日 本
棋 院
囲碁規約
1949(昭和24)年10月2日制定


前 文  財団法人日本棋院は、
 囲碁は、永年の歴史と伝統を有し、その技はまことに深慮を極め、その興味は無限に及ぶ智能的競技として発展し、大衆の熱愛する国民文化として、芸術的価値がすこぶる偉大なものがあることを革新し、且つ精神修養と友誼社交とに資するところが甚大であることを認めるとともに、
 今や囲碁が国際的に普及する段階に達しており、今後国際的囲碁競技にまで進展することが期待され、その実現によって国際親善と世界平和の増進に貢献するものがあることを思い、
 しかるに、囲碁競技において準拠すべき諸規約が今日までまだ法典化されていないことを深く遺憾とし、
 内外の事情により囲碁規約の制定がまさに刻下の緊要事であることにかんがみ、
 さきに、各方面の権威者をもって組織した囲碁規約制定委員会を設け、その慎重審議の結果得たところの成案について検討を加えた上、これを採択することを決定し、
 ここに、日本棋院の名とその権威とにおいて、日本棋院囲碁規約を左の通り制定する。

第1章 総 則

概 念 第1条
 囲碁は、甲及び乙を対局者として、碁盤及び碁石を用い、手合割を定め、この規約に定める着手禁止制限の場合を除く外、盤面における彼我の占める地の多少を争うことを目的として、交互に盤面任意の点に着手し、終局に至り彼我の地を計算して勝敗を決定する。
但し、第37条の場合においては、地を計算しないで勝敗を決定する。(注:第37条とは中押勝の場合をさす)

規約の適用 第2条
 この規約は、囲碁競技に適用すべき規定であって、当該条項のうと対局者の協定又は合意により決定すべきことを定めたものについては、対局前又は適時に対局者が適当に決定する。

対局、対局者の意義 第3条
 この規約で「対局」とは、囲碁の競技をすることをいい、「対局者」とは囲碁の競技をする者をいい、「一局(又は一番)」とは一回の競技をいう。

第2章 対 局 者

対局者の平等 第4条
 対局者は、その棋力に応じて第4章に規定する手合割に基づく着手の前後又は置碁の方法等による外、すべて同一平等の条件で競技する。

対局者の数 第5条
 一局の対局者の数は、通常甲、乙2人とする、但し、第49条に定める連碁及び相談碁その他の競技においては、2人を超える対局者によって行なわれる。

専門棋士と
アマチュア
第6条
 競技の方法に応じて、対局者に専門棋士とアマチュア(素人)との区別を設ける。その資格条件等は、第10章に定めるところによる。

段級位 第7条
 日本棋院は、囲碁に練達な者又は習熟した者に対して、その棋力に応じて、段位又は級位を認定し、免状を交付する。
2 段位は、九段を最高とし、以下初段に至る。段位に至らない棋力の者を級位とし、級位は、1級を最高とし、以下9級に至る。
3 段級位の認定の標準及び手続きは、日本棋院の定める内規による。

名 人 第8条
 囲碁の最高権威者としての地位を占める者として別に定める条件によって、名人を置くことができる
2 名人は、別に定める手続により選考を経た上、日本棋院が推挙する。

第3章 用 具

碁 盤 第9条
 碁盤は、縦横各々19の等隔平行線を記した平面であり、通常縦1尺5寸(約45センチメートル)、横1尺4寸(約42センチメートル)程度の木製盤を用いる。これを標準盤と称する。なお碁盤の厚さは、通常5寸(約15センチメートル)とし、4本の脚をもって支える。但し、その大きさ及び材料については、標準盤の基準によらないでも競技に差しつかえない。
2 碁盤の平行線のうち、黒石をとっている対局者の方を見て、その縦線は左から起算して順次に1、2、3線と呼び、以下19線に至り、又その横線は、上から起算して順次に一、二、三線と呼び以下十九線に至る。
3 前項の縦横平行線の交点を「点」(又は路、ポイント)と称する。点は、総計 361とする。点は、その平行線交点の所在により「1の一」、「2の二」、「19の十九」等と呼ぶ。
4 前項の点のうち、4線、10線、16線と、四線、十線、十六線の各交点にある点を「星」(ほし)と称する。星は、合計9とし、次の名称を付する。
 第1星 「16の四」の点
 第2星 「4の十六」の点
 第3星 「16の十六」の点
 第4星 「4の四」の点
 第5星 「16の十」の点
 第6星 「4の十」の点
 第7星 「10の四」の点
 第8星 「10の十六」の点
 第9星 「10の十」の点
  第9星は「天元」とも称する。

第1図
碁盤星の図

碁 石 第10条
 碁石は対局者の着手を盤面に現わす用具であって、通常黒、白二色の円形の石を用いる。
2 碁石の大きさは、碁盤の大きさに適応し、縦平行線の間隔に相当するものとする。第9条第1項の標準盤に使用する碁石は、通常その直径を7分3厘(約2.2センチメートル)とし、これを標準碁石と称する。
3 碁石の数は、黒石 181個、白石 180個とする。但し、通常の競技においては、着手は、右の石数の全部を必要とすることはないから、これより少ない数の碁石でも競技に差しつかえない。
4 対局中に着手に必要な碁石に不足を生じたときは、これを補足するため、第26条に定める「ハマ」が双方にある限り、便宜これを交換することができる。

碁 器 第11条
 碁石は、適当の大きさのふたつきの容器に入れる。この容器を「碁器」と称する。
2 碁器のふたは、対局中に生じた第26条の定める「ハマ」を終局まで保有する容器として用いる。

第4章 手 合 割

手合割の定義 第12条
 対局者の気力の対等又は優劣に応じ、甲、乙いずれが先着するか、又は置石の数(ハンディキャップ)をいかにするかの基準の定めたものを「手合割」と称する。

手合割の種類 第13条
 手合割は、互先、先相先、先、先を伴う置碁及び二子以上の置碁の5種とし、なお、特殊の場合は、込碁を併用する。

互 先 第14条
 対局者の棋力が対等する場合は、手合割を互先と称する。
2 互先の対局においては、対局開始前「握り」によって先着者を決定する。「握り」とは、対局者の一方が任意の数の石を握り、他方が「奇数先」又は「遇数先」の選択を述べ、その石数の奇数又は偶数を計算して先着者を決定する方法をいう。
3 前項により第1局において先着者となった者は、第2局においては後着者となり、以下交互に先着者又は後着者となる。
4 先着者は黒石を用い、これを黒番(又は先番)といい、後着者は、白石を用い、これを白番という。

先相先 第15条
 対局者の棋力に差があり、その差が次条の先に至らない程度の場合は、手合割は先相先(又は先互先)と称する。
2 先相先の対局においては、下手(棋力の劣っている方をいう、以下これに同じ)は第1局黒番、第2局白番、第3局黒番とする。第4局以下3局ごとに右に準じて対局する。
3 先相先の手合割は、第17条第2項の乙又は丙による場合は、用いない。

第16条
 対局者の棋力の差が一方が常に先着すれば足りる程度の場合は、手合割を「先」と称する。
2 先の対局においては、下手は、毎局黒石をもって先着する。

置 碁 第17条
 対局者の棋力の差が前条の先をこえる程度の場合は手合割を先を伴う置碁又は2子以上の置碁と称する。この手合割による対局は、下手が常に黒石をとる。

2 前項の手合割は、棋力の差に応じ、次の段階に区分する。
   甲(3分の1子刻みによる段階)
    先を伴う置碁  (1)先2先
            (2)2先2
    2子以上の置碁 (3)2子
            (4)232子
            (5)323子
            (6)3子
   乙(2分の1子刻みによる段階)
    先を伴う置碁  (1)先2
    2子以上の置碁 (2)2子  (3)2・3子
            (4)3子  (5)3・4子
            (6)4子
    以下既述に準じ、段階を設け9子に至る。
   丙(1子刻みによる段階)
    2子以上の置碁
            (1)2子  (2)3子
            (3)4子  (4)5子
            (5)6子  (6)7子
            (7)8子  (8)9子
    以下棋力の差に応じ25子に至ることができる。

3 前項の甲段階による手合割先2先の場合においては、下手は、第1局先番、第2局置石2子、第3局先番とし、第4局以下3局ごとにこの方法を繰り返して対局する。2先2子、232子、323子の場合も3局ごとにこれに準じて対局する。2子又は3子の場合は、毎局置石2子又は3子をもって対局する。

4 第2項の乙段階による手合割先2の場合においては、下手は、第1局先番、第2局2子とし、第3局以下2局ごとにこの方法を繰り返して対局する。2子以上の置碁の場合は、2局ごとに又は毎局、手合割表示の数だけの置石をもって対局する。

5 第2章の丙段階による手合割においては、毎局手合割表示の数だの置石をもって対局する。

6 日本棋院所属専門棋士間の対局には、段位を基準として既述の甲段階による手合割を採用する。

7 手合割段階は、対局者の合意により、右のいずれをも採用することができ、又、これと異なる定をすることができる。

手合割の
変更
第18条
 対局者間の手合割の変更は、通常4局勝越しの場合に1段階ずつ行うものとする。但し、対局者の合意により別の定をすることができる。
2 日本棋院所属専門棋士の手合割は、前章にかかわらず、その段位に変更があったときは、変更する。但し、10番碁、勝抜戦(第49条)等連続する対局その他において対局者が昇段した場合においても、手合割を変更しないことをあらかじめ定めてある場合はこの限りでない。

込 碁 第19条
 互先の対局において、1局又は3局等の奇数局の競技によって勝敗を決しようとするときは、対局者双方の合意によって、込碁の方法を採用し、黒番対局者の有利に基づく手合割の不均衡を調整することができる。

2 込碁は、第37条の規定によって中押しとなった場合を除き、終局において黒番対局者の得た地(第34条)から通常4目半を控除して計算し、勝敗を決する。但し、この込目数は、対局前対局者の合意により、適当に定めることができる。

3 込碁は、先相先又は置碁の場合においても、手合割の全局数を競技しないで勝敗を決しようとする場合に、対局者双方の合意によって既述に準じて採用することができる。

4 第1章及び前章の外、込碁は、対局者双方の合意によって置碁の手合割を有する黒石をとる方が先をもって又は置石数を減じた手合割をもって対局しようとするような特殊の場合において、上手方(棋力の優位な者をいう)の有利に基づく手合割の不均衡を調整するため、適当と認める込目数をあらかじめ定めて採用することができる。

第5章 着 手

着手の順序 第20条
 着手は、先又は先番の場合には、常に黒が先着し、次いで白が後着し、以下交互に一着ずつ着手する。

置石の配置 第21条
 置石の配置は、9子以下の場合は、星の上にする。その星及び配置の順序は、置石の数に応じ、次の通りとする。
  2子の場合 第1星及び第2星の順序
  3子の場合 第1星から第3星までの順序
  4子の場合 第1星から第4星までの順序
  5子の場合 第1星から第4星まで及び天元の順序
  6子の場合 第1星から第6星までの順序
  7子の場合 第1星から第6星まで及び天元の順序
  8子の場合 第1星から第8星までの順序
  9子の場合 第1星から第8星まで及び天元の順序
2 10子以上の置碁においては、9子までは、前章により、その余は、一定の点に置く。(付図第1図規約末尾参照)

着手の選択 第22条
 着手の個所は、点の上とし、第27条及び第28条に定める着手禁止又は制限の場合を除く外、対局者は、終局に至るまで盤面上で現に着手しないいかなる点をも選択することができる。

着手の義務 第23条
 交互着手は、第35条の定める終局における場合を除く外、対局者双方が実行しなければならない。

当り 第24条
 対局中において、相手方の1個又は一連の石に隣接している各点中1点を除きすべて自己の石で囲んだ場合は、その相手方の石の形を「当り」という。

取り 第25条
 前条により「当り」となっている相手方の石に対し、最後の着手をした場合は、着手者は、この石を取りあげなければならない。これを「取り」という。(付図第2図参照)

第二図
当たりと
取りの図

1○●┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬●○
○●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼1
●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼●┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼●○●┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼1┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●┼┼┼┼┤
●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●○●┼┼┼┤
○●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼1○●┼┼┼┤
1┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼●○●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
└┴┴┴┴●○○1┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘

「ハマ」 第26条
 前条により取りあげた石は「ハマ」と称する。

着手禁止 第27条
 対局者は、相手方の石を取り上げる場合の外は、次の着手をしてはならない。
1 相手方の石で囲まれている1個の点への着手
2 相手方の石で囲まれている2個以上連続する点であって自己又は相手方の石の着手により1点が残っている場合におけるその残りの1点への着手(付図第3図参照)

着手制限
劫及び劫立て
第28条
 交互に相手方の石1個を取り返し得る形を「劫」(コウ)と称する。

2 劫が生じた場合において甲が乙の石を取り上げたときは、乙は、1回以上他の個所に着手した後でなければ、甲の石を取り返すことはできない。この目的をもってする他の個所への着手を「劫立て」という。甲の着手もまたこれに準ずる。

3 劫立ては、これを行なわないで劫にある石をとることに因って生ずる無限の同形反覆を防止するためにする着手の制限であって、これを「同形反覆禁止の原則」という。(付図第4図参照)

第三図 A
着手禁止の図

┌┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┐
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○a○┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○┼┼┼┼┤
├┼┼┼○┼┼┼┼┼┼┼○●○┼┼┼┤
├┼┼○a○┼┼┼┼┼○●a○┼┼┼┤
├┼┼○●○┼┼┼┼┼┼○○┼┼┼┼┤
├┼┼┼○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
└┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘


着手禁止
でない図

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├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼●●┼┼┼┼┼┼┼○●┼┼┼┤
├┼┼●○○●┼┼┼┼┼○a○●┼┼┤
├┼●○a○●┼┼┼┼┼┼○●┼┼┼┤
├┼●○○○●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼●●●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼●○●┼┼┼┼┼┼┼○●┼┼┤
├┼┼┼○a○┼┼┼┼┼┼○●○●┼┤
├┼┼┼○●○┼┼┼┼┼○●a○●┼┤
├┼┼┼┼○┼┼┼┼┼┼┼○○●┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
└┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘

4 対局中において、盤面に同時にA、B、2個の劫(両劫)ができた場合においても、前章の同形反覆禁止の原則を適用する。従って、対局者甲がAの劫にある乙の石をとろうとするとき、Bの劫の乙の石を取った直後であって、その着手が同形反覆となる場合においては、第2章に準じ1回以上他の個所に劫立てをしなければならない。対局者乙の着手もまたこれに準ずる。

第四図
劫の形の図

┌┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┐
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●@●┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●┼┼┤
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├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○a○●┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
└┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘

5 対局上稀に生ずることがある三劫、四劫、その他の劫形及び劫に類する長生等の奇形については、日本棋院は、第3項の同形反覆禁止の原則にもかかわらず、着手の制限及び終局における措置等について当別の定をし、これに準拠すべきものとすることができる。(別項判例付図参照)

第6章 活(いき)、死(しに)、「セキ」及び地(じ)

第29条
 第27条の規定によって対局者が着手することができない点を「眼」と称する。

眼形 第30条
 眼は、着手により1点の周囲8点のうち7点以上を自己の石によって囲んだ点であり、又交互着手により同様の形となることができる点をいう。但し、碁盤四隅の点(1の一、1の十九、19の一、19の十九)については、自己の石により周囲3点を、又、以上四隅を除く碁盤四周辺の各点においては、その周辺5点を自己の石を囲んだ点か又は交互着手によって同様に囲むことができる点をいう。

2 前項以外の形により自己の石で囲んだ点又は交互着手によっても前項の形とならない点は「欠眼」という。

活(いき) 第31条
 前条第1項の眼を2個以上有し、又は交互着手してもこれを2個以上確保することができる形の一連の石は、これを「活」(いき)という。
2 眼2個中欠眼1個の場合、又は欠眼2個の場合においても第27条の着手禁止の規定により石を取り上げることができない形の一連の石は、前項の規定にかかわらず、活とする。(付図第5図参照)

第五図(I)
活の図

┌┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┐
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○○○
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●●
├┼┼┼┼○○○┼┼┼┼┼┼┼┼○●┤
├┼┼┼┼○●●○○○┼┼┼┼┼○●●
├┼┼┼┼○●┼●●○┼┼┼┼┼○●┤
├┼┼┼┼○●●┼●○┼┼┼┼┼○●●
├┼┼┼┼○○○●●○┼┼┼┼┼○○○
├┼┼┼┼┼┼┼○○○┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
○○○○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
○●●○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
●┼●○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
└●●○┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘

第五図(II)
活の図

┌┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬○●┬┬┬┐
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●●●●●
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○○○○○○
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
○○○○○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
●●●●○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼●○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├●●○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
●●○○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
○○○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○○○○○○┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●●●●●○┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●○○○●●┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●○┼○┼●┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●┼○┼○●┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●●○○○○●
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○○●●●○●┤
└┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘

セキ 第32条
 対局者双方が一連の石がともに眼がなく、又は眼1個であって双方いずれから着手しても、相手方の石を取り上げることができない形となっているものを「セキ」という。
2 「セキ」となっている石は、双方とも活とみなす。(付図第2図規約末尾参照)

死(しに) 第33条
 前2条に該当しない一連の石又は交互着手の結果前2条に該当しない形を有する一連の石は「死」(しに)という。(付図第6図参照)

第六図(I)
死の図

┌┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬●┐
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○○○●
├○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●●┤
●○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●┼●
├●○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●●○
●●○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○○○○
├●○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
●●○┼┼┼┼┼┼┼┼○┼┼┼┼┼┼┤
○○○┼┼┼┼┼┼○┼┼○┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼○┼●●○┼○┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼○┼●┼●●○┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼○○●┼●○┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●●○┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○○○┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
└┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘

第六図(II)
死の図

┌┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬○●┬○○┐
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●●○○●
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○○●●●●
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○○○○
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
●●●●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
○○○┼●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
●●○○●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●┤
●●●○●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●┼●┤
├●○○●┼┼┼┼┼┼┼┼┼●┼┼┼┤
○○○┼●┼┼┼┼┼┼┼┼●┼○○○○
●●●●┼┼┼┼┼┼┼┼┼●┼○●●┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●┼○┼●┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●┼○○○
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●┼●┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●┼●┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
└┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘

地(じ) 第34条
 活きている石で囲み、相手方の侵入することのできない盤面の点を「地」(じ)と称する。この場合において、その1点を一目の地とする。但し、「セキ」となっている一連の石で囲まれている点は、これを地とみない。(付図第7図参照)

第七図(II)
地の図

┌┬┬┬○●┬┬┬┬┬┬┬┬○●┬┬┐
├┼┼┼○●┼┼┼┼┼┼┼┼○●┼┼┤
├┼○○○●┼┼┼┼┼┼┼┼○●┼┼┤
○○○●●●┼┼┼┼┼┼┼┼○●┼┼┤
●●●●●┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●●●●
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○○○○○
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼○○○○○┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼○○●●●●●○┼┼●●●●
├┼┼┼┼○●┼┼┼┼●○┼┼●○○○
├┼┼┼┼○●┼┼┼┼●○┼┼●○┼┤
├┼┼┼┼○●●●●●○○┼●○┼┼┤
├┼┼┼┼┼○○○○○┼┼┼●○┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●○┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●○┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●●○┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●○┼┤
└┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴●○┴┘

第7章 終 局

終局の定義 第35条
 対局者双方が着手の完了したことに同意したときをもって、終局とする。

着手放棄
及び復活
第36条
 終局について双方意見が一致しないときは、終局したことを認める方は、自己の着手を放棄して、相手方に着手させることができる。
2 前項によって着手を放棄した後であっても、必要と認めるときは、着手放棄は、随時交互着手を復活する自由を有する。

中押及び
時間切れ
終局
第37条
 対局中において、対局者のいずれか一方が敗勢を認め、又は前条第1項に定める事由以外の事由によりその着手を放棄した場合も終局とする。この場合は、着手を放棄した者の相手方をもって勝とし、「中押勝」と称する。
2 第54条に定めるところにより対局時間制を採用している対局において、一方が時間切れとなったときは、これをもって終局とし、相手方を勝とする。

作碁
(つくりご)
第38条
 第35条の規定により終局となった場合は、「作碁」(つくりご)とし、次条以下の方法により勝敗を定める。

だめ埋め 第39条
 対局者双方の地に属しない盤面上の点は、「だめ」といい、対局者は、適宜に自己の石をもってこれを埋める。

手入れ 第40条
 対局者は、前条により「だめ」を埋めることにより自己の地内に相手方が侵入することができる形となる場合、又は既に死んでいる相手方の石が「セキ」の形となる場合は、自己の地内の必要な個所に着手しなければならない。この着手を「手入れ」という。但し、交互に「だめ」を埋めることによって「手入れ」を必要としない形の石については対局者は、交互にだめを埋め、手入れをする必要がない。(別項判例付図参照)
2 対局者の一方が前項により手入れを必要とする個所へ手入れをせず、且つ、相手方が手入れの必要を注意してもこれに応じないときは、その相手方は、だめを埋めた後においても、着手を復活し、第35条による終局まで交互着手を行うことができる。

地埋め 第41条
 前2条によって「だめ」埋め及び手入れをした後、対局者は、自己の活石をもって囲まれた中にある相手方の死石は取り上げ、第26条の「ハマ」と合せて、これをもって相手方の地を埋める。

「セキ」
にある石
の取上げ
第42条
 前3条の場合において「セキ」となっている自己の石で囲まれた眼の中にある相手方の石は、「セキ」の形が崩れない程度に着手して取り上げ、なお必要の限度まで相手方に石を入れさせて、これを着手して取り上げ、自己の「ハマ」とすることができる。(付図第8図参照)

第八図
セキのある石
の取上げの図

┌┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬●○┬○●○←
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●○○○●○←注:左の2目を
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●●○┼●┤   取ることができる)
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●○●●●
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●●○○○
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤此のセキで黒は二目の白を
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤ハマとして取ることができる。
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
└┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘

地作り 第43条
 対局者は、相手方の地を計算に便宜な形に整理する。これを「地を作る」という。

地目計算と
勝負決定
第44条
 前条により地を作った後に、対局者双方の地目の合計を比較し、その多い方を勝とし、少い方を負とする。この場合白何目勝、又は黒何目勝という。地目同数の場合は「持碁」(じご)という。(付図第9図参照)
2 前項の地目の計算に当り、対局者甲の「ハマ」が乙の地を埋めてなお残余があるときは、その残余数だけを甲の地目に加えてその地目合計を算出する。
3 第1項の場合、込碁の対局においては、込みを出す方の地目合計から込み目数を差し引いて地目を計算するものとする。

第九図
地作り及び
地目計算の図

●●●○┬┬┬┬○●●┬┬┬┬┬●●○
●●○○┼┼┼┼○●●┼┼┼┼┼●●○
●●●○┼┼┼┼○●●┼┼┼┼┼●●○
●●○○┼┼┼┼○●●●●●●●●○○
●●○○┼┼┼┼○●○○○●○○○○○
●●●○○○○○○●○○○○○○○○○
├┼┼●○┼┼┼○●○┼┼┼○○●●●
├┼┼●○┼┼┼○○○┼○┼○●┼┼┤
├┼┼●○┼┼┼○○○┼○┼○●┼┼┤
├●┼●○○○○○○○┼┼┼○●┼┼┤
├┼┼●●●●○●●●○○○●●┼●┤
├┼┼●┼┼●●●●●○○●●●┼┼┤
├┼┼●┼┼┼●●●○○●○●●┼┼┤
●●●●●●●●●○○●●○●●┼┼┤
├┼●●○○●○●●●●●○●○●●●
├┼●○○○○○○○○○○○○○○●●
├┼●○○○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○○●
├┼●○○○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○○●
└┴●○○○┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴○○●

第8章 疑義の判例及び判定

判例 第45条
 前28条第5河野場合、又は「活」、「死」又は「セキ」の何れに属するか、終局における「手入れ」の要否又は方法及び「地」計算をいかにすべきか、その他の競技上生ずる疑義については、この規約付属日本棋院判例により決定する。

判定 第46条
 前条に該当する事項であって、現に判例のないものについては、今後、日本棋院の審査を経て判定するところによる。


*第9章「競技の実行」以降については、次ページをご覧ください。


旧・日本棋院囲碁規約 part_1