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続折々の記 2022 ⑪
【心に浮かぶよしなしごと】
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【 07 】10/19~     【 08 】10/23~     【 09 】10/25~
――――――――――――――――――――――――――――――
【 01】10/10
     どうして戦うのか目的をみんなで考えるべきだった  逃げ出したロシア兵
     田中宇の国際ニュース解説の詳細(3編)  
        産油国の非米化
        米英覇権を潰す闘いに入ったロシア
        破綻が進む英米金融

 2022/10/10
どうして戦争するのか目的をみんなで考えるべきだった
逃げ出したロシア兵

朝日新聞1面の記事「逃げ出したロシア兵 ロシアはどっち?投降は、怖いから嫌です」 この記事を目にしたとき、それは本当か? と疑った。 自分が予科練を志願して戦争に参加したのは、一途にみんなの為でした。 簡単にみんなのためというが、いろいろと考えた末でした。 家族にも相談しなしに志願したのは、今思うとこの方法は間違っていた。 公然として相談すべきことだった。

プーチンのウクライナ侵攻はどうだったのか? 戦争はロシアにせよアメリカにせよ、大統領の専決事項として定めてあるのか?

戦争はロシア大統領の専決事項として定めてあるのか?

クリックできれば開いてもらうのがいい。 この検索語で出てくる項は、1,630,000,000 件となっている。 勿論この通りのURLではないにしても、始めの10例だけでもいいから取り上げておきたい。 

戦争はロシア大統領の大統領の専決事項として定めてあるのか?
    1,630,000,000 件の検索結果時間指定なし
①ロシア “プーチンの戦争”終わりは? 外交の専門家が分析 | NHK
    https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news...
2022/08/26 · ロシア軍はウクライナの領土をゆっくりと占領しながら、激しく、血まみれになって前進していますが、到達すべきラインがどこにあるのか ...
さらに詳しく探す
  プーチンの末路3つのパターン、クーデターか内戦か ...jbpress.ismedia.jp
  ロシア大統領プーチンは既に亡くなっている ...asspra.com
  プーチンは既に暗殺され今は影武者?耳の比較で ...chanare.com
  プーチン退陣の可能性とその後のシナリオ 識者が ...newsphere.jp
  プーチン「2022年秋の失脚」軍は爆発寸前 | 週刊文春 ...bunshun.jp
②【解説】 戦争犯罪とは? プーチン大統領を裁くことは可能な …
    https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-60746620
2022/04/04 · イギリス政府も、ロシアは「野蛮で無差別」な戦術を行使していると非難。3月末には、ロシアによる戦争犯罪の捜査においてウクライナ政府を ...
③【詳しく】ロシアの憲法って?プーチン大統領と憲法改正
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220530/k...
2022/05/30 · 憲法改正前のプーチン大統領の任期は、2024年まででしたが、憲法改正によってこれまでの任期をリセット、つまり無かったことにして、新たに ...
④ロシア敗北 プーチン大統領10月に〝終戦宣言〟か 東部の支配 ...
    https://www.zakzak.co.jp/article/20220915-K7ML3E6...
2022/09/15 · プーチン大統領 ロシア政治に詳しい筑波大学名誉教授の中村逸郎氏は「ロシア軍にとって侵攻開始後、最大の痛手となっている。G20(20カ国 ...
⑤ロシアが戦争しているのはなぜ?わかりやすくシンプルに ...
    https://www.tokyoshinjuku.jp/russian_war
2022/04/02 · 目次 1 ロシアがウクライナと戦争しているのはなぜ? 1.0.1 NATOって? 1.0.2 ウクライナがNATOへ加盟するとどうなる? 1.0.3 なぜ戦争という手段を取ったの? 1.0.4 ウクラ …
⑥「ロシアから逃げろ」アメリカ警告の裏で、プーチン大統領は ...
    https://news.yahoo.co.jp/articles/e22c0c249658dc8259c9ae...
2022/09/30 · 「ロシアから逃げろ」アメリカ警告の裏で、プーチン大統領は大量の「ヨウ素剤」購入報道…「核戦争」の可能性はあるのか今年2月に始まり ...
⑦終結が見えないウクライナ戦争、ロシアの本音を読み解く(後 ...
    https://www.data-max.co.jp/article/48778
21 時間前 · ウクライナ戦争はいつ終わるのか? 慶應義塾大学法学部教授 細谷 雄一氏 プーチン大統領は、ロシアの安全保障を目的として領土を拡大しようと ...
⑧ロシア、ウクライナがNATO加盟断念しても戦争やめない=前 …
    https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-medvedev...
2022/08/28 · ロシアのプーチン大統領の盟友メドベージェフ前大統領(写真)は26日、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)への加盟を正式に断念しても ...
⑨プーチン大統領が"ウクライナ4州併合"強行 起こり得る ...
    https://www.ktv.jp/news/articles/?id=01692
2022/09/30 · 日本時間の9月30日夜、プーチン大統領はウクライナの4州を一方的にロシアに併合する宣言を行う見通しです。果たしてその狙いとは。 2022年2月にウクライナへの軍事侵攻 …
⑩戦争の代償、ロシアが「耐えられないものに」 仏首相
    https://www.cnn.co.jp/world/35194082.html
2022/10/03 · フランスのボルヌ首相は3日、議会で演説し、ウクライナでの戦争は続くが、フランスは準備が整っており、ロシアにとって戦争の代償を耐えられ ...

戦争はアメリカ大統領の大統領の専決事項として定めてあるのか?
    1,630,000,000 件の検索結果時間指定なし
①トランプの戦争(2):どのような法的権限でトランプ大統領 …
    https://news.yahoo.co.jp/byline/nakaokanozomu/20171110...
2017/11/09 · トランプ大統領は北朝鮮に対して“先制攻撃”を加えることはできるのか。できるとすると、その法的根拠は何か。本稿では大統領の“戦争権限 ...
②アメリカ連邦議会の戦争権限
    https://www.ne.jp/asahi/frontier/journal/article040818.htm
しかしながら、合衆国憲法においては、最高司令官としての性格以外に大統領の戦争権限を明示する規定は存在しない。. これに対して連邦議会には合衆国憲法上、5つの権限が明示されて …
③アメリカの大統領は、交戦権を持っているのですか? - 確か ...
    https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/...
2013/09/04 · 宣戦布告を経る“正式な”戦争は、議会の承認を必要とします。そこまで行かない一時的な軍事行動は、大統領の出動命令という形を取って開始できるのです。仮に外国が攻め …
他の人は以下も質問しています
  アメリカ大統領の強さと弱さ、そして真に強い大統領とは!?
  アメリカ大統領の役割は何ですか?
  アメリカ大統領の権限は何ですか?
④在任中に「戦争」を起こさなかったアメリカのトランプ大統領 ...
    https://note.com/forestpub/n/n897b1c309fe8
日本人が知らない間に世界はずっと「戦争」を続けている「戦争」を知らなければ「戦争」を議論することすらできない「現代の戦争」はもはやドンパチしない「いまの自衛隊では日本は守れない」という事実と向き合う日本人は戦争をとくに知らない。 だって、戦争やってないもん、日本は。 いいことなんだぜ? 「太平洋戦争やりました!」 まあその通りだけど。 少なくとも今の私の読者たちがごく普通に参加しているという戦争はないわけだ。ということは、我々は戦争を知らなくてよくて育ってきた。だから、知らないのは当たり前だ。 ところが、よその国はずーっとやり続けている。 …
⑤大統領がナルシストだと戦争長引く?アメリカで期間と性格の ...
    https://news.livedoor.com/article/detail/22954083
2022/10/02 · 歴代アメリカ大統領の性格とアメリカが参加した戦争の期間について調査した研究では、「大統 戦争の契機やそれが長引く理由にはさまざまな ...
⑥アメリカ大統領の権限と弱点 [社会ニュース] All About
    https://allabout.co.jp/gm/gc/292846
アメリカ大統領のもうひとつの役割は、軍の最高司令官としての役割です。宣戦布告は議会の権限ですが、それ以外の軍にかかわる権限はすべて大統領のものです。世界最強の軍隊を、自 …
⑦アメリカで新しい戦争を始めなかった唯一の大統領? それが ...
    https://sagashikata.com/president-and-new-war
2020/11/16 · トランプ大統領は 「新しい戦争を始めなかった唯一の大統領」 だというのです。. 本当なのでしょうか(そして、アメリカってそんなに戦争しているのでしょうか…)?. とい …
⑧アメリカDSとNATO、ゼレンスキー政権こそ「戦争犯罪人」で …
    www.peters.jp/ba/future_direction/The-US-DS-NATO-and...
2022/07/15 · アメリカDSとNATO、ゼレンスキー政権こそ「戦争犯罪人」であり、「テロ支援国家」. どうして?. ゼレンスキー大統領の懐が侵攻後も膨らみ続けている謎. 2020年からのコ …
⑨アメリカが戦争に介入したときの大統領は殆どが民主党の者 ...
    https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/...
2020/09/21 · 政治、社会問題. アメリカのバイデン大統領が、「中国が台湾に前例のない攻撃があれば防衛する」と言ったと報道されていますが、 前例のない攻撃とは具体的にはどんなも …
⑩「ロシアから逃げろ」アメリカ警告の裏で、プーチン大統領は ...
    https://news.yahoo.co.jp/articles/e22c0c249658...
2022/09/30 · 「ロシアから逃げろ」アメリカ警告の裏で、プーチン大統領は大量の「ヨウ素剤」購入報道…「核戦争」の可能性はあるのか今年2月に始まり ...

 ▼1面=2022/10/10
逃げ出したロシア兵 ロシアはどっち?投降は、怖いから嫌です      

 窓から見えたのは、一目散に逃げ出すロシア兵の姿だった。

 ウクライナ北東部ハルキウ州のバラクリヤ郊外。乳製品工場で働くヤロスラウ・ジャナシヤさん(31)は9月6日の朝、自宅前の通りを走る5人くらいの兵士を目撃した。「ライフルを放り投げてしまうほど急いでいました」

 ウクライナ軍はこの日、ハルキウ州で、ロシアが占領する地域の奪還作戦を電撃的に始めた。バラクリヤは、最初に解放された主要な街の一つだ。

 ロシア軍は3月初旬にバラクリヤ一帯を占領。ただ、ジャナシヤさんには、彼らが「プロ」の兵士には見えなかった。「軍服すら統一されていない。防弾チョッキも着けていない若者がほとんどだったんです」

 だからこそ、ウクライナ軍が進撃を始めると、パニック状態になって逃げたのだと思っている。市民になりすまそうと洋服を奪ったり、民家を訪ね「隠れさせてほしい」と言ったりする兵士もいたという。

 ロシア兵は撤退時、軍用車や大量の弾薬、武器を破壊もせずに残していった。

 ウクライナ軍はその後も攻勢を続け、ハルキウ州ほぼ全域を奪還。ロシアのプーチン政権はその後、それまでの慎重姿勢を転換し、ウクライナ東部・南部4州の一方的な併合宣言へと突き進んだ。「ロシア領」にして反転攻勢への抑止力にする狙いが一つ。加えて、「領土を守る」という口実を作り、国内で出した部分的動員令を正当化する必要に迫られたためだ。「敗走」が政権に与えた衝撃は、それほど大きかった。

 バラクリヤには「敗走」にすら間に合わなかった兵士がいた。住民のボロディミル・バシュタさん(47)によると、高齢の夫婦の家に夜、20代くらいのロシア兵がやって来て尋ねた。「ロシアの方向はどっちか?」

 街にはすでにウクライナ軍が入っていた。夫婦は「投降しなさい」と促した。

 「怖いから、嫌です」
 兵士はそう言って、立ち去ったという。(バラクリヤ=高野裕介)

▼2面
解放の街、こびりつく不信 密告、隣人はロシア「協力者」だった

写真・図版 ここをクリックして開き四つ目の画像をクリックすれば、細かい字が読めます。

 ウクライナ軍が9月の電撃攻勢で、ロシアから最初に奪還した街の一つ、バラクリヤ。約半年に及ぶ占領から解放されたが、住民にはロシアへの複雑な感情と、「協力者」への不信が残っていた。

 「ロシア兵を気の毒に感じている人すらいる」。バラクリヤ中心部で、ボロディミル・バシュタさん(47)はそう語った。

 街の人口は約2万6千人。バシュタさんによると、ロシアに親戚を持つ人も多く、かつて街の周辺の工場などに働きにきたロシア出身者もいたという。歴史的にも文化的にも、ロシアに近い地域だ。

 「高齢者には、旧ソ連時代を懐かしむ人たちも多い。住民の3割がロシアに親近感を持っていると思う」とささやいた。

 住民には侵攻前、「ロシアは占領しないし、何も(悪いことは)しない」と信じる人たちもいたという。だが、実際には略奪や拷問を繰り返した。

 「お前のことは彼から聞いている」

 工場勤務のビクトル・ルデュクさん(48)はロシア兵に拘束された際、そう告げられた。「彼」とは隣人のこと。ルデュクさんは「密告」されていた。

 ルデュクさんの父親は、2014年に東部地域の紛争で親ロシア派と戦った志願兵だった。ルデュクさんと母親は密告され、警察署に1週間以上にわたり監禁された。

 ロシア兵はナイフを耳に突きつけ、「切り落とすぞ」と脅した。電気ショックを肩から加えられ、目の前が真っ暗になった。

 「協力者」の隣人は、ロシア側の息のかかった「役所」で働いていたが、バラクリヤが奪還される前に姿を消したという。

 「つまり、この街に協力者はたくさんいたということだと思う。なぜ同じ地域の住民がロシアに協力するのか、理解できない」

 記者がバラクリヤを訪れたのは奪還から3週間足らずの9月25日。検問所を通ると、緑のテープで目隠しされ、後ろ手に縛られた中年の男性が警察車両に押し込められるのを目撃した。

 「あれは、『協力者』を拘束したんですか?」

 兵士に尋ねると、少し間を置いて、「そういうことだ」とうなずいた。

 ■尋問、頭にポリ袋・指に電流

 ロシアから奪還した地域では、次々と拷問に使ったとみられる施設が見つかっている。ハルキウ州警察の捜査部門トップ、ボルビノウ氏は9月24日、奪還地域で18の拷問施設が見つかったと明らかにした。

 住民によると、バラクリヤでも警察署や印刷会社でロシア軍による拷問が行われたという。

 「誰が警察官なんだ」

 約1カ月間拘束されたというセルギーさん(52)は、そんな尋問を受けた。

 銃床で頭を殴られた。最も恐ろしかったのは、尋問の際にポリ袋を頭にかぶせられ、右手の親指には発電機のコードを巻き付けられたこと。電流で気を失いそうになり、袋で息ができなくなった。

 「耐え抜いて生きているのはラッキーとしか言いようがなかった」。指の感覚はまだ戻らないままだという。 (バラクリヤ=高野裕介)

 ■<解説>反転攻勢に、混乱のロシア軍 新品の弾薬・無傷の戦車残したまま

 ウクライナ軍のハルキウ州奪還作戦で明るみに出たのは、前線のロシア軍部隊の混乱ぶりだ。

 ロシア軍が去った陣地からは、新品の弾薬や配備についたまま無傷で放棄された戦車の映像が次々と伝えられた。撤退の際、残す兵器は破壊しなければ敵の装備に組み入れられる。英国防省は7日、ロシア軍の訓練不足や規律、士気の低さを指摘した。

 ロシア軍は2月の侵攻開始以来、戦死や負傷で半数近い兵力を失ったとされる。プーチン大統領が国内で侵攻を限定的な軍事作戦と位置づけてきたため、補充も困難だった。

 ロシア国防省は今月1日に東部ドネツク州の要衝リマンからの撤退を発表した際、部隊を「同盟軍」と呼んだ。正規軍とは別に、地元親ロシア派の支配地域から徴兵され、訓練が不十分なまま投入された兵士が多かったとみられる。

 ウクライナ軍が反転攻勢に出たのは7月だ。それまで東部の砲撃戦で多くの犠牲者を出したが、形勢を変えたのは、米国から提供された高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」だ。射程が長く、精度も高いため、ロシア軍の拠点を攻撃することを可能にした。

 ウクライナ軍はまず南部ヘルソン州のロシア軍の弾薬庫などへの攻撃を開始。さらに同州の橋も繰り返し攻撃した。占領地で唯一ドニプロ川西岸にある州都ヘルソン周辺を孤立させ、奪い返す狙いだ。現地では今も集落の奪還が進む。

 8月には2014年に一方的に併合し、侵攻後はヘルソン州への補給基地となっている南部クリミア半島の飛行場なども攻撃した。ロシア軍が反応して大量の部隊を南部に転戦させたのを見計らうように、北東部ハルキウ州で電撃的な攻勢に出た。

 プーチン氏は9月、兵力不足を補おうと、「部分的動員」を発令。ただ、予定通り30万人の予備役兵を招集できても、大量に戦場に投入するには時間がかかる。

 さらに衝撃だったのは今月8日に起きたクリミア橋(全長19キロ)の爆破事件だ。クリミア半島とロシアを結び、18年の開通式ではプーチン氏自ら大型トラックを運転までした橋だ。

 クリミア半島はヘルソン州など他の占領地への重要な補給基地であるだけではない。8年間「ロシアの領土となった」と主張してきた土地の実効支配が、侵攻に乗りだしたために揺るがされる事態となれば、プーチン政権にとっては比較にならないほど大きな政治的な影響がある。

 国内では強硬派による批判が高まっている。国防省は8日、シリア内戦を指揮したスロビキン大将をウクライナ全域の作戦を担う合同部隊司令官に任命したと発表した。軍の人員刷新で批判が政権に及ぶのを避ける狙いとみられる。

 プーチン氏は、クリミア半島や併合を宣言した4州への攻撃を理由に戦時体制を導入して、大幅な動員に転じる可能性も指摘される。しかし、動員を拡大すれば、プーチン氏の支持基盤を揺るがしかねず、政治的に大きなかけになる。(喜田尚)


田中宇の国際ニュース解説の詳細(3編)

産油国の非米化
 【2022年10月10日】米政府はサウジやUAE(アラブ首長国連邦)に対し、兵器販売を減少・中止したり、WTOに提訴したり、在米資産を凍結することまでも検討している。これらの策は一見、サウジなどを困らせる策に見えるが、実のところ米国の影響力・覇権を低下させる自滅策だ。サウジやUAEは、米国が兵器を売ってくれなくなったらロシアや中国から買うだけだ。在米資産を凍結されるなら、サウジなどOPECは石油をドルでなく人民元など非米諸国の通貨で売るようにして、ドルや米国を回避する傾向を強める。この流れはドルの基軸性喪失・ドル崩壊につながる。
米英覇権を潰す闘いに入ったロシア
 【2022年10月5日】ウクライナ戦争で最も重要な分野は、ウクライナでの戦闘の状況でなく、金融で世界を支配してきた米国覇権が崩壊していき、ロシアが非米諸国を誘って世界の資源類を握り、米国覇権の崩壊を加速させる国際政治闘争を展開しつつ、世界の覇権構造を米単独覇権から多極型に転換していく国際政治経済の分野である。ウクライナでの戦闘は、この覇権転換にタイミングを合わせる形で、一進一退の感じを長引かせつつ展開していく。
破綻が進む英米金融
 【2022年10月2日】世界金融の中心だった英米の金融システムが崩壊し始めている。英国で先に崩壊が進んでいる。いきなり国債と為替が崩れるのは新興市場の現象だ。トラス政権の経済政策は愚策だが、従来の平時なら、この程度の愚策でいきなり英国債が崩壊することはない。英国債が新興市場の国債さながらに崩壊する現状は、冷戦後構築されてきた英米金融覇権の崩壊を示している。英米覇権は間もなく終わる。

産油国の非米化
2022年10月10日  田中 宇
サウジアラビアが主導する産油諸国の国際組織OPECに、非加盟のロシアを加えた「OPEC+」が10月5日、米国の反対を無視して、11月から日産200万バレルずつ減産すると決めた。2月末のウクライナ開戦後、米国側が対露制裁としてロシアの石油ガスを買わなくなったため、石油の国際価格が1バレル120ドルぐらいまで高騰し、米国側の経済に打撃を与え、先進諸国が不況になった。だがその後7月ぐらいから、不況の影響で世界の石油消費量が減ったため(それと金融界による信用取引を使った石油相場の上昇抑止で)逆に石油価格は下がり、先月は80ドル以下になった。その対策として今回OPECが減産を決めた。石油やガソリンが再び値上がりしそうだ。 (Biden Regime Declaration of War on OPEC?)

米国でガソリンなどが値上がりしてインフレが激化すると、バイデン政権や与党民主党への支持が減り、11月の議会の中間選挙で、民主党がトランプの共和党に負けて野党に転落しかねない。バイデンは石油やガソリンの値上がりを防ぐべく、石油価格が高騰していた今年7月にOPECの盟主サウジを訪問して増産を要請したが、断られてしまった。その後、不況と金融手法によって石油は値下がりしていたが、今回OPECが米国に反逆する形で減産を決め、今後は反騰へと流れが転換する。かつて米国の言いなりだったサウジやUAEが米国に反逆してきたため、バイデンと民主党の米政府は激怒し、サウジやUAEを経済制裁すると言い出している。 (What is NOPEC, the U.S. bill to pressure the OPEC+ oil group?)

米政府はサウジやUAEに対し、兵器販売を減少・中止したり、WTOに提訴したり、在米資産を凍結することまでも検討している。民主党主導の米議会は、OPECを独占禁止法違反の組織として裁判所ゆ有罪判決を出させるNOPEC法案を審議している。これらの策は一見、サウジなどを困らせる策に見えるが、実のところサウジなどに対する米国の影響力・覇権を低下させる自滅策だ。サウジやUAEは、米国が兵器を売ってくれなくなったらロシアや中国から買うだけだ。在米資産を凍結されるなら、サウジなどOPECは石油をドルでなく人民元やルピーなど非米諸国の通貨で売るようにして、ドルや米国を回避する傾向を強める。BRICSは、ドルを使わない国際決済体制の具現化を急いでいる。この流れはドルの基軸性喪失・ドル崩壊につながる。 (The Rise Of The Global South & The Foundation Of A New Currency System)

これまでサウジは石油をドル建てで売り、その売上金で米国債など米国の金融商品や高級品を買いあさり、その結果、米国の金融界と産業界は儲かり、米国債の金利が低く維持されていた。サウジは石油代金のドルで米国の兵器を旺盛に高値買いし、米国の軍産複合体を潤わせていた。この「ペトロダラー」の循環が、中国が製造業の下請けで儲けた資金で米国債を買っていた中国循環と並び、米国の豊かさと覇権の源泉だった。今後、米国がサウジへの敵視を強めて兵器を売らなくなり、在米資産を凍結すると脅し続けると、それはペトロダラー体制つまり米国覇権の崩壊になり、サウジでなく米国が破綻する。サウジは、米国側でなく非米側の新興諸国に石油を売り、非米側の露中から兵器を買えばいいだけだ。 (The Radical Plans To Counter High Oil Prices)

米国覇権の崩壊は、欧州などを含む米国側全体の経済崩壊を引き起こし、米国側の諸国は長い不況・経済破綻を経験するので石油消費も減る。米国側はもうサウジの石油販売のお得意様でなくなるから、サウジが米国側を重視する必要もなくなる。今後の世界経済で発展するのは米国側でなく、中国インド中南米アフリカなど非米側の新興諸国や途上諸国だ。サウジが非米側と積極的に付き合い、米国側が怒って離れていくことは、長期的にサウジを発展させる良い戦略だ。その皮切りとして、今回サウジとロシアが主導したOPECの減産は画期的だ。 (House Democrats Move to Pull US Weapons From Saudi Arabia, UAE in Retaliation for OPEC Oil Cuts)

OPECは1970年代に、米国覇権を壊そうとする非同盟の国際政治運動として、減産して国際石油価格を高騰させる石油危機を起こした。だがその後、1980年代にかけてサウジは米国にすり寄り、世界最大の石油生産余力を使って石油価格を引き下げ、OPECはサウジと米国の主導に転換した。サウジが米国に協力して石油価格を引き下げた結果、ソ連の石油収入が減ってソ連崩壊と冷戦終結を引き起こした。世界は米国覇権の一極支配になり、サウジのペトロダラー(と中国による製造業下請け)が米覇権を支えた。だが2001年の911テロ事件で、サウジ王室のイスラム主義運動(ワハビズム、サラフィ)がテロ組織アルカイダになったという理屈で米国がサウジを敵視し始め、それ以来サウジは米国から嫌がらせを受け続けた。実のところアルカイダは米諜報界に育成されていた。(米国は同時期に中国敵視も開始)。 (Dems propose full break from Saudi Arabia, UAE after OPEC’s ‘hostile act’) (アルカイダは諜報機関の作りもの)

2015年には米国の謀略でサウジ軍がイエメンに侵攻させられ、泥沼のイエメン戦争が始まった。イスラエルが米国にやらせたイラン敵視にサウジも巻き込まれ、サウジはイランとの敵対を強要され続けた(もともとスンニとシーアを対立させて中東を分断したのは英米の策略)。2018年には、事前に米国が裏で認めたサウジ王政によるジャマル・カショギ暗殺事件が、米国がサウジを非難する事態に発展し、サウジははしごを外されてますます敵視された。OPECを独禁法違反として潰そうとする米議会のNOPEC法案も、米議会で20年前から提案されていた。911以来、米国がサウジに意地悪をし続けたのは、米覇権を下支えするサウジを非米側に押しやって米覇権を自滅させようとする諜報界の多極派の謀略と考えられる。だが当のサウジは、どんなに米国から意地悪されても耐え続け、米国の傀儡であり続けた。その理由は、米国の単独覇権体制が圧倒的に強く、サウジが非米化して米国に本当に敵視されると、政権転覆などされて潰されかねなかったからだろう。(その点は日本も同様) (米国に相談せずイエメンを空爆したサウジ) (サウジを対米自立させるカショギ殺害事件)

米国の覇権が強大な限り、サウジは米国からいくら虐められても非米化・対米自立をしなかった(サウジは、2016年にロシアと組んでOPEC+を作ったり、中国への人民元建ての石油輸出など、隠然とした非米化はやっていたが、あからさまな非米化はやらなかった)。だが、状況は今年2月末にウクライナ戦争の開始で米国側とロシアが決定的に対立した後、転換し始めた。ウクライナ開戦と同時に、米英中銀群がリーマン危機後のドルの唯一の支えだったQEをやめてQTを開始し、ドルと米覇権の崩壊が時間の問題になった。世界が、資源類の大半を握るロシア主導の非米側と、金融バブルだけが取り柄の米国側に分裂し、米国側がバブル崩壊して自滅していく流れが始まったOPECにはイランやイラク、ベネズエラやアルジェリアも入っているが、いずれも米欧からひどい目に合わされてきた歴史があり、米覇権の自滅と多極化を歓迎している。 (☛Vladimir Putin's Battle Cry Against The Deep State このサイトへの接続が拒否されました)

サウジは、2016年から用意していたOPEC+でのロシアとの結束を活用し、ロシアとサウジが協力して米国側の石油価格をつり上げ、経済面から米国覇権を潰そうとする策略が強められた。米覇権を運営する諜報界はこの四半世紀、ロシアと中国とサウジを別々に敵視し、嫌がらせを続けてきた。以前は米国が圧倒的に強かったので、サウジ、中国、ロシアの順番で、敵視されても無視して米国と仲良くしようとしていたが、ウクライナ開戦後、露中サウジが結束して米国覇権を潰して世界を多極型に転換しようとする流れに転換した。20年前の敵視開始から今年の転換まで、米諜報界(多極派)の長期戦略に沿っていると考えられる。 ("OPEC's Action Is Testimony To A Staggering US Geopolitical And Geoeconomic Error")

民主党バイデンの米政府は、11月の米中間選挙での敗北に直結しかねない石油製品の高騰を防ぐため、サウジに増産を頼んだものの断られ、むしろ今回減産されてしまったので、拙速な対策として、米政府が持つ非常用の戦略備蓄の石油を放出し、石油製品の価格を引き下げようとしている。米政府は、短期間に戦略備蓄の25%を放出した。この傾向が続くと、今後もし本当に戦略備蓄の石油が必要になった時に備蓄不足の状況になりかねない。バイデン政権があがいても、中間選挙は共和党の圧勝になり、民主党は議会の上下院とも多数派を共和党に奪われそうだ(US Strategic Oil Reserve Hits Lowest Point in Decades)

サウジ王政もプーチンも、米国が共和党政権になることを望んでいる。共和党のトランプ前大統領は、ロシアやサウジと仲良くしたがっていた。民主党はマスコミなどと組んでインチキなロシアゲートをでっち上げ、トランプとプーチンが仲良くするのを妨害してきた。露サウジが今回減産したのは、1ヶ月後の中間選挙で民主党を負けさせ、共和党に両院を取らせるための策略ともいえる。バイデンは不人気が増しているのに再出馬するので、2024年の大統領選でトランプが返り咲く可能性も高まっている。トランプの共和党が政権を奪還すると、米国は多極化を容認して覇権放棄や孤立主義化を進め、NATOや日韓との安保関係から手を引く傾向になりそうだ。日韓はすでに、多極化の準備として中国にすり寄って米中両属の隠然策を強めている。欧州は対米従属とロシア敵視策のはしごを外され、エリート支配が崩れて非米型のポピュリズムが強くなる。世界は長期的に、露中サウジが満足する方向に進んでいる。 (Escobar: The Whole Chessboard Is About To Be Radically Changed)
10日のニュースは、米国の大統領中間選挙を見通した現状認識として受け止めれます。 このニュースの中で「☛」をつけてあるように、米国の手のものが妨害したのかもしれません。
あと5日と2日の記事については、私の仲介はしないようにします。
米英覇権を潰す闘いに入ったロシア
2022年10月5日   田中 宇
プーチンのロシアは2月末にウクライナに侵攻した当初から、敵方である米国側(米欧日など)に対し、ロシア軍を実態よりも劣勢・劣悪なものに見せ、勝てるのに勝たないで負けているふり・弱いふりをする戦略を採っているのでないか。私は、ずっとそのように疑っている。露軍は、侵攻直後にウクライナの制空権を奪取し、今も保持している。米国側はウクライナ上空に入れない。露軍は制空権を持っているのだから、攻撃してくるウクライナ地上軍を上空から反撃して破壊できる。圧倒的に優勢のはずだ。ゼレンスキーを殺すこともできる。だが露軍は、優勢さを十分に活用せず、地上軍どうしで戦闘してウクライナ軍に押されて撤退したりしている。露軍は「負けている」「弱い」のでなく、ウクライナ側との戦闘で「一進一退の状況」を意図的に演出している感じがする。 (プーチンの偽悪戦略に乗せられた人類)

ウクライナ内務省はブチャやイジュームなどで、露軍が占領地で虐殺・拷問などの戦争犯罪を犯したと主張し、米国側マスコミはウクライナ政府の発表をそのまま報じている(ウクライナ当局の監視下でしか現場取材できないのでプロパガンダを鵜呑みにしている)。露軍が占領・警備しているザポロージエ原発に対する攻撃も、露軍が自ら警備している原発を攻撃するはずがないのだから、ウクライナ軍が行っていると考えられる。だが米国側マスコミでは「ウクライナに濡れ衣をかける目的で露軍が攻撃している」という説が出回っている。露政府は、すべてウクライナ政府の捏造だと言っているが、捏造を示す具体的な反証を全く発表しておらず、やられっ放しになっている。露政府はすべてのケースについて証拠つきで反証できるはずなのに、それをやっていない。「露軍の犯行が事実なので、露政府は反証できないのだ」と米国側のマスコミや軽信者たちは言うが、優勢な露軍が虐殺などをするはずがない。 (濡れ衣をかけられ続けるロシア)

露政府はおそらく、戦争犯罪の濡れ衣を晴らさず放置している。「優勢なのに負けたふり」「一進一退状況の演出」も続けている。これらの「偽悪戦略」をやるほど、米国側では「このままウクライナを支援して戦争を続け、ロシアを強く経済制裁し続ければ、ロシアは負けて崩壊するはずだ」という話になり、米国側がロシアを敵視・経済制裁して石油ガス資源類を輸入せずに頑張る状況が続く。米国側が今のような厳しい対露制裁を長く続けるほど、米国側とくに欧州諸国は、資源類をロシアからの輸入に頼っていただけに、経済的に崩壊していき、戦後のエリート支配が崩れ、選挙を経てあちこちでポピュリスト政権ができて親露露側に傾き、EUが反露諸国と親露諸国に分裂して崩壊していく。プーチンは、米国側を経済的に自滅させるために偽悪戦略を採っている。 (IS RUSSIA REALLY LOSING IN UKRAINE?)

(先日のノルドストリームの爆破も、米国の仕業だろう。多極派が牛耳る米諜報界は、ドイツなど欧州を怒らせて非米側に押しやろうとしている。米諜報界は、安倍晋三を殺すことで日本の保守派を怒らせたが、それと同質のことをドイツに対してやったのがノルドストリーム爆破だ) (Ex-advisor to Pentagon chief suggests US, UK might be behind Nord Streams incident)

米国側の経済自滅は、戦後ずっと続いてきた米国覇権の世界体制を終わらせる。前回の有料記事に書いたように、すでに英国は金融崩壊し始めている。これから米国も金融危機になる。冷戦後(1985年の米英金融自由化後)の米英覇権は、債券化による金融バブルで支えられてきたが、その大黒柱が崩壊していく。ウクライナ戦争は、米国のQE終了と重なる時期に開始され、米英の金融崩壊に合わせる形で展開している。冷戦後の世界経済は、米英が主導する金融システムが上位にあり、ロシアやサウジアラビア、中国など、資源類と製造業など実体経済を担当する諸国は下位で、金融面から米英に支配されてきた。この状況は2月末のウクライナ開戦後、劇的に転換した。 (破綻が進む英米金融)

米英主導の米国側は、ロシアから一切の資源を輸入しなくなり、対抗してロシアは中国やサウジアラビアなどを誘い込んで資源類が米国側に行かないように仕向けた。世界は、金融を握る米国側と、資源を握るロシア非米側に分裂した。それと同時に、米英がQE終了で金融危機になる流れが加速し、米国側は実体経済も資源不足に陥って不況とインフレで破綻していく傾向が確定した。それまで上位だった米国側・米国覇権が金融と実体経済の両面で崩壊していく。実体経済の繁栄に不可欠な資源類を握ったロシアなど非米諸国は、ドルや米金融に依存しない決済体制を構築し、米覇権の崩壊後に多極型の国際政治体制を作って世界の運営を引き継ぐ準備を進めている。 (BRICS holds talks on reserve currency – diplomat)

ウクライナ戦争で最も重要な分野は、ウクライナでの戦闘の状況でなく、金融で世界を支配してきた米国覇権が崩壊していき、ロシアが非米諸国を誘って世界の資源類を握り、米国覇権の崩壊を加速させる闘い(国際政治闘争)を展開しつつ、世界の覇権構造を米単独覇権から多極型に転換していく国際政治経済の分野である。戦闘よりも多極化・覇権転換の進展が重要だ。ウクライナでの戦闘は、この覇権転換にタイミングを合わせる形で、一進一退の感じを長引かせつつ展開していく。 (The Golden Road To Samarkand)

プーチンのロシアは今回、ウクライナからの分離独立とロシアへの併合を希望していたロシア系住民が多い東部4州をロシアに併合し、同時に、ウクライナ戦争を国家総動員体制に格上げした。米国側のマスコミや軽信者たちは、この動きを「ロシアはウクライナとの戦争に負けているので、完全に負けてしまう前に時間稼ぎのために4州を併合するとともに、国家総動員体制を敷いて徴兵によって兵力不足を補おうとしている。ロシアは負けつつある」とみなしている。4州併合後、早速ドネツク州のクラスニイ・リマンの街がウクライナ軍に包囲され、露軍が退却して明け渡している。徴兵逃れのために国外脱出を試みるロシアの若者たちのことが米国側で喧伝され、露国民はプーチンを嫌っていると報じられた(支持率8割だけど)。4州の併合後、プーチンら露政府上層部が、米国側との戦争で不利が増したら核兵器を使いうると表明したことも、ロシアが負けて追い込まれている象徴と米国側にみなされた。 (Russian forces withdraw from key Donbass town)

やはり露軍は米国側マスコミが報じる通り、弱くて敗北寸前でないのか??。負けてないなら動員体制など組まなくていいはずだし・・・。そんな疑念もよぎったが、いろいろ考えていくとむしろ、これはプーチンが従来の戦略に沿って、新しい段階の作戦を開始したことを意味すると考える方が、私にはしっくりきた。2月末の開戦からこれまでは、ウクライナ東部で米傀儡のゼレンスキー政権から弾圧殺害されてきたロシア系住民を救うことがロシアの動きの目的とされてきたが、それは今回の4州併合によって一応解決した(一進一退の戦闘は今後も延々と続くが)。今後のロシアの中心課題は「昔からロシアを敵視・虐待し続けてきた米英の覇権体制を壊すこと」になる。悪しき米英覇権を潰し、世界の体制を非米的な多極型に転換することが、今後のロシアの中心課題になる。プーチンは、9月始めの東方経済フォーラムでの演説でそれを打ち出し、今回4州併合時の演説でもそれを強調している。 (ロシア敵視で進む多極化)

ロシアが米英を潰そうとしている。そう書くと、その主戦場は「経済」でなく「軍事」になると思いがちだ。米露が戦争し、核戦争の世界大戦になる!!。大変なことになる!!!。セルビアの親露的なブチッチ大統領などは、そのような思考回路に沿って、9月20日の国連演説で「1-2か月以内に、第2次大戦のような世界規模の戦争になる」と述べたのだろう。だが、それから2週間経ったものの、事態はそっちの方向に進んでいない。軍事的に今の焦点は「世界大戦」でなく、ドネツク州の街クラスニイ・リマンがウクライナ軍に包囲されて取られてしまったという、従来どおりの小規模な一進一退の戦闘だ。おそらく今後も、軍事的な大戦争にはならない。米英覇権を潰そうとするロシアの闘いの主戦場は、軍事でなく経済である。これは軍事と経済の両面がある「複合戦争」で、軍事はウクライナ東部に限定されているが、経済はドルの威力(基軸性)から資源類の世界市場まで幅広い。軍事の戦闘を小規模にすることで、犠牲者を少なくして、効率よく「大戦相当」の覇権転換を引き起こそうとしている。 (特殊作戦から戦争に移行するロシア)

しかも経済面ですら、ロシアと米英が格闘して勝敗をつけるのでなく、ロシアはプーチンとかが「米英覇権を潰す闘いをするんだ」と宣言し続けて石油ガス資源類を米国側に売らないでいるうちに、米英が勝手に金融バブル崩壊していき、欧州も資源不足で経済破綻していく流れになる。米英がこれから金融崩壊していくので、ロシアは戦わずして勝っていく。米英は金融崩壊する可能性がどんどん高くなり、ロシアは何もしなくても不戦勝する。プーチンは、この流れに合わせて「米英覇権と闘って潰すぞ」と宣言し続けることで、何もしなくても「プーチンは米英覇権と闘って勝っている」という話になる。ロシア国内でのプーチンの高い人気が維持される。 (West and Russia already fighting WW3 – former US advisor)

プーチンは今回、ロシア国民に総動員をかけたが、その本質は、米英が金融崩壊していくタイミングを狙って「プーチンと露国民が総動員で米英覇権と闘って勝つ」という構図を作り、ロシア人が戦勝感や達成感を得られるようにしている。これは政治闘争だ。実際に兵士として動員する人数は多くない。プーチンは、2月末に米英がQEをやめると同時にウクライナに侵攻して世界を金融vs資源の強い対立に転換し、今回また米英が金融崩壊を加速しそうなタイミングで4州併合と露国民動員、米英覇権潰しの闘いの宣言を発し、ウクライナの戦争を覇権転換の闘いに転換している。日本など米国側の軽信者たちは「マスコミは本当のことしか報じない」というウソに絡め取られ、米国側マスコミの戦争プロパガンダを信じてしまい、本質が全く見えなくなっている。日本などの左翼リベラルは本来なら、米英覇権の世界支配を壊すロシアの闘いに賛同・参加すべきなのに、間抜けにも米英マスコミのプロパガンダを軽信し、ロシアを敵視している。大馬鹿だ。 (複合大戦で露中非米側が米国側に勝つ)

米英の中央銀行がQEを再開すると、今後も米英金融システムがしばらく延命する。その場合、ウクライナの戦闘の一進一退な状況をしばらく続けて時間稼ぎできる。欧州など米国側の実体経済は悪化し続け、ひどいインフレも続き、金融システムはいったん延命してもいずれまた崩壊する。米国側で流通網を詰まらせてインフレをひどくしているのは米諜報界(隠れ多極派)の意図的な策略だ。インフレ対策という間違った名目で中銀群にQEを止めさせてQTをやらせているのも諜報界。マスコミも諜報界の傘下。英国も隠れ多極派に入り込まれているので、自滅策を連発するトラスを首相にした。プーチンは、米国側の自滅策にうまく便乗しているだけだ。米諜報界は、間接的にプーチン政権に入れ知恵している可能性が高い。世界は、米露の多極派の隠然とした協調によって多極化している。 (世界を多極化したがる米国)

破綻が進む英米金融
2022年10月2日  田中 宇
世界の金融の中心だった英米の金融システムが崩壊し始めている。米国よりも市場規模が小さい英国で先に崩壊が進んでいる。英米など欧米全体は(米諜報界による流通網を詰まらせる策などによって)2021年春からインフレが激化し、今年に入ってウクライナ戦争での極度な対露制裁の跳ね返り(ブローバック)が加わり、欧米(など世界各地)で史上最悪のインフレや物不足になって悪化し続けている。欧米では、インフレの原因がゼロ金利やQEなど中央銀行群の超緩和策にあると間違って決めつけられ(本当の原因は流通網の詰まりと対露制裁)、英米(と英傘下のカナダ)の中銀群は今春から、金利の引き上げとQE停止・QT開始への流れを続けている。原因分析が間違っているので、利上げとQE停止をいくらやってもインフレはおさまらず、むしろインフレが激化している。英米中銀は、利上げ政策を2年続ければインフレが抑止されて2%に戻り、再利下げして成功裏に政策を完了できると言っているが、こうした計画は全くの絵空事だ。 (Bank launches emergency intervention in markets after Kwarteng mini-budget) (世界的なインフレと物不足の激化)

英米の金融システムはリーマン危機後、QEとゼロ金利によってバブル膨張の状態を延命させてきた。利上げとQE停止は、不可避的にバブル崩壊を引き起こす。加えて、ウクライナ戦争と対露制裁の長期化で、ロシアの石油ガス穀物に頼ってきた欧州や英国は、インフレと物不足の悪化で実体経済と国民生活が破綻している。欧米全体で、中産階級が貧困層に没落している。英国企業の6割が燃料高騰を受けて廃業寸前だ。英米は、金融システムと実体経済の両方が破綻する流れの中にいる。戦後の世界を支配してきた米英単独覇権の崩壊が進んでいる。 (UK government bonds: why are yields rising and why does it matter?) (Europe's Economy And Living Standards Are Plummeting)

英国の金融システムの崩壊は、9月末に顕在化した。9月6日に就任した英国のトラス政権は、実体経済の悪化に歯止めをかける目的で、減税を中心とする経済対策を9月23日に発表した。減税で人々の可処分所得を増やし、インフレが不況につながらないようにすることを目指したが、減税は政府の財政収入を減らし、赤字国債の発行増になる。英政府はすでにインフレ対策として国民に対する燃料費の補助金を公金で出しており、連続的な利上げによって国債の利払い金も増加し、財政支出は増えるばかりだ。トラス首相の英政府は、国債の元利払いがおぼつかなくなっているのに、さらに減税して赤字国債の発行を増やそうとしている。トラスは就任直後から国民や財界人に全く期待されておらず、世論調査によると英国民の51%がトラスに辞任を求めている。そして、トラスが打ち出した経済対策は、英国債を債務不履行に陥らせかねない愚策だった。 (UK 10-year bonds see record monthly fall after fiscal upset) (Majority of Brits want Liz Truss to resign - poll)

そのため、週明けの9月26-27日に英国債が急落して長期金利が1日で1%も高騰し、英ポンドの為替も暴落して対ドルで史上最安値まで落ち込んだ。リーマン危機以来初めて長期金利が4%台になり、英国債の運用で資金を作ってきた年金基金が損失を穴埋めするために国債を投げ売りせざるを得なくなり、国債の暴落(金利の高騰)に拍車がかかった。こうした国債危機は、発展途上国や新興市場諸国では起きうるが、英国のような洗練された世界最先端の先進国では、起きるはずのないことだった。英国は途上国に落ちぶれたと揶揄された。英国債の暴落を放置すると、英政府が債務不履行に陥りかねないし、他の先進諸国に金融破綻が波及して世界危機になりかねない。英中銀は9月28日、無制限の資金を造幣して英国債を買い支えると発表し、この介入(QE再開)によって英国債の下落はとりあえず止まった。 (QE to infinity is back - What does that mean for commodities?) ("Forced Selling Of Everything" - UK Pension Funds Are Still Liquidating Assets, Seeking Bailouts)

だが、この英中銀の介入にも問題があった。英中銀は、米カナダなどと並び、コロナ危機開始後にQEを急拡大して英国債をさかんに買い込んできたが、QEがインフレを引き起こしているとの(間違った)批判を受け、今春からQEをやめており、11月からQT(保有国債の減額)を開始することになっている。それなのに英中銀は今回、英政府救済のために無制限の英国債買い支えを宣言し、QEを再開してしまった。批判された英中銀は、今回の英国債買い支えは10月末までに終了し、11月1日から予定通りQTを開始すると発表した。トラス政権は、いったん発表した減税策を撤回せず、予定通り実行すると言っている。もし撤回したら、失策を認めることになり、トラスや財務相の引責辞任につながるので撤回できない。しかし、減税策をやりつつ11月に英中銀が予定通り臨時QEをやめてQTを開始したら、ほぼ確実に、英国債が再び暴落して金融危機を引き起こす。年金基金や銀行が破綻して英国民の生活がさらに打撃される。おそらく、英中銀はもうQTをやらず、QEを再開したまま、むしろQEを増額していく可能性の方が高い。英国は「QT組」から脱落した。 (Bank of England bonds rescue has two ugly implications: more inflation and an even weaker pound) (Ray Dalio says the U.K.’s policies ‘suggest incompetence’ and warns other governments not to make the same mistakes)

QEはリーマン危機後に多用され始めた当初から、本当は破綻している金融システムを見かけだけ延命させる不正でインチキな策だった。少し前まで世界的に、マスコミ権威筋の歪曲解説によって、QEは奇策だがインチキ策でないと思われていた。だが今回、英国が国債破綻を止めて延命するためにQEを再開したことで、QEがインチキな策であることが露呈した(マスコミ権威筋は無視し続けるだろうが)。 (Bank of England intervention won’t be enough) ("Prices Must Come Down": Germany Redeploys COVID Cash To Fight Inflation)

QEは不正な金融延命策だが、いま起きているインフレ激化の原因ではない。2008年のQE開始から2021年のインフレ開始まで、米欧日の中銀群はさかんにQEをやり続けたが、全くインフレにならず、むしろ日本などはデフレが続いていた。金融と実体経済のシステム間の分離が進んでいるので、金融システムに過剰資金を注入しても実体経済の物価が上がらない。QEはインフレの原因でない。だが(諜報界の多極派に牛耳られた)米英の上層部では、QEがインフレの原因として断定され、中銀群はQEをやめて資金回収のQTをやれと加圧されている。英中銀は、QEを続けてほしい英政府と、QEやめてQTやれと加圧してくる米国側などとの板挟みになる。 (Larry Summers Pre-Empts Coming Crash, Says Market Feels Like 2007)

これまでの金融崩壊は、まず下位にある民間の高リスクな債券や株式の相場が暴落し、民間の崩壊が進むと上位の国債や銀行界の危機へと波及する(ので、その前に当局が介入して危機を止める)という「下から上へ」の破綻拡大の流れがふつうだ。少なくとも、英国のような先進国ではそうだった。だが、9月末に起きた英国の金融危機は、愚策な財政政策を打ち出した英政府に対する信用の失墜から英国債とポンド為替の暴落が起こり、株価の下落に拍車をかける「上から」の破綻拡大になっている。 (IMF criticizes huge UK tax cuts and urges a rethink)

いきなり国債と為替が崩れるのは、民間金融の裾野が狭い新興市場の現象だ。トラス政権の経済政策は愚策だが、従来の平時なら、この程度の愚策でいきなり英国債が崩壊することはない。英国債が新興市場の国債さながらに弱っちく崩壊してしまう現状は、1985年の金融自由化以来構築されてきた英米金融覇権のシステムが崩壊しつつあることを示している。英米覇権は間もなく終わる。 (Why Bonds Are Behaving Like Risky Assets) (Calling The UK An Emerging-Market Is No Longer A Joke)

今回の英金融危機の背後には、覇権暗闘的ないくつかの要素がある。一つは、2月からのウクライナ戦争での対露制裁で、英経済が意外に大きな打撃を受けていること。マスコミでは、英国よりもドイツの経済打撃がずっと大きいように報じられているが、マスコミは英国の傀儡であり、実はドイツより英国の方が打撃を受けているのかもしれない。英国は、本音は中立を保ちたいドイツよりはるかに強くロシア敵視策をやっている。ロシアが複合戦争の経済分野で反撃しているなら、主たる標的は英国になる(対ドイツは、ロシア側に転向させるために痛めつける)。プーチン(と米諜報界の隠れ多極派)は、米覇権の黒幕として戦後ずっと米国にロシア敵視をやらせてきた英国を衰退させたい。英国のくびきから解かれれば、米国は元来の非覇権的な孤立主義(多極主義)に戻り、ロシアや中国と仲良くなる。 (Are We Falling As Rome Did?)

加えて、ジョンソン辞任の際の記事にも書いたように、英保守党内には、ネオコン系(英国を自滅させたい米国発の隠れ多極派の傀儡)と、ナショナリスト(自滅を防ぎたい英土着派)との暗闘がある。ジョンソンとトラスはネオコン系だ。ウクライナに対する過激なテコ入れや、中国敵視をやっているのもネオコン系だ、彼らに牛耳られ続けると英国は弱体化する。ジョンソンはナショナリストの反乱によって辞めさせられたが、自分の派閥のトラスを後任首相にすることに成功した。今回のトラスの経済失策(の反応として国債を暴落させたこと)は、トラスを引責辞任させたいナショナリストにとって好都合に見える。だが同時に、国債暴落は英国破綻の顕在化であり、トラスが辞めずに経済失策に固執して国債暴落を何度も再発させると英国は滅び、多極派に好都合だ。壊し屋と建て直し屋では、壊す方がやりやすい。 (英ジョンソン首相辞任の意味) (Pound Tumbles After Truss Signals No Reversal In Fiscal Stimulus Plans)

3つ目の要素は、英中銀のQT開始の直前に今回の危機が起きたこと。米連銀はリーマン危機から巨額のQEを続けており(総額8兆ドル)、QTで元に戻すのは難しい。対照的に、英中銀がQEを本格化したのは2020年のコロナ危機後であり、元に戻すことは不可能でなかった。だが、今回の国債危機でQT開始は困難になり、むしろQE再拡大に道が開かれた。QEが続いている状態でトラスの愚策が発せられたのであれば、英国債は暴落しなかった。今後の注目点は、米国も、今回の英国のように、何らかのきっかけで金融危機が起こり、その対策としてQTをやめてQEを再開するのかどうかだ。米英がQEを再開すると、金融覇権は延命し、その間、多極化は進まなくなる。 (London On Verge Of Losing Europe Market Supremacy) (Peter Schiff: Jerome Powell Still Thinks He Can Pull Off The Impossible)

米国債は、英国債のように暴落していないものの、米連銀の短期金利の利上げと、インフレ激化に伴って金利上昇(債券相場下落)が続いており、これに連動して米国株も下落し続けている。連銀は、予定より少額だがすでにQTを続けており、これも株や債券の下落に拍車をかけている。英国に続いて米国でも株や債券が暴落して金融危機になると、その対策として連銀がQTをやめてQEを再開するかもしれない。それが起きるのかどうかが注目点だ。米金融筋の中には、連銀のパウエル議長はインフレ対策としてQTをやり抜くと何度も強調しており、簡単にQE再開にはならず、その前に大規模な金融危機が起きると予測する人もいる。パウエルがQTや利上げに固執する頑固な姿勢をとるなら、米国の金融破綻、ドルや覇権の崩壊は前倒しされて早めに起きる。 (This Looks A Lot Like the Dot-Com Bust With One Big Difference - Inflation) (Nomura: When Does The Fed "Blink"? )

中国政府は先日、国有銀行群に対し、ドルを売って人民元に換金しておけと命じた。これは、人民元の国際化策の一環として報じられているが、実のところ、間もなくドルが崩壊するのでその前に手放せという話かもしれない。 (Beijing orders state banks to get ready for massive dollar dump - Reuters)

英米はQEをやめてQTと連続利上げに転じているが、EUの欧州中銀(ECB)はもっと消極的で、QEを減額したがQT開始は未定、利上げも8月に始めたばかりだ。日銀はもっと消極的で、いまだに従前通りのQEを続け、金利もゼロのままだ。QEはインフレの元凶だと勘違いしている人々からすると、ECBや日銀は「悪」だ。だが実のところ、QEはインフレの原因でない(だから日本はQEを続けてもインフレ上昇が欧米より緩やかだ)。日銀やECBがQEを続けていることは、今のように英米の金融崩壊が加速している時には、むしろ英米の破綻を日欧に波及しにくくする現実的な良策となっている(最終的な金融破綻は免れないが)。今は円安ドル高だが、英国の金融危機が米国に波及すると、ドルの信用が低下して円高ドル安に戻るかもしれない。 (The 'market riot' won't stop until the Fed pivots from quantitative tightening, Societe Generale strategist says)


朝日新聞のニュースと田中宇の国際ニュース解説は、アメリカ・ウクライナ・ロシアの動きと世界全体の動きの二つの解釈の軽重や将来を見通した見方の違いを知ることができると思います。 田中宇の各節の(ニュースの根拠)を検索するとより確実なニュースとして理解できます。 どちらにせよ、疑えばきりがありません。