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     多極化を認めつつも自滅する英米エスタブ   田中宇の国際ニュース解説
     トニー・ブレアの演説:ウクライナの後、欧米指導部にとって、
       今、どのような教訓があるのだろう?
     国連の人口推計   天声人語

 2022/07/22
多極化を認めつつも自滅する英米エスタブ
田中宇の国際ニュース解説
   https://tanakanews.com/220721blair.htm

多極化を認めつつも自滅する英米エスタブ

2022年7月21日   田中 宇
英国元首相でリベラル派のトニー・ブレアが7月17日、英米関係などを議論する英国のシンクタンク「ディッチリー財団」の年次会合で講演し、いくつか重要なことを述べた。私なりに解釈すると、ブレアは講演で以下の5点の要旨を語った。(1)中央銀行群のQEによる経済歪曲、新型コロナへの対策(超愚策)、ウクライナ戦争による資源危機によって、西側(欧米日=米国側)経済が破綻し、市民の生活水準が大きく下がった。(2)QEのバブル膨張が資産家だけを肥え太らせ、貧富格差が拡大した結果、欧米でポピュリズムが勃興し、SNSに扇動されて、醜悪で非生産的な政治対立が激化して、米国は内政混乱で覇権運営どころでなくなった。 (Tony Blair's Speech: After Ukraine, What Lessons Now for Western Leadership?)

(3)米欧が衰退した半面、中国が経済台頭して米国と対等になり、近代史上初めて西洋と東洋が肩を並べる。中国は台頭しただけでなく、国家体制や市民生活のあり方について米国側と異なるシステムを構築して対抗してきている。今後の世界は2極化、もしくは(露イランインドなど他の非米大国も台頭して)多極化する。これは第2次大戦、冷戦終結と並ぶ歴史的大転換だが、前の2つが米国側(米英。民主自由体制)の勝利になったのと対照的に、今回の大転換は米国側の敗北、もしくは勝てるかどうか不明な状況になっており、かなりヤバい。 (Tony Blair believes the West's dominance is coming to an end. Here's why)

(4)米国側の諸国は団結し、非米側に流されていく国の増加を阻止する必要があるが、中国を敵視したり、米国側と中国側の経済を分離する策をとるべきでない。米国側は、中国の(非リベラルな)姿勢を改めさせる努力を続け、中国の動きを見据えつつ協調関係を続けねばならない。米国側は、中国が対抗姿勢を改めないままさらに台頭して世界の2極化・多極化が固定化した場合に、自分たちの民主自由体制をどう守るかを考えねばならない。 (Era of Western dominance ending – Tony Blair)

(5)米国側は、軍事費をもっと増やして(中露に対する)軍事的な優位を維持せねばならない。コロナやそれ以外の感染症に対する(インチキな)ワクチン開発と世界への普及を進めねばならない。米国は、共和党がコロナワクチン接種拒否を扇動する状況を改めねばならない。われわれは、人類に対する(インチキな)温暖化人為説の刷り込みを続けねばならない。

私が知る限り、英米の著名なエスタブ権威筋の指導者が、ここまで明確に米国側の覇権自滅と多極化、米国側が中国に負ける可能性が大きい点について述べたのは初めてだ。これまで米覇権の崩壊や多極化は、未来の懸念事項として表明されてきた。今回のブレアは、すでに米覇権は崩壊していて米中2極化や多極化が不可避だという論旨だ。英米エスタブの世界では、自分たちの文明が中国・非米側に負けると明言すると袋叩きにされる。だからブレアは「負けるか、もしくは勝てるか不明な状態」などと言っているが、彼の本音は多分「米国側は中国・非米側に負ける」ということだろう。 (米国が英国を無力化する必要性)

ブレアの講演でもう一つすごい点は、バブル膨張策であるQEが金融資産保有者(金持ち)だけを肥え太らせ、インフレが貧困層を打撃して貧富格差が拡大した結果、ポピュリズム勃興などの政治混乱が拡大し、そこにコロナとウクライナによる経済収縮が加わって米国側の経済衰退と覇権低下が起きた、と言っていることだ。QEの愚策性を指摘するエスタブ人士がいなかった中で、これは珍しい(彼は直接QEという言葉を使わず、異例の通貨政策 unconventional monetary policy などと婉曲表現している。また彼は、リーマン危機への有効な対策はQEしかなかったとも言っている)。 (Tony Blair's Speech: After Ukraine, What Lessons Now for Western Leadership?)

ブレアは1997-2007年に英国首相だった。それは2008年に起きたリーマン危機の直前までであり、債券金融システムの膨張によって英米金融覇権が繁栄していた最後の時代だった。ブレアが維持していた英米金融覇権は、その後リーマン危機で崩壊し、QEで不健全なかたちで延命させられた。ブレアはQEが始まった当初から、その不健全性を把握していたはずだ。ブレア政権の前半は、クリントンの米国と一緒に金融覇権を運営していた米英の最盛期であり、後半はブッシュの米国が911やイラク戦争でネオコン自滅的な過激な軍事戦略・単独覇権主義を振り回し、必死にそれについていく英国が米国と一緒に自滅し始める時代だった。リーマン危機後、金融システムも破綻への道をたどり出し、2017-2020年のトランプ政権で米国は覇権放棄や米中分離をやり始め、今のバイデンはウクライナで欧米の優位をさらに自滅させている。 (米英を内側から崩壊させたい人々) (アメリカの属国になったイギリス)

ブレアは、新型コロナ対策とウクライナ戦争(対露制裁)が欧米の衰退を加速してとどめを刺したことを認めている。私の記事や他のオルトメディアでは、コロナ対策やウクライナ対露制裁が欧米を自滅させる超愚策であることが明言されてきたが、エスタブやマスコミはそうした見方を妄想扱いして無視してきた。ブレアは、コロナ対策やウクライナ対露制裁が「愚策」であると言っていないが、それらが欧米経済を決定的に破壊したことを認めている。QEも含め、米欧を崩壊させる策となったが、他に良い方策はなく、やむを得なかった、という評価なのか?。その点について彼は何も言ってない。 (This Proxy War Has No Exit Strategy) (アングロサクソンを自滅させるコロナ危機)

ブレアは、コロナ対策やウクライナ対露制裁が欧米経済を大きく破壊したと認めているのに、今後もコロナ対策や対露制裁をもっとやるべきだと言っている。ブレアは演説の中で、ロシアがいかに悪いかという歪曲話を延々と展開している。いろんなワクチンを開発して世界中で接種させるべきだとか、軽信しなくなった人々を激怒させることを言っている。温暖化人為説も、根拠薄弱なプロパガンダであり、無意味な化石燃料敵視が欧米経済を自滅させ、世界の石油ガス利権の65%が非米側の国営企業群の手に渡っていて今後ますます非米側の経済台頭と米国側の困窮を進ませてしまう。だがこれについてもブレアは、英米が温暖化対策の議論を主導し続けねばならないと言っている。ブレアは、米国側が壊滅しつつあると言いながら、今後の対策としてさらなる壊滅を引き起こす策を提案している。大馬鹿である。 (Who Really Controls The World's Oil Reserves?) (制裁されるほど強くなるロシア非米側の金資源本位制)

この事態は、ブレアだけでなく英米エスタブが全体として、ネオコン系の左右の勢力が仕掛けた集団思考的な「超愚策の罠」にはまって出られなくなっていることを示している。ブレアの講演は、英米の覇権崩壊と中国の台頭、2極化・多極化を示した点で画期的だが、同時に、英米エスタブが今後さらに自分たちの経済力や覇権を自滅させ、中国など非米諸国の相対的な台頭と多極化を誘発してしまうに違いないことも示している。 (欧米中心の世界は終わる?)

英国自身、先日辞任表明したボリス・ジョンソン首相の後任首相を決める保守党の党首選挙が進んでいるが、今残っている2人の候補のうち、リズ・トラス外相が勝つと、トラスはネオコン系(隠れ多極主義)で、露中を徹底敵視して英国と米国側をさらに自滅させる策をとる。リシ・スナク前財務相が勝つと、英国はEUに再加盟する試みをやるかもしれず、ジョンソン首相はスナクの当選を全力で阻むことを宣言している。英政界ではEU離脱や露中敵視など自滅的な策を進める勢力が強く、英国が黒幕をしている米国側が、中国など非米側の覇権拡大を阻止して米英覇権を維持することはほぼ不可能になっている。 (Boris Johnson takes revenge on Rishi Sunak) (Boris Johnson claims ‘deep state’ plot against Brexit) (英国をEU離脱で弱めて世界を多極化する)

日本からみると気になることがもう一つある。ブレアは今回の演説で「近代史上初めて東洋(East)が西洋(West)と肩を並べうる状態になった」と言っている。ブレアは同時に、日本を西側民主諸国の一つに列挙しており、日本は西洋(米国側)の一部という認識らしい。しかし、ふつうに考えて日本は「東洋」である。戦前の日本は、東洋の新興国・地域覇権国として、西洋をしのぐ存在になろうとしていた。日本は冷戦時代に「西側(親米側)」だったが、それと「東洋・西洋」の区分は違う。日本は、漢字文化圏だし儒教っぽいし、神道や仏教や稲作に包まれており、理性より情緒で、一神教がはびこる西洋と異なるやおよろずの東洋の国である。日本は民主主義国を自称するが、実のところ誰が議員になっても官僚が実質的に支配する官僚独裁の国だ。ほとんど企業や学校は、表向きだけ民主主義で、実は権威主義だ。戦後の日本は対米従属策として、なんちゃってな西側民主主義をやってきただけだ。自民党と中国共産党は、意外と似ている。 (米国の中国敵視に追随せず対中和解した安倍の日本)

となりの中国は覇権を拡大しており、ブレアも暗示しているように米英は中国・非米側に敗北することがほぼ確定している。米国が衰退すると、対米従属は無意味になる。すでになっている。これから米国で共和党が復権したら、同盟諸国に対する軽視が激化する。米国が衰退して中国が台頭するなら、日本も、対米従属とか西側民主主義をこっそり捨てて、中国と同じ「東洋」の側に入るのも「あり」になる。日本人の多くは、マスコミ権威筋による対米従属プロパガンダの一つである「嫌中」に染まっており、「中国と一緒に東洋に入ったらどうでしょう」などと言うと、とたんに「アカ」呼ばわりされる(今や日本共産党・アカも嫌中だけど)。しかし。 (米エスタブが言うなら良いのか。フランシス・フクヤマ「多極化世界と日本」)

しかし、予測として書いておきますが、日本にはいずれ「中国と一緒に東洋に入るのが良い」と言い出す人々が、アカ・左翼でなく、右派・ナショナリストの方から必ず出てくる。早く出てこい。日本は、中国と一緒に東洋に入るのが良い。その方が発展する。これは日本のために言っている。アカでも黄色でも塗ってください。



上記記載の冒頭の節に出ている ‘英国のシンクタンク「ディッチリー財団」の年次会合で講演’ を検索語として呼び出してみる。 すると ‘ディッチリー財団 - fuguja.com’ があり、それを開くと
  オックスフォードシャー州チッピング・ノートン近くのディッチリー・パークに
  拠点を置くディッチリー財団は、国際的な関心事に関する約12回の年次会議のプ
  ログラムを通じて、国際理解と関係、特に英米関係を促進することを目指してい
  ます。財団は、1958年にタバコ輸入家の子孫であるデイヴィッド・ウィルズir、
  ブリストルのWD&HOウィルズによって設立されました。
という驚くべき目当てによって錚々(ソウソウ)たる人材の人によって開かれていることが分かりました。

スピーチの内容は次の通りです。

田中宇の国際ニュース解説
  多極化を認めつつも自滅する英米エスタブ
  その第一項のデータ
  (Tony Blair's Speech: After Ukraine, What Lessons Now for Western Leadership?)   の翻訳

演説投稿日:2022年7月16日
トニー・ブレアの演説:ウクライナの後、欧米指導部にとって、
今、どのような教訓があるのだろう?

イギリスと北アイルランドの元首相、トニー・ブレア地球変動研究所の理事長

2022年7月16日(土)、ディッチリー年次講演会でのトニー・ブレアのスピーチ

1945年や1980年のように、欧米は変曲点にある。1945年、欧米は、ヨーロッパ諸国間の紛争によって引き起こされた一つではなく二つの世界大戦の代わりに、国際統治、防衛、ヨーロッパ協力の新しい制度を創設しなければならなかった。

1980年、長年の核拡散の後、我々はソ連の最終的な崩壊と自由民主主義的価値観の勝利を求めた。

いずれの場合も、西側の外交政策の目的には国内政策の目的が伴っていた。

1945年、ヨーロッパでは、アトリー政権下の英国で、そして米国では、これまで特権的な少数の人々に限られていたものを幅広い大衆が利用できるようにするために、福祉国家、近代的なインフラ、保健、教育サービスの構築でした。

1980年、それはレーガン/サッチャー革命で、市場と民間企業に有利に働き、急成長する国家権力に対する反動で、人民の事業を育むのではなく、抑制しているように見えた。

どちらかの変曲点に賛成または反対することは、物質的なものではありません。重要なことは、統治プロジェクト、計画、世界に対する見方があり、それがそれを理解し、人々の進歩を提供しようとしたことです。

どちらの場合も、少なくとも彼ら自身の言葉では、プロジェクトは成功しました。ヨーロッパは平和になった。ソ連は崩壊した。今世紀初頭まで、人々は生活水準と実質賃金の上昇を見てきました。状況は良くなりました。欧米は強かった。

2022年には、合理的に次のように言うことができます。欧米の人口の大部分にとって、生活水準は停滞しており、何百万人もの人々が基本的な必需品に苦労しており、インフレは実質賃金を低下させるように設定されています。もし我々がイギリスを奪取すれば、我々は間もなく、1940年代以来のどの時期よりも多く課税され、かつてないほどの支出を強いられるだろうが、それでも我々の公共サービスは、関節で軋みつつある。NHSは現在、日々の公共サービス支出の44%を占めているにもかかわらず、ほとんどひざまずいています。

程度の差こそあれ、西洋世界を一周して、同じパターンを見ることができる。

Covidは犠牲を払っています。そして今、ウクライナ紛争。

金融危機後、我々は、非伝統的金融政策と銀行資本増強を通じて不況を食い止めた。現実的な代替案はなかったが、政策は我々の経済を歪め、資産を持つ人々に報い、資産を持たない人々にペナルティを課し、緊縮財政と結びつき、社会の最貧困層が依存していたサービスを削減した。

過去15年間の政治的結果は、蔓延するポピュリズムでした。伝統的な政党は、新世代の活動家が彼らを乗っ取り、従来の政治を混乱させ、「エリート」の扉のところで人々の状態を非難しているのを見てきました。右翼はナショナリストになり、経済問題と同じくらい文化問題に重点を置いた。不平等への答えとしての古いスタイルの国家権力と、新しい急進主義としてのアイデンティティ政治のミックスに左翼。しかし、新しい政党、緑の党、中道派、左派と右派の極端派も生まれました。

欧米政治は混乱している - より党派的で、醜く、非生産的だ。ソーシャルメディアによって促進されます。

これは外交政策の結果をもたらしました。最近、ある指導者が私に、世界におけるアメリカの関与に一貫性を持たせようとする彼らの絶望を私に説明しました。ブッシュ、オバマ、トランプ、そして今のバイデン政権を特徴づけて、彼は言った:「多すぎる。少なすぎる。奇妙すぎる。弱すぎる」私は押し返した。私は、その特徴付けは本当に不公平だと思います。各大統領の場合、バイデン大統領のウクライナ支持の結集において、大きな成果がありました。しかし、彼が本当に意味していたのは、今日アメリカを扱っている人々は、アメリカの内政が政策の一貫性を破壊する方法で外部政策を支配していると感じているということです。

これらすべての影響は、わが民族にとって、国内政治が機能不全に見えることである。そして外の世界から見ると、外交政策は予測不可能に見える。どちらも欧米民主主義の大義を助けない。

英国の首相として10年間働き、そして今、世界中の政府と15年間働いた経験の後、私は一つのことを学びました。それはすべて配達についてです。民主主義であろうとなかろうと。それがリーダーやシステムを支えたり、弱体化させたりするものです。

民主主義の課題は有効性です。政治的な言説は、しばしば透明性、誠実さ、信憑性についてすべてを作ります。これらのことは重要です。しかし、彼らは配達に勝ることはありません。結局、ボリス・ジョンソンが倒れた理由は、単に「パーティーゲート」をめぐる怒りではなく、英国の将来のための計画がなかったからだ。信憑性が崩れ去ったとき、戦うべき実体は何も残っていなかった。

今日、欧米民主主義は新しいプロジェクトを必要としている。方向性を与え、希望を鼓舞するものは、世界がどのように変化しているか、そしてその中で私たちがどのように成功しているかについての信頼できる説明です。

国内政策では、技術革命の活用がすべてだと考えています。これは、現在起こっている現実世界で唯一最大の変化です。それはすべてを混乱させるでしょう。それは政府の働き方を混乱させるはずです。これは、19世紀の産業革命に相当する21世紀です。それは、貧しい成長と生産性、ひいては生活水準の向上に対する唯一の解決策です。コストを削減しながらサービスを改善する唯一の方法、例えば医療。排出量の削減と同時に開発を維持したい場合の気候変動に対する唯一の答えです。

問題は、20世紀の右翼と左翼の政治が、それにり合わないことだ。そして政治家たちは、今や習慣的に不平不満の政治にもっと精通しているが、それはりにも「テクノクラート的」であり、いずれにせよ理解するのが難しすぎると感じている。

しかし、現代の国内ガバナンスのための包括的なプロジェクトを探しているなら、技術革命を理解し、その広大な機会にアクセスし、疑いの余地のないリスクを軽減することがそれだと思います。

幸いなことに、テクノロジーの面では、英国はうまく配置されています。しかし、それは政治がそれを中心に置くことを必要とする。そして、現在の保守党指導部の議論は、おそらく労働党を「税金と支出」党として反対する「減税」を中心に展開しており、1980年代の憂鬱な雰囲気を持っています。

外交政策にとって、ウクライナは我々の使命感を復活させる基軸となるべきである。

ロシアのせいだけでなく、それが中国に関して何を意味するのかのせいだ。

平和で民主的なヨーロッパ国家が、自らの道を選ぶ自由を抑圧するという明白な目的を持って、残忍で不当な侵略行為の対象となっているウクライナでの紛争は、ウクライナ国民性を非合法化するロシアの歴史の風変わりな解釈を指導者が信じている侵略者を何らかの形で脅かしたという馬鹿げた口実で、 欧米の外交政策のコグノセンティは、カフェに座って静かに新聞を読んでいる人の頭の上に投げつけられた、とても冷たい水の入ったバケツのようだった。

ウクライナ侵略に対する最初の反応は、恐ろしく、不必要な死と破壊に対する衝撃だ。

しかし、ショックの後、これは大国の合理性に対する私たちの信念のひっくり返りであるという認識がもたらされます。はい、テロリストはこのように行動します。時折、遠く離れた場所にいる遠く離れた国々が互いに戦います。しかし、これは国連安全保障理事会の常任理事国です。世界最大の陸地を持つ国。その指導者は、主要国の他の指導者とほぼ同等の条件で混ざり合っています。

2014年のクリミアや2008年のグルジアを指差して、警告を受けたと言うことができます。しかし、真実は、これが、民主的なヨーロッパ国家全体を征服するために行われた全面戦争は、我々が想像もつかないと考えていた性質のものであるため、予想外だったということです。

半年前、プーチンがバルト三国やスウェーデンやフィンランドを侵略できるという考えは、幻想的だとして片付けられていただろう。今、正当な理由で、これらの国々の指導者たちは、NATOが必要だと知っている。

紛争の当初、私はウクライナに対する二重の戦略を主張した:戦闘に直接参加することなく、できるだけ多くの軍事支援と、最も厳しい制裁。しかし、軍事戦略が、もちろんウクライナとその国民に受け入れられる条件で、交渉による解決のためのレバレッジを作り出すことができるように。私はまだそのアプローチを提唱しています。

問題は、ウクライナが、より広範な欧米外交政策にとって何を意味するのかだ。数年前、欧米の多くの人々は、"欧米政策"と呼ばれるものの必要性を問いかけた。それは、特にベルリンの壁崩壊後、そして9/11後の挑発的で、攻撃的でさえあるように聞こえた。ウクライナは、その質問を大部分削除した。

しかし、今世紀最大の地政学的変化は、ロシアではなく中国から来るだろう。我々は、欧米の政治的、経済的支配の終焉に近づいている。世界は少なくとも双極、そしておそらく多極になるだろう。

中国はすでに世界第2の超大国です。ロシアは、ウクライナが暴露したように、かなりの軍事力を持っているが、軍事的弱点もある。しかし、その経済はイタリアの70%の規模です。

中国の力はまったく異なるレベルにある。人口は13億人を超え、ヨーロッパと北米を合わせた人口をはるかに上回っています。その経済は米国の経済と同等に近いです。過去20年間、世界との積極的で成功した関与を追求し、私が目撃できるように、伝統的なアメリカの同盟国でさえ、譲歩することに深い抵抗がある関係を構築してきました。

それは古代の文明、傑出した文化の一つ、そしてますますよく教育され繁栄した人々を持っています。

したがって、超大国としての中国の地位は自然であり、正当化される。それはソビエト連邦ではない。

しかし、近年、習主席は共産党の最高権力を再び確立し、西側の「退廃」を軽蔑したり、プーチン大統領とその指導的ジャンルを個人的に賞賛したりしていることを秘密にしていない。彼は少なくともあと10年間は権力の座にとどまるつもりで、彼の明確で隠された野心は台湾を北京の支配下に戻すことだ。香港はその意味するところの証拠だ。したがって、台湾が自発的に帰国すると考えることは事実上不可能であり、したがって中国が説得ではなく武力行使することを恐れている。

Plus, China has now caught up America in many fields of technology and could surpass it in others.

This new inflection point is qualitatively different from 1945 or 1980. It is the first time in modern history that the East can be on equal terms with the West. And at both other inflection points, Western democracy was essentially in the ascendant.

それは2022年には当てはまりません。または少なくとも明確ではありません。

ウクライナの重要性は、それが明確にしていることだ。プーチンの行動の結果、我々は中国指導部が合理的と考えるような振る舞いをすることに頼ることはできない。

誤解しないでください。私は、中国が台湾を武力で奪取しようとすると短期的に言っているのではない。

しかし、そうではないという確実性に基づいて政策を立てることはできません。そして台湾の側に立っても、習近平の指導下にある中国は影響力を競い合い、積極的にそうしているのが現実だ。

中国は一人ではない。同盟国がいるだろう。ロシアは今、確かに。おそらくイラン。しかし、ウクライナをめぐるG20で証明された分裂が私たちに指示するべきであるように、世界中の国々をそれに引き寄せるでしょう。時には興味から。時には西洋への嫌悪感から。時には、指導者が非民主的モデルの傾向を共有しているからです。時には、国々は道の一部にしか引っ張られないでしょう。しかし、中国は権力を巡って競争するだけでなく、我々のシステム、我々の統治と生き方と競争するだろう。

少なくとも今のところは。そして、それは重要な資格です。

私は、私が「強さと関与」と呼ぶ中国に対する政策を支持します。我々は、中国の将来の気質が我々にもたらすいかなるものにも対処できるほど強くあるべきであり、我々のシステムとその価値を維持すべきである。しかし、包括的な「デカップリング」を求めたり、相互作用や協力のラインを閉鎖したりすべきではありません。私たちは澄んだ目を持っていますが、敵対的ではありません。

私たちは、私たちに対する異なる中国の態度で、私たちとは異なる態度が来ることを示すべきです。我々は、世界大国としての中国の地位を受け入れること。私たちは中国の文化とその人々を尊重する。

中国は常に熟考すべきことをたくさん与えられるべきです。ロシアのような一枚岩の政治体制は持っていない。習近平国家主席は新たな権限を得るだろう。しかし、彼は無敵ではありません。そして、彼のCovidポリシーが示しているように、ストロングマンのリーダーシップは、人々が挑戦すべきことに挑戦することを恐れるとき、固有の弱さを伴います。

我々は、中国が変化する可能性に対してオープンである必要がある。しかし、それがなければそれに耐えるのに十分強い。

このために、欧米は戦略を必要としている。それなしではプロジェクトは成功しません。調整、コミットメント、能力で追求。

ヨーロッパとアメリカの大西洋横断パートナーシップが肝心なところにある。しかし、それには内容と活力が必要です。日本、カナダ、オーストラリアなどの先進国、そして発展途上国、特に中東と極東の主要な同盟国とともに、我々は我々の目標に合意する必要がある。そしてそれらに固執する。米国は主導するが、政策の策定と実行に同盟国を巻き込まなければならない。

国内の政治的圧力に立ち向かう覚悟を持った政治指導者が必要です。

しばしば、まともな人々によって追求される「現実政治」外交政策 - 基本的に無原則な、そして「価値主導の」外交政策 - の間に粗雑な線引きがなされている。

しかし、価値観は、それに反対する人々に打ち勝つのに十分な強さでなければ、守ることはできません。強さは希望的観測からではなく、現実に対する固い理解から生まれます。

政府はNGOではない。リーダーは解説を書いていません。彼らは政策を立てている。

これは実際にはどういう意味ですか?

我々は、防衛費を増大させ、軍事的優位性を維持すべきである。アメリカは、いまだに、世界最大かつ最高の装備を備えた軍隊を、遠くに持っている。しかし、それと私たちは、あらゆる不測の事態や紛争の種類に、そしてあらゆる分野で対応できるほど優れているべきです。アメリカ人は極超音速ミサイル能力に急速に追いついている。しかし、彼らが私たちに教訓を教える必要があるという事実。

サイバーセキュリティは新しい防衛フロンティアです。それには、グローバルに調整された対応が必要です。

第二に、欧米はここ数年、「ソフトパワー」の分野で嘆き悲しんできたが、ありがたいことに、バイデン政権が軌道修正している兆候がある。私の研究所がアフリカ全土と東南アジアで活動していることを、私は絶えず見ています。中国だけでなく、ロシア、トルコ、イランさえもが発展途上国に資源を注ぎ込み、防衛と政治の分野に厚い根を下ろしている。一方、欧米とそれが支配する国際機関は、官僚的で、想像力に欠け、しばしば政治的に効果的でなく、政治的に侵入的だった。

しかし、私たちには大きなチャンスがあります。発展途上国は欧米のビジネスを好む。彼らは10年前よりも中国の契約に懐疑的だ。彼らは、我々が思っている以上に、欧米体制を賞賛している。

しかし、私たちは、私たちの機関や政府をより機敏にし、各国の真のニーズにもっと敏感に反応し、協力する必要があります。一例を挙げると、SAHEL地域では、移民と過激主義の次の爆発が待っている。私たちは今、それを防ぐために準備を整えるべきです。

アフリカの人口は、中国の衰退に伴い、今後30年間で倍増するだろう。私たちは、アフリカの新世代のリーダーが持続的に成長し、農業を改革し、大量の耕作地を持つ国々が食糧不足にならないようにし、豊富に所有する商品を処理し、価値を付加するのを助けるべきです。

G7が6,000億ドルの「グローバルなインフラと投資のためのパートナーシップ」を発表したことは、中国のOBORに対する歓迎すべき、しかし遅れた対応である。

Covid-19は医学の大きな進歩に拍車をかけました。マラリア、結核、デング熱、さらにはHIV/AIDSなどの疾患に対する新世代のワクチンと注射剤が発展途上国や他の場所で利用可能になることを保証するために、「ワンショット」キャンペーンがまもなく開始されます。何百万人もの命が救われるかもしれません。欧米はそれをリードすべきだ。

中東におけるリーダーシップを放棄してはなりません。これは石油とは何の関係もありません。あるいは、計画されたテロ行為を阻止するために同盟国と協力するという狭い意味での安全保障さえも。この地域を席巻する近代化運動は、その広範な地域的支持が、今週初めに発表された私の研究所の世論調査によって十分に実証されているが、我々の長期的な安全保障にとって非常に重要である。私が関わったアブラハム合意は、中東が変化しつつある証拠です。文字通り、それをあきらめる最後の瞬間です。

欧米には、ブリティッシュ・カウンシルやBBCのような、文化的なソフトパワーの偉大な機関がある。私たちは彼らを支援するべきです。

私たちは気候の議論をリードし続けるべきです。

そして、皆さんがおっしゃるように、私たちはテクノロジーのリーダーでなければなりません。米EU通商技術理事会は、集団的な政策決定機構の効果的な部分にすることができる。

データのプライバシーやテクノロジーの悪用に関する正当な懸念が、イノベーションの足かせになったり、競争上の優位性を失わせたりしないようにする必要があります。規制への共通のアプローチが役立つでしょう。

サプライチェーンの安全のために、ショアリング、リショアリング、さらには友人のショアリングに近い国々には、良い政策上の理由があります。しかし、これを保護主義に有利なグローバリゼーションに反対する一般的な推進力に変えれば、私たちに害を及ぼすでしょう。

私たちは、たとえそれが困難なときでも、持続力、コミットメントを示さなければなりません。人気がないときでも。これはアフガニスタン撤退の教訓の一つであり、イラクとリビアとの関与をある程度減らした。

このコミットメントは、同盟国を受け入れなければなりません。人権に関して意見の相違があるなら、私たちはそう言うべきですが、それは彼らが私たち全員に共通の脅威に直面しているときに彼らを支援することを妨げるべきではありません。

インドは、超大国の地位を獲得することができ、また達成すべきであり、世界最大の民主主義国であるが、我々の優先順位付けと思考の内側に、そしてその中に置かれなければならない。インドネシアなどの新興国と強固な関係を築くことは極めて重要です。

世界中の人々は、私たちが何をしているのかを知っているのを見る必要があります。私たちには戦略があります。私たちは、最新のTwitterフィードではなく、深いポリシーグリップによって作られた計画に従って運営しています。

たとえアメリカに率いられていたとしても、私たちは皆、果たすべき役割を持っています。ブレグジットについて話すことで苦悩を招きませんが、英国がヨーロッパとの良識ある関係を再構築することが急務であり、それによって、私たちが属する大陸の他の国々との相互利益のために、そしてアメリカのリーダーシップと調和して協力することができます。

これは、21世紀の第三十年における西洋民主主義の外交政策プロジェクトである:中国が台頭するのではなく、台頭した時代に、我々の価値観と生活様式を守るためである。

1945年や1980年のように、私たちは成功することができます。退任以来、私がこの世で過ごした時間から学んだ教訓の一つは、結局、人間の精神は自由になりたい、そしてその精神は砕けないということです。

結局のところ、それがウクライナの勇敢な人々がそのような失恋に苦しむ動機となっているものです。彼らがそうするのは、自由のために戦う価値があることを知っているからだ。彼らの危険は私たちを私たちのものに目覚めさせるはずです。古い仮定は崩壊した。世界は自分のペースで動いており、私たちを待っていません。

この変曲点は、ある意味では、1945年や1980年のそれよりも深刻です。私たちは、組織、知的重荷、持続的な焦点、共通の目的意識、そしてそれを達成するための共通の戦略を必要とします。

私の最後のポイントは、私たちが自分自身の政治を癒さない限り、これは起こりません。英国はどのようにして、ナイジェル・ファラージとジェレミー・コービンが、我々の政治を形作るために、短いながらも結果的な時期にやって来たのだろう?それともアメリカは、ワクチン接種を受けたかどうかは政治的忠誠心を表した場所ですか?

私たち自身の政治の狂気は止めなければなりません。幻想にふける贅沢は許されません。私たちは理性と戦略を鞍に戻す必要があります。そして、私たちは緊急にそうする必要があります。

著者 トニーブレア

イギリスと北アイルランドの元首相、トニー・ブレア地球変動研究所の理事長

2022/07/23 天声人語
国連の人口推計

 国連が先週、世界の人口推計を3年ぶりに改定した。注目されたのは、世界最多である中国の人口が今年から減少に転じることだ。そしてもう一つ、世界人口の年間増加率が1950年以降で初めて1%を割り込んだ
▼人口の減少や伸びの鈍化は経済にどう影響するのか。ヒントを求めて、ロンドン大のグッドハート名誉教授らが書き、今年邦訳が出た『人口大逆転』を開いた。その主張は、これからは長きにわたるインフレの時代が待っている、というものだ
▼理由は、過去30年にわたって物価の低下をもたらした条件が失われるからだ。その条件とは、グローバル化を通じて、中国を先頭に豊富な労働力が世界経済に供給されたことだ。生産が活発になり、モノやサービスの量が増え、値段が下がった
▼豊富な労働力があるために各国の企業は賃上げを抑えることができ、それもインフレを抑制した。少子高齢化で先を行く日本でデフレが続いたのも、こうした国際要因が大きいと分析している。しかしこれからの世界的な労働力不足は、長期インフレの時代をもたらすという
▼世界でインフレはすでに起きているが、原因はコロナの反動による需要拡大、そして戦争に伴うエネルギー価格の上昇だ。目の前のインフレが一段落したとしてもその後に主役が待っているのか
▼思い切った主張ゆえ、同書には反論も多いだろう。しかし予測が当たれば、現在各国が迫られているインフレとの格闘は、将来への予行演習ということになる。