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折々の記 2015 ⑤
【心に浮かぶよしなしごと】

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  07 03 「ギリシャ危機」最新ニュース一覧   すべては流動渦中にあり、その流動渦中からは離脱できないことになっている
  07 06 ギリシャ国民投票 チプラス首相が勝利宣言   さて、金融はどうなるのか?

 07 03 (金) 「ギリシャ危機」最新ニュース一覧   すべては流動渦中にあり、その流動渦中からは離脱できないことになっている



  ものみなすべて流動渦中にあり
  その流動渦中からは離脱できないことに
  なっている

  ところがそれゆえに
  希望も落胆も生じ
  喜怒哀楽を楽しむことができる

  そしてどう進むかは
  一人ひとりに任されている
  かくして …… 地球は廻ってあすがくる
    2015/07/03 債券金融システム流動化のまっ最中    水 鏡


 「それでも地球は廻る」 この荘厳の真理のもと 悦 の一語は心の拠りどころ
   祈りとは自分への約束であり、
   願いとは自分への進む方向をはっきりさせることであり、
   行いとは悦にいたる行動である                水 鏡



「ギリシャ危機」最新ニュース一覧

  NYダウ続伸、138ドル高(07/02)
  ギリシャ、ユーロ離脱否定 緊縮案、反対票呼びかけ 首相演説(07/02)
  欧州中銀、資金供給を維持 ギリシャの銀行に(07/02)
  日経平均、193円高で取引終了 3日続伸(07/02)
  ギリシャ首相、緊縮反対投票呼びかけ ユーロ離脱は否定(07/02)
  欧州中銀、ギリシャの銀行への供給維持 資金繰り支える(07/02)
  ふんばるギリシャ 田中宇の国際ニュース解説  ( 世界はどう動いているか )(06/30)
  国民投票、ギリシャの命運 “緊縮策反対→経済破綻、ユーロ離脱?” “緊縮策賛成→政権退陣?EU再交渉”(07/03)



2015年7月2日16時30分
NYダウ続伸、138ドル高
     
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11838262.html

 1日のニューヨーク株式市場は、大企業で構成するダウ工業株平均が大幅に上昇し、前日より138・40ドル(0・79%)高い1万7757・91ドルで取引を終えた。

 ギリシャへの金融支援をめぐる交渉の先行きは不透明感が残るものの、協議が進展することへの期待感も広がり、買いが先行した。ダウ平均は一時、前日の終値より180ドル超上昇する場面があった。堅調な米経済指標も相場を支えた。(ニューヨーク)


2015年7月2日16時30分
ギリシャ、ユーロ離脱否定 緊縮案、反対票呼びかけ
     首相演説
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11838241.html

 ギリシャのチプラス首相は1日、国民向けのテレビ演説で、「『反対』はよりよい取引への決定的な一歩になる」と述べ、5日の国民投票で反対票を投じるよう呼びかけた。一方、欧州連合(EU)のユーロ圏財務相会合は1日夜、国民投票まではギリシャとの交渉を見送ることで一致。5日の国民投票までは、膠着(こうちゃく)状態が続きそうだ。

 5日の国民投票では、EU側が示した改革案の受け入れの是非が問われる。

 チプラス氏は、「国民投票はユーロ残留を問うものではない」と強調。反対多数でもギリシャがユーロから離脱することはないと改めて指摘し、「この苦境は一時的なものだ。給与や年金、預金は失われない」と理解を求めた。国民の反対票を背に、投票後のEUとの交渉を有利に進め、合意を目指す方針を示した。

 ギリシャはEUなどの金融支援プログラムが失効する目前の6月30日午後、2年間の新たな金融支援などを求める提案や、改革案を受け入れるとの書簡をEU側に送付している。

 ユーロ圏の財務相は1日、電話会議で対応を協議。デイセルブルーム議長(オランダ財務相)は会合後、「我々は国民投票の結果を待つ」と表明した。(アテネ=山尾有紀恵、ブリュッセル=吉田美智子)


2015年7月2日16時30分
欧州中銀、資金供給を維持 ギリシャの銀行に
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11838239.html

 欧州中央銀行(ECB)は1日の定例理事会で、ギリシャの銀行に対する資金供給を現状のまま続けることにした。しばらくは、資金流出が続くギリシャの銀行の資金繰りを最低限は支えるものとみられる。

 ECBは銀行の資金繰りを支えるため、ギリシャ中央銀行を通じて「緊急流動性支援(ELA)」を行っている。しかしギリシャは、EUなどの金融支援プログラムが1日に失効し、6月30日が期限の国際通貨基金(IMF)に対する融資の返済もできなかった。このため、ギリシャの銀行に供給する資金量の上限を現状のままにするか、それとも縮小するのかが注目されていた。

 ギリシャ政府による資本規制の導入を受け、米大手格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がギリシャの大手4行の格付けを「選択的デフォルト(債務不履行)」(SD)にするなど、銀行の格下げが続いている。「命綱」の資金供給策が縮小されると、資金繰りに行き詰まり、破綻(はたん)する恐れもあった。(ロンドン=寺西和男)


2015年7月2日15時41分
日経平均、193円高で取引終了 3日続伸
     http://digital.asahi.com/articles/ASH7251XPH72UTFK00Y.html

 2日の東京株式市場は3日連続で値上がりし、取引を終えた。ギリシャ債務問題での交渉継続への期待感から、買いが膨らんだ。日経平均株価は、前日より193円18銭(0・95%)高い2万0522円50銭。東京証券取引所第1部全体の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)は、11・83ポイント(0・72%)高い1648・24。出来高は22億3千万株だった。

 前日の欧米株高を受けて、朝方から幅広い業種で買われた。5日にギリシャの国民投票を控えていることなどから、午後になると様子見が出て、値上がり幅を縮めた。市場関係者には、ギリシャのユーロ離脱にまでは至らないだろうとの観測が広がっていて、「週初に日本株が一時急落したが、今後を過度に悲観する必要はない」(大手証券)との見方が出ている。


2015年7月2日13時40分
ギリシャ首相、緊縮反対投票呼びかけ
     ユーロ離脱は否定
     http://digital.asahi.com/articles/ASH722TG9H72UHBI00S.html

 ギリシャのチプラス首相は1日、国民向けのテレビ演説で、「『反対』はよりよい取引への決定的な一歩になる」と述べ、5日の国民投票で反対票を投じるよう呼びかけた。一方、欧州連合(EU)のユーロ圏財務相会合は1日夜、国民投票まではギリシャとの交渉を見送ることで一致。5日の国民投票までは、膠着(こうちゃく)状態が続きそうだ。

   ギリシャ財政危機
   http://www.asahi.com/topics/word/%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%83%A3%E8%B2%A1%E6%94%BF%E5%8D%B1%E6%A9%9F.html

 5日の国民投票では、EU側が示した改革案の受け入れの是非が問われる。

 チプラス氏は、「国民投票はユーロ残留を問うものではない」と強調。反対多数でもギリシャがユーロから離脱することはないと改めて指摘し、「この苦境は一時的なものだ。給与や年金、預金は失われない」と理解を求めた。国民の反対票を背に、投票後のEUとの交渉を有利に進め、合意を目指す方針を示した。

 ギリシャはEUなどの金融支援プログラムが失効する目前の6月30日午後、2年間の新たな金融支援などを求める提案や、改革案を受け入れるとの書簡をEU側に送付している。

 ユーロ圏の財務相は1日、電話会議で対応を協議。デイセルブルーム議長(オランダ財務相)は会合後、「我々は国民投票の結果を待つ」と表明した。(アテネ=山尾有紀恵、ブリュッセル=吉田美智子)


2015年7月2日09時37分
欧州中銀、ギリシャの銀行への供給維持
     資金繰り支える
     http://digital.asahi.com/articles/ASH722FCLH72UHBI00L.html

 欧州中央銀行(ECB)は1日の定例理事会で、ギリシャの銀行に対する資金供給を現状のまま続けることを決めた。しばらくは、資金流出が続くギリシャの銀行の資金繰りを支えるものとみられる。

   【特集】ギリシャ財政危機

 ECBは銀行の資金繰りを支えるため、ギリシャ中央銀行を通じて「緊急流動性支援(ELA)」を行っている。しかしギリシャは、欧州連合(EU)などの金融支援プログラムが1日に失効し、6月30日が期限の国際通貨基金(IMF)に対する融資の返済もできなかった。このため、ECBが資金供給を現状のまま続けるのか、それとも縮小するのかが注目されていた。

 ギリシャ政府による資本規制の導入を受け、米大手格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がギリシャの大手4行の格付けを「選択的デフォルト(債務不履行)」(SD)にするなど、銀行の格下げが続いている。「命綱」の資金供給策が縮小されると、資金繰りに行き詰まり、破綻(はたん)する恐れもあった。(ロンドン=寺西和男)


【2015年6月30日】
ふんばるギリシャ
     田中宇の国際ニュース解説 世界はどう動いているか
     http://tanakanews.com/150630greece.htm

 6月22日、ギリシャのチプラス首相が、債権者側(EU、欧州中央銀行、IMFの「トロイカ」)に対し、消費税(VAT)の中心的な税率を23%に引き上げ、公的年金の給付開始年齢を67歳に引き上げる「緊縮財政策」を提案した。IMFやECBから借りた資金を返せないギリシャに対し、トロイカは、消費税率の引き上げや年金支払いの抑制によって政府財政を改善することで借金を返せと求めてきた。ギリシャは今年1月、トロイカの要求を拒否することを公約に掲げた左翼政党シリザのチプラスが政権を取り、トロイカの要求をずっと拒否していた。それが一転、チプラスが意外にもトロイカの要求を受け入れた。 (Greece offers new proposals to avert default, creditors see hope)

 ギリシャは、6月30日にIMFへの17億ドルの返済期限がきた。返さなければ「デフォルト」(債務不履行、国家財政破綻)だと喧伝されている。期限を前にチプラスは、トロイカから新たな救済融資をしてもらうために、これまでやったことがない譲歩をした、これでIMFに対するギリシャのデフォルトは避けられるかも、といった報道が流れた。 (Hopes for Greece bailout deal rise sharply as Athens gives ground)

 しかし、チプラスの譲歩は続かなかった。与党シリザの左翼が多数を占めるギリシャ議会は、チプラスの譲歩案に猛反対した。シリザは1月の選挙で勝つにあたり、消費増税や年金削減といった緊縮策をやらないと公約していた。チプラス政権は緊縮策の許諾について「公約は、電力料金を消費税率を上げないと言ったのであり、電気料の増税は今回の譲歩から外してある。年金支給年齢の引き上げは、年金の削減でない」などと弁解したが、議会は受け入れなかった。 (Greek government confident despite backlash over debt deal) (Knives out for Tsipras as Syriza hardliners threaten mutiny)

 議会から圧力を受け、チプラスは6月26日、トロイカが求める緊縮策に賛成かどうかをギリシャ国民に問う国民投票を行うとを発表した。議会は国民投票に賛成し、投票は7月5日に行われることになった。可決されれば、消費増税や年金支給年齢引き上げなどが実施され、見返りにトロイカがギリシャに追加融資することに道が開かれる。否決されれば、ギリシャとトロイカの対立が続くことになる。 (Greece Invokes Nuclear Option: Tsipras Calls For Referendum) (Greek Parliament Votes In Favor Of Referendum)

 チプラスが6月22日にトロイカに譲歩してみせたのは、国民投票をやるための芝居だったようだ。チプラスはトロイカに「私の譲歩策は議会に受け入れられず、国民投票で民意を問わざるを得なくなった」と言い訳できる。EUは民主主義が建前なので、民意の明確な裏付けがあるものをトロイカは拒否できない。チプラス政権やギリシャ議会は、国民に、国民投票を否決するよう求めている。ギリシャで行われた2つの世論調査は、賛成票を投じる国民が多いと結論づけたが、これらの世論調査結果は怪しい。与党はトロイカが要求する緊縮策に反対であり、国民が緊縮策に賛成するなら国民投票などしない。ギリシャの与党は、国民投票が否決されると予測して動いている。 (Greek bailout referendum, 2015 - Wikipedia)

 トロイカの側は、国民投票での緊縮策の否決がギリシャのユーロ離脱につながると言っている。これは的外れな脅しだ。ギリシャの政府と世論は、トロイカへの借金を返さないままユーロ圏内にとどまることを求めている。トロイカからの借金は不正なものだと、ギリシャ人の多くが考えている。 (◆ギリシャはユーロを離脱しない)

 ギリシャが02年にユーロに加盟した後、高利回りを求めて巨額資金がEU各国からギリシャに流入してバブルとなり、11年にドル防衛・ユーロ潰しのために米英投機筋がそのバブルを崩壊させてユーロ危機を起こし、米国傘下のIMFが救済支援と称してギリシャを借金漬けにして、危機を長引かせている。IMFが貸した金は不正な策の道具なのだから返す必要などなく、むしろギリシャが受けた被害を弁償する意味で追加融資をする義務があると、ギリシャ人は考えている。 (◆革命に向かうEU) (Impoverished Greek City Stands With Alexis Tsipras)

 ギリシャは6月30日にIMFから借りた資金の返済期限が来るが、金がないので返済しないとギリシャ政府は言っている。マスコミは「デフォルトだ」と騒いでいる。しかし、IMFの手続きでは、債務国に貸した金が返ってこない場合、その国に対して「デフォルト」を宣言するのでなく「滞納国」の分類に入れることになっている。民間投資家に売った国債の償還日が来ても支払わないなど、民間に対する債務の不履行は民間経済の決まりとしてデフォルトになるが、IMFという国家への資金援助を目的とした公的機関と、国家との関係は、民間経済の決まりが当てはまらない。ギリシャがIMFに金を払わなくてもデフォルトにならないと、ブルームバーグ通信が報じている。 (Why It Won't Be a Default If Greece Misses IMF Payment Next Week) (Greece Will Default To IMF Tomorrow, Government Official Says)

 デンマークの銀行の今年3月時点の概算によると、ギリシャの国全体としての負債総額は3127億ユーロで、その3分の2は、IMF、EUの基金、ECB、EU加盟諸国といった政府系機関からの融資だ。ギリシャ危機発生後、海外の民間投資家によるギリシャへの債権が急速に減り、その分をIMFなど政府機関が肩代わりしている。ギリシャが金を返さなくて困るのは、IMFやEUであり、民間投資家にほとんど迷惑がかからないと、米JPモルガンも認めている。ギリシャ危機は、経済問題というより、IMFやEUとギリシャの間の政治問題だ。借金取りを政治戦略としているIMFから借りた金を返す必要などないというギリシャ人の主張はもっともだ。 (Here's who is most exposed to a Greek default)

 国民投票が否決されたらEUがギリシャをユーロ離脱させるとも喧伝されているが、これまたユーロ潰し(ドル延命)を画策する(米連銀と米金融界の傀儡色を強めているECBなどを含む)米国系のプロパガンダだ。EU統合やユーロを定めている諸条約の中には、ユーロ圏やEUから加盟国が離脱する場合の規定が全くない。EUやユーロは統合方向のみのシステムで、離脱できない(しにくい)仕組みになっている。 (Europe tells Greeks - this is a vote on the euro) (Greece Threatens 'Unprecedented' Injunction Against EU To Block Grexit) (◆欧州中央銀行の反乱)

 もしギリシャがユーロ離脱をEUに申請したとしても、EU側が離脱のメカニズムを作るのに2年はかかると言われている。ギリシャはユーロを使い続けることを強く希望している。東欧や南欧に、そんなギリシャに味方する国も多い。重要事項の決定に全会一致が原則のEUが、ギリシャをユーロ圏から追放する決定をするのはまず無理だし、そのような決定を裏付ける規則すら何もない。ギリシャを強制的にユーロ離脱させるには強制離脱の手続きを作らねばならないが、それには何年もかかる。「泥棒を捕まえる前に縄をなう(というより刑法を定める)」必要がある。ギリシャのユーロ離脱は、ほとんどありえない。 (French assembly in dramatic appeal for Hollande to "stand at the side of the Greeks")

 ギリシャは6月末までにIMFに金を払わなくてもデフォルトしないのに、なぜチプラス首相は6月末を機にトロイカと土壇場の交渉劇や国民投票を挙行するのか。それは、チプラスやシリザが、この問題を大きな国際問題に発展させ、IMFとその傀儡と化したECBによる借金取り戦略が国際犯罪であることを、同じく借金取りの犠牲になっているスペインやポルトガル、イタリア、東欧などの諸国の人々に気づかせ、全欧的な政治運動に発展させ、EUをIMFや米国覇権の傀儡である状態から解放することをめざしているからだろう。これは、フランス革命以来の市民革命の伝統を持つ欧州ならではの、欧州の支配機構を対米従属から離脱させるための「革命」といえる。そして、以前の記事に書いたように、欧州の最上層部の中にも、EU統合推進のためにチプラスやシリザ、ポデモス(スペイン)などをこっそり応援する人々がいる。 (◆ギリシャから欧州新革命が始まる?) (◆革命に向かうEU)

 米国がドル延命のためユーロ危機を起こしたり、ECBにQEをさせたり、NATO(軍産複合体)延命のためにウクライナ危機を起こしてロシア敵視を強めたりといった、米国による覇権延命策が長引き、欧州がその犠牲になる中で、欧州政界では、左派の政治家が反米傾向を強めている。最近はドイツの有名な左翼議員(Oskar Lafontaine)が「米帝国主義くそくらえ」と表明した。これは、米国の好戦的なヌーランド国務次官補が昨年ウクライナ政権転覆に協力しないEUを「EUくそくらえ」と述べたことに引っかけたものだ。 (Top German Politician Blasts Nuland & Carter: "F##k US Imperialism") (Many conflicts cannot be solved without Russia - German foreign minister)

 米国が外交的(対露)にも経済的(IMF、QE)にも強硬策を強める中で、ギリシャは米国覇権の横暴(延命策)と立ち向かう経済面の政治闘争の最前線になっている。チプラスは、それを自覚して動いている。 (The Delphi Declaration)


 日本は権力機構(官僚)が徹頭徹尾の対米従属で、安倍政権によるひどい言論抑圧が行われているとFTに指摘された日本のマスコミは、米国覇権に立ち向かうチプラスを批判したり「素人政治」と揶揄している。国際政治を把握するチプラスは、素人でなく、かなりの策士(革命家)だ。米国覇権がゆらいでも対米従属以外の策をとらない日本の官僚やマスコミの方が、国際政治の素人だ。日本のマスコミは、すっかり対米従属のプロパガンダ機関に成り下がっている。マスコミ志望の学生は、志望を他業界に変えた方が良い。 (Shinzo Abe accused of `emasculating Japanese media')

 ギリシャ危機はまだまだ続きそうで、次に危ないのは銀行業界の国際的な連鎖破綻だ。ギリシャの銀行閉鎖に連鎖して、欧州や日本で、銀行の株が急落した。先進諸国のゼロ金利政策の長期化で、銀行界は利ざやで稼ぐことができなくなっている。ゼロ金利は(ドル崩壊まで)ずっと続きそうなので、銀行は弱いところから順番に米欧日のあちこちで潰れたり消滅していく。ギリシャなどで金融危機があるたびに連鎖して破綻傾向が強まる(就活学生は銀行業界も避けた方が良い)。欧州の危機が、米国の債券金融システムの危機へと感染する兆候は今のところないが、その感染が起きると大変なことになる。米国では最近、準州(コモンウェルス)のプエルトリコが、事実上の財政破綻を宣言したが、米連邦政府は同州を救済しないことを決めている。 ("Contained" Greek Contagion Smashes Japanese Banks Lower) (Collapsing CDS Market Will Lead To Global Bond Market Margin Call) (The Next Round of the Great Crisis Has Just Begun) (White House says no federal bailout for Puerto Rico)


2015年7月3日05時00分 国民投票、ギリシャの命運
緊縮策反対→経済破綻、ユーロ離脱?
     緊縮策賛成→政権退陣?EU再交渉
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11838652.html

 財政危機にあるギリシャの焦点は5日に迫る国民投票に移った。欧州連合(EU)の財政改革案を受け入れるか否かを問うが、「反対」の場合、ユーロ離脱への道を開きかねない。EU側は「賛成」を呼びかけるが、ギリシャ・チプラス政権は徹底抗戦の構え。ギリシャとユーロの命運がかかる。

 「国民投票は(ギリシャの旧通貨)ドラクマかユーロかの選択だ」。イタリアのレンツィ首相は1日、訪問先のベルリンでこう語り、結果が「反対」だったら、ユーロから旧通貨ドラクマに戻ると警告を発した。スペインのラホイ首相も「反対が勝てば、ユーロ圏を離れる以外に選択肢はない」と言った。

 ユーロ圏財務相会合のデイセルブルーム議長は1日夜、支援交渉の打ち切りを宣言。翌2日には「反対の結果が出たらすべてが再交渉され、(ギリシャにとって)より容易で、魅力的な支援策になるという幻想は捨てなければならない」と突き放した。

 一方のチプラス首相は1日のテレビ演説で、「反対票はより良い(EU側との)取引への決定的一歩になる」と主張。「反対」を改めて呼びかけた。その直後、財務省は「反対のための六つの要点」を発表。国民投票を後ろ盾に交渉を再開しEU側に譲歩を迫ろうとしている。

 だが、EUとの再交渉は簡単には進みそうにない。支援延長をめぐる交渉は5カ月にもわたり、EUとチプラス政権は互いに不信感を募らせている。交渉がまとまらなければ、ギリシャでユーロが枯渇し、旧ドラクマのような独自通貨を使わざるを得なくなる。

 ギリシャ経済への信認は乏しく、新通貨の価値は低くなるのが確実だ。エネルギーや医薬品などの輸入は厳しさを増し、経済はさらに窮地に追い込まれる。世界の金融市場も混乱するおそれがある。

 交渉決裂は、EUにとっても打撃だ。基軸通貨の一つに育ったユーロから脱落した国が出れば、ユーロの信認は低下。欧州統合の流れにブレーキがかかり、フランス、スペイン、イタリアなどで台頭する反緊縮を求める政治勢力を勢いづかせるとの警戒感もある。

 一方、ユーロ圏の国々などの意向通り、「賛成」の場合、交渉は再開される見通しだ。ただ、チプラス氏は内閣総辞職も辞さない考えを示しており、政治混乱が広がるおそれもある。

 新内閣に現与党の急進左翼進歩連合(シリザ)のメンバーが加われば、再交渉は再び暗礁に乗り上げる可能性もある。政治の停滞に伴って経済が窒息状態に陥れば、国民の不満が一気に広がり、解散・総選挙に追い込まれる可能性は否定できない。

 もっとも、ギリシャもEU側も交渉を決裂させようとは思っておらず、ギリギリの妥協をして新しい金融支援プログラムがまとまることはあり得る。ただ、その場合でも、シリザが多数を占める国会での関連法案の審議は難航も予想される。

 一方、2日に報じられた世論調査では、47・1%が賛成、43・2%が反対との結果が出た。情勢は予断を許さない。(アテネ=山尾有紀恵、ブリュッセル=吉田美智子)


 07 06 (月) ギリシャ国民投票 チプラス首相が勝利宣言   さて、金融はどうなるのか?


国内では安全保障法制の議論に沸きかえっている。 自衛隊の海外派兵武力行使にかかわる考え方である。 世界中の最近の動き、情報を見ていると、アメリカの手前勝手な政治手法に世界中が忌み嫌っている様相がはっきりしてきている。

私たちは単に国内問題として理解するのではなく、世界の平和という立場から金融世界のあり方を理解してく必要がある。

中国の世界の将来設定は、日本のコセコセした目前の同盟国としての自衛権云々関心とは異なり、やがて変化していく金融市場を見据えた政策のように見える。

信用紙幣の増刷による経済浮揚という、アメリカべったりの金融政策だけで将来展望しようとしている。 素人にさえ薄っぺらな政策だと目に映る。

もう一つ、国益という国家間での金儲け政治による醜い争いだ。 歴史を見てきても、すべては金儲けによって政治が動かされ、その結果の政治史としてまとめることができる。 もちろん文化や産業、生活様式などすべての改善もあるのだが、それらすべてを包含している人々の舵取りは地域単位、国単位によって差配される金儲けの凡欲によって展開されてきた。

「それでも地球は廻る」どこに指針を求めたらいいのだろうか?



       ギリシャ国民投票 チプラス首相が勝利宣言  NHKWEB
       中国、インフラ投資の支援策  朝日7面
       多極側に寝返るサウジやインド  田中宇の国際ニュース解説



7月6日 7時31分 NHKWEB
ギリシャ国民投票 チプラス首相が勝利宣言
   http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150706/k10010140081000.html

ギリシャで、財政緊縮策の受け入れを争点に行われた国民投票は、緊縮策への反対が賛成を大きく上回りました。チプラス首相は勝利宣言し、今回の民意を後ろ盾にして、今後、EU=ヨーロッパ連合との金融支援を巡る交渉に臨みたいという考えを示しました。

5日に投票が行われたギリシャの国民投票は、EUなどが金融支援の条件としている財政緊縮策を受け入れるかどうかを問うもので、開票率93.1%で、緊縮策の受け入れに「反対」が61.29%、「賛成」が38.71%と反対が賛成を大きく上回りました。
チプラス首相はテレビで演説し、「民主主義が勝利した」として勝利を宣言したうえで「ギリシャ国民は、ヨーロッパと、持続可能な支援策を交渉する力を与えてくれた」と述べて、今回の国民投票で示された民意を後ろだてにEU側と金融支援を巡る協議に臨みたい考えを示しました。また、「優先事項は銀行を再び再開することとギリシャの経済システムを安定させることだ」と強調し、預金の引き出し制限などの資本規制をできるだけ早く終わらせる意向を示しました。
ギリシャでは、5年にわたる緊縮策によって景気が低迷し、若者の2人に1人が失業するなど、国民生活に大きな影響が出ており、今回の国民投票の結果は、こうした緊縮策への国民の強い反発を浮彫りにした形です。チプラス首相は、EU側に緊縮策の見直しと追加支援を強く迫るものとみられますがギリシャへの最大の支援国のドイツの閣僚からは合意は難しくなったとの声が早くも上がっています。
今回の結果を受けて、ユーロ圏の各国は、7日に緊急の首脳会議を開きギリシャへの対応を話し合う予定ですが、ギリシャとの協議の難航は避けられない見通しです。

“反対支持”の市民 喜び分かちあう

財政緊縮策受け入れの賛否を問う国民投票で、反対票が賛成票を上回ったことを受けて、首都アテネ中心部の広場には、反対を支持した多くの市民が集まっています。広場には、ギリシャの国旗や、与党の急進左派連合を支持する旗を掲げた大勢の市民が集まり、ギリシャ語で「NO」を意味する「OXI」というかけ声を上げたり行進したりして喜びを分かちあっていました。
市民の1人は「これ以上、ドイツやフランスなどの言いなりになるのは嫌です。ギリシャの尊厳を守るために反対の票を投じました」と話していました。また、別の市民は「緊縮策がなくなると経済が回復して雇用も改善するので、希望する職業に就職して生活が今よりよくなることを期待しています」と話していました。 EU大統領 7日にユーロ圏首脳会議呼びかけ EU=ヨーロッパ連合のトゥスク大統領は、ギリシャの国民投票で財政緊縮策の受け入れに反対が多数となったことを受け、ギリシャへの金融支援を巡る今後の対応を協議するため、7日にユーロ圏の首脳会議の開催を呼びかけたことをみずからのツイッターで明らかにしました。また、国民投票の結果を受けてEUの執行機関に当たるヨーロッパ委員会は「結果に注目し、尊重する」とするコメントを発表しました。
EUは6日朝にトゥスク大統領とユンケル委員長、ヨーロッパ中央銀行のドラギ総裁、それにユーロ圏財務相会議のダイセルブルーム議長が電話による会議を開き、対応を協議するとしています。

ユーロ圏財務相会議も7日に開催へ

ギリシャで実施された国民投票の結果を受けて、ユーロ圏財務相会議のダイセルブルーム議長は声明を発表し、「この結果はギリシャの将来にとって非常に残念なものだ。ギリシャ経済の回復にとって厳しい政策や構造改革は避けて通れない」と述べ、国民投票の結果にかかわらず、ギリシャに対し財政緊縮策を求める考えを示しました。また、ダイセルブルーム議長は、「私たちは今、ギリシャ政府の提案を待っているところだ」と述べ、首脳会議の開催に合わせて7日にユーロ圏の財務相会議を開き、金融支援を巡る今後の対応を協議する考えを明らかにしました。


2015年7月6日05時00分 朝日7面
中国、インフラ投資の支援策
ロシア、制裁科すEU揺さぶり

     危機ギリシャに触手
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11843742.html

 欧州連合(EU)側から支援を受けるため、緊縮策を続けるギリシャ。5日の国民投票後、さらなる混乱も予想される。危機にあるギリシャに、EUへの投資拡大に動く中国、ウクライナ紛争を契機にEUから経済制裁を受けるロシアが触手を伸ばす。▼1面参照

 「中国はこれまでも、ギリシャが危機を抜け出すための要求に応えてきた。問題解決に建設的な役割を果たしたい」。6月29日、ブリュッセルで欧州連合(EU)首脳との会談後に記者会見した中国の李克強(リーコーチアン)首相が、ギリシャ問題について問われて語った。

 念頭にあったのは、インフラ投資などを通じてギリシャを支援する策だ。民営化されるギリシャ最大の港湾ピレウス港の買収に、国有海運会社の中国遠洋運輸(COSCO)が参加する計画が進む。5億ユーロ(約680億円)規模とされる売却額は、ギリシャ政府にとって貴重な収入となる。

 中国はいま、欧州との間を結ぶインフラ網を築く「二つのシルクロード経済圏」構想を看板政策に掲げる。西アジアと欧州の結節点に当たるギリシャに自由に使える港を確保することは、構想の具体化に大きな意味を持つ。

 国内では、「値下がりしたギリシャの資産へ投資する機会が増える」(国営新華社通信ネット版)との指摘もある。

 一方で、中国は「ギリシャがユーロ圏にとどまることを望む」(李首相)との姿勢も示す。ユーロ圏を抜けて経済が不安定化すれば、投資した資産がさらに値下がりして損失になる。最大級の貿易相手・EU経済への悪影響も避けたい。

 現実に目の前の危機を食い止めるならば、中国政府が大規模にギリシャ国債を引き受ける手段がある。ギリシャ国内からも期待の声が上がるが、「欧州が協調してギリシャに規律を求めているときに、取れる選択肢ではないだろう」(北京の金融研究者)。(北京=斎藤徳彦)

 ロシアはギリシャ危機を、対ロシア経済制裁を続けるEUを揺さぶる機会として利用する構えだ。

 プーチン大統領は6月19日、サンクトペテルブルクでギリシャのチプラス首相と会談し、ロシアからの天然ガスパイプラインを、トルコを経由してギリシャにつなげる計画に基本合意した。このパイプラインは黒海からブルガリアに上陸させる計画だったが、EUの反対でルートを変更することになった。

 AP通信によると、プーチン氏は会談後、パイプラインがギリシャ経済を後押しするという見方を示し、「ギリシャの債務返済をEUが望むなら、EUは私たちに拍手を送るべきだ」と述べた。ギリシャを助けたいなら、ロシアのパイプライン計画を邪魔するべきではない、という牽制(けんせい)球だ。

 首脳会談では、ギリシャの農産品の輸入についても話し合われた。ロシアはEUの制裁に対抗して、EUからの農産品の輸入を禁止しているが、ギリシャの例外扱いを検討している。

 ロシアはギリシャと同じく東方正教会の信徒が多く、歴史的にも親近感を持っている。ロシアにはギリシャに救いの手を伸ばすことで、イタリアやハンガリーなどロシアと経済関係が強いEU加盟国と、批判的な国々との間にくさびを打ち込む狙いもある。

 ただ、欧米からの制裁や原油安に苦しむロシアは、ギリシャに本格的な金融支援をする余力はない。ラブロフ外相は3日、「ギリシャから金融支援の要請はない」と述べた。(モスクワ=駒木明義)

 ■期待と警戒、EUは注視

 EUは、中国やロシアがギリシャの新たな支援国として名乗りを上げることを注視している。経済関係の強化で一致する中国については、EUの分断を招く行動はとらないだろうとの期待がある。一方、ロシアの動きには、安全保障やエネルギー政策に直接的にかかわるだけに警戒を強める。

 バルカン半島に地続きで、中東にも近いギリシャがEUの一員であり続けることは、欧州にとって地政学的にも重要だ。

 「ギリシャは強力で、責任ある同盟国だ。そうあり続けると信じている」。北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は2日、訪問先のルーマニアで述べた。(ブリュッセル=吉田美智子)

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2015年7月6日 田中宇の国際ニュース解説
多極側に寝返るサウジやインド
     http://tanakanews.com/

◆多極側に寝返るサウジやインド  【2015年7月6日】 ロシアのサンクトペテルブルグで開かれた経済フォーラムは、同市が出身地のプーチン大統領が主催する年次の国際経済会議だ。米国がロシア敵視を強める中、敵国が開いた国際会議ということで、米欧日では重視されなかった。しかし実のところ、この会議では地政学的な大転換となる国際協定が2つも締結された。サウジアラビアとインドが、相次いでロシアとの経済軍事関係の強化に踏み切ったことだ。

 6月18-20日にロシアのサンクトペテルブルグで開かれたサンクト経済フォーラムは、同市が出身地のプーチン大統領が主催する年次の国際経済会議だ。米国がロシア敵視を強める中、敵国が開いた国際会議ということで、米欧日では重視されなかった。しかし実のところ、この会議では地政学的な大転換となる国際協定が2つも締結された。 (Is Saudi Arabia Leaving The U.S. Behind For Russia?) (Going Off-Script in St. Petersburg)

 その一つは、サウジアラビアのムハンマド国防相(副皇太子)、ジュベイル外相、ナイミ石油相がサンクト会議に出席し、プーチン大統領との間で、軍事やエネルギーなどについて6つの協約を締結したことだ。両国は、石油ガスの戦略で協調するとともに、サウジがロシアから武器を購入し、原発や鉄道、地下鉄、住宅などの建設を発注した。サウジはこれまで対米従属の傾向が強く、米国から武器を買っていた。米国がロシア敵視を強める中、サウジがロシアに接近したのは画期的な転換だ。 (New Saudi King Signs 6 Trade Deals With Russia, Forms Russia/Saudi "Petroleum Alliance") (Saudis to Offer Putin a Deal He Can't Refuse?)

 サウジは、今回いきなり対米従属から親露・非米の陣営に転換したわけでない。米軍のイラク撤退後、サウジは米国覇権の弱体化を察知し、王室内で対米従属派と自立派が相克しつつ、対米自立を模索してきた。 (米国依存脱却で揺れるサウジアラビア) (米国を見限ったサウジアラビア) (サウジとイスラエルの米国離れで起きたエジプト政変)

 産油コストが安く、世界最大の産油余力を持つサウジは、米国に頼まれて1980年代に原油安の流れを作り、産油コストが高いロシア(ソ連)の儲けを減らし、ソ連崩壊と冷戦終結の引き金を引いた。反米のロシアと親米のサウジは敵同士だった。しかし01年の911事件以来、米国は中東で無茶苦茶をやりすぎて撤退傾向だ。しかも米国は、数年前から国内のシェール石油(タイトオイル)の採掘を急増し、石油の自給自足を可能にして「サウジなどなくてもかまわない」と豪語しつつ、サウジの人権問題などを非難し続けている。サウジ王室は、表向き親米姿勢を保ちつつ、昨秋から石油を大増産して国際石油価格を大幅に引き下げ、シェール石油の損益分岐点である1バレル=70-80ドルを下回る水準にしてシェール潰しを画策し始めた。サウジの原油安誘導は当初、米国に頼まれてロシアを潰すためだと報じられたが、サウジの石油関係者自身が、原油安は米国のシェール産業を潰すためと表明している。 (米シェール革命を潰すOPECサウジ) (原油安で勃発した金融世界大戦)

 サウジによる米国のシェール産業潰しが成功すると、シェール産業が発行した債券が破綻し、米国で金融危機が再燃する可能性が指摘されている。米国が金融危機になればロシアにとって好都合だが、ロシアはこれまで、サウジの米国シェール潰しの策謀を傍観するだけだった。昨秋の謀略開始当初、サウジやロシアは、原油安が半年も続けば米シェール産業は破綻し始めると予測したが、システム崩壊を懸念する米金融界が個別の採算を度外視してシェール産業に追加融資して破綻を防いでいるため、9カ月近く経った今も、米シェール債券の連続破綻が起きていない。今回、サウジとロシアは、米シェール産業との戦いの長期化を見込んで、これまで踏み込んでいなかった明示的な協定を構築したのだろう。 (米サウジ戦争としての原油安の長期化) (Saudi Arabian oil output hits record)

 今回の協約とともに、サウジ国王とプーチンが相互に相手国を訪問する構想が出てきた。5年間やっていなかった両国の政府間会議の再開と定例化も決まった。サウジとロシアは、長期的な友好関係を模索し始めた。イランや、シリアのアサド政権に対し、サウジは敵視、ロシアは支援という敵対関係にあるが、これも、サウジがアサドやイランへの敵視をやめる方向に転換していくと予測される。 (Saudi Arabia and Russia Ink Six New Deals, Embark on New 'Petroleum Alliance') (What Would A Saudi-Russian Partnership Mean For World Energy?) (米覇権後を見据えたイランとサウジの覇権争い)

 サンクト経済会議で締結された、もう一つの地政学転換的な国際協約は、インドが、ロシア主導のユーラシア経済同盟(EEU)との間で自由貿易協定(FTA)を締結したことだ。EEUは、ロシアがEUの経済統合に対抗し、旧ソ連諸国の加盟を想定して今年1月に創設した「ロシア経済圏」とも呼ぶべき同盟体だ。現時点でロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニアが加盟している。インドのほか、ベトナム、イラン、イスラエル、エジプトも、EEUとの間でFTAの締結を交渉している。 (India to sign free trade pact with Eurasian Economic Union)

 インドが、EEUつまりロシアと今のタイミングでFTAを締結する意味は、親米国でもあるインドが、米国に敵視された中国と正面切って関係改善するわけにいかないものの、インドは間もなく中露主導の「上海協力機構」に入れてもらうので、できるところから中露との関係を改善していく必要があることを示している。インドとロシアは、軍事協定の強化も検討している。 (India-Russia Defence ties set for a lift-up)

 7月8-10日に、ロシア中央部の町ウファで、BRICSと上海協力機構の年次総会が連続的に開かれる。BRICSは、中露印ブラジル南アの5カ国の集まりで、上海機構は中露と中央アジア諸国の集まりだ。上海機構にはインド、パキスタン、イラン、アフガニスタンなどもオブザーバー参加しており、今年の総会で、インドとパキスタンの同時加盟(オブザーバーから正式加盟への格上げ)が認められる見通しだ。イランとアフガンも、米国からの介入が弱まった時点で加盟が認められる方向だ。 (Ufa ready to host BRICS and SCO summits - republic's head to RT) (Pakistan, India to start process of joining SCO) (立ち上がる上海協力機構)

 上海機構に印パやイラン、アフガンが加盟すると、ユーラシアの中央部から西部にかけての地域が、米国覇権から自立する傾向がぐんと強まる。イラン、イラク、アフガン、印パに対する中露の影響力が一気に強まり、その分、米国の覇権が退却させられる。米国は表向き、ロシアや中国を敵視しており、上海機構の拡大によって地政学的に退却させられることを好まないはずだが、目立たないようにやると、米国は(隠れ多極主義の傾向があるので)「上海機構は親睦組織にすぎない」などと勝手に解釈して黙認してくれる。インドが、中国との国境問題を大っぴらに解決し、中国との関係を敵対から友好へと明示的に転換しつつ上海機構に入ると目立ちすぎる。米国や日本がそれを見とがめて非難せざるを得なくなる。だからインドは、中国との国境紛争を改善しないまま、ロシアとの関係だけを改善し、上海機構に入ろうとしている。中国も目立たない覇権拡大を好むので、インドのやり方におそらく賛成している。 (Jimmy Carter: Rise Of BRICS Countries, Not Obama, Responsible For Decline Of U.S. Global Power) (中国がアフガニスタンを安定させる) (中国を使ってインドを引っぱり上げる)

 今年は第二次大戦終結70周年なので、中露はBRICSサミットの宣言で「戦勝70周年」「反帝国主義」に言及したい(今の「帝国」は米国だ)。敗戦国である日本が最近、米国に追随して中露敵視を進め、軍事的に南シナ海に出てきて中国を挑発しているので、特に中国は、日本を非難する意味でBRICSの声明で第二次大戦に言及したい。しかしインドは、米国や日本から中国包囲網策の一環として接近されているので、日米に配慮してBRICSの声明に戦勝70周年を入れてほしくない。 (India to walk BRICS tightrope on Japan) (Japan's Presence in South China Sea Is 'Unacceptable,' China Says)

 インドは、ロシアと関係改善すると同時に、インドからパキスタンを迂回してイランのチャバハル港まで海路で行き、そこからイランやカスピ海を横切ってロシアまで行く新たな交通路の開発を再開しようとしている。この交通路の構想は10年以上前に作られたが、米国がイランを敵視していたので棚上げされていた。インドとロシアの関係改善は、ちょうど米国がイランへの核問題の濡れ衣を解くタイミングで始まっている。米欧がイラン敵視をやめるとともに中露(上海機構)がイランを取り込み、米欧軍が撤退したアフガニスタンも中露が取り込み、インドがロシアやイランに接近し、いずれ中印も関係改善する流れになっている。 (Focus on India-Russia-Iran transport corridor via Central Asia)

 インドの上海機構への加盟は、パキスタンとの和解が前提になっている。しかしインドでは、パキスタンや中国との和解に根強く反対するマスコミなどの論調が強く、インドのモディ政権は、パキスタンと和解する道筋を明示できないでいる。この分野でも、プーチンのロシアは印パに助け船を出した。それは「ISIS退治」だ。 (インドとパキスタンを仲裁する中国)

 アフガニスタンで、タリバンをしのぐかたちでISIS(イスラム国)が台頭し始め、印パのイスラム過激派がアフガンに行ってISISに入る動きが目立っている。これを放置すると印パにもISISが進出し、テロなどを起こすだろう。ISIS退治は、印パが協調できる分野だ。BRICSと上海機構の今年の議長国であるロシアは、今年のBRICSと上海機構のサミットの大きなテーマの一つを「ISIS退治」にした。シリアのアサド大統領も、反アサドの米国でなく、親アサドのBRICSにISIS退治を主導してほしいと言っている。 (President Assad Highlights BRICS Role to Unify anti-Terror Efforts) (Taliban Demands ISIS Stop `Interfering' in Afghanistan)

 インドのモディ首相とパキスタンのシャリフ首相は、BRICS+上海機構のサミットに出席し、そこでISIS退治(テロ対策)をテーマに久々の2国間サミットを行い、そこで話し合ったISIS退治の方策を、印パ共同で上海機構に提案する予定となっている。印パは現時点で、自分たちの和解についてサミットをしても何らかの結論を出せる可能性が低いが、ISIS退治についてならいろいろ決められる。この共同作業によって印パが仲直りしつつある構図が示され、印パの上海機構への同時加盟を実現するのがプーチンの腹づもりだろう。 (Indo-Pak talks on ISIS next week) (Uncertainty over Modi-Sharif meet in Russia)

 中国もロシアも中央アジア諸国も、国内にイスラム教徒が多数おり、ISISが台頭すると、自国内でイスラム過激派がテロを頻発しかねない。また、上海機構にいずれ加盟するイランは、ISISとの戦いを最も真剣に手がけている国だ。ISIS退治は、上海機構の重要テーマとしてふさわしい。ISIS退治は、印パ協調策だけでなく、BRICSや上海機構が手がけるのにふさわしいテーマだ。ISISは、米軍がイラク駐留中に育てた組織で、今でも米軍が武器や食料、資金をISISに提供している。 (SCO ready to expand and fight ISIS) (露呈するISISのインチキさ)

 米国防総省は昔から、兵器開発などの費用を大幅に水増しして裏金を作り、その資金を中東など世界各地のテロ組織にこっそり流し、テロ戦争の構図を維持してきた。イラク発祥のISISが最近、アフガニタスンや北アフリカで急拡大できている理由は、米軍から提供された資金を、各地のイスラム過激派に給料として出して雇用し、戦闘要員を急増しているからだろう。アフガニスタンでは、ISISがタリバンより資金力があるため、タリバンからISISに鞍替えする小集団が相次いでいる。 (米軍の裏金と永遠のテロ戦争) (イスラム国はアルカイダのブランド再編) (The Future of the Taliban)

 アフガンのカルザイ前大統領は最近、ISISが外国勢力の支援を受けて拡大しており、ISISの目的は中露や中央アジアの不安定化だと指摘した。カルザイは立場上「米国」と明示できず「外国勢力」としか言っていない。以前は「ISISを支援する外国勢力」といえばサウジなどペルシャ湾岸アラブ諸国だと喧伝されていたが、サウジが米国を見限って(ISISの最大の敵であるイランを傘下に入れる)ロシアと協約した今、ISISの支援者はサウジでなく米国であることが確定的だ。今の米国の軍事戦略目標は中露イランの破壊であり、カルザイが指摘するISISの目的と全く合致している。(カルザイは米国の傀儡としてアフガン大統領に据えられたが、任期末にかけて米国と対立した) (Russia, China Face ISIS Threat From Afghanistan) (カルザイとオバマ)

 米政府は、自分たちがISISを育て支援しているくせに、他方で欧州やアラブ諸国をしたがえてISISを退治する国際体制を主導している。当然ながら、米国主導だとISISはいつまでも退治されず、逆に国際的に急拡大している。人類が本気でISISを退治したいなら、米国から自立した他の世界的な勢力が、退治の主導役になるしかない。国連は米国に骨抜きにされている。現時点でISISを退治できる勢力は、BRICSしかない。上海機構よりBRICSの方が世界的だ。BRICSは今回の年次サミットで、ISIS退治を重要議題にしている。 (America's troubled anti-IS coalition: Can BRICS be a possible middleman?)

 直接現地を空爆したり侵攻したがる米国と異なり、BRICSは、自分たちの軍隊を他国に派兵しない。戦地の地元諸国を経済・軍事的に支援することで、ISISを退治しようとしている。BRICSがISIS退治に本腰を入れると、ISISと戦う最前線にいるイランとその傘下のシリア(アサド政権)とイラクを支援し、アサド政権を国際的に「悪役」から「善玉」に転換させる外交努力をするだろう。アサドは米国の濡れ衣によって悪役にされている。BRICが主導し、国連などの場で濡れ衣を外してやることができる。米国は抵抗した後、勝手にやれという態度に転換するだろう。BRICSが、米国からISISへの資金移動をうまく絶ち、トルコなど反アサド・親ISISの国をあきらめさせることができれば、ISISは退治できる。この動きはロシア主導になる。 (露中主導になるシリア問題の解決) (米英覇権を自滅させるシリア空爆騒動)

 今回ロシアとサウジが協約したことも、たぶんBRICSがISIS退治に本腰を入れることと関係している。サウジは、かつてISISを支援していたが、ISISがシリアを乗っ取ったらその後サウジを攻撃する見通しになったため、ISIS退治の側に転じたいと考え始めた。しかし、ISIS退治を本気でやっているのが仇敵のイランしかなく、米国主導のISIS退治体制がインチキなものなので、サウジは困っていた。ロシアは、サウジに助け船を出したことになる。 (いずれ和解するサウジとイラン)

 米軍は、諜報要員をイスラム組織に入り込ませる手法の軍事諜報ネットワークによってISISを支援している。軍事諜報ネットワークは、米国の覇権運営の軍事外交面の根幹だ。BRICS(露中イラン)がISISを倒したら、それはイスラム世界の米軍の軍事諜報ネットワークを、露中イランが破壊する(代わりに自分たちのネットワークを埋め込む?)ことを意味する。この破壊が進行すると、軍事外交面の米国の覇権崩壊に拍車がかかる。 (政治の道具としてのテロ戦争) (テロ戦争を再燃させる)

 もう一つ、今回のBRICSサミットの重要テーマは「金融」「非ドル化」だ。ギリシャの金融混乱がドイツ銀行など米国の債券市場での残高が大きい欧州の大手銀行の破綻に発展するとか、最近起きた米国プエルトリコの財政破綻(債券の償還不能)が米国の地方公債の保険機構の破綻に発展するとか、サウジが原油安で米シェール石油産業を潰して債券破綻が連鎖するとか、いくつかのシナリオで今後、米国の債券金融システムの危機再燃が懸念される。米国の金融危機が再燃すると、BRICSにも影響が出る。それに備え、BRICSは1000億ドル規模の緊急用資金の共同備蓄を間もなく稼働する。 ($100bn BRICS monetary fund to be operational in 30 days) (The Importance Of RMB Internationalization) (債券市場の不安定化)

 BRICSなど新興市場諸国が、外貨備蓄を(米国の債券での運用が必要な)ドル建てで持っていると、米国で金融危機が再燃すると被害を受けるが、貿易の決済通貨をドル以外の通貨にすれば、ドルを持たずにすみ、米国の金融危機の影響を受けない。そのためBRICSの5カ国は、相互の貿易決済をドルでなく5カ国の通貨で行う新体制に移行することを、今回のサミットで決める。中露印は、手持ちのドルを売って金地金の備蓄に替えることも進めている。BRICSは、米国の金融危機再発を不可避と見て、危機再発前にドル離れ、米国債券離れをできるだけ進めようとしている。 (The birth of new reserve currencies) (BRICS plan to trade in local currencies) (金本位制の基軸通貨をめざす中国)

 G7のGDP合計額は34・7兆ドルで、BRICSのGDP合計額はそれよりやや少ない32・5兆ドルだ。BRICSの方が経済成長が大きいので今後2-3年で、G7よりBRICSの方が経済的に大きくなる。BRICSは相互の貿易を急増している。たとえばロシアはこの10年で、BRICSとの地下資源の輸出額を9倍にした。その分、欧米への輸出額が減り、ウクライナ危機で濡れ衣的に欧米から経済制裁されてもロシアは経済成長を維持できている。 (GDP of BRICS could surpass G7 in 2-3 years - senior Duma MP)

 BRICSは、中国を筆頭に、5カ国合計で世界の外貨準備の75%を占めている。この外貨準備を、いずれ来る米国の金融再崩壊の前に非ドル化できれば、BRICSは米国と同時に経済崩壊することを免れ、世界の覇権構造を多極型に転換していける。