日本囲碁規約「修正案」逐条解説
2011年8月吉日


II 日本囲碁規約「修正案」逐条解説


第一条



第一条(対局)
囲碁は、縦横十九路の盤による競技であり、歴史を有する文化である。その盤上で技芸を競うことを「対局」という。
2、 十九路盤以外の盤もある。

<解説>
 囲碁は知能的競技であり、永い歴史と伝統を有する文化でもある。標準は十九路盤が使われ、その他に十三、九路盤があり、将来は二十一路盤等を使用することも可能である。



第二条



第二条(着手)
対局者は、一方が黒石、他方が白石を持ち、交互に一子ずつ交点に打つ。
2、 着手放棄(パス)をすることができる。
3、 通常、対局は黒の先着で始まる。置碁の場合は黒の置石を置いた後、白の先着とする。

<解説>
 ・ 交互着手は権利である。
 ・ パスをする際は、「パス」の言葉、又はパスと分かる動作などで、相手方に意思表明をする。

       【一局の始まり】



第三条



第三条(取り)
一方の着手により、相手方の石に隣接するすべての交点が埋め尽くされた場合は、相手方のその石を取り上げる。石を取り上げた時点をもって着手の完了とする。取り上げた石を「ハマ」という。

<解説>

   黒1で白一子を取る                    黒1で白二子を取る



第四条



第四条(禁着)
相手方に取り上げられる状態の着手を打つことはできない。

<解説>

黒は、上辺の三つの△の着点をいずれも打つことはできない。
下辺の□の着点は白の石を先に取るため打つことはできる。  



第五条



第五条(劫)
交互に石一子を取り返し得る形を「劫」という。劫を取られた方は、次の手番でその劫を取り返すことはできない。

<解説>

上の三つの劫の図では、白2で黒1を取り返せない。


劫は、他への着手または着手放棄(パス)をした後に取り返せる。

白が他へ着手してから取り返す例 白2:パス
白がパスしてから取り返す例


第六条



第六条(投了)
対局の途中で、自らの負けを申し出て対局を終えることができる。これを「投了」という。この対局の結果を相手方の「中押勝」という。

<解説>
 「中押勝」 → ちゅうおしがち。



第七条



第七条(死活)
相手方の帰属になる石を「死に石」という。最終的に相手方の連続着手によっても相手方の帰属にならない石を「活き石」という。

<解説>
 ・ 相手方の帰属とは、相手方の石または相手方の石が囲んだ空点。
 ・ 石の死活の検証は、想定着手によって行う。
 ・ 検証は対象石側が先着、死活が判明した時点で終了とする。
 ・ 活き石と死に石以外の石を「セキ石」という。
 ・ 相手方の帰属になるのが一部分の場合でも、その石全体は死に石とする。

黒△の7子は死に石。 黒1:パス
左上隅の黒が死に石の検証
黒7には白8と取り上げ、
黒△が死に石と判明し、
検証終了。

  
左上隅の黒□の7子が活き石の検証。
白2に黒3と受け、以降白の連続着手によっても
白の帰属にならないため、活き石と判明する。
中央と右下隅の黒の活き石も同様。
   白○の2子がセキ石の検証。
白1に黒2の受け、白○の2子は
活き石と死に石以外の石である
ため、セキ石と判明する。


死活検証中、手順が循環する場合はセキ石とする。

左上隅と右下隅の
双方の石はセキ石。
図の黒○の石が
セキ石の検証。
黒3:パス、白4:パス
白6の後、同じ手順が循環するため、黒○の石はセキ石。右下隅も同様。


第八条



第八条(地)
一方の活き石で囲んだ領域を「地」という。地の一点を「一目」という。

<解説>
 一方のみの活き石に囲まれ、中の同色石が全て活き石、中の相手方の石が全て死に石の領域は地。


図の△の石は死に石。その他は活き石。
図の○の石は一時的に取られるが、最終的に相手方の
無制限の連続着手によっても相手方の帰属にならないため、活き石になる。
左上隅は白の活き石に囲まれているため、白地になる。
右上隅は黒の活き石に囲まれているため、黒地になる。
右下隅は双方の活き石に囲まれているため、どちらの地にもならない。



第九条



第九条(終局)
対局を共に終了させたい時、又はパスが三回連続した時は、双方が盤上の石の死活と地の帰属で合意すれば、終局となる。終局にならない場合は手番の方が対局を続行する。
2、 パスが四回連続した時、又は終局の合意が延々と達成されない場合は、石の死活と地の帰属は「死活」 (第七条) と「地」 (第八条)の規定に従い、終局とする。

<解説>
 ・ 対局の続行で手番の方が打つ意思がない場合は、パスをして差しつかえない。
 ・ 終局を拒否し、パスを含む循環手順を一方的に繰り返してはならない。


上の三つの図は黒A と打ち、パスを含む循環手順を一方的に繰り返す例。

 



第十条



第十条(地の計算と勝敗の決定)
終局後、地の中の相手方の死に石はそのまま取り上げ、ハマに加える。その後ハマをもって相手方の地を埋め、ハマが相手方の地を上回る場合は上回ったハマを自分の地の目数に加算する。双方の地の目数を比較して、その多い方を勝ちとする。同数の場合は引き分けとし、これを「持碁」という。
2、 勝敗に関し、対局者に異議がある場合は、双方は対局の再現等により、勝敗を確認しなければならない。

<解説>
 双方の対局者及び立会人(審判)が勝敗を確認した後は、この勝敗を変えることはできない。

 
図の○は地の中の死に石。そのまま取り上げることができる。
図の△は死に石だが、地の中ではないため取り上げることができない。
結果:黒地6目、白地6目、持碁となる。
なお白が終局前に上辺の黒△の2子を取り上げれば白勝ちになる。



第十一条



第十一条(無勝負)
手順が循環する状態により、どちらの対局者も譲らない場合は無勝負とする。

<解説>
 ・ 同一の手順が二回以上循環し、双方が譲らない場合は無勝負とする。
 ・ 手順が循環する事例:三劫以上、循環劫、長生などがある。

三劫 循環劫 長生


※注: 競技等の事情により、無勝負を避けなければならない場合は、対局者の消費時間またはニギリによって勝敗を決めることが考えられる。



第十二条



第十二条(反則負け)
一方が以上の規則に反した場合は、双方が勝敗を確認する前であれば、その時点で負けとなる。

<解説>
 反則行為があった場合は、勝敗確認前であれば、反則が判明した時点で負けとなる。






死活確認例

III 死活確認例


注:
・ 活き石と死に石以外の石を「セキ石」という。
・ 終局後、地の外の「死に石」は取り上げられない。そのことを「セキ石扱い」という。



死活例1

死活例1 「取らず三目」

a●●○○┬○
○●●○┼○○   
●○○○○┼┼  死活例1
●●●●┼┼┼  
├●┼●┼┼┼
●●●┼┼┼┼
隅の黒四子と白一子は「死に石」。終局後はともに「セキ石扱い」。


注:実戦では白aと黒四子を取る事が予想され、
最終的に白は約2目の利が得られる。



死活例2

死活例2 手入れ不要

┌●○┬◎●┬ 
●┼○a◎●┼  
○○○○●●┼  死活例2
●●●●┼┼┼  
├┼┼┼┼┼┼    
隅の黒二子と白◎の二子は「セキ石」。白六子は「活き石」。
白の目は地ではなく、黒はaに放り込む手入れは不要である。



死活例3

死活例3 「ハネゼキ」

●●●┬○●○┬ 
○○○○○●○┼ 
●●●●┼●○┼ 
○○○●●●○┼  死活例3
├●●●○○○┼ 
▲○○○○┼┼┼ 
○○┼┼┼┼┼┼ 
├┼┼┼┼┼┼┼ 
隅の黒三子、白六子、黒十三子、白三子はともに「セキ石」。
黒▲の一子は「死に石」。(「セキ石扱い」)



死活例4

死活例4

┌●┬┬●●●○●┬    
●●○○○○○○●┼    
├○●●●●●●●┼   
├○●┼┼┼┼┼┼┼  
●○●┼┼┼┼┼┼┼    死活例4
●○●┼┼┼┼┼┼┼  
●○●┼┼┼┼┼┼┼  
○○●┼┼┼┼┼┼┼    
●●●┼┼┼┼┼┼┼  
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼   
図の全ての黒石は「活き石」。
上辺の白七子と左辺の白七子はともに「死に石」。



死活例5

死活例5

a○●●┬◎●┬●
●●○●┼◎●●●  死活例5
●●○●●◎●┼●
○○○○○●●●┼
├┼┼┼○┼┼┼┼
○○○○┼┼┼┼┼
隅の黒四子、白一子は「死に石」。終局後はともに「セキ石扱い」。
その隣の黒五子は「活き石」、白◎の三子は「死に石」。


注:白◎の三子は地の中の死に石であるため、
実戦では白はaと黒四子を取る事が予想され、
その部分は最終的に白1目の利が得られる。



死活例6 死活例6 長生がらみ
長生になる寸前の形であるが、白がaに手入れすると半目負け、
黒がaに打つと長生無勝負というケースで、ともに打たない場合である。
┌○a●┬○●┬○┬
●○○○●●○○┼○
●●●●●○┼┼○┼ 死活例6
○○○○○○○○○┼  
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼
隅の黒八子とaの隣の黒一子は「セキ石」。
結論:白の手入れは必要。



死活例7−1

死活例7−1 「隅の曲り四目」

●●●┬○●┬  
├○○○○●┼
○○●●●●┼   死活例7−1  
●●●┼┼┼┼ 
├┼┼┼┼┼┼
隅の黒三子は「活き石」、白七子は「死に石」。



死活例7−2

死活例7−2 「隅の曲り四目」と「万年劫」の併存

●●●┬○●┬
├○○○○●┼
○○●●●●┼
●●┼●┼●┼
├●●●●┼┼   死活例7−2
○○○○○○┼
●●●●●○┼
●○○┼●○┼
○┴○┴●○┴
両図が併存している場合でも、左上隅の白七子は「死に石」。
「両劫ゼキ」との併存の場合も同じ。



死活例8

死活例8 「眼あり眼なし三劫」

┌┬┬┬┬┬   
○○┼┼┼┼   
●○┼┼┼┼  
├●○○○┼  
●●●●○┼   
○●┼●○┼    
├○●○●┼    死活例8 
○○○○●┼    
├○●●●┼    
○○●┼●┼    
●●●┼┼┼    
├┼┼┼┼┼   
コウ絡みの黒九子と白十子はともに「セキ石」。



死活例9

死活例9 劫関連の手入れ

●○a●○┬┬  
├●●●○┼┼  
●●○○○┼┼  死活例9
○○○┼┼┼┼  
├┼┼┼┼┼┼  
隅の黒七子、白一子はともに「活き石」。
結論:黒aの手入れは必要。



死活例10

死活例10 一手ヨセ劫手入れ不要

●○a┬●○┬  
├●●●●○┼  
●●○○○○┼   死活例10 
○○○┼┼┼┼  
├┼┼┼┼┼┼
隅の黒八子は「活き石」。白一子は「死に石」。
結論:黒aの手入れは不要。



死活例11

死活例11 「両劫に仮生一」

●●○┬○●○┬○
├●●○○●○○┤
●○┼○●●●●○    死活例11
○○○○●┼┼●●
●●●●●┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┤
右上隅の白五子は「死に石」。
左上隅の黒と白は「セキ石」。



死活例12

死活例12「万年劫」

○┬○┬●○┬
●○○┼●○┼
●●●●●○┼   死活例12
○○○○○○┼
├┼┼┼┼┼┼
隅の黒と白はともに「セキ石」。



死活例13

死活例13

●●┬●○●┬    
├○●┼○●┼   
○○○○○●┼   死活例13  
●●●●●●┼ 
├┼┼┼┼┼┼                    
隅の黒と白はともに「セキ石」。



死活例14

死活例14

├┼┼┼┼┼
○○○┼┼┼
●●○┼┼┼
├●○┼┼┼
a●○┼┼┼
●●○┼┼┼
├●○┼┼┼  死活例14
○●○┼┼┼
├○●┼┼┼
○○●┼┼┼
├○●┼┼┼
○○●┼┼┼
●●●┼┼┼
└┴┴┴┴┴
左辺の白七子は「セキ石」。黒八子は「活き石」。
結論:白aの放り込みが必要。



死活例15

死活例15

├┼┼┼┼┼┼
○○○○○○┼
○●●●●●┼
●┼┼┼┼●┼
├●┼┼┼●┼
○●┼┼┼●┼
├○●┼┼●┼  死活例15
○●●┼┼●┼    
├○●●●●┼
○○○○●┼┼
●○┼○●┼┼
●●●○●┴┴
隅の黒四子は「活き石」、白十一子は「死に石」。 



死活例16

死活例16

├┼┼┼┼┼┼┼┼
●●●┼┼┼┼┼┼
○○●┼┼┼┼┼┼
├○●●●┼┼┼┼
○○○○●●●○┼
●○┼○○○●○┼    死活例16
├●○●●●○○┼
●●●●┼●○┼┼
○○○●●●○┼┼
├○●○○○○┼┼
○○●●●●●┼┼
├○●┼┼┼┼┼┼
◎●┼┼┼┼┼┼┼
◎●●┼┼┼┼┼┼
└◎●┴┴┴┴┴┴
隅の白◎の三子は「死に石」。(「セキ石扱い」)
左辺のその他の黒と白は「セキ石」。



死活例17

死活例17

├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
●●●┼┼┼┼┼┼┼┼
○○●┼┼┼┼┼┼┼┼
├○●●●┼┼┼┼┼┼
○○○○●┼┼┼┼┼┼
●○┼○●○○○○┼┼    死活例17
├●○●○○●●○┼┼
●●●●●●┼●○┼┼
○○○●○●●●○┼┼
├○●○○○○○○●┼
●○●●●●●●●●┼
●○○○●●┼┼┼┼┼
●┴○┴◎●┴┴┴┴┴
下辺の白◎の一子は「死に石」。(「セキ石扱い」)
左辺のその他の黒と白は「セキ石」。



死活例18

死活例18

┌○┬●○●○┬┬┬
○●●●○●○○┼┼
├●○○○●●○○┼
●●○○┼◎●●○┼
○○○┼◎●┼●○┼    死活例18
●●○○●┼●●○┼
├●●○○●●○┼┼
├┼●●●○○○┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼
上辺の黒十三子と白◎の二子は「セキ石」。
隅の白二子と白十四子は「活き石」。隅の黒七子は「死に石」。



死活例19

死活例19

●┬○┬○┬●○┬┬
●○○○●●●○┼┼
●○●●○┼●○┼┼
├○●○○●●○┼┼   死活例19
○○●●●●○○┼┼
●●○○○○○┼┼┼
├●●●┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼
白十二子は「活き石」。黒十七子は「死に石」。



死活例20

死活例20

●┬○┬○┬●○┬┬
●○○○●●●○┼┼
●○●●○○●○┼┼
├○●┼○○●○┼┼    死活例20
○○●●●●●○┼┼
●●○○○○○○┼┼
├●●●┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼
黒と白はともに「セキ石」。



死活例21

死活例21

●┬○┬○┬●○┬┬┬
●○○○●●●○○┼┼
●○●●○○●●○┼┼
├○●┼○○○●○┼┼    死活例21
○○●●●●●●○┼┼
●●○○○○○○○┼┼
├●●●┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
黒十九子は「活き石」、白十四子は「死に石」。



死活例22

死活例22

○┬●┬○┬○┬○●┬┬
○○●●●○○○○●┼┼
●●●○○●●●●●┼┼    死活例22
○○○○┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
黒七子は「活き石」。白十子は「死に石」。
黒は白三子を打ち上げる手入れ不要。



死活例23

死活例23

┌○┬○○●┬○●┬┬
◎●○┼○●┼○●●┼
├●●○○●●●○●┼
●┼●●●○○○○●┼   死活例23
◎◎●○○○┼┼┼┼┼
◎●●○┼○┼┼┼┼┼
●●○┼○┼┼┼┼┼┼
○○○○○┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
白◎の4子は死に石。(「セキ石扱い」)
その他の黒十七子と白九子は「セキ石」。



死活例24

死活例24 「地」と二段劫

┌△●●┬┬●○┬┬
○●●┼●●●○┼┼
├○●●○○○○┼┼
○○┼●○┼┼┼┼┼
├○●●○┼┼┼┼┼   死活例24
○○○○●┼┼┼┼┼
├○●●●┼┼┼┼┼
○○●┼┼┼┼┼┼┼
●●●┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼
白△の一子は「死に石」。(「セキ石扱い」)
その他の石は「活き石」。
左上隅の双方の地は:黒地3目、白地3目。



死活例25

死活例25 「両劫ゼキ」

┌●┬●○●┬
●●●○○●┼
○●○┼○●┼
├○○○○●┼   死活例25
○○●●●●┼
●●●┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼
黒六子と白十二子はともに「セキ石」。



 

日本囲碁規約「修正案」逐条解説