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続折々の記 ⑩
【心に浮かぶよしなしごと】
【 01 】10/15~ 【 02 】10/18~ 【 03 】10/24~
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【 07 】11/14~ 【 08 】11/16~ 【 09 】11/26~
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【 04 】11/01
第3回 介護職、有効求人倍率48倍の深刻さ このままではサービス困難に
第4回 いくらためたら安心できるの? 「老後2千万円問題」の意外な正体 第5回 塾代を減らせと言われても…「聖域」の教育費、そびえる学歴社会 危機の時代に
行動を求める若者 党・議員の取り組み、高2落胆
液体ガラスとは何か?
2021/11/01
日本経済の現在値
日本経済の現在値(3/5) 10/21第3回
全5回日本経済の現在値
衆院選は、各政党が様々な数字を挙げ、経済政策をアピールします。賃金や子どもの教育費、親の介護費用……そうしたこの国の経済にまつわる様々な疑問に答えるため、「現在値」を5回にわたって掘り下げます。
第1回
韓国に抜かれた日本の平均賃金 上がらぬ理由は生産性かそれとも…
この30年間、日本は賃金が変わっていないと聞いた。しかも、海外と比べると、さらにぎょっとする。いつの間にか、先進国でも平均以下となり、差が大きかったお隣の韓国にも追い越された。どの国も上がっているのに・・・[続きを読む]
2021年10月20日 10時00分有料会員限定記事
第2回
日本の転職はキャリアアップにならない? 給料減、驚きのデータまで
最近、テレビやインターネットで転職業界のCMや広告をよく見るようになった。まわりでも若い人の転職が増えた気がするが、実際はどうなのだろう。海外では賃金などの条件がいい会社へと転職を繰り返し、キャリアア・・・[続きを読む]
2021年10月21日 10時00分有料会員限定記事
第3回
介護職、有効求人倍率48倍の深刻さ このままではサービス困難に
誰しも受ける可能性がある介護保険サービス。記者(26)の80代の祖母2人は認知症で要介護5、祖父1人も身体障害で要介護3とそれぞれ判定され、特別養護老人ホームなどに入所する。家族にとっては重い介護の負・・・[続きを読む]
2021年10月22日 10時00分有料会員限定記事
第4回
いくらためたら安心できるの? 「老後2千万円問題」の意外な正体
コロナ禍で家計が苦しくなった世帯は多いはず。そんな中でも、働く世帯の平均の貯蓄額は増えている。年金は十分もらえるのか、会社をクビにならないか、まとわりつく将来への不安が財布のひもをきつく締めているよう・・・[続きを読む]
2021年10月23日 10時00分有料会員限定記事
第5回
塾代を減らせと言われても…「聖域」の教育費、そびえる学歴社会
「公立か私立か」「塾はどうしよう」――。教育とそれにかかる費用は、子育て世代の悩みのたねだ。私立中学校が多い都市部では、中学受験をする家庭も多く、教育費の負担が昔よりも増えたとも聞く。2児の父である記・・・[続きを読む]
2021年10月26日 10時00分分有料会員限定記事
誰しも受ける可能性がある介護保険サービス。記者(26)の80代の祖母2人は認知症で要介護5、祖父1人も身体障害で要介護3とそれぞれ判定され、特別養護老人ホームなどに入所する。家族にとっては重い介護の負担。両親はサービスがなければ仕事は続けられなかったと口にする。
介護職、有効求人倍率48倍の深刻さ このままではサービス困難に
70万人近い介護職員の不足――。厚生労働省が7月に出した推計がある。高齢者数がほぼピークとなる2040年度には約280万人の職員が必要だが、19年度の現状と比べると約69万人足りないという。このままだと、サービスが十分受けられなくなりそうだ。
【写真・図版】介護職員の不足が見込まれている(厚生労働省の資料から)
なぜ介護職員は増えないのか。まず処遇について調べてみた。
介護の仕事は3K(きつい、汚い、危険)といったイメージをもたれやすいことに加え、賃金の安さも指摘されている。国は介護サービスの公定価格「介護報酬」に加算するしくみをつくり、職員の給与を上げやすくしたが、介護職員の19年の平均給与は28・8万円で、全産業(役職抜き)の37・3万円と比べて8・5万円少ない。人手が集まらない一因とされる。
介護の人手不足は深刻で、記事後半では対応などを考えます。国は働く人の収入増に向け、公的価格の見直しを掲げていますが……
高齢者施設の施設長に取材すると、こんな数字を聞いた。「特に都市部の人手不足は本当に深刻だ。有効求人倍率は50倍近い」。有効求人倍率は求職者1人に何件の求人があるかを示す。東京労働局によると、都内の品川、港両区を担当するハローワーク品川では、介護関連職種の倍率が実に48・01倍(8月分)。両区に本社を置く事業者が多く、他地域より求人数が多いという事情はあるが、ここまで上昇している。
全国では、20年度の介護関連職種の有効求人倍率は平均3・86倍と全産業の1・01倍の4倍近い。都道府県別で最も高いのは東京都の6・15倍。愛知が4・80倍、大阪が4・70倍と大都市圏を中心に高い傾向だ。
【写真・図版】仕事を探す人(1人あたり)に対する求人数の割合は介護関連で高い(厚生労働省のデータから)
こうした人手不足は、介護事業の経営に影響しないのだろうか。東京商工リサーチの調査では、20年の老人福祉・介護事業の倒産件数は全国ベースで過去最多の118件にのぼり、半数近くが人手不足が著しい訪問介護事業所だった。新型コロナウイルスの感染拡大前から倒産は増加傾向だったが、そこに感染を懸念する利用控えなどが追い打ちをかけた。
東京都北区で訪問介護などを提供する介護事業所の女性管理者は、この4~5年、ヘルパーから応募が来ていないとし、「都市部にはもっとよい条件の仕事がある」と説明する。
事業所にはピーク時で約100人の登録ヘルパーがいたが、現在は10人ほど。全員女性で平均年齢は70歳近く。事業の収入を安定させるためには、より利用者を回る頻度を増やす必要があるが、高齢のヘルパーでは体力的に難しい。負担のしわ寄せを受けた若手が辞めるようになり、さらに経営を圧迫しているという。
人手不足で回らなくなっている介護の現場。外国人材の受け入れ、ロボットの導入などの対策が講じられてきたが、抜本的な改善はみられない。介護サービスを利用しにくい状況は、家族らを自ら介護するために仕事を辞める、いわゆる「介護離職」をする働き手を増やす可能性がある。
厚労省の雇用動向調査を見てみた。すると「介護・看護」を離職理由に挙げた人は19年に10万人を超え、10年前の2倍近くだった。
介護離職が広がると、どんな影響が生じるのか。大和総研の石橋未来研究員のリポートでは、「介護離職が増加すれば企業にとっては人材流出となるだけでなく、労働力不足の問題をいっそう深刻化させ、経済の減速につながることも懸念される」と分析している。
また経済産業省の18年の試算(総務省・就業構造基本調査)によると、介護離職に伴う経済全体の「付加価値損失」は、年間約6500億円に達する見込みという。
介護負担の拡大による労働力の減少、そして経済の停滞。この課題にどう向き合うのか。まずは人材を育成したり、確保したりする方法を見直し、介護サービスの提供の場を増やすことが重要だ。
国はどう対策を打つのだろうか。介護現場などで働く人の収入増に向け、サービス料金の元となる公的価格の見直しを掲げている。
ただ、これは簡単ではない。引き上げるとその分、利用者の負担増も避けられないからだ。65歳以上が支払う介護保険料の基準額の全国平均(加重平均)は21年度に月6千円を突破。00年度に介護保険制度がつくられたときの2倍以上となった。ニッセイ基礎研究所の三原岳主任研究員はこれ以上の保険料の引き上げは難しいとし、「給付範囲の見直しや税財源の確保・投入など財源論も含めた幅広い選択肢を検討し、制度のあり方そのものを与野党で議論してほしい。政争にしてはいけない」と話す。
改善すべきことは収入を増やす以外にもある。
東京都練馬区にある訪問介護事業所「みんなのかいご」代表の加藤均さん(54)は、家事援助をする介護スタッフ向けの研修を実施する区に対し、子育て中の人も参加しやすい時間に設定するよう他の介護事業者とともに提案。その結果、研修は原則、午後3時までで終わり、託児サービスが付くようになった。
介護の仕事を始めるハードルを下げたことで、研修を受けた人が加藤さんの事業所で働くようになったという。加藤さんは「待ってても人は来ない。事業所が行政と連携し、人材創出するしかない」と強調する。
介護労働安定センターの介護労働実態調査(20年度)によると、介護関係の仕事をやめた理由は「人間関係」が最も多い23・9%で、次が「結婚・出産・妊娠・育児」の19・9%。「収入」は15・6%だった。育児支援や風通しのよい職場づくりに施設側が取り組めるよう、行政の後押しも求められている。
介護職員が69万人も不足するとされる19年後。そのとき記者の父は77歳、母が76歳。今の介護の現場が続けば、都市部を中心に介護サービスの提供が難しくなる。人手確保に向けた取り組みは一刻を争う状況だ。(石川友恵)
第4回
コロナ禍で家計が苦しくなった世帯は多いはず。そんな中でも、働く世帯の平均の貯蓄額は増えている。年金は十分もらえるのか、会社をクビにならないか、まとわりつく将来への不安が財布のひもをきつく締めているようだ。でも実際、いくらためたら安心できるのだろう。
いくらためたら安心できるの? 「老後2千万円問題」の意外な正体
総務省の家計調査によると、2020年の2人以上の現役世帯の貯蓄額の平均は1378万円で過去最多。10年前と比べて1割(134万円)も増えている。
【写真・図版】働く世帯の平均貯蓄額は増えている(2人以上の世帯、総務省家計調査)
「みんな、そんなに貯金しているの?」というのが実感だが、中身をみると見方は変わってくる。この額に届いていない世帯が3分の2を占めており、富裕層の貯蓄額が平均値を押し上げているというわけだ。逆に、貯蓄額が100万円に満たない世帯も全体の11%にのぼる。
世帯ごとの貯蓄額を並べてちょうど真ん中の数字で、より世帯全体の実感に近い「中央値」は826万円。ただ、それでも10年前の743万円と比べて1割増えている。
記事後半ではなぜ日本国民が貯蓄に精を出すのかについて、データを参照しながら明らかにしていきます。
この間、収入の平均は月額52万円から61万円になり、17%伸びた。この10年で、共働きが増えたことなどが理由だ。一方、支出は41万円から42万円と2%しか伸びていない。使えるお金が増えても貯蓄にまわす世帯の姿が浮かぶ。
貯蓄の約6割は預金で、これは10年前とあまり変わらない。日本銀行の調査によると、米国では現預金は13%に過ぎず、株式と投資信託で51%を占める。預金しても金利はほとんどつかないが、日本人はリスクが伴う資産運用に及び腰。政府が旗を振る「貯蓄から投資へ」は進まない。
なぜここまで貯蓄に精を出すのだろう。金融広報中央委員会が20年に実施した調査では、「老後の生活資金」を選んだ世帯が70%で最多だった。「病気や不時の災害への備え」(60%)、「こどもの教育資金」(30%)が続いた。
【写真・図版】金融資産の保有目的は「老後の生活資金」がトップ(金融広報中央委員会調べ)
過去の調査と比べると、これらの理由のうち最も伸びているのが「老後の生活資金」だ。2000年の55%から15ポイント増加し、老後の不安が切実さを増していることが見てとれる。
安倍政権から続くアベノミクスのもとで株高が進み、企業収益の改善につながったことは事実だ。ただ、庶民に成長の果実がしたたり落ちる「トリクルダウン」は起きておらず、多くの人が恩恵を実感できていない。
老後の心配に拍車をかけたのが、2019年の「老後2千万円問題」。年金だけでは老後の生活費が足りず、退職後に30年の人生があれば赤字総額は約2千万円になる――。そんな試算を金融庁審議会が明らかにし、大きな話題になった。
毎年100万円ためても20年もかかるが、本当にそこまで必要なのだろうか。
金融商品を一切売らない独立系のファイナンシャルプランナー、岩城みずほさんに尋ねると、意外な答えが返ってきた。最近のデータで試算し直すと、「2千万円問題」は「1200万円」に変わるらしい。
どういうことか。2千万円の根拠は17年の家計調査における高齢夫婦世帯(無職)の平均収支だ。毎月の収入は20万9千円、支出は26万3千円なので、毎月5万4千円の赤字だ。これが30年続けば、不足額は計約2千万円になる、という計算だ。
これを19年のデータで計算し直すと、不足額は約1200万円になる。収入は約3万円増えているのに、支出は約7千円しか増えなかったためだ。さらにコロナ下の20年は、政府による10万円給付で収入が約25万7千円に増えた一方、外出自粛などの影響で支出は約25万9千円に減少。毎月の赤字が1500円ほどになり、30年分の不足額は約55万円。「2千万円問題」が、あっという間に「55万円問題」に一変してしまった。
給付金を加味した55万円は極端な例だろうが、岩城さんは「2千万円という数字にとらわれても無意味」と言う。確かに、これだけブレる平均値に一喜一憂する必要はなさそうだ。
そもそも、人によって老後の暮らし方は大きく違う。「仮に月5万円不足するなら、それなりの生活をして支出を減らせばいい。大切なことは、どんな生活がしたいか考え、一人ひとりが必要な貯蓄額を知り、適切に備えることです」と教えてくれた。岩城さんが代表を務める「オフィスベネフィット」のホームページでは、人生設計に応じた毎月の必要貯蓄額が無料で計算できる。
とはいえ、将来が楽観できるわけではない。ニッセイ基礎研究所の高山武士・准主任研究員は「働く世帯の貯蓄が積み上がっているのは、賃金や物価が上昇していく経済成長への期待が剝落(はくらく)した結果だ。雇用への不安を抱える人も増えており、将来への期待を回復させるのは相当難しい」と指摘する。
日本の貯蓄額の合計は今や1900兆円。お金が消費にまわらずに、ますます貯蓄が増える状況は、経済成長の足かせになる。
衆院選では、成長の果実をどう分配するかなどの経済政策が焦点になっている。だが、昨年に国民に一律に配られた給付金10万円の多くが貯蓄にまわったという調査結果もあり、財布のひもは簡単には緩まない。経済成長に期待が持てる政策を具体的に示さなければ、分配を消費につなげるのは難しいと言える。(筒井竜平)
第5回
「公立か私立か」「塾はどうしよう」――。教育とそれにかかる費用は、子育て世代の悩みのたねだ。私立中学校が多い都市部では、中学受験をする家庭も多く、教育費の負担が昔よりも増えたとも聞く。2児の父である記者(40)も、子どもによりよい教育を受けさせたいと思ってはいるものの、いったいいくらぐらいかかるのだろうか。
塾代を減らせと言われても…「聖域」の教育費、そびえる学歴社会
まず、幼児教育から大学卒業まで、総額いくらかかるのかを調べてみた。高校までの教育費をまとめた文部科学省の「子供の学習費調査」(2018年度)と、高等教育の費用を集計した日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査」(20年度)を使い、塾や習い事の費用も含む平均的な教育費の目安を計算した。
すると、幼稚園から大学まで、すべて国公立の場合は最も少なく、子ども1人あたりの教育費は1078万円だった。中学から大学まで私立で、大学が文系学部なら1674万円、すべて私立なら2533万円に上る。私立の時期が長いほど、教育費も高くなる。
私立が高い要因の一つが授業料だ。公立の小・中学校はかからないが、私立の小・中学校では共に年40万円以上かかり、この時期の学校教育費の4~5割を占める。私大の授業料は年平均91万円(19年度)に達し、国立大より7割高い。
【写真・図版】大学卒業までにかかる教育費
塾や習い事などの「学校外活動費」の負担も重い。文科省によれば、公立中学に通う世帯では、教育費の63%が塾代を中心とした校外活動費に充てられ、特に高校受験がある中3の年には41万円に上る。私立小学に通う世帯は、中学受験がある小6の年の出費が際立ち、塾代などの校外活動費が86万円に達する。
教育費をめぐっては塾代などの費用も家庭に重い負担となっていますが、そうした費用を抑えることはできないのでしょうか? 探ってみると日本社会が置かれた現実が見えてきました。そうした実態を記事後半で紹介します。
では、こうした教育費は昔より増えているのだろうか。高校までの教育費を比較可能な06年度のものと比べると、すべて公立の場合は、高校授業料の実質無償化などで30万円減ったが、すべて私立の場合は151万円も増えていた。おもに小学校時代の塾代や授業料が増えている。
大学の授業料も上昇傾向だ。1990年度には国立34万円、私立62万円、2000年度には国立48万円、私立79万円だったのが、19年度は国立54万円、私立91万円まで上がっている。少子化で生徒獲得競争が激しくなり、ほかの大学との違いを出すため、学部の新設や増改築などにお金がかかるようになっているという。
これだけのお金をどうやって工面しているのだろうか。国が提供する低金利の教育ローンを活用する世帯の一部に、公庫がローンを組んだ理由を聞くと、最も多かったのが「(学費などを)貯蓄でまかないきれない」と回答している。教育費に詳しいファイナンシャルプランナーの豊田眞弓さんに聞くと、やはり多くの家庭がかなり無理をして費用を捻出しているようだ。「塾や習い事の掛け持ちを減らすよう助言しても、教育費は『聖域』だとして触れたがらず、結果的に自分たちの老後資金がほとんどためられていない親も少なくない」という。
そこまでするのはなぜなのか。調べてみると、学歴社会の厳しい現実が見えてきた。最終学歴によって、一生涯に稼ぐお金がどれぐらい違うかを調べた労働政策研究・研修機構の調査(18年)をみると、大学・大学院卒のフルタイム正社員として働く男性が60歳までに稼ぐ生涯賃金は計2億7千万円。それが高卒の場合は6千万円少ない2億1千万円、中卒はさらに少ない2億円だった。女性も同様の傾向だった。
【写真・図版】最終学歴別の生涯賃金
これをみると、多少無理をしてでも大学に行かせたくなる親心も理解できる。しかし、子どもが多い場合など、どうしても負担できない家庭もあるはずだ。教育社会学が専門の神戸学院大の都村聞人(もんど)准教授が、大学または大学院に通う子どもがいる世帯の手取り収入(可処分所得)に占める教育費の割合(19年)を試算したところ、子ども1人ならば13・8%、2人なら24・2%、3人以上なら30・9%に達した。「多子世帯では弟や妹に4年制大学への進学を諦めさせたり、就職させたりする『進学調整』がいまだに行われている。小中学校の塾代を出せるかどうかも教育格差の原因になり得る」と語る。
政府は何もしていないのだろうか。調べてみると、政府も近年、幼児教育・保育の無償化や高校授業料の減免、大学進学の負担軽減策などを行っていた。たとえば、20年度からは住民税非課税世帯などを対象に、大学授業料を減免したり、返済不要の奨学金を出したりした。非課税世帯の大学などへの進学率は40%から48~51%(文科省推計)に上がったといい、成果も出始めている。
しかし、その総額には少なすぎるという批判も多いようだ。経済協力開発機構(OECD)の21年の統計をみると、日本の教育機関向けの公的支出の国内総生産(GDP)比は4・0%で、OECD平均を下回り、低水準だった。
どうしてもっと増やせないのか。財務省は「子ども1人当たりでみれば、公的支出はOECDの中でも遜色ない水準」という。だとすれば、お金の使い方に問題があるのだろうか。
教育経済学が専門の慶応大の中室牧子教授に聞くと、「教育分野では、根拠のない期待や思い込みをもとに政策判断をしている例が目立つ」と手厳しい。たとえば、文科省が教員を増やして推進している少人数学級も、学力への影響は限定的だとする科学的な研究が国内外にあり、むしろ、優秀な教員を十分に確保できずに質の低下を招きかねないと指摘。「もっと科学的な根拠(エビデンス)に基づく政策の優先順位づけをするべきだ」と話す。
人口減少で働き手も減っていくなか、経済成長を支えるうえでも教育への投資は欠かせないと、政府は以前から言っていた。ところが、現実には、親の所得が教育格差へとつながり、それが世代をこえて連鎖するという悪循環が防げていない。良質な教育の効果は、本人の将来所得を増やすだけでなく、治安や公衆衛生の向上など社会全体におよぶとされる。こうした前提を共有したうえで、教育費の負担をどう分かち合うべきかを議論し、悪循環を断ち切る実効性のある政策が求められている。=おわり(榊原謙)
2021/10/19
気候危機、行動を求める若者 党・議員の取り組み、高2落胆
(危機の時代に 2021衆院選:3)
【写真・図版】浜松市の8月の平均気温の推移
「気候非常事態宣言都市にして下さい!」「私たちの未来を私たちで作ろう」
制服姿の生徒たちが、画面に向けてメッセージを掲げる。9日、浜松開誠館中・高(静岡県)の生徒が企画したオンラインイベント。気候危機について、若い世代の声を政治に届けようと呼びかけた。
浜松市では昨年8月、国内最高気温に並ぶ41・1度を記録。夏場、屋外の部活動も年々厳しくなっている。
日本は菅政権の下、昨年10月に、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの実質排出ゼロ)を宣言。国連に30年度に13年度比46%削減するという目標を提出した。
ただ、選挙を前に、政治家の気候危機への考え方が見えてこない。「まだ大きな問題だと思っていないのか」。主な政党にアンケートを出し、9政党のうち8政党から回答が来た。実行委員長の山田裕翔さん(高2)は「若者が真剣に考えていると思ってくれたのか、これから選挙権を持つからイメージを気にしたのかな」。
尋ねたのは、(1)46%の削減目標の評価(2)効果的な排出削減対策(3)気候危機に対する各党や議員の活動、の三つだ。46%減の目標について、与党の自民・公明は「野心的」だと評価。日本維新は過度な規制による産業流出を招かないよう、技術革新と雇用創出を訴えた。一方、立憲民主と共産は、目標は不十分という立場だ。それぞれ55%以上削減、50~60%削減を目指すべきだと提言した。
生徒には物足りなかったようだ。佐々木涼翔さん(高2)は、党や議員の取り組みにがっかりした。紙やペットボトルを減らすなど、学校でもやっていることばかりだったからだ。「大人にしかできない、国会議員にしかできない規模で取り組んで欲しい」。上嶋波矢都さんは「未来を作るのは技術だ。次の技術への支援をお願いします」と訴えた。(香取啓介)
(3面に続く)
▼3面
「私たちの未来」脱炭素へ声 若者ら、政党招き討論会や政策提言
【写真・図版】気候危機に対する各党のスタンスは?/気候変動対策は経済に良い?悪い?
(1面から続く) 深刻化する気候危機について、政治に声を上げる若者たちが各地で増えている。2018年、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(18)が始めた学校ストライキをきっかけに火がついた。「Fridays For Future」(未来のための金曜日)運動となり、気候マーチと呼ばれるデモ行進などが世界に広まった。
日本でも行われるようになった街頭での訴えは、選挙で議員を選ぶ議会制民主主義ではすくいきれない声を届ける「政治参加」の手段の一つになりうる。
今回は、運動が盛り上がってから初めての衆院選。政党や候補者に直接訴える取り組みが始まった。FFFジャパンは17日、各政党の政策責任者を招いた公開討論会を開いた。参加した角谷樹環さん(15)は「政治を変えることができれば、私たちの未来を変えることができる。私たちは気候変動によって死にたくない」と訴えた。
一方、気候変動のような、世界規模で長期にわたる課題に民意を反映させる方法として注目されるのが「市民会議」だ。一般市民を巻き込んで討論を重ねて政策を作る。選挙だけでは対処が難しい問題に対し、民主主義を補う仕組みとして欧州で広がり、フランスでは今夏の気候変動対策法の制定につながった。
国内でも「日本版気候若者会議」が発足した。中学生から39歳まで108人を集めて、5月から10週をかけ議論。「再エネ100%」「カーボンフットプリントの表示化」「気候市民会議の設立」など70の項目からなる「政策提言書」を作り、自民、立憲民主の各政党、経済産業省と環境省、経団連に手渡した。
事務局の会社員、西田吉蔵さん(37)は「若者だけでも考えればこれだけの解決策が出るのに、政治や企業がそこに到達できないのがもどかしい。あなたたちはもっとできるでしょ、というのを受け取って欲しい」と話す。
司法に訴える若者もいる。大阪府のエリナさん(25)は、ドイツ留学中に気候変動枠組み条約締約国会議(COP)に若者代表として参加。石炭火力に頼る日本に対して、東南アジアの市民団体が抗議活動をしていたことに驚いた。環境先進国だと思っていた日本が、かなり遅れていると批判されていた。「自分に向けられているようで、ショックだった」
帰国後に、大学の近くで石炭火力発電所の増設計画があることを知り、建設を許した国の環境影響評価の不備を訴えた行政訴訟の原告団に参加。地元住民とともに建設中止を訴える。一審は敗訴したが控訴審が続く。「市民が勝てば気候変動政策が進むと信じている」
■加速する産業界、痛みも
若者たちの脱炭素への意識の高まりは、出遅れが目立つ日本の産業界の取り組みを加速させる原動力にもなっている。経済産業省の7月末時点のまとめでは、NECや富士通、三菱重工業など124社が50年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を打ち出した。金融業界では三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)と三井住友FG、みずほFGの3メガバンクグループが50年までに投融資先を含めて、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることをめざすとしている。対応が遅れた企業は、将来的に融資を受けられず、事業が成り立たなくなるとの危機感がある。
一方、脱炭素で痛みを伴う業界もある。ホンダは40年までに全ての新車をCO2を出すエンジンを使わない電気自動車(EV)などにすると発表した。
下請けとして、エンジン部品を製造する栃木県内の会社長(37)は「EVになったら、作れる部品がなくなる。このまま仕事が減り続けるのか、不安だ」。
エンジン部品向けに金型の企画設計を担ってきた大阪技研は今春に自己破産した。社長だった大出竜三氏(69)は、「有望な新しい事業をみつけろ、と言われても、中小零細に自前でできる金も開発ノウハウもなかった」と振り返る。
自動車関連産業の就業人口は540万人で、就業人口全体の6700万人のうち8%を占める。日本自動車工業会の豊田章男会長は9月の記者会見で「(脱炭素が)雇用問題であるということは忘れてはいけない」と釘を刺した。
■「政党も軽視できぬ」
欧州の環境運動に詳しい京都大の宇佐美誠教授(法政策論)は、若者たちの運動について「いずれこういう時が来ると思っていた」と話す。温暖化による被害は途上国や貧しい人ほど大きく、現役世代より、若い世代ほど影響を受ける。新型コロナウイルスのパンデミックで、国を越えて危機に向き合おうとする傾向は強まったといえる。
ただ、日本は他国に比べて気候変動に対する理解度は高いが、対策はコストと見なされ、市民運動の広がりもいま一つだ。米イエール大学が2~3月に世界31カ国・地域を対象にした世論調査では、「気候変動の知識」や「将来世代への影響」などを尋ねた質問で、日本は上位10カ国だったのに対し、政策の優先順位で「とても高い」と答えた人は下から9番目と低迷。対策が「経済成長も雇用も減らす」と考える人は39%と他国と比べて多い。
宇佐美さんは、「若者は有権者として多数ではないが、各政党とも社会の変化を感じ、あなどれないと思っているのではないか。主張を直ちに実現するのは難しいが、選挙での論戦を通じて変わっていく可能性がある」と話す。(香取啓介、神山純一、長崎潤一郎)
公開日 : 2016年4月18日 / 更新日 : 2016年4月19日
液体ガラスとは何か?
液体ガラスの性質 液体ガラスの存在が世に知られるようになってきています。液体ガラスは、土木や建築の現場で、耐候性や劣化防止という角度からイノベーションを起こすのではないかと期待されています。
それでは、まず基本知識として液体ガラスとは一体何なのか?を解説します。液体ガラスは多くの誤解があることも事実です。
液体ガラスの実体を、他の似ているものとの比較で明らかにしてゆきます。
常温安定ガラスの発見
石英ガラスは自然界では2 0 0 0 ℃の温度で溶解し冷却にともない硬化しガラス化します。
1970年、ゾル· ゲル法の考案により、 シリカゲルを1 0 0 0 ℃以下の温度で溶解しガラスとして硬化させる技術が発達しました。
これは人類にとって省エネという大きな技術革新でした。
シリカゲルを1 0 0 0 ℃以下の温度で溶解しガラスとして硬化させる技術は、それでも1000 ℃近い高温を必要としました。
そしてついに、20世紀末に人類は、液状化した石英ガラスを私達の生活している温度で安定化、 硬化させる方法を見つけたのです。 常温領域でのガラス生成が可能となったのです。
石英ガラス(Quartz)
石英ガラスは石英 (SiO2) から作成されるガラスで、SiO2 純度が高いものをいいます。
溶融石英、溶融シリカ、シリカガラスなどとも呼ばれます。耐食性、耐熱性にすぐれ、非常に透明なことから、ビーカーやフラスコなど理化学用途や光ファイバーの材料などに幅広く用いられています。
石英ガラスは非晶質( アモルファス=後述)な固体で、 結晶体と同程度の大きな剛性を持ちながら、粘性は極端に高いのです。
この特性が、常温安定ガラスのメリットを生み出しています。また結晶化したSiO2( シリコン) は水晶( クリスタルCrystal) と呼ばれます。
アモルファス(Amorphous)
結晶とは、 分子が強固な結合で規則正しく配列した固体です。アモルファスとは規則正しくはないが、結晶と同程度の強固な結合の固体です。
不安定でありながら、 結晶と同程度の結合の強さを持ち、 結晶の格子欠陥のような部分的弱さがないなどの利点があります。
なお自然界において、アモルファス構造をとる物質は限られています。代表的なものに石英ガラスがあげられます。
水ガラス(高濃度ケイ酸ナトリウム水溶液)
よく液体ガラスと誤解してしまうものに、『水ガラス』があります。
通常はメタケイ酸のナトリウム塩 Na2SiO3 を言いますが、その他に Na4SiO4, Na2Si2O5, Na2Si4O9 などがあります。
水溶性で、水溶液は加水分解されてアルカリ性を示します。メリットはコンクリートの急激な乾燥を防止する、接着剤として使える効果などがあります。
水溶性があるのはデメリットで、液体ガラスの特徴である、コンクリートの改質効果は望めません。
シリコーン塗料(Silicone)
液体ガラスと似て非なるものとして、シリコーン塗料があげられます。世間ではシリコーン塗料が液体ガラス塗料と同じ性質をもつものだと思っている人も多くいます。
シリコーンは、 有機ケイ素化合物Si-O結合( シロキサン結合)を骨格としますが、その周囲を有機基( 炭素Cと水素Hの化合物)が覆う構造Si-Oの無機の性質とC-Hの有機の性質を併せ持ちます。
有機基が紫外線劣化します。
シラン系含浸材(silane、 水素化ケイ素)
シランとはケイ素の水素化物で化学式SiH4です。
シラン系含浸材は主成分がシラン· シロキサン系化合物を使った有機結合による含浸材です。
公共工事のコンクリート改質剤はシラン系がその多くを占めます。そのメリットは含浸部において、撥水するのが特徴です。
しかし有機化合物であるため、シラン系含浸材は紫外線劣化する欠点を持ちます。
無機と有機
一般に有機と言われるものは、内蔵を指すオーガンという言葉からとって、オーガニック「有機」と呼ばれます。
それに対して、 石ころや砂のようなものが「無機物」といった言葉で日常に使われています。 要するに有機は【生き物】無機は【無生物】というカテゴリーで分けることが理解しやすいでしょう。
無機化学と有機化学
有機化学とは炭素化合物を扱った化学です。 反応性に富み、 アルコールやたんぱく質など、人間生活とは切つても切れない関係にあります。
有機野菜などいい意味合いも持っていますが、藻、カビ、 細菌が繁殖し、 劣化・腐食など、デメリットがあります。
無機化学は、有機化学以外の、 鉄、 水、 砂など自然界に安定して存在する元素を主に対象とする化学です。
化学的に安定しているため、劣化・腐食が少なく、耐菌性に優れるなど、 無機物ならではのメリットがあります。
ちなみに 無機物の中で人体に必要不可欠な物質がミネラルです。
有機塗料と無機塗料
現在では、石油から人工的に種々の有機物が作られます。これをレジンつまり、有機樹脂と呼びます。
この有機樹脂を加工して製造された塗料を有機塗料といいます。原料として有機樹脂を使用していない塗料を無期塗料といいます。
有機塗料と無機塗料の物質特性は、それぞれが相反する性質を持ちます。
有機塗料は、紫外線や水による変化があります。 即ち変化しやすい不安定な物性でなのです。
一方、 無機塗料は加工し難い反面、 紫外線や水に変化し難い安定した物性を持ちます。
無期塗料が求められている理由
もう取り返しのつかない、地球環境問題は解決できるのでしょうか?
地球温暖化は有機溶剤の燃焼処理も一つの原因であることが、明らかになってきました。
ですから、塗料や建材などについても、環境、安全、健康への配慮がされているか、人々の関心が高まっています。
塗装業界も手をこまねいているわけではなく、「 環境配慮型塗料」無溶剤、長期耐久塗料の開発に力をいれています。
ライフサイクルコストの低減、 環境負荷低減に繋がる「 無機塗料」 はそのような問題の一つの解答になると考えています。
液体ガラスのメリット
ここまで、液体ガラスとは一体どんなものなのかを明らかにしてきました。では液体ガラスを使うとどんなメリットがあるのかを書いてゆきたいと思います。
液体ガラスは大きく分けて、基材に浸透する含侵系と塗膜を形成する塗料系に分かれます。今回はこの二つに共通する一般的なメリットについて述べます。
耐久性(強度・防塵)がすごいことになる
液体ガラスの塗膜や含侵は、不溶性結晶体を形成するので、防水性及び表面強度の増大が図られます。
耐候性向上・劣化・腐食防止が本気
耐候性が向上し、紫外線による劣化を制御します。また水分の浸透を防止して、凍結融解サイクルによって発生するクラックを防止します。
またUVテスターによる耐候性試験では、なんと表面光度が14000時間以上(約300年相当)という信じられない試験結果を出しています。
耐候性向上・劣化・腐食防止が本気耐汚染性、排気ガスやPM2.5も怖くない
無機質の塗膜は有機汚染物質との相溶性がありません。排気ガスやラッカスプレー等の落書きに対しても被膜と汚れの一体化がないため、洗浄が容易になります。
密着性がすごい
無機の基材に関しては、無機と無機の相性がよく、含侵にしても塗膜にしても、基材と一体化します。有機物の上でも、専用プライマーを使用することにより、大きな密着性を保ちます。
カビ・菌類の抑制
無機質で形成される液体ガラスは、カビや菌のエサとなる有機物が含まれていないため、カビや菌類の繁殖を抑制します。生物汚染に対する効果も実証されています。
コストの削減
メンテナンスフリーで高耐久性のため、抜群の経済性を誇ります。
安全性
液体ガラスは完全無機質であるため、ホルムアルデヒド、キシレン、ベンジン、トルエン、シンナー、鉛などの有害物質とは相いれません。かた完全硬化後の被膜も無機質以外の物質を含みません。
科学的・生理的に安定しており、不活性で人体・動物など生命体に影響を与えません。
どうでしょうか?液体ガラスのことがよくわかるようになりましたでしょうか?
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