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続折々の記 2020③
【心に浮かぶよしなしごと】
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【 01 】03/02~
           緊急ニュース  雲行きの変化
             ・ 韓国の悲鳴「明日は我が身」  他人ひと事ではない
             ・ アメリカの核の傘を出る方法
             ・ 米国の強硬姿勢に中国が絶対譲歩しない

 03 02 (月) 韓国の悲鳴「明日は我が身」      他人ひと事ではない

他人ひと事ではない。

最近ことに感じているのは、田中宇のニュース解説の方向ではトランプはアメリカ派遣をぶち壊すという方向だと、理解していた。 けれども田中宇はそれ以上のことには触れたいなかった。 それ以上とは何か。

アメリカがトインビーが言うように太平洋の東半分の勢力圏をもつことになり、日本は極東の経済圏に含まれて活躍するようになる、という見込みはすんなりとは予言していなかった。

トランプは選挙でも言ったように「アメリカ、ファースト」とは、覇権放棄にとどまることなく、自国第一主義の言葉通りの国益第一をモットーにしているのではないかということである。

こうなると、安全保障という考えの根っこにあるのは、覇権放棄とは国益第一という排他的な考えが根っこになっていたと思われる。 これでは殺戮破壊という戦争拒否からくる平和とは程遠い。

戦争手段の放棄、その実現への努力から世界の平和への道は見えてこない。

アメリカを見ても中国、ロシヤを見ても、苦しい代償を払ってきた戦争時代を卒業する大目標が見えてこない。

朝日新聞デジタル> 連載> 日米安保の現在地> 記事

韓国の悲鳴「明日は我が身」 米軍駐留費、負担増へ圧力

     (日米安保の現在地 基地と負担)
     2020年3月2日 5時00分
     https://digital.asahi.com/articles/DA3S14385746.html?ref=pcviewer

写真・図版 【画像】米国の主要同盟国の米軍駐留経費負担の比較

 「米国は、韓国との交渉と同じような考え方で、日本とも交渉する」

 昨年7月、来日したボルトン米大統領補佐官(当時)は、米軍駐留経費の日本負担について、日本政府側にこう告げ、大幅増を要求する構えを見せた。複数の日米政府関係者によれば、従来と別の分野でも貢献してほしいと、負担項目の拡充を要求する考えも示唆した。

 日米交渉に先駆け、米国と韓国は米軍駐留経費の負担額を定める「防衛費分担特別協定(SMA)」の更新をめぐり、昨年から激しい交渉を続けている。発端は昨年2月のトランプ大統領の閣議での発言だ。

 「米国は韓国を防衛し、とてつもない損失を出している。韓国(防衛)に年50億ドルかかるのに、韓国は5億ドルしか出していない」

 米国はその後、韓国政府に約50億ドル(約5400億円)を支払うよう要求。韓国側は、法外な要求だと受け入れを拒むが、米側の姿勢は強硬だ。

 今年2月24日の米国防総省。エスパー米国防長官は米韓防衛相会談後、韓国の鄭景斗(チョンギョンドゥ)国防相と肩を並べて共同記者会見に臨み、「防衛費の負担を米国の納税者に不釣り合いに負わせるべきではない。韓国はより貢献できるし、そうすべきだ」と主張。さらに「あらゆる同盟国による負担の増額は、米国にとって最優先課題だ」とも付け加えた。

 鄭国防相は「韓国政府は経費負担以外にも様々な方法で米軍駐留に貢献している」と防戦一方だった。

    *

 昨年末が期限だった米韓交渉は長引き、越年する異常な状態が続いている。最も難航しているのが、従来のSMAの枠組みの範囲で交渉するかどうかだ。

 現在は特別協定に基づき、(1)米軍施設で働く韓国人従業員の人件費(2)米軍基地・施設の建設費(3)軍用機整備や物資支援などの軍需支援費、の3分野で韓国側が負担している。

 米側はSMAと別枠で追加負担するよう要求。戦略爆撃機をグアムから朝鮮半島に飛ばす演習経費や、米本土などから韓国に部隊を巡回配備させる移動費などを新たに求めている。

 交渉を重ね、米側も徐々に要求額を下げているが、韓国の鄭恩甫・防衛費分担交渉代表は2月28日の会見で「米側の修正案が意味ある水準の提案と見ることは難しい」と語り、妥結の見通しは立たないままだ。

 こうした米韓交渉の難航をみて、日本の外務省幹部は「韓国の悲鳴は、明日は我が身」と身構える。

 (園田耕司=ワシントン、鈴木拓也=ソウル、編集委員・佐藤武嗣)
 (2面に続く)

トランプ氏、日本にも強硬 安倍首相に「君たちは裕福な国」

写真・図版 【画像】膨らむ米軍関連経費の日本負担の総額と項目

 (1面から続く)

 「友人の安倍晋三首相に『君たちは我々を助けないといけない。我々は多くのカネを払っている。君たちは裕福な国だろ』と言ったんだ」

 トランプ米大統領は昨年12月、訪問先のロンドンで、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長と会談した際、同盟国の軍事費負担に不満を示し、安倍首相との会話をわざわざ披露した。

 米国の歴代政権も日本に負担増を求めることはあったが、「日本の世論の反発を懸念して米側も防衛費や米軍経費負担の増額を表立って露骨に求めることは控えてきた」(日本外務省幹部)。だが、米国だけが巨額な軍事費を負い、同盟国がそれに便乗しているとのトランプ氏の持論は「筋金入り」(防衛省幹部)だ。

 1987年、不動産王として名をとどろかせていたトランプ氏は米紙ニューヨーク・タイムズなどに全面の意見広告を掲載。「米国外交政策の問題は、もっと強い姿勢を示せば解決できる」と題し、「余裕のある他国の防衛のために、米国がカネを払うことをやめるべき理由」を並べ、日本を名指しして「米国を利用し続けてきた。彼らにカネを払わせろ」と主張した。

 政権内からマティス前国防長官ら「同盟重視派」の幹部は姿を消し、同盟国への強硬姿勢を示すトランプ氏の言動は強まる一方だ。

 2004年に米国が発表した米軍駐留経費の日本負担率は約74%だが、米政府関係者は「74%は過去の数字。米軍経費が膨らみ、再計算中だが、日本の負担率は下がっている」と増額を求める考えだ。ある米政府高官は「韓国との交渉を終えたら、それをモデルに日本との協議に臨む」とし、韓国同様、日本にも従来の負担項目と別枠で、新たに米艦船の燃料費などを要求する構えをみせる。同高官は「米国製武器購入も交渉の俎上(そじょう)にのぼる」と語る。

    *

 日本は「駐留経費は日米両政府の合意に基づき適切に分担されている」(菅義偉官房長官)との立場。安倍首相も昨年10月の国会で「日本は駐留経費のうち7割近くを持っている。何倍にもしたら、彼らが駐留して利益を上げることになってしまう」と答弁し、予防線を張った。日本は対米交渉で、他の同盟国に比べて日本の負担率が突出していることや第2次安倍政権発足後、防衛費を増加させていることなどを訴えたい考えだ。

 ただ、米側が現在の駐留経費負担に加え、米軍艦艇の燃料費や、米国製武器の購入を「別枠」で要求してきたらどう対応するのか。日本政府は、米国から「別枠」要求を突きつけられている韓国側から、交渉経過や米側の要求を情報収集するのに躍起になっている。

 交渉開始時期をめぐっても日米で駆け引きが始まっている。米側は今夏には交渉を本格化させたい構えだが、河野太郎防衛相は「今年の秋口くらいから交渉が始まることになる」と米側を牽制(けんせい)。交渉先延ばしで、大統領選を見極めたい考えだが、現在の特別協定の期限が切れる来年3月までに結論を出さざるを得ない。政府関係者は「本当に厳しい交渉になる」と語る。(園田耕司、竹下由佳)

■「特例」負担、いつの間にか恒常化

 米軍駐留をめぐる日本側の負担。その実情の一端が垣間見えるのが、米海兵隊と海上自衛隊が共同使用する山口県の岩国基地だ。

 基地内の居住区には真新しい住宅がゆったりと並び、庭も整備されている。

 住んでいるのは米軍人や家族たち。古びた海上自衛隊の隊舎とは対照的だ。

 岩国基地には、厚木基地(神奈川県)が拠点だった米空母艦載機約60機と軍人・家族ら約3800人が18年3月までに移駐。日本政府が艦載機部隊の移駐や新施設建設にかかる経費を負担し、06年度以降、総額は5300億円超だ。従来の米軍駐留経費とは別枠の「米軍再編関係経費」として支払った。

 このような新たな負担の枠組みは、年を追うごとに増えてきた。もともと日本が負担してきたのは、米軍基地や施設を提供するための借料や基地周辺対策費などで、日米地位協定上の「日本の義務的経費」と呼ばれる=図(1)。

 最初の転機は78年度に始まった「思いやり予算」だ=図(2)。オイルショック以降、日本の物価上昇と円高・ドル安の傾向が続き、米側負担の経費が膨らむと、当時の金丸信防衛庁長官が「思いやりの立場で地位協定の範囲内でできるだけの努力をしたい」と表明。従来の義務的経費に加え、「地位協定上、日本が負担可能」な経費として、米軍基地で働く従業員の手当の一部や、米軍の住宅や娯楽施設など「提供施設整備費」も日本が負担するようになった。

    *

 さらに87年、地位協定上は米側に負担義務があるのに、日本がその経費の一部を肩代わりするための特別協定が締結された=図(3)。この協定により、基地従業員の基本給や、米軍基地や施設の光熱水費、さらに訓練移転費を日本側が負担。「暫定的、特例的、時間的にも5年間に限る」(当時の柳井俊二・外務省審議官)との5年間の特例措置だったが、7度にわたり更新された。

 特別協定の日米交渉に携わった防衛省幹部は「特別協定は米国の財政状況が悪化し、円高も進んだ際の『特例』だったはず。いつのまにか恒常化し、誰も『廃止』を口にしなくなった」と語る。

 このほか、96年に日米が合意した、沖縄の米軍基地の整理・縮小に関する経費も「日米特別行動委員会(SACO)関係経費」として日本が負担。在沖海兵隊のグアム移転の経費なども「米軍再編関係経費」として負担する=図(4)。

 「(集団的自衛権行使を一部容認した)平和安全法制の成立などにより、我が国の役割と責務が高まっていることを踏まえ、在日米軍駐留経費負担についても縮減を図る必要がある」

 財務省の財政制度等審議会は15年にこう指摘し、特別協定による日本の負担削減や見直しを求めたこともあったが、負担の項目や総額は膨らむ一方だ。(編集委員・土居貴輝、佐藤武嗣)

▼3面=「基地提供が貢献」
基地提供の維持、大きな貢献
     元防衛事務次官・秋山昌廣さん

 2020年度で期限を迎える在日米軍の「駐留経費負担」に関する日米の特別協定。次期協定に向けた対米交渉にどう臨むべきか。冷戦終結後の日米安保体制の「再定義」に関わった秋山昌廣・元防衛事務次官に聞いた。

 ――日米同盟の協力のあり方が「金額」として問われる節目を迎えます。

 「日米地位協定上、日本の義務は米軍に基地を提供することだが、提供するには用地の借り上げや補償費など多額の経費がかかる。基地を提供し続けていること自体、大きな貢献だ。欧州では冷戦終了後、かなりの米軍基地が撤去されたが、日本では沖縄を含めて維持されている。普天間飛行場の代替施設を同じ沖縄県に造ろうとしているが、この時代に外国の軍隊の基地の新設なんて本来極めて困難な話。基地を提供し続けることがいかに大変なのか。米国、トランプ大統領に理解してもらう必要がある」

 ――駐留経費の日本側負担の現状をどうみますか。

 「日本は地位協定の範囲内で基地従業員の福利費などの手当、米軍の隊舎や家族住宅などの施設整備を負担してきた。加えて、地位協定上、米国に負担義務のある基地従業員の基本給まで負担している。残っているのは在日米軍の軍人の給与ぐらい。米国は自国の戦略に基づいて世界各地に軍を展開させているわけで、駐留先の日本が米軍人の人件費まで負担することになれば、もはや同盟ではなく傭兵(ようへい)になってしまう」

 ――トランプ大統領は北大西洋条約機構(NATO)加盟国に国防費の増額を求め、NATOも加盟国の国防費を国内総生産(GDP)比で2%まで引きあげる目標を掲げています。

 「日本の場合、防衛費の4割ぐらいが人件費。装備品の経費は2割ぐらいだが、他国と比べて圧倒的に単価が高い。確かに国産も必要だが、生産数が非常に少なく、コストが高い。米国から輸入している高性能の装備品も本当に高い。GDP比の議論の前に、ここを改善する努力が必要だ」

 「今後10年程度の日本の防衛費を考えた場合、GDP比2%という数字に実現性はない。当面1%をちょっと超えるところを目指すべきではないか」

■安保改定60年、日本の役割は

 ――今年は日米安保条約改定60年でもあります。

 「節目の年だからこそ、現在の安全保障環境の中で、米国の同盟国・日本として自国の安全保障をどうするのか。主体的に考えていく契機としたい。具体的には、日米安保体制のなかで日本の役割を増やしていくということだ」

 「憲法9条・専守防衛のもと、日本が『盾』、米国が『矛』という基本的な役割分担は変わらないが、バリエーションは出てくる。一つは、日本として(他国の領域にあるミサイル基地などを攻撃する)策源地攻撃の能力に関する検討を本格化させること。もう一つは安保法制で行使を一部容認した集団的自衛権だ」

 ――次の特別協定に向けて、米側は日本にさらなる負担増を迫る構えです。

 「在日米軍が日本防衛のために活動している経費やそのための訓練経費を要求してくる可能性はある」

 (聞き手 編集委員・土居貴輝)

    *

 あきやま・まさひろ 1940年生まれ。大蔵省(現・財務省)入省後、防衛庁(現・防衛省)に転じ、97~98年に防衛事務次官。96年の日米安全保障共同宣言、97年の日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の見直しなど、「日米安保再定義」のプロセスに日本側の中心として関わった。



日米安全保障条約 PRESIDENT Online

日本が「アメリカの核の傘」を出る方法はあるか

     依存を続ければ、早晩無理が来る
     田中 均 田中 均日本総研国際戦略研究所理事長
     <https://president.jp/articles/-/30722>‥1 2 3 次ページ

アメリカのトランプ大統領は、しばしば「日米安全保障条約は不公平だ」と主張する。では日本はどうすればいいのか。元外務審議官の田中均氏は「アメリカ一辺倒を離れ、重層的で多角的な安保体制を考える必要がある。究極的には、日米が相互に防御義務を持つ“相互安全保障条約”にすべきだろう」という——。

※本稿は、田中均著『見えない戦争 インビジブルウォー』(中公新書ラクレ)の一部を、再編集したものです。

【写真】岩屋毅防衛相とシュナイダー在日米軍司令官 (時事通信フォト=2019年6月19日)

常に「アメリカ追随」をしてきた最大の理由

トランプ的アメリカと日本はどのように付き合っていけばいいのか。トランプ大統領が日本との関係で提起してきた課題は決して一過性のものではなく、ポスト・トランプの時代においてもアメリカの指導力が低下していく限り、引き続き課題として残るだろう。

トランプ大統領が事あるごとに提起しているのは、日米安全保障条約が不公平だということだ。「アメリカには日本防衛の義務があるのに、日本にはアメリカ防衛の義務がないというのはおかしいではないか」と。じつはこの点が戦後の日米関係の根幹にあり、日本が常にアメリカに追随していくように見えた最大の理由だった。

日本国憲法の下、日本は専守防衛に徹し、集団的自衛権の行使は認められないと解釈されてきたが、周辺にロシア、中国という核大国や、北朝鮮という核開発を進める国交のない国が存在する以上、核を持つアメリカの安全保障の傘で護ってもらう以外の方法はないではないか。吉田茂総理の「軽武装、経済優先」の方針は今日まで変わらない

国民の理解には「沖縄の基地縮小」が必須

そして日米安保条約6条では日本の安全並びに極東の平和および安全に寄与するためとして、日本がアメリカに対し基地の提供を定めている。この基地提供義務により安保条約の双務性が担保されていると解釈されてきた。これが今日、日本全体のわずか0.6%の面積しかない沖縄に全体の70.27%もの面積にあたる米軍専用施設が存在し、基地の縮小が遅々として進まない背景にある。

戦後の日本の安全保障体制がアメリカ頼みである一方、日本の周辺の安全保障環境が悪化していったとき、私を含め外務省に勤務する多くの人々は明快な認識を持っていた。それは日米関係の信頼性を高めることであり、日本としての安全保障上の役割を強化することであり、沖縄の基地縮小を実現することだった。これら三つのことは相互に関連している。日米の信頼性を高めるためには、日本としての安全保障上の役割を強化することは必須だ。日米安保体制についての国民の理解を得るためには沖縄の基地縮小は必須と思われた。

2015年の安保新法制につながる一連の流れ

私は橋本内閣が成立すると同時に外務省で日米安保を担当する北米局審議官に就任した。橋本総理のところに頻繁に通い、アメリカのカウンターパートだったカート・キャンベル国防副次官補と水面下での折衝を繰り返した。

私が一番重要だと思ったのは包括的な絵を描くことだった。沖縄の基地整理・統合・縮小に向けて、まず象徴的な基地の返還を決めること、その上で冷戦終結後の東アジアの国際安全保障環境のなかで日米安保体制の果たす役割を橋本―クリントン首脳宣言で打ち出すこと、そして日米防衛協力ガイドラインで日本の安全保障上の役割の拡大を図ること。

これは1996年4月の普天間海兵隊基地返還合意、日米安保共同宣言、1997年9月の日米防衛協力ガイドライン改定、そしてその後の周辺事態法などの国内法制措置につながり、さらにはインド洋での自衛隊の給油活動や人道支援・復興のための自衛隊イラク派遣へと向かった。日本の安保上の役割を拡大する流れは安倍内閣の下、2015年の安保新法制で集団的自衛権行使の一部容認へとつながっていった。


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重層的多角的な安保体制を考える必要がある

アメリカが自由世界の指導者としての旗を降ろし、大統領が「自分は自分で護れ」と喧伝しているときにまで日本は従来通りアメリカに安保を依存していくのか、またそうできると考えるべきなのか。早晩無理が来るだろう。

私はアメリカ一辺倒を離れ、重層的多角的な安保体制を考えるべきだと思う。まず、日本が核保有をするハードルはきわめて高く、やはりアメリカの核の傘に依存するべきなのだろう。しかし在日米軍については沖縄と現状のような政治的対立を続けたまま安保体制を維持するのは現実的ではない。嘉手納基地などを残しできるだけスリムな体制とするべく有事来援の体制を含め抜本的な整理・統合・縮小を米側と検討すべきだろう。

自衛隊については安保新法制の下での習熟訓練を重ね、効率的な自衛隊を目指すとともに、豪州、インド、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国、欧州との安全保障パートナーシップの強化に努めるべきだろう。同時に周辺諸国との安保環境を改善していくための外交を機能させねばならない。

そして究極的には、日米が相互に防衛義務を持つ相互安全保障条約に条約改正をおこなうべきなのだろう。その場合には集団的自衛権の全面的行使を可能とする憲法解釈をおこなわなければならないし、場合によっては憲法改正も必要となるのだろう。ただそのような行動をいま起こすべきとは思わない。その前に十分な議論を尽くすべきだ。

“見えない戦争”に巻き込まれる日本

少なくともこれからの世界においてもしばらくは、アメリカが圧倒的な力を持ち続けることは疑いようがない。日本は引き続きアメリカとの関係強化に努めていかなければならないが、果たして現在のような“抱きつき作戦”のままでよいとも思われない。安倍総理がトランプ大統領と懇親を深めるのは結構なことであるが、それ自体が目的ではないだろうし、アメリカにどう影響力を行使できるかが重要だ。

田中均『見えない戦争 インビジブルウォー』(中公新書ラクレ)

このままアメリカがリーダーシップをとらない世界、秩序を失い、さまざまな問題が解決しない世界が訪れることは、アメリカはもちろん日本や他の世界各国にとっても望ましいとは言えない。日本は西側先進民主主義国のなかでもアメリカの首脳に影響を与えることができる数少ない存在だ。アメリカがリーダーシップをとらない場合、国際社会の秩序はどのように保たれうるか。日本はその秩序のなかにアメリカを巻き込み、リーダーシップ不在の世界にならないようにと真剣に考え、影響力を行使していくべきだろう。

だが、日本がいまそういった方向に向かっているかと言えば、残念ながらそうは思えない。日本もまた“見えない戦争インビジブルウォー”の真っただ中に巻き込まれている。いたずらに「主張する外交」や「ジャパン・ファースト」を唱える人々の声が大きく、“世界のなかの日本”であることは忘れられつつあるように思える。トランプほどわかりやすくなくとも、トランプ的な人物が日本でも登場することもあるだろう。そのときに賢明な選択ができるか。国民の知性が試されるときは、それほど遠い未来ではないだろう。

日米安全保障条約 PRESIDENT Online

安倍首相は「日米安保見直し」発言に乗るべきか

     パーフェクト・タイミングは今だ
     大前 研一 ビジネス・ブレークスルー大学学長
     2019年8月30日号
     https://president.jp/articles/-/29585

ヨーロッパにも防衛負担増を迫るトランプ

2017年の大統領就任以来、方々に因縁を付けたり、ケンカを吹っ掛けてきたトランプ大統領だが、戦争に持ち込んだことは1度もない。

【写真】日米首脳会談時に握手を交わすトランプ大統領と安倍首相

あれだけ罵り合っていた北朝鮮の金正恩委員長とは歴史的な首脳会談を果たしたし、以前指摘したように開戦前夜という雰囲気の対イラン戦争も回避したいのがトランプ大統領の本音だろう。

建国243年の歴史で、アメリカは220年以上も戦争をしてきたと言われる。およそ戦争で成り立ってきた国家と言ってもいい。時の大統領は自由や民主主義、あるいは正義や人権を守るために戦う、と戦争の正当性を訴えてきたが、それはほとんど建前だ。アメリカが戦争する理由は、誰もが知っているように軍需産業のためである。

トランプ大統領も軍需産業にそっぽを向かれたら自らの政権が長続きしないことはよくわかっている。しかし、歴代の指導者と違って、実は戦いに臆病だからアメリカ人の血が流れるような戦争はやりたくない。次の大統領選挙にもマイナスになるからである。

そんなトランプ大統領がはたと気がついたのは、商売相手からディールを引き出し、女性を口説いてきた自分の口先が外交交渉にも使える、ということだ。

たとえば対ヨーロッパ。トランプ大統領は大統領選挙中からNATO(北大西洋条約機構)不要論を唱えて「我が国の拠出金負担が大きすぎる」と不満を呈していた。大統領就任後は「アメリカに残ってほしければ、NATO加盟国は防衛費支出の対GDP比を引き上げろ」と言い募ってきた。NATOは25年までに加盟国の防衛費を対GDP比2%以上にする目標を掲げているが、ドイツやフランスなどの大国をはじめ対GDP比2%に達していない国が多い。トランプ大統領の「口撃」を受けて、18年7月のNATO首脳会議では、防衛費支出の拡大目標達成に向けて加盟国が強くコミットする旨の共同声明が出された。それでも物足りないトランプ大統領は「25年までではない。直ちに防衛費支出を対GDP比2%に引き上げる必要がある」「目標を4%に拡大せよ」と迫ったという。

アメリカの軍事力に頼ってきたNATOにケチを付け、「離脱」をちらつかせて軍事負担の均衡を求めた結果、加盟国の防衛費支出拡大という「果実」を得た。当然、兵器は世界一の武器輸出国であるアメリカからも大量に買い込むことになるわけだ。

一方で北朝鮮を挑発して緊張感を高めれば、日本はイージス・アショアとF35戦闘機100機、韓国なら高高度防衛ミサイル「THAAD」などの高額兵器を購入してくれるし、中東を引っかき回せばお得意様であるサウジアラビアやエジプト、UAEなどが大量に武器を買ってくれる。


左利きの愛国者  ID: 754868 通報

「米国が攻撃されたときに日本人は命をかけて助けてくれるのか」という質問には、「法律的に可能になりました」と答えられる。
と言うが、実際には米国本土が攻撃されたときに日本が米国のために戦うことはできないのではないか。
安保条約は片務的であると思う。
米国兵士は命を賭す。(実際には米国議会には拒否権があるため米国の“義務”ではない。)一方で、日本は金を出しているだけだ。
だから米国が「時間を掛けて安保条約を双務的なものにしていこう」と言ったときに日本は拒否できない。
日本は自国で自国を守ることができないという極めて不自然な国家(いわば国家という体をなしていない国家)であるために、独立国家としての外交も育たず米国の顔色しか覗わない政治しかできない。
20年30年の計でも良いから、真の独立国家となり、しかも平和憲法とその下での平和的思想信念を持った国家に変貌させて貰いたい。
大前さん、いかがでしょうか。



国に戦争をしてもらって補充品の兵器で儲ける、というのがこれまでの軍事ロビーの基本的な考え方だった。しかし、いまは国が戦争をしなくても、つまりアメリカ人が血を流さなくても、大統領の口先一つで兵器が売れる。軍需産業が潤う。これはトランプ大統領という異色のキャラクターが編み出した画期的な手法なのだ。

アメリカの軍事負担の「不公平さ」を恫喝交じりにアピールして、相手国に国防費の増額を迫り、自国の兵器輸出拡大につなげる。NATO加盟国や韓国、サウジアラビアなどの同盟国を狙い撃ちにしたトランプ大統領お得意のディールだが、当然、日本も例外ではない。

日本に無償でシーレーン防衛する義理はない

G20大阪サミットが開催された6月になって、トランプ大統領は日本の国防を揺るがす発言を繰り出してきた。1つはシーレーン(海上交通路)防衛についてである。

「(ホルムズ)海峡から中国は原油の91%、日本は62%、他の多くの国も同じように輸入している。なぜ我が国が何の見返りもなしに他国のためにシーレーンを守らなければならないのか」「(ホルムズ海峡の原油に依存する)こうした国々がいつも危険な旅を強いられている自国の船舶を自分たちで守るべきだ」

トランプ大統領はツイッターにこのように投稿した。シェールガス革命によって世界最大のエネルギー生産国になったアメリカにとって、中東原油の重要度は低下した。従ってアメリカが無償でシーレーン防衛する義理はない。ホルムズ海峡からの原油に依存している国が自分で守れ、という理屈だ。

日本の中東原油の依存率は8割以上だし、ホルムズ海峡からインド洋、マラッカ海峡、南シナ海に至るシーレーン防衛は、海洋進出を加速させている中国に対抗するうえでアメリカにとっても依然重要。つまり、トランプ大統領の呟きは無知と誤解に基づいた、いつも通りの思いつきでしかないのだが、日本にとっては青天の霹靂だ。

四方を海に囲まれた日本にとって、海上航路の安全確保はきわめて重要だ。ホルムズ海峡を通る日本の船舶の護衛は日米安保条約の対象ではないから、本来なら海上自衛隊が守るべきだが、憲法上の制約から自前の艦艇は派遣していない。米海軍に代わってシーレーン防衛を担う能力は海上自衛隊にはあると思うが、特措法制定や憲法改正などの法整備は避けて通れない。

シーレーン防衛の重要性をしっかり説明できれば国民の理解は得られるだろう。ただし、海上自衛隊が現実にホルムズ海峡で日本のタンカーを護衛するイメージは当面浮かんでこない。なぜなら、「応分の金を出すなり、兵器を買ってくれるならアメリカが守ってやるよ」がトランプ大統領の本音だからだ。

トランプ政権はホルムズ海峡を航行する民間船舶を護衛するための軍事的な有志連合結成を呼びかけている。有志連合に直接自衛隊を参加させるのか、それとも金だけ出すのか。日本政府としてはまずは決断を迫られる。

シーレーン防衛問題以上に波紋を呼んだのは、「日米安保見直し」発言である。G20大阪サミット閉幕後の会見で、トランプ大統領は「日米安全保障条約を公平な形に見直す必要があることを安倍首相に伝えた」ことを明らかにした。

米国は日本のために戦わなくてはならない

事前に日米安保条約の破棄について側近との私的会話で言及したとの報道が流れたが、破棄については「まったく考えていない」と否定したうえで、「ただ不公平な合意だ。日本が攻撃されたら米国は日本のために戦わなくてはならない。しかし米国が攻撃されても日本は戦わなくていい。この6カ月間、(不公平だと)安倍首相に言ってきた。変えなければならないと彼に伝えた」などと語った。日本国民は安倍首相からそのような発言があったとは聞いていない。首相としても真意を探りかねているのだろう。

「片務的で不公平」と言うが、トランプ大統領は日米安保条約が締結された経緯も背景もわかっていない。紛争解決の手段として武力を2度と使わないとする憲法を駐留米軍が残していったこと、サンフランシスコ講和条約以降はアメリカの傘に守られながらアメリカの要請で自衛隊をつくったこと、再軍備となると周辺国が神経質になるので防衛費にGDP1%枠というタガをはめてきたことなど、トランプ大統領は何も知らないのだ。

日米安保条約が片務的というのも間違いで、新安保法制によって自衛隊は米軍の指揮下に入って戦うことが可能になった。「米国が攻撃されたときに日本人は命をかけて助けてくれるのか」という質問には、「法律的に可能になりました」と答えられる。そもそも米軍が好き勝手に使える基地が占領当時のまま日本に残されているのだから、日本からすれば屈辱的、隷属的な条約なのだ。

ところで、トランプ大統領の「安保見直し」発言で日本の産業界はにわかに沸き立って、戦前に世界恐慌発の大不況から軍需産業が立ち直っていった頃の雰囲気が出てきている。「自主防衛」を夢見る勢力も色めき立っているし、参院選を乗り切った安倍首相も改憲論議を前に進めようとしている。

「シーレーンは自分で守れ」「不平等な安保は見直すべき」という一連のトランプ発言は、憲法改正を目指す安倍首相にとっては棚ぼたになるかもしれない。ディールと前任大統領の仕事を踏みにじるのが大好きなトランプ大統領でなければ、日米関係や国防を見直すきっかけは生まれなかっただろう。さらに言えば、トランプ大統領のリップサービスは、2期目に入ったらなくなると見たほうがいい。米大統領に3期目はないからだ。だから日本にとって、トランプ大統領が再当選を狙っている今が安保見直しのパーフェクト・タイミングなのだ。

しかし、安保見直しや国防論議がヒートアップして暴走すると、「いつか来た道」になりかねない。敗戦の反省を強いられて鬱屈と生きてきた民族だけに、1度走り出すと止まらなくなる危険性がある。ゆえに、もう少しトランプ発言の意図がよく見えるまでは煽りに乗らないことが肝要である。

日米安全保障条約 PRESIDENT Online

"低欲望"を克服せずして日本の再生はない

     鍵を握るのは「バブル世代」だ
     大前 研一ビジネス・ブレークスルー大学学長
     2019年8月16日号
     https://president.jp/articles/-/29431

日米で祭り上げられる異端の経済理論

財務省の発表によれば、国債や借入金を合計した「日本の借金」は2019年3月末時点で1103兆円に達し、年度末残高は3年連続で過去最大を記録した。日本の政府債務残高は対GDP比で236%(18年)。この数字は財政破綻したギリシャの183%、国家そのものが破綻したベネズエラの175%を大きく引き離して世界ワースト1位だ。

日本の借金が増え続けている理由はハッキリしている。18年度の日本の税収は60兆円を超えて過去最高を記録したが、40兆~60兆円の税収に対して100兆円規模の予算を毎年組み続けているのだから借金が膨らむのは当然である。借金の大半は国債。政府は赤字予算を埋め合わせるために国債を発行し続け、世界最大の国家債務を日々更新しているのだ。

日本が抱える大問題の1つは国家債務に対する危機意識の低さだと私は思っているが、近頃は「日本はいくら国債を発行しても財政破綻しない」とか「借金なんて気にする必要ない。政府はもっと積極的に財政出動して、景気刺激をすべきだ」といった声まで聞こえてくる。そのような赤字容認派、赤字奨励派の論拠の1つに祭り上げられているのが、「現代貨幣理論(MMT:ModernMonetaryTheory)」である。

【写真】MMT(現代貨幣理論)を提唱するニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授

提唱者はニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授ら。MMTの中核にある考え方は「自前の通貨を持つ国がいくら自国通貨建ての国債を発行しても、デフォルト(債務不履行)には陥らない」「インフレにならない限り、財政赤字を膨らませても構わない」というものだ。

ケルトン教授は16年の米大統領選挙で「民主社会主義」を標榜し、大学無償化などの財政拡大策を訴えて大旋風を巻き起こしたバーニー・サンダース上院議員の政策顧問を務めた。サンダース氏は20年の大統領選挙でも民主党からの出馬を表明していて、ケルトン教授も再び政策顧問に就くという。

また、18年11月の連邦議会選挙で初当選し、史上最年少の28歳で下院議員になったアレクサンドリア・オカシオコルテス氏がMMT支持を表明して話題を呼んだ。アメリカでは財政政策の理論的裏付けとしてMMTが注目される一方で、異端視する経済学者やエコノミストも多く、論争を呼んでいる。

自前の通貨を持っている国が自国通貨建ての国債をどれだけ発行してもデフォルトしないという理由はなぜか。いざとなれば際限なく自国通貨を発行できるからだという。

たとえばユーロという共通通貨を使っているギリシャは、独自通貨を自由に発行できないので、デフォルトリスクが常につきまとう。しかし、アメリカや日本のように独自通貨を持つ国は、低インフレ環境にある限り政府債務を増加させても、つまり財政赤字を拡大させても問題ない、とMMTは説く。

ケルトン教授は「巨額債務を抱えているのにインフレも金利上昇も起きない日本が実証している」「日本の景気が良くならないのは、インフレを恐れすぎて財政支出を中途半端にしてきたから」「MMTは日本が直面するデフレの解毒剤になる」とまで述べている。

日本をMMTの実証モデルと見立てているようだが、これは全くの見当違いである。ケルトン教授は日本経済の特殊性というものを全く理解していない。

公的債務が対GDP比約240%まで膨れ上がっているのに、財政破綻せず、19年も100兆円を超える予算を組んでいるのだから、傍目には日本はMMTを実践しているように見える。しかし、もし政府や日本銀行の目標通りに物価が上がったらどうなるか。当然、金利は上がる。今は超低金利だから国債の利払いは年間約9兆円で済んでいるが、金利上昇に伴って新規発行や借り換えで利率の高い国債が発行されるようになったら、利払い費は一気に増加していく。

他方、金利が上がって国債よりも高利回りの金融商品が登場してくれば、海外の投資家はもとより、日本の金融機関や生保・損保なども国債を売ってそちらにシフトするだろう。それは国債の暴落を招き、市中から国債を買い集めて大量に溜め込んでいる日銀のインプロージョン(内部爆発)のトリガーを引く。結局、国債の金利も上げざるをえなくなって(上げなければ売れない)、財政破綻の坂道を一気に転げ落ちるのだ。

「日本の景気が良くならないのは、インフレを恐れすぎて財政支出を中途半端にしてきたから」というケルトン教授の指摘は真逆である。デフレ脱却のために政府・日銀は2%というインフレ目標を定め、財政支出をジャブジャブと増やしてきた。

ノーベル賞受賞者が見誤る日本の特殊性

それでも日本はインフレにならなかった。なぜか。

これはケルトン教授のみならず、日本経済の実態を知らなかったノーベル経済学賞受賞者であるポール・クルーグマン教授やジョセフ・E・スティグリッツ教授も読み違えたことだが、私が再三指摘してきたように日本は世界で唯一の「低欲望社会」だからである。

政府が支出を増やせば経済活動が活発になって需要が生まれるというのがMMTの理屈だが、そもそも日本社会は需要の基になる「欲望」がなくなっている。少子高齢化による人口減少や将来に対する漠たる不安から低欲望化が進行し、日本人はお金を貯めるばかりでいっこうに使わないし、いくら金利が下がっても借りようともしない。だから個人金融資産が約1800兆円も積み上がり、その大半が金利もつかない銀行口座に塩漬けにされているのだ。

「欲望」は金利とマネタリーベースで操作する。これが20世紀の経済原論の大前提である。それが日本では崩れている、という実態を知らない学者が短期間のマクロ現象だけを見て考えると根本から履き違える。「今のところ大丈夫」が現実であって、「これがセオリー」というMMTの考え方は大変危険だ。

日本国債についても、学者的には日本人が買っているように見える。しかし、現実に国債を買っている日本人はほとんどいなくて、日本人が預金している金融機関が国債を買っている。外国の経済学者は「日本人が買っている限り、日本国債は安全」というが、日本国債を意識的に良しと判断して買っている日本人はほとんどいないのだ。学者はここを理解していない。個人ではなく金融機関や生保などの機関投資家が買っている以上、日本国債に対する食欲がなくなれば、国債暴落のリスクはあるのだ。

引退していくバブル世代が日本再生の鍵

MMTの最大の問題点は「インフレにならない限り」という前提で理論を一般化していることだ。

「インフレにならない限り、政府はいくら借金を膨らませても構わない」というのは、例えてみれば、「爆発しない限り、ダイナマイトをいくら部屋に置いてもいい」と言っているようなものだ。そんな部屋で暮らせるだろうか。やはり極力、危険物は取り除くべきだし、リスクを取り除いて少しでも安全にしておくことは、将来世代に対する現役世代の責務だと私は思っている。

勤労人口が減り、恐らくは収入も減っていく中で、将来世代はより少ない人数で残された借金を返済しなければならない。次の世代に重荷を押し付けて今の繁栄を享受したいと思っている人にはMMTは心地よく聞こえるかもしれないが、将来世代からすれば「ふざけるな」である。

「国債償還は我々の責任ではない。自分で借りたものは自分で返せ」と世代間闘争が勃発する可能性もある。実際にスウェーデンでそれが起きて、高齢者の医療や介護・福祉が大幅にカットされ、税率も上がった。

低欲望を克服しなければ日本の再生はない

最後に、低欲望を克服しなければ日本の再生はないと私は思っているし、時間は多少かかるかもしれないが低欲望社会を変えていくアイデアもある。そもそも日本人が未来永劫、低欲望のままかといえばクエスチョンマークで、世代が変われば価値観も変わってくる。

私が注目しているのはバブル世代である。彼らは高欲望のバブル期に青春時代を送りながら、バブル崩壊後の失われた20年は欲望をシュリンク(縮小)させて生きてきた。

60代~50代半ばのバブル世代がリタイアを迎えたときには、それまでとは全然違う行動を取る可能性がある。人生を楽しむことをないがしろにしてきた人が目覚めたときには、まるで違うお金の使い方をするものだ。借金をしてでも遊ぶ、借金を残して死んだほうが得だと思う人が増える可能性があると私は見ている。それがMMTのご臨終と、国債を腹一杯食っている中央銀行の終焉につながることは言うまでもない。

日米安全保障条約 PRESIDENT Online

日米安保はアメリカにとって不公平なのか

     条約再改定への試案準備を進めよ
     坂元一哉 大阪大学 教授
     2019/07/10
     https://president.jp/articles/-/29251

トランプ大統領が放った「不公平発言」

G20サミット首脳会議出席のために来日したドナルド・トランプ米大統領は、会議終了後の記者会見において、日本が米国の防衛義務を負わない現行の安保条約は「不公平(アンフェア)」だと発言した。

大統領は、自分は安倍晋三首相にこれを変える必要があると伝えているとも述べた。また大統領は、安倍首相は米国が攻撃されたときに、日本が米国を助ける必要があることはわかっているし、そうすることが問題だとは考えないだろうと付け加えている。

衝撃的な発言である。だがトランプ大統領の真意はよくわからない。すぐに何かを要求するのではなさそうで、いわんや安保条約を廃棄したいというわけでもないようである。大統領自身、会見でそれをはっきり否定しているし、米国の基本的な国益と現在の国際情勢から見ても、それは考えにくい。

「公平(フェア)」な条約のため試案を準備すべき

そのため、進行中の日米貿易交渉を有利に進めるための牽制であるとか、同盟負担の分担問題でNATO諸国ばかりを標的にするのは「不公平」だからバランスをとったのではとか、いろいろ臆測がなされている。

だがそういった臆測はともかく、仮にも米国の大統領が、日米両国の安全保障協力の基本を定める日米安全保障条約は「不公平」だ、と発言した事実は重く受け止めねばならないだろう。偽善がなく、本音をストレートにいってしまうことが多いトランプ大統領だけに、今後も同様の発言が繰り返される可能性は低くない。真剣に対応する必要があると思う。

とくに、いまの安保条約をトランプ大統領から見て「公平(フェア)」な条約に、仮に改定(再改定)するとしたら、どういうものが考えられるか。試案を準備しておく必要があるのではなかろうか。

むろん、実際に安保条約を改定するとなれば、大変な政治的作業になる。あくまで慎重に考えるべき事案であることは言うまでもない。しかし実際に改定が必要になってから、慌てて考えはじめるというのでは、大変なものがさらに大変になるだけである

米国防衛のために日本が何もしないのは非現実的

トランプ大統領は、来日前に米テレビが行った電話インタビューのなかで、米国が攻撃されても日本人はソニーのテレビでそれを見ているだけでいい、というようなことを話している。安保条約の権利義務だけから見れば、あるいはそういうこともいえるかもしれない。

またたしかに、2001年の9・11同時多発テロ事件においてわれわれ日本人は、世界の多くの人々と同様、米国が攻撃される様子を(ソニー製かどうかは別にして)テレビで見た。

だがテレビで見た後、何もしなかったわけではない。すぐにテロ対策特別措置法を作り、アフガニスタン戦争でインド洋に展開する米軍への後方支援(米艦船への給油など)を行っている。その時からすでに18年の時が流れたが、この間の日米同盟の発展――たとえば4年前の「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」再改定など――を考えれば、次に米国が攻撃されるようなことがあった場合に、日本人がテレビを見ているだけで、米国防衛のために行動しないというのは、まったく非現実的な話である。

米国が提案した旧安保条約の改定草案が参考に

もっとも、もしそうだとしたら、安保条約のなかで行動を約束してはどうか、というのがトランプ大統領のいいたいことなのかもしれない。それによって日米同盟が「公平」な同盟であることがより明確になれば、同盟の基盤も抑止力も一段と強化され、両国にとって素晴らしいことではないか。ちょっと甘いかもしれないが、「頭の体操」の意味で大統領がそう考えているとあえて仮定して、安保条約の改定案(再改定案)を考えるとすればどうなるだろうか。

その場合は、いまから約60年前の1958年10月4日、東京で旧安保条約の改定交渉がスタートした際に、米国が日本に提案した改定草案が参考になるだろう。このとき米国政府は、日本が憲法解釈上、海外派兵はできないという事情をよく理解したうえで、「太平洋」において日米両国が互いの領土を守り合う相互防衛の規定を盛り込んだ条約案を提案してきた。

そういう案だと、日本はハワイやグアムの防衛のために海外派兵をしなくてはならなくなる。そういぶかる日本側の交渉者に米国側は、いや日本は憲法上、日本にできることをやってくれればいい。たとえばハワイやグアムを攻撃する敵の飛行機が日本の領空を通る場合は、撃墜してくれればいい、と説明している。

いまならさしずめハワイやグアムのミサイル防衛に協力してくれればいい、というようなことだろうが、ともかく日本ができることをやってくれればいい、というのが米国側の説明だった。

1951年の旧安保に「日本防衛義務」はなかった

いまから振り返ると、日本にとって悪くない話だったように思える。だが日本政府は、安保条約に「太平洋」という言葉が入るのをかたくなに拒んだ、「太平洋」が入ると日本政府が米国政府に、将来の憲法改正、また海外派兵を約束したように受け取られかねず、締結しても国会で批准されない、というのがその理由だった。

サンフランシスコ平和条約とともに1951年に締結された旧安保条約には、相互防衛の規定がなく、日本は米国に基地を貸すが、米国の日本防衛は米国の義務ではなかった。日本国内では、それは不公平だとの批判が高まり、1960年に条約が改定された際には、相互防衛の規定が設けられ、米国の日本防衛義務が明示された(現行の安保条約第5条)。

それはよかったのだが、相互防衛の範囲は米国が提案した「太平洋」ではなく、日本政府が受け入れ可能と判断した「日本の施政の下にある領域」になり、米国の日本防衛義務に対する日本の米国防衛義務は、日本に駐留する米軍の防衛に限られることになった。そうなると安保条約は今度は、日本が米国領土の防衛義務を負わない分、米国にとって不公平な条約に見えるようになる。

「安保条約は不公平だ」という批判に反論することは簡単

もちろん日本は、条約改定後も米国に基地を貸す義務を負い、実質的にはそれで、日米双方の義務のバランスがはかられたのはよく知られている通りである。しかし、こういう非対称なかたちの義務のバランスは双方に不満を生じさせやすい。

有事になれば、自国の若者に血のリスクを負わせてでも相手国を守ることを約束する側は、同じことをしてくれない相手を尊敬せず、その一方、有事も平時も基地を貸し続ける側は、相手が基地の価値、そしてそのコストと危険を十分理解していないのではないかと疑う、そういうことになりやすいからである。

私は、日米同盟の発展の歴史は、同盟の骨組みである安保条約におけるこの非対称な相互防衛協力を、さまざまな補助的取り決めによって補強し、日米双方に満足のいく相互性、また公平性の感覚を発展させることに努めてきた歴史だといえると思う。

そして実際にその努力は、かなりの成果を上げており、もしいまの日米同盟が、安保条約でいう「極東」の平和と安全のためだけの同盟であるならば、安保条約は不公平だという批判に反論することは割と簡単である。

「できることは何でもやる」という明確な規定を

だがそこで忘れてならないのは、日本と米国が21世紀に入ってから、日米同盟を「世界の中の」日米同盟に発展させようしていることである。そして近年は「自由で開かれたインド太平洋」構想を掲げるなど、同盟協力の範囲を大きく広げようとしている。

そうなると、安保条約は不公平だという批判への反論が少し難しくなる。米国の領土がそこに存在しない「極東」における同盟協力ではなく、それが存在する「世界」あるいは「インド太平洋」での協力となれば、日本が米国の領土防衛を約束していない、安保条約の義務の非対称性が目立ってしまうからである。

結局のところ、トランプ大統領の「不公平」発言が示すのは、日米同盟を真の意味で「極東」における同盟から「世界」における同盟に発展させようと思えば、米国の領土防衛義務を形式的に負わない、いまの安保条約のかたちには限界があるということなのだろう。

だから改めた方がいいのかどうか、また改めるとしてどう改めるのかは、相手の意向もあり、さまざまな検討や議論が必要になる。ただ私はともかくまず、いざ米国有事となったら、日本は米国を守るために、憲法上また実力上、できることは何でもやる。そのことを明確に約束する規定を含んだ、安保条約再改定の試案を準備しておくのがよいのではないかと考える。

坂元 一哉(さかもと・かずや) 大阪大学 教授
1956年福岡県生まれ。京都大学法学部卒業。同大学院を経て米オハイオ大学に留学。三重大学、大阪大学助教授を経て現職。吉田茂賞(『戦後日本外交史』)、サントリー学芸賞(『日米同盟の絆』)、第9回正論新風賞を受賞。法学博士。

PRESIDENT Online

米国の強硬姿勢に中国が絶対譲歩しない訳

     貿易戦争の激化でこれから起きる事
     真壁昭夫 法政大学大学院 教授
     2019/05/14 6:00
     https://president.jp/articles/-/28650

中国の交渉責任者は「必ず報復する」と表明

5月9日と10日の米中の通商協議は合意に至らなかった。米国の政府関係者は協議が建設的だったとしたものの、企業に対する政府の補助金支給などについて両者の溝を埋めることはできなかった。また、米中は協議を継続するとしているが、その日程すら決められなかった。それに伴い、米国は対中国の関税率25%への引き上げを実行すると表明している。

それに対して、中国の交渉責任者を務める劉鶴副首相は「必ず報復する」と表明した。この発言は、米中の協議がいかに困難かを物語っている。両国間の溝は一段と深まったといえるかもしれない(※)。

※編集部注:中国は、5月13日21時30分(日本時間)、対米輸入額600億ドル(約6兆6000億円)分の関税を最大25%に上げる報復措置を発表した。6月1日から実施する。

【写真】2019年5月10日、貿易協議を終えた(右から)ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表、ムニューシン米財務長官、劉鶴中国副首相(アメリカ・ワシントン)

今後、中国からの対抗措置等を受け、米国は一段と対中強硬姿勢を強める可能性がある。民主党には、トランプ政権以上に中国が脅威と主張する議員も多い。中国としても習近平国家主席の支配基盤強化などを考えると安易な妥協はできない。今後の交渉の行方は一段と読みにくくなった。今後の状況次第では、制裁関税の発動から中国経済が一段と減速することが懸念される。それは、わが国をはじめ世界経済にとって大きなリスクだ。

2つの視点で考える米中貿易戦争

米国と中国の貿易戦争は、2つに分けて考えるとわかりやすい。

まず、米国は、中国との貿易赤字を減らしたい。トランプ大統領は、米国の鉄鋼や石炭、農業などの"オールドエコノミー"の復興を重視し、支持獲得につなげたい。そのためには、米国の輸出を増やすことが重要だ。

2018年、米国の貿易赤字は約6200億ドルだった。モノ(財)の取引に限定すると、貿易赤字は8900億ドルに達する。米国の対中輸出入は、モノの輸出は約1200億ドル。一方、モノの輸入は5400億ドルある。

米国は、4200億ドル程度の対中貿易赤字を減らしたい。そのために昨年7月以降、米国は中国からの輸入品に25%の制裁関税を段階的にかけ、貿易赤字の削減を目指した。中国は米国から大豆などを輸入し、譲歩してきた。

米国の脅威となってきた「IT先端分野」での台頭

もう一つ、貿易戦争にはIT先端分野を中心とする米中の"覇権国争い"という側面がある。これは長期的な変化だ。

中国は、世界第2位の経済大国に成長した。現在の中国は投資依存型経済の、成長の限界に直面している。中国は、IT先端分野の競争力を高め、需要を創出したい。それが、中国が海外企業からの技術の吸収(技術移転)と、政府補助金の支給を通した産業育成を重視する理由だ。中国がこの考えを改めるとは考えづらい。

IT先端分野を中心とする中国の台頭は、米国には脅威だ。IT分野は今後の世界経済の成長に無視できない影響を与える。IT先端分野の技術力向上は、中国の軍事力の強化にも欠かせない。

トランプ大統領の貿易交渉チームを率いるライトハイザー通商代表部(USTR)代表は、中国は安全保障上の脅威と考えている。同氏は、1980年代の日米半導体協議において、わが国に関税をかけることで"日の丸半導体"の躍進を封じ込んだ。その成功体験に基づき、米国は、第3弾の制裁関税率の引き上げ(10%から25%)と第4弾の制裁関税の準備を表明し、中国に譲歩を迫った。

中国は、対米交渉を長期戦に持ち込み、自国有利の展開へ

中国は、米国の求めに応じることはできない。中国は共産党主導で経済の改革を進め、IT先端分野を中心に覇権を強化したい。

昨年12月、米中は首脳会談を開催し、貿易戦争を"休戦"すると発表した。中国は貿易不均衡の解消のために、米国から農産、工業品などを購入した。見方を変えると、中国にとって、米国の要請に応じて米国製の製品などを購入することは、難しいことではない。

しかし、覇権争いとなると、そうはいかない。中国は、中華思想の考えに基づき、自らを中心とした多国間の経済連携を進めたい。IT先端技術の高度化は、5G通信網やIoTの導入を通して、中国の需要取り込みに不可欠だ。

中国は、覇権強化への取り組みを加速させたい。同時に、経済への影響を抑えるために、米国との全面対立は避けなければならない。休戦表明により、中国は時間をかけて対米交渉を進め、自らに有利な状況を得ようとした。その考えに基づき、2月、中国は、知的財産保護と市場開放に関する協定書の作成に応じつつ、世論対策のために時間がほしいと米国に求めた。中国は、対米交渉を長期戦に持ち込み、自国有利の展開に持ち込もうとしたのだ。

中国が「地方政府による補助金の見直し」を渋ったワケ

5月、中国は、技術移転と補助金に関する合意を後退させた。習近平国家主席にとって、圧力を強める米国の求めに応じることはできない。共産党の最高指導者が米国に屈したとの見方が広がれば、同氏は弱腰と批判されてしまう。それは、支配体制の強化にマイナスだ。

中国経済が成長の限界に直面する中、補助金政策は、国家主導による経済運営=国家資本主義のために欠かせない。補助金の支給は、IT先端企業の研究開発力などを高めて「中国製造2025」を達成する要である。

加えて、補助金は、中国国内の需要刺激にも用いられる。まさに、"補助金なくして国家資本主義成り立たず"である。中央政府による補助金削減を認めた中国が、地方政府による補助金の見直しを渋ったのはこのためだ。

2020年の大統領選挙までに対中交渉にめどをつけたい

5月9日と10日の米中交渉は、双方の対立の根深さを浮き彫りにした。米中の貿易戦争は、長期化に向かう可能性が高まった。6月にはG20首脳会議に合わせて米中の首脳会談が行われ、そこで両国が歩み寄ることも考えられるが、先行きは不透明だ。

米国は、中国からの輸入品の残りすべてに対する第4弾の制裁関税を準備し始めた。米国は圧力をかけ、中国に譲歩を迫るだろう。同時に、第4弾の制裁関税が対象とする中国製品の4割が、スマートフォンなどの消費財だ。制裁関税引き上げは、米国経済を支える個人消費を減少させる恐れがある。夏場には2020年の大統領選挙戦が本格化する。トランプ氏としては、それまでに対中交渉にめどをつけたい。

中国はそれを念頭に、米国との交渉に臨むだろう。中国は時間をかけて米国がしびれを切らすのを待ち、国家資本主義体制の維持と強化に影響が及ばないようにしたい。米中交渉は一筋縄には進まないだろう。

実体経済にマイナスの影響が及ぶ可能性は高まった

米中の交渉が事実上決裂し、長期化の様相を呈したことは、世界経済にとって軽視できないリスクだ。もし、米国が第4弾の対中制裁関税を発動すると、中国経済はかなりの痛手を被る。IMFは米国が残りすべての中国からの輸入製品に関税をかけた場合、中国のGDP成長率は1.5ポイント程度低下すると試算している。

交渉が決裂した中で、米中が互いに歩み寄る展開は見込みづらい。両国がにらみ合いを続けるのであれば、徐々に先行きへの緊迫感が高まり、世界全体で企業や市場参加者がリスクを取りづらくなる。特に、中国経済の先行き懸念は高まるはずだ。それは、中国の需要を取り込んで景気が持ちなおしてきたドイツやわが国、アジアなどの新興国の減速リスクを追加的に高めるだろう。

交渉が決裂した後、短時間で協議を進め、溝を埋めることは口で言うほど容易なことではない。米中の協議の動向によっては、世界的に金融市場が混乱し、実体経済にマイナスの影響が及ぶ可能性は高まったと考える。

真壁 昭夫(まかべ・あきお)  法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。