囲碁ルール博物館 |
囲碁のルールをより深く追究・理解したい人のために |
は じ め に |
囲碁のルールに関してちょっとした疑問や問題が発生し、現行のルールでどのように処理されるのかを知りたいと思ったとき、このネット上には日本語で書かれたルールに関する資料・文献の類がまだ十分に揃っていないことに気がついた。そもそも海外の Webサイトには、ずいぶん前から現行の日本囲碁規約の全文と逐条解説が図入りで紹介されているのに、肝心の日本ではいつまでたっても見当たらないという始末(今のところ日本棋院のサイトにも関西棋院のサイトにもない)。(*筆者注1、いつ公開されたのかは不明だが、日本棋院のWebサイトに「日本囲碁規約」の全文がアップされている。) 日本囲碁規約は本来的には専門家(棋士)のためのものとは言え、囲碁を世間一般に広く普及するのにルールの存在は欠かせないわけで、その全文および逐条解説がネット上に見当たらないというのは、これはもう碁界の怠慢と批判されても文句の言えないところであろう。 ところで、現在の日本囲碁規約は、われわれが碁敵と碁を打ち、待ったもあればハガシもありで和気藹々と楽しんでいるぶんにはほとんど問題を生じない。だが、真剣な大会等でひとたびコウがらみの極めて特殊なケースが発生した場合や、文献等で歴史上起こったルール問題に遭遇した場合、われわれアマチュアにとっては、現行ルールを1回読んだくらいでは、それらの問題やトラブルに対して合理的な解釈や解決法を導き出すことが途端に困難となってしまう。 要するに日本囲碁規約は、専門棋士やルール研究家でもないかぎり、われわれ一般囲碁愛好家にとって、そこに書かれている真の意味を理解するには少しばかり難しすぎるのである。もっとも、そもそもが専門棋士のために作成されたルールなのだから、素人がわからなくても当然なのかもしれないが……。 などと、不平ばかりを述べているように聞こえるかもしれないが、本欄筆者は「日本ルールは不合理だ」とか「運用上なにかと問題がある」とか「中国ルールのほうがトラブルが少なくてよい」などとイチャモンをつけるつもりは毛頭ない。それどころか現行ルールは、昔から連綿と打ち継がれてきた日本の碁法を、大きく変更することなく文章化し得ているという点において、「本当によくできているなあ」と、素人ながらいたく感心しているくらいなのである。 しかし残念ながら先に述べたように、実際にはほとんど発生しない特殊ケースの処理を“理屈として考える”際に、日本ルールには何とも理解しがたい面があるのは否定できない事実なのだ。では、そのような場合、日本ルールの何が問題で、それらはどのように修正されるべきなのか。もしくは、そもそも修正が必要なのか又は可能なのかどうか。あるいは、日本囲碁規約だと問題を生じるが、中国圍棋協会圍棋規則や應氏計點制圍棋規則ならば問題を生じないのか否か。または、現在の日本ルールと中国ルールとでは、どのようなケースにおいて終局処理や死活判定や計算結果に違いが出てくるのか? ……と、このようにルール問題ひとつをとっても、あれこれ突っつき始めると、じつに奥が深くて複雑怪奇、なんとも知的興味の尽きないところなのである。 というようなわけで、ルールについてあれこれ調べているうちに、このネット上にも多様な文献資料類が提示されていれば、多くの方が情報共有できて便利ではないかと遅まきながら思い至った次第。そこで、ちょっと面倒な作業ではあったが、これまでに発表されたルール試案や正式採用された囲碁規約をまとめてHTML化し、図々しくも「囲碁ルール博物館」などと称して、こうしてネット上に置くことにしたわけである。 本サイトが、囲碁ならびにコンピュータ囲碁の普及と発展に少しでも寄与貢献し、囲碁ソフト製作者やアマチュアのルール研究家や多くの囲碁愛好家に有効活用されるのであれば誠にもって本望であり、こつこつキーボードを叩いた甲斐があったというものである。 なお、ある特殊ケースの局面を持ち出して、ルール上の正しい解釈やら処理方法やらについて本欄筆者に質問を投げかけ、返事を期待されたって困る。こっちだってよくわからないんだから……。 |
2001年5月3日 本欄筆者記す |
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