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【 05 】04/18
4月の異名
安田徳太郎の説
オメガ3脂肪酸
ロシア「マリウポリ掌握」 市民ら避難する製鉄所、封鎖指示
ウクライナは否定、抵抗続ける
ICBM実験、欧米を牽制 ロシア 米は冷静、緊張回避
製鉄所、難攻不落の要塞に
ウクライナ巡り米中応酬 国防相、バイデン政権下初協議
空也を運ぶ 天声人語
敵基地攻撃能力→反撃能力に改称 民提言案 反撃対象の拡大、懸念
問われる専守防衛との整合性 自民提言案の「反撃能力」、敵の第1撃前でも
2022/04/18
折に触れて
昔まだ16才のころ、予科練へ行くためにパンツ一つの裸の写真を撮ったことがある。 その写真は緊張したのか右肩が左より高かったのです。
それはそのままでこの年になるまで気にもしていなかった。 この頃居間でズボンをはいてから靴下をはくため、裾をめくりあげているうち左のズボンの裾が1cmほど短いのに気が付いたのです。
あの写真の左肩が高かったのは、緊張ではなくもともと産んでくれた体がそうなっていたのか分かりました。 そんな違いにわかる人は一人もいなかったのです。 以上終り。
最近卯月皐月も終わりに近づいて、「夏も近づく八十八夜 ……」夏の暑さが思いやられるようになった。 坪庭の花桃の花ざかりは過ぎ若葉がのびてきています。 白いドウダンの花が三分の一ほど咲きました。 べにドウダンはまだ色気がありません。 一位の老木は元が二つに割れているのに、小さく分かれた幹は若々しい芽が上のほうで伸びています。
玄関前の庭先にはハナノキの葉が、薄いピンク色になって存在を誇示しています。 車庫裏のライラックは一間余りに成長し、見事な純白の花をつけて見事になりました。
植物はあの寒い中を我慢してきたから、うれしいのだろうと思います。 将に春爛漫を楽しんでいるのです。 お彼岸頃植えつけた馬鈴薯も10cm余になりました。
ライラックは母方の叔父が磊落な気性で少年の頃から私を可愛がってくれた人でした。 長男の初節句に武者人形で祝ってくれたこともあります。 勿論今は他界しています。 細かいことにこだわらないところがあるとすれば、この叔父の感化だと思います。 ライラックの花は昔の懐かしさを呼ぶのです。
月の異名
調べてみるといろいろ解ります。
1月から12月の代表的な異名の一覧は下の通りです。
1月:睦月(むつき)
2月:如月(きさらぎ)
3月:弥生(やよい)
4月:卯月(うづき)
5月:皐月(さつき)
6月:水無月(みなつき)
7月:文月(ふづき・ふみづき)
8月:葉月(はづき)
9月:長月(ながつき)
10月:神無月(かみ(かん)なづき)
11月:霜月(しもつき)
12月:師走(しわす)
1月の異名(睦月)の意味
元々「睦び月(むつびつき)」だったという説が有力です。正月には家族・親族が一堂に集まり、親しく、睦み合いますよね。(むつみあう:仲良くする)そのため、睦び合う月、という意味で「睦び月」、これがなまって現在の「睦月」となった説です。
2月の異名(如月)の意味
これは元々は「衣更着」「着更着」といった漢字で、「重ね着をする季節」という意味だったのではないか、と言われています。「如月」という漢字は中国の2月の異称をそのまま持ってきたので、意味はありません。草木が生え始める「生更木」、草木の芽がはる月「草木張り月」がなまった、という説もあります。
3月の異名(弥生)の意味
3月の異名は、「月」がつかない「弥生(やよい)」で比較的覚えやすいですよね。この弥生は元々「いやおい」と呼ばれ意味は「(弥)いよいよ(生)生い茂る」というもの。その名の通り、いよいよ草や木が生い茂るからこの異名になった、という説が定説です。元々は意味のまま「木草弥生月(きくさいやおいづき)」と呼ばれていたそうです。
4月の異名(卯月)の意味
有力な説は、卯の花が咲く季節という意味。「う」というのは「初」「産」ということを意味しているので、1年の始まりを意味しているという説もあります。
5月の異名(皐月)の意味
5月の異名は「皐月(さつき)」。人の名前に使われることも多いですね。 元々は「早苗月(さなえづき)」とよばれ、略されて「さつき」となった説が有名です。ちなみに、異名の「皐」という字には「神にささげる稲」という意味があるそうです。
6月の異名(水無月)の意味
この頃はちょうど梅雨の明ける季節なので、どの田んぼも水を多く持っているため「水の月」→「水無月」となった説が有力。 「無」は「ない」という意味ではなく、「の」という意味だといわれています。このほか、梅雨が明け、酷暑で水が減るので「水無月」という名前になった、という正反対の説もあります。
7月の異名(文月)の意味
これは七夕の日に書物を夜気にさらし虫干しする行事があったため、文の月とよばれているという説があります。また、七夕には短冊に歌や時を書くなど、書道の上達を祈るなど何かと「文」に縁深い行事だったようです。
8月の異名(葉月)の意味
旧暦で8月は秋なので、「葉が落ちる月」という意味で「葉落ち月」が葉月となった説があります。このほかには、北方から雁が初めてくると言う意味で「初来月」「初月」という説、稲穂が張るので「稲張月」という説も。
9月の異名(長月)の意味
これについては、「秋の夜長」という意味で、「夜長月」が変化したという説が有力です。 この意味だと覚えやすいですよね。
10月の異名(神無月)の意味
独特の名前でこれも覚えやすいですね。 元の意味は「神の月」で、6月の異名・水無月と同じく、「無」は「の」という意味だといわれています。旧暦10月は出雲大社に全国の神々が集まるため、神がいなくなってしまい「神無月」になった、という説が有名ですが、これは正しくありません。
11月の異名(霜月)の意味
有力な説は「霜降り月」の略。意味はその名の通り、霜の降る寒い季節という意味です。
12月の異名(師走)の意味
12月の異名は師走(しわす)。変な読み方ですよね。 意味として有力なのは、「年が果てる」の「年果つ(としはつ)」が「しはつ→しはす」と転じたという説。師走の意味について有名なものは「師(僧侶)が仏事で忙しく走り回るから」という説がありますが、これも平安時代に考えられた、根拠のない説です。
終わりに
月の異名の一覧と、それぞれの由来・意味について見てきました。特に、神無月の意味については誤解されがちで、注意が必要です。なんかの参考になったならば幸いです。
安田徳太郎の説
http://park15.wakwak.com/~yoshimo-2/moto.43.html
④月の異名はヒマラヤ人、そのままである。
月 異名 ヒマラヤ 説 明
一 睦月 雷の月 レプチャ語で雷はブルクhbrug で、是をムヅキmdugム
ツキとも発音できる。
二 如月 鷹の月 チベット語で鷹はキラkra キサで、二月になる。
三 弥生 馬の月 レプチャ語で三月をマルニョムmarnyom 、マヨビ、バ
ヨビといい、ヤヨヒになっていった。
四 卯月 羊の月 チベット語で羊をルゥクlug という。ウ(lgの子音脱
落)ヅキは羊の月になる。
五 皐月 猿の月 チベット語で猿をサルポという。サ(猿)ツキ(月)
で六月をあらわします。
六 水無月鼠の月 チベット語で鼠をビバbyiba 、ミであるから、ミ(鼠)
ナ(の)ツキは、やはり鼠の月である。
七 文月 鳥の月 レプチャ語で鳥をフヴィfuvu、フミというからして、
フミ(鳥)ツキ(月)は鳥の月になる。
八 葉月 犬の月 レプチャ語で犬をパリpaliという。そうするとハ(犬)
ツキ(月)は犬の月になる。
九 長月 豚の月 レプチャ語でナムnam 、ナガは「輝き」でナガツキは
輝きの月、つまり酷暑の月ですじがとおる。
一〇 神無月牛の月 チベット語で牛をガンghanというからカン(牛)ナ
(の)ツキは、はっきり牛の月である。
一一 霜月 虎の月 レプチャ語で虎をササムsatan 、サシモという。だか
らシモツキはちゃんと虎の月となる。
一二 師走 勝利の月 レプチャ語で勝利をギャルgyal、ギヴァスgvasという。
つまりシハスである。
・サンスクリットでは、月はスチsuciであるが、チベット語ではジラバzlaba 、レプチャ語ではラヴォlavoになっている。そうすると、日本語の月はサンスクリットである。ところがチベット語のジラバも古代日本に持ち込まれて、シラマと発音され、やはり月の意味に使われた。
天の原 ふりさけみれば しらま弓
ひきてかくせる 夜道はよけむ 万葉集 289
オメガ3脂肪酸とは
「オメガ3脂肪酸」は目、脳、体全体の健康を考えた時、間違いなく必要な成分
この数年、日本でも目、脳、ダイエットによい、健康によい…と更にオメガ3ブームになっており、理由としては赤ちゃんから老人まで、ほぼ全ての日本人が必要とする成分で、その効果やパワーが幅広く強烈だからではないかと思います。
特に目と脳については、オメガ3としてのDHAとEPAが存在している事から、意識して摂取しようという動きが近年高まってきました。
オメガ3とは?
魚油に含まれているDHAやEPA、エゴマや亜麻種子などの植物油に含まれているα-リノレン酸などの脂肪酸の総称をいいます。
栄養学では健康のために意識して摂るべき必須脂肪酸として位置づけられており、一般的に脂肪になりにくいとされダイエットに効果的な栄養素と言われています。
血流改善やコレステロール値の低下、アレルギー抑制など幅広い効果が期待されています。
40代から備えるべき、認知症
これ以降についてはここをクリックして解説を読んでください。
2022/04/22
ロシア「マリウポリ掌握」 市民ら避難する製鉄所、封鎖指示
ウクライナは否定、抵抗続ける
ロシアのショイグ国防相は21日、ロシア軍が包囲するウクライナ南東部マリウポリを「解放した」と述べ、同市を掌握したとの認識を示した。ただ、市内の製鉄所にウクライナ兵が立てこもる状況は変わっておらず、ロシアはその制圧を待たずに市内の支配強化を進める考えとみられる。ウクライナ側は完全掌握との見方を否定している。▼3面=ICBM実験の狙い、7面=地下に巨大空間
ショイグ氏はプーチン大統領への報告の中で述べた。国営ノーボスチ通信などが伝えた。
ロシア軍は3月上旬にマリウポリを包囲したと宣言。市内に侵入し、今月半ばには都市の大半を制圧。東部の製鉄所「アゾフスターリ」に立てこもったウクライナ兵らに投降を求め、応じない場合は総攻撃をかけることを示唆していた。製鉄所には市民も1千人以上避難しているとされる。
しかし、ショイグ氏は製鉄所で抵抗が続いていることを認める一方、「平和な生活が可能になった」とプーチン氏に報告。これを受けて、プーチン氏は製鉄所への最終的な攻撃について「意味がないと考える」と述べ、中止を命じた。
ただプーチン氏は一方で同製鉄所を「ハエも通らないように封鎖せよ」ともし、ウクライナ兵らへの圧力を強めるよう命じた。
親ロシア派勢力が自称する「ドネツク人民共和国」はすでに影響下にある人物を一方的に「マリウポリ市長」に指名しており、支配体制の強化を急ぐ構えだ。
これに対し、ウクライナ側ではアレストビッチ大統領府長官顧問がSNSに「彼らは製鉄所を物理的に掌握できないことを悟った」「我々の守り手たちは製鉄所を保持し続ける」と投稿した。ロシアが製鉄所制圧を見送ったのは、支配地拡大を目指す東部ドンバス地方の北部に部隊を振り向ける目的だとの見方も示した。マリウポリのアンドリュシチェンコ市長顧問もSNSで「何も変わっていない」と指摘。「これは、ありもしない勝利を宣言したいというプーチンの願望だ」とした。
バイデン米大統領も21日、ロシアによるマリウポリの掌握について「疑わしい」との認識を示した。
「アゾフスターリ」に立てこもるウクライナ軍の指揮官は20日、各国の指導者に「500人以上の負傷兵や、女性や子どもを含む数百人の市民のすべてを安全な第三国に連れ出してもらいたい」と訴えていた。
ゼレンスキー大統領も同日、記者会見で「我々は(ロシア兵)捕虜と我々の国民との交換をする用意がある」と強調していた。
ロイター通信によると、市当局は約10万人が今も市内に取り残されていると見る。ウクライナ側は20日、90台のバスを準備して約6千人を避難させるとしていたが、ベレシュチュク副首相によると、バス4台が避難するだけにとどまった。(ワルシャワ=遠藤雄司、ワシントン=清宮涼)
▼3面=ICBM実験の狙い
ICBM実験、欧米を牽制 ロシア
米は冷静、緊張回避
ロシア国防省は20日、新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマト」の発射実験に成功したと発表した。プーチン大統領は「現代のあらゆるミサイル防衛システムを避けられる」と強調し、ウクライナ侵攻をめぐり対立する欧米を牽制(けんせい)する狙いが見える。一方、米国は「我々の取り組みには影響しない」と冷静に反応している。
ロシアメディアによるとサルマトはロシアで最大級のICBM。10以上の核弾頭が搭載可能で、米テキサス州と同等の面積を壊滅させる破壊力がある。射程は1万8千キロと「世界最長」を誇り、様々な軌道で飛行して防衛システムをかいくぐるだけでなく、従来の北極経由に加え南極経由でも米国を攻撃できる。年内に実戦配備する計画だという。
ロシアの軍事専門家は20日、ノーボスチ通信に対し、「実験は米国と非友好国に対し、(ロシアへの)攻撃は報復が避けられず、国家の存在を終えるというサインになる」と話した。
ロシアは2月24日にウクライナに侵攻したが、同国軍の激しい抵抗に苦戦を強いられている。現在は東部に兵力を集中し、東部全域の掌握を目指している。
こうした局面で新型ICBMの実験成功を誇示した背景には、ウクライナへの武器供給を拡大して支援する欧米に警鐘を鳴らす意味があるとみられる。
プーチン氏は2014年のウクライナ危機以降、核大国の地位を利用した「恫喝(どうかつ)」を繰り返してきた。15年3月のテレビ番組では、前年3月のウクライナ南部クリミア半島への侵攻時、核兵器を臨戦態勢に置く可能性はあったかと問われ、「用意ができていた」と述べた。今回の侵攻開始を宣言したテレビ演説でも「ロシアは世界最強の核保有国の一つ」と力を誇示した。
戦力の現代化にも取り組んでいる。プーチン氏は18年3月、米国のミサイル防衛システムへの対抗策としてサルマトのほか、極超音速ミサイル「キンジャル」など複数の新型兵器を発表した。今後、サルマトなどの配備が進めば、ソ連時代の旧型ICBMは一掃されることになる。
ただ、タス通信によると、サルマトの実験はたびたび延期されており、配備が遅れる可能性もある。
■発射、米に事前通告
ロシアのICBM発射実験を受け、ホワイトハウスのサキ報道官は20日の記者会見で、「ロシアのウクライナへの侵攻に対する我々の取り組みには影響しない」と語った。
米国防総省は20日、米ロ間の新戦略兵器削減条約(新START)に基づき、ロシアから事前に発射実験の通告があったと明らかにした。同省のカービー報道官は、発射実験について「米国と同盟国への脅威とはとらえていない」との認識を示した。
米側は発射実験後のプーチン氏の発言を「レトリック」にすぎないとみる。国防総省高官は「責任ある核保有国から期待するたぐいのものではない」ともした。
米国はロシアによる核戦力の脅しには、これまでも抑制的な反応を見せてきた。バイデン大統領は3月28日、「私が最も避けたいのはロシアとの地上戦、核戦争だ」と発言。偶発的に戦争が起きることは望ましくないとの考えを示している。米国自身、3月に予定していたICBMの発射実験を延期し、その後中止した。ロシアとのさらなる緊張の高まりを回避する狙いがあった。
また米側はロシア軍による核攻撃の脅威が具体的に高まったとはみなしていない。国防総省によると、プーチン氏が2月末、核戦力を含む戦力を特別態勢にするよう命令したことを受け、米軍が日々ロシア軍の状況を監視している。カービー氏は今月19日、「我々の戦略的な抑止政策を見直す理由は確認していない」と語った。(ワシントン=清宮涼)
▼7面=地下に巨大空間(ウクライナ侵攻)
製鉄所、難攻不落の要塞に
▼1面参照
ロシア軍が50日以上にわたって包囲し、21日に掌握したと宣言したウクライナ南東部マリウポリ。抵抗するウクライナ兵や避難する民間人が拠点とするのが港湾部の製鉄所「アゾフスターリ」だ。ソ連時代に建設され、東京ドーム235個分の敷地の地下には「もう一つの都市」ともいえる巨大な空間が広がる。
■広大な地下に最大2千人・爆撃にも備え・周囲に爆破物
「僕たちは攻撃で建物がゆれても、あせらないようにしているよ」
少年はそう語り、笑みを浮かべた。製鉄所を守る内務省軍の部隊「アゾフ連隊」が18日夜、SNSに投稿した映像の一場面だ。
約5分の動画には、製鉄所の地下シェルターで身を寄せ合って暮らす女性や子どもたちの姿が収められている。衣服や毛布などが散らばり、頭上では多くの洗濯物などがパイプからつるされていた。
連隊のプロコペンコ指揮官は「ロシア側は民間人の存在を知りながら、意図的に製鉄所に攻撃を続けている」と投稿。ロシアがミサイルや地中貫通爆弾など「あらゆる種類の火器」を用いていると批判した。
マリウポリ市長顧問の19日のSNSの投稿などによると、製鉄所の地下には女性や子ども、負傷兵ら最大2千人がこもっている。ロシア軍の侵攻開始から「太陽もまともな飲料水も食料も、新鮮な空気もない」空間で生活しているという。
ロシア軍がウクライナへの侵攻を始めたのは2月24日。包囲されたマリウポリは、3月1日ごろからは住民の避難も不可能になった。
市内全域で電気、水道が止まり、食料の調達も困難に。住宅地に激しい砲撃を加えられ、3月9日に起きた産科病院への爆撃は世界にショックを与えた。16日には住民の避難先となっていた旧市街のドラマ劇場が爆撃され、300人が犠牲になったとされる。
民間施設を標的にした「戦争犯罪」が指摘されるなか、ロシア軍は3月下旬から中心部への進撃を本格化させた。
アゾフスターリは市役所やドラマ劇場がある中心部から車で数分。長い橋をわたった先に、高炉や工場の建物群が広がる。人口43万のマリウポリで約1万人を雇用する。だが、朝夕に正門へバスが大量の従業員らを運ぶ姿はすでにない。
製鉄所の裏に集合住宅が並ぶ広大な「左岸地区」は包囲後の早い段階からほぼ廃虚に近い状態になった。
だが、アゾフスターリの難攻不落ぶりはロシア側も認める。
「ドネツク人民共和国」を自称する親ロシア派勢力幹部のガギン氏は4月16日、ロシア国営ノーボスチ通信の取材に、「製鉄所の地下はマリウポリの他の施設にもつながっており、それが襲撃を著しく困難にしている」と指摘。爆撃や封鎖、核攻撃にも備えて建設されたとして、「(製鉄所の規模は)もう一つの都市、もう一つのマリウポリが存在しているともいえるほど広大だ」と述べた。
別のロシアメディアによると、ウクライナ軍はアゾフスターリの要塞(ようさい)化を進めてきた。製鉄所に近づく道に爆破物をちりばめ、6層にも及ぶ地下空間に広がるトンネルや通路を、部隊や資材の移動に活用しているという。
ロシア軍は製鉄所を拠点とするウクライナ側に対し、武器を捨てて投降するよう繰り返し呼びかけているが、ウクライナ側は拒否し続けている。
アゾフスターリとともに世界の注目を浴びているのが、ウクライナ軍で製鉄所を守るアゾフ連隊だ。もとは14年春に結成された民兵組織。当時、ドネツク州、ルハンスク州で次々と行政庁舎などを占拠し始めた親ロシア派武装組織をマリウポリから撃退した。このため、地元では信頼を寄せる市民が多い。(根本晃)
ウクライナ巡り米中応酬
国防相、バイデン政権下初協議
オースティン米国防長官と中国の魏鳳和国務委員兼国防相が20日、電話協議した。米中国防当局トップによる協議は昨年1月のバイデン米政権発足以来初。米側はロシアのウクライナ侵攻をめぐり、中国がロシアへの軍事支援に踏み切ることを強く警戒。一方、魏氏は「ウクライナ問題を利用して中国に罪を着せたり、脅したりすることは許されない」と反発した。
両氏の協議は米側の呼びかけで実現した。米国防総省によると、今回の電話協議は3月18日に行われた米中首脳のテレビ電話協議をフォローアップするために行われ、インド太平洋地域の安全保障問題や、ロシアのウクライナ侵攻について協議したという。
米側はバイデン政権発足以来、オースティン、魏両氏による協議を模索してきたが、中国側は「中国と対立する考えはない、とのバイデン政権の態度表明は実行に移されていない」(王毅国務委員兼外相)との理由から、国防当局トップ同士の対話には消極的だった。今回、協議に応じた背景には「米国にとって最大の敵性国がロシアになり、対中戦略が変化する可能性がある」(中国軍事筋)との読みがある。
だが、米中間の安全保障をめぐる対立は、バイデン政権下でさらに強まっている。これまでの南シナ海問題に加え、台湾問題では米側が台湾への軍事支援に力を入れるのに対し、中国は蔡英文政権を「独立勢力」と見なし、台湾海峡周辺での軍事演習を活発化させている。
習近平(シーチンピン)国家主席は21年2月、バイデン米大統領との初の電話協議で、軍当局を含む対話メカニズムを提案。意見の相違を適切にコントロールする仕組みの構築に期待したが、中国外交筋は「バイデン政権にその意欲はない、との判断に変わりつつある」と話す。
バイデン政権は台湾などアジア地域の安定を目指し、インド太平洋戦略を推進している。中国はこうした動きを「多国間主義を叫びながら実際は排他的なグループづくりであり、真の目的はインド太平洋版NATOで米国の覇権を守ることにある」(王氏)と批判。ウクライナ情勢をめぐっても、中国によるロシアへの軍事支援の可能性を警告する米側に「まったくのデマであり、責任転嫁が目的だ」(秦剛駐米大使)と強く反発する。
一方、中国は19日にソロモン諸島と安全保障協定を締結し、南太平洋地域への影響力拡大を図る。米国は日本や豪州、ニュージーランドと懸念を共有。キャンベル米国家安全保障会議(NSC)インド太平洋調整官ら米政府代表団は近くソロモン諸島を訪れ、米側の懸念を伝える方針だ。(ワシントン=園田耕司、北京=冨名腰隆)
(天声人語)
空也を運ぶ
薄く開いた口から6体の極小の仏様がニョロニョロと飛び出す。歴史の教科書でおなじみの空也上人の像である。僧の名は忘れても像は印象鮮烈で忘れがたい。展示中の東京国立博物館を訪ねた
▼運慶の四男・康勝作と伝わる木像は、間近で見ると首回りや手足に力がみなぎる。来場者が一様にのぞき込むのはやはりあの口元。細い金属線の上に並ぶ極小仏は、空也が唱えた「南無阿弥陀仏」を視覚化した。しかし作りはいかにもはかなげだ。所蔵する京都・六波羅蜜寺からどう運んだのか
▼「ポキッとなったら大変。まずは外して運ぶ方法を探りました」。担当した日本通運関西美術品支店の徳山宜和(よしかず)さん(46)は話す。しかし調べてみると、金属線が上人の舌に接着され、外しようがない。腹を決め、そのまま運ぶべく寺や博物館と打ち合わせを重ねた
▼工芸品輸送のために開発された「薄葉紙(うすようし)」が活躍した。指先で裂ける純白の紙で、筒やヒモ、ヘルメットまで自在に手作りできる。極小仏もこれでくるみ、像全体を特製の木箱で囲う。振動で折れないよう木材で支え、万全を期した
▼運ぶのも一苦労。温度と湿度を一定に保ったトラックで高速をひた走ること約370キロ。展示室で無事な姿を確かめるまで気が休まらなかったそうだ。「万に一つの失敗も許されない。梱包(こんぽう)を解く一瞬の緊張たるや……」
▼空也を鮮やかによみがえらせた仏師の腕前には舌を巻く。それから八百余年、梱包と輸送の職人たちの心意気にも感じ入った。
敵基地攻撃能力→反撃能力に改称 自民提言案
反撃対象の拡大、懸念
自民党安全保障調査会(会長=小野寺五典元防衛相)は21日、敵のミサイル拠点をたたく「敵基地攻撃能力」について、名称を「反撃能力」と変えた上で保有するよう政府に求める提言案をまとめた。攻撃対象に「指揮統制機能等」も含めるほか、防衛費の大幅増も盛り込んだ。近く岸田文雄首相に提言を渡す。▼3面=問われる整合性
首相は国の外交・安全保障政策の基本方針「国家安全保障戦略(NSS)」などを年内に改定することを明言しており、提言を受けて検討を加速する。
提言案では、中国を名指しし、日本周辺に相当数の弾道ミサイルが配備されていると指摘した上で「ミサイル技術の急速な変化・進化により迎撃は困難」と主張。その上で「弾道ミサイル攻撃を含むわが国への武力攻撃に対する反撃能力を保有し、これらの攻撃を抑止し、対処する」とした。
反撃能力の対象範囲については「相手国のミサイル基地に限定されるものではない」とし、「指揮統制機能等も含む」とした。「指揮統制機能等」の定義があいまいだが、自民党は「戦略、戦術に直結するので控えたい」と明かさなかった。反撃対象の拡大につながる恐れがある。
また、憲法にのっとった防衛戦略として、相手から攻撃されて初めて反撃する「専守防衛」についても言及。「必要最小限度の自衛力」の具体的な限度に関し、「その時々の国際情勢や科学技術等の諸条件を考慮し、決せられるもの」とし、拡大に含みを持たせた。
■防衛費の大幅増、明記
防衛費については、北大西洋条約機構(NATO)諸国が対GDP(国内総生産)比2%以上を目標にしていることを念頭に「5年以内に必要な予算水準の達成を目指す」とした。今年度の防衛費の対GDP比は約1%で、2%になれば、年間10兆円超になる。(松山尚幹)
▼3面=問われる整合性
問われる専守防衛との整合性
自民提言案の「反撃能力」、敵の第1撃前でも
自民党安全保障調査会(会長=小野寺五典元防衛相)が21日にまとめた提言案では、敵のミサイル発射拠点をたたく「敵基地攻撃能力」について、名前を「反撃能力」と変えた。「敵基地攻撃」という文言を省くと同時に、反撃対象をミサイル基地だけでなく、命令する機能にまで拡大させている。日本の防衛政策の転換を迫る内容だ。▼1面参照
提言案では、「わが国を取り巻く安全保障環境は加速度的に厳しさを増している」とし、中国、ロシア、北朝鮮を脅威として挙げて「複雑な対応を強いられる複合事態にも備えなければならない」と強調した。
とくに中国を「重大な脅威」と指摘。「地上発射型の中距離弾道ミサイルを約900発保有する」と触れ、極超音速滑空兵器など新型のミサイルが開発されているとして、「迎撃のみではわが国を防衛しきれない恐れがある」と主張した。
その上で「憲法及び国際法の範囲内で日米の基本的な役割分担を維持しつつ、専守防衛の考え方の下」と留保を付けて「弾道ミサイル攻撃を含むわが国への武力攻撃に対する反撃能力を保有」すると打ち出した。
自民党の議論では、名称をどう変えるかが課題だった。敵基地攻撃能力の保有に慎重な公明党から「先制攻撃と誤解される可能性がある」(北側一雄副代表)と変更を求められた。北朝鮮などのミサイル発射拠点は潜水艦などに変わり、敵のミサイル基地を特定するのは難しくなっており、「敵基地攻撃」という名称は「時代遅れ」(自民党幹部)とも指摘されていた。
議論では「自衛反撃能力」「ミサイル反撃力」などの案が出たが、一任された小野寺氏が「反撃能力」と決めた。小野寺氏は記者団に「国を守るために必要な能力を使う。反撃のための必要な能力というのが一番ストレートに表現できる」と語った。ある自民党議員は、小野寺氏が15日に岸田文雄首相と面会したことから「これは首相の案だろう」と話す。
「敵基地攻撃」を「反撃」に変えることで、国際法に違反する先制攻撃に当たらず、憲法にのっとった「専守防衛」にも合致する印象を狙ったとみられる。
しかし、課題は多い。
まず、「専守防衛」との関係は不透明だ。専守防衛は日本の防衛戦略の基本方針で、相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使するもの。その程度も必要最小限にとどめ、装備も自衛のための必要最小限のものに限っている。
安倍晋三首相(当時)は2018年の国会答弁で専守防衛について、「防衛戦略としては大変厳しい。ミサイル攻撃の第1弾は甘受しなければならないが、この考え方は憲法の精神にのっとったものだ」と述べていた。
これに対し、今回の反撃能力は、敵の第1撃を受けることは想定していない。小野寺氏は記者団に「相手側の攻撃が、明確に意図があって、既に着手している状況であれば、判断を政府が行う」と説明。敵が攻撃に着手したと認定すれば、攻撃が可能とした。
想定する武力攻撃についても、提言案は「弾道ミサイル攻撃を含むわが国への武力攻撃」とし、「宇宙やサイバー、電磁波領域における相手方の一連の指揮統制機能の発揮等を防げる能力」の強化も盛り込んだ。
■「指揮統制機能」の対象、漠然
さらに、攻撃対象についても、敵基地攻撃能力が想定していたミサイル発射拠点だけでなく、「指揮統制機能等も含む」と踏み込んだ。小野寺氏は「民間人がいるとか、非軍事施設が対象になることはない」としたが、対象は拡大することになる。
この点について、防衛省内には「指揮統制機能といっても漠然としている。日本で言えば都心の防衛省や首相官邸も含みうる」(幹部)との声がある。
政府は提言を受け、検討を進めるが、自民党の議論には政府幹部らが出席し、提言内容に関与してきた。政府は今年1月から、秋葉剛男・国家安全保障局長のもと有識者会議も開始。自衛隊や防衛省出身者、学者らから意見を聴取している。ただ、与党・公明党は慎重姿勢が根強いため、本格的な議論は夏の参院選後になる見通しだ。
これに対し立憲民主党の小川淳也政調会長は21日の会見で、自民党の提言案について「専守防衛との関係から、極めて繊細な問題をはらむ。前のめりでかえって国民を危うい状態に置きかねない。周辺国を刺激し、挑発的に過ぎる」と批判。参院選を前に国会でも議論になりそうだ。(相原亮)