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  03 05 田中宇の国際ニュース解説⑪   隠れ多極主義
  03 06 GPIF運用、15年度赤字なら参院選への影響は必至   newsphereの指摘
          
 03 05 (土) 田中宇の国際ニュース解説⑪     隠れ多極主義

隠れ多極主義と覇権主義という言葉が国際情勢の理解の上で使われている。 一般用語ではないから、多極主義者と覇権主義者とはいったい誰を指しているのだろうか。 具体的な氏名を上げないと理解しにくい。

だが、この区別は戦争ゃ紛争が何故どこで起きているのか。 マスコミを操る陰の権力行使者はだれなのか。 或いは陰の組織の動きはどう動いているのか。

プロパガンダを操るブラックモンスターの組織活動はどのように実行に移されているのか。

ISの実態はどう動いているのか。

日本国憲法の平和主義は砂上の楼閣に過ぎないのか。 ユネスコの崇高な精神のバックボーンは、世界に通用しないのだろうか。
 


検索語
隠れ多極主義
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① 隠れ多極主義の歴史 - 田中宇の国際ニュース解説
      https://tanakanews.com/080427multipole.htm
2008/04/27 - ニューヨークの資本家たちは、世界の中心をイギリスからアメリカに移転させ、同時にイギリスだけが覇権国である体制を壊して、アメリカの他にいくつかの地域大国が並び立つ多極型の世界体制を目指したが、捨てられかけたイギリスが粘って ...

② 田中宇 - Wikipedia
      https://ja.wikipedia.org/wiki/田中宇
3.1 ネオコンは多極主義; 3.2 イラク戦争は米国の自滅戦略; 3.3 アジアも多極世界の一極に; 3.4 日本の対米従属戦略は破綻; 3.5 反米こそ日本の ... 隠れ多極主義者は国際資本と繋がっており、資本投下(投資)によって効率良く稼げる方法を常に求めている。
‎経歴 - ‎報道スタイル - ‎国際ニュース解説 - ‎著作

③ 田中宇の言う(隠れ)多極主義者に関する考察 my.test.done
      www.asyura2.com/10/senkyo93/msg/224.html
2010/08/26 - の戦いが内部で行われているのが、田中宇の言う(隠れ)多極主義者と覇権主義者の戦いの実態なのではないだろうか。そう思うと私は納得がいく。わざと自分を弱くして他人の発展に寄与する(隠れ)多極主義者なんてものが存在するわけない ...

④ 「隠れ多極主義」とは? - まぐまぐ!
      www.mag2.com/p/news/13940/3
2015/04/26 - 隠れ多極主義の動きが意味するところは、米国自身の中に、自国の単独覇権よりも多極型覇権を好む傾向があることだ。この傾向は、覇権運営の過去の教訓に由来すると考えられる。先代の覇権国だった英国が、後から台頭してきたドイツに ...

⑤ 多極化への捨て駒にされる日本
      http://tanakanews.com/150510japan.htm

 【2015年5月10日】 きたるべき米国の金融大崩壊で覇権体制が多極化する前に、日本をけしかけて中国敵視策を強め、ウクライナ危機を扇動してロシアを反米の方に押しやって中露を結束させ、米国に頼らない新しい世界秩序、つまり多極型の覇権体制を一足先に作る動きを中露に急がせる、それが米国中枢の隠れた意図と考えられる。ウクライナも日本も、米国の隠れ多極主義の捨て駒として使われている。安倍訪米で日米同盟が強化されたと喜んでいる場合ではない。

⑥ 「米国の隠れ多極主義」 - 政治 解決済 | 教えて!goo
      oshiete.goo.ne.jp › 社会 › 政治
2010/09/14 - 「米国の隠れ多極主義」田中宇さんは昔からよく「多極主義」「多極主義者」ということばを使いますが、今回も上記のような言葉を使っていました。でもどんな人たちなの... - 政治 解決済 | 教えて!goo.

⑦ 「隠れ多極主義が、好戦策を過剰にやって失敗することで世界の ...
      open.mixi.jp › mixiユーザー(id:3472200) › mixiユーザーの日記一覧
2014/11/28 - 軍産傘下の好戦派が米政界で優勢なのは、今に始まったことでない。冷戦時 代も、911後もそうだった。911後の好戦策の失敗が確定した今になって、 好戦派が再び優勢になる理由は何か。私が提示できるのは「隠れ多極主義が、 好戦策を ...

⑧ 田中宇の言う(隠れ)多極主義者に関する考察 - メルセゲルの ...
      d.hatena.ne.jp/mytestdone/20100910
2010/09/10 - 田中宇の言う(隠れ)多極主義者に関する考察. 近年、アメリカの自由競争社会システムや新自由主義の問題が指摘されている(例えばマイケル・ムーアの映画はほとんどがそういう話題だ)。国の富を数%の人が独占するシステムは、かつての ...

⑨ 「米国の隠れ多極主義」 - 政治 | 【OKWAVE】
      okwave.jp › 社会 › 政治
2010/09/14 - Wikipedia 田中宇さんの項に解説がありました。 ネオコンは多極主義 * 新保守主義者(ネオコンサバティブ)は米国一極覇権主義の体裁をとっているが、実際には過激な外交戦略によって米国を自滅へ導いている。このことから、ネオコンの中に ...

⑩ ロックフェラーの衰退 | 人力でGO
      green.ap.teacup.com/pekepon/212.html
2010/02/26 - 田中宇氏の「隠れ多極主義」という視点は、 「米英中心主義=ロスチャイルド」の目を盗んで、 「白人保守本流=ロックフェラー」が、 アメリカの衰退を意図的に加速して多極化を推し進めているという推理です。 しかし、もう少しストレートな見方を ...

※ 隠れ多極主義に関連する検索キーワード

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隠れ多極主義
① 隠れ多極主義の歴史
      田中宇の国際ニュース解説
      https://tanakanews.com/080427multipole.htm

2008年4月27日  田中 宇

 アメリカ政府は、北朝鮮に対する制裁を解除するかどうかの瀬戸際に来ている。以前の記事に書いたように、米朝間では4月8日、北朝鮮がシリアに核兵器技術を供与したというアメリカの主張を北が容認する見返りに、アメリカは北をテロ支援国家のリストから外して経済制裁を解除することで合意した。米政府は4月30日までに、今年のテロ支援国家のリストを発表する予定になっており、米朝合意が履行されれば、今年のリストには北朝鮮は載らないことになる。(関連記事)

 米議会では、北朝鮮に譲歩するブッシュ政権への強い非難が巻き起こり、制裁解除を阻止する動きが議会から出ている。だが同時に、制裁が解除されない場合、北朝鮮はシリアに対する核兵器技術の供与を明確に否認するだろう(おそらく事実として、北はシリアに核技術を供与していない。ここ数年、シリアは対米関係の改善を最重要目標にしており、北から核技術を買うような馬鹿なことはしないはずだ)。(関連記事)

 北朝鮮がシリアに核技術を供与していなかったとなると、昨年9月にイスラエルが空爆したシリアの「軍事施設」は何だったのかという話になり、シリアを空爆したイスラエルの責任が問われることになり、国際社会におけるイスラエルのイメージが一層悪化する(そもそも当初から、イスラエルは空爆の件が表沙汰になることを避け続けてきた。この件で大騒ぎしているのはブッシュ政権の方である)。

 事態が世界の目をここまで集めてしまうと「北朝鮮がシリアに核技術を供与し、イスラエルはその施設を空爆した」という話にした方が、イスラエルにとって都合が良いとも考えられる。どちらに転ぶかわからないが、この件はあと数日、4月30日までに結論が出る。

 もしアメリカが北朝鮮への制裁を解除したら、次は2005年の6者協議の合意に基づき、米朝と日朝の関係改善の話になる。日米と北朝鮮との関係が正常化したら、6者協議は東アジアの集団的安全保障の枠組みとなり、在韓米軍と在日米軍の大幅な空洞化、もしくは撤退が進展する。今後、新たな難問が出てきたり、事態の行きつ戻りつがあるかもしれないが、長期的な傾向としては、東アジアにおけるアメリカの影響力は低下し、中国中心の国際体制がしだいに強くなる。

▼投機による石油高騰を放置する米政府

 重要なのは、アメリカの影響力低下は、アメリカ自身が誘発したという点だ。03年に6者協議が始まって以来、米政府は、6者協議の主催役を中国に押しつけ、東アジアで中国の影響力が拡大するように事態を動かしている。中国とロシアは、ユーラシアの集団安保体制である「上海協力機構」を作り、インドやイランを招き入れ、アフガニスタン復興にも首を突っ込んでいるが、米政府は、上海協力機構に対して意図的と思える軽視の態度をとっている。

 また米政府は、石油の国際価格を決めているアメリカの石油先物市場でさかんに投機が行われ、その結果石油価格が高騰し、ロシアやイラン、ベネズエラなどの反米的な国々が強化されているのに、自国の石油相場の投機を放置している。アメリカの石油先物市場での投機的な高騰は、2006年9月にニューヨーク商品取引所(NYMEX)で先物取引規制が緩和された後、拍車がかかった。(関連記事)

 ブッシュ政権は、意図的に、ロシアや中国、イランなどを強化している疑いがある。世界の覇権体制を、アメリカ一極の状態から、アメリカ・EU・ロシア・中国・イスラム諸国(GCC+イラン)などが並び立つ多極的な状態に変えようとしている疑いがある。

 アメリカが北朝鮮への制裁を解除したら、日本は北朝鮮と国交を正常化せねばならない。日本はしだいに対米従属を許されなくなり、中国を中心とする「新冊封体制」の中で生きねばならなくなる。中国と朝鮮が大嫌いな最近の日本人にとって、悪夢のような話である。それなのにマスコミは、米政府が世界を多極化して日本を見捨てようとしていることを全く指摘せず、外務省も気づかないふりをしている。

 米議会の反対を受け、ブッシュ政権が5月以降も引き続き北朝鮮をテロ支援国家扱いし続ければ、当面は、日本は北朝鮮敵視・対米従属を続けられる。しかしアメリカの多極化戦略はしだいに露骨さを増しており、日本がアジアの方に押しやられるのは時間の問題だ。事態がここまで進んでしまうと、来年アメリカが次の政権に変わっても、大幅な逆戻りは期待できない。民主党政権になると不透明だが、共和党マケイン政権になったら、現政権の戦略が継承される。

 歴代の米政界の傾向を見ると、ホワイトハウス(大統領府)は多極主義をとる傾向が強い。特に共和党はそうだ。逆に米議会では、多極化を阻止し、米英中心の覇権体制を維持しようとする傾向が強い。ロックフェラー家は中国が好きなので多極主義の感じがする。ロックフェラーの影響下にあると思われるシンクタンク「外交問題評議会」(CFR)も、内部にいろいろな意見があるように見せかけつつ、本質的には多極主義だろう。

 戦後の米政権の中で最も露骨な多極化をやったのは1970年代初期のニクソンだが、大統領補佐官としてニクソン政権の外交政策を切り盛りしたキッシンジャーは、1964年から5年間、CFRで中露との関係改善のやり方を研究した後、1969年の大統領選挙でニクソンの顧問となって政権入りし、中露との関係改善を実行した。(関連記事)

 米政府(大統領府)は、ニクソンの前のジョンソン政権から、ベトナム戦争に巨額の戦費をつぎ込み、財政を大赤字にしたり、ドルの増刷を続けてインフレをひどくしていたが、ニクソンはその集大成として財政とドルの破綻を招き、1971年に金ドル交換停止を実施し、ドルの通貨覇権を自滅させた。その後はイギリスが主導し、日独にドル救済を手伝わせ、金本位制と切り離したかたちでドルの覇権を再生した。イギリスは、米大統領から頼まれもしないのに、アメリカの覇権を立て直した。米英中心主義(冷戦維持派)が強い米議会は、ウォーターゲート事件を問題化させ、ニクソンを辞任に追い込んだ。

▼イギリスの戦略を全否定した米ウィルソン

 CFRは第一次大戦後の1921年にニューヨークで設立されたが、活動自体は、自らをCFRと命名する前の、第一次大戦中から行っていた。彼らの最初の任務は1917年、150人の著名な学者を集め、第一次大戦後にアメリカが主導して世界の政治体制を作り替える構想を練ることだった。(関連記事)

 この構想立案作業は、ウィルソン大統領からの依頼を受けて行われるかたちになっており、ウィルソンはCFRからの報告書を受け取った後、1918年1月に、報告書の要旨を「ウィルソンの14カ条」として発表した。当時、第一次大戦は終結の10カ月前で、すでにアメリカはイギリスの味方、ドイツの敵として参戦していたが、この14カ条は、ドイツを休戦協定に誘い込むための提案となっていた。(関連記事)

 第一次大戦は、イギリスがドイツを潰すために行われた。イギリスは、産業革命を先にやって覇権国になったものの、後から産業革命をやって大国化したドイツに追い上げられていた。ドイツは、自国から東欧・バルカン半島・トルコを通って中東に至る、陸側からの影響圏の拡大を目指し、地中海の海側からバルカン半島・トルコ・中東に、すでに影響力を拡大していたイギリスと衝突した。工業・軍事技術の取得能力は、イギリス人よりドイツ人の方が高かったので、イギリスとしては、ドイツを壊滅させ、恒久的に弱体化しておく必要があった。イギリスは、あらかじめロシアやフランスと組んでドイツ包囲網を作った上で、バルカン半島諸国間の対立を、ドイツ潰しの大戦に発展させた。(関連記事)

 このような経緯だったので、第一次大戦後にイギリスが目指すところは、ドイツの影響圏になっていた東欧やトルコ、ベルギーなどを、イギリスの影響圏として分捕ることだった。世界の貿易体制も、イギリスなど戦勝国に有利、ドイツに不利な形にしたかった。またロシアでは、第一次大戦中に革命が起こり、英仏と親しかったロマノフ朝が倒されて共産党政権になり、戦争を途中で放棄し、ドイツとの敵対をやめた。イギリスは戦後、共産党のロシアに制裁を加えたかった。

 ウィルソンの14カ条は、こうしたイギリスの戦略を全否定する内容だった。まず1条で、外交の公開・秘密条約の禁止を掲げ、イギリスが好む秘密協定を多用した外交を否定した。2条と3条では自由貿易体制を提唱し、4条では国際的な軍縮、5条では植民地の独立を呼びかけた。6条で共産党政権のロシアへの制裁を禁じ、7条はベルギーの独立、10条と11条では東欧諸国の独立、12条ではオスマン帝国崩壊後のトルコや中東での民族自決、そして14条で戦争再発防止・諸国の独立維持のための国際機関(国際連盟)の設立を提唱した。

▼イギリスに出し抜かれたベルサイユ会議

 当時のアメリカは、イギリスに対して優位な立場にあった。イギリスは1914年に第一次大戦を開始したがドイツに勝てず、1917年3月にロシア革命が起きてロシアが戦線離脱した後、負ける可能性が出てきた。イギリスは、中立国だったアメリカに泣きついた。戦後の世界体制を決める権限をあげるから、イギリスに味方して参戦してほしいと持ち掛けたと推測される。

 ロシア革命の翌月にアメリカは参戦し、その後、ニューヨークでCFRの前身となる150人の専門家評議会が作られて戦後の世界体制が練られ、1918年1月にウィルソンの14カ条が発表され、同年11月の終戦後、翌1919年1-6月にかけて行われたベルサイユ会議(パリ講和会議)で、国際連盟の設立など、戦後の世界体制(ベルサイユ体制)作りが行われた。ウィルソンは自ら大西洋を渡航し、CFR前身の評議会メンバーを引き連れてパリに乗り込み、欧州に2カ月も滞在した。現職の米大統領が欧州を訪問するのは、これが初めてだった。

 とはいうものの、ベルサイユ体制は、アメリカの好む形にはならなかった。それまでの約100年間、覇権国として世界各国と渡り合い、権謀術数が渦巻く欧州で覇権を維持してきたイギリスは、欧州から遠く離れた北米大陸の新興国で外交経験が少ないアメリカより、外交技能がはるかに高かった。

 イギリスは、フランスなど他の諸国を巧みに誘導し、アメリカの構想を突き崩し、ウィルソンの14カ条のうち実現したのは4カ条だけだった。国際連盟は設立されたが、それはアメリカの構想を実現するものというより、それまでにイギリスが作っていた国際社会(イギリス主導で列強が談合して世界を支配する体制)の焼き直しとなった。アメリカは勝敗を鮮明にしない講和を目指したが実現せず、イギリスの策略の結果、ドイツは過重な戦後賠償を背負わされた。

 アメリカは結局、国際連盟に加盟しなかった。表向き、その理由は「孤立主義」の傾向が強い米議会(共和党が多数派)で加盟に反対する意見が席巻し、ウィルソン(民主党)が調印したベルサイユ条約を議会が批准しなかったからだとされている。しかしよく見ると、議会は自分たちが持っている開戦の権利を国際連盟に奪われることを恐れたのに対し、ウィルソンは議会への根回しをせず、条約を一語一句変えずに批准することだけを議会に求めたので、否決されるのは当然だった。条約を批准しなかったのは、ウィルソン自身の意思だったという指摘がある。(関連記事)

 パリ講和会議の後、1919年5月末に、講和会議に参加したアメリカの専門家たちが、イギリスの専門家たちと会合を開き、この場で、アメリカでCFR、イギリスで王立研究所(チャタムハウス)が同時に発足することが決まった。当初は、CFRとチャタムハウスを姉妹機関とする構想が出されたが、それは否決され、代わりに、公式な姉妹機関ではなく非公式な提携関係が作られることになった。(関連記事)

 私が見るところこれは、イギリスが、自国に不都合な構想を打ち出すアメリカのCFRに提携を持ち掛け、CFR側と緊密な関係を継続的に持つことで、CFRを構成する人々の考え方をイギリス好みのものに変質させようとする「入り込み作戦」である。この後、CFRやその他のアメリカの政策決定に関与する機関では、イギリスと意見をすり合わせた上で世界戦略を決定する傾向が強くなった。イギリスの入り込みによって米英間の「特別な関係」が生まれ、アメリカは米英同盟を基軸とした米英中心主義の世界戦略へと転換していった。

▼CFRと覇権ころがし

 CFRが策定したウィルソンの14カ条には、イギリス中心の世界体制を崩そうとする意図が感じられるが、CFRはなぜこのような戦略をとったのだろうか。そもそもCFRとは何者なのか。

 CFRの100年近い歴史を見ると、最初はモルガン商会(JPモルガン、ニューヨークの金融機関)の影響が強く、その後はロックフェラー家(石油王、金融業)の影響が強くなったと指摘されている。(関連記事)

 またCFRの初代会長であるポール・ウォーバーグは、ドイツからアメリカに移民してきたユダヤ人で、ニューヨークの銀行業で大成功した人物だ。(関連記事)

 これらのことから、CFRとは、ニューヨークの資本家たちが作った組織であると考えられる。私は以前から「覇権の多極化を求めているのは、米英による単独覇権体制を崩すことで国際的な投資の自由を確保しようとする資本家たちではないか」と考えてきた。ニューヨークの資本家たちが作ったCFRが、第一次大戦後にイギリスの覇権体制を崩すことを画策し、その後は1970年のニクソン政権以降の歴代の米共和党政権による自滅的な多極化策の黒幕となったことは、私の考察の裏づけとなっている。

 ニューヨークの資本家には、ロックフェラー家などユダヤ人でない人々も混じっているものの、その主力、特に金融業者はユダヤ人である。ニューヨークのユダヤ人金融業者の多くは、1850年代前後、ドイツやイギリスなどの欧州諸国から、高度成長を開始したアメリカに投資するため、ニューヨークに移民してきたり、支店を出したりした。

 欧州各国で中世以来、金融業を営んできたユダヤ人は、各国の王室に資金を貸し出すことを通じて、宮廷政治を動かす「宮廷ユダヤ人」となった。彼らは金貸しだけでなく、手形発行など、遠隔地間の貿易代金の決済業務も行っており、ユダヤ人どうしで、中東や北アフリカなどの地中海周辺からロシア、北海、スカンジナビアまでの広範囲の地域に金融貿易ネットワークを持っていた。

 宮廷ユダヤ人は、野心のある国王に協力して、スペインやポルトガル、オランダ、イギリス、フランス、ドイツといった欧州諸国が、自国の影響圏と貿易圏を拡大し、覇権国を目指した際、黒幕的に協力した。スペインの覇権が衰退すると、スペインにいた「スファラディ(スペイン系)」の宮廷ユダヤ人たちは、オランダに移転してオランダを覇権国にのし上げ、オランダが衰退し始めるとイギリスに移ってイギリスを覇権国にしてやった。宮廷ユダヤ人たちは「覇権ころがし」をしながら金融事業を続け、富を蓄え続けた。ドイツ、イギリス、フランスなどで兄弟が分担して事業を展開していたロスチャイルド家は、その最有力者の一つだった。ロスチャイルドも19世紀後半、ニューヨークに進出した。

 私は、ユダヤ人を中心とするニューヨークの資本家たちが、アメリカを第一次大戦に参戦させ、戦後の世界体制をアメリカが決定することを画策したのは、イギリスからアメリカへの「覇権ころがし」の試みだったのではないかと推測している。

 ニューヨークの資本家たちは、世界の中心をイギリスからアメリカに移転させ、同時にイギリスだけが覇権国である体制を壊して、アメリカの他にいくつかの地域大国が並び立つ多極型の世界体制を目指したが、捨てられかけたイギリスが粘って延命策を続けた結果、覇権ころがしは途中で挫折して意外に時間がかかり、ニューヨークの資本家とイギリスとの、現在までの100年の暗闘になっているのではないか。そのように考えると、説明がつくことがいくつもある。次回は、そのことから書きたい。


隠れ多極主義
② 田中宇 - Wikipedia
      https://ja.wikipedia.org/wiki/田中宇

田中 宇(たなか さかい、1961年5月7日 - )は、日本のジャーナリスト、評論家。有限会社田中ニュース代表取締役[1]。

経歴[編集]

1961年(昭和36年)、東京生まれ[2]。東北大学経済学部卒業。1986年(昭和61年)、東レ勤務。1987年(昭和62年)、共同通信社に入社。そこで外信部に配属され、英語のニュース記事を多読する内にそれらに魅了される。

1996年(平成8年)頃、「田中宇の国際ニュース解説」を始める。1997年(平成9年)、その頃コンテンツの充実を模索していたマイクロソフト社に誘われて同社に入り、ニュースの配信業務に従事、コラムサイト『MSNジャーナル』を立ち上げた[2]。1999年(平成11年)末、独立。

2001年(平成13年)のアメリカ同時多発テロ事件や2003年(平成15年)のイラク戦争以降、多くの書籍を出版している[3]。

2008年(平成20年)、「田中宇の国際ニュース解説」が「まぐまぐ大賞2008」の総合大賞で、3位を受賞した[4]。

報道スタイル[編集]

インターネットで世界中の新聞などを読み、照合・分析して解説を加えるという独特の報道スタイルを取る[5]。世界情勢は「米国一極覇権主義から多極化に向う」とする仮説をもとに解釈を試みている[6]。

田中は「日本のマスコミ全部が“客観”の意味を取り違えている」と考えている。「英語の記事には、“世の中をどう見るか”と言うことが書かれたものが結構あり」「欧米のメディアは、あるコードに基づいて、ウソでなければ、自分で検証しながら、それを書いていい」。そのため「客観報道じゃなきゃいけない。記事に主観を入れてはいけない」という日本の報道スタイルを否定し、欧米流に倣ったスタイルを確立している[5]。

日本語の他、中国語(繁体字)、韓国語でもニュースの公開をおこなっている。まぐまぐでも配信されている。2009年から会員制の配信記事「田中宇プラス」(購読料は6カ月で3000円)も開始した[7]。

国際ニュース解説[編集]

Edit-find-replace.svg この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証し出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2009年1月)

以下は近年の主張の概略である。

ネオコンは多極主義[編集]
新保守主義者(ネオコンサバティブ)は米国一極覇権主義の体裁をとっているが、実際には過激な外交戦略によって米国を自滅へ導いている。このことから、ネオコンの中にはわざと米国を衰退させる勢力がいると推測できる(田中はネオコンの中の米国衰退化勢力を「隠れ多極主義者」と呼んでいる)[8]。
隠れ多極主義者は国際資本と繋がっており、資本投下(投資)によって効率良く稼げる方法を常に求めている。米国を頂点とする先進国は既に急成長の余地が無く、投資しても大した利益にはならないが、中華人民共和国やインド、ロシア、南米などは投資による大きな見返りが望める地域であり、これらの地域を効率よく成長させるために世界を多極化させる必要がある。米国は多極主義を掲げることで国内の反発を受けるため、表面上は覇権を強めている振りをしている[8]。

イラク戦争は米国の自滅戦略[編集]
米国には国際関係の専門家が世界一いるのだから、イラク戦争とその後の占領統治は本気でやれば失敗するはずがない。しかし、ネオコン内の多極主義者はこれを故意に失敗することで、米国の軍事的敗北と外交的権威の失墜、戦費増大による財政の悪化を図り、米国の覇権を崩壊させる事を狙っている[8]。

アジアも多極世界の一極に[編集]
米国はイラク戦争以来、反米的態度を取るロシアやイラン、ベネズエラに具体的な対抗措置をとっておらず、これらの国々の発言力を意図的に大きくしている。イランには経済制裁を行っているが、核問題に関しては口先での挑発に終始し、同国を反米化して中東の英雄国家に仕立て上げている。これらの国は地域の核となり多極化に貢献するだろう[8]。
東アジアでは中華人民共和国が多極主義者の戦略を「米国の罠」として警戒しているが、いずれ多極主義者の意図に気づき、覇権を拡大するだろう。
韓国は米国の意図に気づいて多極化に向けた準備をしている。イラク戦争による在韓米軍空洞化によって、戦争回避のために積極的な対北宥和政策を行い、外交軍事では独自の戦略をとりながら対中重視に移行している[8]。

日本の対米従属戦略は破綻[編集]
日本は小泉政権下で意図的に中・韓・露を挑発し、北朝鮮拉致問題を拡大して、周辺国全てと対立する構図を作った。これは対米重視を続けようとする意思の現れであるが、多極主義者の積極的な自滅戦略により[8]、米国自身が中華人民共和国重視を強める中、日本の戦略は破綻している[9]。
日本は戦後60年にわたり、自分で何も考えないで済む対米従属を選んできた。これは「自分で考える外交」を80年間やった結果、英米によって「悪の帝国」に仕立て上げられ、大戦争で滅亡の危機を味わった経験によるものだと推測でき、首相官邸・外務省・防衛庁はいずれも強大な米国への従属を前提とした戦略しか持っていない[8]。
米国は自国の覇権を弱める戦略をとっており、在日米軍も空洞化しつつある。周辺国との敵対戦略はいずれ破綻し、日本も中華人民共和国を中心とした一極に協力しなければならないだろう。ただし、東南アジアでは中国人による政治経済の支配に反感があると考えられ、日本がアジアでの覇権拡大を進めることを歓迎するだろう[8]。

反米こそ日本のとるべき戦略[編集]
日本にとってお上である米国が、中華人民共和国をアジアの覇権国にしたい以上、日本はその事態を受容するしかない[9]。妥協がいやで反中を思い切りやりたい人は反米になる必要がある[9]。
日本の右翼(右派、民族主義者)の多くが表向きは民族主義を掲げつつ、実は正反対の日本人を腐らせている対米従属体制を維持するための言論を繰り返している[10]。
中華人民共和国はますます誇り高く世界的に台頭して光り輝くのと対照的に、日本は何とか対米従属を維持しようと息をひそめ、自分から日影の存在を選び、米国の衰退に合わせて自国の身の丈を縮めている[10]。もはや対米従属論者は国賊である[10]。

マルクス主義の再興[編集]
大企業が経済の主力である「独占資本主義」は、不可避的に、金融恐慌や大不況、戦争といった危機をもたらし、危機への対策として政府が全面的に介入し、経済は国家独占資本主義に転換するが、この転換は延命にすぎず、本質的には、資本主義は死滅に向かい、大衆への収奪が強まり、最後には社会主義革命が起こるというのが、マルクス経済学の理論である[11]。
金融の独占資本主義は終わり、米英の金融機関は国有化され、中華人民共和国やアラブ産油国、ロシアなどの政府投資基金や国営石油会社といった国家独占資本主義の象徴的な存在が幅を利かせている[11]。米国の金融界は、今後長いこと、自由市場原理の世界に戻れなくなりそうである[11]。こんな状態が続くと、今後マルクス経済学が再び学問として勢いを盛り返すこともあり得る[11]。

トロツキストがネオコン[編集]
ブッシュ政権内で力を持っていたネオコンであるが、その元祖的存在であるアーヴィング・クリストルらは、かつてニューヨークでトロツキストとして活動していた。トロツキーはロシア革命に参加する前はニューヨークに滞在しており、ソ連の初代の外務大臣になって国際共産主義運動を指揮し、中国などへの共産主義革命の拡大を図った。トロツキーらはニューヨークの資本家から支援され、国家資本主義の効率をさらに上げるための世界革命を起こそうとした疑いがある[11]。
トロツキストがネオコン(新保守主義)になり、表向きは「保守」を掲げて米国単独覇権主義を標榜しつつ、実際には重過失的にイラク戦争とテロ戦争の大失敗を引き起こし、結果的に左翼革命家が果たせなかった米国資本主義の崩壊を内側から実現した[11]。

ユダヤ・ネットワーク[編集]
中世以来のヨーロッパで国際的なネットワークを持っていたのは、貿易決済の金融網を持っていたユダヤ人だけで、ユダヤ人は金融能力を生かして各国政府から資金調達を任され各国政府の内部事情に通じていた[12]。諜報機関の起源がユダヤ資本家のネットワークであるなら、彼らは政治謀略だけでなく、金融謀略を行う技能もあるはずだ。戦争や政変だけでなく、相場の暴落、急騰などの背後には諜報機関が動いていると疑った方が良いことになる[12]。
19世紀のヨーロッパでは、共産主義からファシズムまでの多様な政治の哲学的思考と活動実践などが開花したが、これも国家経済成長の高速化を課題とする資本の論理に合致し、資本家好みの展開だった[12]。資本家との分業体制なのか、革命家・思想家にはユダヤ人が多い[12]。
覇権とユダヤ・ネットワークとの関係は、なぜイスラエルやネオコンなどのユダヤ人がこれほどまでに覇権や戦争、国家システムの創設と破壊、政権転覆などの謀略に長けているのかという疑問に対する答えとなっている点で非常に重要である[12]。

ホロコーストはイスラエル支援目的の喧伝[編集]
歴史的事実を分析していった結果「ホロコーストはなかった」「誇張されていた」という結論を発表したら、その時点で世界のいくつかの国で犯罪者(逮捕投獄・強制送還)にされてしまう状況になっているのは、国際問題の諸テーマの中でホロコーストだけである[13]。
ホロコーストがイスラエルを支援するための理論として喧伝され始めたのが1970年代で、多くのユダヤ系アメリカ人がシオニストとなってイスラエルのパレスチナ占領地内に移住して「入植運動」を開始し、右派政党リクードが結成されたのが1970年代である[13]。アメリカのシオニストの中に米政界の中枢に入っていこうとする動きが起きたのも1970年代で、今ではネオコンと呼ばれる人々である[13]。彼らの戦略は功を奏し、1981年に就任したレーガン政権に入り込み、1982年にはイスラエルの近くに米軍を長期駐留させることを暗に目指したレバノン侵攻を起こした[13]。その後ネオコンはいったん政権中枢から排除されたが、2001年のブッシュ政権で再び中枢に入り、イラク侵攻を実現している[13]。

テロの多くは米・欧・イスラエルの当局が誘発[編集]
911を初めとしてテロ事件の多くは真相が迷宮入りしているが、これらは政治状況を転換させることを目的に米国・ヨーロッパ・イスラエル等の当局(諜報機関や公安警察)がテロを誘発している疑いがある[14]。
2008年11月27日のムンバイの大規模テロ事件では、逮捕された容疑者の一人がカシミールのイスラム過激派組織内に潜入しておとり捜査をしていたインド公安当局の捜査官だったことが報じられ、インド当局がテロのおとり捜査をやるふりをして、本物のテロを誘発した可能性が強くなっている[14]。1993年に起きたニューヨークの世界貿易センタービルでのテロ事件でも、FBIがテロのおとり捜査をやるふりをして本物の爆弾をイスラム組織に渡してテロを誘発したことが暴露されている[14]。2004年3月にスペインのマドリードで起きた列車爆破テロ事件も、スペイン当局が発生を誘発した可能性がある[14]。
テロ戦争を永続させるために当局がテロを誘発させるという作戦は、アメリカ国防総省も行っている[15]。国防総省は2002年テロ組織に対して故意にテロ活動を誘発させるような作戦を行う先制作戦グループ(Proactive, Preemptive Operations Group)というのを省内に作った[15]。作戦はテロを扇動することで、休眠状態のテロ組織を活動させて取り締まりを容易にするためと説明されたが、実際にはテロが増えただけで取り締まりは容易になっていない[15]。イラクでゲリラ活動が活発化したのは、このグループの作戦である可能性がある[15]。

アルカーイダはCIAなどの諜報機関による詐欺話[編集]
アルカーイダの幹部が米国などの諜報機関のエージェントでもあるという話は、よくあることだと分かった[15]。トルコのテロ専門家は「アルカイダという名前の組織は存在しない。アルカイダとは、テロ戦争を永続できる状況を作ることを目的としてCIAなどの諜報機関が行っている作戦の名前である」「テロ戦争の目的は、常に低強度の危機が持続している状態を作ることで(米国が世界から頼られる)単独覇権体制を維持することにある」とザマン紙に対し述べている[15]。

パンナム航空機爆破テロ事件はCIAの謀略[編集]
真犯人は、シリアとイランに支援され、レバノンや西ドイツなどで活動していたパレスチナの過激派組織PFLP-GC(パレスチナ解放人民戦線総司令部)である[16]。
PFLP-GCがパンナム機に爆弾入りのスーツケースを乗せることができたのは、CIAが黙認したからである[16]。 麻薬資金は広範囲にCIAの秘密作戦の裏金資金として作られており、PFLP-GCはCIAのエージェントとして動いていた[16]。
レバノンからアメリカに麻薬が密輸されているのを取り締まろうとしてレバノンで調査を終えてアメリカに帰国する途中だった、CIAとDIAの要員4人(米国諜報機関の中でも自分の組織の裏の事情を知らない、まじめな善玉の人々)が爆破されたパンナム機には搭乗しており、CIAの中で麻薬密輸を担当している人々はPFLP-GCをけしかけて密輸麻薬の中に爆弾を仕掛けさせ、爆破テロを挙行して他の乗客もろともに上記の4人を謀殺した[16]。

民主主義体制はハイパー独裁体制[編集]
中国人の多くは自国のマスコミがプロパガンダだと思いつつも影響されているが、欧米人や日本人の多くは、自国のマスコミが真実を報じていると勘違いしており、事態は欧米日の方が深刻だ[17]。国民にうまいことプロパガンダを信じさせた上で行われている民主主義体制は、独裁体制より効率の良い「ハイパー独裁体制」である[17]。独裁国の国民はいやいやながら政府に従っているが、ハイパー独裁国の国民は自発的に政府に協力する[17]。その結果「世界民主化」の結果である米国のイラク占領に象徴されるように、独裁より悪い結果を生む[17]。

米国では大規模な選挙不正が横行[編集]
米国では選挙の投票が自動化され、有権者がコンピューターのスクリーンに触れる方法で投票が行われている地域が多いが、その投票マシンのプログラムに重大な欠陥があることが分かった[18]。欠陥は有権者が1人で何回でも投票できたり、選挙管理をする人が投票結果をばれないように書き換えたりできるというもので、全米の40州で使われすでに4万台以上も普及している投票マシンで、すでに選挙不正が行われているのではないかという疑惑が起きている[18]。
米国の電子投票機の主なメーカーであるディーボルドとES&Sは二社合計で全米のシェアの80%を持っているが、両社は同じ創設者によって作られ、初期の大株主は福音派キリスト教(キリスト教原理主義、主に共和党を支持)とつながりが深いアーマンソン家という一族の人々である[19]。

米国は内乱の傾向[編集]
2009年1月末の段階では全米50州のうち46州が大幅な財政赤字状態に陥り、2009年度中に財政破綻を宣言するかもしれない事態になっている[20]。各州政府の財政難は、金融界の危機と同根である[20]。
州や郡などの地方財政の破綻拡大は、全米の人々、特に貧困層の生活を悪化させる[20]。生活が行き詰まるほど、人々は「なぜこんなに苦しまねばならないのか。政府や金融界のせいだ」と思い、州政府や連邦政府、金融界などに怒りを向ける[20]。郡が州に楯突き、州が連邦に反旗をひるがえし、内乱の傾向が増す[20]。2008年10月、米軍(国防総省)が南北戦争以来150年ぶりに、内乱など自国内の有事に即応できる部隊を新設し、その意図を不可解だと思う向きが強かったが、その後、米国で内乱が起こりうる情勢は、潜在的に強まっている[20]。

中華人民共和国の台頭はニューヨークの資本家勢力の意図[編集]
中華人民共和国の国家戦略を作っているのは北京の中南海の上層の人々であり、米国の中枢(ニューヨーク資本家)からのアドバイスを参考にしている[21]。
第一次世界大戦前から米国の世界戦略を采配してきたCFRでは、第二次世界大戦後、ロックフェラー家(ニューヨークの資本家)が重要な役割を果たした[21]。ロックフェラーは昔から親中派で、中華人民共和国を発展させて世界経済の牽引役に仕立てる長期戦略(今でいう米中G2の戦略)を持っている観がある[21]。
ブッシュ政権では、ロバート・ゼーリック国務副長官やヘンリー・ポールソン財務長官といったゴールドマン・サックス系の高官が、中華人民共和国を「責任ある大国」になってもらうべく誘導するとともに、米中関係(G2)を、米英関係に取って代わる、米国にとって最重要の戦略的2国関係に仕立てる努力を行った[21]。
多極主義者はよく考えて戦略を練り、軍産英複合体・英米中心主義者を延命させる世界大戦が起きないようにしている[21]。ブッシュ政権がイラク占領の泥沼にはまり、オバマ政権はアフガニスタンでも占領の泥沼にはまりつつあり、米軍は過剰派兵でこれ以上の大戦争ができない[21]。経済的にも米国は財政赤字を埋めるために中華人民共和国に米国債を買ってもらわざるを得ず、中華人民共和国と対立できない[21]。

新型インフルエンザには欧米系大手製薬会社の影[編集]
今回の新型H1N5インフルエンザ問題では、ワクチンを製造する欧米系大手製薬会社の影が、あちこちでちらついている[22]。
イギリス政府に対して新型インフルエンザ問題に関する政策立案についてアドバイスを行う立場にある顧問委員会(Scientific Advisory Group for Emergencies)の委員には、ワクチンを作っているイギリスの大手製薬会社であるグラクソ・スミスクラインの非常勤取締役ロイ・アンダーソン卿が含まれているし、イギリスと同様にオバマ大統領のホワイトハウスは、製薬業界との癒着感に満ちたイケイケドンドンである[22]。
米政府は最近、インフルエンザのワクチンを製造する製薬会社に対し、もしワクチンの副作用が出て米国民が製薬会社を提訴しても製薬会社が有罪にならないという免責の決定を行った[22]。いくつかの製薬会社は大儲けが予測されており、金融機関の営業マンは、製薬会社の株が「買い」だと投資家に勧めている[22]。
専門家が「新型H1N5インフルエンザは実験室で作られた可能性がある」と言っており、人間が実験室で混ぜてばらまいたとしか思えないという分析である。[22]。
現在の状況も把握しきれない性質のものなのに、未来の悲惨な状況だけは「確定的」であると政府やマスコミが世界の人々を脅すパターンは、地球温暖化問題と同じである[22]。
このような状況を知って「インフルエンザの予防接種は危険だから受けない方が良い」と叫んだところで、下手をすると製薬会社から損害賠償請求されたり、もっとひどくなると当局から監視・取り締まり対象にされる[22]。

中東大戦争は2008年4月前半に開戦[編集]
イギリスはアフガニスタン占領を何とか成功させようとして、ターリバーンと交渉する戦略を進めたり、イギリス人の「アフガン総督」を置く構想をぶち挙げたりしてきたが、米国は反対にアフガン占領を難しくするような戦略(表向きは大失策)を進め、アフガン・パキスタン国境地帯を空爆してパキスタン側の人々の反米感情を扇動したり、アフガンのカルザイ大統領を焚き付けてイギリスの総督構想に反対させて潰したりしてきた[23]。
30年来の右派であるチェイニー副大統領が牛耳るブッシュ政権が、米国内の中道派を無力化し、2009年1月の任期末までにイギリスやイスラエルの戦略を破綻させようとする仕上げの段階に入っている[24]。
イスラエル軍のガザ侵攻は数日以内に始まると予測され、イスラエルがガザに大侵攻したら、ほぼ確実にレバノンのヒズボラとも戦争になり、イランやシリアにも戦線が拡大し、イスラエル国家が消滅するまで戦争が続く可能性もあって、パレスチナ人だけでなく、イスラエル自身やイランの人々も「ホロコースト」的な大殺戮を経験することになる[25]。
イスラエルでは4月6日〜11日まで、建国以来最大規模の非常事態訓練が行われるが、この訓練中にヒズボラなどが攻撃を仕掛け、戦争になるかもしれない[23]。
イスラエルは400発の核爆弾を持っていて、イスラエルがイランを攻撃する場合は核兵器を使う恐れがある[26]。

イランが核兵器開発との報道はインチキ[編集]
イランは核兵器を開発する試みを行っておらず、イランはIAEA(国際原子力機関)の査察を必要に応じて受け入れており、これまでのIAEAの査察ではイランが核兵器を開発しているという証拠は見つかっていないという主旨の報告書が発表された[27]。
IAEAとアメリカ、イスラエルのいずれもが「イランは核兵器を持つまでに10年かかるという分析で一致しており、現在のイランはほとんど何の核技術も持っていないことを意味している[27]。
逆に、原子力発電で核の技術や物資が豊富な日本は「その気になれば数カ月で核兵器を持つ」と欧米から分析されている[27]。
「イランは間もなく核兵器を持つ」という見方は全くの間違いで、イランを攻撃するために故意に流されているとしか思えない[27]。中華人民共和国やロシアといった非米反米諸国の多くも、イランの核開発疑惑に関して「わが国は核兵器を開発していない」というイランの主張を認め、強硬姿勢をとる米国の方を批判している[28]。

イランとイラクは油田紛争を演出[編集]
2009年12月18日イラク東南部マイサン州の対イラン国境地帯にあるファッカ油田の7つの油井の一つをイランの軍隊が占拠したが、産油国であるイランとイラクが結託して国際原油価格を上げるために国境の油田紛争を演出し始めた[28]。

米国の原潜が韓国の潜水艦「天安」を撃沈[編集]
韓国や米国の当局は、天安艦と同じ時間帯に、すぐ近くで米軍潜水艦が沈没したことを、ひた隠しにしている[29]。「日刊ゲンダイ」5月13日付の記事によると、核搭載可能な米原潜「コロンビア」(USS Columbia)が、米韓軍事演習に参加した後、ハワイに帰港しておらず、沈没したのは原潜コロンビアだとみられている[29][30]。
米軍の原潜の多くは、100人以上の乗組員を定員としていて、天安艦の死者数に並ぶ、かなりの死者が出たはずであり、放射能漏れの懸念もある[29]。沈没した潜水艦から米軍が急いで取り出そうとしたのは、核弾頭だった可能性もある[29]。
天安艦は、北朝鮮の潜水艦が潜入していると勘違いして発砲し、攻撃されたので米潜水艦も瞬時に撃ち返し、2隻とも沈没するという誤認の末の同士討ちが起きたのではないか[29]。米国防総省内の軍産複合体系の勢力がペンニョン島での米潜水艦の潜航を韓国軍に伝えず、同士討ちを誘発したと疑うことすらできる[29]。

著作[編集]

単著[編集]
『マンガンぱらだいす 鉱山に生きた朝鮮人たち』風媒社(1995年9月) ISBN 978-4833130813
『神々の崩壊 はっきり見えてきた国際政治経済の実像!』風雲舎(1999年2月) ISBN 978-4938939113
『国際情勢の見えない動きが見える本 新聞・テレビではわからない「世界の意外な事実」を読む』PHP研究所(2001年6月) ISBN 978-4569575742
『タリバン』光文社(2001年10月) ISBN 978-4334031039
『イスラムVSアメリカ 「これから」を読み解く5つの視点』青春出版社(2001年10月) ISBN 978-4413033039
『国際情勢の事情通になれる本』PHP研究所(2001年11月) ISBN 978-4569576718
『仕組まれた9・11 アメリカは戦争を欲していた』PHP研究所(2002年3月) ISBN 978-4569621166
『米中論 何も知らない日本』光文社(2002年6月) ISBN 978-4334031466
『イラクとパレスチナ アメリカの戦略』光文社(2003年1月) ISBN 978-4334031794
『イラク』光文社(2003年3月) ISBN 978-4334031879
『アメリカ超帝国主義の正体』小学館(2003年5月) ISBN 978-4094056013
『辺境 -- 世界激動の起爆点』宝島社(2003年12月) ISBN 978-4796637848
『アメリカ以後』光文社(2004年2月) ISBN 978-4334032340
『非米同盟』文藝春秋(2004年8月) ISBN 978-4166603954
『国際情勢 メディアが出さないほんとうの話』PHP研究所(2009年1月) ISBN 978-4569704951
『世界がドルを棄てた日』光文社(2009年1月) ISBN 978-4334975579
『日本が「対米従属」を脱する日--多極化する新世界秩序の中で』風雲舎 (2009年12月)ISBN 978-4938939571
『米中逆転 なぜ世界は多極化するのか?』角川書店(2010年6月) ISBN 978-4047102460
『メディアが出さない世界経済ほんとうの話』PHP研究所 (2011年11月)ISBN 978-4569792378
『金融世界大戦 - 第三次大戦はすでに始まっている』朝日新聞出版、2015年3月

共著[編集]
田中宇、大門小百合著『ハーバードで語られる世界戦略』光文社(2001年11月) ISBN 978-4334031152

訳書[編集]
レッデン,ジム(Redden,Jim)著、田中宇監訳『監視と密告のアメリカ』成甲書房(2004年3月) ISBN 978-4880861623

脚注[編集]

1.^ 有限会社田中ニュースについて
2.^ a b 『国際情勢メディアが出さないほんとうの話』著者紹介 紀伊國屋書店
3.^ 作者の自己紹介
4.^ まぐまぐ大賞2008
5.^ a b 「Hotwired Japan」の田中宇インタビュー
6.^ ネオコンは中道派の別働隊だった?, 2004年6月19日 田中宇 ‐ 多極化に言及した初期の記事。
7.^ 有料配信「田中宇プラス」増設のおしらせ 田中宇
8.^ a b c d e f g h 田中宇の国際ニュース解説
9.^ a b c 北京五輪と米中関係, 2008年8月11日 田中宇
10.^ a b c 「アジアの世紀」の光と影, 2009年2月24日 田中宇
11.^ a b c d e f 金融と革命の迷宮, 2008年10月21日 田中宇
12.^ a b c d e 覇権の起源(2)ユダヤ・ネットワーク, 2008年8月29日 田中宇
13.^ a b c d e ホロコーストをめぐる戦い, 2005年12月20日 田中宇
14.^ a b c d チベットをすてたイギリス, 2008年12月10日 田中宇
15.^ a b c d e f アルカイダは諜報機関の作りもの, 2005年8月18日 田中宇
16.^ a b c d ロッカビー事件・はめられたリビア, 2007年9月25日 田中宇
17.^ a b c d 北京五輪チベット騒動の深層, 2008年4月17日 田中宇
18.^ a b アメリカで大規模な選挙不正が行われている?, 2003年8月19日 田中宇
19.^ 不正が横行するアメリカ大統領選挙, 2004年10月8日 田中宇
20.^ a b c d e f 揺らぐアメリカの連邦制, 2009年2月18日 田中宇
21.^ a b c d e f g 多極化の進展と中国, 2009年8月7日 田中宇
22.^ a b c d e f g インフルエンザ強制予防接種の恐怖, 2009年7月29日 田中宇
23.^ a b 米露の接近、英の孤立, 2008年3月22日 田中宇
24.^ 中東大戦争は今週始まる?, 2008年4月6日 田中宇
25.^ 中東大戦争の開戦前夜, 2008年3月1日 田中宇
26.^ 中東大戦争が近い?, 2008年2月19日 田中宇
27.^ a b c d イラン核問題:繰り返される不正義, 2006年2月7日 田中宇
28.^ a b イランとイラクの油田占拠劇, 2009年12月19日 田中宇
29.^ a b c d e f 韓国軍艦「天安」沈没の深層, 2010年5月7日 田中宇
30.^ 実際には2010年5月3日に米原潜コロンビアはハワイ真珠湾に帰還している。"USS Columbia Returns to Pearl Harbor", Navy Times, 2010年5月3日


隠れ多極主義
③ 田中宇の言う(隠れ)多極主義者に関する考察 my.test.done
      http://www.asyura2.com/10/senkyo93/msg/224.html

近年、アメリカの自由競争社会システムや新自由主義の問題が指摘されている(例えばマイケル・ムーアの映画はほとんどがそういう話題だ)。国の富を数%の人が独占するシステムは、かつての封建主義社会と同じで、一部の特権階級以外にやる気を持った人がいなくなる。そこで映画やドラマで本当はありえないような「希望」を持たせて奴隷を働かせるシステムが導入されているという考察を以前にした http://testdonetest.blogspot.com/2010/08/blog-post.html
特に海外ドラマでもSF系のドラマ(スターゲイトが特にひどい)は、この手の扇動のオンパレードだ。技術系労働者の扱いの酷さはプログラマーの間で有名な「ハッカーと画家」という本でもとりあげられている。

無理やり扇動して労働者を働かせるこのシステムが本当にあらゆる分野で世界で一番の国なのだろうか。本当は軍事力にしても弱いのではないかとい疑問が湧く。

例えば

なぜ、日本は50年間も旅客機をつくれなかったのか (だいわ文庫) [文庫]
前間 孝則 (著)

という本の最後の章には、日本で生産された戦闘機F2(F16の改造だけど)がほとんど故障や墜落をしなかったのに対し、アメリカから買ったF-15が何度も墜落したり故障したりひどかった、ということが書かれている。
最強のステルス爆撃機だったはずのF-117はコソボで格安の武器に撃ち落とされた後、全機が退役した(謎のベールに包むことでいかにも強そうな演出をすることをロシアはフォージャーでやった。実際はまったく使えない飛行機だった)
ベトナム戦争では格安の武器しかもたないゲリラに負けた

アメリカは本当は強くないということを確信した人がアメリカにいたとする。自分達の優位を保つために次に何をするだろうか。ありえそうなのは、アメリカを弱体化した最大の要因である「自由競争原理」を他の国にも広めることだろう。一方、アメリカ最強の幻想を信じる人は軍部などに沢山いるかもしれない。そこで
「アメリカは最強なんだ」VS「アメリカは本当は弱いんだ」
の戦いが内部で行われているのが、田中宇の言う(隠れ)多極主義者と覇権主義者の戦いの実態なのではないだろうか。そう思うと私は納得がいく。わざと自分を弱くして他人の発展に寄与する(隠れ)多極主義者なんてものが存在するわけないだろう、私は思っていたからだ。そんな奉仕事業が国の主導を握るなんてありえない。

アメリカは本当は強くない可能性がある。日本の政治家や官僚に一度は検討してほしいと思うのだが。


田中宇の国際ニュース解説  隠れ多極主義
⑤ 多極化への捨て駒にされる日本
      http://tanakanews.com/150510japan.htm

 【2015年5月10日】 きたるべき米国の金融大崩壊で覇権体制が多極化する前に、日本をけしかけて中国敵視策を強め、ウクライナ危機を扇動してロシアを反米の方に押しやって中露を結束させ、米国に頼らない新しい世界秩序、つまり多極型の覇権体制を一足先に作る動きを中露に急がせる、それが米国中枢の隠れた意図と考えられる。ウクライナも日本も、米国の隠れ多極主義の捨て駒として使われている。安倍訪米で日米同盟が強化されたと喜んでいる場合ではない。

 安倍首相が連休中に訪米した。日本の首相として初めて米議会の両院合同会議で演説し、自衛隊が米軍のお供(家来)として世界中に出ていけるようにする日米安保の新ガイドライン(日米防衛協力の指針)が合意された。安倍訪米時に締結されるかと思われたTPPの日米合意は実現しなかったが、外交安保面では、安倍政権や自民党、外務省など日本の官僚機構が以前から切望していた日米同盟の強化が大きく進んだ。安倍自身と自民党、外務省は、訪米の成功に大喜びしている。

 外務省など日本政府は冷戦後、米国が日本との関係を重視しなくなること、米国が日本を飛び越えて巨大市場となった中国と結束してしまうこと(クリントン政権はそれを試みた)を、一貫して懸念してきた。日本が米国に見捨てられないようにするには、米国が外交軍事戦略の面で中国敵視を強め、日本が外交軍事的に米国と一体化する(外交軍事面で米国のいうことを何でも聞く)のが良いと日本外務省などは考えてきた。日本政府にとって、今回の安倍訪米で実現した日米同盟の強化は早ければ早いほど良かった。(日本の官僚機構は、誰が首相になっても官僚のいうことを聞かざるを得ないという独裁的な権力を維持するため、対米従属を必要としている) (日本の官僚支配と沖縄米軍) (民主化するタイ、しない日本)

 冷戦後一貫して日米同盟の強化を望んできた日本側と対照的に、米国側は、日本の対米従属を容認しつつも賞賛せず「もっとカネ(防衛費、思いやり予算)を出せ」「後方支援だけでなく地上軍派兵しないとダメだ」「その前に農産物などの市場を開放しろ」「韓国と喧嘩しないで軍事協調を強めろ。靖国参拝するな」「海兵隊はグアムに撤退するが、それでも辺野古に基地を作れ」などなど、いつも不満げだった。米国側は、対米従属強化を切望する日本側を延々とじらしてきた。オバマは昨年4月の訪日時、安倍を好きでないことがにじみ出ていた。日本は米国を熱愛し、米国はそれを受け入れていたが日本を愛していなかった。 (日本経済を自滅にみちびく対米従属)

 今回の安倍の訪米が実現したのは、米国が不満げな姿勢を引っ込め、対米従属の日本を賞賛する姿勢に転じたからだ。これまで「A級戦犯合祀の靖国神社に参拝するようなやつはお断りだ」と不機嫌だった米議会は今回、安倍に両院合同会議での演説という大きな栄誉を与えた。米議会は、翻心の理由を何も説明していない。安倍は、かねてから追いつきたいと思っていた小泉純一郎(訪米時に議会演説を断られた)どころか、祖父の岸信介(日米安保条約を改訂したご褒美に1960年に米議会上院で演説させてもらった)を超えてしまった。昨春の女性セブンの調査で日本女性に嫌われる男の第1位に輝いた、あの貧相な安倍晋三が、だ。 (The real story behind Shinzo Abe's visit: China, TPP and what the media won't tell you about this state visit)

 貧相な男が、お店で「さすがシャチョー」とか「お兄さんイケメンね」などと賞賛されてうかつに喜んでいると、大体あとから法外な代金を請求される。安倍さんはすでに嬉々としてお店に入り、オバマや米議会のもてなしを受けてしまった。その対価は何なのか、これから何が起きそうか考える必要がある。

 今回の画期的な安倍訪米がなぜ実現したか、その理由は、日本側でなく米国側に起因するはずだ。日本政府が最近やったことのうちの何かが、米国側の態度を変えさせたのではない。最近の日本側による最大の対米貢献は日本銀行のQE(円と日本国債を犠牲にしてドルと米国債を延命さす量的緩和策)だが、QEは今回の安倍訪米の議題でない(日銀QEは表向き米国と無関係な日本経済自身のための策だから)。日本がTPPで農産物などの市場を開放する見返りに安倍が賞賛されるのかと私は前に考えたが、TPPは締結まで至らず、それでも米国側から安倍を非難する声が発せられていない。TPPは脇役のようだ。 (安倍訪米とTPP) (米国と心中したい日本のQE拡大)

 米国の外交戦略を立案する奥の院であるニューヨークのCFR(外交問題評議会)は、安倍訪米と同時期に、安倍招待の意味を解説するかのような報告書を出した。キーワードは「中国包囲網の強化」だ。「対中戦略の見直し」(Revising U.S. Grand Strategy Toward China)と題するこの報告書は、中国の台頭によって米国がアジアから追い出されかねないので、中国の台頭を経済的、外交的、軍事的に抑止せねばならないと説いている。経済面の中国包囲網としてTPPを創設し、外交軍事面の中国包囲網として日米安保体制の強化を筆頭に、米国と韓国、オーストラリア、インド、ASEAN、台湾との軍事協調を進めるべきと主張している。経済や外交で中国の台頭を抑止できないなら軍事(戦争)でやるしかないという趣旨だ。 (Revising U.S. Grand Strategy Toward China) (US "Grand Strategy" for War Against China Laid Out)

 論文は、米国自身を覇権国とみなさず、逆に覇権(他国への隠然とした介入)を悪いこととみなし、他国の覇権拡大を阻止するのが米国の役目だと主張し、この理論をもとに、中国がアジアの覇権国になるのを阻止せねばならないと書いている。実のところ今の世界で、民主化支援などの口実を作って他国に介入する覇権行動を最も多発しているのは、米国自身だ。中国が台頭をめざすのは、中国と周辺国(日本や東南アジア、インドなど)との領土紛争で、米国が周辺国側に肩入れする覇権的行動をとっていることへの対抗だ。この点で、この論文は偽善でウソつきなのだが、国際政治は古今東西、偽善ばかりなのだから、偽善性を非難するだけでは意味がない。 (CFR Says China Must Be Defeated And TPP Is Essential To That)

 米国が日本との安保関係を強化したい理由が「中国包囲網」だというのは目新しい話でない。しかも、中国包囲網は限界のある戦略だという点も、以前からよく指摘されている。米国(米欧日)は、世界最大の消費市場になった中国、世界経済の牽引役となった中国と、本気で戦争することなどできない。米国が「中国包囲網を強化する」「対中戦争も辞さず」と喧伝するのは、日本や東南アジアやインドに兵器を売りつけて儲ける策にすぎない、というのも良く言われることだ。日本は、米国が安倍を招待・賞賛しなくても、米国に冷たくされても、米国の兵器を喜んで買い続ける。兵器売り込みは、安倍招待の意図として弱い。 (中国包囲網の虚実)

 私が以前から注目してきたのは、包囲網を強化するほど中国の台頭が誘発される点、米国が中国を潰すと言って実は台頭させている隠れ多極主義的な傾向だ。オバマ政権が2011年から始めた中国包囲網策(アジア重視策)は、09年に米国防総省が出した軍事戦略案「エアシーバトル」に依拠している。この策は、中国とイランを仮想敵として、敵国が米国に軍事的な脅威を与える場合だけでなく、敵国が米国の侵攻を阻止する軍事力(接近拒否・領域拒否、A2/AD)を持つこと自体を妨害し、米軍がいつでも中国とイランを侵攻・破壊できる状態にしておくことを目標にしている。 (The Emerging Anti-Access/Area-Denial Challenge) (中国を隠然と支援する米国)

 中国やイランの軍事力は米国よりかなり弱いから、米軍の侵攻を受けると破壊される。核戦争を除外して考えると、米軍の侵攻を抑止しうる国は世界でも少ない(ロシアぐらいだ)。米国が黙っていれば、中国やイランは、米国より弱い状態でかまわないと思い続けるが、いったん米国がエアシーバトルの策を宣言し「いつでも中国やイランを侵攻・破壊できるようにする」と言ってしまうと、逆に中国やイランは、迎撃ミサイルや戦闘機、軍艦などの兵器を強化し、米軍が自国の影響圏内に入ってこれないようにするA2/ADの策を強めてしまう。 (Should America Really Fear China's Military?) (America's Air-Sea Battle Concept: An Attempt to Weaken China's A2/AD Strategy)

 昨春以来のウクライナ危機で、この流れにロシアが加わった。ロシアは米国との関係改善を模索していたが、自国の影響圏であるウクライナで米国が画策した政権転覆で反露政権が作られ、ロシアは米国との関係改善をあきらめた。ロシアと経済関係が強かった欧州が米国に引っ張られて対露制裁を開始し、欧州との経済関係をあきらめざるを得なくなったロシアは中国に接近した。米国はロシア敵視を強め、ウクライナ危機が長引くほど、ロシアは中国との戦略関係を強化し、石油ガスの主な売り先が中国になり、中国からロシアへの投資が増えただけでなく、ロシアは中国に積極的に軍事支援するようになった。 (China, Russia Coming Closer To Create A New World Order) (プーチンに押しかけられて多極化に動く中国) (Moscow offers bigger stakes in energy projects to lure Chinese) (Moscow seeks to unlock Chinese financing for Russian companies)

 ロシアは、ウクライナ危機で親米策を捨てざるを得なくなったことで、逆に米国に気兼ねせず独自の非米的な国際戦略ができるようになった。4月に米欧がイランに対する核問題での姿勢をゆるめると、そのすきにロシアは棚上げしていた迎撃ミサイルS300のイランへの売却を実施することを決め、その結果、イランの防衛力(A2/AD)が強まり、米イスラエルはイランを空爆しにくくなった。米国は、ウクライナ危機を起こしてロシアとの敵対関係を強めた結果、イランに対するエアシーバトル策を自ら破綻させてしまった。 (中露結束は長期化する) (プーチンを怒らせ大胆にする) (イランとオバマとプーチンの勝利)

 同様のことが、中国についても言える。ロシアはS300よりさらに最新鋭の迎撃ミサイルS400を中国に売ることを最近決めた。S400は、米国のパトリオットより迎撃力が強いと言われる。安倍訪米直前の4月中旬、中国がロシアから4-6機のS400を買うことを昨年末に調印していたことが、ロシア側の発表で明らかになった。17年に配備完了予定だという。 (S-400 Strengthens China's Hand in the Skies) (Alarm Over China's S-400 Acquisition Is Premature)

 ロシアは冷戦後、何度か新型の兵器を中国に売ったが、そのたびに中国がロシアの兵器をコピーして自国で生産し、ロシアから買わなくなるので、ロシアは中国に新型兵器を売りたがらなくなっていた。ウクライナ危機後の中露接近は、そんな状況を大転換した。ロシアは、戦闘機などの新型兵器を積極的に中国に売り、中国との戦略関係を強めている。これにより、米軍に対する中国の防衛力(A2/AD)が急速に強化され、イランだけでなく中国に対しても、この数年間で、米国のエアシーバトル策が無効になりつつある。 (Russia Could Make China King of the South China Sea)

 米国は、エアシーバトル策とウクライナ危機の両方を同時に進めたことで、中国、ロシア、イランというユーラシア大陸の内側にある3カ国が結束して、軍事的に、米国(米欧日)に対抗できる状態を誘発してしまった。今年4月にイラン核問題の濡れ衣が暫定的に解かれ初め、中露イランの結束は今後さらに強まるだろう。NATO(米軍)はすでに、これまでのロシア敵視戦略を拡大し、中露イランを一体のものとして見る新戦略を検討している。中露イランは、NATOや米国から、一体のものと見られて敵視されるほど、結束を強め、相互の弱点を補完し、全体として強くなっていく。 (The Pentagon's "Long War" Pitches NATO Against China, Russia, & Iran) (米国覇権の衰退を早める中露敵視)

 米国が中国を敵視せず、南沙群島や尖閣諸島の国際紛争で中国の敵方(日本やフィリピンなど)に加勢して中国を刺激することを控えていたなら、中国はこれほど急いで軍事台頭や外交力の拡大を希求しなかっただろう。中国は、内政や国内経済に問題点が多いので、中国自身は、もともと時間をかけた国際台頭を望んでいた。米国の対中戦略は、中国の台頭を煽っている。 (不合理が増す米国の対中国戦略)

 同じことは、軍事と外交だけでなく、経済の分野でも言える。米国は2011年にいったんIMF世界銀行における中国(などBRICS諸国全体)の発言権(出資比率)を、中国(BRICS)の経済規模拡大に見合う形で拡大することを了承したが、その後中国を敵視する米議会がこの決定の批准を拒否したため、中国(BRICS)は、仕方なくIMF世銀体制に対抗しうる独自の国際金融機関を作った。その一つがAIIBだ。 (日本から中国に交代するアジアの盟主)

 また、米国がTPPを中国包囲網だと強調するほど、中国は対抗してASEAN+5の自由貿易圏(RCEP)の創設を急ぐ。RCEPは年内の創設をめざしている。米国がアジア諸国を中国敵視の方に引っ張ろうとするほど、中国が脅威を感じ、対抗的に好条件を出してアジア諸国を米国でなく自国の側に引っぱり込もうとする。米国が敵対を煽らなければ、中国中心のアジア経済圏の出現は20年がかりでゆっくり進んだだろう。米国が敵対を煽るので、中国が急いで台頭する必要に迫られている。 (`Accommodating' Beijing may be no bad thing)

 米国勢は2012年に訪米中の石原慎太郎元都知事をけしかけ、日本政府を尖閣諸島の土地の国有化へと踏み切らせて以来、日本を中国敵視の道具に使う傾向を強めている。米国では財界が中国との投資や貿易で儲けており、米国の議会や政府が直接に中国敵視策をやるのは限度がある。だから米国は日本を経由する間接的な中国敵視を加速して、それにより中国に脅威を感じさせ、中国の台頭を急かしている。この流れの中に今回の安倍訪米を置くと、米国が、日本を使った中国敵視の強化で、中国を台頭へと急かせる策を加速しようとしていると考えられる。 (尖閣で中国と対立するのは愚策) (尖閣問題と日中米の利害)

 米国が安倍を訪米に招待した理由が、中国敵視を強化して中国を台頭へと急かす戦略であるとしたら、米国はなぜ今のタイミングで、中国を台頭へと急かせたいのか。

 私が考えたことは、リーマン危機の再来として米国中心の債券金融システムの大きな危機が予測されていることとの関係だ。今年に入って米国で、金融危機の再来を懸念する声が関係者の間で強まっている。大口投資家の何人かが最近、金融危機の発生を警告したり、1980年代以来の債券市場の長い上昇期が終わりそうだと指摘したりしている。 (Experts are warning that the 76 trillion dollar global bond bubble is about to explode) (US facing major financial crisis, Ron Paul warns) (This Man Will Never Be Invited Back On CNBC) (Liquidity drought could spark market bloodbath)

 数日前には、米連銀(FRB)のイエレン総裁自身が、米国の株価が非常に高い(高すぎる)ことと、米国の債券市場で金利高騰(価格暴落)の懸念があることを指摘した。ちょっとした発言が株や債券のバブルを破裂させかねない中央銀行のトップ自らがこんな発言をするのは異例だ。 (Share prices `quite high', says Yellen) (Fed's Yellen: Stock Valuations `Generally Are Quite High')

 米国の債券金融システムの崩壊、米国債の金利高騰は、世界の基軸通貨としてのドルの地位を喪失させ、米国の覇権崩壊につながる。中国など新興市場諸国も、きたるべきドルや米国債の崩壊の悪影響を受けるが、中国やBRICSは、リーマン危機直後からドル崩壊を予測し、中央銀行がドルや米国債による外貨準備を減らす代わりに金地金を買い貯めたり、IMF世銀体制の代用になるBRICSの緊急用基金を創設するなど、数年かけてドル崩壊後への準備を行ってきた。巨大な金融危機の再来によってドルや米国覇権が崩壊するなら、その後の世界は中国主導のBRICSやイランなどによる多極型の覇権体制に転換していく。 (ドル崩壊とBRIC)

 この場合、BRICSやイランが、米国に頼らない世界体制を早く準備するほど、多極型への転換が円滑に進み、転換が人類に与える悪影響が少なくなる。オバマ政権や前ブッシュ政権、米議会の好戦派は、911以来、過激な単独覇権戦略をやりすぎることで、戦略を失敗させて米国覇権を自滅させ、中露イランを結束させて多極化を進めようとする隠れ多極主義をやっている。彼らは意図的に、世界の覇権体制を多極型に転換しようとしている。転換するなら、世界に与える悪影響が少ない方が良いはずだ。きたるべき米国の金融大崩壊で覇権体制が多極化する前に、日本をけしかけて中国敵視策を強め、ウクライナ危機を扇動してロシアを反米の方に押しやって中露を結束させ、米国に頼らない新しい世界秩序、つまり多極型の覇権体制を一足先に作る動きを中露に急がせる、それが米国中枢の隠れ多極主義者たちの意図でないかと考えられる。 (多極化の進展と中国) (覇権の起源:ロシアと英米)

 米国は、ドル崩壊でいったん無茶苦茶になる。米国ではリーマン後、中産階級が貧困層に転落し、ファーグソンやボルチモアなど全米各地で暴動がしだいに増えている。米国は、しばらく混乱がひどくなるが、何年かかけて多極化がある程度進んだら、多極型の新世界秩序になじむ形に国是を転換し、その後は再び安定や経済成長を獲得するだろう。米国はいったん自滅した後に蘇生する。米国の中枢は、世界の覇権体制をリセットし、長期的に見た場合の世界の経済成長を確保しようとしているのだろう。多極化は、資本家による、長期的、世界的な経済戦略と考えられる。資本と帝国の相克の歴史が、その背景にある。 (米経済の崩壊、世界の多極化) (資本主義の歴史を再考する) (多極化の本質を考える) (資本の論理と帝国の論理)

 すでに述べたように、今回の安倍訪米に合わせて、米国の世界戦略を練る最高権威のシンクタンクであるニューヨークのCFR(外交問題評議会)が、中国敵視策の報告書を出した。CFRは、ロックフェラー家を筆頭とする資本家が運営しており、以前から隠れ多極主義的な動きを繰り返してきた。1972年のニクソン訪中によって中国を米国の敵から味方へと劇的に転換させたキッシンジャーは、ニクソンの大統領補佐官になる前、CFRの研究者として、対中和解策を練っていた。米国は、中国包囲網として、北方からの包囲網である朝鮮戦争に続いて、南方からの包囲網としてベトナム戦争をやって失敗した挙げ句、キッシンジャー補佐官がニクソン大統領の対中和解策を打ち出し、米国を親中国に大転換させた。ニクソン政権は、米単独覇権(米ソ2極の冷戦体制)を解体し「米欧露中日」の5極体制に転換する多極化を構想していた。 (世界多極化:ニクソン戦略の完成) (日米防衛協力における3つの転機)

 CFRは冷戦期、一方で軍産複合体による対中、対ソ敵視策を賞賛しつつも、いずれ転覆してやろうと考え、ベトナム戦争を泥沼化させた後、キッシンジャーとニクソンを政権に送り込み、電撃的な対中和解を実現し、冷戦構造に風穴を開けた。CFRは共和党で、ロックフェラー家から大統領を出そうとしたがケネディ暗殺への同情で民主党が優勢になったため、キッシンジャーはCFRで4年待った。

 CFRを作ったロックフェラー家は、第二次大戦時、多極型の常任理事国体制を持った国連の創設に金を出したうえ、山奥に追い詰められたゲリラでしかなかった国民党の中国を常任理事国にしてやった。ロックフェラーは昔から親中国だ。超好戦的な政策立案集団「ネオコン」の多くもCFRのメンバーだ。ネオコンはブッシュ政権の中枢に入り、ニセの証拠でイラクの大量破壊兵器(WMD)保有をでっち上げて米軍にイラクを侵攻させ、あとからWMDのウソがばれて米国の国際信用が失墜する仕掛けを作りつつ、占領計画を何も作らず、占領を大失敗させて米国の軍事力を浪費させ、イランが漁夫の利でイラクを傘下に入れて台頭する構図を用意した。これはまさに隠れ多極主義の戦略だ。 (ネオコンと多極化の本質) (ネオコンの表と裏) (ネオコンは中道派の別働隊だった?)

 ベトナム戦争は、米国が、中国包囲網を強化すると言って稚拙で過激な策をやって失敗した挙げ句、ニクソン訪中で中国の台頭を容認する態度へと大転換した隠れ多極主義的な戦争だった。イラク戦争も、米国の軍事力を浪費してイランの台頭を誘発する隠れ多極主義だった。今回、安倍政権の日本を使って中国敵視を強める策も、隠れ多極主義的な展開になるだろう。 (日本をだしに中国の台頭を誘発する)

 今回の安倍訪米で、米国側が戦後初めて明確に示したメッセージの一つは「米国にとって、対米従属一本槍の日本は、模範的な同盟国だ」ということだ。これは、隠れ多極主義の文脈で考えると、アジア太平洋地域の他の親米諸国が迷惑に感じるメッセージになっている。 (US should back Japan but not at any price)

 東南アジア諸国、豪州、韓国、インドなど、日本以外のアジア諸国は、まだしばらく覇権国であり続ける米国と、その後の多極型体制下でアジアの地域覇権国になりそうな中国の、両方とうまくつき合おうとしている。日本以外のアジア諸国はここ数年、米国から中国包囲網を強化しようと誘われて「良いですね」と評価しつつ、その一方で中国との経済関係で儲けることも重視し、米国と中国のどちらを選ぶのかと米国から迫られても、どっちつかずな態度をとってきた (America and China are rivals with a common cause)

 そんな中で、米国が、対米従属・中国敵視の安倍を賞賛することは、米国があらためてアジア諸国に対して「米国と中国のどちらを選ぶのか」「日本のように対米従属一本槍になれ」と迫る意味がある。以前なら、このように迫られると、アジア諸国は中国よりも米国を選んでいた。しかし3月末、日本以外のアジア諸国のすべてが米国の反対を無視して雪崩を打ってAIIBに加盟したことで、アジア諸国が米国より中国を選ぶようになったことが明らかになった。その後になって、米国が安倍を米国に招待して賞賛し、アジア諸国に「日本のように反中国の対米従属になれ」と示唆してみせたところで、アジア諸国は、以前に増して迷惑に思うだけだ。 (The unforeseen effects of Chinese medicine)

 この事態は、米国がウクライナ危機を起こして米露敵対を扇動し、ドイツやフランスに「米国と一緒にロシアを敵視しろ」と迫ったのと似ている。独仏は、仕方なく米国主導のロシア制裁につき合ったものの、欧露の経済関係を破壊しただけでなく欧露戦争まで起こしたがる米国に、独仏は愛想を尽かす傾向だ。ロシアと独仏は、米国を除外する形で、ミンスクでウクライナの停戦合意を締結し「ミンスク」が米国抜きの欧露協調の新たな形の基礎になりつつある。 (ユーラシアは独露中の主導になる?) (The Choice Before Europe)

 米国のロシア敵視策は、ウクライナをだしにして行われている。同様に、米国の中国敵視策は、日本をだしにして行われている。ウクライナも日本も、米国の隠れ多極主義の捨て駒として使われている。米国が金融崩壊するなら、その前に日銀がQEでドルを支えてきた日本の国債金利が高騰し、財政破綻する。安倍訪米で日米同盟が強化されたと喜んでいる場合ではない。


 03 06 (日) GPIF運用、15年度赤字なら参院選への影響は必至     newsphereの指摘

NewSphereを開き内容を読んでみて、田中宇の「国際ニュース解説」とともに「ニュースフェアー」および「マネースクエアー・ジャパン」のアンテナ電波を受けとめる必要を感じた。

アメリカ追従の安倍総理とその以降にピッタリ寄り添う日銀の黒田総裁の金融政策は、ブラックモンスターの罠にちがいない。 ここ1~2年の変化を詳しくチェックしていきたい。



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GPIFについて

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      http://www.m2j.co.jp/market/monthly_column.php?id=5
今月の特集  GPIFの運用見直しとは?その為替相場への影響を徹底考察! 2014年05月



newsphere 更新日:2016年3月3日
GPIF運用、15年度赤字なら参院選への影響は必至
      10~12月期黒字は“つかの間の安心”か
      http://newsphere.jp/politics/20160303-1/

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は1日、2015年10~12月期の運用状況を公表した。過去最大の赤字だった7~9月期から大きく改善し、4兆7302億円の黒字となった。これによってGPIFの運用資産額は、12月末時点で139兆8249億円となった。だが海外メディアの視線はすでにその先にある。今年1~3月期には運用成績は再び大幅な赤字になり、2015年度通期でも赤字になる可能性が高いとみられている。そのことが今年夏の参院選に影響を与える可能性も指摘されている。

投資配分を見直したことで株価と為替レートの影響を受けやすく
 GPIFは、その名のとおり、国民年金、厚生年金の年金積立金を管理・運用する独立行政法人である。年金基金として世界最大の運用規模を持つ。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、GPIFについて、急速に高齢化が進む日本にとっての生命線だと語っている。
Financial Times

世界の金融市場が混迷を極め、経済の先行きに不透明感が増している。このコラムでは、金融、経済報道で突出した信頼性を誇る英フィナンシャル・タイムズ紙の記事をタイムリーに翻訳し、毎日1本お届けする。
 2001年に年金資金運用基金として発足し、2006年にGPIFとなった。GPIFによると、市場運用を開始した2001年度以降の累積収益額は50兆2229億円に及ぶ(財投債分含む)。これは年率にすると2.99%となる。ブルームバーグによると、第2次安倍政権が発足した2012年末以降の運用収益は約27.9兆円だという。

 2014年10月に運用方針の見直しを行い、国内債券中心だった資産構成割合(基本ポートフォリオ)を改めた。それまでの基本ポートフォリオでは、60%の割合だった国内債券を35%に引き下げた。反対に、それぞれ12%だった国内株式、外国株式をほぼ倍の25%に引き上げた。また外国債券の割合も15%に引き上げ、資産全体で40%を外貨建て資産に振り分けることになった。

 この変更により、GPIFの運用成績は、株高と円安からより大きな恩恵を受けるところとなった(外貨建て資産を円で評価する際、購入時よりも円安であれば有利に働きやすい)。

1~3月期は再び大きく赤字との予想
 反対に、株安と円高は、現在の資産構成割合のGPIFにとっては、より悪影響を及ぼすものとなっている。そして、今年に入ってからは、まさにその状況が加速している。

 さらに、日銀のマイナス金利政策もGPIFの運用にとっては逆風となっている。GPIFの三石博之審議役が1日の記者会見で、日銀のマイナス金利政策は「まさにサプライズ。運用する立場では大変厳しい状況だ」と語ったことをブルームバーグは伝える。

 海外メディアの視線は、昨年10~12月期の黒字よりも、今年1~3月期に予想される(大幅な)赤字、また2015年度(3月期)通期での赤字の可能性に集中している。なお、昨年4~12月では5108億円の赤字となっている。

 ロイターは、株式市場は年初から下がり基調となっていて、GPIFは2015年度、東日本大震災のあった2010年度以来の年度赤字に陥るかもしれない、と語る。

 FTは、成長戦略「アベノミクス」が順調に進んでいるということを国民に納得させようと奮闘している日本政府は、GPIFが年内最大の黒字を発表したことで、つかの間の安心を得た、と語っている。だが、国内、外国株式市場が、これから3月末までに著しい回復を見せないかぎり、1~3月期のGPIFの運用成績は失望させるものとなるだろう、と語っている。

 ブルームバーグも、赤字から黒字に戻ったことで、安倍首相にはいくらかの息抜きが与えられたが、この黒字はおそらく、つかの間のものだったということになるだろう、と語っている。

GPIFの運用赤字はアベノミクス批判につながる
 このような表現から分かるとおり、FTやブルームバーグは、GPIFが行ったポートフォリオ見直しをアベノミクスと強く関連付けてとらえている。

 FTは、日本の株価は2013年から昨年末まで3年間にわたり回復し続けていたが、GPIFの株式へのリバランスは、日本の株式にしっかりした支持基盤を提供してきた、と語る。そして、安倍政権は、保守的な日本の世帯も、株価の持続的な回復を目にすることによって、貯蓄を銀行預金から国内株式市場にも分散するようになることを期待していた、と語る。

 そこで、これらのメディアは、GPIFの運用損が安倍政権にとって政治問題となることに注目している。

 FTは、GPIFのポートフォリオ見直しは国内の一部から批判を招いてきた、と語る。野党政治家はアベノミクスのもろさをしきりに強調したがっているとし、1月の衆議院予算委員会で、民主党の山井和則衆院議員が首相にGPIFの年初来の含み損について質問したことに触れた。この件についてはブルームバーグも触れている。

 1~3月期の運用成績が赤字であれば、それが発表される際には首相はさらに批判にさらされそうだ。GPIFのポートフォリオ見直しという措置が年金の貯えを危険にさらしているとの批判がその発表の際に再び高まりかねない、とブルームバーグは語る。

参院選直前に2015年度の赤字が発表されることは政権にとって望ましくない
 さらに、ブルームバーグは、この問題が今年夏の参院選に影響してくる可能性にも注目している。

「GPIFの運用成績はことによると、アベノミクスを安倍首相にとって不利なものに変えてしまいかねない問題だ」と、政治リスクコンサルタント会社テネオ・インテリジェンスの政治リスクアナリストのトバイアス・ハリス氏はブルームバーグで語っている。

 ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、GPIFの運用状況が「このまま3月末を迎えると厳しい。GPIFは損失の責任問題などが取り上げられやすく、参院選で格好の攻撃材料にされてしまうだろう」とブルームバーグで語っている。

 今年度通期の運用成績が夏の参院選直前に発表されるため、「3月中に株価を引き上げておきたいのではないか」という市場の思惑がETF増額などの追加緩和期待につながり得ると井出氏は読んでいる、とブルームバーグは伝える。非常に慎重な表現だが、期待感が株価の上昇しやすい雰囲気を作るという意味かと思われる。

 メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、「株価の大幅な反発がなければ、7月の参院選に向けて公的年金による日本株投資は続く」と推測したそうだ。これらはむしろ、参院選がGPIFの行動に影響を与えるとの観測だ。

株価が下落するとさらに株式を買い込むことに?
 現在、GPIFは基本ポートフォリオにおいて、国内株式の割合を25%としているが、12月末時点では23.35%と、これをほぼ実現していた。だが、今年に入ってからの株安と金利低下によって、この割合が低下しているはずだとの試算を大和証券が示していることを、ブルームバーグが伝えている。

 大和証券の1日のレポートによると、2月末の時点で、計算上、約21%にまでこの割合が低下しているという。そこで、この状態から25%まで引き上げるために、資産価格が一定などの前提を置くと、GPIFは国内株式を最大5.3兆円程度買うかもしれないという。GPIFには、目標水準から逸脱する自由裁量の余地(乖離⦅かいり⦆許容幅)もあるが、GPIFがさらに株式購入すれば、国内株式市場を支えるのに寄与できるだろうとブルームバーグは語っている。

 実際、GPIFがすでに国内株式への投資を増やしている兆しがあるという。GPIFを顧客として持つ信託銀行は、2月19日までの1週間で、国内株式を過去最大の5000億円分購入したが、これは13週間連続の買い越しだった、とブルームバーグは伝えている。

(田所秀徳)

GPIFについて

㎡jマネースクウェアー・ジャパン 2014年05月
GPIFの運用見直しとは?その為替相場への影響を徹底考察!
      http://www.m2j.co.jp/market/monthly_column.php?id=5

GPIFって何?

GPIFとは、年金積立金管理運用独立行政法人(=Government Pension Investment Fund )(略称「管理運用法人」)のことです。厚生労働省の所管により、厚生年金と国民年金の積立金、約130兆円を運用する世界最大規模の年金基金です。

世界第2位のノルウェー政府年金基金の運用資産は約5兆ノルウェークローネ(=約85兆円)、米国最大の公的年金基金であるCALPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金)の運用資産は約2,800億ドル(=30兆円弱)ですので、GPIFの資産規模は群を抜いていると言えそうです。

GPIFの運用は、日本の国債中心に行われていますが、国際分散投資の観点から、国内株式、海外債券、海外株式などにも投資しています。

GPIFの運用見直しとは?

GPIFは、運用する各資産の比率を定めた基本ポートフォリオを策定しており、実際の運用において既定の許容幅での変動を認めています。そして、基本ポートフォリオが「安全・効率的かつ確実」であるかを「定期的に検証し、必要に応じて見直す」としています。

GPIFの基本
構成比率(%)
運用資産
資産額(兆円)
運用資産
構成比率(%)
国内債券
           60            71.0            55.2
国内株式
           12            22.1            17.2
外国債券
           11            13.6            10.6
外国株式
           12            19.5            15.2
短期資産
           5            2.3            1.8
合  計
           100            128.6            100

昨年6月の運用見直しでは、国内債券の比率を下げて、主に外国債券と外国株式の比率を引き上げました。また、昨年11月の公的年金運用に関する有識者会議の最終報告でも、デフレからの脱却を踏まえて、国内債券を中心とする現在のポートフォリオを見直す必要があるとされました。

今年4月には、麻生財務大臣が「GPIFの(運用見直しの)動きが6月にも出てくる」と語り、国内株式の運用額増大の期待から、日経平均株価の大幅上昇をもたらしたのは記憶に新しいところです。やはり同じ4月に、先の有識者会議で座長を務めた伊藤隆敏・政策研究大学院大学教授は、「(GPIFは)約25兆円の保有国債を売却すべき」との見解を示しています。

GPIFの運用見直しの為替市場へのインパクトは?

仮に、伊藤教授の提言通り、25兆円の保有国債が売却され、その代金が国内債券以外の資産に、現在と同じ比率で振り向けられるとすると、約14兆円が外国株式と外国債券に向かうことになります(国内株式に約10兆円)。

財務省の統計によると、日本の投資家による対外証券投資は、2005年度以降の平均で年間約10兆円です。したがって、14兆円の資金が対外証券投資に向かうならば、為替相場にもそれなりの影響が出そうです。

ただし、前出の有識者会議の最終報告では、「海外資産運用比率を高めることは、分散投資を進める効果があるほか、積立金の取崩し時に国内市場への影響が小さいというメリットがある反面、国内運用資産の減少が国内経済に影響を与える可能性がある」として、外貨建て資産運用には適切な判断が必要との見解が示されています。保有する国内債券の売却により、国内市場金利が大幅に上昇して、景気に冷や水を浴びせる可能性を懸念したものとみられます。

GPIFの動きは氷山の一角?

もっとも、運用の見直しを進めているのは、GPIFだけではありません。これまで、国内債券を運用の中心としてきた銀行や生命保険会社などの多くの機関投資家が、運用の多様化や外貨資産への投資の増加を検討しているようです。大手生命保険会社の数社は、2014年度の資産運用計画において、外債投資を増やす意向を表明しています。

いうまでもなく、国内の低金利が国内債券での運用を困難にしているからです。長期金利とも呼ばれる10年物国債の利回りは、足もとで0.6%程度しかありません。これはジリジリと上昇する日本の物価上昇率(3月の消費者物価上昇率は前年比+1.6%)を大きく下回っています。

4月以降は、1年程度の「期間限定」とはいえ、消費税率引き上げによって消費者物価上昇率は一段と押し上げられます。つまり、安全とされる10年物国債に投資をしても、インフレによる資産価値の目減りを防ぐことはできないのです。


そのため、日本の機関投資家は外貨建て資産、とりわけ外国債券への投資を積極化させる可能性があります。かつてのように「円高恐怖症」が強ければ、外債投資は為替ヘッジつきで行われ、為替相場への影響は限定的かもしれません。しかし、円の先高感が後退している昨今、為替差益にも期待して為替ヘッジなしの外債投資が増えるのであれば、円安の流れをサポートすることになりそうです。

日本の機関投資家が動き出せば、GPIF以上のインパクトも!?

日銀の資金循環表によれば、2013年末時点で銀行全体が保有する国債(財投債を含む)は287兆円でした。保険会社(生命保険や損害保険など)全体が保有する国債(同)は190兆円でした。いずれも、GPIFの運用資産規模を上回っています。それらの国債のごく一部が外国証券に振り替えられるだけで、GPIFの運用見直し以上のインパクトがあるかもしれません。

2014年度が始まった今年4月に、日本からの対外証券投資はとくに増えていません。今後、多くの機関投資家の運用計画に沿った形で、対外証券投資が増えていくのか、注目したいところです。 日本の対外証券投資(市場調査室)

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