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折々の記 2015 ⑨
【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】11/23~     【 02 】12/08~     【 03 】12/15~
【 04 】01/03~     【 05 】01/09~     【 06 】01/13~
【 07 】01/13~     【 08 】01/25~     【 09 】02/04~

【 08 】01/25

  01 25 新井君江葬儀   満100才
  01 28 まなび坂を上る   自分の生涯も‘まなび坂’
  01 28 甘利大臣、閣僚辞任   政治家としての矜持に鑑み、閣僚を辞任
  01 29 田中宇の国際ニュース解説⑨   世界はどう動いているか

 01 25 (月) 新井君江葬儀     満100才

昨日、松尾の秀の君江叔母さんの葬儀が鼎のJA葬儀場で行なわれた。 満100才である。 去年の二月、大宮の秀の康司叔父さんが満91才で亡くなっている。

   子等五にん 育てし頃を かたらいつ
           夫(ツマ)と夕餉の 杯かわす   君江


人の一生は長い旅路ににている。 喜びも悲しみもいろいろと出会ったはずである。 人の思い出は、その齢になってみないとわからないものです。 長男の話ではこの歌が一番胸に迫るものだとお聞きしている。

和尚さんが皆さんに話されたのは、故人の思いでで一番の思い出はなんでしょうか、その一つのことを大事にしていくように、と話されました。 確かにそうです、その一つのことの中に叔母さんは生きているのです。 私が大自然に召されたときに叔母さんも一緒に召されていくのです。 それでもなお、君江叔母さんの‘歌’は生きているのです。


 01 28 (木) まなび坂を上る     自分の生涯も‘まなび坂’

腰の痛みを何とかしようとして、WALKING に出かけた。

年寄りになっても元気でいようとして、いろいろの話を読み聞きしています。 今日はどこへ出かけようか、出がけに小学校へ行こうかと思い、「まなび坂」へ向かう。

100mも坂道を上ると歩度をゆるめ道下を見る。 葉がおちて木(ボク)になった葉柄の痕(アト)がハート形(ガタ)になった木がある。 何の木だろうかわからない。 竹藪の地面に青々とした草があるのだが、その名前もわからない。

坂道の長さは400m位のものでそう長くはない。 だが途中の曲がり角あたりまで一歩一歩上っていくと、もう帰ろうかと考えた。 それほどに根気になる。 息がハ~ハ~するし肌には汗がしっとり出はじめるのです。

昔のことを思いだす。 食べることも着ることも、すべての面倒をしてもらって平然と生きてきた。 親への感謝の言葉とてしなくそんなことも知らずに大きくなってしまった。 今では親孝行もできないし、なによりも親が生きていた時にそれなりの報恩の言葉もかけずに済んできてしまった。 坂道を少し上っただけでも息がハ~ハ~する時になって、そんな齢になって深く深く感謝するのです。 小学校へ上がったころは弁天橋から小川の分教場まで歩いて通ったのです。 時間はどれほどかけたか覚えはない。 だが、遠くて嫌だったという思いは何も残ってはいない。 「まなび坂」のような坂はなかったから、比べるわけにはいかないが、そのころから80年もたつと足腰が耐えられなくなっている。
もう12年もたつと一世紀も生きたことになる。 日野原先生の話を読んでいると、足も頭も矍鑠かくしゃくとしている。

冬の冷気をすい道ばたの草木に目をうつし、足も頭も矍鑠となっていたい。


 01 28 (木) 甘利大臣、閣僚辞任     政治家としての矜持に鑑み、閣僚を辞任

朝日新聞デジタル 2016年1月28日17時57分
甘利経済再生相、閣僚辞任を表明 2度の現金授受認める
   http://digital.asahi.com/articles/ASJ1X5TSBJ1XUTFK011.html?iref=comtop_6_01

【動画】記者会見で閣僚を辞任することを表明した甘利明経済再生相=遠藤啓生撮影

写真・図版
会見で辞意を表明し、厳しい表情をみせる甘利明経済再生相=28日午後、東京都千代田区、諫山卓弥撮影

 甘利明経済再生相は28日、内閣府で記者会見を開き、週刊文春で報じられた自らの金銭授受疑惑の責任をとり、閣僚を辞任することを表明した。

特集:甘利明氏

 甘利氏は、甘利氏の秘書が千葉県内の建設業者から受け取った300万円を個人的に費消していたことを認めた。その上で、「閣僚としての責務、および政治家としての矜持(きょうじ)に鑑み、本日ここに、閣僚の職を辞することを決断しました」と述べた。
矜持 … この言葉は本来、自分の能力を優れたものとして誇る気持ち、自負、を意味する。 従って使うべき言葉ではないが、政治家がひけらかした言葉としてよく使っている。 使うならば、倫理観に鑑み、のほうが聞いた人の腑に落ちる。
 また、甘利氏は千葉県内の建設業者から2度にわたり各50万円ずつ計100万円の現金授受があったことは認めた上で、弁護士による調査を経て「政治資金として適切に処理されたことを確認した」と語った。


 01 29 (金) 田中宇の国際ニュース解説⑨     世界はどう動いているか

舎利子みよ、世界を牛耳る守銭奴の動きを !!

田中宇の国際ニュース解説
世界はどう動いているか

 フリーの国際情勢解説者、田中 宇(たなか・さかい)が、独自の視点で世界を斬る時事問題の分析記事。新聞やテレビを見ても分からないニュースの背景を説明します。無料配信記事と、もっといろいろ詳しく知りたい方のための会員制の配信記事「田中宇プラス」(購読料は6カ月で3000円)があります。以下の記事リストのうち◆がついたものは会員のみ閲覧できます。



見えてきた日本の新たな姿
 【2016年1月23日】 安倍政権は昨年後半から、対米従属から微妙に外れる新戦略を、目立たない形ながら、次々ととっている。(1)日豪での潜水艦技術の共有化(2)従軍慰安婦問題の解決で再開された日韓防衛協定や北朝鮮核6カ国協議(3)安部首相による日露関係改善の試み(4)中国の脅威を口実とした東シナ海から南シナ海に向けた自衛隊の諜報活動(日本の軍事影響圏)の拡大、などである。

◆英国がEUに残る意味
 【2016年1月27日】 きたるべき米国の金融崩壊は、世界的な金融危機や不況を引き起こすが、長期的に最も国力が低下するのは米国自身だ。英国は、米英同盟を国家戦略にできなくなり、EUに残るしかなくなる。こうなってから英国がEUと交渉しても何も引き出せず、EU内で今よりずっと低い地位しか与えられずにEUに吸収されてしまう。だから英国は、米国が金融危機を再発する前に、早くEUと交渉し、できるだけ有利なかたちでEU残留を決めたい。

ラジオデイズ・田中宇「ニュースの裏側」・・・北朝鮮の水爆実験と六か国協


見えてきた日本の新たな姿
      http://tanakanews.com/160123japan.htm

2016年1月23日   田中 宇

 日本はこれまで、対米従属以外の戦略を全く持たない国だった。私が知る限り、日本政府が対米従属以外(対米自立)の戦略をわずかでも持った(検討した)のは、1970年代に米国が覇権構造の多極化をめざした時に米国の勧めで日本政府が作った防衛の対米自立策「中曽根ドクトリン」と、2009ー10年の鳩山政権が米中と等距離外交をめざし、結局は官僚機構につぶされた時の2つだけだ。その後、現在の安倍政権にいたる自民党政権は、官僚機構(外務省と財務省)の傀儡で、対米従属一本槍に戻った。

 だが昨年の後半から、安倍政権は、従来の対米従属の国是から微妙に外れる新しい戦略を、目立たない形ながら、次々ととり始めている。それらは(1)日豪での潜水艦技術の共有化、(2)従軍慰安婦問題の解決によって交渉が再開された日韓防衛協定や北朝鮮核6カ国協議、(3)安部首相が新年の会見や先日のFT(日経)のインタビューで明らかにした日露関係改善の試み、(4)中国の脅威を口実とした東シナ海から南シナ海に向けた自衛隊の諜報活動(日本の軍事影響圏)の拡大、などである。 (Japan's Abe calls for Putin to be brought in from the cold) (日韓和解なぜ今?)

 (1)については、昨年11月に配信した記事「日豪は太平洋の第3極になるか」で詳しく書いた。この記事は、有料記事(田中宇プラス)として配信したが、日本国民の全体にとって非常に重要な事項なので、例外的にこのたび無料記事としてウェブで公開した。まだ読んでいない方は、まずこの記事を読んでいただきたい。 (日豪は太平洋の第3極になるか)

 上記の記事の後ろの方に書いた、11月末に日本政府が南氷洋での調査捕鯨を再開して豪州を激怒させた件は、その後、豪州政府が日本政府に、捕鯨再開は潜水艦の発注先を決める際の判断要素にならないと知らせてきた。豪州が、日本と潜水艦技術を共有する気になっていることをうかがわせる。12月中旬には、豪州のターンブル首相が急きょ、日帰りで日本を訪問し、安倍首相と会っている。この訪日も、日豪が潜水艦技術を共有して接近しそうな感じを漂わせている。 (Japan's whaling `separate' from submarine bid) (Malcolm Turnbull's flying visit to Japan to include 'special time' with Shinzo Abe)

 豪州の通信社電によると、米政府の高官は、豪州が潜水艦を独仏でなく日本に発注することを望んでいる。その理由として米高官は、日本の潜水艦の技術の高さを挙げているという。だが私から見ると、より大きな要点は「技術」でなく「国際政治(地政学)」だ。日豪が米国を介さずに軍事協調を強めていくという、米国勢(軍産複合体でなく多極主義者)が昔から希求してきたことが、豪州の潜水艦の日本への発注によって実現していく点だ。豪州の関係者も、日本に発注されそうだと言っている。発注先は半年以内に正式決定される。 (Japan subs 'superior' US believe: adviser) (Japan bid favorite as Canberra mulls decision)

 (2)の日韓関係については、1月4日に無料記事として配信した「日韓和解なぜ今?」に詳しく書いた。慰安婦問題の解決は、日韓安保協定の締結と、北朝鮮核廃棄(棚上げ)に向けた6カ国協議の再開という、2つの動きへの布石となっている。日韓安保協定は、日韓が別々に対米従属してきた従来の状況を、日米・日韓・米韓が等距離の協調関係を持つかたちに転換していく流れであり、日韓の対米自立のはしりとなる(この流れを止めるため、日韓の対米従属派が慰安婦問題で日韓対立を扇動した)。 (日韓和解なぜ今?)

 6カ国協議が達成されると、米朝、南北(韓国と北朝鮮)、日朝の和解につながり、日本と韓国の対米従属を終わらせる。日韓が慰安婦問題を解決した直後から、中国と韓国が6カ国協議の準備を進めていることが報じられる一方、きたるべき協議での自国の立場をあらかじめ強化するかのように、年明けに北朝鮮が「水爆実験」と称する核実験を挙行した。1月11日には、韓国政府の6カ国協議担当者が、日米や中国の担当者と相次いで会合する予定と報じられている。 (北朝鮮に核保有を許す米中) (South Korea says chief nuclear envoy to meet U.S., Japan, China counterparts)

 1月11日に配信した「北朝鮮に核保有を許す米中」で「北朝鮮に核の完全廃絶を迫るのでなく、北がこれ以上の核開発を棚上げすることを協議の目標とすべき」という米国のペリー提案が採用されていくのでないかと書いた。ペリー案と同期するかのように、1月15日には北朝鮮の国営通信社が「(米国が)朝鮮戦争を終わらせる和平条約を(北と)締結するなら、見返りとして、もう核実験をしない」とする北の政府の声明文を報道した。北は「ペリー案をやるなら乗るよ」と言っているわけだ。 (North Korea Would End Nuclear Testing for Peace Treaty, End to US Military Drills)

 しかしペリー案は結局、試案の域を出ないかもしれない。北が核を棚上げ(隠匿)するだけで廃棄しない状態を6カ国協議の「成功」として受け入れることを、米国や日本は拒否すると予測されるからだ。代わりの案として打ち出された観があるのが、韓国が1月22日に選択肢として提起した、北朝鮮抜きの「5カ国協議」だ。 (SKorea calls for 'six-party talks minus NKorea')

 これは一見すると「中国を巻き込んで北に厳しく制裁し、困窮させて核を廃棄させる」という無謀な強硬策だが、もう少し考えると「北に核を廃棄させ、米朝や南北・日朝が和解して、冷戦型(対米従属諸国vs反米諸国)の東アジアの国際政治関係を、多極型の等距離な協調関係に転換する」という6カ国協議の順番を逆転し「先に5カ国の関係を冷戦型から多極型に転換していき、その間に北の核問題を解決し、最終的に米朝・南北・日朝が和解して北を多極型システムに取り込む」という新シナリオの提案に見えてくる。

 北朝鮮以外の5カ国(米中露日韓)の中で、関係が悪いのは、日韓と日露、米露と米中だ。だが、米中露は国連安保理の常任理事国であり、報じられる印象と裏腹に、世界運営上の相互連絡は十分にとっている。米露と米中は「大人の関係」といえる。逆に、現状が「子供の関係」でしかなく、今後の協調関係をゼロから構築していかねばならないのが、日露と日韓だ。6カ国または5カ国の協議によって東アジアの国際政治システムが冷戦型から多極型に転換していく際に、早く開始せねばならないのが、日韓と日露の関係改善であり、だからこそ、昨年末に日韓が慰安婦問題を解決したり、(3)の安倍政権による対露関係改善の模索が行われているのだと考えられる。

 安倍首相は1月17日に報じられたFT(日経)のインタビューで「G7は中東問題の解決にロシアの協力が不可欠だ。(ウクライナ危機以降、G7諸国とロシアの関係が悪化し、G7+ロシアとして作られたG8は事実上解散しているが)G7の議長として自分がモスクワを訪問するか、東京に招待する形でプーチンと会いたい」という趣旨の表明をしている。G7議長とか中東問題といった目くらましをかましているが、要するに、日本国内の合意形成が困難な北方領土問題を迂回して、日露の協調関係を手早く構築したい、という意志表明だ。 (Japan's Abe calls for Putin to be brought in from the cold)

 安倍は、ロシアを評価する一方で、中国の領海的な野心を非難している。だが、中国政府の経済政策は賞賛しており、対立点を軍事安保面に限定している。安倍はまた、アジア太平洋地域の将来像を米国と中国の2大国だけで決めるのはダメだとも述べている。要するに、米中だけでなく日本も、アジア太平洋の地政学的な将来像の決定過程に入れてくれ、と言っている。これは、従来の対米従属の日本の姿勢から、かなり逸脱している。 (Shinzo Abe aims his next arrow at the global stage)

 この点において、今回の(4)の日中対決と(1)の日豪亜同盟の話がつながってくる。安倍の「米中だけでアジア太平洋のことを決めるな、日本も入れろ」という要求は「第1列島線以西は中国、第2列島線以東は米国、その間は日本の影響圏だ」という日豪亜同盟の考え方と一致している。 (日豪は太平洋の第3極になるか)

 そして安倍政権は、2つの列島線の間に日本の影響圏を作っていく具体策として、米国の依頼を受けて南シナ海での中国の動きを監視する自衛隊の軍事偵察網を作ることや、中国包囲網の一環としてフィリピンとの軍事関係を強化することを通じて、東シナ海から南シナ海にかけての2つの列島線の間の海域に、日本の軍事諜報システムを拡大しようとしている。 (Japan PM Abe's cabinet approves largest defence budget)

 日本政府は軍事予算を急増しているが、主な増加分は、中国敵視を口実とした、2つの列島線の間の海域での軍事的な影響圏の構築に使われている。日本にとって、中国との対立は、きたるべき多極型世界において自国の影響圏を創設するための口実として使われている。日本に挑発され、中国が最近、尖閣沖に武装船をさかんに送り込んできている。だが、日中が戦争することはない。中国は、日本が2つの列島線の間を占めることを黙認するだろう。日本の影響圏がある程度構築されたら、日中は再び和解するだろう。 (Japan's far-flung island defense plan seeks to turn tables on China) (Japan says armed Chinese coastguard ship seen near disputed islands) (China steps up incursions around disputed Senkaku Islands)

 国民的には「平和憲法を持つ日本には、領土と領海を超えた地域での軍事的な影響圏の拡大など要らない」と考える人が多いかもしれない。それが政府の政策になるなら、2つの列島線の間の地域は、日本でなく、中国の軍事影響圏になっていく。いずれ米国は第2列島線、つまりグアム以東へと軍事撤退し、その後の空白をぜんぶ中国が埋めることになる。日本は明治以前の、小さな孤立した島国に戻る。2つの列島線の間の地域は、今のところ、米中で将来像を決めていない「空白地域」だ。安倍政権は「空いている地域で、日本がもらって良いものなのだから、もらって当然だ」という考え方なのだろう。

 この件での国家的な意志決定が、今後、国民的な議論や選挙のテーマになることは、多分ない。民意と関係なく、国家の上層部だけでひそかに決められていき、報じられることもないだろう。私の「日本は、2つの列島線の間を、日豪亜同盟として影響圏にするだろう」という予測は、今後もずっと陰謀論扱いされそうだ。とくに日本の左翼リベラルの人々は、私がこの話をするたびに、聞きたくないという感じで何もコメントせず無視する。

 今回の記事の(1)から(4)は、いずれも米国から依頼されて日本が動いている感じだ。しかし、日本がこれらのことを進めていくと、対米従属の体制からどんどん外れていく。米国の戦略は、隠れ多極主義的だ。

 日本が豪州や韓国、ロシアと協調関係を強め、2つの列島線の間が日本の影響圏になっていくと、北朝鮮をめぐる状況が今のままでも、在日米軍の海兵隊がグアムに撤退する話が再燃するだろう。日本が、国際的な影響圏を持つような大国になるなら、防衛を米軍に依存し続けることはできない。沖縄の基地問題は、従来のような「左」からの解決でなく、日本が影響圏を持つことで在日米軍が出ていくという「右」からの解決になるかもしれない。


英国がEUに残る意味
      http://tanakanews.com/160127uk.php

2016年1月27日   田中 宇

 英国政府は、来年末までに実施すると発表してきた「EUに残るべきかどうか」を問う国民投票を、今年の夏に前倒しして実施することにした。英キャメロン政権は、今年6月23日に国民投票を行うことを検討している。キャメロンは、国民投票の前に、ドイツなどEUの中枢と、英国に有利な条件でEUに加盟し続けられるようにする再交渉を2月18日のEUサミットまでに行い、法律で定められた4カ月間の国民投票の準備期間(賛否双方の勢力の選挙運動期間)を経て、最短の6月に国民投票を実施する計画だ。投票は可決されるだろうという予測が報じられている。 (Five months to save Britain - Cameron pushes for June EU referendum) (Brexit 'would trigger economic and financial shock' for UK) (Cameron and Merkel agree more work needed for February deal on EU reforms: spokesman)

 これより遅い7-8月の真夏になると、昨年の繰り返しで、中東方面から難民が大挙してEUに押し寄せると予測されている。難民危機が再発すると、英国がEU統合に参加し続けることに抵抗を感じる英国民が増え、国民投票が否決される確率が強まる。英国をEUに残留させたいキャメロン政権は、難民が押し寄せる前の6月に国民投票をやってしまいたい。しかし6月ですら、すでに難民流入の危機の渦中に入っている可能性がある。「あわてて国民投票をやって失敗するより、当初の計画とおり来年まで投票を延期した方が良い」という忠告が、英国内や欧州大陸から出ている。春から夏にかけて、スコットランドやウェールズなどで地方選挙があり、それらと重なる時期に重要な国民投票をやることについて、地元の政治家たちからの反対も出ている。しかし英政府は、それらの反対論を無視している。 (Holding EU vote during migration crisis would be terrible, UK told) (Nicola Sturgeon says EU referendum in June would be a mistake)

 キャメロンは昨年11月、英国の得になる4点の改革をEUに提案した。そして、その提案が受け入れられたら、EUに残る方が、離脱するよりも英国の利益になるという主張を展開し、きたるべき国民投票でEU残留に賛成する英国民を増やそうとしている。2月下旬までに4点の改革についてEUとの交渉をまとめ、6月の国民投票に望むのが英政府のシナリオだ。しかし、英国が出した4点の改革要求の中には、EU側が簡単に応じられないものが多い。 (David Cameron sets out EU reform goals)

 4点は以下のとおりだ。(1)英国はユーロに加盟せずポンドを使い続けるが、それでもEUの統合市場で英国企業が損をしない態勢をEU側で作ってくれ。(2)EUは政治統合を進める構想だが、英国はそれに参加したくない。政治統合不参加の国々が損をしない制度を作れ。英国の利益にならないEUの新法を、英議会が拒否できるようにしてくれ。(3)EUの官僚主義的な煩雑さを減らしてくれ。(4)今後4年間、EUから英国への移民の数を制限させてくれ。移民に払う社会保障費の総額を制限したい。 (David Cameron to seek changes in migration and the single market)

 EUはこれまで、経済と政治の統合に参加したくない国々に対する規定を作らないようにしてきた。EUは、統合を拒むことを許さない強圧体制を隠然と敷いている。ギリシャ危機で露呈したように、EUには離脱規定がない。いったん入ったら足抜けを許さない「蟻地獄」だ。暴力団(=警察)やスパイ(諜報機関)の業界と似ている。キャメロンの4点のうち1番と2番は、きちんと実施されたら、EUの通貨と政治の統合の強圧体制に風穴を開ける。4番も、認めたら、難民受け入れに関するEUの統率力を弱めてしまう。EUが4点を受け入れるとしたら、それは「口だけ」つまり英国をEUに引き留めておくための茶番劇だ。 (ギリシャはユーロを離脱しない)

 4点をめぐるEUと英国の交渉は、すでに大詰めだ。昨年11月以来のたった3か月の交渉で、EUが自分たちの存在基盤の根幹に位置する国家統合の蟻地獄的な不可逆態勢を、英国のために放棄することはあり得ない。キャメロンは、EUの譲歩を少ししか勝ち取れなくても「大成功」「EUは改革を決めた」とマスコミに喧伝させるだろう。茶番劇の連続によって、国民投票を可決に持ち込もうとしている。 (Juncker Says EU Will Stick to Red Lines U.K. Can't Cross) (Juncker confident of deal to keep Britain in Europe)

 欧州に対する英国の国家戦略は、伝統的に「栄誉ある孤立」だ。欧州大陸の沖合の島国という地理的に孤立した状況を生かし、どこの国とも組まず、ロスチャイルド家など金融ユダヤ人勢力が欧州大陸に張り巡らせた諜報網を活用し、欧州諸国の内政や国際政治を動かしてきた(英国は、王室と金融ユダヤ人との「連合王国」である)。第二次大戦後、英国は米国との同盟関係を国家戦略の根幹に置いたが、これは英国が米国の皮をかぶり(米覇権の黒幕として)欧州大陸諸国やその他の世界を支配する策で、これは「栄誉ある孤立」がバージョンアップした戦略だった。 (覇権の起源:ユダヤ・ネットワーク) (Why do JP Morgan and Goldman Sachs want desperately to keep the UK in the European Union?)

 英国が今回、国民投票をできるだけ早く行い、EU残留を全力で決める姿勢をとっていることは「栄誉ある孤立」の伝統戦略から乖離している。英国の金融界は、昨年から、早く国民投票を行えと、キャメロンに何度も強い圧力をかけている。英国だけでなく、米国の金融機関であるはずのゴールドマンサックス(GS)やJPモルガンが、英国をEUに残留させておくためのロビーや宣伝の活動をしている英国の団体「Britain Stronger in Europe」に資金提供している。「連合王国」の片割れであるユダヤ金融界(その一部が、第一次大戦前にロンドンからニューヨークに移り、米政界を牛耳る米金融界になった)は、英国がEUに残留することを強く望んでいる。 (JP Morgan Hands Cash To Pro-EU Campaign) (Brexit: Goldman Sachs Lines Pro-EU Establishment's Pockets With Gold)

 昨年5月には、英国の中央銀行の総裁が、金融界の意を受けて、できるだけ早く国民投票をやれとキャメロンに要請した。同時期にJPモルガンは「17年になるとフランスの大統領選挙があり、フランスが英国に譲歩したがらなくなるので、投票は16年の後半に行われるだろう」との予測を発していた。 (EU referendum should take place `as soon as necessary' - Bank of England chief) (JPM Warns UK Referendum More Likely In 2016 Than 2017 - The Pros & Cons Of Brexit)

 なぜ米英金融界は、英国の伝統的な孤立戦略を全く無視して、是が非でも英国をEUに残留させたいのか。考えられる理由はいくつかある。急ぐ理由の一つは、米国の金融システムの崩壊が近いことだ。これまで英国には「米英同盟の維持か、EUへの統合参加か」という選択肢があった。米英同盟が強い限り、本格的にEUに入る必要などなかった。英国がEUに加盟してきたのは、むしろEU統合を邪魔するためだった観すらある。 (Bankers sound alarm bells over Brexit consequences)

 しかし、サウジアラビアが米国のシェール石油産業を潰すために一昨年から続けている原油安の策によって、最近いよいよ米国のジャンク債市場の崩壊が加速している。今年中に、これがもっと格の高い社債市場への危機につながり、米国の覇権の根幹に位置する金融債券システムが壊れていく可能性が増している。金融危機は、早ければ夏までに起きる。 (米サウジ戦争としての原油安の長期化) (Half of US Shale drillers may go bankrupt: Oppenheimer's Gheit) (US junk-rated energy debt hits two-decade low)

 きたるべき米国の金融システムの崩壊は、世界的な金融危機や不況を引き起こすが、長期的に最も国力が低下するのは米国自身だ。英国は、米英同盟を国家戦略にすることができなくなり、EUに残るしかなくなる。こうなってから英国がEUと交渉しても、ほとんど何も引き出せず、EU内で今よりずっと低い地位しか与えられない状態でEUに吸収されていくことになる。だから英国は、米国が金融危機を再発する前に、早くEUと交渉し、できるだけ有利なかたちでEU残留を決めておきたい。 (British business pressing Cameron to step up preparations for EU referendum - media) (The U.S. Is At The Center Of The Global Economic Meltdown)

 米国の覇権が低下するほど、EUは政治経済の統合を進めていく。今ならまだ英政府が「国権を放棄せずEU加盟を続けられる」と国民をだましてEU加盟存続を国民投票で決められるが、米覇権が低下し、EUが本格的に統合を進めてしまうと、英国が明確に国権を放棄しない限りEUに加盟し続けることができなくなり、国民の支持を得られない。EUから離脱する「不名誉で貧しい孤立」しか選択肢がなくなる。 (David Cameron takes hit as France and Germany agree closer EU ties)

 英国はEUなど相手にせず、世界が多極化してもどこの極にも入らず、中国など新興市場諸国と直接わたりをつけ、全世界的なオフショア市場として生き残る「スーパー・シンガポール構想」と呼ばれる「栄誉ある孤立」をやるべきだという意見もある。しかしおそらく、多極型に転換した後の世界において、どこの極にも入らない国は、どこの極からも相手にされない。シンガポールは、地理的に、中国とインドと日本(日豪亜)という3つの極に片足ずつ突っ込むことが可能なので、3つの極のオフショア市場として生き残る道があり得る。しかし英国は、地理的に見て、EU以外の極への距離がかなり遠く、EUと疎遠にしたまま他の極とつき合うことができそうもない。 (Why do JP Morgan and Goldman Sachs want desperately to keep the UK in the European Union?) (見えてきた日本の新たな姿)

 米国の政府筋や金融界は「英国がEUを離脱した場合、米国は、TTIPと別に米英自由貿易圏を結ぶつもりがない。米英間は自由貿易協定がなくなり、経済関係が疎遠になる。英国はEUに残留するしかない」と分析している。きたるべき多極型世界において、英国は、EUに属す以外の選択肢がない。 (Threatens UK2 over Brexit Vote) (Britain's credit rating will be downgraded if it quits EU says top agency, as trade chief warns exports to US would be hit by tariffs)

 英国だけでなく米国の金融界までもが、英国のEU残留を強く望んでいる理由について、私が考えたもう一つのことは、米英金融界が1980年代に開発し、それ以来、米国の覇権の力の源泉となってきた債券金融システムをめぐるものだ。このシステムは多分もともと米国でなく英国勢の発明物だ(そうでなければ米英が同じシステムを共有しないはず。米国勢の発明物なら、明示的に米国だけの主導になる。たとえばインターネットのように)。英国は、このシステムを、米国の覇権維持策として作り、英国が米覇権の黒幕として世界を隠然支配する体制を延命させた。 (崩れ出す中央銀行ネットワーク) (大均衡に向かう世界)

 英国は、自国の隠然覇権維持が目的なので、このシステムを、うまく運営すれば百年以上持つものとして開発したはずだ(英国は第一次大戦で自国の覇権が崩れてから、すでに百年以上、隠然覇権を維持してきた。あと百年、と考えて当然だ)。だが米国は、せっかく英国からもらった国力増進策を(隠れ多極主義的に)非常に近視眼的に、粗末に扱った。長持ちさせるためのバブル膨張の抑止策を骨抜きにして「市場原理主義」や「強欲資本主義」で金融界が近視眼的にぼろ儲けする態勢が作られ、その結果、しだいに脆弱になったシステムは、創設から約25年後の08年のリーマン危機とその後のバブル再膨張にのみ依存した対策(QEなど)によって完全に壊れ、あとは再膨張させたバブルがいつ最終的な崩壊を始めるかという時期的な問題だけになっている。

 債券金融システムは、システム自体にバブル膨張の機能を内包しているのでない。主たる運営者の米国が、短命になるような運用手法を(隠れ多極主義的に、目立たないようにわざと)採ったので「たったの」25年でつぶれただけだ。欠陥は、システムでなく運用にある。英国は、このシステムを再生し、次は百年続くように運用し、英経済の百年の繁栄につなげたいはずだ。英国自身は、次の世界体制の「極」の一つでない。ドイツ主導のEUという極の有力な一員になることが、英国の運命として予定されている。せっかくEUの一員に残るなら、英国は、EUに(それから中国など他の極にも)失敗しにくい(バブル膨張の抑止策がついた改良型の)債券金融システムを採用し続けてほしいはずだ。

 米国の金融危機が再発してしまうと、債券金融システムのイメージが非常に悪いものになり、再生不能になるので、英国は、できるだけ早くEUの一員であり続けることを決定したいのだと考えられる。

 キャメロン首相は先日のダボス会議で「急いで国民投票をやるのはやめた。まだ来年まで時間がある。あわてる必要はない」と表明した。もう2月の交渉妥結は無理だという見方が強まっている。 (Cameron changes stance on EU deal, saying he is `not in a hurry')

 しかし、上に述べたような状況を考えると、キャメロンが悠長に構えているのは、交渉術としての目くらまし、茶番劇だ。本当は、2月末のEUサミットまでに交渉を妥結すべく、全力をかけているはずだ。最近キャメロンと話をしたアイルランドのケニー首相は「英国とEUは、交渉妥結まであと一歩のところまできている」と語っている。2月中に交渉がまとまり、6月に国民投票が実施される可能性が高い。 (Enda Kenny: Cameron close to EU deal)

 英国の金融マスコミであるFTは、今年の元旦に、英国はEUに入る以外の道がないという論説を掲載した。年が明けて、FTやBBCなど英国のマスコミは「英国はEUに残るべきだ」と主張する宣伝活動を、一気に強めた。このことからも、2月に交渉妥結、6月に国民投票で可決という日程が内定していると感じられる。 (The hard-headed case for the UK to stay in the EU)

 英国が本格的なEUの一員になることが決まると、米英同盟は一気に希薄になる。米国側(議会と大統領府)は、英金融界がEU残留を強く呼びかけ始める直前の昨年5月、すでに「もう英国とは特別な関係にない」「これからは英国でなくG20(=多極型世界体制)だ」とする非公開の戦略を決めている。 (White House no longer sees anything special in UK relations) (Secret US memo for Congress seen by Mail On Sunday says Britain's 'special relationship' with America is over)

 米英関係が希薄化すると、NATOも有名無実化する(リーマン危機後、G20に取って代わられたG7が、その後も地位低下しつつ存続していることから見て、NATOも廃止でなく地位低下によって有名無実化する)。米英が組んでロシアを敵視し、その間にある欧州大陸諸国を米英に隷属させてきた体制も終わる。おそらく、今後のある時期から、米国は、大胆に親露姿勢に転換する。プーチンを礼賛する共和党のトランプ候補が来年から大統領になったら、確実にそうなる。 (A Dream Come True: Europe Is Turning Away From U.S) (Russia's envoy to EU: "Critical mass" against anti-Russian sanctions is being formed in EU) (多極化に圧されるNATO)

 そのあたりのことを、英国はとっくに予測しているはずだ。すでにオバマは1月14日、プーチンに電話し、これまでの敵視姿勢を突如としてやめて、親しげに話をしたという。英国が残留を決めた後のEUは、ロシア敵視をやめて親露姿勢に転換していくだろう。ウクライナ危機は、米国がロシアに濡れ衣をかけるために起こした嘘まみれのものであるから、仕掛けた側(米英)が、嘘や濡れ衣がばれていくように仕向ければ、米欧のロシア敵視策は雲散霧消する。 (NATO延命策としてのウクライナ危機) (Obama Changes Tack on Russia, Calls up Putin)


※「私たちの祖先」  万葉集14巻3358
     http://park15.wakwak.com/~yoshimo-2/moto.43.html

  さ寝 らくは ばかり 恋ふらく  富士の高嶺の 鳴ごと

     安田徳太郎 訳
          蛇は長いだけでなく、恋するときは、富士の高嶺の噴火口のように、燃えるような精力をもっているぞ。
          (レプチャ語)
           サヌ・ラク→蛇         ラム、タマ→石や玉
           ポ、ヲ→玉をつなぐ紐・タマノヲは玉の紐で長い意味である。
           ラク→欲する、恋う(このラクは「したく思う」のタクにもなっている)
           バ、ハ→するときはの意味    ナル→精力、情熱
          (チ)サム、サハ→熱い        ゴト→にくらべられる。
     従来の国語学者 訳
          寝ることは魂ばかりであって、恋をすることは、富士の高嶺の鳴沢のように知れわたっている。
          こんな解釈では歌の意味をなしてはいない。

     原文   佐奴良久波 多麻乃緒婆可里 古布良久波 布自能多可祢乃 奈流佐波能其登

     仮名   さぬらくは たまのをばかり こふらくは ふじのたかねの なるさはのごと

     左注   或本歌曰
           麻可奈思美 奴良久波思家良久 佐奈良久波 伊豆能多可祢能 奈流佐波奈須与
           まかなしみ ぬらくはしけらく さならくは いづのたかねの なるさはなすよ

           一本歌曰
           阿敝良久波 多麻能乎思家也 古布良久波 布自乃多可祢尓 布流由伎奈須毛 / (右五首駿河國歌)
           あへらくは たまのをしけや こふらくは ふじのたかねに ふるゆきなすも

     校異   右->古[西(訂正右書)][類][紀][温],久波[細](塙)久

     キーワード  東歌,相聞,静岡県,富士山,地名,恋情,歌謡,民謡,歌垣