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 わ 産経新聞 3/24 ん 公文書改ざん問題 新聞 3/25
 A 冬季オリンピック若者の活躍 B 公文書改ざん問題 新聞 3/26
 C 公文書改ざん問題 新聞 3/28 D 公文書改ざん問題 新聞 3/27
 E 金正恩氏訪中 対話生かす国際連携を F ◆米覇権の転覆策を加速するトランプ
 G ◆トランプのバブル膨張策 H 「核なき世界」日本異論 03/31
 I 安倍内閣ガタガタ 04/05 ※ 
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 04 05 (木) 安倍内閣ガタガタ     自衛隊の統制、厚生労働省

2人の総理大臣経験者で、現在正副の総理大臣の政府権力の行使において前代未聞の醜聞をさらし、それでもけじめをつけないでいます。

戦後においての経験しかないけれど、こんな醜態を見たことはありません。

たとえ少年であったにせよ軍籍をもち、直撃弾で友達を失い、爆撃による負傷者をそのままに軍令によって自分は逃げなければならなかった経験を持った私にとっては、人間性のおぞましい姿をこれほどまでに見せ続けられて黙ってはいられなかった。

どうしてこんな日本になってしまったのか。

戦後になって新たに勉強をし直していた時、それまでの学びの浅かったことを痛切に感じました。 学びの苦労は大変なものでしたが、若いということは今になって思うに自分を作り上げる意欲は衰えを知ることがないほど日々を新たに迎えることができた。 今になってそう回想できます。

若い時の学びについて、宇野という校長先生の着任のあいさつが振るっていたことが今もそのまま頭の一角に残っています。 学生が一番大事にしなければならないことは、第一に学問であります。 第二に大事なことは学問であります。 そして、第三に大事なことは、学問であります。

自分を顕示する姿はなく、控えめな先生だった。 自らは竹の繊維の研究で農学博士の資格を取った方でした。 竹の繊維の弾性は、鋼(ハガネ)の弾性よよリ強いということを突き止めた功績によるものだということでした。

   『学而第一』 それは人にとって大事な心掛けです

私の心の一つの柱はこの言葉によって引き出されたのかわかりませんが、その後の論語の学習の学而第一の意味するものは、いろいろの場面を通して人が社会事象に対して基本的に大事であると思うようになったのです。

現状を見ていて、現状認識のあらましを再検討しなくてはならないことに気づいた。

憲法の再検討、 選挙の方法、 住民の代表者としての義務と責任(全ての議員、公務員)、 情報収集の仕方、 それと歴史事象の認識、 今日的な課題への具体的取り組み

頭の老化などと言ってはいられないのです。




  安倍内閣ガタガタ

ア 陸自日報、昨年3月把握 稲田元防衛相に報告せず「見つからず」答弁の翌月
イ (時時刻刻)陸自日報、1年放置 野党「文民統制利いていない」
ウ 答弁誤り、防衛相認める 「陸自、国際活動教育隊に日報なし」
エ 厚労省、崩れた説明「是正勧告」結局確認 野党「働き方法案批判かわす狙いか」
オ 地銀、金融庁が改革要求 マイナス金利で収益悪化、相次ぐ検査
カ (社説)働き方改革 混迷は政権の責任だ
キ (社説)カジノ規制 矛盾露呈した与党合意
ク (声)政治の圧力に屈しない公務員も
ケ (声)改憲論、不戦を守るためには
コ (耕論)NPO、埋もれてない? 
サ 介護人材の確保、自治体が模索 移乗助けるスーツ、無償貸与
シ 公教育、保護者の思い 朝日・ベネッセ共同調査

▼1面
ア 陸自日報、昨年3月把握
     稲田元防衛相に報告せず 「見つからず」答弁の翌月

     2018年4月5日05時00分
     https://digital.asahi.com/articles/DA3S13437061.html

 陸上自衛隊がイラクに派遣された際に作成した活動報告(日報)が見つかった問題で、小野寺五典防衛相は4日、陸自が昨年3月に日報の存在を把握していたと発表した。南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報問題で特別防衛監察を実施していた時期だが、当時の稲田朋美防衛相らにも報告していなかったという。小野寺氏は「大変遺憾」として、同日付で調査チームを設置した。▼2面=1年放置、4面=小野寺防衛相の発言要旨など

 昨年2月の稲田氏の国会答弁で「見つけることはできなかった」としたイラク派遣の日報。その直後の3月に文書を把握しながら、陸自が統合幕僚監部を通じて小野寺現防衛相に報告するまで1年も経過したことになる。シビリアンコントロール(文民統制)の観点から、一層深刻な事態が明らかになった。野党は一斉に批判しており、5日の参院外交防衛委員会などで厳しく追及する方針だ。

 発端は昨年2月20日、民進党(当時)の後藤祐一氏が南スーダン日報問題に関連して、イラク派遣の日報について質問。稲田氏はこの際、存在しないとする答弁をした。稲田氏は同月22日に事務方に探索するよう指示。陸自研究本部(研本、現・教育訓練研究本部)はいったん「保管していない」と回答したが、3月27日になって研本の外付けハードディスクから、イラクの日報が発見された。少なくとも研本の数人が当時、日報の存在を認知していたという。

 小野寺氏は「研本総合研究部教訓課長(現・訓練評価部主任訓練評価官)以下がその存在を確認していたにもかかわらず、少なくとも稲田氏をはじめ、政務三役、内部部局、統合幕僚監部には報告がなされていなかった」と説明した。

 この時期、南スーダンの日報問題で、3月17日から特別防衛監察が始まっていた。小野寺氏は教訓課長が「南スーダンの日報について調べがかかっているので、イラクの日報については報告する必要があるか認識していなかった」と述べていることも明かした。

 小野寺氏は今月2日にイラクの日報の存在を公表し陳謝。この段階で防衛省は研本が日報の存在を把握した時期は不明としていた。3日夕に教育訓練研究本部長から陸上幕僚長に報告があり、小野寺氏が知ったのは4日午前中だった。防衛省は同日、当初はのべ376日分としていた日報は408日分と訂正した。

 調査チームは大野敬太郎防衛政務官をトップに職員から聞き取り調査を行う。

▼2面
イ (時時刻刻)陸自日報、1年放置 野党「文民統制利いていない」
     https://digital.asahi.com/articles/DA3S13437017.html

【】イラク派遣時の日報発見と公表までの経緯

【】陸自イラク派遣と南スーダンPKOの日報問題

 存在していないとしていた陸上自衛隊のイラク派遣時の活動報告(日報)が見つかった問題をめぐり、新たな事実が明らかになった。陸自内部では昨年3月に見つかっていたが、当時の稲田朋美防衛相ら防衛省幹部に報告されず、1年以上にわたり伏せられていたという。ずさんな文書管理が相次いで発覚したことに政権は戸惑い、文民統制(シビリアンコントロール)が問われる事態だと野党は批判を強めている。▼1面参照

 「大きな問題であり、大変遺憾だ」

 4日夜、東京・市谷の防衛省玄関前。記者団の前に姿を現した小野寺五典防衛相は、日報が昨年3月下旬に陸自内で見つかっていながら、当時の稲田朋美防衛相らに報告されていなかったことなどを語り始めた。

 過去の国会答弁で存在を否定していた、イラクに派遣された陸自部隊の日報が見つかったと公表したのは今月2日。それからわずか2日後に、昨年3月に把握していながら1年以上も隠蔽(いんぺい)していた疑いが浮上し、与党からは厳しい意見が相次いだ。

 公明党の山口那津男代表は4日、BS11の番組で「国民を欺く、その代表である国会を欺くことだ」と批判。自民党執行部の一人も「言語道断。与党も野党も関係なく、厳しくやらないといけない」と語った。安倍晋三首相の周辺は「政権として防衛省がグリップできていない。文民統制ができていないことを露呈している」と漏らした。

 稲田氏は4日夜、朝日新聞の取材に「驚きとともに、怒りを禁じ得ない。上がってきた報告を信じて国会で答弁してきたが、こんなでたらめなことがあってよいのか」とコメントした。

 一方、公文書をめぐり次々とずさんな対応が判明し、野党は政権に対して批判のボルテージを上げる。

 立憲民主党の辻元清美国会対策委員長は記者団に「シビリアンコントロールが利いていない事態だ。安倍政権は財務省の公文書改ざんと防衛省の日報隠蔽、この二つでアウト、レッドカード(退場)だ」と強調。共産党の小池晃書記局長は「政権による統治の正当性が揺らぐような大問題だ。最も強大な組織である自衛隊で長期にわたり情報隠蔽が行われてきたというのは、国家のあり方そのものに関わる」と訴えた。(藤原慎一)

 ■当時、PKO日報で監察中

 「若い頃から『悪い報告ほど少しでも早く上司に報告しろ』と教育を受けてきた。『見つかりました』と早く報告すればいい話。なぜ『報告しなかった』となるのか」。4日夜、陸上自衛隊の幹部は、うめくように話した。

 将来の海外派遣に向けて、陸自研究本部(研本、現・教育訓練研究本部)には、過去の海外派遣に関する記録や資料がすべて保管されている。昨年2月20日、稲田朋美防衛相(当時)が国会でイラク派遣当時の日報について「見つけることはできなかった」と答弁。その後、2月中旬から3月上旬にかけて、研本内でも捜索が続けられたが、3月10日までに陸幕に「(研本には)保管されていない」と回答していた。

 一方、2016年12月、「(陸自では)廃棄した」とされていた南スーダンPKOに関する日報の電子データが統合幕僚監部で見つかり、防衛省は昨年2月に統幕で見つかった日報を公表。同3月15日、南スーダンPKOの日報のデータが陸自にも保管されていて、公表する過程で「(陸自のデータが)消去された疑いがある」とNHKが報道。稲田氏は翌16日、南スーダンPKOの日報の保管状況について特別防衛監察を指示したと表明した。小野寺氏によると、研本内でイラク派遣当時の日報が見つかったのは、この11日後の昨年3月27日。当時、研本も特別防衛監察の対象だった。

 陸幕幹部は「南スーダンの日報問題への対応に追われていたのは事実だが、稲田氏がイラク派遣の日報についても国会で追及を受けていたのは陸幕も研本も分かっていた」と話す。

 陸自の混乱に防衛省内局の官僚は冷ややかだ。「南スーダンの日報に焦点が当たっていた時期だから、イラク派遣の日報発見は隠そうとしたのではないか」(土居貴輝、古城博隆)

 ■識者ら「けじめつけぬ姿勢、隠蔽の要因」

 防衛省の日報問題を追及してきたジャーナリストの布施祐仁(ゆうじん)さんは「防衛相が代わった際に『再発防止を徹底する』と宣言したのにもかかわらず、その後も日報の存在を黙っていた形になる。南スーダンの日報を隠蔽(いんぺい)した反省はなく、不信感が強まった」と話す。

 南スーダンの日報問題で防衛相を辞任した稲田朋美氏について触れ、「自身の関与がうやむやのまま辞めた。トップがけじめをつけない姿勢も隠蔽を続けてきた要因になったのではないか」と指摘した。

 NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「防衛相が日報が見つかったと会見した時点でも報告していなかったことになる。相当に悪質な事案だ」と話す。財務省による公文書改ざんなど、政府全体で文書管理や情報公開を巡る問題が起きていることを指摘し、「自分たちの立場を守るために組織として必要な情報を都合良く廃棄したり、隠したりする。そんな体質が政府全体に広がっているとすれば深刻な問題」と話した。(中山由実、岡戸佑樹)

▼4面
ウ 答弁誤り、防衛相認める 「陸自、国際活動教育隊に日報なし」
     https://digital.asahi.com/articles/DA3S13437010.html

 イラクに派遣された陸上自衛隊の日報問題に絡み、小野寺五典防衛相は4日、昨年2月の国会答弁で「陸自の国際活動教育隊では、保管していない」と説明していた国際平和協力活動に関する日報が実際には保管されていたと発表した。▼1面参照

 問題の答弁は、昨年2月17日の衆院予算委員会で、日報の開示を求めた民進党(当時)の辻元清美氏に対する稲田朋美防衛相(当時)の答弁。防衛省によると、ゴラン高原派遣輸送隊、ハイチ派遣国際救援隊を含む6部隊に関する文書を把握したという。今回のイラク派遣時の日報問題をめぐる統合幕僚監部への文書管理一元化の過程で見つかり、小野寺氏は4日に報告を受けたという。

 ■防衛相発言(要旨)

 小野寺五典防衛相が4日、防衛省で記者団に説明した主な内容は次の通り。

     ◇

 研究本部(研本、現・教育訓練研究本部)の自衛隊の日報については、昨年2月の国会での質問を受け、同22日に稲田朋美防衛相(当時)から事務方に探索指示が出された。研究本部教訓センターでも探索されたが、イラクの活動の日報は保管していない、と(同年)3月に回答した。

 他方、(同年)3月から開始した南スーダンPKOの日報問題に関する特別防衛監察の過程で、同27日に研本において、前回確認していなかった外付けハードディスク(HD)から、イラクの活動の日報が発見されていたことがわかった。

 しかし、研本教訓センター長以下が、その存在を確認していたにもかかわらず、少なくとも稲田防衛相をはじめ政務三役、内部部局、統合幕僚監部に報告されていなかった。

 大きな問題で、大変遺憾に思う。陸上自衛隊から稲田大臣に対し、このような重大な情報がなぜ上がっていなかったのか、このような情報がどの範囲まで共有されていたのか調査する必要がある。本日、大野敬太郎政務官に対し調査チームを立ちあげ、早急に調査するように指示した。調査により事実関係が明らかになったところで厳正な措置も含め、適切に対応したい。

 (陸自の組織的隠蔽の有無は)大野政務官を中心にしっかり調べてもらう。うみは出し切ることが一番大事だと思う。

▼4面 2018年4月5日05時00分
エ 厚労省、崩れた説明
     「是正勧告」結局確認 野党「働き方法案批判かわす狙いか」

     https://digital.asahi.com/articles/DA3S13437007.html

【解説】野村不動産への特別指導をめぐる経緯と疑問

 裁量労働制を違法適用していた野村不動産に対する特別指導の経緯の説明をかたくなに拒んできた厚生労働省。異例の特別指導の前に、労働法令違反による是正勧告があったことが改めて確認された。是正勧告のきっかけは男性社員の過労自殺だった。異例の対応には、働き方改革関連法案に盛り込む予定だった裁量労働制の対象拡大への批判をかわす狙いがあったのか。野党は一段と追及を強める構えだ。

 厚労省はなぜ、東京労働局長の記者会見で野村不動産への是正勧告に言及したことを認めなかったのか。2016年9月、野村不動産の50代の男性社員が過労自殺し、特別指導の公表と同じ昨年12月26日に労災認定された。東京労働局が同社の労働実態の調査を始めたきっかけは、男性の遺族が昨春に出した労災申請だった。朝日新聞は今年3月4日、こうした事実を初めて報じた。

 是正勧告の公表を認めると、そのきっかけに社員の過労自殺があり、過労自殺や是正勧告について加藤勝信厚生労働相に報告していたかどうかも明らかにするよう迫られる。加藤氏は同5日、特別指導の公表時点で過労自殺の事実を知らなかったと取れる内容の国会答弁をしており、この答弁と齟齬(そご)をきたさないように、是正勧告の公表を伏せているのではないか――。野党議員はこうした疑念を深め、追及を続けてきた。

 勝田氏は昨年12月25日、同社の宮嶋誠一社長を呼んで特別指導。翌26日に記者会見で公表した。安倍晋三首相が「働き方改革国会」と名付けた今国会の開会直前だった。異例の公表について野党は、働き方改革関連法案に盛り込む予定だった裁量労働制の対象拡大への批判をかわす答弁の材料にしようとする狙いがあった可能性もあるとみている。

 ■特別指導は異例公表

 厚労省は勝田氏による宮嶋社長への指導と、その事実の公表を合わせて「特別指導」と呼んでいる。特別指導は電通に続いて過去2例目で、記者会見での公表は初めてだった。特別指導の手続きを定めた規定は厚労省内に存在せず、局長の判断で行われたという。決裁文書も作られていない。

 2月20日の衆院予算委員会で、加藤氏は「野村不動産をはじめとして、適切に運用していない事業所等もありますから、そういうものに対してしっかり監督指導を行っている」と答弁。違法適用を取り締まった具体例として同社への特別指導を挙げ、裁量労働制の拡大が過労死を招くと批判する野党の質問をかわした。

 厚労省は、労働法令違反で是正勧告をした企業名も、過労死や過労自殺の労災認定の事実も原則として公表しない。しかし、野村不動産については企業名を公表する一方で、過労自殺の労災認定は原則通り非公表とした。野党は「特別指導だけを公表し、都合の悪い過労自殺は隠している」として強く反発。厚労省に経緯の説明を求めてきた。

 ■自殺知っていたか

 最大の焦点は、特別指導を公表した時点で加藤氏が過労自殺の事実を知っていたかどうかだ。加藤氏が過労自殺を知りながらそれに触れず、裁量労働制の乱用を取り締まったと国会で答弁したなら「政治的責任は免れない」(立憲民主党の長妻昭代表代行)ためだ。

 厚労省は一貫して説明を拒み続けてきた。野村不動産自身が認めている労災認定の事実さえ、厚労省は「個人情報に関わる」としていまだに認めていない。

 厚労省は先月28日、昨年11~12月に加藤氏が特別指導について事前報告を受けた際の資料を国会に提出した。だが、大半が黒塗りで、新たな疑問が生じた。東京労働局が記者会見で公表したはずの是正勧告について全く明かさず、黒塗りにしているのはおかしいのではないかという疑問だ。

 野党は、「これまでの経緯」と題された黒塗りの部分に、野村不動産への是正勧告について記されているのではないかと追及。「黒塗りをやめて開示すべきだ」と要求したが、厚労省は「是正勧告を認めた発言はない」と主張し、要求を突っぱねてきた。だが、東京労働局の会見録が国会に提出され、厚労省の主張は崩れた。(千葉卓朗、贄川俊)

 ■<視点>信頼揺らぐ

 野村不動産への特別指導について厚生労働省が苦しい説明を強いられている。

 特別指導のきっかけが過労自殺だったと報道されたが、厚労省は明らかにしていない。是正勧告したことすらまだ認めていない。

 個別の過労死事案や是正勧告は非公表とするのが原則だ。ほかの調査への影響や個人情報の観点などを理由にしている。

 ただ、「是正勧告を認めた発言はなかった」と強調すれば強調するほど今回の特別指導で企業名を公表したことの異例さが浮かび上がる。特別指導は過去2例目で、発表したのは初だ。公表は「恣意(しい)的だったのではないか」との疑いが深まる。

 6日にも閣議決定される働き方改革関連法案には労働時間の規制強化も緩和も盛り込まれている。会社を取り締まる権限を持つ労働行政への信頼が揺らいだままでは、法案審議の前提が崩れてしまう。(編集委員・沢路毅彦)

▼9面
オ 地銀、金融庁が改革要求 マイナス金利で収益悪化、相次ぐ検査
     https://digital.asahi.com/articles/DA3S13436943.html

【説明】金融庁は地銀に事業モデル見直しを迫る

 金融庁が、地方銀行の事業見直しを促すための異例の立ち入り検査を行っている。日本銀行のマイナス金利政策で貸出金利が低下し、従来の融資ビジネスの収益は厳しい。それでも人材不足などで、企業の経営支援などに軸足を移せない地銀は多く、金融庁は経営体制の改革を強く求める。

 昨秋、西日本の地銀に、金融庁の精鋭検査官チームが入った。幹部らとのやり取りで重点を置いたのが「今のビジネスモデルが持続できるかどうか」。この地銀は、貸し出し収益が減少傾向なのに、巨費をかけ本店を建て替えた。金融庁幹部は「経営のあり方を抜本的に見直すべきでは」と疑問視する。

 国内の金融機関は、バブル崩壊と金融危機で巨額の不良債権を抱えた。金融庁の厳しい検査と不良債権処理の後、貸し出し債権をマニュアルに沿って管理する経営手法が定着。リーマン・ショック後も目立った不良債権問題は起きていない。

 それでも金融庁は「金利の急上昇やリーマン・ショック級の危機が起きれば、体力のない銀行はすぐに健全性の問題になる」(幹部)とみる。懸念するのは人口減の影響が直撃する地域金融機関だ。金融庁はこの半年で、少なくとも七つの地銀の検査に入った。

 同庁の分析では、全国106地銀のうち半分超が、2017年3月期に貸し出しなどの「本業」で赤字に陥った。同庁は担保に依存しない融資や貸出先の新規事業支援、事業再生などの取り組みを促すが、既存の貸し出しや有価証券の運用益に頼る地銀も多い。

 金融庁の森信親長官は1月、地銀頭取らに「ビジネスモデルの持続性が乏しい銀行には、改善にむけた対話を問題が解決するまで続ける」と改革を迫った。

 このままでは地銀の経営悪化を止められず、金融庁の責任も問われかねない。同庁幹部は「金融庁が経営について再三警告したことをしっかり記録し、後世の検証を可能にする」と、今回の検査の狙いを話す。

 ■危機備え事前予防

 異例の検査の背景には、金融危機の教訓がある。

 「大野木(克信)さんや窪田(弘)さんが悪かったわけじゃない」。今回の検査を検討してきた幹部の一人は語る。

 両氏は1998年に経営破綻(はたん)した日本長期信用銀行と日本債券信用銀行の元経営者(いずれも故人)。不良債権処理に力を尽くしたが、破綻後は粉飾決算の罪に問われ、逆転無罪となるまで長い歳月がかかった。

 この金融庁幹部は「2行の経営は既におかしくなっていた。それ以前の経営に問題があった」。こうした反省から、昨秋から「事前予防型」の検査が始まった。別の金融庁幹部は「目先の健全性ばかりを問題にした旧大蔵省時代の検査を反面教師にした」という。

 地銀に対し、将来の経営悪化の可能性を指摘することで、基盤強化のための経営統合など、再編を促す狙いもあるようだ。

 しかし、まだ経営が急速に悪化もしていない中、「役所」から経営指導される地銀界からは不満も漏れる。ある関係者は「銀行がリスクをとって融資をすると言えば聞こえがいいが、回収できない可能性がある融資を当局が勧めているようだ」と言う。「役人に商売のことが分かるのか」との声もある中で、「事前予防型」検査の効果が出るかは見通せない。(榊原謙)

 ■金融危機後の金融界の主なできごと

 1998年 金融監督庁(現金融庁)発足、日本長期信用銀行と日本債券信用銀行が経営破綻
   02年 不良債権処理を加速させる「金融再生プログラム」(竹中プラン)公表
   03年 りそなホールディングスが実質国有化
   05年 三菱UFJフィナンシャル・グループが発足
   08年 リーマン・ショック
   15年 森信親氏が金融庁長官に。地銀改革を迫る
   16年 日銀がマイナス金利政策導入
   17年 地銀の半数は融資など本業で赤字、との分析を金融庁が公表

▼14面
カ (社説)働き方改革 混迷は政権の責任だ
     https://digital.asahi.com/articles/DA3S13436897.html

 都合のよいことばかり強調し、不安や懸念には耳を傾けない。そんな政府の不誠実な態度が問題を引き起こし、働き方改革は混迷に陥っている。安倍首相はそのことを認識すべきだ。

 国会が開かれる直前の昨年末、厚生労働省東京労働局は、裁量労働制を悪用していた野村不動産への特別指導を公表した。しかし、なぜ異例の特別指導に至ったのか、政府は詳しい経緯の説明をかたくなに拒んでいる。

 あらかじめ定められた時間を働いたとみなす裁量労働制の対象拡大や、労働時間規制を外す高度プロフェッショナル制度の創設は、長時間労働を助長し、過労死を増やすのではないか。そんな懸念に対し、首相は指導・監督体制を強化してきちんと取り締まると、繰り返し説明してきた。野村不動産への特別指導はその先取りとなる事例と位置づけていた。

 だが同社では、本来は対象ではないのに裁量労働制を適用された社員が過労自殺していた。特別指導の公表と同じ日に労災認定されたが、そのことは公表されなかった。

 異例の特別指導も、実は犠牲者が出た後だったのに、それを伏せて成果だけをアピールしたのではないか。

 政府は今も、会社側が認めている労災認定すら認めていない。国会の求めで提出した特別指導前の厚労相への報告資料は、大半が黒塗りだ。

 記者会見で経緯をただされると、東京労働局長からは「なんなら皆さんのところ(に)行って是正勧告してあげてもいいんだけど」との発言まで飛び出した。恣意(しい)的な権力の行使を疑われ、労働行政への信頼を揺るがしかねない。

 こんな対応を続ける政府の説明に、どれだけの国民が納得するだろうか。

 今国会ではすでに、働き方改革をめぐって首相は一度、答弁を撤回している。裁量労働制には労働者にも利点があると強調しようと、比較のできないデータを並べたことが原因だった。その後、次々と見つかったずさんなデータは、法案づくりが結論ありきで進んだことを露呈した。

 働く人たちを守るための残業時間の上限規制などの改革と、経済界の求める規制緩和を、一緒に進めようと無理を重ね、ひずみが生じたのではないか。

 「信なくば立たず」。国民の信頼がなければ政治は成り立たないといった意味で、首相は折にふれ、この言葉を使う。今こそかみしめてほしい。

▼面14
キ (社説)カジノ規制 矛盾露呈した与党合意

 これではギャンブル依存症が増える不安は消えない。カジノを含む統合型リゾート(IR)の実施法案について、与党の協議が決着した。政府は今国会での成立をめざすが、到底受け入れられるものではない。

 依存症患者を出さないためにどうすべきか。協議にはその大事な視点が欠けていた。

 たとえば日本人の入場料だ。自民が5千円以下、公明が8千円以上を主張し、結局、6千円に落ち着いた。シンガポールの8千円より安い。国民1人当たりの国内総生産(GDP)を踏まえたものだというが、どれほどの説得力があろうか。

 政府の当初案の2千円に比べれば抑止効果があるとしても、安倍首相が述べた「世界最高水準の規制」には遠い額だ。

 IRの設置数にも懸念がある。3カ所で合意したが、最初の認定から7年後に見直すとされていて、増える可能性がある。そうなれば依存症の増加への懸念も高まる。16年に成立したIR推進法の付帯決議に「厳格に少数に限ること」と明記されたのを忘れてはならない。

 ゆるすぎる、との指摘があった入場回数の制限「7日間で3回、28日間で10回まで」は、政府案のままだった。両党が法案の国会提出を優先し、とにかく着地点を探った印象だ。

 政府は30年に訪日外国人旅行者を6千万人、消費額を15兆円とする目標を掲げる。カジノはその目玉だという。だが入場規制などを厳しくすると、海外のカジノ運営業者にとって進出のうまみは薄れる。「世界最高水準の規制」が看板倒れになる矛盾は、当初からあったのだ。

 70年代にカジノが合法化された米ニュージャージー州のアトランティックシティーでは、大型カジノ施設ができた後、競争激化で閉鎖が相次いだ。街の活性化につながらず、貧困率も改善しなかった。韓国東北部のカジノ「江原(カンウォン)ランド」周辺では、地元住民の破産が増え、教育環境が悪化、人口が減少した。

 人の不幸を前提とするカジノが、浮揚策として本当にふさわしいか、誘致に熱心な各自治体は冷静に考える必要がある。

 与野党ともに、ギャンブル依存症対策の法案を準備している。急ぐべきはこちらの審議だ。ただしそれは、カジノ実施法案の露払い役ではない。

 まずパチンコや競馬、競輪など、現にある依存症の実態を明らかにして対策を練る。その上で、推進法制定の際にしっかり審議されたとは言い難い、カジノの必要性そのものについて、改めて議論を深めるべきだ。

▼面14
ク (声)政治の圧力に屈しない公務員も
     無職 石塚義夫(埼玉県 83)

 政治家の不当な介入に加担させられたりするので、公務員を目指すのはやめてはどうかという投稿「公務員を目指す君たちに告ぐ」(3月26日)を読んだ。

 だが、41年間、国税局と税務署に勤務した私の経験から言えば、政治家の横車に屈したり、上司の心を忖度(そんたく)したりする者ばかりではない。本省の財務事務次官や局長まで昇進する東大出身者のことは知らないが、署長になれれば良いほうのノンキャリアには、骨のある者が少なくない。国税局や税務署の職員の拒絶にあい、立腹した政治家もいるはずだ。

 私自身、税務署の統括国税調査官(課長級)の時、首相や蔵相の経験のある人から税法をゆがめるような要請があったが、署長と相談して丁重に拒否した。私は署長にはなれずに退職したが、正論に生きる私は、出世など眼中になかった。

 私と同じ考えの人は一般職の公務員には少なくないと思う。

 だからこそ、日本の行政の質は、先進国にふさわしいレベルに保たれているのだと思う。

 それを上から押しつぶす政治的な圧力が続いていないか。キャリア官僚がそれに屈していないか。気になるところだ。

▼14面
ケ (声)改憲論、不戦を守るためには
     高校生 山田杏実(岐阜県 15)

 憲法改正が現実味を帯びてきた。安倍晋三首相は2020年の新憲法施行を目指している。

 改憲の記事を見るたびに思い出すことがある。私が小学6年生の時のことだ。国語の授業で「平和な世の中にするには」というテーマでスピーチをした。私は「憲法9条を守る」というテーマを選んだ。スピーチ後、何人かのクラスメートに「憲法改正なんかされない」「簡単に改正できないような憲法になっている」と言われた。私は説得力のない反論しかできなかった。でも心のどこかで改正されるに違いないと、不安な気持ちがした。理由は自分でもよく分からないのだが。

 あの日から3年以上がたった。私は今春、高校生になり、20年には18歳になる。もし、国民投票で投票することになれば、改憲で未来がどう変わるのかをきちんと見極めたい。

 戦後73年、不戦だったのは9条のお陰だ。日本の宝だ。それを変えても今後何百年も不戦を保てるという人は、国民の多くが分かるまで説明してほしい。

 今も戦争の足音が近づいている。先人たちが警鐘を鳴らしている。今度は聞き逃してはいけない。必ず。

▼15面  
コ (耕論)NPO、埋もれてない? 
     鬼澤秀昌さん、水無田気流さん、橋本努さん

 20年前の法律の成立とともに、官でも民でもない「公」の担い手と脚光を浴びた、NPO。社会のさまざまな課題が増えるなか、その存在感は。埋もれてはいませんか。

(いちからわかる!)NPOが「アドボカシー」って?

 ■資金調達、青写真描く力を 鬼澤秀昌さん(弁護士)

 大学時代、だれかの善意に頼ることなく持続的に社会貢献できるところに魅力を感じてNPO活動に飛び込み、卒業後も教育支援の団体に1年勤めました。いまは弁護士として、NPOの法務や運営の支援にかかわっています。

 さまざまな団体をみて感じるのは、NPOは成長期を迎えている、ということです。自分が社会の役に立っているという充足感や、人の役に立つことに幸せを感じ、それほど稼げなくてもこの世界で働こう、と考える若者は増えていると思います。

 いまの時代は、社会にひそむ課題が深刻になっています。たとえば子どもの貧困や教育格差の問題では、学校や児童相談所などが頑張ってはいるものの、抜け落ちてしんどい思いをしている子どもたちが少なくありません。

 大企業に就職すれば一生安泰ではありませんし、停滞する社会でお金を稼げば稼ぐほど、幸せとも思わない。社会に貢献しようと公務員になっても、取り組みたい社会課題を担当できるとも限りません。

 ならば、しんどい人たちを支えてよりよい社会をつくりたい、とNPOを選んでいるのではないでしょうか。社会課題に取り組む団体の平均年収は、中小企業と同じか少し上くらいとの調査結果もあります。

 NPO法の成立から、20年がたちました。認知度は高まりましたが、日本ではまだまだ小規模で、資金難にあえいでいる団体が少なくありません。原因の一つは、資金などが十分でないことを前提に、事業を考えていることにあると思います。

 「この課題を解決するためには、このくらいの金額が必要だ」というように、大きな青写真を描く力をつけていく必要があります。多額の資金を短期間に調達して成長するベンチャー企業ではありませんが、きちんと資金規模と目的を説明できるようになれば、調達しやすくなり、要員を増やすこともできるはずです。

 来年からはいわゆる休眠預金活用法に基づき、年500億円ほどの休眠預金の一部が、NPOなどの公益活動支援に使われる予定です。しっかりした事業計画をつくって資金を獲得し、成長軌道に乗せていかねばなりません。

 だからといって、やみくもに事業を拡大する必要はありません。

 NPOの本来の役割は、民間企業や行政だけでは解決できない社会課題を、市民の力で解決することです。幅広い人を巻き込み、解決に向けた第一歩を踏み出すことができるよう、できるだけ多くの場を提供する。こうした取り組みが成長していけば、社会全体の解決する力が強くなり、課題の解決につながると考えます。(聞き手・磯貝秀俊)

     *

 おにざわひでまさ 1987年生まれ。企業法務系の法律事務所に勤務した後、2017年に独立。いじめ問題など教育分野も手がける。

 ■脱行政頼み、横の連携カギ 水無田気流さん(社会学者・詩人)

 NPOの活動の眼目は本来、子育て支援やまちづくりなど、行政や営利目的の企業では届かない、細かな住民ニーズをくみ上げていく営みです。基盤をなすのは、暮らしの場を共有する人たちの興味関心を念頭に置き、ともによりよい地域社会をつくっていこうという生活者視点の活動です。

 そして、地域社会の担い手としての自負心、すなわち「シビックプライド」を持って解決に動いていくことであり、まさに住民意識が現実に働きかけた結果ともいえます。

 ただ、残念ながら地域参加に関しては、行政に依存する住民の体質を垣間見ることがあります。たとえば、各地の市民フォーラムなどに参加すると、福祉ケアの充実などを行政に求める陳情合戦が繰り広げられている場面を見かけることがありますが、これなどはその典型でしょう。

 住民が地方自治体に依存し、自治体は交付金を目当てに中央に頼る、という入れ子構造が透けて見える場面です。住民の多くが「消費する大衆」にとどまっているために、なにか問題があれば行政にクレームをつけるといった姿勢になってしまっている。そこに、シビックプライドは見えません。

 また、せっかく立ち上げても、5年前後で活動を終えるNPOが多いとも耳にします。どうして続かないのでしょう。

 多くの団体が、慢性的な資金不足を抱えています。行政の補助金頼みでは、厳しい。資金難のため、社会人経験があって専門技術を持っているメンバーが、得意分野でほとんど無償の作業に携わることがままあります。結局、優秀な人材が行政の安価な下請けに使われてしまっています。これでは、活動が長続きしません。

 では、資金を確保するために、経営に明るく補助金制度にも詳しい元会社役員のような人を連れてくればいいかというと、そうでもありません。東京都三鷹市で活動するNPO法人「子育てコンビニ」の小林七子代表理事は「メンバー間で問題意識を共有し、信頼関係で結ばれていなければ、組織がばらばらになってしまう」と話します。人材確保と信頼関係構築とのバランスをとりながら、財政基盤を確立していく必要があります。

 同じ課題で活動する団体間の横のつながりを強めることも、必要でしょう。他のグループの優れた活動ノウハウを取り入れるのはもちろん、課題を共有して行政に制度の見直しを求めていくうえでも連携することが大事です。NPOを支援するNPOや行政の力も借りながら、「信頼」を中軸に置いた関係を深化させていくことが、求められています。(聞き手・磯貝秀俊)

     *

 みなしたきりう 1970年生まれ。国学院大教授。詩集に「音速平和」、著書に「『居場所』のない男、『時間』がない女」。

 ■「公共を担う」、育った20年 橋本努さん(北海道大学教授)

 NPOの活用や「新しい公共」など、政府機能を中間集団に担ってもらう発想は、1970年代の「新保守主義」から生まれたといえます。

 米国の新保守主義、つまり「ネオコン」は、自国第一主義の外交政策というイメージです。しかし国内政策では、自発的に公の役割を担う精神や道徳性を強調し、ナショナリズムと結びつけて、NPOの活動を後押ししました。

 英国では、79年に誕生したサッチャー政権がNPOを推進します。新自由主義と言われますが、「ビクトリア朝の美徳の再興」を訴え、人々の道徳や公共心を動員できると考えた点では、新保守主義的でした。

 NPOの活用は、政府の財政危機を救うために人々の公共心を導入するという保守派も、政府に任せず市民が自発的に公共を担うべきだという急進的な左派も、賛成できた。だから広まりました。

 活用の仕方は、アウトソーシング型と社会的起業型に大きく分けられます。アウトソーシング型は、政府機能を低コストで委託します。体育館運営などが典型で、新自由主義や「小さな国家」と親和性が高いです。

 社会的起業型は、環境保全やまちづくりなどの分野に多く見られます。社会的起業ができる人に行政が助成金を出したり、期限付きで公務員として雇ったりする。こうしたモデルは「社会的投資国家」と呼ばれ、「大きな国家」の方向性のひとつです。たとえばフィンランドでは、NPOの社会的起業家が地方議員として政治にかかわる例も見られます。

 日本のNPOは、多くはアウトソーシング型でした。札幌で初夏に行われ、大きな観光資源になっている「YOSAKOIソーラン祭り」のように、社会的起業型の活動が育てていったものもありますが、当初は少数でした。

 鳩山政権が「新しい公共」を打ち出したとき、政策の目玉は寄付優遇制度の拡充でしたが、寄付文化はすぐには根付きませんでした。私は、日本も社会的投資国家の方向に向かうべきだと考えます。

 就労支援や職業訓練などへの社会的投資を通じて、人々を包摂し、経済発展につながる社会づくりをめざす。「投資」を軸にしたリベラルの再編が必要で、その投資の対象として、NPOがある。

 法成立後の20年間で、日本での「公共」の意味合いは大きく変わりました。かつては、市民の公共への参加は、行政をチェックするオンブズマン的な役割でした。それが「担う」側へと変化しました。この変化に日本人は適応し、実践してきました。NPOに必要とされる先駆性や柔軟性、社会的起業家精神は、着実に育ってきたといえるでしょう。(聞き手・編集委員 尾沢智史)

     *

 はしもとつとむ 1967年生まれ。専門は経済思想。著書に「帝国の条件」など。シノドス国際社会動向研究所所長も務める。

▼25面
サ 介護人材の確保、自治体が模索 移乗助けるスーツ、無償貸与
     https://digital.asahi.com/articles/DA3S13436937.html?ref=pcviewer

 団塊の世代がすべて75歳以上になる2025年に向けた介護保険制度の課題は何でしょうか。4月の介護保険料見直しにあわせ、朝日新聞が主要74自治体にアンケートしたところ、約3割が「介護人材の不足」を挙げました。自治体の現場では、介護ロボットの活用や外国人の確保など模索が続いています。(高橋健次郎)

 ■千葉市

 千葉市は、施設の介護職員らが体の不自由なお年寄りをベッドや車いすに移す際に使う介護ロボットの移乗用スーツを、今年度から事業者に無償で貸し出す。体の動きを助け、大人でも楽に持ち上げることができる。

 介護職員が辞める理由の一つが腰痛だ。市の担当者は「スーツの利用で腰痛で辞める人を減らしたい。貸し出すことで使い勝手を知ってもらい、普及につなげたい」と話す。市は企業から有償で借りることにしており、具体的な機種や台数は今後詰める。

 千葉市の75歳以上の人口は、25年度に16・9万人になると見込まれ、17年度と比べると1・5倍になる。このため、介護が必要な高齢者の伸び率に現場の人材確保が追いつかず、約4千人が足りなくなるとみる。

 千葉市花見川区の介護老人保健施設「ゆうあい苑」では、16年に移乗用スーツ1台を取り入れた。厚生労働省が約50億円かけ、全国の事業所の介護ロボット導入を補助した事業を活用した。約40人の職員のうち、半数以上が腰痛を訴える。実際に使っている職員は「体を持ち上げるときに、腰への負担が減る」と話す。ただ、移乗用のスーツは着脱に時間がかかったり、動きづらかったりすることから、一度は取り入れても利用をやめてしまう施設もある。市では、使い方を現場で共有するセミナーも開く。

 ■福祉士めざす留学生を支援 横浜市

 25年度に約1万人の介護人材が不足すると予測する横浜市は「多くの手を打たないと人手不足の解消はおぼつかない」(担当課)と、海外に目を向ける。

 昨年9月には出入国管理及び難民認定法の改正法が施行され、外国人の在留資格として新たに「介護」が加わった。留学生として来日し、介護福祉士の国家資格を取得すれば、日本で働くことができる。横浜市はこれに着目。介護福祉士をめざす留学生が日本語学校に通う際の学費のうち、年35万円を限度に半額を補助する。新年度からの事業で、20人の利用を見込んでいる。「『日本で働くなら横浜で』と思ってもらえるよう、支援したい」。留学生が介護の現場でパート勤めをする場合には、日本人と同様に、月額3万円を上限に家賃を半額補助する。

 介護施設を運営する法人でつくる横浜福祉事業経営者会によると、海外の優秀な人材は獲得競争が激しく、学費などを受け入れ側で用意することが必要という。会の担当者は「施設だけに負担を求めるのは大変だ。補助はありがたい」と話す。

 浜松市では、フィリピンなどとの二国間の経済連携協定(EPA)に基づき、介護福祉士をめざして来日した人に支援する。母国の送り出し機関に支払ったあっせん手数料のうち、半額(8万円程度)を補助する。

 ■2025年に向け政府も対策

 25年には、人口の6人に1人が75歳以上になる。厚労省の試算(15年)では、25年には全国で約38万人の介護人材が不足すると推計されている。

 対策の一つが、介護ロボットの導入だ。厚労省が16年に介護ロボットの購入補助事業を実施したほか、政府の成長戦略でも開発を後押しする。4月に介護サービスの公定価格が見直された際には、介護ロボットの利用を初めて報酬の評価対象にした。

 昨年9月には、在留資格として新たに「介護」が加わり、11月には、外国人技能実習生の対象分野に対人サービスとして初めて「介護」が加わった。外国人の受け入れは広がっているが、二国間の経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシアなどから介護福祉士をめざして入国した人は08年度からの累計で約3500人。人材不足を補うにはほど遠い。

 人材確保策として、政府は、19年10月の消費増税で増える税収の一部を使い、賃金アップをめざす。介護福祉士をめざす学生には2年間で総額168万円を上限に貸し付ける制度もある。

 <介護保険料アンケート> 65歳以上の人が払う介護保険料について、朝日新聞が今年2月から3月、政令指定市と県庁所在市、東京23区の計74市区に、18~20年度の月額保険料の見込みなどを聞いた。併せて、25年に向けた最も重要な課題も七つの選択肢から選んでもらった。

 ■介護人材の確保にむけた自治体の取り組み

【千葉市】
 市が移乗用の介護ロボットを事業者に無償で貸し出す事業を実施

【横浜市】
 介護福祉士をめざして来日する留学生に日本語学校の学費を半額(年35万円まで)補助

【浜松市】
 EPAで来日する人が、母国の送り出し機関に支払うあっせん手数料のうち半額(8万円を想定)を補助

【東京都中央区】
 介護事業所に転職したい人らを対象に、研修から就職まで支援する。年10人が区内の事業所で働くことをめざす

【東京都江東区】
 区内の事業所で働く場合、3万円を就労準備金として支給する

▼27面
シ 公教育、保護者の思い 朝日・ベネッセ共同調査
     土居新平、編集委員・氏岡真弓

【説明】保護者たちの考え方

 朝日新聞社とベネッセ教育総合研究所が共同で実施する「学校教育に対する保護者の意識調査」の結果がまとまった。学校満足度や、教育政策、部活動などについての意識の特徴を、調査に加わった専門家の見方と併せて紹介する。

 ■学校満足度 年追うにつれて上昇、大都市で顕著 識者「学校の丁寧な姿勢が影響か」

 子どもが通う学校について「とても満足している」「まあ満足している」と答えた保護者は計83・8%だった。過去の調査の「満足度」をみると04年73・1%、08年77・9%、13年80・7%となっており、年を追うに連れて上がっている。

 内訳では「まあ満足」が70・3%で調査開始からほぼ横ばいが続く。一方、「とても満足」は13・5%で、04年の4・9%から上昇し、「あまり満足していない」は04年の20・6%から11・8%まで減った。また、小中学校を比べると、小学校の満足度は86・8%で、中学校の77・8%より、9・0ポイント高かった。

 地域別でみると、人口規模が大きい「特別区・政令指定市」の満足度は86・2%で、前回より4・9ポイント増えた。04年の66・7%と比べると、20ポイント近く増えたことになる。「人口5万人未満の自治体」の今回の満足度も80・4%と高水準だが、調査開始以来、80%前後で推移しており、大都市部のような上昇はない。

 学歴別では「父母とも大卒」の満足度が前回から3・6ポイント上昇して86・3%となり、「父母とも非大卒」より5・1ポイント高かった。経済的に「ゆとりがある」と答えた人の満足度は86・6%で、「ない」と答えた人の82・3%よりやや高かった。

 学校の取り組みに対する満足度も聞いた。「教科の学習指導」が79・7%、「道徳や思いやりの心を教えること」が78・0%、「先生たちの教育熱心さ」が75・2%で、それぞれ前回より1・3~3・3ポイント上昇した。「社会のマナーやルールを教えること」はほぼ横ばいの77・5%だった。

 一方、「将来の進路や職業について考えさせること」への満足度は中学校で58・7%、小学校は37・1%。「受験に関する指導」は中学校50・2%、小学校24・5%だった。

 お茶の水女子大の耳塚寛明教授は「満足度が上昇を続けているのは、学校の方針や指導状況を保護者に丁寧に伝える活動が定着してきたことが影響しているのではないか。かつての『上から目線』ではなく、保護者の声をきちんと聞く姿勢が浸透したことも高評価の要因だろう」と話す。

 ■教育政策 プログラミング・英語、高い支持 大学入試改革、意見に差

 調査では教育改革について「賛成」「どちらかといえば賛成」「どちらかといえば反対」「反対」「わからない」の5択で尋ねた。「賛成」「どちらかといえば賛成」の合計が最多だったのは、「プログラミング教育などのコンピューターを活用した学習を増やす」で82・6%。「高校・大学入試で思考力・判断力・表現力などを重視する」も82・3%だった。

 「英語を使う活動を小学校3年生から必修にする」(78・8%)、「英語を小学校5年生から教科にする」(78・4%)はほぼ同列。「教員以外のソーシャルワーカーなどの専門職を増やす」が76・5%、「道徳教育を教科にして充実させる」が73・0%と続いた。

 一方、「大学入試に記述式の問題を入れる」は56・1%、「英語の『聞く・読む・話す・書く』のすべての力を大学入試で測る」は54・7%。入試改革の目玉は他より賛成が少なかった。

 保護者の学歴による傾向もあった。「英語を使う活動を小3から必修に」「英語を小5から教科に」の賛成率は「父母とも非大卒」がそれぞれ80・2%と78・8%で、「父母とも大卒」の76・6%と76・5%よりやや高かった。

 逆に大学入試の記述式の問題導入と、英語の4技能を測ることについては「父母とも大卒」の67・7%と64・3%が賛成し、「父母とも非大卒」で賛成する46・1%と48・0%を大きく上回った。また、「わからない」をみると「父母とも非大卒」は35・0%と32・7%で、「父母とも大卒」の15・7%、15・3%の倍以上だった。

 入試改革への賛成は、住む地域などでも差が出た。記述式問題の導入への賛成は「特別区・政令指定市」が61・4%で、「5万人未満」は52・1%。経済的に「ゆとりがある」人は63・3%で、「ない」人は51・8%と、それぞれ約10ポイントの差があった。英語の4技能測定も、同様の傾向だった。

 ■部活動 「日数削減に賛成」3割切る 識者「共働きが増え、余裕ないのでは」

 中学生の保護者には、子どもが部活動に参加しているかを尋ねた。運動部か文化部、または両方に「参加している」は87・4%。このうち、92・3%は子どもの成長に「とても役に立っている」「まあ役に立っている」と答え、満足度が高かった。子どもが楽しく参加しているかについても、88・7%が「とてもそう思う」「まあそう思う」とした。

 活動の頻度は、1週間のうち「6日」と「7日(毎日)」が合計で57・6%に達した。平日の活動時間は「2時間」が最も多くて42・0%、「1時間30分」が22・6%で続いた。土日と休日は「3時間」以上が69・8%に上り、このうち「4時間より多い」は20・2%だった。

 部活動が先生の忙しさの原因になっているかについては、中学生の保護者の72・8%が「とても」「まあそう思う」と答えた。スポーツ庁が17年に実施した調査でも、公立中教員の5割近くが「校務との両立に限界を感じる」と答えており、同庁は「週2日以上の休養日を設ける」という指針も3月に示した。

 ただ、保護者の間で日数を減らすべきだという意見は少なかった。今回の調査で減らした方がよいかを尋ねたところ、「とても」「まあそう思う」は27・9%にとどまり、「まったく」「あまりそう思わない」が69・9%。保護者が部活動にもっと関わった方がよいかについては「まったく」「あまりそう思わない」が70・4%で、外部指導者にゆだねるべきかどうかは「とても」「まあそう思う」が62・0%だった。

 一橋大の山田哲也教授は「保護者は部活動が教員の多忙化の原因と認める一方、活動日数を減らすことには慎重で、自分の負担が増えることにも反対の人が多い。共働き家庭も増えており、子どもに時間を割く余裕がなくなっているのではないか」と話す。

 ■教育費負担 授業料への税支出、多い賛成 充実には増税仕方ない、5割超

 安倍晋三政権は昨年の衆院選で、幼児教育や高等教育の「無償化」を打ち出した。保護者は教育費負担のあり方をどう考えているのか。授業料などの教育費について「すべて税金」「どちらかといえば税金」「どちらかといえば個人」「すべて個人」「わからない」の5択で聞いた。

 「すべて税金」「どちらかといえば税金」の合計が多かったのは、公立高校の授業料(78・8%)、国公立大学の授業料(63・4%)、幼稚園・保育園の保育料(授業料)(54・4%)だった。

 一方、若者の職業訓練の費用(49・8%)、経済的に恵まれない家庭の子どもの通塾費用(49・6%)、私立高校の授業料(42・6%)、私立小中学校の授業料(40・3%)、私立大学の授業料(33・9%)は5割を切った。ただ、前回の調査と比べると、私立高校や私立大学の授業料、経済的に恵まれない家庭の子どもの通塾費用に「すべて」「どちらかといえば」税金を使うべきだと考える人は9~10ポイント程度増えている。

 また、「学校教育を充実させるために税金が増えるのは仕方がない」と答えた人は53・0%。前回の48・8%から増え、「税金は増やさないほうがよい」(41・6%)を上回った。

 「税金が増えるのは仕方がない」と考える保護者の詳細をみると、「父母とも大卒」が64・7%で「父母とも非大卒」が43・2%、経済的に「ゆとりがある」人が62・9%で、「ない」人が47・3%だった。学歴が高く、経済的にゆとりがある人ほど、増税に賛成である傾向が浮かんだ。

 ◇朝日新聞社とベネッセ教育総合研究所は2004、08、13、18年と全国の公立小学2、5年生、中学2年生の保護者を対象に意識調査を重ねてきた。

 調査票は各校が配布し、家庭で回答し、封をしたものを学校単位で集めた。前回まで参加した学校に協力を依頼し、協力を得られなかった場合には、近隣にあり児童生徒数などが似た条件の学校に代えている。

 データをより正確に把握するため、調査年の調査対象の地方別構成比が、その年度の全国の児童生徒の構成比と等しくなるよう補正した。

 集計表と調査票は、ベネッセ教育総合研究所のウェブサイト(https://berd.benesse.jp/別ウインドウで開きます)に掲載予定。

 ◇この特集は土居新平、編集委員・氏岡真弓が担当しました