクタンク

 北朝鮮の体制が崩壊状態になった場合、米軍は15万人を追加派兵する必要に迫られると試算する報告書を米シンクタンクのランド研究所がまとめた。在韓米軍の現有勢力の約5倍にあたる規模だ。核兵器などの大量破壊兵器が国外に流出するのを防ぐことが最大の任務になるとみている。

 報告書は世界各地の紛争を取り上げ、北朝鮮については韓国に対する戦争の開始と、金正恩体制の崩壊の二つのシナリオで軍事的な対応を分析した。

 かつて懸念されていた北朝鮮による韓国への侵略は、韓国と在韓米軍の兵力が優位を保っているため可能性は低いとする。一方、国境から約60キロと遠くないソウルへの集中砲火、特に大量破壊兵器の使用が脅威と指摘。地上部隊が北朝鮮国内のミサイル拠点を制圧する必要があると強調する。化学兵器や核兵器の脅威に備えるため前進に時間がかかり、必要な米陸軍の兵力はイラク戦争時と同規模の18万8千人に達するとみる。

 また、北朝鮮の体制が崩壊した場合、米国が最も重視するのは、いかに大量破壊兵器を安全に確保するかだと指摘。専門の特殊部隊や技術者らが必要になり、15万人の増派が求められると試算している。
(ワシントン=奥寺淳)


 10 06 (火) 田中宇の国際ニュース解説(09 27に続く)     世界はどう動いているか

09 27(http://park6.wakwak.com/~y_shimo/momo.586.html) に続く。

金融危機とシリア危機の理解の為に、田中宇のニュース解説をとりあげます。


田中宇の国際ニュース解説
世界はどう動いているか

http://tanakanews.com/

 フリーの国際情勢解説者、田中 宇(たなか・さかい)が、独自の視点で世界を斬る時事問題の分析記事。新聞やテレビを見ても分からないニュースの背景を説明します。

① ロシアのシリア空爆の意味
 【2015年10月4日】 ロシアの軍事進出は、ISISが退治され、シリアとイラクが露イランの傘下で安定していくという、全く新しい中東の政治体制を生み出している。米欧日のマスコミは、ロシアを意図的に悪者として描くことに執心している。しかし現実を見ると、米英仏のシリアでの空爆が、シリア政府の許可も受けず、国連安保理の決議も経ていない国際法上「違法」なものであるのに対し、ロシアの空爆は、シリア政府の正式な要請を受けて行われている「合法」なものだ。シリアへの軍事進出に関し、ロシアだけが合法で、米欧は違法だ。

② 米金融財政の延命と行き詰まり
 【2015年9月28日】 米国は、利上げできなかった米連銀の行き詰まり、政府予算の編成すら滞る米議会の危機、経済指標の粉飾がひどくなる米政府など、矛盾が肥大化し、リーマン危機をしのぐ金融危機がいつ起きても不思議でない状況にある。だが、表層的な動きだけを見ると、株価は上がり続け、政府やマスコミが発表する「経済状況」は好転し、延命する状態が続いている。このバランスが今後、いつどう崩れていくか、それとも崩れずに延命し続けるのかが、今後しばらく最大の注目点だ。


ラジオデイズ・田中宇「ニュースの裏側」・・・「対米従属」の背景

田中宇の国際ニュース解説
① ロシアのシリア空爆の意味
     2015年10月4日
     http://tanakanews.com/151004syria.php


 9月30日、アサド政権の要請を受けてシリアに進駐したロシア軍が、シリア国内のISIS(イスラム国)や、アルヌスラ戦線などアルカイダ系の反アサド武装勢力の拠点を次々に空爆し始めた。露空軍は、その後の3日間でシリアの60箇所を空爆、そのうち50箇所がISISの拠点で、残りはアルカイダ系勢力の拠点だった。露政府によると露軍は、シリアにおけるISISの中心地であるラッカにあるISISの軍司令部をバンカーバスターで破壊し、近くの武器庫も攻撃して大爆発させた。 (Russia Begins Airstrikes Against ISIS in Syria) (Russian military intervention in the Syrian Civil War - Wikipedia)

 昨年夏にISISが台頭して以来、米軍はずっとISISの拠点を空爆し続けてきた。だが「世界最強」のはずの米軍が1年半も空爆し続けても、ISISは力が衰えず、シリア政府軍を押しのけて、シリアでしだいに多くの領土を支配するようになっていた。米国などのマスコミは、なぜISISが強いのかを説明するのに苦慮してきた。イラクやイラン、シリア、ロシアといった、露イラン同盟の側は、米軍はISISを攻撃するふりをして支援していると指摘してきたが、そうした見方は米欧マスコミで無視されてきた。 (露呈するISISのインチキさ) (Lavrov: US knows ISIS positions, refuses to bomb) (わざとイスラム国に負ける米軍)


 しかし今回、露軍がISISを空爆し始めると、わずか3日でISISが崩れ始めた。ISISの幹部や兵士たちは、家族をシリアから、まだ露軍の空爆を受けていないイラクに避難させている。ロシアによると、すでに600人のISISの戦士が、シリアの戦場を離れ、古巣の欧州へと逃避(帰還)しているという。露軍が3日でやれることを、米軍は1年半かけてもできなかった。これは米軍が無能だからでなく、ISISと戦うふりをして支援していたからに違いない。 (Russia Claims ISIS Now On The Ropes As Fighters Desert After 60 Airstrikes In 72 Hours) (ISIS Militants Moving Families to Iraq Amid Russian Airstrikes in Syria)

 これまでシリア政府軍の戦闘機もISISなどの拠点を空爆してきたが、有効な空爆ができていなかった。シリアは1956年からロシア(ソ連)の同盟国だったので、シリア空軍もロシアの戦闘機を使っている。だが、戦闘機は同じでも、シリア軍は、標的に関する情報や夜間飛行の装備が十分でなかった。シリア軍機は昼間に、標的の近くを何度も飛び、目視で標的を定めてから空爆していたので、ISISなど敵方に逃げる時間を与えてしまっていた。だが露軍機は夜間、標的にまっすぐ飛んできていきなり空爆するので、確実な空爆ができる。 (Russian Airstrikes Defend Strategic Assad Regime Stronghold on Syria's Coast) (Russia's role in the Syrian Civil War - Wikipedia)

 露政府のプーチン側近は、空爆を今後3-4カ月続けることになりそうだと述べている。まだ空爆が始まったばかりで、ISISがどの程度の被害を受けたかについても、ロシアやシリア政府の一方的な発表しかないが、断片的な情報からでも、露軍がかなり有効な攻撃をISISに与えていることが見てとれる。 (Russia Says Syria Air Raids To Last "3-4 Months" As Moscow Releases New Videos Of Strikes)

 ISISを攻撃するふりをして支援していた米軍と異なり、露軍がかなり効率的にISISを撃破していることは、シリアと同様、国土の一部をISISに占領されているイラクの政府が、露軍の動きを見て、イラクでもISISへの空爆を挙行してほしいとロシアに依頼したり、イラクの宗教指導者システニ師が、今こそISISを倒そうと唐突に国民に呼びかけ始めたことからもうかがえる。システニはこれまで、米国だけでなく同じシーア派のイランが自国に介入することにも反対しており、外国からの介入に懐疑的な人だ。その彼が、露軍の動きに呼応して国民にISISとの戦いを呼びかけた意味は大きい。 (Leading Iraqi cleric urges wider war against Islamic State) (Baghdad says would welcome Russia strikes in Iraq) (Iran Has Controlled Iraq For Years. Now It May Be Pushed Out)

 シリアでの空爆開始と同時期に、ロシアは、イラク、イラン、シリアの政府を誘って、イラクの首都バグダッドに、イラクでのISISの動きに関する情報を収集するセンターを設置した。この動きは、シリアでの攻撃が一段落したら、イラクでもISISを掃討するロシア主導の軍事行動が予定されていることを意味している。シリアでもイラクでも、露軍の空軍支援を受けつつ、イランやシリア、シーア派民兵(ヒズボラ、サドル派)の地上軍がISISを攻撃する露イラン協調の作戦がとられている。全体として、早ければ数カ月以内に、シリアとイラクの両方で、ISISを退治するメドがつきそうだ。 (Russian media say Moscow is coordinating anti-Isis fight) (Russia, Syria and Iran are working together in Baghdad to co-ordinate Shia militias fighting ISIS) (Assad allies, including Iranians, prepare ground attack in Syria: sources)

 ロシアの軍事進出は、ISISが退治され、シリアとイラクが露イランの傘下で安定していくという、全く新しい中東の政治体制を生み出そうとしている。(このような展開は、オバマがイラクと核協約を結ぶことになった時から予測されていたが) (シリア内戦を仲裁する露イラン)

 今回もう一つ特筆すべきは、シリアのクルド軍(YPG)が、ロシアの軍事進出を歓迎していることだ。シリアとイラクのクルド軍は、これまで米国から支援されてきた。英米流の中東の分断支配の戦略からすると、少数派であるクルド人を強化し、多数派であるアラブ人(スンニ、シーア、アラウィ)と対抗させることに意味があった。ISISとクルド人は仇敵どうしだが、米国(米軍)はその両方を支援していた。だが今春以降、シリアのクルド軍(YPG)が、ISISと戦って勝つ傾向が強まり、トルコとシリアの国境地帯が、ISISの支配下から解放されてクルド人の手に戻り、米国の同盟国であるトルコが、クルド敵視の傾向を強めた。米国はトルコのクルド弾圧を黙認したため、クルド人は米国に頼れなくなった。そこに出てきたのがロシアで、当然ながらクルド人は、ISISと本気で戦う露軍を大歓迎した。 (U.S. Kurdish allies welcome Russian airstrikes in Syria) (クルドの独立、トルコの窮地)

 これまでクルド人は、親分である米国(米軍)が、自分たちだけでなく、仇敵のISISも支援しているので、その点がジレンマだった。しかし今回、この矛盾状態が極限までいったところで、シリアの崩壊を防ぐためにロシアが入ってきて矛盾を打破し、シリアのアサド政権に国家存続と引き替えにクルド人の自治を認めさせた(これはもともとイランの案)。クルド人は、ロシアのおかげでISISを退治でき、自分らの自治(ひょっとすると国家)まで認められる。露軍がシリア北部に入ってきたので、トルコ軍がクルド人を攻撃するためにシリアに侵攻してくる懸念がなくなった。これもクルド人にとってありがたい。ロシアにとっても、実は大して強くないISISを潰すだけで、米国の中東覇権のかなりの部分をちょうだいできるお得な話になっている。米国は、クルド人に離反され、イラクとシリアへの支配も失うという、一方的に損する役回りだ。 (The Largest US Foreign Policy Blunder Since Vietnam Is Complete: Iran Readies Massive Syrian Ground Invasion) (イランがシリア内戦を終わらせる)

 米欧日のマスコミは、ロシアを意図的に悪者として描くことに執心している。しかし現実を見ると、米英仏のシリアでの空爆が、シリア政府の許可も受けず、国連安保理の決議も経ていない国際法上「違法」なものであるのに対し、ロシアの空爆は、シリア政府の正式な要請を受けて行われている「合法」なものだ。シリアへの軍事進出に関し、ロシアだけが合法で、米欧は違法だ。 (Kremlin: Only Russia to take part in operation against Islamic State on legal grounds) (US-Funded NGO in Syria Uses Old Photo to Claim Civilian Death in Russian Airstrikes)

 ある国で、他の国が空爆を行うには、その国の政府が空爆を要請するか、国連安保理が空爆を決議した場合にのみ、合法だ。米英は一方的にシリア政府を極悪だといっている(その大きな根拠となっている「シリア政府軍が12年に化学兵器で国民を殺した」という主張は間違いであり、意図的な濡れ衣だ)が、その非難は国連決議を経ていない。国連では「誰がシリアで化学兵器をまいたか特定し、その者を処罰する」ことを決めただけだ。化学兵器をまいたのはシリア政府軍でなく、アルヌスラがトルコの諜報機関から材料をもらって作った化学兵器をまいた可能性が強い。米英は、シリアに濡れ衣をかけて勝手に空爆している。完全に国際法違反だ。米英は03年にイラクに対して同じ罪を犯し、その後はイランにも核兵器開発の濡れ衣をかけている。それなのに、米英の違法性を指摘する者は「極左」「陰謀論者」といわれる。善悪を粉飾するマスコ'ミの極悪さに気づく人は、少しずつしか増えない。 (無実のシリアを空爆する) (シリアに化学兵器の濡れ衣をかけて侵攻する?)

 911後の国際政治は、善悪の歪曲だらけだ。ほとんどの人が善悪歪曲に対して麻痺している。「そんなことより、シリアで米露戦争が起きるんじゃないの?。善悪論より米露戦争の可能性を書け」という人が多そうだ。それに対する私の答えは「米軍がシリアで露軍と戦闘になる可能性は非常に低い」というものだ。ウクライナに米軍はいない(数百人の軍事顧問のみ)が、シリアは米軍機が飛び回っている。米露が交戦するとしたら、ウクライナよりシリアだ。米軍(CIAと言われているが最近CIAは弱い。CIAの名を借りた米軍)は、アルカイダ系の武装勢力をシリアで訓練・支援してきたが、露軍は今回、その中のいくつか(Al Izza Brigadeなど)の拠点を空爆した。米国側は、この件でロシアを非難している。今後戦闘が起きるとしたら、米軍傘下のシリアのアルカイダを守ろうとする米軍と、それを攻撃する露軍との間になる。 (Russian warplanes strike insurgents in Syria's Idlib province)

 しかし問題は、米軍が支援しているのがアルカイダだという点だ。アルカイダは米国の「敵」だ。アルカイダを支援するのは、米国法と国際法の両方で違法だ。米軍(CIA)は「アサドを倒すためにやむを得ない」といって、彼らをこっそり支援してきた。ロシアは、米軍がシリアで違法にアルカイダを支援しているので「こんな奴ら支援すんなよ」といいながら空爆して潰そうとしている。それに対して米軍が「何すんだよ」と露軍に殴りかかったら、この喧嘩は最初から米国が悪い。米国は、ロシアを正式に非難できず、戦争を起こせない。 (Danger of US-Russia conflict in Syria, not serious: Commentator)

 何度も書いているが、そもそもロシアにシリア進出してISISを退治してくれと要請したのはオバマだ。オバマは米中枢での軍産複合体との政争に勝つため、ロシアを引っぱり込んだ。アサドを支援するロシアを許さないと行っていた米政府は、ロシアがシリアに進出したとたん、とりあえずアサドが辞めなくても良いと言い出した。 (Multinational Deal May Allow Assad to Stay)

 露軍のシリア空爆開始の前日、国防総省で対露戦略を練っていた次官補代理(Evelyn Farkas)が辞任した。露軍のシリア進出は、オバマの戦略勝ち、軍産の負けである。オバマが軍産を抑えている限り、米露は戦争せず、米国の戦略が次々と失敗し、イスラエルやサウジや日本の窮地が深まり、露中イランなどが優勢になり、米国が覇権を失って多極化が進む傾向が続く。 (Pentagon's Top Cabalists Resigning; Exceptionalist Unipolar World is Dead) (イランとオバマとプーチンの勝利)

 露軍がシリアで空爆を開始する2日前の9月28日、プーチンが国連総会で演説し「かつて(米露が協力して)ナチスと戦ったように、テロ組織(ISIS)と戦う国際戦線を今こそ作ろう。アサド敵視をやめてシリアを安定させないと、欧州への難民の流れも止められない」と呼びかけた。 (Vladimir Putin's speech to the 70th session of the UN General Assembly - Full Transcript)

 ロシアは同時に、9月30日に開かれる国連安保理で、アサド政権への敵視を解除した上でISISと戦う国際軍を創設する提案を行うことを模索し、9月28日に安保理の予備会議を開いた。だがそこで、米国がロシア提案に反対(拒否権発動)する意志を表明したため、ロシアは安保理への提案を見送り、代わりに、まずロシア単独でシリアでの空爆を開始することに決めた。ロシアは、すでにシリア政府から空爆の依頼を受けているので、国連決議を経なくても、合法的に空爆を開始できた。 (US blocks UN SC draft statement for settlement of MidEast conflicts - Churkin) (ロシア主導の国連軍が米国製テロ組織を退治する?)

 オバマは9月28日、国連に来たプーチンと会談している。オバマがプーチン主導のシリア解決策に徹底的に反対なら、プーチンと会わなかったはずだ。オバマは、いずれ安保理のロシア提案への反対姿勢を取り下げるだろう。ロシアが単独でシリアに進出し、今後イランやアサド、イラクの支援を得ながらISISを合法的に順調に退治していくと、ロシアを評価する国際世論が強まり、時間が経つほど安保理でロシア主導の国際軍を編成できる可能性が強まる。 (Obama, Putin clash over vision for resolving Syrian crisis) (負けるためにやる露中イランとの新冷戦)

 米国が手を貸さず、非米反米諸国だけで中東やその他の世界を安定させることができると世界に示すほど、多極化が進みやすくなる。非米反米諸国の指導者の多くは、口でこそ「米国覇権を崩そう」と叫ぶが、実のところ自信がない。米国が好戦的で非協力的な態度をとり続け、ロシアやイランや中国などが仕方なく米国抜きで協調して世界を安定させることができると、非米反米諸国は自信をつけ、多極型の世界体制を安定的に運用できるようになる。以前も書いたが、米国(オバマや、たぶん前ブッシュ政権も)は、意図的に好戦的で無茶苦茶な態度をとり、世界に試練を与えることで、多極化を加速してきた観がある。 (世界に試練を与える米国)

 ロシアは10月中に、米国、イラン、サウジアラビア、トルコ、エジプトを集めてシリア問題の「コンタクトグループ」を作り、シリアとその周辺の問題を解決する一回目の会議を開く予定だ。露イランが、アサド敵視をやめたくないサウジとトルコをなだめ、米国は仕方がないと言い、エジプトが静かにアサドに味方する展開で、サウジ(GCC)とトルコにあきらめをつけさせるのが、露イランのもくろみだろう。こうした外交策がうまくいくと、イエメンやリビアの内戦に関しても似たような交渉形式をとり、解決を模索できる。 (Russia says contact group on Syria could meet in October)

 難民の大量流入に悩む欧州は「アサドを容認してシリアが安定しなければ、難民危機を解決できない」と言ったプーチンの言葉を、そのとおりだと思ったに違いない。この1週間ほどの間に、ドイツを筆頭にいくつもの欧州諸国が、シリアに関するプーチンの提案に同意している。シリアでロシアと協調しつつウクライナでロシアと敵対するのは矛盾しているという主張も欧州のあちこちから出ている。シリア危機の解決は、いずれウクライナ危機の解決(ロシアに濡れ衣をかけて敵視する策の終わり)につながるだろう。 (Western Europe needs Russia to solve crisis in Syria: Merkel) (German Government Wants Sanctions on Russia Lifted) (Anti-Russian hysteria in Ukraine is running out of steam)

 中国は、今回の露主導のシリアでの戦闘に参加しないことにした。しかし中国は先日の国連総会で、国連平和維持軍への参加拡大を表明し、新たに8千人の兵力枠を作り、南スーダン、マリ、ダルフール、コンゴなどのアフリカへの派兵を強めることにした。中国は同時に、アフリカの平和維持のために5年間で10億ドルを出資するとも発表している。これまで中国は、欧米から制裁されたロシアから石油ガスを買い、経済的に救うことで、プーチンを助けている。中国のこの役割がなければ、プーチンの大胆な動きはなかった。 (China to set up 8,000-strong peacekeeping force)

 今後、ロシア主導の中東安定化策を皮切りに、BRICSや非米反米諸国による世界的な平和維持活動が拡大し、その分、米国主導の偽善的な好戦策が下火になっていくことが期待される。米国の好戦策に乗って自衛隊の海外派兵強化を決めた日本は、まず南スーダンで中国と「仲良く」平和維持活動を拡大する展開になりそうだ。 (China to set up $1b peace fund)

 地政学分析が好きなペペ・エスコバルは、習近平とプーチンの両方が訪米しつつ、多極型の新世界秩序が形成されていくのを見て「ユーラシアのグレートゲーム(地政学対決)が、こんな楽しいイベントであるなんて、誰が想像しただろうか」と、茶目っ気を込めて書いている。二度の大戦時と異なり、世界大戦を起こさずに覇権の転換が実現している。これをもともと画策したのは露中の側でなく、オバマやチェイニーやネオコンといった、米国の隠れ多極主義の人々だ。露中は「たなぼた」の恩恵を受けている。対照的に、日本は自ら負け組みに入る道を無自覚に選んだ不運な馬鹿だ。今後、日本経済の崩壊が進むとともに、それが明白になっていく。 (Putin and Xi rock da house: Escobar) (多極化への捨て駒にされる日本) (出口なきQEで金融破綻に向かう日米) (行き詰る米日欧の金融政策)

 ロシアのシリア進出は、国際政治に、前向きで深く広範な転換を与えていくことが予測される。今回は、その一端しか書かないうちに長くなってしまった。今後も、状況の展開を見ながら、このテーマについて書いていく。


田中宇の国際ニュース解説
② 米金融財政の延命と行き詰まり
     2015年9月28日
     http://tanakanews.com/150928fiscal.php


 9月24日、米連銀(FRB)のイエレン議長が、マサチューセッツ大学で講演中に具合が悪くなり、講演の終盤でうつむいたまま無言になったり、同じ箇所を何度も読んだりした。講演自体は何とか終えたものの、イエレンにかなりの圧力がかかっていることがうかがえた。 (Fed Refuses To Comment On Yellen's Health) (Yellen Speech:動画)

 講演からくみとれる内容は「できれば今年中に利上げしたいが、世界経済の状況悪化もあるので無理かもしれない」というもので、利上げによって米国の経済覇権を立て直さないとまずいが、世界が日に日に不況色を強める中で、それが無理になり、連銀が行き詰まっている様子がうかがえる。 (Janet Yellen reiterates expectations of 2015 rate rise) (FRB: Yellen, Inflation Dynamics and Monetary Policy--September 24, 2015)

 米連銀は、69歳のイエレンが、5千人を前にした講演時のスポットライトで脱水症状になったと発表したが、イエレンはこれまでに何度も長時間の講演や、ライトを浴びる記者会見をそつなくこなしており、おかしな説明だ。米国の金融市場は、連銀が利上げするかどうかを神経質に見守っており、イエレンが過労になるほど連銀が行き詰まっていることが露呈すると、株価の急落などが起こりかねない。イエレンの講演後、株が一時下がった。連銀は、イエレンの健康状態について発表を控えている。 (Fed Declines to Comment on Yellen's Health)

 米政府は9月25日、4-6月期の米国の経済成長が3・9%と「好調」だったことを発表した。事前の予測は3・7%で、予想を上回る「景気回復」となっていることが示された、と報じられている。米連銀は最近、経済統計の動きを見て利上げするかどうか決めたいと言い続けており、3・9%の経済成長は(もし本当なら)利上げすべき状況だ。 (G.D.P. Growth in 2nd Quarter Is Revised Up to 3.9%) (Strong US growth in Q2 poses rate conundrum for Fed)

 だが一方で、世界経済は不況に向かっている。中国の製造業における景況感は、リーマン危機以来の悪化となっている。米連銀が9月中旬に利上げを見送った時の状況が、さらに進展している。 (◆不透明が増す金融システム) (China manufacturing contracts at fastest pace in more than 6 years)

 世界経済の先行きが業績に如実に反映されることで知られる米建機メーカーのキャタピラ社は、中国やブラジルなど新興市場諸国で、設備投資、建設、鉱山開発など、建機を必要とする事業が伸び悩んでいるため、同社の売り上げも減るとして業績の見通しを下方修正し、従業員の1割近い1万人の解雇も発表した。キャタピラは利益の6割を米国外であげている。同社の傾向から、世界が急速に不況に向かっていることがうかがえる。キャタピラの業績は今後さらに悪くなると分析されている。 (Wall St drops as Caterpillar falls) (Caterpillar warns on global demand) (Caterpillar pain is just beginning)

 そもそも、世界経済が急速に不況に向かっているのに、米国だけ3・9%成長をしている点がおかしい。米国では、8月分の耐久消費財の受注が前月比マイナス2%と発表され、今年3月以来の悪さになっている。米国は、小売りの売上高も前年同月比0・9%の状態で、今年の米国の個人消費はリーマン危機以来の悪さになっている。 (Orders for US durable goods fall 2% in August) (U.S. holiday season in 2015 could be weakest since recession: AlixPartners) (Retail Sales Worst Since 2009 For This Time Of Year)

 耐久消費財や小売り売上高といった、経済成長を構成する重要な部分(米経済の7割が消費で構成されている)が、マイナスや超低成長なのに、GDP全体で見ると3・9%成長になるというのは説明がつかない。米国のGDPが粉飾されている疑いは、以前から持たれている。米当局は、GDPや雇用統計といった基本的な経済指標を粉飾し、粉飾された統計を根拠に「景気が回復している」「利上げが必要だ」という理論展開で、QEなど超緩和策で脆弱になったドルの力を利上げによって蘇生しようとしている、というのが私の以前からの分析だ。 (揺らぐ経済指標の信頼性) (不透明が増す金融システム)

 しかし米当局は、自国経済の統計を粉飾できても、世界経済の統計を粉飾できない。だから世界経済が悪化しても米経済だけ景気回復するという、おかしな事態になっている。マスコミも粉飾に協力しているので「おかしい」と報じず、マスコミが報じないので多くの人が「おかしい」と思わない。連銀が利上げすると、米経済がさらに悪化するが、それはさらなる粉飾でごまかせる(人々は好不況を体感できるはずだが、マスコミの粉飾報道に接すると、そうかなと思ってしまう)。しかし世界各国の政府は、米国の利上げで自国の経済が悪化して迷惑するので、各国政府やIMFなどが米連銀に「利上げするな」と圧力をかける。連銀は利上げできず、イエレンの血圧が上昇してしまう。

 ロサンゼルスでは、6万人のホームレスが市街地にあふれ、市役所が非常事態を宣言した。カリフォルニア州で家賃が上がりすぎたのがホームレス急増の一因だが、多くの人が低賃金のパートタイムの仕事しか得られないことも原因だ。NYやシカゴでもホームレスが増えている。こんな状況で、米国の景気が回復しているはずがない。 (The third world side of the American dream: In Los Angeles, the 60,000 homeless are everywhere as municipal officials declare a "state of emergency") (The Infrastructure Of America Is Collapsing)

 米連銀が昨秋QEをやめて以来、代わりに日本銀行がQEを拡大し、リーマン危機以来蘇生しない米金融システムの延命を支えてきた。しかし日本では、日銀がQEの買い支えの対象にできる債券が底をついており、日本のQEも限界だ。日本経済は再びデフレがひどくなり、従来の(実はインチキな)理屈に従うならQEの拡大が必要だが、それはできない。 (Japan consumer prices fall for first time since launch of BOJ stimulus) (日銀QE破綻への道)

 安倍政権は先日、新しい「3本の矢」を発表したが、それらはGDPの20%成長、出生率の向上、社会保障の充実で、通貨や財政の分野での具体的な政策が盛り込まれなかった。QEは、国民生活を改善しない。それを認めないまま、安倍政権はQEを政策の前面から静かに外している。米連銀は、日銀に頼れなくっている。 (Abe's New Economic Plan Confounds Analysts) (Japan's Abe Unveils New 'Arrows' Wish List: 20% GDP Growth, Higher Birth Rate, & Flying Pig)

 QEの不健全さが露呈してきたので、米連銀はもうQEを再開できず、代わりに利上げをあきらめて金利をマイナスまで引き下げるのが良いという見方も出ている。 (From ZIRP To NIRP - Accelerating The End Of Fiat Currencies) (What if the Fed is wrong?)

 金利がマイナスになると、銀行預金が目減りしてしまうので、人々は預金をおろして現金(たんす預金)で持ちたがる傾向が強まり、銀行の経営が厳しくなる。これを回避するため「現金廃止。全通貨の電子化」が最近再び欧米で提唱されている。 (Scrap cash altogether, says Bank of England's chief economist) (現金廃止と近現代の終わり)

 同時に「ビットコイン」の暗号化技術(ブロックチェーン)について、米欧の大手銀行が共同研究を開始している。ビットコインは匿名で送金できる技術なので、これを民間が勝手に使うと、当局が資金の動きを把握できなくなり、権力行使(野党潰し、スパイ行為)や徴税率向上に支障が出る。そのため、ビットコインは潰される必要があった。代わりに、当局とつながった金融界がビットコインの技術を独占使用する体制を作ろうとしているようだ。 (Nine massive banks just teamed up to take the technology behind bitcoin mainstream)

 しかし、全通貨電子化の前提にある現金廃止は、かりに政治的な合意ができたとしても、実現まで何年もかかる。欧州諸国は、何年も前から通貨電子化を進めているが、現金の廃止に至っていない。現金を廃止して最も困るのは、現金決済で(自国の警察にも税務当局にも知らせず)スパイ網を維持してきた米英の諜報機関や軍部かもしれず、現金廃止は政治的に困難だろう。米日欧の中央銀行による延命策は、かなり行き詰まっている。株高が維持できているのが不思議だ。

 米金融界では、ドイツの「ドイツ銀行」や、英スイス系の鉱山運営・鉱物取引会社である「グレンコア」の経営の行き詰まりが指摘されている。グレンコアは事実上、金融会社だが、株価がすでに史上最低で「コモディティのリーマンブラザーズ」になると懸念されている。ドイツ銀行は、最もデリバティブに入れ込んできた銀行の一つだ。いずれも破綻すると、08年のリーマン倒産的な、広範な金融危機につながりうる。 (Is Goldman Preparing To Sacrifice The Next "Lehman") (There Are Indications That A Major Financial Event In Germany Could Be Imminent) (We Have Entered A Season Of Time When Another "Lehman Brothers Moment" May Occur, A Major Financial Event In Germany Could Be Imminent)

 10月に入ると、米金融界がシェール石油産業に対する評価が見直され、融資金利の引き上げなどが行われる。米金融界では「シェールのパーティーは終わった」といわれている。これも、広範な債券金融危機につながりかねない。 (The Shale Party's Over: "Closed" Bond Market Means "Restructuring Is Inevitable")

 12月になると、米連邦政府の政府閉鎖の懸念が増大する。米政府の財政年度は10月1日からで、米議会ではまだ来年度予算案が通っていない。計画出産や避妊中絶をしやすい体制作りを進める非営利の医療機関「プランド・ペアレントフッド(PPFA)」が、中絶した胎児の臓器や細胞を売って儲けていた疑惑に関し、両院の多数派となっている共和党内で、PPFAに対して例年通りの補助金を出すことが盛り込まれている来年度予算を拒否する動きが起こっている。リベラル(中絶支持)な民主党のオバマは「議会がPPFAに対する補助金を削った予算案を出してきたら拒否権を発動する」と表明し、9月中に来年度予算案が可決せず、10月1日以降、連邦政府の閉鎖が起こりうる事態になった (Planned Parenthood From Wikipedia) (Boehner plots shutdown move as critics weigh options) (Democrats actually the ones trying to shut down the government?)

 上院議長である共和党のジョン・ベーナー議員が、政府閉鎖を避けるため、党内過激派の反対を押し切って、民主党と結託して上院で来年度予算を通そうとしたところ、共和党内でベーナーへの批判が強まった。もともと今年いっぱいで議員を辞めて引退しようと考えていたベーナーは9月25日、10月末に議長と議員を辞めると発表し、辞任までの間に、党内の反対を気にせず民主党と結託し、来年度予算を通す動きを強める挙に出た。これにより、10月の政府閉鎖の可能性は劇的に低下したと分析されている。 (Boehner resignation cuts U.S. government shutdown) (Senate Makes Progress on Avoiding Government Shutdown) (House speaker John Boehner resigns from US Congress)

 だが、ベーナーが辞任カードを切ったことで米議会を通りそうな来年度政府予算は、1年分でなく、12月11日までのたった2カ月分でしかない。米議会はここ数年、2大政党間(議会と大統領の間)の対立が激しく、すんなり1年分の政府予算が決まったことがない。2-6カ月分ずつの暫定予算案を年に何度も紛糾しつつ可決することを繰り返している。今回も70日分の暫定予算が予定されている。この予算は12月11日に切れる。 (A Government Shutdown Suddenly Looks Far Less Likely)

 このため、11月下旬から、米議会で再び政府予算が問題になることが必至だ。米政府は、今年3月に財政赤字が法定上限の18・1兆ドルに達し、それ以来半年間、米国債の純増発行ができないままになっている(償還分と同額の新規発行しかできない)。「小さな政府主義」を掲げる共和党が、赤字上限の引き上げに反対している。このままだと、米政府は景気が悪くなっても財政出動による景気テコ入れ策ができない。この件も、年末にかけて問題になる。 (House Speaker Boehner Resigns From Congress Amid "Conservative Coup")

 しかし、次に政府予算案や赤字上限が米議会で問題になるころには、共和党の上層部で民主党とのパイプ役をつとめてきたベーナーがすでに辞めている。共和党の上層部が、政府閉鎖をいとわない党内過激派を抑えられない可能性が増す。政府予算案が議会を通らず(もしくは大統領の拒否権発動によって)、米政府が閉鎖される確率は、今回(9月末)より次回(11月末)の方が高くなったと指摘されている。 (Boehner resignation heightens US government shutdown risk)

 米共和党の過激な「小さな政府主義者」たちは、いろいろな理由をつけて、赤字上限の引き上げを拒否したり、予算案を通さず連邦政府を閉鎖に追い込むことを、強制的に政府の規模を縮小できる策として望んでいるふしがある。彼らが米国の財政的な混乱を何年間も引き起こしていることで、米国の覇権(国際的な信用力、影響力)が低下し、覇権の多極化を引き起こしている。かつて、イラク侵攻を無理矢理に挙行して米軍を占領の泥沼に引きずり込み、米国の覇権を低下させたのも共和党のネオコンだった。共和党が「隠れ多極主義」の秘密結社であると思われるゆえんだ。 (Boehner Is Out: What This Means For Government Shutdown Odds And The Debt-Ceiling Fight)

 米国は、利上げできなかった米連銀の行き詰まり、政府予算の編成すら滞る米議会の危機、経済指標の粉飾がひどくなる米政府など、矛盾が肥大化し、リーマン危機をしのぐ金融危機がいつ起きても不思議でない状況にある。だが、表層的な動きだけを見ると、株価は上がり続け、政府やマスコミが発表する「経済状況」は好転し、延命する状態が続いている。このバランスが今後、いつどう崩れていくか、それとも崩れずに延命し続けるのかが、今後しばらく最大の注目点だ。