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折々の記 2015 ⑤
【心に浮かぶよしなしごと】

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  06 29 杉原千畝の本   ……彼の心に学びたい

 06 29 (月) 杉原千畝の本    ……彼の心に学びたい

杉原 千畝は、日本の官僚、外交官。 第二次世界大戦中、リトアニアのカウナス領事館に赴任していた杉原は、ナチス・ドイツの迫害によりポーランド等欧州各地から逃れてきた難民たちの窮状に同情。外務省からの訓令に反して、大量のビザを発給し、およそ6,000人にのぼる避難民を救ったことで知られる。

岐阜県の木曽川沿いの八百津出身です。



金の星社 杉原 幸子著
① 「杉原千畝物語―命のビザをありがとう」

最も参考になったカスタマーレビュー

① 子供向けだが、大人でも耐えうる内容
 杉原千畝について知りたいと思って関連図書を調べたが、案外数少ないということが分かった。子供向けとは知らずに本書を購入した。著者が千畝の肉親であり、内容に信憑性がある。ルビ付きで、小学校高学年向きか。

② 誇り
読んでいて心を揺さぶられました。
自分が同じ環境にいたら同じことができただろうか、黙って外務省を去っただろうかということをよく考えます。
His life was on the line when he was filling out visa after visa, and his efforts did not pay off in term of his career…
助けられたユダヤ人が、ずっと杉原氏を探してくれたということがよかったです。そうでなければあまりにも・・・
ユダヤ人は、杉原氏が政府の命令に従っていたと思っていたのですが、実際は政府の命令に反してまでもビザを書いてくれたんですよね。誤解がいい方向でとけたでしょうね。

【下平記】明治33.1.1(1900年)生まれ。 35才で22才の菊池幸子(ユキコ)と結婚、昭和61.7.31(1986年)死去。 というから、老生の実父より一つ年下の方である。 明治男が持っている剛直さを見逃すわけにはいかない。
彼の行動を理解するだけでなく、明治時代の気質からも学び取ることが必須の課題だと思う。


② 「六千人の命のビザ」

最も参考になったカスタマーレビュー

① 必ず読んで欲しい本です!!
杉原氏は当時の外務省の許可を得ずして、ユダヤ人6,000人にビザを発給した結果、戦後外務省に失職させられてしまう。電車が走り出すシーンを読むと、感動していつも泣いています。「スギハラー」という声、シーンをありありと想像できます。
「シンドラーのリスト」も素晴らしい作品ですが、杉原氏の人格的な素晴らしさは本当に凄い。
本には一部しか書いてありませんが、杉原氏の息子さんはイスラエルに招待された後に、宝石商人として成功しています。何故でしょうか?杉原氏が助けた方の中に宝石商で成功された方がいたからです。

② 人としていかに行動すべきか
外交官としての立場、そして一人の人間としての立場・・・。どちらを優先すべきなのか?悩んだ末に決断したのは一人の人間としての行動でした。寝る間も惜しんで発給したビザの数は約2000。そしてそのことにより救った命は約6000人。自分の立場を顧みず、たくさんの命を救うためにひたすらビザを発給し続けた杉原千畝さん。彼の行動は60年以上たった今でも、感動を呼びます。
切羽詰った状況の中で人はいかに行動すべきか?彼は身をもってそのことを教えてくれました。日本人の中に、こんなすばらしい人がいた。そのことを多くの人に知ってもらいたいと思います。感動的な本でした。

③ もう1つの命のビザ
杉原氏の行為が武士道とすれば、奥さんの幸子さんを文字通り身を挺して守った若いドイツ人将校の勇気ある行為は騎士道と言えるのではないか。幸子さんはシベリウスから送られたレコードを1人でブカレストに取りに行こうとしたがブカレストは既に赤軍に占領され、背走するドイツ軍に拾われたもののすでに周囲はパルチザンに取り囲まれ、あちこちから弾丸が飛んできてドイツ兵はばたばたと倒れる。そんな時に行きずりの日本人女性は足手まといになるだけで、見殺しにして我先に逃げたいところであるがーーー。そうしなかったこのデューラーという名のドイツ人将校には感激した。
戦争という異常事態の中でさえ、杉原氏やこのドイツ人のように自分の信念を貫いた勇気ある人々がいたということには救われる思いがする。

④ 人道博愛主義を貫く気概、そこから生まれる絆。。。日本が誇るべき偉人です!
 1994年、杉原幸子さんの著書です。(本書は、旧版を一部改定加筆、年譜等を増補し、新版として発刊されたものです。)
 著者・杉原幸子さんは、千畝氏の奥様です。まず、【第1章 逃れてきた人々】では、有名なリトアニア・カウナスでのビザ発給についてのエピソードを。
 次の【第2章 華やかなヨーロッパ】では、千畝氏・幸子さんの出会いからカウナスへの転勤までの話を、【第3章 暗雲の広がり】以後は、敗戦・収容、日本への帰国、ユダヤ人との再会 etc、リトアニアでのエピソード以後の話が続きます。
 ビザ発給の話を先に【第1章】でピックアップして、他は時系列に記述するという形です。 ユダヤ人へのビザ発給のお話は、もちろん素晴らしいお話で、千畝氏の「人道博愛主義を貫く気概」は、大いに尊敬されるべきものです。 帰国せずに千畝氏とご家族が一緒に行動されていることにも、杉原家の絆の太さ・強さを感じさせられます。 そして、やっぱり、ユダヤ人と再会するシーンは感動です! 夢中で読んでいると、読者も一緒に報われるよう。。。そんな感覚すら沸き起こってきます。
 また、本書は、ビザ発給だけでなく、興味深いエピソードがたくさん書かれています。 著者が、シベリウスのレコード・写真(本人からのプレゼント)を取りにブカレストへ向かうエピソードは、かなりスリリング。 そこでのドイツ将校との会話や若い将校の行動は、凄く心に訴えてくるものがあります。 他、ユダヤ人を満州国に受け入れるフグ計画、ビザ発給を受けたユダヤ人のその後、など興味深かったです。
 「私たち夫婦は杉原さんに救われましたが、孫ももう三十人も居ます」というユダヤ人夫婦がいます。 同様に、「あたりまえのことをしただけだ」という杉原ご夫妻の良心・気概を受け継ぐ人が、どんどん増えていくことを願います。 ちなみに、巻頭にはエドモンド・ロスチャイルド卿による序文、巻末には杉原千畝に関する外務省記録、年譜等を収録しています。 

 06 09 (火) 合憲・違憲論議 ギリシャ金融危機   株式金融の危機になるか

依然として安倍政権の安全保障法案の混迷が続く。 加えて金持金融の危機が始まりそうだ。 世界の金融秩序は


2015年6月29日 (安全保障法制)
「合憲」「違憲」理屈と論点は
     
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11831635.html

 新たな安全保障関連法案をめぐっては、憲法学者3人が衆院憲法審査会の参考人質疑で「憲法違反」と指摘したのをきっかけに、法案の根幹部分に対する批判や疑問が広がっている。そもそも政権が「合憲」とする理屈はどんなものか。憲法学者らが指摘する問題点はどこか。法案と憲法をめぐる論点を整理した。

■政権 「三段跳び」で解釈変更

 安倍内閣は昨年7月、歴代内閣による憲法の読み方(解釈)を変えて、米国のような日本と密接な関係にある他国が武力攻撃を受けた場合、それを阻止するために自衛隊が武力を使う集団的自衛権は認められると閣議決定した。

 歴代内閣は日本が直接攻撃された場合に限り、自衛隊が反撃する個別的自衛権だけを認めてきた。その根拠は戦争や武力の行使を放棄した憲法9条の存在だ。

 9条は戦力(軍隊)を持つことを禁じているが、歴代内閣は、独立国として自らを守るために必要最小限度の実力=自衛隊の存在は認められる、と解釈してきた。「自衛」はいいが、他国を守る「他衛(たえい)」はだめ。他国の防衛を手伝う集団的自衛権は他衛なので認められない――これが9条から読める解釈の限界だった。

 ではなぜ、憲法を改正せず、解釈を変えるだけで行使が認められるのか。安倍政権が持ち出したのは、過去の最高裁判決や政府見解を「三段跳び」のように結びつける理屈だ。

 「ホップ」の土台としたのは1959年の砂川事件最高裁判決だ。米軍基地に立ち入った日本人の刑事責任が問われた裁判で、旧日米安保条約に基づく基地の合憲性が争われた。判決は「自国の存立を全うするために必要な自衛の措置はとりうる」とし、憲法の下でも日本を守る自衛権は認められるとした。安倍政権が目を付けたのは、判決が「集団的」とか「個別的」といった限定を付けず、自衛権を認めているように読めるからだ。

 政権がさらに、解釈変更への「ステップ」と位置づけたのが、72年に内閣法制局が国会に提出した「集団的自衛権と憲法との関係」と題する政府見解だ。

 見解はまず、砂川判決を念頭に「自国の存立を全うするために必要な自衛の措置を禁じていない」(〈1〉)とする。次に「だからといって、憲法は自衛の措置を無制限に認めてない」とクギを刺している。このため、自衛権を使えるのは「外国の武力攻撃によって国民の権利が根底からくつがえされる急迫、不正の事態」があった場合に限るとし、その場合も武力行使は「必要最小限度の範囲にとどまるべきだ」(〈2〉)と制限している。

 そのうえで見解は、〈1〉と〈2〉の「基本的論理」から導かれる結論として「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」(〈3〉)とする。

 ところが政権は、〈1〉と〈2〉を引き続き使う一方、〈3〉の結論をひっくり返し、集団的自衛権の一部にも、憲法が認める「自衛」の部分があると主張する。三段跳びの「ジャンプ」の部分だ。

 なぜこんな「大跳躍」が可能なのか。政権は「安全保障環境の変化」を理由に挙げる。軍事技術の発展やテロの拡散で脅威は簡単に国境を越えるようになったとし、他国への武力攻撃でも状況次第で「我が国の存立を脅かす」と主張する。

■学者 政権の主張、厳しく批判

 安保法案の「合憲性」を強調する政権の理屈に対しては、4日の衆院憲法審査会で参考人として発言した憲法学者3人から厳しい指摘が相次いだ。

 政権が「憲法9条は砂川判決で示されている通り、自衛権を否定していない」(横畠裕介内閣法制局長官)と説明するのに対し、小林節・慶大名誉教授は15日の記者会見で反論した。「砂川判決で問われたことは在日米軍基地の合憲性で、日本の集団的自衛権はどこにも問われていない」

 集団的自衛権の行使を認めても「これまでの政府解釈との論理的整合性は保たれている」(中谷元・防衛相)との主張についても、厳しい批判がある。

 「従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない」。自民推薦参考人の長谷部恭男・早大教授は4日の憲法審で法案を批判し、「憲法違反だ」「他国への攻撃に対し武力を行使するのは、自衛と言うより他衛で、そこまで憲法は認めていない」と指摘。笹田栄司・早大教授も「(従来の解釈を)踏み越え違憲」とした。

 政権が「安全保障環境の変化」を解釈変更の論拠とする点についても、長谷部氏は、今回の憲法解釈の変更で「どこまで武力行使が許されるのか不明確になった」と指摘する。時の政権の判断次第で「必要最小限度の自衛の措置」の範囲はいくらでも広げられる可能性があるからだ。長谷部氏や小林氏は、そんな解釈変更を認めれば「(憲法で国家権力を縛る)立憲主義に反する」と批判する。(石松恒)


2015年6月29日 自民処分、党内に不満の声
執行部を「恐怖政治」
     報道威圧問題
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11831636.html

 安倍晋三首相に近い自民党議員でつくる勉強会で、沖縄の地元紙を含む報道機関を威圧する発言が出ていた問題をめぐり、自民党執行部は勉強会の代表者らを処分したことで早期の幕引きを図る。ただ、党内では「恐怖政治だ」との不満がくすぶり始めたほか、野党も国会で引き続き追及する方針。余波は今後も続きそうだ。

 「軽率な議論で自民党の姿勢に誤解を与えた。まことにけしからん事件だ。申し訳なかった」

 自民党の谷垣禎一幹事長は28日のNHK番組で、25日の「文化芸術懇話会」に出席した議員が「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番」と発言したり、講師に招かれた作家の百田尚樹氏が「沖縄の二つの新聞社は絶対につぶさなあかん」などと述べたりしたことについて陳謝した。

 自民党は27日、懇話会代表の木原稔・党青年局長を1年の役職停止に、問題発言をした議員3人を厳重注意とした。

 党内には、勉強会の発言について「面白かった」と賛同する声がある一方、閣僚経験者の一人は「同じ自民党として恥ずかしい」と批判する。さらに、党内で主立った政権批判は出ていないものの、安倍首相(党総裁)や谷垣氏らの判断で代表者更迭などとした対応には不満の声が上がりはじめた。

 ある派閥領袖(りょうしゅう)の一人は党幹部に「木原氏が発言したわけでも、発言を促したわけでもない」と抗議。首相に近いベテラン議員も「処分すると責任を認めたことになる。一気呵成(いっきかせい)に更迭するのは問題だ」と話す。

 また、党執行部は問題発言に過敏になり、若手議員の番組出演にまで締め付けを強める。27日未明放送のテレビ朝日の討論番組「朝まで生テレビ!」では、出演を決めていた複数の議員を呼び出し、出ないよう指示。議員は「日程の調整がつかない」という理由で出演をとりやめた。これに対し、党三役経験者は「圧力だ」と批判。閣僚経験者の一人は「恐怖政治だ」と指摘する。

 野党は攻勢を強める。28日のNHK番組で、民主党の福山哲郎幹事長代理が「トカゲのしっぽ切りではまったく収まらない」と批判。民主は勉強会の発言内容に関して謝罪を拒む安倍首相を追及する方針だ。(笹川翔平)




2015年6月29日
ギリシャ支援あす失効
     来月5日の国民投票、承認
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11831643.html

 財政危機にあるギリシャの国会は28日未明、欧州連合(EU)などからの金融支援の前提となる改革案の受け入れの是非を問う国民投票を、7月5日に実施することを決めた。27日のEUのユーロ圏財務相会合が、30日期限の金融支援プログラムの延長を拒否したことから、ギリシャで資金が不足する可能性がある。週明けの世界の金融市場が混乱する恐れもあり、ギリシャ政府や欧州中央銀行(ECB)は対策に乗り出す構えだ。▼2面=賭け裏目、4面=途上の財政改革、8面=社説

 ■ギリシャ政府 緊急評議会で対応策

 「反緊縮」勢力が強いギリシャ国会(定数300)は、賛成178票、反対120票で国民投票を承認した。チプラス首相は「国民は最後通告に対して明確にノーと言うだろう。支援側はギリシャが降伏しないことを目の当たりにする」と演説し、国民に反対票を投じるよう呼びかけた。

 それに先立つユーロ圏財務相会合では、チプラス氏が国民投票の実施を表明したことに対し反発する声が強まり、ギリシャの期限延長の要請に応じなかった。支援プログラムは30日で失効するため、改革案を問うはずのギリシャの国民投票の結果がどう位置づけられるかは不透明だ。

 ギリシャはEU側から支援がないと、30日に迫る国際通貨基金(IMF)からの約15億ユーロ(約2100億円)の借金返済ができずに債務不履行(デフォルト)状態に陥る可能性がある。一方、ギリシャ国内でもお金が不足するかもしれないとの不安から、国民が預金を引き出す動きがある。

 ギリシャを除くユーロ圏の財務相は、27日夜に協議を続けた。「金融システムの安定を保つため、ギリシャ当局による方策が必要」とする声明を発表し、危機の封じ込めを要請。ギリシャ政府は28日に緊急財政評議会を開き、対応策を検討する方針だ。

 ECBは28日、ギリシャの中央銀行を通じて同国の銀行に供給できる資金の上限を現状のまま維持すると発表した。「金融の安定のためにギリシャ側と緊密に連携する」とした。市場が開く29日以降の金融不安を抑えるため、銀行の窓口の閉鎖や預金の引き出し制限などが検討される可能性がある。(アテネ=山尾有紀恵、ブリュッセル=寺西和男)




2015年6月29日 (時時刻刻)
賭け裏目、ギリシャ窮地
     EU、支援の延長を拒否
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11831643.html

 財政危機にあるギリシャが、欧州連合(EU)などから支援交渉の期限延長を拒まれた。「反緊縮」の旗を振るチプラス首相は国民投票を盾に譲歩を引き出す賭けに出たが、突っぱねられた。債務不履行(デフォルト)が迫るなか、世界の金融市場は身構えている。▼1面参照

 ■「国民投票」深めた溝

 「非常に落胆した」。ギリシャ支援のカギを握る欧州一の経済大国ドイツのショイブレ財務相は27日、こう繰り返した。

 支援の条件として求められた改革案を受け入れるかどうかを国民投票に委ねるというギリシャのチプラス首相の言動は、賭けだったと言える。ユーロ圏の離脱にまでつながりかねない強い態度を見せることで、支援側の譲歩を引き出す狙いがあったとみられるが、結果は裏目に出た。ユーロ圏諸国の態度は一気に冷え込んだ。10日ほどで計5回も開いた財務相の会合は何のためだったのか――。

 国民投票はまさに寝耳に水だった。チプラス氏とユーロ圏財務相らとの橋渡し役を果たしたEUのユンケル欧州委員長(首相に相当)はおろか、ブリュッセルで交渉にあたっていたギリシャ政府高官にも知らされていなかったという。

 ドイツ政府関係者は「首相、大臣、あらゆるレベルでギリシャ側と連日協議し、その結果がこれだ。(29日予定の)独連邦議会で支援延長が承認されるわけがない」と吐き捨てた。

 「反緊縮」を掲げ、年金生活者の保護を約束するチプラス政権と、年金改革を柱に財政再建を急ごうとするEUなど支援側。その深い溝は、EU加盟国の連帯感の乱れを象徴している。

 2010年から深まったユーロ危機に、EUは緊縮財政を処方箋(せん)とした。引き換えに財政支援を用意し、アイルランドやスペインなどは立て直しを進めてきた。だが、観光のほかに競争力のある産業がないギリシャには緊縮の影響は大きかった。経済規模は過去6年間で25%も縮んだ。

 ユーロ圏財務相会合のデイセルブルーム議長(オランダ財務相)は「(我々は)ギリシャの最近の経済状況を考慮し、財政も経済も持続可能な軌道に戻るよう柔軟性を示した」と指摘したが、ギリシャのバルファキス財務相の受け止めはまったく違った。「支援側の改革案は深刻な景気減退につながる。負担できる人が負担をしないで、できない人に押しつけている」

 ユーロ圏は、経済が好調なドイツから、破綻(はたん)寸前のギリシャまで、19の国が一つの通貨と金融政策を共有する。強い国の力を借りつつ、連帯して責任を負う「ユーロ圏共同債」を発行する案が議論されたこともあるが、ドイツなどに反対論が強く、棚上げされたままだ。ギリシャが離脱に追い込まれれば、EU統合の求心力はさらに弱まるおそれがある。(ブリュッセル=青田秀樹、吉田美智子)

 ■アテネ、預金者が行列

 主要銀行が並ぶアテネ中心部のシンタグマ広場周辺。ユーロ圏財務相会合が支援打ち切りを決めてから一夜明けた28日午前、銀行のATM前に行列ができた。一部のATMでは現金がなくなり、引き返す人たちの姿もみられた。

 ニコス・スクラスさん(68)はここ数日、いくつかの銀行のATMをはしごした。「明日銀行が開かなかったら暴動が起きる。ユーロ圏から出たらギリシャは終わりだ」。年金を引き出しにきた元教師バーニャ・トゥルシューガさん(65)は「国民は交渉内容を知らないのに、国民投票で問うのは間違っている」と話した。

 混乱を見越して現金を手元に置いておきたい預金者が銀行に殺到し、週明け29日に取り付け騒ぎが起きかねない。ギリシャのバルファキス財務相は28日、英BBCに対し、銀行窓口の閉鎖と預金引き出しの制限などを検討すると語ったが、その直後、ツイッターで発言を否定した。

 ギリシャの危機がユーロ圏に波及しないかどうか、各国は神経をとがらせる。

 「我々はギリシャ側と緊密に連携し、ユーロ圏経済の脆弱さに対応するための取り組みを支持する」。欧州中央銀行(ECB)は28日、ドラギ総裁のコメントを発表した。共通通貨ユーロを使う各国は経済的につながりが深く、ギリシャの銀行や企業と取引する欧州企業は少なくない。デフレ懸念があった景気は持ち直しつつあるが、回復力は弱い。

 ギリシャの行方はユーロ圏の先行きに影響を与えかねない。ギリシャ政府にお金がなくなれば、経済は行き詰まる。EU内の各国との信頼に基づいて発行、流通するユーロが手元からなくなったら――。ささやかれるのは、旧来のドラクマなど独自通貨の発行だ。つまり、ユーロ離脱への道だ。(アテネ=山尾有紀恵、ブリュッセル=寺西和男)

 ■市場の混乱、限定的か

 ギリシャのデフォルトが現実味を帯びたことを受け、市場関係者は週明けの金融市場の動きを注視している。「世界経済への影響は限定的」との見方が多い一方、「危機が広がる恐れは捨てきれない」と警戒の声もある。

 「直前まで合意への期待感があった。反動からユーロが売られ、円高ユーロ安が進むだろう」とSMBC日興証券の西広市氏は話す。株価は下落、国債などの債券は買われやすくなるとの見立ては、多くの市場関係者に共通する。

 それでも、みずほ銀行の唐鎌大輔氏は「混乱してもいったんは収束するのではないか」とみる。2010年以降のギリシャ危機で、日本をはじめ世界の金融機関などの民間投資家はギリシャ国債を手放した。国債の大半はEUの機関など公的部門が抱える。仮にデフォルトになっても、連鎖的に銀行の経営危機が広がる事態にはなりにくい。

 三菱東京UFJ銀行の鈴木敏之氏は「リーマン・ショック以降、火事が起きれば火消しに走るのは世界の常識になった」と、EUの制度面での充実を指摘する。行き詰まった銀行や政府を救済するEUの基金のほか、ECBによる緊急の国債買い入れ策などが整備され、機動的に支援できる仕組みがあることも安心材料だ。

 EU側がギリシャに強い態度に出られたのも、世界経済を道連れにすることはない、との見方が背景にありそうだ。

 一方で警戒の声もある。

 野村証券の松沢中氏は「リーマン・ショックのときも、最初は大したことはないとの油断があった。政府債務が多いイタリアやスペインに危機が全く伝染しないとは言い切れない」。投資家の不安心理が広がれば、金融市場の混乱が世界に広がる恐れはゼロではない。(神山純一、野島淳)


2015年6月29日 (社説)
ギリシャ問題 危機の端緒にするな
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11831595.html

 ギリシャ債務危機がふたたび世界経済の火だねとなりそうだ。金融支援をめぐってギリシャと欧州連合(EU)はぎりぎりの交渉を続けてきたが、年金削減などEU側が求める厳しい改革案をギリシャが拒否。その賛否を問う国民投票を7月5日に実施するとしている。これに強く反発したEUは現行の支援を今月で打ち切ると表明した。 ギリシャ債務危機がふたたび世界経済の火だねとなりそうだ。金融支援をめぐってギリシャと欧州連合(EU)はぎりぎりの交渉を続けてきたが、年金削減などEU側が求める厳しい改革案をギリシャが拒否。その賛否を問う国民投票を7月5日に実施するとしている。これに強く反発したEUは現行の支援を今月で打ち切ると表明した。

 ギリシャは国際通貨基金(IMF)への約2千億円の借金返済が期限のあすまでにできず、債務不履行(デフォルト)になる恐れが強まっている。

 心配なのは、週明けの金融市場への影響である。これが引き金となって世界経済危機に発展するようなことは絶対避けなければならない。主要国の金融当局は警戒を怠らず、必要なら連携して対応にあたってほしい。

 今回、EUが最終的に支援拒否やむなしと判断した背景には、ギリシャがデフォルトとなっても影響は限定的とみていることがある。ギリシャ向け債権の多くをすでに民間金融機関から切り離し、EUやIMFが引き受けている。公的管理によって、リスクをなんとか制御できると考えているのだろう。

 ただ、そんな筋書きどおりにいかないのが過去の経済危機の教訓である。日本に長期停滞をもたらす要因となった1997年秋の金融危機は、最初の三洋証券のデフォルトを当局も市場も過小評価していた。だが破綻(はたん)の連鎖は、すぐに北海道拓殖銀行や山一証券など大手へと広がり、とりかえしのつかない事態になった。

 2008年の米金融大手リーマン・ブラザーズの破綻でもそうだった。未曽有の世界経済危機につながると予測できていたら、米政府はあのようなリーマン処理を選択しなかったろう。

 市場にはさまざまな思惑があり、どんな経路から危機につながってしまうのか予測しにくい。ギリシャ危機にしても、想定外のリスクが十分にありうると覚悟していたほうがいい。

 ギリシャ経済を大混乱に陥らせないために、少なくとも欧州中央銀行(ECB)によるギリシャの銀行への資金繰り支援は当面ある程度、続けざるをえないのではないか。

 欧州統合の理念からいえば望ましくはないが、ギリシャのユーロ離脱の可能性も視野に入れる必要が出てきた。EUが対応を誤れば、この問題は財政が比較的悪いとみなされているスペインやイタリア、ポルトガルにも連鎖しかねない。経済危機の火だねを、ていねいに消していく細心さが求められている。

 ギリシャ債務危機がふたたび世界経済の火だねとなりそうだ。金融支援をめぐってギリシャと欧州連合(EU)はぎりぎりの交渉を続けてきたが、年金削減などEU側が求める厳しい改革案をギリシャが拒否。その賛否を問う国民投票を7月5日に実施するとしている。これに強く反発したEUは現行の支援を今月で打ち切ると表明した。

 ギリシャは国際通貨基金(IMF)への約2千億円の借金返済が期限のあすまでに

できず、債務不履行(デフォルト)になる恐れが強まっている。  心配なのは、週明けの金融市場への影響である。これが引き金となって世界経済危機に発展するようなことは絶対避けなければならない。主要国の金融当局は警戒を怠らず、必要なら連携して対応にあたってほしい。

 今回、EUが最終的に支援拒否やむなしと判断した背景には、ギリシャがデフォルトとなっても影響は限定的とみていることがある。ギリシャ向け債権の多くをすでに民間金融機関から切り離し、EUやIMFが引き受けている。公的管理によって、リスクをなんとか制御できると考えているのだろう。

 ただ、そんな筋書きどおりにいかないのが過去の経済危機の教訓である。日本に長期停滞をもたらす要因となった1997年秋の金融危機は、最初の三洋証券のデフォルトを当局も市場も過小評価していた。だが破綻(はたん)の連鎖は、すぐに北海道拓殖銀行や山一証券など大手へと広がり、とりかえしのつかない事態になった。

 2008年の米金融大手リーマン・ブラザーズの破綻でもそうだった。未曽有の世界経済危機につながると予測できていたら、米政府はあのようなリーマン処理を選択しなかったろう。

 市場にはさまざまな思惑があり、どんな経路から危機につながってしまうのか予測しにくい。ギリシャ危機にしても、想定外のリスクが十分にありうると覚悟していたほうがいい。

 ギリシャ経済を大混乱に陥らせないために、少なくとも欧州中央銀行(ECB)によるギリシャの銀行への資金繰り支援は当面ある程度、続けざるをえないのではないか。

 欧州統合の理念からいえば望ましくはないが、ギリシャのユーロ離脱の可能性も視野に入れる必要が出てきた。EUが対応を誤れば、この問題は財政が比較的悪いとみなされているスペインやイタリア、ポルトガルにも連鎖しかねない。経済危機の火だねを、ていねいに消していく細心さが求められている。


2015年6月29日21時11分 NHK Businessニュース
欧州の株式市場 大幅下落
     ギリシャの懸念強まり
     http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150629/k10010131851000.html

29日のヨーロッパの主な株式市場では、ギリシャが債務不履行に陥る懸念が一段と強まったという見方から、イタリアやスペインで株価指数がおよそ4%下落するなど、各市場で株価が大きく値下がりしています。

週明けの29日のヨーロッパの主な株式市場では、ユーロ圏各国がギリシャへの金融支援を今月末で終了する方針を示し、ギリシャが債務不履行に陥る懸念が一段と強まったという見方から、ほぼ全面安の展開となっています。
主な株価指数は日本時間の午後8時の時点で先週末の終値と比べ、イタリアのミラノ市場とスペインのマドリード市場でおよそ4%、フランスのパリ市場で3.5%余り、ドイツのフランクフルト市場でおよそ3.4%、それぞれ下落するなど、各市場で株価が大きく値下がりしています。
一方、ギリシャのアテネ市場は政府が銀行の預金の引き出し制限を実施したことを受けて、休場となりました。
また、債券市場ではギリシャ国債が売られ、10年ものの国債の利回りが急上昇して、14%台をつけているほか、イタリアやスペインの国債の利回りも上昇しています。
さらに外国為替市場でもギリシャがユーロ圏から離脱すれば、通貨ユーロに対する信用が損なわれるとして、ユーロが主要通貨に対して売られる展開となっています。
市場関係者は、「IMF=国際通貨基金への債務の返済期限まであと1日となり、市場の緊張感が高まっている」と話しています。

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