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03 30 (金) 財務省 文書改ざん問題
2人の総理大臣経験者で、現在正副の総理大臣の政府権力の行使において前代未聞の醜聞をさらし、それでもけじめをつけないでいます。
戦後においての経験しかないけれど、こんな醜態を見たことはありません。
たとえ少年であったにせよ軍籍をもち、直撃弾で友達を失い、爆撃による負傷者をそのままに軍令によって自分は逃げなければならなかった経験を持った私にとっては、人間性のおぞましい姿をこれほどまでに見せ続けられて黙ってはいられなかった。
どうしてこんな日本になってしまったのか。
E 金正恩氏訪中 対話生かす国際連携を
▼(社説)<https://digital.asahi.com/articles/DA3S13425293.html>
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)氏が中国の北京を訪れ、習近平(シーチンピン)国家主席と会談した。確認されている限り、最高指導者となった金氏が外遊するのは初めてである。
中国側によると、金氏は会談で、平和と安定の維持を望み、朝鮮半島の非核化に尽力すると語ったという。2人は今後もひんぱんに会う意思を確認した。
両国の対話が軌道に乗るのは望ましい。非核化と和平には、北朝鮮の最大の後ろ盾である中国の関与が欠かせない。
「唇歯の関係」といわれるほど密接だった中朝関係は近年、冷え込んでいた。国連安保理での制裁決議に賛成した中国に、北朝鮮が反発したためだ。
だが今回、中国を初の外遊先としたことで、金氏はひとまず中国に敬意を示したかたちだ。4月以降に見込まれる韓国、米国との首脳会談に向けて、足場を固めておきたい思惑があるのだろう。
近年、孤立を深めてきた北朝鮮が対外的に意思疎通を図る姿勢に転じているのは確かだ。この変化を逃すことなく、着実に非核化の目標につなげたい。
そのために関係各国は現時点で、北朝鮮への制裁の足並みを乱さぬよう心がけるべきだ。非核化の言葉は語られても、実質的な進展はまだ何もない現実を見落としてはならない。
関係各国の利害の違いを突いて、二国間対話で連携を崩そうとするのは、北朝鮮の常套(じょうとう)手段だ。とくに大きな影響力を持つ中国は、今回の訪問などを理由に制裁を緩めてはならない。
金氏は今後、別の友好国であるロシアのプーチン大統領にも会う可能性がある。北朝鮮をとり囲む構図が、かつての「日米韓」対「中ロ朝」に陥れば、問題の解決は難しくなる。
金氏が後ろ盾の大国との関係固めに走るのは、米国との首脳会談が不調に終わる事態に備えてのことだろう。それだけに、米国は交渉に臨む政策と指針を綿密に練り、中国や韓国、日本を含む各国との調整を進めておく必要がある。
ところがトランプ大統領はこの大切な時期に、一方的な通商政策で中・韓・日と摩擦をおこし、在韓米軍駐留の意義にも疑問を投げる発言をした。安全保障と貿易を関連させて「自国第一」に走る不安感を与えるのは不見識というほかない。
北朝鮮をめぐる各国の首脳外交が活発化する中、日本政府の出遅れ感は否めない。圧力一辺倒に固執した結果ではあるが、焦るのは逆効果だ。関係各国が歩調を合わせつつ、対話を生かしあう知恵が求められている。
F ◆米覇権の転覆策を加速するトランプ
【2018年3月29日】
http://tanakanews.com/180329hegemon.php
米国の覇権戦略立案の奥の院CFRの会長が、トランプによる米国覇権の引き倒しと多極化を指摘する論文「リベラル世界秩序の死」を発表した。自由貿易体制の放棄、中国との貿易戦争、イラン核協定からの離脱、英スクリパル事件でのロシア敵視など、トランプが矢継ぎ早に打ち出す強硬策が、米覇権の転覆を加速する。CFR論文は、米覇権の終わりが世界の繁栄や平和の終わりになると嘆くが、現実は違う。米覇権はベトナムやイラクなど戦争の連続だったし、米覇権の延命策の経済面である中銀群のQEは繁栄を壊すバブル崩壊につながる。トランプの策の方が、今後の覇権崩壊時に世界を軟着陸させる。
第2次大戦以来、米国の覇権戦略を立案する「奥の院」ともいうべきロックフェラー系のシンクタンク「外交問題評議会」(CFR)のリチャード・ハース会長が、3月21日付けで「リベラル世界秩序の死」と題する論文(宣言文)を発表した。ここでいうリベラル世界秩序とは、米国が戦後、国連やIMF世銀、WTOなどの国際機関(やCFR自身)を作って70年あまり維持してきた覇権体制のことだ。 (Liberal World Order, R.I.P.)
論文は以下のような内容だ。TPPやNAFTAの離脱や保護貿易、イラン核協定の破棄、温暖化パリ条約の離脱などに象徴されるトランプ大統領の米国第一主義が、リベラル世界秩序を弱体化させている。欧州などでのナショナリズムの勃興や、ロシア中国トルコなどでの権威主義の権力体制の強化もあり、世界で普遍的だった秩序が崩れ、各地域ごとに異なる特色を持つ秩序が並立する(多極型の)世界体制になっている。覇権を放棄する米国の代わりをどこの国もやりたがらないため、リベラル世界秩序が崩れ、世界の自由や繁栄や平和が終わりつつある。 (Council On Foreign Relations President: "Goodbye, LIberal World Order")
論文に書かれたことは、私の読者にとって目新しくない。トランプが米国の覇権を放棄し、世界の多極化に拍車をかけることは、彼が大統領に当選したころから予測されていた。リベラル世界秩序が失われると世界の平和や繁栄が失われるとハースは書いているが、ベトナムやイラクの戦争に象徴されるように、米国は、リベラル世界秩序を維持するとためと言って、破滅的な戦争を繰り返し、世界の平和を壊してきた。繁栄を維持するためと称してリベラル諸国(米日欧)の中央銀行がQEを続け、経済のバブルを膨張させ、いずれ世界の繁栄を長期的に喪失させる巨大なバブル崩壊を不可避にしている。ハース自身が、論文の冒頭で皮肉的に「神聖ローマ帝国が神聖でもローマ人の国でも帝国でもなかったのと同様、リベラル世界秩序はリベラルでも世界的でも秩序的でもない」と認めているとおりだ。 (米国を覇権国からふつうの国に戻すトランプ)
ハースの論文は、内容が目新しくないものの「なぜいま、リベラル世界秩序の運営役だった天下のCFRが、自分たちの墓碑銘のような、リベラル世界秩序の死についての論文を発表したのか」という点で分析に値する。タイミング的に見て、トランプがこれから米国の覇権を放棄し、リベラル世界秩序を転覆させる動きを強めることをCFRが予測していると考えられる。 (好戦策のふりした覇権放棄戦略)
3月21日に発表されたハースの論文は、トランプが3月1日に鉄鋼とアルミニウムの世界から米国への輸入に対して関税をかけると発表、23日に中国との貿易戦争を開始して戦後の米国の自由貿易主義を壊し、3月13日と23日に、リベラル世界秩序の維持に腐心していたティラーソン国務長官とマクマスター安保担当補佐官を解任すると発表し、代わりにイラン核協定を潰したいポンペオやボルトンを指名任命するという、トランプの新たな動きの中で発表されている。 (中東大戦争を演じるボルトン) (March 2018 - A Truly Historic Month For The Future Of The Planet)
3月4日には英国で、ロシアのスパイだったセルゲイ・スクリパルの父娘が、何者かによって毒を盛られる事件が起こり、英米独仏は、まだ犯人を特定する証拠が何も示されていないのに、ロシアが犯人だ、プーチンの命令だと決めつけ、ロシアに対する濡れ衣の敵視を強め、米欧とロシア中国イランなどが対立する新たな冷戦体制が構築されている。この新冷戦体制は、欧米日などが、中露イランなどを除外・敵視するかたちでリベラル世界秩序を再生する動きにも見えるが、もし中露イランの側の方が強く、欧米側の足並みが乱れて中露にすり寄る諸国が増えると、それはむしろリベラル世界秩序の崩壊に拍車をかける。 (Tests of Substance in Britain Poisoning Will Take Three Weeks) (Russia says 'powerful forces' in U.S. and Britain behind Salisbury attack - RIA)
英米独仏など24カ国がロシアの外交官を合計百人以上追放した。追放数は史上最大の規模だ。だが、オーストリアなどいくつかの諸国は「ロシアが犯人と言える根拠が示されていない」と言って追放を見送っている。おそらく、ロシアが犯人だと言える捏造でない根拠は今後も示されない(犯人はロシアでなく米英諜報界の内部だろうから)。 (Vienna: London has not Proven Russia's Guilt for Scripal's Poisoning) (Did Putin Order the Salisbury Hit? : Patrick J. Buchanan)
ボルトンを通じて米国をイランを戦争に引っ張り込み、米欧と中露イランの対立に拍車をかけると喧伝されているイスラエルは、スクリパル事件でロシアを批判することを避けて「ノーコメント」に徹している。イスラエル国境のすぐ隣の、イラン系軍勢が駐留するシリアの上空の制空権をロシアが握っているからだ。欧米と中露イランの対立は、すでに、リベラル世界秩序の崩壊に拍車をかけそうな感じになっている。 (Israel opts out of US-EU anti-Russian expulsions, its intelligence finds novichik stocks in 20 countries) (Why the UK, the EU and the US Gang-Up on Russia)
英国でのスクリパル事件と並び、以前から米英諜報界の傀儡として機能してきたコソボの勢力を扇動してセルビア人勢力を政治攻撃させ、セルビアとその後見役であるロシアを激怒させるロシア敵視策も再び始まっている。敵視されるほど、ロシアは中国やイランなどと組み、米国覇権体制を瓦解させようと努力するようになる。米英諜報界は軍産複合体そのものだ。軍産と敵対してきたトランプは最近、軍産を使ってロシア敵視を強め、ロシアを怒らせて米国覇権を引き倒させる戦略を強化している。 (Kremlin lambasts Pristina’s provocation in Kosovo Mitrovica) (NATO, EU Diplomat Expulsions Push Russia ‘Towards China and Iran’ - Expert)
米国は軍事費を急増している(トランプは軍産をカネでたらし込んでいる)。だがロシアは軍事費の比率を減らすことを決めている。現在GDPの5%を占める軍事費を、2022年にGDPの3%まで減らす計画を発表した。米国とロシアが直接戦争することはない。ロシアは中東やユーラシア西部の地域紛争を政治的に仲裁して解決し、漁夫の利を得る戦略をとっている。シリア政府軍への空爆支援など、軍事力は一部で使っているが、なるべくカネがかからないようにやっている。ロシアは覇権を効率的に拡大している。トランプは当初、プーチンと仲良くすることでロシアを加勢しようとしたが、プーチンの国際運営がうまいので米国の加勢も要らなくなり、むしろ米露対立を扇動する方がロシアを強化できるようになっている。 (Russia Intends to Substantially Cut Military Spending Over Next Five Years)
イランも、米国から核協定を破棄されそうな中、米国との対抗力をつけるため、近隣諸国との関係強化を急いでいる。アゼルバイジャンとアルメニアが対立するナゴルノカラバフ紛争を、イランが仲裁しようとしている。この動きには、おそらくロシアやトルコも協力し、米国に頼らないコーカサス地域の運営が試みられる。これは多極化の一つだ。トランプはイランを強化している。 (Iran’s president calls for political solutions to regional conflicts) (How Trump is prompting Iran to improve ties with its neighbors)
▼中国を経済的な対米自立・ユーラシアの経済覇権国に追い立てるトランプの貿易戦争
今回のCFRの米国覇権終焉宣言はタイミング的に、トランプが「自由貿易」を放棄して鉄鋼やアルミに高い関税を課税したり、中国と報復関税をかけあう貿易戦争に入ったりした時期と同期している。高関税や貿易戦争といったトランプの貿易政策により、米国は、50年ほど続けてきた「米国が世界から低関税で旺盛に輸入し続ける見返りに、世界は対米輸出で儲けた資金で米国の債券を買い、米国は貿易赤字を金融の黒字で埋める」というバーター取引の関係を破棄し始めている。トランプの米国は、世界のための消費大国であり続けるという、覇権国としての任務を捨てようとしている。これは、最近の記事「自由貿易の本質とトランプ」に書いたとおりだ。 (自由貿易の本質とトランプ) (US losing its competitive advantage over China: Analyst)
覇権放棄策(多極化策)の原動力は、トランプ個人の主義主張でない。米国が消費の覇権国として機能し続けるために必要な債券発行のバブルが維持不能な規模にまで膨らんで08年のリーマン危機を引き起こし、その後は米日欧中銀のQEによって金融システムを何とか延命しているものの、それももう限界だ。米国が世界経済を牽引する消費役である米覇権体制そのものをやめて、世界の経済秩序を別な体制に移行させる必要がある。トランプは、その移行を進めるために大統領になった。 (トランプの貿易戦争は覇権放棄)
米国への輸入に高関税をかけることで、トランプは世界に対し、米国を最大の輸出先として頼ってきたこれまでの態度を改めろと手荒くけしかけている。中国との貿易戦争を通じてトランプは中国に対し、これまでの対米輸出依存の経済体制を改め、内需や、一帯一路計画でつながった近隣諸国への輸出や投資を経済成長の主導役にする傾向を加速せよとけしかけている。 (China’s Shift Away From Exports Provides Cushion Against Tariffs)
中国は、トランプから貿易戦争を引き起こされる直前、習近平の経済顧問である劉鶴を訪米させ、経済分野の米中会談を行った。このとき劉鶴は米側に、中国がすでに経済成長の主導役を対米輸出から内需や一帯一路との貿易・投資に転換していること、米国が仕掛けてくる貿易戦争は、すでに中国が進めているこの転換を加速させるので中国にとってプラスになり、むしろ米国にとってマイナスになると伝えている。中国との貿易戦争が米国にとってマイナスだということは、米財界も言っている。 (China ‘prepares to make America pay a price’ over tariffs) (Americans Will Pay the Price for Trump's Toughened Approach with China)
こんご米中の貿易戦争が激化した場合、中国が保有する巨額の米国債を売り始める可能性が増す。中国が経済成長を対米輸出に頼らなくなるほど、中国は米国債を保有する意味がなくなる。内需や一帯一路で使われる通貨はドルでなく人民元だ。中国はドルも米国債も要らなくなる。中国は最近、人民元建ての石油先物市場を開始し、ドル建て一辺倒だった世界の石油取引に殴り込みをかけ始めている。こうした動きも、いずれドルや米国債の地位の低下を招く。米国の金融システムはボロボロで、わずかなきっかけで相場の下落が再開する。 (China Moves To Destroy US Dollar As They Launch The Gold-backed Petro-Yuan) (GLOBAL RESET WITHIN MONTHS)
米政府は、EUや豪州カナダ韓国などを鉄鋼アルミ関税の課税からとりあえず外したが、日本だけは外してもらえなかった。これは、TPP11の主導役などとして少しずつ経済面の対米自立に押しやられている日本に対し、もっと早く経済の対米自立せよとけしかける意味がありそうだ。(対米従属一辺倒の日本側は、そのような見方を拒否する頑迷さだが) (Abe seeks to breathe life into Trump bromance after tariff snub) (Record number of U.S. Marines to train in Australia in symbolic challenge to China)
中国に対してトランプは、台湾問題でも、米国と台湾の政府要員の往来を緊密にする新法を作り、中国を激怒させている。象徴的な中国包囲網として、米国は豪州に派遣する海兵隊の人数も増やしている。対抗して中国は南シナ海で大規模な海軍演習をやっている。経済と安保の両面で米国が中国敵視を続けるほど、中国は、これまでの対米協調路線から離れ、ロシアやイランなど米国抜きの世界体制を希求する諸国との連携を強め、米国覇権体制の引き倒しに協力するようになる。ロシアが英国のスクリパル事件で欧米から濡れ衣的に敵視される中、中国の人民日報は最近、ロシアを礼賛する記事を連続して掲載している。 (Chinese Newspaper: Beijing Should Prepare For War In The Taiwan Straits) (China Applauds Putin's Win, Backs Him On Skripal, Hails China's "Strategic Partnership" With Russia)
北朝鮮の金正恩が訪中して習近平と会談した。これは、米国が北朝鮮敵視をやめるなら金正恩が本気で核廃絶するつもりであることを示している。そうでなければ、習近平は金正恩を北京に招待して歓待しない。覇権放棄策の一つである在韓米軍の撤退を進められるので、トランプは5月の米朝会談で金正恩と和解する可能性が高い。米朝、南北が和解すると、朝鮮半島は米国の傘下から中国の傘下に移動していく。 (North Korea’s Kim, Long a Pariah, Takes Tentative Step Onto World Stage) (China Confirms Xi Jinping, Kim Jong Un Held Talks In Beijing)
これも、CFRが言うところのリベラル世界秩序の崩壊の一つとなるが、それはCFR論文が嘆くような戦争でなく、平和を朝鮮半島やその周辺にもたらす。沖縄の在日米軍も、大幅縮小もしくは総撤退が自然な流れになる。日本は対米自立を迫られる。もう中国を敵視できなくなる。 (Trilateral Japan-China-S Korea summit being planned for May)
G ◆トランプのバブル膨張策
【2018年3月31日】
http://tanakanews.com/180331bubble.php
米トランプ政権は、リーマン危機後に作られたバブル再膨張を防止するドッドフランク法にどんどん抜け穴を作り、サブプライムやコブライトといったリーマン前のバブル膨張を扇動した高リスクな債券や融資の取引を急増させている。いずれ、トランプの任期が終わるころにバブルが大崩壊し、米国の金融覇権が崩れる。その準備のため、トランプは輸入関税を引き上げ、中国など世界の諸国を経済面の米国依存から追い出し、米国覇権が崩れた後も世界経済が回るよう、中国などが非米的・多極型の世界体制を作るように仕向けている。
米国で、08年のリーマン危機の元凶となった「サブプライム住宅ローン債券」の発行が再び増加している。この債券は、借金の返済が滞った経歴がある人々(個人の格付けがプライム以下の人)に対する住宅ローンの債権を集めて証券化したものだ(返済履歴が良い人が「プライム=第一級」で、それ以下の人が「サブプライム=プライム以下」)。延滞履歴がある人へのローンは高リスクなので金利が高く、サブプライム債券は、リーマン危機前の金融バブルの時期、高利回りな投資対象としてもてはやされた。 (Subprime mortgage bonds are making a comeback)
リーマン危機後、サブプライム債券は一時、発行がほとんどゼロだったが、15年ごろから再び増加し、昨年後半から増加傾向が拡大した。昨年1年間で41億ドルの発行高だったが、今年は1-3月だけですでに13億ドル分が発行されている。昨年同期は6・7億ドルの発行であり、1年で倍増した。「サブプライム」という名称はイメージが悪いので、優良な先にしか投資ししない機関投資家にとって投資適格でないという意味で「QMローン(non-qualified loans、非適格ローン)」などという名前もつけられている。 (US subprime mortgage bonds back in fashion)
もう一つ、リーマン危機前のバブル膨張の時代の再来を象徴する最近の事態として「コブライト・ローン」の再増加がある。コブライト(Cov-Lite、Covenant-Lite)は「担保が軽い」という意味で、資金を融資する際の担保物件の評価を甘くしたり、担保の状態の確認作業を軽度にする(担保が曖昧な状態でも貸してしまう)融資や債券発行の形態だ。債務者の担保管理のコストが低い代わりに、債権者にとってリスクが高く金利も高い。平時には、通常とコブライトのローンの破綻率がほぼ同じだが、リーマンのような金融危機が起こり、債務者が返済不能になった時、コブライトだと担保権を行使しても回収額が意外に少なくて債権者が連鎖破綻したりする。 ("Recklessness Prevails" - Covenant-Lite Loan Issuance Hits New Record)
コブライトの融資は、リーマン後に発行が減ったが、16年ごろから再び増え、15年にすべての融資の60%がコブライトだったものが、今では米国の担保つき融資総残高9700億ドルの76%を占めている。この占有率は史上最大で、しかも10か月連続で史上最大を更新している。次に金融危機が起きると、担保権を行使しても債権者が融資を取り戻せずに連鎖破綻する事態が多発するだろう。 (Covenant-Lite Credits Continue To Dominate U.S. Leveraged Loan Market)
サブプライム債券やコブライト融資といった、リーマン前の金融バブルの再来を思わせる金融商品が昨年来増加し続けている最大の原因は、トランプ政権の就任以来、米当局が金融監督を甘くしているためだ。米国ではリーマン危機直後の09年に就任したオバマ政権が、金融界がリスクをかえりみずに投資してバブルの膨張と崩壊を引き起こし金融界自身が破滅する事態を繰り返さぬよう、10年制定のドッド・フランク法などで金融規制を強化した。だがトランプは、オバマ時代に行われた金融規制をすべて撤去すると公言し続けた。 (Wall Street welcomes Trump’s shift on regulation)
米財務省はトランプ就任後、オバマ時代なら当局に咎められた高リスクの取引を金融界が行なっても何も言わない方針を発表した。ドッドフランク法の体制に行政運用上、多くの抜け穴が意図的に作られた。低金利の状況下で利回りに飢えていた金融界は高リスク高利回りの投資を急増し、それがサブプライムやコブライトの再増加につながっている。 (Wall Street welcomes Trump’s shift on regulation)
トランプはドッドフランク法の日々の運用だけでなく、法律の中身を骨抜きにする改定も、就任当初から計画してきた。まず中小の金融機関を法律の適用範囲から除外し、自由に高リスク投資ができるようにする。この手の骨抜きをやると、バブルが膨張して金融危機が再発しやすくなる。トランプ政権内でも、米国覇権の維持を重視する勢力(軍産)はドッドフランク法の骨抜きに反対し、特に経済担当大統領補佐官のゲイリー・コーンが反対していた。 (Cohn resigns from White House | Senate moves forward on Dodd-Frank rollback) (Senate Poised to Ease Dodd-Frank Rules for Most Banks)
コーンは、NAFTAの離脱、鉄鋼アルミへの輸入関税の開始、中国との貿易戦争など、米国覇権の放棄につながるトランプによる自由貿易体制の破壊策の多くに反対してきた。だが今年に入り、トランプが軍産との戦いに勝ち、3月初めに鉄鋼アルミ関税や中国との貿易戦争の開始に踏み切るとともに、コーンは大統領補佐官を辞任した。コーン辞任の直後から、トランプから頼まれた米議会は、ドッドフランク法を骨抜きにする法案の審議を本格化し、3月14日には議会上院で可決されている。金融界は、自分たちの儲けが増えるドッドフランク法の骨抜きに大賛成で、この件で金融界から米議会に多額の献金が行われている。今年の中間選挙で再選されたい議員たちが民主党からも、ドッドフランク法の骨抜きに賛成している。 (With Rollback, Dodd-Frank Is Now Officially A Dud) (Senate votes to roll back parts of Dodd-Frank banking law)
▼バブルを膨張・崩壊させ、大統領の任期が終わるころに米国の金融覇権を破壊して出て行こうとする覇権放棄策
ドッドフランク法が抜け穴だらけになり、金融界はサブプライム債券やコブライト融資といったバブリーな投資を増やしている。これらのバブル膨張で作られた巨額資金は、企業が債券発行した資金による自社株買いなどによって株式相場を吊り上げている。米国の自社株買いは、昨年より2割増しの趨勢だ。これまで先進諸国の株価を吊り上げてきた中銀群によるQEは終わりに向かっているが、代わりにトランプが仕掛けた金融界のバブル膨張が進み、株価の上昇傾向を維持している。コーンの後任として任命されたラリー・クドローは、3月14日に「私はドルを買って金地金を売る」と発言し、即座に金相場が急落した。トランプのバブル膨張は、金相場を引き下げる不正操作も含んでいるようだ。 (This Year's Stock Buybacks Are Already Bigger Than All Of 2009's) (Larry Kudlow: "I Would Buy The Dollar And Sell Gold")
株式や債券の相場の上昇は、政策的なバブル膨張が原因であり、景気が好転しているからでない。米国では賃金上昇が景気好転の証拠だと喧伝されてきたが、実のところそうでない。賃金上昇は、トランプが、それまで放置されてきたメキシコなどからの違法移民の流入を取り締まり、移民が減った分だけ米国の労働者の実質的な総数が減り、企業は従業員の確保が難しくなって賃金を上げざるを得なくなったからだ。ほかに、1人のフルタイムを解雇して2人のパートタイムを雇うと納税額が少なくなるような企業税制が意図的に採られたことも、見かけ上のみの雇用増大をもたらしている。 (American Small Business Workers See Historic Wage Increases Secured by Strict Immigration Enforcement)
米国の実体経済は悪いままだ。レストランの売り上げは2か月連続で減少している。映画の興行成績も、3月は前年同月比28%の大幅下落だった。近年まれに見る悪さだ。小売りは3か月連続の売り上げ減。これも6年ぶりの悪さだ。米国ではクレジットカードの利用も昨年末に増えた後、急減している。飲酒、麻薬、売春など「悪いこと」に米国人が使うお金の総額までが減っている。米国は不況だ。 (Upward Momentum Stalls As Restaurant Sales Slide In February) (Box Office: Hollywood Suffers Worst March Downturn in Recent Memory) (Spending On Hookers, Drugs And Booze Tumbles)
トランプの意図的な金融バブル膨張は、中銀群によるQEの代わりとして出てきたが、QEよりも不完全な金融テコ入れ策である。ドッドフランク法の骨抜きなどによって金融界に対して高リスクな投資を扇動した結果、金融機関は危険な資産を多く持つようになり、相互に信用できなくなり、銀行間の融資の市場金利であるLIBORが上昇し続けている。年初来、銀行間の融資総額も急減した。最近の記事に書いたように、LIBORの上昇は、連動して米連銀が公定歩合(ff金利)を引き上げざるを得ない状況を生み出している。短期・長期の金利上昇は、実体経済の景気の足を引っ張るだけでなく、ローンや債券の金利を上昇させ、サブプライムやコブライトの債務の返済不能、金融危機の発生につながりかねない。 (米銀行間の信用不安) (米国の金融システムはすでに崩壊している)
バブル膨張による資金供給があるものの、株価はいつまた急落するかわからない状態だ。今週から10年もの米国債の金利が下がっており、米国債市場への資金流入が見られる。これは株式市場からの資金流出になりかねない。今年に入り、米国など先進諸国の金融市場は不安定化している。 (Trader: "The Probability Of 10Y Yields Collapsing Is Much Higher Than Most Realize")
バブル膨張による矛盾の拡大は、不動産市場でも起きている。サブプライムやコブライトの拡大は、住宅や商業地の不動産需要を拡大させ、米国各地でリーマン前に似た不動産価格の高騰を招いている。市民が住宅を買えなくなり、家賃が上がり、商業地のテナント料が高すぎて店の儲けを出せない状態が拡大している。マンハッタンの商店街にテナントが入らずゴーストタウンになっている。これはいずれリーマン的な、不動産金融から始まるバブル崩壊につながる。 (Starbucks Chairman: "We Took A Walk On Madison Avenue. It Reminded Me Of The Financial Crisis In 2008") (In Nearly 70% Of US Counties, The Average Worker Can't Afford To Buy A Home)
トランプのバブル膨張策は、近視眼的な人気を保持して再選につなげるための、彼自身の保身策にすぎないと考えることもできる。だが、鉄鋼アルミへの関税や中国との貿易戦争、TPP・NAFTA離脱など自由貿易体制の破壊、同盟諸国との関係の軽視、中東からの足抜け策(シリア、パレスチナ、イラン)など、トランプの覇権放棄策の全体像と合わせて考えると、バブルを膨張・崩壊させて、自分の任期が終わるころに米国の金融覇権を破壊して出て行こうとする覇権放棄策に見えてくる。 (自由貿易の本質とトランプ)
歴史を振り返ると、米国の覇権は、英国やイスラエルといった諜報活動(米国中枢への入り込み)が得意な諸国に牛耳られ続けてきた。英国は冷戦構造を作って米国を支配したし、イスラエルは911事件を機に米中枢に入り込んだ。覇権運営を乗っ取られないようにする究極の手は、米国が世界を単独で支配する覇権構造を壊し、覇権体制を多極化することだ。多くの人が勘違いしているが、覇権争いは単独覇権体制下で起きる。多極化してしまえば、覇権争いもなくなる(BRICSが象徴している)。
ニクソンは金ドル交換停止によって経済面で米覇権を自滅させた後、中国やロシアをテコ入れし、日本やドイツを対米自立させようとした。ブッシュ(チェイニー)は911で覇権をイスラエルに乗っ取られたものの、その後イラク戦争で意図的に自滅して中東覇権の喪失に道筋をつけ、バブルを扇動してリーマン危機を起こし、米国の金融覇権を潰そうとした。トランプは、このブッシュ・チェイニー路線を踏襲している。ブッシュ政権が無茶苦茶をやってくれたおかげで、トランプが無茶苦茶を言うほど、米国の信用が下がり、多極化が進む構図になっている。
トランプは中国からの輸入品に高関税をかけ始めているが、中国はこれに対抗し、石油輸入など自国の貿易決済をドルから人民元に変えていく動きを強めている。米国覇権の外に、非米的な国際経済システムができていく。これは、米国が金融崩壊した後の世界にとって重要な代替システムとなる。中国やロシアなど、より多くの国々が貿易で米国に依存しなくなり、ドルや米国債が必要なくなり、米国債からジャンク債までの金利上昇傾向がこれから進む。こうした流れと同期して、トランプが膨張させた米国の金融バブルが2-3年後に崩壊し始める。金融バブルの再崩壊とともに米連銀がQEとゼロ金利を再開し、米経済はその後しばらく延命するだろうが、トランプの任期末ぐらいに終わりが来る。 (As Trade War Heats Up, China Hints at Early ‘Petro-Yuan’)