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日 本
棋 院
囲碁規約 part2
1949(昭和24)年10月2日制定


第9章 競技の実行

対局前の決定事項 第47条
 公式又はこれに準ずる競技においては、対局開始前、対局者は、次の事項を協定しなければならない。
1 対局者の手合割及び込碁の方法を用いる場合には、その込目数
2 対局数
3 競技の種類
4 時間制の採否、もしこれを採用するとすれば、各対局者の持時間
5 立会人及び記録係を付するかどうか
6 対局について準拠する囲碁規約等

準拠規約及び
特別の定め
第48条
 日本棋院は、前条第6号については、対局者がこの囲碁規約に準拠することを勧奨する。この場合において、この規約中対局者の合意によって特別の定をすることを認めた条項に基づいて必要な特別の定をしようとするときは、対局開始前にしなければならない。

競技の種類 第49条
 現在普通行なわれる競技の種類は、次の通りである。

 参加者2人のみの競技
 一局(又は一番)により勝敗を決定するもの。(これを「一番勝負」という)
 三局、五局、十局等多数の対局を定め全局数を通算してその勝敗を決定するもの。(その局数に応じ「三番碁」、「五番碁」、「十番碁」等という)この場合において一定局数(例えば四局)勝ち越したときは、手合割を変更するものを「打込制」という。
 参加者2人を超える競技
1 連碁
 一局の対局者は、原則として2とするも、場合によって対局甲1人対し、乙は2人以上連合し、又は双方2人以上連合して行なうことができる。これを「連碁」という。
 連碁においては、対局者双方その着手の順位をあらかじめ定め、その順位により各自交互に着手する外、対局者2人の場合と同様に競技する。但し、連碁に特有な次の競技方法がある。
(1) 着手の順位に応じ1人一手ずつ循環着手して終局に至るもの。(これを「一手連碁」という)
(2) 着手の順位に応じ1人二手以上(三手、五手等)一定の着手限度を定め、交互着手を行ない、以下循環して終局に至るもの。(これを「三手連碁」等という)
(3) 参加者双方多数に上り1人1回一手(又は二手以上)の着手をもって終局に至ることができる場合には、各参加者は、順位に応じ1回限りその所定の着手をし、終局に至るもの。(「全員一手又は二手連碁」等という)
 相談碁
同一局に対局者甲、乙双方に2人以上参加する場合に双方着手について自分の対局者と相談する自由を認めるもの。これを「相談碁」という。
 勝抜敗退碁
競技参加者多数であっても、各人独立し、順番を定めておいて一局毎に敗者は退き勝者は残り、勝者は自己が敗退するまで対局を連続するもの。これを「勝抜敗退碁」という。この競技においては、一定局数を連勝した者をもって優勝者とする。(例えば、3人抜、5人抜、10人抜というように
 団体対抗競技
対局者双方多数であって、且つ、同数である場合、くじびき又は棋力の順位等により各自の対局組合せを作り、各組ともに同時に対局し、勝局数の多い方を勝とするもの。これを団体対抗競技という。
団体対抗競技においては、場合により、勝抜敗退碁の方法によることもできる。
 総当り戦競技
競技参加総員が相互に各一局ずつ対局し、各参加者別に勝敗局数を計算し、勝局率により順位を定めるもの。これを「総当り戦競技」という。
 特殊方法を伴う競技
 隔地者間の競技
囲碁は、対局者双方同一の碁盤に向い対座して競技することを常とするが隔地者間において、電報、郵便、ラジオ等によりその着手を相手方に通ずる方法によって行うことができる。
 写し碁盤を伴う公開競技
囲碁の競技は、適当の広さの室内において行うことを常とするが、大ホール又は野外において公開競技をすることができる。この場合、別に観衆から見やすい大型の碁盤を適当の箇所に備え、対局者毎の着手をこれに写すものとし、場合により解説者を付し解説することができる。本競技は、通常早碁の方法による。(第55条)
 特殊の目的を有する競技
 アマチュア選手権競技
アマチュアの資格を有する者が参加し、アマチュア選手権を決定する競技である。この場合参加者は、互先の手合割をもってし、通常トーナメント式競技方法による。
 日本棋院大手合
日本棋院所属専門棋士によって毎年春季及び秋季定例的に行なわれる昇段資格を決定するもの。これを「大手合」という。本手合は一棋士一季六局又は八局とし手合割は段位による。但し、目下のところ置碁の手合割になる段位棋士間の競技は行なわない。
前項の大手合においては、手合割に応じ勝局、敗局等により差等点数を付し、五段以上の棋士及び四段以下の棋士を区分して優勝者その他参加者の順位を定めるとともに、一定局数について一定平均点をこえる成績をあげた棋士は、昇段資格を得るものとしている。
競技の時
間、日数
第50条
 対局者が一局の競技のために消費することができる時間又は日数は、次条以下に定めるところにより対局者の合意により適当に定めることができる。

打掛け 第51条
 対局が1日で終局することができない場合、又は当日一定時刻に及び終局しないときは、競技を第2日及びその後に延長することに対局者間にあらかじめ合意してある場合は、その競技を第2日及びその後に繰り延べて継続することができる。これを「打掛け」という。

封じ手 第52条
 前条に打掛けとなる場合に、最終の着手点については、その着手は、これを盤面に着手する代りに紙片に認め密封して、立会人又は適当の者に次回対局の時まで保管させることができる。これを「封じ手」という。

打継ぎ 第53条
 第2日の対局は、「打継ぎ」といい、対局開始に当り、封じ手を開封し、その記入着手点に着手した後対局を継続する。第3日以後終局に至るまでこの方法を繰り返すものとする。

持時間制 第54条
 競技時間が余り長くなることを避けるため、通常対局者の合意によりその使用することができる時間をあらかじめ限定することができる。この時間を持時間という。この場合持時間は、対局者双方とする。
2 日本棋院大手合における持時間は、五段以上の棋士が参加する対局は双方10時間とし、又四段以下の棋士間の対局は双方6時間としている。
3 前項の持時間15時間の対局は、通常第1日午後6時打掛けとし、第2日において終局する。
4 持時間制による対局において、記録係は、対局者双方の一着手ごとに消費した時間を計算して記録する。この場合、通常1分未満の時間は切り捨てる。対局記録係(場合により特に時間読み係)は、対局者の持時間が残り僅少となった場合には、秒読みを行ない、対局者に通告する。
5 記録係を置かない持時間制の対局においては、便宜上、ストップウォッチを使用することができる。

早碁 第55条
 時間制には、前項のように一局を通算して対局者の随意に使用することができる時間を極めて短時間(例えば1時間等)に定めることができる。この競技方法は、専門棋士対局においては早碁という。
2 前項の早碁においては、特に一着手ごとに使用することができる最長時間をもあわせて制限し例えば(一着手1分以内というように)又は一定数の着手に限って特に使用時間の延長を互に認める方法を併用することができる。(例えば三着手に限り一着手3分以内というように)

立会人
記録係
第56条
 公的競技又はこれに準ずる競技においては、通常立会人又は記録係を置く。

立会人
の職務
第57条
 立会人は対局に立ち会い、
    競技実行上必要な事項(規約第47条)について対局者間の協定を確認し、
対局中に生じた事実について、この規約又は囲碁作法に関する特別規定により必要と認める場合に注意を与え、対局者の申出を聞き、判定その他必要な措置をとり、
規約等の解釈及びその適用についての決定を与え、
封じ手を、開封するときまで他見できないように厳重に保管しなければならない。
2 前項第2号については、別に審査員を置き、担当させることができる。
3 対局者は、第1項第2号又は第3号の立会人の決定(審査員の決定についても同様とする)に対して異議があるときは日本棋院の審査を要求することができる。この場合日本棋院は、審査役の議に付した上、決定する。この決定は最終のものとし、対局者は、この決定に従わなければならない。
4 立会人(又は審査員)を置かない対局においては、対局者は、第1項第2号又は第3号の事項について、日本棋院の判定を求めることができる。

記録係
の職務
第58条
 記録係は、対局中において、
    対局者双方の各着手を正確に棋譜に記入し、又、各着手のために消費した時間を記録し、
持時間制による対局の場合は、前述の他随時対局者双方の残り持時間を対局者に告げ、
立会人のいないときは、封じてを開封するときまで、他見できないように厳重に保管しなければならない。
 消費時間の記録については、別に「時間づけ」を置き担当させることができる。

不参及
び遅刻
第59条
 公的競技又はこれに準ずる競技において、予定した対局に不参した対局者又は対局開始時刻に遅参した対局者は、対局しないで負けとし、相手方を不戦勝とする。
2 前項の場合において、遅刻の時間が短時間であって、その遅刻が自己の責に帰することができない事由に基づき、且つ対局に支障がないことを相手方及び関係者が認める場合には、対局することを認めることができる。但し、時間制による対局においては、遅刻した対局者の持時間は、所定時間から遅刻時間又は協定による時間を差し引いたものとする。

着手禁止
又は着手
制限の違反
第60条
 対局中において、甲が第27条の着手禁止に違反して着手した場合又は第28条の着手制限に違反し劫立てをしないで乙の石をとり上げた場合において、立会人において故意と認めたときは、甲は、負けとして終局する。
2 立会人が前項の甲の着手が故意でないと認め、且つ、対局者乙が同意する場合は、甲はその着手を取り消し、他に着手することができる。但し、乙がこれに同意しないときは、甲は負けとして終局する。
3 対局者及び立会人いずれも前項の違反着手があったことを了知せず、乙が着手し、以下交互着手を継続した場合においては、その後に至りこの事実があった事を知ったときでも、対局は、そのまま継続するものとする。

着手の移動 第61条
 対局中において、既に着手した盤面の石が対局者の故意によらない事故によって他の着点に移動し、且つ、この事実をその移動直後に対局者双方(又は立会人)が認識しないで交互着手を続行した後、その事実を発見したときは、次の措置をとるものとする。
    移動した石を原着手点に回復する。
    前号について対局者の合意が成り立たないときは、移動した点にそのままとめておいて対局を継続する。
    前号についても対局者の合意が成り立たないときは、無勝負として対局を中止する
2 前項の場合において移動した石が他の着手に影響することなく、又局勢に何ら影響することなく、移動した石を原着手点に回復することができる場合は、対局者は、これを原着手点に回復することに同意しなければならない。
3 第1項の移動した石を移動した点にそのままとめておいても、他の着手又は局勢に何ら影響しないことが明かな場合は、対局者は、移動した石を移動点にとめておくことに同意しなければならない。

作碁にお
ける計算
上の過誤
第62条
 作碁の場合、対局者がその有する「ハマ」の全部を相手方の地を埋めるために使用しないで双方の地目が計算され、勝敗が決定したことを対局者が認めた後は、使用しなかった「ハマ」があることをもって、勝敗の変更を主張することはできない。
2 作碁の場合、対局者が「ハマ」以外の石をもって地を埋め、その他地の作り方において過誤があっても、双方の地目が計算され勝敗の決定したことを対局者が認めた後は、過誤のあったことをもって勝敗の変更を主張することはできない。

込目数の
不控除
第63条
 込碁の対局の作碁において、双方の地目が計算され、込目数を控除することを忘れて地目を比較し、勝敗の決定したことを対局者が認めた後は、込目数が控除されなかったことをもって勝敗の変更を主張することはできない。

第10章 専門棋士及びアマチュア

専門棋士 第64条
 金銭その他の報酬を受け、他人に囲碁を教授し、又は他人の練習を指導することを業とする者は、段級位のいかんにかかわらず専門棋士とする。
2 前項の専門棋士となる目的をもって現に囲碁を修業している者も、またこの規約の適用については、専門棋士とみなす。

アマチュア 第65条
 前条以外の者であって、単に囲碁を愛好し、競技する者は、アマチュアとする。

アマチュア
の失格
第66条
 アマチュアの資格を有する者が、競技において授与される所定の賞品以外の報酬を得ようとする目的をもって競技に参加しようとしたときは、その競技については、アマチュアの資格を失う。
2 前項に該当する者が、アマチュア競技に参加し、競技中に前項の事実が明かとなったときは、競技から除外する。
3 前項の競技中又は競技終了後第1項に該当する事実が明かとなったときは、本人に関する限り、競技の成績を取り消し、他の参加者の成績により競技の結果を改定することができる。
4 第1項に該当する者、競技主催者、競技参加者その他の関係者は、日本棋院に対して、その資格の有無について審査判定を請求することができる。

アマチュア
資格の回復
第67条
 第64条第2項の経歴を有していて、現にその修業を廃止している者がアマチュアの資格をもって競技に参加しようとする場合は、本人、競技主催者又は他の参加者は、日本棋院に対して、その資格の有無について審査判定を請求することができる。

資格審査 第68条
 日本棋院は、その公認するアマチュア選手権競技その他アマチュアのみの参加者の資格の適否を審査決定する。

資格審査
委員会
第69条
 日本棋院内に資格審査委員会を置き、この規定による競技資格の審査及び判定をさせ、競技資格に関する疑義につき判定させる。

国際競技
の資格
第70条
 将来国際囲碁競技団体が結成され、その団体において専門棋士とアマチュアとの区別及び競技参加資格が定められた場合は、その団体の公認する競技については、この章の規定にかかわらず、当該団体の定めるところによるものとする。

  附  則
 この規約は、昭和24年(1949年)10月2日から施行する。

付図
(I)十一子
(中目二子)
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(II)十三子
(中目四子)
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(III)十五子
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(IV)十五子
(中目と二風鈴)
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├┼┼┼┼┼●┼┼┼┼┼●┼┼┼┼┼┤
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(V)十七子
(中目と風鈴)
┌┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┐
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└┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘

(VI)二十五子
┌┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┐
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└┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘

第二図(I)
セキの図
○┬●┬●○┬┬┬┬┬┬○●┬○○○┐
├○●●●○┼┼┼┼┼┼○●●●●●●
●●○○○○┼┼┼┼┼┼○○○○○○○
├●○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
●●○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
○○○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
●●●●●○○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
○○○○○●○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
●●●┼○●●○┼┼┼┼┼┼┼┼○○○
○○○○○┼●○┼┼┼┼┼┼┼○○●●
●●●●┼┼●○┼┼┼┼┼┼┼○●┼┤
├○○●●●●○┼┼┼┼┼┼○○●●●
●○●●○○○○┼┼┼┼┼┼○●●○○
●●●○○┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●┼○┤
○○○○┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴○●┴○┘

(II)同
┌┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬○●○┬●●●
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●○○○○○
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●┼●●●●
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○●●●○○○
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○○○●●●┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○○○○●
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼○○
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
●●●●●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
○○○○●●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
●┼○┼○●┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
└●○┴○●┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘


大手合
採点表
日本棋院大手合

採 点 表
   勝 ジゴ  敗
互先 黒 番 75 45 15
白 番 105 75 45
先相先 下手 黒 番 80 50 20
白 番 110 80 50
上手 黒 番 70 40 10
白 番 100 70 40
  90 60 30
先二先 下手 二 子 70 40 10
先 番 100 70 40
上手 二 子 110 80 50
先 番 80 50 20
二先二 下手 二 子 80 50 20
先 番 110 80 50
上手 二 子 100 70 40
先 番 70 40 10
二子   90 60 30
三二三 下手 三 子 70 40 10
二 子 100 70 40
上手 三 子 110 80 50
二 子 80 50 20
三子   90 60 30


*日本棋院囲碁規約附属「囲碁作法に関する特別規定」については、
次ページをご覧ください。


旧・日本棋院囲碁規約 part_2