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折々の記 2014 ⑦
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【 07 】08/30

  08 30 日本の自民党の胎動  「次はあなた」が最後の決め手
     (天声人語)内閣改造の難しさ
  08 30 ヘイトスピーチに対処勧告 国連委、日本に法規制促す  民意取上げを立法化せよ
     (時時刻刻)憎悪デモ、地方に拡散 「表現の自由」規制せず
      ヘイトスピーチで国連人種差別撤廃委が日本に勧告
      ヘイトスピーチ:起訴含め刑事捜査を日本に勧告 国連委
  08 31 (声)自衛隊は災害救助隊に改組して  
  08 31 (360゜)地方議員発、崩せ1強 戦う野党目指す/「集団的自衛権に反対」旗印  
  08 31 (「積極的平和主義」の実像)海上防衛、中国にらむ日印 「真珠の首飾り」に対抗  
      (「積極的平和主義」の実像)武器共同開発、日仏の思惑に差
      (「積極的平和主義」の実像)南シナ海、防衛強化へ布石 ベトナムに巡視船
      (社説)ODA見直し 危うい軍への支援解禁
      (声)政治を言い換えでごまかすな
  08 31 (日曜に想う)盗聴無限、同盟国も友邦も 特別編集委員・山中季広  
  08 31 (360゜)地方議員発、崩せ1強 戦う野党目指す/「集団的自衛権に反対」旗印  

 08 30 (土) 日本の自民党の胎動   「次はあなた」が最後の決め手

2014年8月29日23時22分
石破氏入閣受諾、「次はあなた」が最後の決め手
    http://digital.asahi.com/articles/ASG8Y74SRG8YUTFK013.html?iref=comtop_6_03

 自民党の石破茂幹事長が入閣を受諾した。安倍晋三首相から求められた安全保障法制担当相への就任に難色。幹事長続投を求めたが、最後は「次はあなた」と禅譲論まで持ち出した首相側近の説得を受け入れざるを得なかった。首相は石破氏のポストについて、地方創生担当相を軸に検討している。

石破氏、入閣要請受け入れ表明

 29日昼、首相官邸に現れた時から石破氏は笑顔だった。首相から打診された安保法制相を受けるかどうか――1週間前に浮かべていた苦渋の表情はなかった。1時間半の会談で、石破氏は幹事長続投の希望は伝えたが、同時に「人事権者は総理ですから」と決定に従う姿勢も強調。終了後に記者に囲まれると「好きとか嫌いとか、そんな問題ではない。組織人としてトップの決定に従うのは当然だ」と語った。

 石破氏は当初、「ポスト安倍」を意識しつつ「政策の違い」を理由に首相と距離を取ろうとした。だからこそ、首相側近たちはその芽をつぶそうと動いた。

 「なぜ党を割るような動きをするのか。次は石破さんしかいないじゃないですか」。菅義偉官房長官や萩生田光一・総裁特別補佐は、首相からの入閣要請を受けるよう説得を続けた。「安倍の次は石破」は菅氏の持論だが、直接の「禅譲論」に石破氏の心は揺れ動き、いつしか「2人には感謝している」とこぼすようになっていった。

 首相と石破氏の関係に、溝が生じたのは7月24日。首相官邸で石破氏と向き合った首相は「集団的自衛権の関連法案は難しい。なかなか答弁できる人はいません」と安保法制相への就任を求めた。これに石破氏は「幹事長としてやりたい仕事がまだある」。ただ、「最後は首相の決定に従います」とも述べ、首相は受け入れられたと感じた。

 一方、石破氏を「ポスト安倍」と見据えて支持する議員は「なんで首相は石破氏を幹事長から外すのか」と主戦論を唱えた。幹事長として国政選挙で結果を出し続けた自負もあり、石破氏はいったんは入閣しない方向で腹を固めた。

 しかし、党内対立の種をまくような動きに批判が集中。かえって孤立化する懸念も出てきていた。そこに菅氏らの助言もあって心変わり。結束は強いが数少ない側近と一緒に戦うより、薄いが幅広い党内の支持を期待し、首相のポストを待つ道を選んだ。石破氏は今後、重要閣僚として存在感を示しつつ、首相を支えて禅譲を受ける戦略を描く。

 だが、現時点では唯一ライバルになり得る石破氏が首相支援に回ることは、長期政権への布石を打ったことになり、かえって禅譲が遠のくという矛盾を抱える。

 また、安保政策をめぐり、石破氏が「首相と同じ考え方の人が入閣すべきだ」との考えを示したことも国会などで追及されるおそれがある。担当大臣でなくとも、閣議決定時の署名や国会答弁などで姿勢を問われるからだ。一時は「無役」を覚悟しながら、一転して入閣を決めたことに、側近議員だけでなく広く党内の信頼を失った可能性もある

 「禅譲なんて、そんなに甘くない」。側近議員らの声に、石破氏はこう語ったという。「だますより、だまされる方がいい」

◆ 首相、ライバル抑え来秋へ基盤強化

 一方、首相にしてみれば石破氏が「これから先も首相を全力で支える」と明言して閣内入りすることで、党内の亀裂回避にとどまらない大きな果実を得た。

 来年秋の自民党総裁選で再選を期す首相にとって、最大のライバルの石破氏が党ナンバー2の幹事長を続けることは「カネとポストを握らせ続け、求心力のアップにつながる」(首相周辺)との懸念があった。

 集団的自衛権の行使容認をめぐる与党協議で公明党に譲歩しすぎ、沖縄県知事選の候補者調整で混乱を招いたことにも首相は不満を抱いた。「幹事長の仕事として必要な裏技がダメなんだ」。石破氏を幹事長から外すことは人事の主要課題になっていった。

 かといって石破氏を無役にすれば、首相に不満を抱く勢力の象徴的存在となり、反旗を翻す「芽」を残す。「なんだかんだ言っても石破さんは自民党のスター」。賛辞と対抗意識を交えて石破氏を評する首相としては、幹事長の権限を弱め、自由な発言や政治活動も縛る「閣僚ポスト」は理想の処遇だった。

 だが、首相が下した判断にもリスクはある。留任組や女性、公明党枠などを考えると、残る閣僚ポストは多くはない。貴重な一枠をこれまでも日の当たる道を歩いてきた石破氏に明け渡すことは、約60人と言われる「閣僚待機組」には耐え難い。少ないながらも明らかな「反安倍」勢力を党内に顕在化させることにもなりかねない。

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【下平】

政治家集団という海で、それぞれ自分の思惑の小舟が漂う中をどう進む方向を決めるか、そんな縮図のようだ。 離合集散・縦横連衡、古代史の学習そのままの実態は現前にある。


2014年8月30日
(天声人語)内閣改造の難しさ
    http://digital.asahi.com/articles/DA3S11323757.html?ref=pcviewer

 人事は両刃の剣である。抜擢(ばってき)された者が忠勤を励んでも、顕職を逃した者たちには不満がたまる。人心一新をはかるつもりが、士気の低下を招くだけということもある▼長く政権を担った佐藤栄作元首相は「人事の佐藤」と呼ばれた。往年の政治記者による討論『戦後保守政治の軌跡』によれば、その要諦(ようてい)の一つは、失敗したらすぐに切るということだった。ただし、切った後で面倒を見る。だから恨まれなかった▼安倍首相が9月3日に内閣改造をする。緒戦の首尾は上々のようである。ライバルの石破茂幹事長に入閣を求め、きのう首を縦に振らせた。石破氏は今回「無役」も辞さず、ポスト安倍に備えるかと見られていたから、ひとまず不穏な動きの芽を摘んだ格好だ▼周到な陣立てをもって長期政権の礎としたい。それが首相の狙いだろう。だが、自民党内には入閣待望組が押すな押すなである。人事のジレンマが口を開けて待っている▼人材登用に独特の基準を示したのはサッカー日本代表のアギーレ新監督だ。おととい、初の代表入り5人を含め、驚きの抜擢を発表した。その持論によれば、1人の選手が1試合でボールを持つのは平均2分だけ。だから、「残りの88分間で何をしているか」を見る。ピッチでの献身が問われるのだ▼選ばれてもやれやれとはいかない。厳しい競争が待っている。失敗すれば切られる。すべてチームが結果を出すためだ。嫉妬や足の引っ張り合いが珍しくない政界ではこうはいきそうにない。

 08 30 (土) ヘイトスピーチに対処勧告 国連委、日本に法規制促す   民意取上げを立法化せよ

2014年8月30日
ヘイトスピーチに対処勧告 国連委、日本に法規制促す
    http://digital.asahi.com/articles/DA3S11323735.html

 国連人種差別撤廃委員会は29日、日本政府に対して、ヘイトスピーチ(憎悪表現)問題に「毅然(きぜん)と対処」し、法律で規制するよう勧告する「最終見解」を公表した。慰安婦問題についても、被害者への調査や謝罪を求めた。▼2面=地方に拡散

 「最終見解」は、日本が1995年から加入する人種差別撤廃条約に基づく対日審査の総括に当たり、01年、10年に続き3回目。勧告に法的拘束力はないが、外国人労働者への差別問題など、約30項目で是正を要請した。

 東京や大阪を中心に在日韓国・朝鮮人を中傷するデモが最近活発になっていることを受け、同委員会は今回、「ヘイトスピーチ」問題について初めて勧告した。委員会はまず、ヘイトスピーチについて「デモの際に公然と行われる人種差別などに対して、毅然と対処すること」を求めた。

 また、ネットなどのメディアやデモを通じてヘイトスピーチが拡散している状況に懸念を表明。「ネットを含めたメディア上でのヘイトスピーチをなくすために適切な措置をとること」などを求めた。ヘイトスピーチにかかわる官僚や政治家への適切な制裁を促した。さらに、ヘイトスピーチの法規制や、人種差別撤廃法の制定を要請した。

 ヘイトスピーチを巡っては今年7月、国連規約人権委員会も「禁止」するよう日本政府に求めていた

 今回の国連人種差別撤廃委員会の「最終見解」では、慰安婦問題についても勧告があった。日本政府に対し、「日本軍による慰安婦の人権侵害について調査結果をまとめる」ことを促した。

 その上で、心からの謝罪や補償などを含む「包括的かつ公平で持続的な解決法の達成」や、そうした出来事自体を否定しようとするあらゆる試みを非難することも求めた。

◆ 現状、世界の常識と落差

 国連人種差別撤廃委員会が、日本政府に対してヘイトスピーチへの毅然(きぜん)とした対処を求めたのは、日本の現状と、欧州など世界の主要国の常識との間に大きな差があるためだ。

 かつてユダヤ人らの大量虐殺を許したドイツでは、刑法に「民衆扇動罪」を設けてヘイトスピーチを規制するなど、欧州では厳しく取り締まる傾向が強い。

 主要国では、日本と米国がヘイトスピーチの法規制を義務化する人種差別撤廃条約の条文について留保している。ただ、米国では、差別的な言動は大きな社会的制裁を受ける。

 日本の外務省は、法規制に慎重な理由として、「表現の自由などを不当に制約することにならないかを検討する必要がある」と説明する。しかし、今回、日本のヘイトスピーチデモを審査した委員たちからは「人種差別の扇動は、『表現の自由』には含まれない」といった意見が相次いだ。(松尾一郎)

◆ ヘイトスピーチを巡る国連人種差別撤廃委員会の勧告骨子

  ・(ヘイトスピーチを取り締まるために)法改正に向けた適切な措置をとる
  ・デモの際に公然と行われる人種差別などに対して、毅然(きぜん)とした対処をおこなう
  ・ネットを含めたメディア上でのヘイトスピーチをなくすため、適切な措置をとる
  ・そうした行為に責任がある個人や組織について捜査し、適切と判断される場合は訴追も辞さない
  ・ヘイトスピーチなどをあおる官僚や政治家に適切な制裁を追求する
  ・ヘイトスピーチの根底にある問題に取り組み、他の国や人種、民族への理解や友情を醸成する教育などを促進する

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2014年8月30日
(時時刻刻)憎悪デモ、地方に拡散 「表現の自由」規制せず
    http://digital.asahi.com/articles/DA3S11323693.html

写真・図版

【図版】ヘイトスピーチをめぐる主な動き わかりやすくは図版を拡大する

 「ヘイトスピーチ」(憎悪表現)をめぐり、日本政府が、国連人種差別撤廃委員会から「勧告」を受けた。日本でいま、「ヘイトスピーチ」が首都圏だけでなく、全国に広がりつつあることが背景だ。自民党は対策チームをつくり、検討を始めた。▼1面参照

 7月末の土曜日。川崎市役所近くの公園に数十人が集まった。「反日サヨク・売国奴・不逞(ふてい)外国人から川崎を護(まも)る」と掲げたデモ。

 同市には約8千人の韓国・朝鮮籍住民が暮らす。市は多文化共生を掲げ、市政に声を反映する「外国人市民代表者会議」を置く。

 参加者は旭日(きょくじつ)旗などを掲げ、大通りを進んだ。「醜い朝鮮人の皆さま、このまま電車に乗って北朝鮮へお帰り下さい」「日本政府は、在日韓国人の特権を廃止しろ」。マスク姿の女性らが拡声機で声をあげた。

 在日外国人への非難が、インターネット上にとどまらず街頭行動として現れたのは2008年ごろ。警察庁は国内外の警備情勢をまとめた09年版の報告書で初めて取り上げた。「在日特権を許さない市民の会」(在特会)が代表的な団体だという。

 在特会は、今回の審査にあわせて、リポートを国連委に提出。幹部は「我々に批判的な左翼団体の声ばかりが国連に届けられ、やられっぱなしになっている」としながらも「批判されるほど逆に宣伝となり、支持者も集まってくる」と強気だ。

 市民グループの調査によると、ヘイトスピーチをともなうデモや街宣は、昨年1年間で360件以上。現場で抗議する市民グループが生まれたこともあり、例えば新大久保(東京都新宿区)では昨秋からデモはない。「沈静化しているわけではない。地方に拡散している」と関東学院大非常勤講師の明戸(あけど)隆浩さん(多文化社会論)は言う。札幌市や三重県四日市市、山口県下関市などにも広がっている。

 デモは、都道府県の公安委員会などの許可を受ける。警察庁幹部は「表現の自由を尊重するため、参加者らに明らかに危険を及ぼすのでないと不許可にはできない」という。死ね、殺せといった発言を名誉毀損(きそん)や脅迫で立件することも「刑法は特定の個人への行為が対象。団体や民族への発言であれば無理」と話す。

 「朝鮮人のババア」「不逞鮮人」。大阪府東大阪市のフリーライター李信恵(リシネ)さん(43)は、ネット上への書き込みで名誉を傷つけられたなどとして、在特会などに損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。

 国連委の勧告に沿った規制に、李さんは「原則賛成」という。ただ「手放しでは賛成できない」。政府が、反原発のデモなども規制対象にするのではという懸念があるからだ。「教育現場で、きちんと人権意識を育てることが重要」と話す。

◆ 政治、やっと検討

 政治も動き始めた。

 自民党は28日、「ヘイトスピーチ対策等に関する検討プロジェクトチーム(PT)」の初会合を開いた。高市早苗政調会長が「特定民族を名指しした誹謗(ひぼう)中傷は、日本人としてやめないといけないと確信している」と訴えた。

 PT設置を後押ししたのは2020年の東京五輪だ。舛添要一東京都知事が7日に安倍晋三首相と会談した際、五輪を念頭にヘイトスピーチの法規制を要望。首相が党に検討を指示した。

 だが、議論は国会周辺の街宣活動にまで及んだ。PTの柴山昌彦座長代理は「右翼街宣、週末の官邸周辺の音量を伴うものも含め、正常業務に差し障りが出ているのではないかとの問題意識だ」と説明。民主党の大畠章宏幹事長は会見で「ヘイトスピーチと大音量のデモ規制は性格が違うと思う」と批判した。

 一方、民主党や公明党など超党派の「人種差別撤廃基本法を求める議員連盟」が4月に発足。議員立法を作成中だ。

 首相は昨年5月、参院予算委員会で、自身のフェイスブック(FB)にもヘイトスピーチのようなコメントが寄せられているとし、「他国の人々を誹謗中傷し、まるでわれわれが優れているという認識を持つのは全く間違い。結果として自分たちを辱めている」と答弁した。

◆ 欧州では法規制 米は社会的制裁

 「デモの際に公然と行われる人種差別などに対して、毅然(きぜん)と対処すべきだ」

 今回の最終見解で、委員会が日本政府に対してこう求めたのは、日本の人権NGOが合同で開いた非公式ブリーフィングで見たビデオに衝撃を受けたためだ。ビデオでは「出てこい、殺すぞ」などと叫ぶデモの様子が流れた。「ああした動きに対処しても、『表現の自由』の保護には抵触しないのではないか」「日本の警察は、(ヘイトスピーチをする)加害者たちに付き添っているかのようだ」という意見が相次いだ。

 委員たちが敏感に反応したのは、欧米の認識と、日本の現状は大きく異なるためだ。ドイツは、ヘイトスピーチなどを厳しく規制。ホロコーストの事実を否定したり、公然とナチズムを賛美したりする言動も禁じており、3カ月から5年の禁錮刑などが科される。英国では、複数の法律で「ヘイトスピーチ」を取り締まる。

 フランスでは、人種や民族、宗教、性などに関して、公の場で差別的発言をしたり、差別を扇動したりする発言をすれば、最高で懲役1年と罰金4万5千ユーロ(約614万円)が科される。

 憲法の修正第1条で、言論の自由を制限する法律を禁じる米国では、ヘイトスピーチを禁止する法律も原則として認められていない。ただ、差別的な発言をした人への社会的な制裁は極めて厳しい。特に人種に関する差別的な発言はまず許されない。今年に入ってからもプロバスケットボールリーグのチームオーナーの黒人に対する差別的発言が明らかになり、スポンサーが相次いで辞退。リーグも終身追放処分とし、チーム売却につながった。(ベルリン=玉川透、ロンドン=渡辺志帆、ニューヨーク=中井大助)

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(08/30 05:56) テレ朝news > 国際ニュース > ニュース記事
ヘイトスピーチで国連人種差別撤廃委が日本に勧告
    http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000033575.html

人種や国籍などの差別をあおる「ヘイトスピーチ」と呼ばれる街宣活動について、国連の委員会は、法律で規制するよう日本に勧告しました。

 国連人種差別撤廃委員会は、在日韓国・朝鮮人らを標的としたヘイトスピーチに関して、「日本は司法レベルでの対応が不十分だ」と指摘しました。

そのうえで、これを法的に取り締まるため、刑法などの見直しを求めました。

また、関与した個人や団体を捜査し、必要な場合、起訴するよう勧告しました。

先月には、国連の人権規約委員会も、差別をあおる宣伝活動の禁止を勧告しています。

一方、慰安婦問題については、政府の認識や被害者への謝罪、補償が適切ではないと懸念を示しました。

そのうえで、元慰安婦に対する人権侵害の調査や、関与した責任者の処罰などを求めました。


毎日新聞 2014年08月29日
ヘイトスピーチ:起訴含め刑事捜査を日本に勧告 国連委
    http://mainichi.jp/select/news/20140830k0000m030129000c.html

 【カイロ坂口裕彦】ジュネーブにある国連の人種差別撤廃委員会は29日、異なる人種や少数民族に対する差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)を行った個人や団体に対して「捜査を行い、必要な場合には起訴すべきだ」と日本政府に勧告した。インターネットを含むメディアでのヘイトスピーチについても適切な措置をとることを要請。人種差別の禁止に向けて、「特定もしくは包括的な法整備」の実現を求めた。

 国連人権委員会も7月、ヘイトスピーチなど人種差別を助長する行為の禁止を勧告。両委員会の勧告に強制力はないが、国連がヘイトスピーチへの厳しい対応を相次いで求めたことで、日本政府や国会は早期の対応を迫られた形だ。

 撤廃委員会の最終見解は、前回(2010年)に比べ、ヘイトスピーチの記述が大幅に増加。日本での問題の深刻化を印象づけた。見解は、日本での暴力的なヘイトスピーチの広がりに懸念を表明。一方で、ヘイトスピーチ対策を、その他の抗議活動などの「表現の自由」を規制する「口実にすべきではない」ともくぎを刺した。差別的な街宣デモなどへの断固とした対応や、教育の充実などによる差別防止も勧告した。また、ヘイトスピーチを行った公職者や政治家に対しての制裁も促した。

 日本は人種差別撤廃条約に加盟するが、ヘイトスピーチの法規制を求める4条は「表現の自由」を理由に留保している。委員会はこの留保の撤回も求めた。ドイツなど欧州ではヘイトスピーチを法律で規制している国が多い。

 人種差別撤廃条約の順守状況を監視する撤廃委員会は20、21日、4年ぶりとなる対日審査を実施。委員からは「ヘイトスピーチは暴力による威嚇だ」「警察がデモに付き添っているように見える」など厳しい声が相次いでいた。

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 08 31 (日) (声)自衛隊は災害救助隊に改組して   

2014年8月31日
(声)自衛隊は災害救助隊に改組して
    http://digital.asahi.com/articles/DA3S11325534.html

 小学校教員 瀬原徹郎(山口県 53)

 広島市で豪雨による土砂災害が起きた。たくさんの方が亡くなり行方不明になっている。救助にあたっている警察や消防、自衛隊やボランティアの方々の活動には頭が下がる。

 これまでも、自衛隊の活躍を阪神大震災や東日本大震災で見てきた。本当に頼りになる。そこには戦車やミサイルなど武器の姿はない。ブルドーザーやパワーショベル、給水車などが活躍する。

 政府は集団的自衛権の行使を容認し、日本を「戦争ができる国」にしようとする動きを強めている。しかし、災害時の自衛隊の目覚ましい活動を見ると、いっそのこと災害救助隊に改組したほうがいいのではないかとの思いを強くする。

 世界各国の災害に、優れた救出技術と機材を備え出動する。その方が日本の国際貢献にも、安全保障にもなる。イラン・イラク戦争中の1985年、トルコ航空機により邦人215人が救出された。トルコ政府の英断に、多くの日本人が感謝した。危機に際しての「恩義」ほど人の心を動かすものはない。

 08 31 (日) (360゜)地方議員発、崩せ1強 戦う野党目指す/「集団的自衛権に反対」旗印   

2014年8月31日
(360゜)地方議員発、崩せ1強 戦う野党目指す/「集団的自衛権に反対」旗印
    http://digital.asahi.com/articles/DA3S11325704.html

 野党がふがいない。なんとか安倍政権に対峙(たいじ)できないのか――。そんな思いで地方議員が政党の枠を超えて連携し始めた。

 「安倍政権の支持率が下がっているのに、なぜ民主党の支持率が上がらないのか。集団的自衛権の行使反対、脱原発で党の立ち位置を示せていないからだ」

 7月下旬に行われた、民主党の執行部と都道府県連の意見交換会。角倉邦良・群馬県議(53)が海江田万里代表を突き上げた。

 海江田氏も地方に渦巻く不満は理解していた。下手に返答すれば党内の集団的自衛権の行使容認派の反発を招き、不協和音を増幅しかねない。海江田氏は黙(だんま)りを決め込んでいたのだ。

 ただ、地方代表も海江田氏の行動を見越し、したたかに次の手を打っていた。

 意見交換会が終わると、角倉氏は党本部にほど近い衆院議員会館に急いだ。地下の会議室に滑り込むと、待ち受けていた10人あまりに報告した。「うちの代表はちょっと厳しい。地域から党派を超えて結集していくことがポイントだ」

 会議室に集っていたのは民主党の面々ではない。社民党や無所属、地域政党の「緑の党」や「生活者ネットワーク」系の地方議員たち。6月に発足した「自治体議員立憲ネットワーク」の打ち合わせ会だった。

 立憲ネットの旗印は集団的自衛権の行使反対。立ち上げ時に215人だった会員議員は、約1カ月で300人を超えた。「自民党のやりたい放題に地方から反撃しよう」。この日、会員の勧誘策を話し合った。

     *

 なぜ、地方議員は党派を超えて寄り合うのか。立憲ネット発足の経緯をたどると、野党への失望や、来年4月に迫る統一地方選への危機感が浮かび上がる。

 角倉氏や緑の党、無所属の地方議員ら5人がひざをつき合わせたのは、昨年10月だった。安倍政権が特定秘密保護法の成立に向けて動き出した時期だ。「どんどん右寄りになっていく。何とかならないか」。年末にかけ国会議員も交えて意見交換を重ねた。共通認識は「野党が国会で安倍政権に対峙できていない」ということだった。

 緑の党は昨年の参院選で完敗、統一地方選に向け超党派の枠組みづくりを模索していた。民主党も党勢回復の兆しは見えない。角倉氏は「民主党だけに依拠しても、世の中も民主党も安倍政権も変えられない。戦う野党の結集を地方から促したい」と呼応した。

 中核の5人はもともと脱原発運動の仲間だったが、結集軸は集団的自衛権に絞ることにした。社民党や生活者ネット系の地方議員らに賛同者を募っていった。

     *

 政党の枠組みを超えた動きは民間でも動き出す。今年1月、「万年野党」と銘打ったNPO法人が発足。政策提言や、国会議員の質問回数などをまとめた「国会議員三ツ星データブック」の刊行に取り組む。

 角倉氏が海江田氏を突き上げていた同時期、万年野党は、東京・丸の内の会員制レストランで政策討論会を開いていた。のぞいてみると、元経産官僚の岸博幸慶大院教授の経済談議に、起業家や大学職員ら約40人がワイングラスを傾けながら聴き入っていた。討論はネット中継された。「万年野党なんて下品な名前のNPOをつくらなければいけない状況は良くない。本来、野党やマスコミがやることです」。岸氏が軽口を飛ばすと、会場は笑いに包まれた。

 市議出身の高橋亮平事務局長(38)に聞くと、言い切った。「面白かったですよね。野党に期待するぐらいなら、ボクらがメディアを巻き込んで外から指摘した方が効果があると思う」

     *

 衆院は与党が3分の2を占め、残りの議席を9党が分け合う。山口二郎法政大教授は「野党が国家主義的な勢力、新自由主義的な勢力、リベラル勢力に分かれ、リベラルの軸が弱い。野党がだらしなさすぎるから、党を超えた動きが出る」と分析。「民主党や立憲ネットががんばり、統一地方選で集団的自衛権の民意を問う雰囲気が出てくることを期待する」と語る。

 ただ、民主党執行部は立憲ネットに困惑気味だ。海江田氏は心情的には理解を示すが、「党本部と異なる活動」と距離を置く。

 立憲ネットは統一地方選に向け、1千人の会員議員を集める目標を立てた。角倉氏は「オレたちの活動を超えて、学生や経済団体から安倍政権と戦う運動が起きたらいい。立憲ネットのような地域の政治主体をつくっておけば、そういう人が出てきた時に連携できる」と青写真を描く。「できるか分からないけれどね」と頭をかきながら。

 立憲ネットの人たちと接すると、与党もそうだが、むしろ野党への不満が地方で充満しているように感じた。こうした不満の受け皿になれれば野党にも活路はある。ただ、永田町では野党の一部は相変わらず数合わせの再編に奔走している。今のままで、こうした不満を取り込めるほど、事態は甘くないのだろう。

 (斉藤太郎、安倍龍太郎)

 08 31 (日) (「積極的平和主義」の実像)海上防衛、中国にらむ日印 「真珠の首飾り」に対抗   

2014年8月31日
(「積極的平和主義」の実像)海上防衛、中国にらむ日印 「真珠の首飾り」に対抗
    http://digital.asahi.com/articles/DA3S11325615.html

 ◇「積極的平和主義」の実像 世界の現場から

 インドのモディ首相が30日、来日した。安倍晋三首相が京都で出迎え、31日は一緒に古刹(こさつ)を散策する異例の厚遇ぶりだ。安倍氏は9月上旬にはバングラデシュとスリランカの首脳と相次いで会談し、大規模な支援策を打ち出す。視線の先にあるのは、インド洋周辺でも影響力を増す中国の存在だ。

 5月に就任したモディ氏が、首相として日本を訪れるのは初めて。安倍氏との公式の首脳会談は9月1日に東京で予定されている。新幹線の輸出など経済協力とならんで焦点となるのが、武器輸出三原則の撤廃で可能性が広がった救難飛行艇「US2」の輸出だ。

 7月下旬、沖縄近海で米軍、インド軍、海上自衛隊による共同訓練が行われた。艦艇の大砲から海上の標的に狙いを定め、実弾を撃ち込む。日本が参加して3回目となる今回、初めて投入されたUS2が注目を集めた。

 世界で唯一、波の高さが3メートルまでの海で離着水ができ、短い滑走での離水も可能だ。兵庫県の新明和工業が開発した。

 訓練の大きな目的は、中国がにらみをきかせるインド洋の防衛にある。「航海の自由など3カ国共通の目標のため協力を深めたい。インドは性能の高い日本のUS2に注目している」。インド海軍のジェイン少将は訓練初日の7月24日、米海軍佐世保基地の会見でこう語った。

 安倍政権は、インドとの協力関係を、南シナ海からインド洋、ペルシャ湾に広がる日本の海上交通路(シーレーン)防衛戦略の軸ととらえる。防衛省幹部は「集団的自衛権の行使容認で、今後は海自とインド海軍がシーレーンを一緒にパトロールすることも事態によっては可能になる。こうした協力の見返りとしてUS2を輸出したい」と語る。

 首脳会談では、共同訓練を定例化することや、外務・防衛省の閣僚級で定期的に会合を持つことでも合意する見通しだ。

 安倍首相は日印首脳会談を終えると、今度は9月6日から、インドの隣国バングラデシュとスリランカを歴訪し、巡視船の供与やインフラ整備の支援で合意する。これらの国々では近年、中国の支援で港が次々に建設されている。それらをつなぐと浮かびあがる形状から「真珠の首飾り」と呼ばれ、日米や、中国と領土問題を抱えるインドが警戒を強めている。

 ただ、安倍氏の後を追うように、9月中旬にも中国の習近平(シーチンピン)国家主席がインドとスリランカに出向く。インド洋をめぐって繰り広げられる援助合戦。「日本はてんびんにかけられるだけではないか」――現地ではそんな懸念も出ている。

 (貫洞欣寛=ニューデリー、渡辺丘)


2014年8月5日
(「積極的平和主義」の実像)武器共同開発、日仏の思惑に差
    http://digital.asahi.com/articles/DA3S11284045.html?ref=reca

 ◇「積極的平和主義」の実像 世界の現場から

 安倍政権は武器輸出三原則を撤廃し、外国との武器の共同開発に乗り出した。その先陣の一角が、フランスとの協議だ。ただ、両国の思惑はすれ違う。

 大西洋をのぞむフランス西部サンナゼール。ロシア極東ウラジオストクの名を冠したヘリコプター空母が停泊し、そのすぐそばをロシア海軍のセーラー服が歩く。

 空母は、この街で建造され、10月にロシアに引き渡される予定の「ミストラル級強襲揚陸艦」。全長約200メートルで、ヘリコプター16機や上陸用船艇を搭載できる。そばにロシアの軍艦「スモーリヌイ」の姿もある。約400人の乗組員らは、船内で寝泊まりしながら、3カ月余りかけて操船技術などを身につけるという。「当初は座学が中心だが、引き渡しまでに10日間の訓練航海を2度予定している」。建造に携わる関係者は言った。

 建造が始まったのは2012年2月。2隻で計約12億ユーロ(約1700億円)の契約だ。ウクライナ・クリミア半島の併合や、マレーシア航空機をめぐるロシアの対応への批判とあいまって、「売却すべきでない」との指摘が強まった。

 だがオランド大統領は7月下旬、1隻目の引き渡しは予定通りだとし、もう1隻についても仏メディアに「ロシアの対応しだい」。制裁の強化に進まず、予定通り売却したい意向をにじませた。

 空母の建造で1千人の雇用が生まれる。それがキャンセルとなれば、巨額の違約金が発生し、雇用問題にもなりかねない。外交の方針や理念より、実利を重んじるかのような動きだ。

 フランスは以前から、武器輸出に積極的に取り組んできた。ミラージュ戦闘機は、紛争が絶えない中東で実戦に多く投入されたことで知られる。1989年の天安門事件以降続く、欧州連合(EU)による対中武器禁輸の解除にも意欲を示している。

 ■日本、中ロの軍備増強懸念

 日本も今、ミストラルの動きに神経をとがらせている。北方領土問題を抱えるロシアの、同地域での活動能力を高めることにつながるからだ。

 同様の懸念は、仏企業が中国に輸出したヘリコプター着艦装置にも当てはまる。尖閣諸島周辺で領海侵入を重ねる公船に装備されれば、領空侵犯の手助けにもなりかねない。

 これまで、日本の懸念に対し、仏政府は「空母は(装備をともなわない)本体だけ」「ヘリの着艦装置は、ビルの屋上にあるのと同じような民生品」などの反応を繰り返すばかりだったという。

 ここで日本政府は、手を打った。パリで1月に初会合を開いた外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)。防衛装備品の共同開発と同時に、輸出の管理について話し合う方針を決め、二つの「委員会」を設けることを決めたのだ。

 フランスは世界で5本の指に入る武器輸出国を自認する。13年には67億ユーロ(約9300億円)の受注があったという。さらなる受注に向け、高い技術を持つ日本との武器の共同開発に積極的だ。

 2プラス2の後の記者会見でルドリアン国防相は「新世代のヘリコプターや潜水艦の推進装置」などを協力の対象として挙げ、その具体的な項目の列挙に、日本側を驚かせたほどだ。

 一方、日本が重視するのは輸出管理だ。武器を共同開発することと引き換えに、フランスに対してロシアや中国への武器輸出にブレーキをかけたい考えで、その意向はすでに伝えているという。

 ただ、思惑通りに事が運ぶかどうかは不透明だ。ルドリアン氏は7月29日の小野寺五典防衛相との会談で、空母のロシアへの売却に懸念を伝えた小野寺氏に対し、売却方針を変えない考えを示した。会談後、会見したルドリアン氏は「空母は軍事関係の装備品を搭載していない。引き渡してからロシアがどう手を加えるか想像がつくが、現実を見ると契約は成立し、支払いも行われている」などと釈明した。

 (青田秀樹=サンナゼール、渡辺丘)


2014年8月2日
(「積極的平和主義」の実像)南シナ海、防衛強化へ布石 ベトナムに巡視船
    http://digital.asahi.com/articles/DA3S11278943.html?ref=reca

 ◇「積極的平和主義」の実像 世界の現場から

 ■潜水艦運用知識も指南

 南シナ海に面するベトナムの海上防衛の拠点カムラン湾。その北約40キロにあるニャチャン市のベトナム人民海軍第87海軍病院で3月、日本の海上自衛官ら5人とベトナム海軍の医官ら約40人が顔を合わせた。▼1面参照

 「潜水艦の乗組員の選抜で重視すべき身体・精神上の特性は」「長期間の潜航で留意すべき健康管理や栄養補給は」――講師を務める海上自衛官に、ベトナム軍側から次々と質問が寄せられる。ケーススタディーを中心とした実践的な講義は、5日間にわたった。

 防衛省は2012年度からアジア・太平洋諸国の途上国を対象に、医療や衛生、飛行安全などの各分野で支援を本格化させている。対象国は多いが「本丸はベトナムとインドネシアだ」(日本政府関係者)。

 現在、この地域での最大の懸案は中国の海洋進出。しかし、日本が監視可能な東シナ海と違い、中国の潜水艦が南シナ海を縦横に動きまわっても、東南アジア諸国の現在の軍備では把握し切れないのが実情だ。

 ベトナムは09年、ロシアから潜水艦6隻の購入を決めた。日本側はこの動きを逃さず、支援を申し出た。ロシア製潜水艦に精通はしていないが、オペレーションに欠かせない潜水医学には経験の蓄積がある。海上自衛隊の潜水艦は、航続距離の長さでは世界トップクラス。ベトナム潜水艦の運用を支援することで、南シナ海の防衛能力を高めたいとの思惑があった。

 政府は今年2月、インドネシア海軍の関係者5人を日本に招いた。5人は海上自衛隊や、海上保安庁で海図を作製するための研修を受けた。

 中国が南シナ海を南西に抜けてインド洋へ展開しようとした場合、インドネシアの潜水艦による監視活動が重要となる。潜水艦の効果的な運用のためには、詳細な海図が必要だ。「中国は弱いところを突いてくる。ならばそこを補強しなければ」と政府関係者は話す。

 ■ODAで軍援助、期待

 これらの支援は、防衛省の「能力構築支援」予算でまかなわれている。憲法で禁じられていない技術支援や人材育成が中心で、予算は年間で約2億円。一方、途上国援助(ODA)の実績は世界5位の約8464億円(12年、純額)だが、軍が対象であればこうした支援もできない。

 外務省は現在、ODAの見直しを進めている。6月下旬に有識者懇談会が提出した報告書によれば、災害救助など非軍事分野なら、これまで禁じていた外国軍への支援が出来るようになる。政府には、軍に対するより広範な援助ができるようになるとの期待がにじむ。

 昨年、大型台風に見舞われたフィリピン。自衛隊は過去最大の約1180人の支援部隊をレイテ島に派遣、護衛艦「いせ」(全長197メートル)と輸送艦「おおすみ」(同178メートル)を洋上に停泊させた。

 ホーバークラフトが波しぶきを上げて浜に乗り上げる様子は上陸作戦さながらで、太平洋戦争での旧日本軍の占領と重ね合わせて報じた地元紙もあった。だが市民のそうした感情は日ごとに薄れ、逆に中国への対抗上、日本との防衛連携を求める声が高まっている。

 アキノ大統領は6月に日本を訪問して安倍晋三首相と会談。「平和、安定、相互繁栄という目標達成に近づくならば警戒の念は抱かない」と述べ、集団的自衛権の行使容認を含む積極的平和主義について支持する立場を表明した。

 4月に米軍の再駐留に道を開く新軍事協定を結び、米国を第1の後ろ盾とするフィリピンだが、米国の関心はウクライナや中東情勢に注がれがちだ。自衛隊のプレゼンスに対する期待が高まっている。早くもODAを利用した港湾整備を期待する声もあがる。

 ■対中国、日本と温度差

 もっとも、東南アジアが対中国で日本と一枚岩になれているわけではない。

 ベトナムは6月、日本の陸上自衛隊も参加している南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に、初めて軍事連絡要員2人を送った。日本は現地宿営地での受け入れなどの支援を申し出ていたが、実現しなかった。理由は不明だが、関係者の間では「自衛隊との緊密化を嫌う中国への配慮があったのでは」との見方が強い。

 シンガポールで5月末から開かれたアジア安全保障会議でも、安倍首相がスピーチで名指しを避けながらも中国を強く批判したのに対し、ベトナムのフン・クアン・タイン国防相は中国批判を抑えた。小野寺五典防衛相との会談では、経済依存を理由に中国に強い態度をとれない窮状を示唆する場面もあった。

 中国に勤務経験のある元ベトナム外交官は「国民感情は現在『反中国』が支配的だが、政治的には『共産党同士』の深いつながりがある。ベトナムは簡単に中国を切れない」と指摘する。

 PKO活動で自衛隊から支援を受けているカンボジアだが、中国の影はより濃い。岸田文雄外相は6月末、カンボジアを訪れてホー・ナムホン副首相兼外相と会談し、副首相はその場で積極的平和主義について支持を表明したが、後日「『集団的自衛権』や『自衛隊』という言葉は使っていない」との異例の声明を出した。

 「国際法に則して地域紛争の解決を目指す考えに賛同しただけで、集団的自衛権の行使容認を支持したわけではない」という趣旨だ。多額の投資や支援を受けている中国に配慮し、「日本寄り」と受け止められる報道を打ち消す必要があったとみられている。

 (佐々木学=ハノイ、渡辺丘)


2014年6月29日
(社説)ODA見直し 危うい軍への支援解禁
    http://digital.asahi.com/articles/DA3S11215451.html?ref=reca

 政府の途上国援助の基本方針であるODA大綱。この見直しに向け、有識者懇談会が岸田外相に報告書を出した。

 これまで大綱が禁じてきた軍への支援でも、災害救助など非軍事目的ならば認めてよいとの提言が含まれている。

 今年で60年を迎える日本のODAは、報告書が指摘するように「平和国家として世界の平和と繁栄に貢献してきたわが国の最大の外交ツール」であり、各国から高く評価されてきた。

 それが軍への支援に踏み出すとなれば、従来の方針からの大きな転換である。

 武器輸出三原則の撤廃、そして集団的自衛権の行使容認に向けた動き。安倍政権は「積極的平和主義」の名のもと、戦後日本が堅持してきた「平和国家」としての外交政策を次々と変えようとしている。

 今回のODA改革も、その文脈にある。性急に結論を出すのは危うい。

 台風、地震、津波。ODAの対象となる東南アジアの国々は自然災害と隣り合わせだ。昨年11月、フィリピンで約1千万人が被災したというすさまじい台風被害は記憶に新しい。

 これらの国々で災害救助に大きな役割を果たす軍に対し、日本がその目的を限って支援することの意味がないとは言えないだろう。

 とはいえ、日本がいかに非軍事という線引きをしても、その線がいつまでも維持される保証はない。それに、他国からみれば、軍への支援は「軍事支援」にほかならない。

 政府はフィリピンなどへの巡視船供与に続き、軍民共用港の整備も検討しているという。南シナ海への攻勢を強める中国への牽制(けんせい)が念頭にあるならば、「力には力」の悪循環を招きはしないか。

 厳しい財政事情を反映して、政府全体のODA予算はピークだった97年からほぼ半減した。効率を高め、国民の理解を得られるような改革は大いに進めるべきだ。

 だが、それが途上国の発展やそこに住む人たちの福祉の向上というODAの本質を損なうことになってはならない。

 軍への支援解禁を含む今回の大綱見直しの動きには、現地でさまざまな支援活動に取り組む多くの非政府組織(NGO)が懸念を表明している。

 政府は、年内の新大綱決定前にこうした団体とも意見交換する予定という。これを形式的に終わらせてはならない。

 積極的平和主義の一方的な押しつけは、禍根を残すだけだ。


2014年4月12日
(声)政治を言い換えでごまかすな
    http://digital.asahi.com/articles/DA3S11080576.html?ref=reca

 無職 村上博彦(愛知県 77)

 安倍内閣は、武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則を閣議決定した。これまで原則禁止してきた「武器輸出」を「防衛装備移転」と言い換え、歯止めもあいまいなまま解禁に踏み切ったのだ。小野寺五典防衛相は「武器より防衛装備という言葉がしっくりする」と述べたが、「武器輸出」の負のイメージを消し、批判をかわそうとする意図が透けて見える。

 このようなごまかしは、これまでも行われてきた。憲法が保持しないと定めた「陸海空軍その他の戦力」は「自衛隊」と言い換え、日本を軍事力保有国にした。日本は戦後、憲法で「平和主義」を内外に示してきた。それを安倍晋三首相は「積極的平和主義」と言い換え、憲法が認めない「集団的自衛権の行使」を憲法解釈変更によって容認しようとしている。戦前の治安維持法のような法律も安倍内閣は「特定秘密保護法」と言い換え、強引に成立させた。

 安倍首相は「日本の安全保障環境が悪化している」と言うが、「積極的平和主義」でその改善が図られるのか。逆に各国の軍拡競争と緊張を助長し、「防衛装備」産業を栄えさせるだけとならないか。安倍内閣は言葉の言い換えでごまかさずに、きちんと説明して欲しい。

 00 00 () (日曜に想う)盗聴無限、同盟国も友邦も 特別編集委員・山中季広   

2014年8月31日
(日曜に想う)盗聴無限、同盟国も友邦も 特別編集委員・山中季広
    http://digital.asahi.com/articles/DA3S11325630.html

 先日、ベルリンを訪れ、遅ればせながら、米政府によるメルケル独首相盗聴事件の余波を尋ねて回った。

 米中央情報局(CIA)元職員エドワード・スノーデン容疑者が暴露した資料によると、メルケル首相の通信傍受で300件の情報を得たとある。

 「暴露資料には首相の携帯番号がずばり載っていた。他党党首との会話に使われていた1台で、首相はすぐ盗聴されにくい機種に買い替えました」

 そう語るターゲスシュピーゲル紙のハンス・モナーツ記者(56)はこの10カ月あまり、ドイツ政界の反応を追ってきた。「政治権力による盗聴はここでは非常に敏感な問題。ナチス時代は秘密警察ゲシュタポが市民の行動や思想を探ったし、戦後も東独では国家警察シュタージがしつこく盗聴した。その記憶がまだ生々しいからです」

 ベルリン特別市で情報保護を担当するアレクサンダー・ディクス情報公開特別官(63)は、首相だけでなく一般人のメールや通話も傍受されたこと、しかも米国家安全保障局(NSA)という米政府機関が主導したことに、人々は衝撃を受けたと話す。

 「目を覚まされた気がした。NSAから見れば、ネット上の私たちは丸裸同然だったのです」。タイプライターの売り上げが伸び、見られたくない連絡には封書郵便を使うなど、忘れていた安全策に回帰する人もいるそうだ。

   *

 ベルリン滞在中に見た資料のうち最も驚かされたのは、傍受した首脳の名を並べたリストである。計122人。サルコジ前仏大統領と並んで、わが麻生太郎元首相の名があるではないか。

 リストの存在は今春、独誌シュピーゲルが特報した。中国・環球網はリストに麻生氏の名があるとも伝えた。

 すぐさま関連先に当たってみたが、残念ながら信憑(しんぴょう)性を確かめることはできなかった。米高官は公聴会で「情報収集の対象には同盟国の首脳も含む」と認めたが、名前や人数は明かさなかった。真相を知るスノーデン容疑者はロシアに身を潜めたままである。

   *

 さて、一連の暴露資料を見ていくと「機密/米、英、カナダ、豪、ニュージーランド(NZ)のみ配布」という指示が頻繁に登場する。軍事諜報(ちょうほう)史に詳しい小谷賢・防衛省防衛研究所主任研究官(40)によると、この5カ国は、インテリジェンスの世界ではファイブアイズ(五つの目)と呼ばれる。

 「結束ぶりは格別です。同じ英語圏のアングロサクソン系で、もともとは第2次大戦中、日独の暗号を解読するために米英が手を結んだのが源流。20世紀以降の主な戦争では常に同じ側で勝利を収めてきました」

 5カ国の中にも序列があり、主役はあくまで米と英だ。ほかの3国は共有する機密の質や量で差をつけられる。

 もちろん日本やドイツはその輪の中にはいない。機密を分け与えられることはあるが、同時に監視も受ける。メルケル首相盗聴が示す通りである。

 聞いて思いだしたのは、集団的自衛権をめぐる論点のひとつ、「米軍は有事の際、どの国の人から救い出すか」という問題だ。

 1990年代末、日米が防衛協力指針を見直した際、朝鮮半島にいる日本の民間人を米軍が搬送できるかが話し合われた。しぶる米側が当初、チラリと示した優先順位はこんな風だった。

 (1)米国籍の人、次いで米永住許可者

 (2)英、カナダ、豪、NZの国民

 (3)その他の外国人

 やはり米国にとって本音では、日本という国は(3)「その他」扱いなのか。

 日米首脳会談ともなれば、大統領は「最も強固な同盟相手」「世界一の友人」と持ち上げる。腹のうちは違う。あくまで警戒を怠らない「外様」なのだ。そう考えると、日本の首相が盗聴されていても、別段不思議ではない。

 戦後69年たってもなお世界はファイブアイズが回している。今年11月に崩壊25周年を迎えるベルリンの壁に触れて、指先でそう実感した。

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 08 31 (日) (360゜)地方議員発、崩せ1強 戦う野党目指す/「集団的自衛権に反対」旗印   

2014年8月31日

    http://digital.asahi.com/articles/DA3S11325704.html

 野党がふがいない。なんとか安倍政権に対峙(たいじ)できないのか――。そんな思いで地方議員が政党の枠を超えて連携し始めた。

 「安倍政権の支持率が下がっているのに、なぜ民主党の支持率が上がらないのか。集団的自衛権の行使反対、脱原発で党の立ち位置を示せていないからだ」

 7月下旬に行われた、民主党の執行部と都道府県連の意見交換会。角倉邦良・群馬県議(53)が海江田万里代表を突き上げた。

 海江田氏も地方に渦巻く不満は理解していた。下手に返答すれば党内の集団的自衛権の行使容認派の反発を招き、不協和音を増幅しかねない。海江田氏は黙(だんま)りを決め込んでいたのだ。

 ただ、地方代表も海江田氏の行動を見越し、したたかに次の手を打っていた。

 意見交換会が終わると、角倉氏は党本部にほど近い衆院議員会館に急いだ。地下の会議室に滑り込むと、待ち受けていた10人あまりに報告した。「うちの代表はちょっと厳しい。地域から党派を超えて結集していくことがポイントだ」

 会議室に集っていたのは民主党の面々ではない。社民党や無所属、地域政党の「緑の党」や「生活者ネットワーク」系の地方議員たち。6月に発足した「自治体議員立憲ネットワーク」の打ち合わせ会だった。

 立憲ネットの旗印は集団的自衛権の行使反対。立ち上げ時に215人だった会員議員は、約1カ月で300人を超えた。「自民党のやりたい放題に地方から反撃しよう」。この日、会員の勧誘策を話し合った。

     *

 なぜ、地方議員は党派を超えて寄り合うのか。立憲ネット発足の経緯をたどると、野党への失望や、来年4月に迫る統一地方選への危機感が浮かび上がる。

 角倉氏や緑の党、無所属の地方議員ら5人がひざをつき合わせたのは、昨年10月だった。安倍政権が特定秘密保護法の成立に向けて動き出した時期だ。「どんどん右寄りになっていく。何とかならないか」。年末にかけ国会議員も交えて意見交換を重ねた。共通認識は「野党が国会で安倍政権に対峙できていない」ということだった。

 緑の党は昨年の参院選で完敗、統一地方選に向け超党派の枠組みづくりを模索していた。民主党も党勢回復の兆しは見えない。角倉氏は「民主党だけに依拠しても、世の中も民主党も安倍政権も変えられない。戦う野党の結集を地方から促したい」と呼応した。

 中核の5人はもともと脱原発運動の仲間だったが、結集軸は集団的自衛権に絞ることにした。社民党や生活者ネット系の地方議員らに賛同者を募っていった。

     *

 政党の枠組みを超えた動きは民間でも動き出す。今年1月、「万年野党」と銘打ったNPO法人が発足。政策提言や、国会議員の質問回数などをまとめた「国会議員三ツ星データブック」の刊行に取り組む。

 角倉氏が海江田氏を突き上げていた同時期、万年野党は、東京・丸の内の会員制レストランで政策討論会を開いていた。のぞいてみると、元経産官僚の岸博幸慶大院教授の経済談議に、起業家や大学職員ら約40人がワイングラスを傾けながら聴き入っていた。討論はネット中継された。「万年野党なんて下品な名前のNPOをつくらなければいけない状況は良くない。本来、野党やマスコミがやることです」。岸氏が軽口を飛ばすと、会場は笑いに包まれた。

 市議出身の高橋亮平事務局長(38)に聞くと、言い切った。「面白かったですよね。野党に期待するぐらいなら、ボクらがメディアを巻き込んで外から指摘した方が効果があると思う」

     *

 衆院は与党が3分の2を占め、残りの議席を9党が分け合う。山口二郎法政大教授は「野党が国家主義的な勢力、新自由主義的な勢力、リベラル勢力に分かれ、リベラルの軸が弱い。野党がだらしなさすぎるから、党を超えた動きが出る」と分析。「民主党や立憲ネットががんばり、統一地方選で集団的自衛権の民意を問う雰囲気が出てくることを期待する」と語る。

 ただ、民主党執行部は立憲ネットに困惑気味だ。海江田氏は心情的には理解を示すが、「党本部と異なる活動」と距離を置く。

 立憲ネットは統一地方選に向け、1千人の会員議員を集める目標を立てた。角倉氏は「オレたちの活動を超えて、学生や経済団体から安倍政権と戦う運動が起きたらいい。立憲ネットのような地域の政治主体をつくっておけば、そういう人が出てきた時に連携できる」と青写真を描く。「できるか分からないけれどね」と頭をかきながら。

 立憲ネットの人たちと接すると、与党もそうだが、むしろ野党への不満が地方で充満しているように感じた。こうした不満の受け皿になれれば野党にも活路はある。ただ、永田町では野党の一部は相変わらず数合わせの再編に奔走している。今のままで、こうした不満を取り込めるほど、事態は甘くないのだろう。(斉藤太郎、安倍龍太郎)

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