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折々の記 2016 ⑦
【心に浮かぶよしなしごと】

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【 07 】11/08~     【 08 】11/09~     【 09 】11/12~

【 07 】11/08

  11 08 憲法を考える
       届かぬ少数者の声
       各党に聞く(共産)→格差・過労死、意義増す現憲法
  11 08 日曜に想う
       望月の欠けたることもなしと思えば
  11 08 核兵器禁止条約
       日本は賛同せず 被爆国なのにどうして?
       渡辺謙が「核兵器禁止条約」に反対した安倍政権を真っ向批判!
       核兵器禁止決議、日本はなぜ「棄権」ではなく「反対」だったのか
       核兵器禁止決議に日本反対 岸田文雄外相「わが国の立場に合致せず」
       菅義偉官房長官、国連核兵器禁止条約「核なき世界を遠のかせる」
       核禁止条約交渉、効果を期待 日本、廃絶主導するのが自然
  11 08 台湾の脱原発
       民意を映す政治の決断
  11 08 子育ての理想と現実
       1 悲鳴

 11 08(火) 憲法を考える     届かぬ少数者の声

憲法を考えるに関するトピックス
      http://www.asahi.com/topics/word/%E6%86%B2%E6%B3%95%E3%82%92%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B.html
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2016年10月30日
(憲法を考える) 届かぬ少数者の声 改憲勢力3分の2、問われる民主主義
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12633449.html

 民主主義は、すべての人が平等であることを基礎とするが、物事を決める時にすべての人の意見が一致するとは限らない。だから多数決を使って、多数派の意見を全員の意思と「みなす」。ところが昨今どうもこの「みなす」が忘れられ、単純な「数の多さ」が絶対視されがちだ。改めて考えたい。多数決は民主主義にとって重要なルールだが、絶対のルールではない、ということを。

 「強行採決するかどうかは衆院議院運営委員長が決める」

 国会で審議中の環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案をめぐり、山本有二農林水産相は先日、こう語った。「わが党においては結党以来、強行採決をしようと考えたことはない」。こちらは安倍晋三首相の弁だが、自民党は過去に何度も、「数の力」で採決を強行してきた。昨年の安全保障法制をめぐる議論でも、首相は「決める時には決めなければいけない。それが民主主義のルールだろう」と繰り返した。

 それでもかつては、野党=少数意見と、審議時間という「見かけ」への最低限の配慮はあったはずで、審議が始まって間もない時期に担当大臣が言及するとはどういうことだろう。多数派のおごり、数の力――。

     *

 安部公房の小説「闖入者(ちんにゅうしゃ)」(1951年)に、こんな場面がある。

 ある日の未明、一人暮らしの男のアパートの部屋に見知らぬ9人家族が押しかけてきて、多数決で、この部屋は自分たちの家だと決める。

 「下らない」。そう言って取り合わない男を、家族はののしる。

 「君は民主主義の原理である多数決を下らないと言うのか」「ファシストめ!」。結局、男の部屋は家族に乗っ取られてしまう。

 坂井豊貴・慶応大教授(社会的選択理論)は近著「『決め方』の経済学」で同作を取り上げ、「多数決の暴力」を説いた。念頭にあったのは、国土面積の0・6%に在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄だ。

 「多数決の結果として基地を押し付けるのは、暴力と変わらないのではないか。私たちは、『闖入者』を笑えません」

 「沖縄の米軍基地を本土に引き取ろう」。高橋哲哉・東京大教授(哲学)らは今、広く呼びかけている。

 朝日新聞の全国世論調査で、米国が日本の防衛義務を負う日米安保条約維持に賛成する人の割合は、2013年調査で81%、14年調査でも79%いた。一方、沖縄県民を対象にした15年の調査で維持に賛成した人の割合は57%。条約維持を望むのは本土の人たちの方が多い。しかも沖縄県の人口は全国の約1%。「原理的に、沖縄の基地は本土が引き取るべきだ」と、高橋さんは9月に東京都内であったシンポジウムで話した。

 かつて「軍事的には沖縄でなくても良いが、政治的に考えると、沖縄が最適」と話した防衛相がいた。本土への基地移転が議論されても、候補地からの反対の声でつぶれる。沖縄県民が基地反対を主張する代表を国政に送っても、多数決では勝ち目がない。抗議の声を上げ続けるしかない――。そんな中、沖縄県東村高江の米軍ヘリパッド建設現場で今月、大阪府警から派遣された機動隊員の一人が、抗議活動をしていた市民に「土人」と言った。松井一郎大阪府知事はツイッターで、表現は不適切だとしつつ「出張ご苦労様」とねぎらった。ネット上には隊員を擁護する意見も散見された。

     *

 憲法が施行された1947年。中学生の社会科教科書として発行された「あたらしい憲法のはなし」に、こんな記述がある。

 「おゝぜいの意見で物事をきめてゆくのが、いちばんまちがいがない」

 「おゝぜいの人の意見に、すなおにしたがってゆくのがよいのです」

 戦後、社会の民主化が進められる中で、「民主主義は多数決」という理解が広がっていった。

 民主主義は、すべての個人は平等であることを基礎とする。何かを決める時、全員で議論し、全員が一致する結論が求められる。しかし、人数が増え、複雑な問題になれば、全員一致は難しい。そこで、多数派の意思を全員の意思と「みなす」ことで、決定を下す。笹倉秀夫・早稲田大教授(法哲学)は言う。

 「民主主義にとって多数決は、実際上それでいくしかないという『次善の策』なのです」

 多数決は一見、フェアなルールのように見える。だが少数民族や性的マイノリティーなど、常に少数派に置かれる人たちは、多数決で勝敗が逆転する可能性は極めて低く、勝負自体がフェアと言えない。多数派の意見をただ押し通すことは、少数派にとっては暴力と変わらない。

 多数派の専横を防ぐ仕組みが、立憲主義だ。多数決でもだめなものはだめ。多数派も奪うことのできない人権の保障や権力分立などを憲法で定める。

     *

 7月の参院選で、憲法改正の国会発議が可能となる「3分の2」の議席を、改憲勢力が衆参両院で確保した。3分の2あるいは4分の3など過半数ラインを超える賛成者の意思によって可否を決めることを「特別多数決」と言い、特に重要な事を決める時に用いられる。

 ただし、定数の「3分の2」のハードルは、衆院選に用いられる小選挙区比例代表並立制のもとでは決して高いハードルではない。

 小選挙区制は、選挙区から当選者は1人しか出ず、得票率に比べて議席の占有率が高くなりやすい。2014年の衆院選では、自民党の小選挙区での得票率は48%だったが、議席の75%を獲得した。

 一つの選挙区で複数が当選した中選挙区時代、自民党が単独で「3分の2」に最も近づいたのは60年衆院選。296議席を得て占有率は63%で、得票率も58%だった。

 切り捨てられた民意をすくい取る方法はないのか。坂井さんは、中欧スロベニアの国会議員選挙の一部で実際に使われている「ボルダルール」を推す。候補者が4人いたら、有権者は1位に4点、2位に3点、3位に2点、4位に1点をつけて投票。総得点が最多の候補者が当選する。当選するには幅広い有権者からまんべんなく支持を得る必要があり、「多数派のためではなく、万人のため」のルールだと言える。

 「複数の選択肢から一つだけを選ぶ単純な多数決は、『どうでもよいこと』を決めるのに使うのがよい」と、坂井さんは言う。

 例えば、仲間とどの店でご飯を食べるかを選ぶ時。みんなで一定の時間内に食事ができればよく、たとえ「ハズレ」たとしても、次の機会に自分の行きたい店に行けばいい。

 生命や財産に大きな影響を及ぼすような問題について、多数決で決しようとする場合であれば、より慎重にならなければいけない。

     *

 欧州連合(EU)から離脱するかどうかを決める、英国の国民投票。離脱が多数を占め、それを国民全員の意思とみなした。しかし、投票にむけた運動で離脱を訴えた人たちが、投票終了後に自らの主張は誤りだったと言い始めた。主張を信じて「離脱」に投じた人たちが「そんなはずじゃなかった」と投票のやり直しを求めたが、後の祭りだ。

 笹倉さんは言う。「民主主義で重要なのは全員一致に向かおうとする努力と情報公開、そして熟慮だ」

 民主主義では、民意に従うことが大事だ。ただし民意の表れ方は、決め方によって変わる。「絶対の民意というものはない。私たちができるのは、よりまともな決め方を使うことだけです」と、坂井さんは話す。

 決め方は、多数決だけではない。(藤井裕介)

2016年10月30日
(憲法を考える) 各党に聞く 共産 格差・過労死、意義増す現憲法
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12633539.html

 憲法改定の大前提は、国民から「この条文を変える必要がある」という要求があるかどうかだ。だが、国民の間ではそんな具体的な議論は起きておらず、貧困や格差、ブラック企業、過労死などさまざまな問題が起きる中、ますます輝きを増しているのが日本国憲法だと思う。9条の恒久平和主義はもとより、生存権、幸福追求権、教育を受ける権利など30条にわたる人権規定は非常に先駆的だ。

 国民は70年間、憲法とともに歩み、その間、条文を変える必要がなかったというのは立派な憲法であるという証明だ。むしろ変えるべきは憲法ではなく、憲法をないがしろにする現実の政治だ。私たちは現行憲法の全条項を守る。とりわけ平和的、民主的条項の完全実施を目指す。これこそが「憲法改正」に対する根本的な対案だと思う。

 参院選の結果、「改憲勢力」は確かに3分の2を占めたものの、国民からすれば、改憲を白紙委任したものではない。安倍晋三首相は遊説のときに改憲については語っていないにもかかわらず、選挙が終わった翌日には「いかに我が党の案をベースに3分の2を構築していくか、これがまさに政治の技術」と発言したが、まさにだまし討ちだ。

 その自民党草案は国民が権力を縛るのではなく、逆に権力が国民を縛るという考え方に立ち、立憲主義に反している。9条2項を削除して国防軍創設を明記し、海外での武力行使を無制限に可能にすることにこそ本丸がある。どこをとっても改憲案のベースにしてはならない。あの悲惨な戦争を体験した日本国民が決して望んでいないと思う。

 改憲項目の一つとして緊急事態条項が議論されているが、事実上の戒厳令を可能にするもので重大問題だ。参院選の「合区」には反対だが、選挙制度改革で解決するべき課題であり、改憲の必要はない。

 安倍政権は2007年の改憲手続き法(国民投票法)成立も含め、一貫して野党を改憲の方向に巻き込もうとしてきた。だが、いま野党4党では「安倍政権下での改憲に反対」という合意がある。私たちは、この一点で共闘し国民的な世論を盛り上げることが大切だ。(構成・園田耕司)

 11 08(火) 日曜に想う     望月の欠けたることもなしと思えば

「日曜に想う」一覧
      http://digital.asahi.com/article_search/s_list4.html?keyword=%C6%FC%CD%CB%A4%CB%C1%DB%A4%A6&s_title=%A1%D6%C6%FC%CD%CB%A4%CB%C1%DB%A4%A6%A1%D7%B0%EC%CD%F7&rel=1
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2016年10月30日
(日曜に想う) 望月の欠けたることもなしと思えば 編集委員・曽我豪
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12633461.html

 もとより「一強」は安倍晋三首相だけのものではない。我が世の春を謳歌(おうか)した首相は自民党に幾人かいた。だが案外と春を存分に使い切った人はいない。

 例えば佐藤栄作首相だ。1969年の第32回衆院選で沖縄返還を掲げ、300議席を獲得、「戦前の原敬政友会以来」と称される大勝利となった。今日に至るも最長不倒の自民党総裁選4選を遂げた。

 だが好事魔多し。米中和解とドル・金交換停止というニクソン・ショックに見舞われ、沖縄密約事件が起きる。田中角栄、福田赳夫両氏の後継争いを裁断できず求心力は低下、国会で法案はさっぱり通らなくなった。新聞記者は出ていけと叫んだ退陣会見はあまりに有名である。

 次は中曽根康弘首相だ。17年後の1986年の第38回衆院選。死んだふりの衆参同日選挙で300議席を超え総裁任期の1年延長も手にした。旗印の行財政改革の仕上げとして売上税導入を図った。

 だが選挙中に大型間接税は導入しないと言ったのは首相自身だった。内閣支持率は20%台に急落、派内からさえ公約違反だとの声が上がる。参院岩手補選で社会党にダブルスコアで負け、あえなく売上税法案は廃案となった。

 さらに小泉純一郎首相だ。19年後の2005年の第44回衆院選。郵政民営化法案の参院否決を逆手にとって衆院を解散し、抵抗勢力をたたく劇場型選挙によって自公で300議席を大きく超えた。

     *

 だがそこが「変人首相」の真骨頂か、任期延長を促す与党内の声にまったく耳を貸さない。選挙直後の特別国会で郵政民営化法を一気に成立させるや、消費増税など積み残しの課題は後に任せ、任期通り翌年さっさと首相を辞めた。

 そして11年後のいま、第48回となる衆院選へ、解散時期を探るのが安倍首相である。権力とは厄介なものだ。大きすぎる力はときに過信や内紛を生み、かえって権力者に仇(あだ)をなす。しかも過去3人と比べ、首相の道行きはいかにも険しい。

 まず第一に、安倍首相は12年と14年の2回自分で得た300超えの与党の議席をもう一度維持する役回りに立つ。それが過去3人と違う。アベノミクスはじめ政権に対する民意の批判や飽きを自分で解消するしかない。加えて任期延長は世論調査でも決して賛同を得てはいない。

 第二に、衆院選の本質的な勝敗ラインが厳しい。首相の本願は憲法改正にあるのだろう。ならば議席を減じるにしても与党過半数では辛(つら)い。3分の2という橋頭堡(きょうとうほ)の確保が見込めなければ、改憲への道筋は視界不良に陥る。過半数維持で政権の命脈は保たれるにしても、あるいは改憲の実現を大義とする任期延長自体が大きく迫力を欠くことになりかねない。

 さらに第三の点がある。首相が願う最終的な改憲の姿を考えたとき、3分の2という数字はただ国会で得られれば済むものだろうか。違うだろう。

 首相の人生の最終目標が9条改正だと考えてみよう。ただ今は、公明党の反応ひとつを見ても現実的に無理だ。ならばまず参院の合区解消と緊急事態条項で改憲を発議する。だが問題は国民投票の結果である。英国の欧州連合(EU)離脱問題のように、仮に多数を得ても51対49といった僅差(きんさ)に終わればどうなるか。

 国論は2分されたとの批判や危機感が強く残り、やはりまだ日本国民の改憲アレルギーは根強いのだという空気が醸成されないか。9条改正へ政治的余韻を存分に残したいのなら、首相にとってそれは絶対に避けねばならぬ悪路だろう。

     *

 3年の任期延長が成ったとしてその終わりは21年9月、首相は67歳だ。まだまだ引退する年ではあるまい。祖父・岸信介元首相にならい、例えば国民運動を起こすなどして、後継首相に対して自分がやり残した改憲の仕上げを迫る手もある。迫らないはずがないとも思える。

 改憲についてどこまでを首相としてやり遂げ、どこからを退陣後に送るか。ただ、本願成就の条件は国会と国民の絶対的な多数なのである。次の解散がいつかはひとつの道程に過ぎない。政権と自分のライフプランを首相がどう見定め直すかが事の本質なのだと思う。

 11 08(火) 核兵器禁止条約     日本は賛同せず 被爆国なのにどうして?

核禁止条約
      https://www.google.co.jp/?gws_rd=ssl#q=%E6%A0%B8%E7%A6%81%E6%AD%A2%E6%9D%A1%E7%B4%84
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核兵器禁止条約
      https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B8%E5%85%B5%E5%99%A8%E7%A6%81%E6%AD%A2%E6%9D%A1%E7%B4%84
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【核兵器禁止条約】2015年05月24日
「核兵器禁止」日本は賛同せず 被爆国なのにどうして?
      【NPT再検討会議】
      http://www.huffingtonpost.jp/2015/05/24/npt-ban-nuclear-weapon-humanitarian-pledge_n_7429810.html

生物兵器、化学兵器、地雷、クラスター爆弾、これら非人道兵器は、国際的に使用が禁止されている条約がある。しかし、核兵器を禁止する条約は、未だ存在しない――4月下旬からニューヨークの国連本部で開催された核拡散防止条約(NPT)再検討会議では、核兵器の非人道性が中心議題の一つとなり、107の国々がオーストリアの提唱した核兵器禁止文書に賛同した。しかし、アメリカの「核の傘」の下にある日本は、アメリカに配慮して賛同せず、被爆国として核の恐ろしさを訴えながらも核を否定できないという「二面性」を見せた。

この文書は核兵器の廃絶・禁止に向けた法整備の必要性にも触れている。2月18日朝刊の中国新聞によると、外務省の関係者はこれまで、文書に賛同しない理由について「核の非人道性の議論が、核軍縮のプロセスを分断するものになってはならない」と説明したという。

外務省幹部の言う“核軍縮のプロセス”とは、「段階的なアプローチが唯一の現実的な選択肢」とするアメリカやイギリスなど核保有5大国のやり方を指す。これに対して、急速に核軍縮を目指す国も存在する。その一つがエジプトを中心とするアラブ諸国だ。

エジプトは1974年に「中東非核地帯構想」を提唱して以来国是としており、2010年には、「(中東の)いかなる国も、大量破壊兵器を保有することで安全が保障されることはない。安全保障は、公正で包括的な平和合意によってのみ確保される」と、自国の立場を明らかにした。

中東非核地帯構想にアラブ諸国は賛同するが、NPTに参加せず、核兵器を事実上保有するイスラエルは、「まず、イランなどに対して適用したあとで、イスラエルに適用すべき」というような趣旨の、アラブ諸国とは異なる立場を取る。

核の存在によって、中東地域でイスラエルが覇権を握ることを警戒するエジプトなどアラブ諸国は、2010年に開かれたNPT再検討会議で、中東の非核化を協議する国際会議を2012年に開催することを勧告する内容を条約に盛り込むことを条件に、NPTの無期限延長を受け入れた。しかし、会議が開かれれば、イスラエルの核保有が問題視されるため、結局国際会議が開かれていない。

今回のNPT再検討会議でも、エジプトらは2016年に中東非核化国際会議を開催することをNPTに盛り込もうと提案。しかし、アメリカがイスラエルを擁護して反発し、国際会議を開催する時期について検討期間がないことや、中東各国が平等の立場で、開催合意に至るプロセスが明確化されていない点などをあげ、国際会議の開催を強引に進めるとしてエジプトを名指しで非難。会議は決裂した。

約4週間にわたって行われた再検討会議の実りのない結末に、広島1区選出の岸田文雄外務相は「大変残念」と発言。しかし、核兵器を保有する中国や北朝鮮が身近にあることもあり、外務省は核の傘について、「社会においては、依然として核戦力を含む大規模な軍事力が存在している中で、日本の安全に万全を期すためには、核を含む米国の抑止力の提供が引き続き重要」としており、アメリカの核抑止力が必要だと説明している。

今回の日本政府の対応について国際NGOネットワークの核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、「核兵器の恐怖を経験しているにもかかわらず、日本は核軍縮に向けた現実的なビジョンを説明することに失敗した」と指摘した。

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【核兵器禁止条約】
渡辺謙が「核兵器禁止条約」に反対した安倍政権を真っ向批判!
   「核を持つ国に追従するだけで意見は無いのか」

      http://lite-ra.com/2016/11/post-2677.html

 〈核の恐ろしさを体験したこの国はどこへ行こうとしているのか〉

 こんな声をあげたのは世界的に活躍する俳優の渡辺謙だ。10月27日(現地時間)、国連総会第1委員会において「核兵器禁止条約」に向けた交渉を2017年にスタートさせる決議が賛成多数で採択された。しかし、この議決に対して米露英仏の核保有国などとともに反対したのが、被爆国である日本だった。

 この日本の姿勢に対して、渡辺がツイッターに批判を投稿したのだ。その全文を掲載しよう。     *

〈核兵器禁止条約に日本が「反対」という信じられないニュースが流れました。いったいどうやってこの地球から無用な兵器を無くしていくつもりなのか? 核を持つ国に追従するだけで意見は無いのか。原爆だけでなく原発でも核の恐ろしさを体験したこの国はどこへ行こうとしているのか、何を発信したいのか〉

 渡辺は国連議決の直後の10月28日にこれをアップしているが、その主張は至極まっとうなものだ。

 岸田文雄外相は、反対理由として「核保有国と非核保有国の対立を一層助長する」などと述べているが、そんなものはゴマカシにすぎない。そもそも、日本はこれまでも表向きは「核廃絶」などと言いながら、実際にはまったく逆の行動をとり続けてきた。

 たとえば今年5月の核軍縮の進展を目指す国連作業部会第2回会合でも、佐野利男軍縮大使は、安全保障上の問題で核が必要だとし、「核兵器を削減・廃絶するのはほとんど非現実的」と主張、条約の締結に対し反対した。

 また8月15 日には、安倍首相がハリス米太平洋軍司令官に「北朝鮮に対する抑止力が弱体化する」と伝え、オバマの核軍縮政策に反対していた事実を、米ワシントン・ポストが報じている。

     *

 安倍首相は今年の広島・長崎の平和記念式典でオバマ訪問を「核兵器を使用した唯一の国の大統領が、被爆の実相に触れ、被爆者の方々の前で、核兵器のない世界を追求する、そして核を保有する国々に対して、その勇気を持とうと力強く呼びかけました」と自らの実績として大々的にアピールし、「世界の指導者や若者に被爆の悲惨な実態に触れてもらうことにより、『核兵器のない世界』に向け、努力を積み重ねてまいります」と宣言していた。それが裏では、この有様である。

 しかし、それも当然だろう。安倍首相は官房副長官時代の2002年、早稲田大学で開かれた田原総一朗氏との学生向けシンポジウムで、「憲法上は原子爆弾だって問題ではないですからね、憲法上は。小型であればですね」と発言、また2006年にも「核兵器であっても、自衛のための必要最小限度にとどまれば、保有は必ずしも憲法の禁止するところではない」と答弁書に記すなど、その考えは“核の保有や核兵器の使用は認められるべき”というものなのだ。

 そんな現政権下にあって、渡辺のような勇気ある発言は貴重だ。日本では昨年の新安保法案をめぐる騒乱でも明らかだったように、“芸能人”による毅然とした政治的発言に対して、それを封じ込めるような冷ややかな反応やバッシングが浴びせられる傾向が強い。「タレントのくせに」というやつだ。

 だが、海外での活躍の多い渡辺は、おそらく“芸能人”が政治的発言をするのは当然であることをよくわかっているのだろう。こうした空気にまったく臆する様子はない。渡辺は昨夏の安保法案の際も、ツイッターで日本国憲法の素晴らしさと戦争反対を訴えていた。

〈一人も兵士が戦死しないで70年を過ごしてきたこの国。どんな経緯で出来た憲法であれ僕は世界に誇れると思う、戦争はしないんだと!複雑で利害が異なる隣国とも、ポケットに忍ばせた拳や石ころよりも最大の抑止力は友人であることだと思う。その為に僕は世界に友人を増やしたい。絵空事と笑われても。〉(15年8月1日)

 また今年6月13日の「第7回岩谷時子賞」授賞式に出席した際には、舛添要一都知事(当時)の公私混同や著名人の不倫報道が異常なほど盛り上がっているメディア状況について「政治家の領収書や不倫の情報ばかりが錯綜しているこの国はどうなっていくんだろう。文化の担い手として、深い人間的ドラマを伝える作品を作らないと、この国はまずい」と苦言を呈している。

     *

 政治やメディア状況、そして日本人のメディアに影響され感情的に流される様さえ、的確に把握し、声をあげて指摘しているのだ。

 また、渡辺は今から4年半ほど前の12年2月の映画『はやぶさ 遥かなる帰還』試写会でもこんな発言をしたことがある。

「確かに俳優という職業で、発言をすることに危うさは感じている。しかし社会人という意味では僕は皆さんと何も変わらない。ひとりの社会人としてこれからも臆せずに発言をしたい」

今後も渡辺の発言に期待したい。 (伊勢崎馨)

【核兵器禁止条約】 新聞に喝!
核兵器禁止決議、日本はなぜ「棄権」ではなく「反対」だったのか
      ノンフィクション作家・門田隆将

      http://www.sankei.com/column/news/161106/clm1611060008-n1.html

 それは多くの国民にとって衝撃だっただろう。

 核軍縮を扱う国連総会第一委員会が、核兵器を法的に禁止する「核兵器禁止条約」の交渉開始を明記した決議案を賛成多数で採択したニュースである。オーストリアなどが出したこの決議案に日本が「反対した」というのである。提唱した国々からは、「被爆国なのになぜ?」「残念」といった声が飛んだ。「核兵器国と非核兵器国の亀裂を深め、核兵器のない世界の実現が遠のく」という菅義偉官房長官の談話を聞いても多くの国民は納得できなかったに違いない。では、その「なぜ」に新聞はどう答えたのか。

 日本が「反対票」を投じたことを評価したのは、読売と産経で、朝日と毎日は疑問を呈した。

 読売は、〈肝心な点を先送りにし、多数決で条約作りを進めても、実効性は期待できまい〉(10月29日付社説)とし、産経は、〈安全保障の根幹を米国の「核の傘」に依存する日本は、決議案に反対票を投じた。国民を核の脅威から守り抜く責務がある、唯一の被爆国の政府として、妥当な判断といえよう〉(同30日付主張)と書いた。

     *

 一方、毎日は、〈対立が深いのなら、なおのこと日本は決議案に反対すべきではなかった。反対しておいて、今後、橋渡し役を果たすと言っても、どれだけ説得力を持つのか疑問だ〉(同29日付社説)、朝日も〈反対表明は、より核保有国に近い立場をとると宣言したに等しい。理解しがたく、きわめて残念だ〉(同日付社説)と厳しく指弾した。

 日本はこの決議の前に、核兵器不拡散条約体制の強化を謳(うた)った「核兵器の全面的廃絶」に向けた決議案を米国を含む110カ国と共同提起して採択されている。実に23年連続の採択だ。

 日本は自分が提案したものでなければ、反対票を投じるのか。どの部分が核保有国と非保有国との亀裂を深めるというのか。残念ながら新聞には、その答えと、日本が反対票を投ずるまでの内幕は書かれていなかった。

 この決議案反対は、米国の核の傘に守られている日本が、その「核の抑止力」を公式に認めたことを示している。被爆国でありながら、その原爆を落とした国の「核抑止力」に頼らなければならない日本の現実と苦悩がそこにはある。

 だが、では、なぜ「棄権」ではなく「反対」だったのだろうか。米国がたとえ反対への圧力をかけてきたとしても、唯一の被爆国として、「仰(おっしゃ)ることはわかります。でも反対ではなく、棄権にまわらせてもらいます」と、なぜ言えなかったのか。

     *

 米国に対しても、感謝すべきは感謝し、しかし、言うべきことは言わせてもらう。それが被爆国としての日本が国際社会で果たすべき役割ではないだろうか。その視点に立って謎の解明に挑んだ新聞は一紙もなかった。国連の中の激しい駆け引きと鍔迫(つばぜ)り合(あ)いの内幕を報じる新聞の登場をぜひ、待ちたい。

            ◇

【プロフィル】門田隆将

 かどた・りゅうしょう 昭和33年、高知県出身。中央大法卒。ノンフィクション作家。最新刊は、リーダーの本来あるべき姿を実録で描いた『リーダーの本義』。

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  核兵器禁止決議に日本反対 岸田文雄外相「わが国の立場に合致せず」 来年の条約交渉には参加の意向
  菅義偉官房長官、国連核兵器禁止条約「核なき世界を遠のかせる」
  核兵器禁止決議に日本反対 岸田文雄外相「わが国の立場に合致せず」 来年の条約交渉には参加の意向写真あり
  核兵器禁止条約、交渉開始へ国連が決議採択 日本は反対写真あり
  核兵器禁止条約、北朝鮮は決議採択に賛成 米の核使用禁止期待写真あり
  核兵器禁止条約 国連、交渉開始へ決議採択 日本は反対写真あり
  核兵器禁止条約 非核保有国の決議案正式提出

【核兵器禁止条約】 2016.10.28
核兵器禁止決議に日本反対 岸田文雄外相「わが国の立場に合致せず」
      来年の条約交渉には参加の意向

      http://www.sankei.com/politics/news/161028/plt1610280011-n1.html

 岸田文雄外相は28日午前の記者会見で、国連総会第1委員会(軍縮)で採決にかけられた2017年の「核兵器禁止条約」制定交渉開始を定めた決議案に、日本は反対票を投じたと明かした。

 岸田氏は「決議案は具体的、実践的措置を積み重ね、核兵器のない世界を目指すという日本の基本的立場に合致しない」と強調した。米国の「核の傘」で抑止力を担保している日本にとり、急激な核兵器廃絶は現実的ではないと判断したものとみられる。

 岸田氏はまた、「決議案には(核開発を継続する)北朝鮮が賛成し、米国をはじめとする核兵器国がどこも賛成していない。各国の投票行動にも(決議案への)評価が現れているのではないか」とも指摘した。

 ただ、決議案は賛成多数で可決され、来年からの条約交渉開始方針が確定。これに関し岸田氏は「政府内で検討していくが、交渉が始まるのなら核兵器国と非核兵器国の協力を重視するという立場から、主張すべきことは主張すべきだと考えている」と述べ、日本も条約交渉に参加する意思を示した。

【核兵器禁止条約】 2016.10.28
菅義偉官房長官、国連核兵器禁止条約「核なき世界を遠のかせる」
      http://www.sankei.com/politics/news/161028/plt1610280035-n1.html

 菅義偉官房長官は28日の記者会見で、国連総会第1委員会(軍縮)が採択した「核兵器禁止条約」制定交渉開始の決議に日本政府が反対した理由について「核兵器のない世界を実現するには核兵器国の協力が必要だが、作成段階から核兵器国が関与していない」と指摘した。その上で「このようなアプローチでは核兵器国と非核兵器国の亀裂をさらに深め、核兵器のない世界の実現を遠のかせてしまう」との懸念を示した。

 菅氏は「わが国は核兵器国と非核兵器国の橋渡しをして協力を進める観点から、核兵器国も取り得る現実的で実践的な核軍縮措置を推進している」と説明した。

 これに関連し、安倍晋三首相は28日の衆院環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)特別委員会で「われわれは現実に一歩一歩着実に前進させていきたい。被爆国であるからこそ、現実に核なき世界に向かって世界をその方向に向けて進めていきたい」と語った。

【核兵器禁止条約】 2016年10月30日
核禁止条約交渉、効果を期待 日本、廃絶主導するのが自然
      ブリクス・IAEA元事務局長  (《International Atomic Energy Agency》⇒国際原子力機関)
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12633607.html

 核兵器を法的に禁止する「核兵器禁止条約」の交渉を来年から始めるとの決議が27日、国連総会の第1委員会で賛成多数で採択された。日本や米国は反対した。スウェーデンの元外相で、国際原子力機関(IAEA)事務局長を務めたハンス・ブリクス氏が朝日新聞記者にその意義などを語った。

 私は決議に賛成だ。一方で、核保有国が反対し、反対派が「効果の面から、核保有国を取り込まなければいけない」と主張していることも知っている。来年から交渉を開始しても、少なくとも短期間では目標は達成されないだろう。だが、ほかにどういう選択肢があるのか。「忍耐強く、段階的に」と言いながら、何十年間も結果が出ない試みが続けられているのだ。

 (核保有国などが主張する)「段階的アプローチ」で、「冷戦時のピークから大幅に削減した」と(実績を)言うこともできるだろう。だが、それは余剰分を減らしただけだ。

 核兵器禁止条約が与える世論への影響力は、核兵器をやめるには十分ではないが、長期的には効果があるかもしれない。クラスター爆弾禁止条約、対人地雷禁止条約の例もある。生物兵器や化学兵器を禁止した1925年のジュネーブ議定書も、米国が批准するまで数十年かかったが、最後には実現した。

 (核兵器は)すでに汚名を着せられている。(その証拠に)45年以来、核兵器は使われていない。タブーがある。だが、それはもろいタブーだ。(米大統領候補の)トランプ氏はこう言ったという。「これらの兵器を持っていたら、なぜ使わないのか」と。(タブーを)強化できるものは(禁止条約などやり方が)何であれ、賛成で、望ましい。

 米国は、この決議に反対するべきではないと思う。日本は、核兵器の害悪について最も意識の高い国であり、(核廃絶の)活動を主導するのが自然だ。

 私はアジアのことを心配している。まだ破裂していない、内包された紛争があるからだ。最も最初に破裂しそうなのは北朝鮮。北朝鮮が日本の空域を突き破るミサイルを放ったとき、日本で核兵器(による武装)への賛成意見が出始めるだろう。技術的には、日本人は核兵器を即時に持てるだろうが、それは極東における政治的、戦略的な雰囲気を急激に変えてしまう。今日、最も急を要し、最も難しい交渉問題は「いかに朝鮮半島の非核化を達成するか」だと思う。(聞き手・松尾一郎)

 11 08(火) 台湾の脱原発     民意を映す政治の決断

社説 2016年10月30日
台湾の脱原発 民意を映す政治の決断
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12633424.html?ref=editorial_backnumber

 9年後に原発をゼロにする。この目標に向けて、台湾が一歩を踏み出した。日本の福島第一原発事故から教訓を真剣に学んだ取り組みであり、その行方に注目したい。

 台湾は日本と同じく、資源に乏しい。中国と対峙(たいじ)し、国際的に孤立していく緊張の中で1970年代に原発導入を図り、現在は3基が稼働している。

 だが地震などの自然災害が多いことも日本と共通する。福島の事故を契機に、脱原発の市民運動が大きなうねりとなった。建設中だった第四原発でトラブルが続いて原発政策全般への不信感が広がった面もある。

 こうした動きを受け、民進党の蔡英文(ツァイインウェン)氏は年初の総統選で脱原発を公約の一つに掲げて当選した。同時実施の議会選も民進党が過半数を占め、政策決定の障害はなくなった。関連法の改正案は年内成立の見込みだ。

 原発は台湾の発電容量の14%を占める。これから9年でゼロにするのは高いハードルかもしれない。電力不足や料金高騰を不安視する声は根強い。

 だが、李世光経済部長(経済相)は「廃棄物の問題を子孫に残さないためにどんな政策が必要かということこそを考えるべきだ」と訴える。原発問題を真正面から問う重い言葉だ。

 台湾では離島に低レベル放射性廃棄物の貯蔵施設があるが、地元の反対運動が続いている。

 原発の代わりに自然エネルギーの比率を今の4%から20%にする。主力は太陽光と風力だ。蔡政権が方針を明示したことで産業界は動きやすくなる。関連分野の雇用への期待が高まる。22年に原発をなくすドイツでも同様の動きが起きている。

 台湾企業は新技術を素早く吸収し、普及しやすいものへ改良するのが得意だ。節電のノウハウも磨く余地があろう。台湾と関係が深い日本企業にとっても好機ではないか。

 原発が国民党独裁政権下で始まった事業であったのに対し、民進党は以前から反原発の姿勢で、電力事業へのしがらみがない。政権交代がそのまま政策転換を生む形になった。

 台湾社会ではすでに原発を疑問視する声が主流だった。前の国民党政権も、世論に押されて第四原発建設を凍結した。脱原発は、政治が指導力を発揮したと同時に、政治が民意を正確に反映した結果といえる。

 日本でも原発の再稼働への懸念は強く、最近も鹿児島、新潟両知事選の結果に示された。しかし国策に大きな変化がないのはなぜか。台湾の決断は日本のさまざまな問題を考えさせる。

 11 08(火) 子育ての理想と現実     1悲鳴

フォーラム 2016年10月30日
子育ての理想と現実
      1 悲鳴

      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12633424.html?ref=editorial_backnumber

 今回のテーマは「子育ての理想と現実」です。女性の社会進出が進み、共働きが増える中、子どもを産み育てることと、働くことの間にどんな壁が立ちはだかるのでしょうか。まずは、子育て体験者から寄せられている多くの疲弊と葛藤の声、制度の矛盾を訴える声、子どもにとって何が大事かという声を紹介します。

 ■体力・キャリア、募る不安

 アンケートに寄せられた声の抜粋です。

     

 ●「本当は週に2~3日働いて子どもを保育園に預けたいけれどそれでは保育園に入れない。今は仕方なく毎日働いているが、自分の体力がいつまで持つのか不安。夫は深夜に帰ってくるので1人で子育てしている状態。過労死しなければ理解してもらえないと本気で思っている」(東京都・40代女性)

 ●「子どものことを考えると18時ごろには仕事を終えて帰宅したいが、そんなに早くは帰れない。上司や同僚に言いにくいし、自分だけ仕事量を減らしてもらうのも心苦しく感じる。給料が少し減ってもいいから、早く帰りたい。しかし、子どもができて生活に必要なお金が増える人が給料減るって、なんか悲しい」(愛媛県・30代女性)

 ●「『小さい子どもがいても構わない』と言われて子どもが1歳過ぎで再就職しましたが、度重なる発熱に欠勤を余儀なくされました。土日にも『風邪を引かせてないか。月曜は確実に出るのか』と会社から電話までかかって来る始末で、挙げ句の果てには『休むなら代理を探せ』とまで言われました。『次、子どものことで急な欠勤があったら、契約更新しない』と言われ、働きにくいと感じました」(大阪府・40代女性)

 ●「周りの女性を見ていても、産休、育休、時短勤務期間を終え会社に戻っても、きっと望む働き方はできないのだろうな、と、自分のキャリア形成に関して不安を感じます。近くに頼れる身内もいませんし、なおさらです。子供を作ることにも消極的です」(愛知県・20代女性)

 ●「希望の保育所に預けるために育児休暇を途中でやめ、こども2人とも0歳児4月入所で保育所に入りました。年度途中入所なんて無理だし、1歳児4月入所は狭き門……保育所に入るため出産の時期も調整しました。いつ産んでも、年度途中でも保育所に入れる環境を望みます。ただ規制緩和による保育枠の拡充だけでなく、保育の質も保ってほしいです」(大阪府・30代女性)

 ●「出産を機に退職してしまうと、いざ社会に出ようと思う時に様々な困難にぶつかる。今更ながら、離職せず、産休取得にしておけばよかったと後悔。3歳までは、家庭でじっくり子どもと向き合い、子ども中心の生活を楽しもう……と思い専業主婦の道を選択した。この3年間は、何にも代えられないが、現状を思うと……」(山口県・30代女性)

 ●「近隣との関係がない中で孤独に子育てをしている専業主婦もいます。ひとりで家事育児することは精神的体力的にかなり無理があります。就労家庭の子どもの受け入れ先を作ることだけではなく、子育てをしている専業主婦への子育て支援などが当たり前にできるように、企業などへの補助を手厚くし、社会のしくみを変えていくべきと思います」(東京都・40代女性)

 ●「ワーママの同僚を見て、みんな頑張りすぎて病気にならないだろうかと心配です。育児や家事があればその分仕事量が減るのは当たり前。迷惑など気にせず、この時期は重要な社会貢献しているんだからと平気な顔をし、周りもそれを認めてゆったり構えられる職場の雰囲気が大事だと思います」(神奈川県・40代女性)

     

 ■家事と育児、軽くみないで

 ●「『子育て』は、誰がやるべきかを夫婦ともに認識するべきだと思います。母親が家事、育児をやり、父親が『手伝う』は、大きな間違いです。仕事に出て、学校行事、地域行事を含む子育てをして、家では炊事、洗濯……女性を『使う』ことしか考えない社会構造はどこかおかしいと思います」(千葉県・40代女性)

 ●「最近、共働きを推奨する流れが一般的になってきていますが、子育てに関して、母親の代わりは誰にもできないと、強く思います。子供が望むのは、母親との時間、まなざしだと感じます。私が幼少の頃に感じていた、あの寂しい何とも言えない気持ちを味わってほしくない思いでいっぱいになります。家事と育児を、軽く考えている方々が多いと感じます。子供の心が健全に育つためには、何が大切かを考えていきたいです」(神奈川県・40代女性)

 ●「両親が共働きしないと子育てできるお金が得られないことが問題だと思う。自分がメインで働き、妻が家にいてメインで子育てを担当してやっていけている。完全に分業ではなく、夜や休日は自分も子育てに携わるし、妻も在宅の仕事で少しのお金を得ている。昔ながらの男女の役割分担でうまくできている。扶養手当の削減だとか女性を無理やり労働者にするような、余計なことをしないでほしい」(広島県・30代男性)

 ●「制限された働き方の中で他者のサポートに入ったりとペースをつかみながら仕事をしている。上司は期待をしてくれているからか早く前線に立って仕事をして欲しいと持ちかけてくるが家庭も仕事もバランスが取れてると説明しても、上を目指せと求められる。子育て期は他者のサポートに徹するという選択肢もあると思うのだが理解してもらえない」(東京都・30代男性)

 ■共働きは増えたのに…

 戦後、子育てをめぐる社会の状況は大きく変わってきました。

 高度成長期に農村部から都市部へ人口が移動し、急速に核家族化が進行。サービス産業の増大など産業構造の転換に伴い、女性が働く機会が増えていきました。1986年には男女雇用機会均等法が施行。当時主流だった専業主婦世帯の数を90年代半ばに共働き世帯が追い越しました。重要な仕事を担い、結婚や出産をしても働き続ける女性が増えています。

 共働きの増加には、経済的な要因もあります。若い世代の所得は伸び悩んでいます。総務省の調査によると、30代の雇用者の年収は、97年には500万~699万円の割合が23.7%と最も高かったですが、2012年には300万~399万円が18.9%と最も高くなっています。経済の行き詰まりを背景に、25~34歳の非正規雇用の割合は15年で男性が16.5%、女性は41.3%と高止まりしています。

 ■男性の育休2.65%

 一方、高度成長を支えた「夫が働き、妻は家庭で子育て」という性別役割分業意識は、いまも根強く残っています。16年版の男女共同参画白書によると、6歳未満の子を持つ夫の約7割が育児をしていません。実際に夫が家事や育児に費やす時間は1日67分。先進国で最低水準です。

 背景には、男性中心の長時間労働を前提とした働き方の問題が指摘されています。週60時間以上働く人の割合は、子育て期と重なる30~40代の男性で高いことが分かっています。その中で、独りで育児不安を抱えたり、保育園の順番待ちが続いたりという負担が、女性たちにのしかかっています。15年度の雇用均等基本調査によると、育休取得率は女性が81.5%、男性が2.65%。国立社会保障・人口問題研究所の調査では、妊娠時に働いていた女性で、育休をとって復職した割合は正社員でも約6割です。

 こうした不安は子どもを授かること自体に影を落としています。1人の女性が一生に産むと見込まれる子どもの数を示す合計特殊出生率は15年で1.46。同年の出生動向基本調査によると、妻の年齢が50歳未満の夫婦に尋ねた理想的な子どもの数は2.32人、実際に持つつもりの数は2.01人と過去最低になりました。

 ひとり親家庭も増えています。男女問わず、それぞれのライフステージや価値観にあわせて望む子育てができる社会へのカギは何か。みなさんと考えていけたらと思います。

 (足立朋子、及川綾子)

       ◇

 今回のアンケートでは、女性側から、悲鳴のような投稿が多数寄せられています。こうした女性の現状を、男性側はどう思いますか。ぜひご意見をお寄せください。

 ◇次回11月6日は『子育ての理想と現実:2 3歳児神話』