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折々の記 2013 ⑦
【心に浮かぶよしなしごと】
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12 28 安倍総理の靖国神社参拝の波紋 拙速な独りよがり
12 29 安倍総理の靖国神社参拝の波紋 拙速な独りよがり
12 28 (土) 安倍総理の靖国神社参拝の波紋 拙速な独りよがり
「米の失望」、安倍首相の誤算 靖国参拝、強まる逆風 2013年12月28日05時00分
安倍晋三首相の突然の靖国神社参拝から一夜明け、批判や懸念の声が世界に広がった。「失望」を表明した米国、「遺憾の念」を示したロシア、「慎重な外交」を求めた欧州連合(EU)――。日本への逆風は中国、韓国にとどまらず、国際社会で孤立感が深まっている。
▼10面=米中韓識者は、11面=広がる波紋 (続いて掲載します)
「日本包囲網」が瞬く間に形成された背景には、首相が靖国参拝をごく限られた側近だけと決めたことがある。「参拝を歓迎する人たちの旭日(きょくじつ)旗に囲まれるわけにはいかない」(政権幹部)と事前の情報漏れを防ぐことを優先させたため、外交当局を交えて関係国の反応を十分吟味しなかった。首相秘書官の一人は26日の参拝直前、「官邸で首相がモーニングを着ていたので驚いた」と明かした。
■ 日米防衛相の電話協議中止
安倍政権が外交の柱に掲げた日米同盟の強化は参拝を境に暗雲が立ちこめた。27日、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設先である名護市辺野古埋め立ての知事承認に絡み、小野寺五典防衛相と米国のヘーゲル国防長官が電話協議をする方向で調整が進んでいたが、都合が合わないとして急きょ中止になった。
関係者は「靖国参拝が影響したかわからない」と歯切れが悪い。
首相の参拝を機に対応に追われる外務、防衛両省内に無力感が広がっている。
両省内に参拝するとの情報が伝わったのは当日朝。参拝から約1時間後、小野寺氏が外務省に駆け込み、岸田文雄外相と対応を協議する慌てぶりだった。外交ルートで中韓に参拝を伝えるのも直前になり、ほかの国々の多くには参拝後、首相の談話を紹介し、理解を求めるのが精いっぱいだった。
参拝への批判に対し、有効な手立てを講じる動きは鈍い。首相周辺は米国の批判を当初、「在日米国大使館レベルの報道発表だ」。その後、国務省が同様の談話を発すると、政府高官は「別の言葉から『失望』に弱めたと聞いている」と語った。官邸から外務省には「参拝で外交に悪影響が出ると記者に漏らすな」と伝えられたという。
27日、首相官邸で記者団の取材に応じた首相自身もこう語るだけだった。「戦場で散った方々のご冥福を祈って手を合わせる。世界のリーダーの共通の姿勢だ。そのことを理解してもらうよう努力したい」
(2面に続く)
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(2面)
強行参拝、孤立招く 米とすきま風、外務省懸念 首相、靖国へ 2013年12月28日05時00分
写真・図版首相靖国参拝に対する各国の批判 写真・図版 (1面から続く)
説明を尽くせば、靖国参拝を米国は理解してくれる――。安倍晋三首相はそう思っていた節がある。
「靖国参拝の問題は、米国人の立場に置き換えて考えてもらえればと思う」
5月、首相は外交評論誌「フォーリン・アフェアーズ」のインタビューを受けた。首相はそこで、米大統領が戦没者を追悼するアーリントン国立墓地を引き合いに、現職首相が靖国に参拝する正当性を主張した。南北戦争の南軍の兵士も埋葬されている同墓地への追悼が奴隷制度の肯定に当たらないとする米大学教授の指摘を引用し、「靖国参拝も同様の議論ができる」とも訴えた。
だが、首相の主張は米側に受け入れられなかった。
10月に訪日したケリー国務長官とヘーゲル国防長官は靖国神社ではなく東京都千代田区の千鳥ケ淵戦没者墓苑に足を運んだ。外務省内には「靖国神社はアーリントン墓地ではないというメッセージだ」との受け止めが広がった。
そんな米国の「真意」を、首相は最後まで読み誤った。26日の参拝直後、首相は記者団に「靖国参拝はいわゆる戦犯を崇拝する行為だという誤解に基づく批判がある」。7カ月前のインタビューと同じ立場を示した。
「誤解」との表現で自らの参拝の正当性を訴えた首相に対し、米国の反応は「失望」だったが、首相周辺の危機感は薄い。政権幹部は「米国はクリスマス休暇中だし、言葉を練れていなかったのでは」と分析。側近の一人は「米国は同盟国なのにどうかしている。中国がいい気になるだけだ」と不満を漏らした。
ただ、政権の足元では、懸念の声が強まり始めている。外務省幹部は「『失望』という表現はショックだ。米国との間にすきま風が吹くと中国、韓国、北朝鮮が日本に強く出てくる」と指摘した。
日米のきしみは、普天間問題にも影を落とした。参拝翌日の27日、仲井真弘多(ひろかず)沖縄県知事が移設先の名護市辺野古の埋め立てを認めた。停滞してきた普天間移設を進める節目で、米政府の評価は高い。
だが、靖国参拝で効果は相殺される結果になった。政府関係者は27日、こう嘆いた。「靖国参拝のおかげで沖縄がかすんでしまった。歴史的な進展なのに」
■ 米の変化、中国を意識
一方の米国。靖国参拝を巡り表向き中立の立場を取ってきたが、今回、反対を鮮明にした。なぜ、対応が変わったのか。
最大の要因は、日本を取り囲む東アジアの安全保障環境の変化だ。
「日米韓が関係を改善すれば、地域はより安定する」。バイデン米副大統領は12月初旬、訪問先の韓国での講演で訴えた。
小泉首相が参拝した2000年代と比べると、米国と中国の国力の差は縮まっている。アジア重視を掲げるオバマ政権は、中国の台頭に対処するためにも、同盟国同士のこれ以上の関係悪化は、何としても避けたかったのが本音だ。米国防総省高官は27日、「『失望した』という声明がすべて。参拝は摩擦を増幅させる。我々にとっても、日本が近隣諸国と良好な関係を持つことが重要だ」と釘を刺した。
尖閣諸島を巡る日中の対立も、小泉政権時代との違いだ。偶発的な衝突が米国をも巻き込んだ軍事紛争に発展することを強く懸念するオバマ政権は、これ以上緊張を高めないよう両国に求めていた。それが今回、米政府は日本側が緊張を高める行動をとった、とみなした。
もう一つの違いはオバマ政権とブッシュ前政権の外交方針だ。トルーマン国家安全保障プロジェクトのアリ・ラトナー研究員は「オバマ政権はブッシュ政権より対中政策で建設的な関与を重視する」と話す。
保守色の強い安倍首相と、民主党内でもリベラル系とみられてきたオバマ大統領の「相性」もある。2月の日米首脳会談後、安倍首相は「オバマ大統領とケミストリー(相性)が合った」と語ったが、米国側にはこうした見方はない。
カーネギー国際平和財団のジム・ショフ上級研究員は「米国は昔よりも北東アジアと自国の安全保障上の国益を結びつけて考えているし、地域の緊張も高まっている。首脳同士の関係もブッシュ・小泉時代と同じではない」と語る。複数の要因が重なり、今回の対応につながったという分析だ。
(ワシントン=大島隆)
■ 「戦後秩序に挑戦」ロシア同調
「国際的な歴史観、価値観から言って、安倍氏は異端だ。米国を含む国際社会が、彼という人間の信頼性に疑問を持ったはずだ」。26日、中国外務省幹部は朝日新聞記者にこう話した。
中国は靖国参拝を「戦後国際秩序への挑戦」(秦剛外務省報道局長)と位置づけて批判することで、安倍政権を孤立させる戦略を鮮明にしている。
中国の言う「戦後国際秩序」とは、第2次世界大戦で、日本やナチス・ドイツを破った米ソや中国(中華民国)などの連合国が主導して築いた世界秩序のことだ。戦争犯罪人への厳罰や領土の返還など、日本の降伏条件を定めた「ポツダム宣言」もその礎とされる。
ロシアが今回、安倍首相の参拝を「遺憾だ」と批判したのは、「第2次大戦の結果の見直しは認めない」とのシグナルを改めて送る意図があったとみられる。
第2次大戦をめぐり、ロシアは前身のソ連の役割をファシスト国家のナチス・ドイツと日本から、欧州とアジアを解放した立役者と位置づける。こうした立場は対外的なものだけでなく、戦後のソ連・ロシアの国民の価値観や愛国心の基礎にもなっている。
安倍首相がどのように弁解しても、ロシアは靖国神社を軍国主義の象徴と受け止める。そこに日本の首相が参拝することは、大戦の歴史的評価に対する挑戦にほかならない。
北方領土問題でも、ロシアは「日本は第2次大戦の結果を認めた上で交渉すべきだ」との立場だ。日本との関係強化を目指すプーチン大統領は、今年だけで安倍首相と4回会談した。ただ、今回の首相参拝に対して、ロシアは異例の外務省声明で「遺憾の念」を示しただけに、領土交渉や経済協力の機運が再び冷え込む可能性もある。
(北京=林望、モスクワ=関根和弘)
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(10面)
靖国参拝、米中韓が怒るわけ 識者に聞く 2013年12月28日05時00分
写真・図版 写真・図版 写真・図版 写真・図版
安倍晋三首相が強行した靖国神社参拝に国際社会が厳しい目を向けている。参拝は日本に何をもたらすのか。米中韓の識者に聞いた。
■ もう日本の擁護難しい 米外交問題評議会上級研究員、シーラ・スミスさん
――安倍首相の靖国参拝に、米政府は「失望した」と異例の批判をしました。
「私もショックを受けました。安倍氏は、参拝の日本にとってのコストを理解し、代わりに中国や韓国に対する外交的な努力に取り組むと考えていましたが、私は間違っていました」
「もし安倍氏が、単に自分の支持層に応えるためではなく、中韓が対話に応じないからと、あえて緊張を高め譲歩を迫る外交カードとして参拝したとしたら、地域の国々だけでなく、米国の考えも読み違えています」
「オバマ政権の政策担当者の多くは、安倍氏が経済を優先課題に据え、中韓に対話を提案することを好意的にとらえていました。安倍氏によって、日本の戦略的な展望に関するオバマ政権の見方は、より前向きなものになっていたのです。しかし、そうした矢先の参拝は、日本を傷つけることになりました」
――米国は従来は公式には首相の靖国参拝を批判することは避けてきました。なぜ今回は異なる対応になったのでしょう。
「中国との関係では、小泉政権時代の日本は少なくとも対話をしようとしていたし、かたくなな態度を取っているのは中国側と見られていましたが、いまは違う見方があります。それに、現在は尖閣諸島の問題もあります。この問題で日本の対応に非はありませんが、参拝で、予測不能な状況に拍車がかかるかもしれません」
「二つ目はもちろん、韓国との関係です。ワシントンでは、歴史や安全保障の問題で、朴槿恵(パククネ)政権が少し過剰反応なのではという見方もありました。米政府も関係改善を手助けしようとしていましたが、安倍氏の参拝によって難しくなりました」
――日米関係への影響も出てくると思いますか。
「当然あるでしょう。日米防衛協力のための指針見直しなど多くの安全保障上の課題に取り組もうとしているときに、安倍氏は泥をかき混ぜて水を濁らせるようなことをしました」
「オバマ政権の当局者たちは、国内や韓国など外国の懸念に対して、『安倍首相は現実的な見方をする人物で、心配する必要はない』と、安倍氏と日本を擁護する側に立っていたのです。しかし、こうした取り組みは難しくなるでしょう。安倍氏の行動は合理的な政策目標の追求よりも、イデオロギー的な動機に基づくという見方が増えるかもしれません。いわゆる『国家主義的な目標』を追求しようとしているのかと、疑問を抱く人も出てくるでしょう」
「安倍氏がなぜ参拝したのか、理由は複雑かもしれませんが、結果は明白です。日本の政治的な選択肢を狭めることにつながり、新しい安全保障環境への戦略的な適応が極めて重要な時期に、日米の同盟関係を複雑なものにします」(ワシントン=大島隆)
*
〔シーラ・スミスさん〕 米外交問題評議会・上級研究員。専門は日本政治・外交政策。コロンビア大学で博士号(政治学)を取得し、ボストン大、東西センターなどを経て現職。
■ 傷つける気ない?偽善 中国社会科学院日本研究所副所長・楊伯江(ヤンポーチアン)さん
――安倍首相の靖国参拝がもたらす日中関係への影響をどう見ますか。
「今年に入り、貿易や環境保護といった共通の利益への考慮や、日本側の民間の理性的な声を通じて緩やかに改善されつつあったが、参拝はこうした努力を白紙に戻してしまいました」
――首相は参拝後、「中韓の人々を傷つけるつもりはない」と表明しました。
「偽善です。首相は『参拝は政治、外交問題化している』とも言っています。首相就任後に1年間、参拝を我慢したのは、その悪影響を認識していたからにほかならない。首相を支持する保守層は、首相の参拝を、日本の国際社会での地位向上や政治力の回復と結びつけているようですが、全く逆です。参拝は日本のイメージだけでなく、安倍首相の政治的、外交的な信用をも傷つけてしまいました」
――首相の唱える「積極的平和主義」は周辺国に受け入れられますか。
「日本が国際的に平和維持活動をする権利は尊重されるべきだし、侵略の歴史について過去には謝罪もしました。しかし、謝罪をひっくり返す政治家がしばしば現れ、周辺国を心配させている。こうした心配を解かずに、積極的平和主義を唱えても、日本が守ってきた戦後の平和主義とは異なる『侵攻的』な概念ではないかと、不安を感じざるを得ないのです」
――北朝鮮問題の解決にも影響が生じるのでは。
「北朝鮮やアジアの多くの問題は中日韓の協力が必要ですが、参拝により、協力の余地が狭められています」
――昨年の反日デモなどを受け、日本では中国への警戒が広がりました。中国の過剰な反応が参拝に影響したのでは。
「首相は今回、自身の願望に加え、国内保守派の圧力を受けて参拝したのだと考えています。歴史問題で中国は、1980年代の教科書問題から昨年の『島購入』(尖閣諸島の国有化)まで、実はおおむね受け身の対応でした。積極的に問題は起こしていない。領土問題と歴史問題は質が異なります。領土で譲歩できないのは理解できますが、歴史は『譲歩』の対象ではなく、『是か非か』の問題。日本の侵略が間違いだったことを否定できる余地はないでしょう」
――中国人は今回、どう反応するでしょうか。首相と日本国民を分けて考えられますか。
「多くの中国人は、日本人は勤勉で善良な民族で、党利党略で行動する日本の一部政治家が問題なのだと思っています。また、戦略上も日本人全員を敵に回す批判の仕方はよくないと考えています。中国人は成長し、国際政治の背景を徐々に理解し始めている。今回の参拝後、昨年のデモであったような暴力的な行為は起きていません」(北京=石田耕一郎)
*
〔楊伯江(ヤンポーチアン)さん〕 政府系シンクタンク「中国社会科学院」の日本研究所副所長。中華日本学会の常務理事を務め、日本に知己も多い。日本や北朝鮮など東アジア問題が専門。
■ 関係改善水の泡、悔しい 韓国・世宗研究所日本研究センター長、陳昌洙(チンチャンス)さん
――安倍首相は靖国神社参拝が「残念ながら政治問題、外交問題化している」と述べ、暗に中韓の対応を批判しました。
「境内にある『遊就館』を見れば、靖国神社が日本の帝国主義を美化していることは明らかで、戦犯もまつられている。そこに首相が参拝すれば、韓国では日本が植民地支配を反省していないことの象徴と映る。その怒りを、よく分かっていないのではないでしょうか」
――「戦犯を崇拝する行為との誤解に基づく批判がある」とし、参拝で「不戦の誓い」をしたとも述べています。
「安倍首相は、東京裁判は戦勝国が裁いたという意味で、正当ではないと考えている。日本のために命を捧げた人たちなのだから、参拝しても何ら問題ないという発想です。でも、国際社会でその論理が通じるでしょうか。ケリー米国務長官らが10月の訪日の際に、靖国ではなく千鳥ケ淵戦没者墓苑に献花したのがその証拠です。不戦の誓いをするなら、国際社会に認められる形でするべきです」
――「中国、韓国の人々の気持ちを傷つける考えはない」とも述べ、中韓との関係の重要性を強調していますが。
「そういう気持ちがあるのなら、行動で見せてほしい。河野談話や村山談話など日本政府が積み重ねてきた方針を貫き、さらに上積みしてほしい。慰安婦問題などで、誠意ある具体的な措置をとってほしい」
――韓国では、首脳会談をかたくなに拒み続ける朴槿恵大統領への疑問も出始めていました。日韓関係に改善の動きはなかったのですか。
「双方の政府内でも、互いに妥協して改善していこうという動きが芽生え始めていた。それが水の泡になりました。悔しくてなりません」
――首相は真意を直接、中韓に説明したいとしています。
「韓国では再び、朴大統領の姿勢が正しかったという論調が支配的になるでしょう。安倍首相の在任中の首脳会談は難しいかもしれません」
――なぜこの時期に参拝に踏み切ったと思いますか。
「早いうちに右派の要求を満たし、その支持に基づいて消費税などの懸案を乗り越えようと思ったのでは。一方で、韓中との関係はどうせ改善はしないだろうと。国内でのプラスが、国際社会でのマイナスより大きいと考えたのでは」
――東アジア情勢に与える影響はどうでしょう。
「韓日、中日関係の悪化に加え、防空識別圏問題で韓国の中国への警戒心も強まり、互いに信頼が蓄積できない。参拝により、日米韓の協力関係はぎくしゃくするでしょう。その中で中国が新たなルール作りを仕掛けてくれば、全体が不安定化しかねない。参拝の影響は、それほど大きいと思います」(ソウル=貝瀬秋彦)
*
〔陳昌洙(チンチャンス)さん〕 1961年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。2002年から韓国のシンクタンク・世宗研究所日本研究センター長。日韓関係で多くの提言をしている。
(11面)
首相の靖国参拝、広がる波紋 中国緊張、台湾ではデモ 2013年12月28日05時00分
写真・図版台北での抗議デモで、安倍首相の写真などを破る参加者たち=27日、鵜飼啓撮影
安倍晋三首相の靖国神社参拝から一夜明けた27日、中国や韓国の主要紙は一斉に厳しく批判する記事を載せた。各地で反発がくすぶり、抗議デモの動きものぞく。参拝問題の余波は収まっていない。
中国の共産党機関紙・人民日報系の「環球時報」は27日、安倍首相のほか靖国参拝した国会議員らの「ブラックリスト」の作成を主張。リストに載った議員の入国禁止を提案するなど、具体的な対抗措置を求めた。中国政府は「日本はすべての結果の責任を負わなければいけない」(外務省)としており、強硬路線が強まっている。
北京の日本大使館前ではこの日、抗議デモの予告があった。警察官が増員されるなど警戒態勢が敷かれたが、デモは発生しなかった。警察官の一人は朝日新聞に「抗議デモは認めていない」と語り、当局が反日デモを認めない方針を取っている様子がうかがえた。
上海の日本総領事館前でも同日、警察車両や警察官が増員されて警戒レベルが引き上げられたが、デモは報告されていない。
中国当局が慎重なのは、昨年9月の日本による尖閣国有化直後の反日デモで一部が暴徒化し、かえって国際社会の非難を招いたとの苦い教訓があるためだ。デモによって国民の反日感情を過度に刺激すれば、「国内の不安定化をさらに加速させることにつながりかねない」(日中関係筋)との懸念もある。
一部で、デモの動きも出ている。香港では27日、昨年8月に沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)に不法上陸した民間団体「保釣行動委員会」が、日本総領事館が入るビルの前で首相の靖国参拝に抗議活動を行った。台湾・台北でも同日、中台統一派のグループ約50人が日本の窓口機関、交流協会台北事務所(大使館に相当)前で首相の靖国参拝に抗議。参加者は「軍国主義反対」などと気勢を上げ、「参拝は歴史の正義に対する挑戦」とした声明書を交流協会職員に手渡した。(北京=倉重奈苗、台北=鵜飼啓)
■ 韓国、議員団が訪日中止
ソウルの在韓日本大使館前では27日、市民団体などが安倍首相の靖国参拝に抗議の声をあげた。韓国国会では与野党が参拝を「糾弾」する決議案を近く採択する方針で一致。日韓間の政府高官の対話も中断を余儀なくされる見通しで、改善の糸口は見えない。
与党セヌリ党の崔ギョン煥(チェギョンファン)・院内代表は27日、「安倍総理は時代錯誤の右傾化路線や軍国主義の復活で、失うものがずっと大きいことを直視すべきだ」と強く批判。野党・民主党の田炳憲(チョンビョンホン)・院内代表も「参拝は北東アジアの平和に対する挑発だ」と歩調をあわせた。
無党派層に絶大な人気の安哲秀(アンチョルス)議員(無所属)は27日、「安倍総理が靖国神社ではなく、アジア各地に残る日本の軍国主義の傷痕を訪ねて謝罪することを願う」とする声明を出した。
韓日議員連盟の金泰煥(キムテファン)会長代行は27日、朝日新聞に「首脳会談に向けた環境づくりに努めていただけに残念だ」と話した。今回の参拝を受け、同連盟の顧問級議員らによる1月の訪日は取りやめになった。
一方、政府内では次官級の戦略対話など、年明け開催に向けて調整していた日本との高位級会談も「当面は困難」との意見が支配的になった。朴槿恵(パククネ)大統領は「信頼を築くために歴史の直視を」と日本に訴えてきた。政府関係者は「この原則は一層強固になるだろう」と話した。
韓国国防省副報道官は27日、来年の上半期に自衛隊との人的交流は予定されていないとし、「靖国参拝などで信頼が築けない日本とどのような軍事交流が可能かを聞き返したい」と述べた。国連南スーダン派遣団(UNMISS)に参加している韓国軍が自衛隊から提供された弾薬支援も、「後続の軍需支援が届けばすぐに返すことになる」とした。(ソウル=中野晃)
12 29 (日) 安倍総理の靖国神社参拝の波紋 拙速な独りよがり
国連事務総長「非常に遺憾」 首相の靖国参拝受け 2013年12月29日05時01分
【ニューヨーク=中井大助】国連の潘基文(パンギムン)事務総長の報道官は28日、安倍首相の靖国神社参拝を受けて「過去の緊張が今でも(北東アジア)地域を苦しめているのは非常に遺憾だ」という声明を出した。また、他者の感情、特に被害者の記憶に配慮することや、相互信頼と強いパートナーシップを築くことの必要性を強調し、「指導者はそのために特別な責任を負っている」と述べた。
声明は、メディアからの質問に答える形で出された。安倍首相が靖国神社に参拝したこと自体は「把握している」と述べるにとどまった。
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靖国参拝「帝国への懐古」米紙相次ぎ批判 中韓へ注文も 2013年12月28日23時56分
【ワシントン=大島隆】安倍晋三首相の靖国神社参拝を批判する社説を米国の主要紙が相次いで掲載し、一時は沈静化した歴史認識を巡る安倍首相への批判が再燃している。安倍政権は海外での広報に力を入れているが、こうした活動に影響するとの見方も出ている。
ワシントン・ポスト紙は28日付の社説で「挑発的な行為であり、安倍首相の国際的な立場と日本の安全をさらに弱めることになりそうだ」と批判。日本の防衛予算増加や日米の防衛協力強化などの取り組みを評価しつつも、「(靖国神社参拝によって)安倍氏は自分の掲げる政策と戦前の帝国への懐古を結びつけているように見え、自分自身の目的を傷つけている」と指摘した。
また、ニューヨーク・タイムズ紙も27日付で「日本の危険なナショナリズム」と題した社説を掲載。「安倍首相の靖国参拝は中国や韓国との緊張関係をさらに悪化させる」と批判した。一方で、中国と韓国の首脳に対しても「会談を拒否すれば、安倍氏にやりたいことをやるライセンスを与えるだけだ」と指摘して、首脳会談に応じるべきだと指摘した。
このほか、ウォールストリート・ジャーナル紙も27日付の社説で安倍氏の靖国神社参拝を批判した。
安倍政権は国際広報の強化を打ち出し、各国にある日本大使館は、尖閣諸島を巡る日中対立や安保政策で日本の立場を有識者やメディア関係者らに説明し、理解を得ようとしている。
ただ、参拝を受けて「安倍氏の歴史認識への疑念が強まれば、日本政府の主張に対する理解が得られにくくなるだろう」(米シンクタンク研究員)という見方が出ている。
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無職 中島雅夫(東京都 64)
安倍晋三首相が靖国神社参拝後に発表した談話や記者団に語った内容は、言葉巧みにこの国を危うい方向に導こうとする、この政権の本質を遺憾なく表していると思う。
談話には「二度と戦争を起こしてはならない」とあるが、一方で安倍政権は集団的自衛権を認め、武器輸出三原則を見直し、さらにはまさに「過去への痛切な反省の上に立っ」て支持されてきた平和憲法まで変えようとしている。既に弾薬1万発が韓国軍に譲渡された。日本の武器で人が死ぬかもしれないのだ。
「信なくば立たず」というが、これほど言葉が軽い首相のどこを、私たちは信じればいいのだろうか。
また、韓国・中国の反発を念頭に、これからも謙虚に説明し、対話を求めていきたい、と述べている。しかし先に相手を傷つけても後から説明すれば分かってもらえるということであれば、あまりに独善的過ぎよう。私たちは同じ言い回しを特定秘密保護法の成立過程で何度も聞かされたが、結局法はその本質を変えることなく成立している。
力で反対を押し切る強権的な手法が外交に持ち込まれたら、緊張は高まるばかりだ。今必要なのは二度と戦争を起こさない知恵と行動だ。
「帝国への懐古」「危険なナショナリズム」
米紙、相次ぎ批判 安倍首相靖国参拝 2013年12月29日05時00分
安倍晋三首相の靖国神社参拝を批判する社説を米国の主要紙が相次いで掲載し、一時は沈静化した歴史認識を巡る安倍首相への批判が再燃している。安倍政権は海外での広報に力を入れているが、こうした活動に影響するとの見方も出ている。
ワシントン・ポスト紙は28日付の社説で「挑発的な行為であり、安倍首相の国際的な立場と日本の安全をさらに弱めることになりそうだ」と批判。日本の防衛予算増加や日米の防衛協力強化などの取り組みを評価しつつも、「(靖国神社参拝によって)安倍氏は自分の掲げる政策と戦前の帝国への懐古を結びつけているように見え、自分自身の目的を傷つけている」と指摘した。
また、ニューヨーク・タイムズ紙も27日付で「日本の危険なナショナリズム」と題した社説を掲載。「安倍首相の靖国参拝は中国や韓国との緊張関係をさらに悪化させる」と批判した。一方で、中国と韓国の首脳に対しても「会談を拒否すれば、安倍氏にやりたいことをやるライセンスを与えるだけだ」と指摘して、首脳会談に応じるべきだと指摘した。ウォールストリート・ジャーナル紙も27日付の社説で参拝を批判した。
安倍政権は国際広報の強化を打ち出し、各国にある日本大使館は、尖閣諸島を巡る日中対立や安保政策で日本の立場を有識者やメディア関係者らに説明し、理解を得ようとしている。
ただ、参拝を受けて「安倍氏の歴史認識への疑念が強まれば、日本政府の主張に対する理解が得られなくくなるだろう」(米シンクタンク研究員)という見方が出ている。
(ワシントン=大島隆)
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