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続折々の記 2020⑥
【心に浮かぶよしなしごと】
【 01 】08/30~ 【 02 】08/31~ 【 03 】09/01~
【 04 】09/03~ 【 05 】09/10~ 【 06 】09/11~
【 07 】09/15~ 【 08 】09/19~ 【 09 】09/23~
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【 06 】09/11~
しばらく見なかった田中宇のニュース変動
09 11 (金) アメリカの激変で世界も激変する
しばらく見なかった田中宇のニュース変動
安倍政権は健康よりも時の流れを見てやめたほうが大きい。 もちろん彼の衣のほころびは見るに堪えなくなっていたが、対米・対中対ソの流れから耐えられなくなっていたようだ。
日本では世界の風が分かりにくかった。 もっと多くのニュース源を利用した予見が私たちに運ばれてきてほしかった。 安倍総理自身はもっと自分の思いをみんなに伝えていたほうがよかったに違いない。
まあ、それは別として、最近の国際ニュース解説を取り上げる。
解説のうち ◆安倍辞任は日本転換の好機 のような赤表示の項については、ニュース解説そのままを掲載します。
7月末からのニュース解説の概要
◆ドルの劣化
【2020年9月7日】ドルの金融システムが潜在的に劣化している状態はリーマン危機から12年間も続いている。コロナは、ドルの劣化状態をひどくした。だが劣化はコロナ後も顕在化・公式化せず、潜在状態のままだ。この状態がいつまで続くのか不明だ。だが、ドルの劣化が顕在化して実際のドル崩壊になったらその後どうなるかについては、リーマン倒産時からだいたい同じ体制・様相が予測されてきた。最近も、フィンランド中央銀行元幹部で大学教授のペンティ・ピッカライネンが、きたるべきドル崩壊後の世界の通貨体制について、ドル、ユーロ、人民元、日本円、英ポンドといった諸大国の通貨に加えて金地金も有力通貨とみなされる多極型の通貨体制になるとの予測を発している。
コロナのインチキが世界的にバレていく
【2020年9月2日】人類が集団免疫をほぼ達成して実際にはコロナの感染者がほとんどいない状態になっても、PCR検査で過剰な増幅を行い、病院に補助金を与えて死因をごまかせば、コロナ統計を何倍にも水増しし続けられる。実際の感染者がゼロになっても、感染者や重症者や死者がどんどん出ているかのような構図を維持し、危機を永続化できる。だが最近、歪曲の構造を米当局自身が認め始め、コロナ危機のインチキが世界的にバレていく流れになっている。コロナ危機のインチキを米当局自身が間接的に認める流れは今後も続くと私は予測している。それがトランプと共和党を優勢にするからだ。
◆暴動から内戦になり崩壊していく米国社会
【2020年9月1日】民主党支持のリベラルマスコミや左翼運動家は警察が一方的に悪いと言い募り、反警察デモを暴動や略奪に発展させている。共和党支持のブログなどは、警察は正当な行動をしただけであり、事態を歪曲してそれを口実に破壊活動を広げている左翼運動家と、それを容認扇動しているリベラルマスコミこそが悪だと言っている。どちらが正しいのか。フロイドやブレイクが殺された状況が不確定なので善悪が不確定だ。不確定である以上、民主党支持者は「警察と右派とトランプが悪い」と言い募り、共和党支持者は「左翼とリベラルマスコミが悪い」と言い募る。対立が深まるばかりだ。
新刊本「コロナ時代の世界地図 - 激変する覇権構造と進む多極化」
ついに軍産支配の終焉か? コロナ危機からドル崩壊を経て多極化に進む世界を読み解く
◆安倍辞任は日本転換の好機
【2020年8月30日】安倍は、表向きの軍産プロパガンダ主導の対米従属・中国敵視と、現実策としての中国への擦り寄りをバランスする路線だった。今後トランプの対日政策が強硬になり、バランスを維持できなくなるので安倍は辞める。安倍は、トランプと喧嘩でき、プロパガンダに冒されている自民党やマスコミ軍産と戦えるかもしれない石破を次期首相にするために、後継者を非公式にも指名せずに辞めるのでないか。トランプのように軍産に負けない指導者が日本にも必要だ。安倍辞任は、小沢鳩山以来の日本転換の好機である。
安倍辞任の背景にトランプの日米安保破棄?
【2020年8月28日】日米同盟は今、安倍とトランプの個人的な親密さで維持されているのだから、トランプが在日米軍の縮小を具体的に検討開始するなど、安倍や日本との関係を切ることにしたのでないかぎり、安倍が今回のように簡単に辞任を表明するのはおかしい。日米安保の円滑な維持を考えると、安倍は病気を悪化させないようにしつつ続投するのが筋だ。安倍の辞任は、トランプが再選される選挙を前に、在日米軍の縮小や日米安保の解消を本格検討し始めたのでないかとの疑念を抱かせる。
◆米中逆転を意図的に早めるコロナ危機
【2020年8月27日】コロナを機に中国が経済力で米国に追いついて米中が対等な状態になり、米国が中国を敵視して世界が米中に分裂・デカップリングしていく中で、これまで米国側についてきた諸国が中国側に寝返る傾向が増していく。コロナはそれを加速する。トランプは、中国を勝たせるために中国敵視やデカップリングをやっている。そんなはずはない、と思っている人は、今後の流れを読み間違える。
新型コロナ集団免疫再論
【2020年8月24日】集団免疫は人々の70%以上が感染して獲得免疫を持たないと達成されないと言われてきたが、新型コロナは多くの人が自然免疫で撃退し、獲得免疫を得る人は重症化した人だけだ。新型コロナはふつうの風邪と同じ大した病気でないのでこうなる。世界的に陽性者や重症者の出現率が大きく低下し、自然免疫と獲得免疫を組み合わせた集団免疫が、すでに世界の多くの国で達成されていると考えられる。「第2派」は検査増などによる歪曲の産物だ。陽性者や重症者が最近増えたNZや豪州は、他の世界から隔絶しているのでコロナの展開が遅く、これから集団免疫になる。
◆中国の悪さの本質
【2020年8月23日】中共の基本姿勢は「香港の回収」であり、それは香港を完全に中国の一部にして社会主義と中共独裁を敷くことであるはずだった。だが実際のところ、当時の中共の権力者だったトウ小平が採った政策は「香港の返還から50年間は資本主義体制を残す。政治的にも中共の統治でなく香港人(財界)の自治を守る」という「一国二制度、港人治港」だった。これは1985年に中共が制定した香港基本法に盛り込まれた。中共は自ら、香港の回収を50年先延ばしした。なぜか。
米大統領選挙戦を読み解く
【2020年8月20日】米国では極左による暴動や反政府デモの激化で、民主党左派の市民が共和党支持の市民を口頭や暴力で攻撃する事案が急増した。そのため共和党のトランプ支持者の多くが、自分の支持や政治思想を隠している。トランプ支持者の3分の2が、世論調査に対して無回答、支持者なし、まだ決めてないなどと答えたと推定されている。3分の2は大げさだとしても、こうした隠れトランプ支持者が1-2割いただけでトランプ勝利に転じる。
◆イスラエルUAE外交樹立:中東和解の現実路線
【2020年8月17日】米国の覇権が蘇生する可能性はとても低い。おまけにトランプは米覇権を意図的に壊している。イスラエルやサウジなどは、米国に頼らずに自国の存続を考えねばならない。まず相互の敵対関係を解消していく必要がある。これまで米国から利益を得るために維持してきた中東の対立構造が、中東諸国の存続をおびやかす脅威になっている。こうした状況下で今回、イスラエルとUAEが和解し、サウジもイスラエルと和解しそうな流れになっている。
ただの風邪が覇権を転換するコロナ危機
【2020年8月12日】新型コロナの親戚筋であるSARSやMERSも、最初は重症者や死者がどんどん出て恐れられたが、2-3か月で重篤性が大幅に低下し、誰も感染発症しなくなって消えた。新型コロナも、SARSやMERSの時の終息期と同じ段階に入っている。しかし新型コロナは今だにすごく騒がれている。それはウイルス自体の問題でなく、新型コロナが引き起こす危機を長期化させたい国際的な政治謀略が存在しているからだ。
◆中国の対米離脱で加速するドル崩壊
【2020年8月7日】今後のドルと米覇権の崩壊の引き金を引く要素は、金融のバブル崩壊や実体経済のコロナ不況でない。トランプが煽っている米中対立に押されて中国が経済的に米国やドルから離脱していく「中国の対米自立」がドル崩壊を誘発する。米国は自滅し、日韓や欧州は、中国中心の新世界システムへの参加を余儀なくされる。これは、1945年に米国(国連P5を作ったロックフェラーとか)が作ろうとして英軍産に冷戦で阻止された多極型の世界体制を実現する策略だ。多極化は、今後の均衡のとれた世界経済の長期的な発展のために必要なのだろう。
中国が内需型に転換し世界経済を主導する?
【2020年8月6日】米国の差し金で、米欧日は今後もずっとコロナ対策として無意味な都市閉鎖・経済停止をやらされ続ける。米欧日は世界経済を牽引できない。中国がうまいこと内需主導に転換できると、中国の内需が世界経済を牽引する役割になる。これまで米国が覇権国だった一つの理由は、世界最大の消費市場だったからだ。この機能が米国から中国に移っていく。中国は経済面で覇権国になる。中国市場は中国企業が中心になるが、中共としては、他の国々の企業を参入させてやっても良い。その国が中国を敵視せず尊重するなら、という条件つきだ。日本も欧州も英国も豪州もインドも、中国を敵視できなくなる。最後には米国も中国と和解する。内需型に転換できると中国は無敵になる。軍事でなく、経済が覇権を決める。
◆急接近するドル崩壊
【2020年7月31日】今後ほぼ確実に、コロナの長期化で金融バブルが再崩壊する。QEの再度の急増が必要になるが、それをやるとドル崩壊に拍車がかかり、米国覇権の喪失と多極化が急進展する。一方、これ以上QEをやらないと、金融バブルの大崩壊が起こり、それも米覇権喪失と多極化につながる。早ければ11月の米大統領選挙の前に金融崩壊が起きる。ドルや金融が崩壊すると金相場が高騰する。米連銀がQEを再増加すると、金相場はいったん暴落してから反騰する。QEがもう拡大されないなら、このまま続騰する。
暴動が米国を自滅させる
【2020年7月30日】 民主党は分裂が激化して11月の選挙に勝てそうもない。バイデン優勢の報道は、16年のヒラリー優勢と同様、民主党系が多い米マスコミの勇み足だ。トランプが勝つと民主党内で主流派の権威が落ち、左派がますます言うことを聞かなくなって過激化し、トランプの連邦政府と鋭く暴力的に対立する。コロナは米国で第2波、第3波が扇動され続け、人々の生活がさらに悪化する。悪化は、人々と公的財政に蓄えがあったこれまでより、蓄えが尽きるこれからの方がひどくなる。経済悪化と暴動悪化が悪循環になり、米国は統制不能になっていく。
◆安倍辞任は日本転換の好機
【2020年8月30日】
安倍は、表向きの軍産プロパガンダ主導の対米従属・中国敵視と、現実策としての中国への擦り寄りをバランスする路線だった。今後トランプの対日政策が強硬になり、バランスを維持できなくなるので安倍は辞める。安倍は、トランプと喧嘩でき、プロパガンダに冒されている自民党やマスコミ軍産と戦えるかもしれない石破を次期首相にするために、後継者を非公式にも指名せずに辞めるのでないか。トランプのように軍産に負けない指導者が日本にも必要だ。安倍辞任は、小沢鳩山以来の日本転換の好機である。
安倍辞任は日本転換の好機
安倍首相が8月28日に辞任を表明した理由は持病の悪化だと報じられている。マスコミや権威筋で、この辞任理由を疑う見方はないようだ。安倍自身が作った言論統制のシステムが見事に効いている。私から見ると、安倍の辞任の最大の理由は健康問題でない。これまで安倍が作ってきた路線を続けられなくなったからだ。 (安倍辞任の背景にトランプの日米安保破棄?)
自民党には、安倍の仲間・同志として麻生や菅がいる。麻生や菅は、安倍がやってきた戦略を熟知し、一緒に考え続け、安倍にアドバイスしてきた。安倍の辞任理由が健康問題で、持病の悪化さえなければまだ首相を続けたいと安倍が思いつつ辞めるのなら、後継者として麻生か菅を公式もしくは非公式に指名し、麻生か菅を次の首相にすることで、自分が立てた戦略の継承を望むはずだ。実際は、安倍は自分の後継者として誰も指名していない。自民党内での選出の決定に一任すると言っている。麻生は、次の首相に立候補しないと表明した。菅は8月30日になって立候補を決めたが、安倍が菅を次期首相にしたくて、菅もその気なら、辞任表明と同時に菅が後継者という話が出てくるはずだ。菅の立候補は安倍が推したものでない。菅の立候補は当て馬的な目くらましかもしれない。
岸田は、麻生や菅のように安倍の「身内」でないが、前から安倍を支持してきた。安倍が後継者を岸田にしたいなら、そのように非公式にでも示唆するはずだ。だが安倍はそれもしない。安倍が後継者を全く指名したがらない理由は、安倍が後継者としてふさわしいと思っている人物が、安倍自身が嫌いだと思っている人だからでないか。次期首相の候補と言われている人々の中で、安倍が嫌いだ、ライバルだと思っている相手は、石破茂である。安倍が「日本のために次の首相を石破にするのが良い」と思っている場合、安倍は後継者を指名せず、自民党の決定に一任したいと言うはずだ。
石破は、安倍が辞任せず続投する予定だった段階から、今秋の自民党総裁選挙に安倍の対立候補として出馬と表明していた。自民党全体が安倍に同調・迎合する状況下で、石破だけが安倍に対抗しようとしてきた。石破はあえて安倍に迎合しない道を選び、自民党内で「村八分」的な生き方をしている。逆に言うと、日本が安倍路線をやめて大転換するなら、石破を次の首相にしてやらせてみるのが良いという話にもなる。安倍自身が、安倍路線の行き詰まりを悟って辞任するなら、後継者を指名せず、その一方で、自民党内の次期首相の選出のやり方を少しいじって石破が選ばれるようにするのが良い。安倍は、その道を進んでいるようだというのが私の今日の見立てだ。安倍は、石破に権力を譲ろうとしているのでないか。
この見立ての上で、安倍路線について考察する。今の日本にとって、最大の問題は「米国覇権の崩壊・放棄と中国の台頭」である。この問題が難問なのは、まず「米国の覇権が崩壊しつつある」「トランプは米国覇権を着々と放棄している」という認識が日本人の中にないからだ。加えて日本人は「中国はけしからん。中国と仲良くなんかできない」「中国はいずれ必ず崩壊する」といった歪曲的な価値観も植え込まれている。マスコミや権威筋は、永遠の対米従属と中国敵視のプロパガンダを充満させ、権威筋自身がそれを軽信しつつ、国民にもそれを軽信させている。永遠の米国覇権と中国敵視を喧伝しない者は「外交専門家」になれない。これは、米国(米英)の軍産複合体(諜報界、深奥国家)が日本など世界中に植え付けてきたプロパガンダである。
プロパガンダ的には「米国覇権は永遠で、日本は永遠に対米従属するのが良い。中国は敵だ」であるが、現実は全く違っていて、米国は覇権を崩壊させつつ、経済や安保の面で、日本など同盟諸国に無茶苦茶な要求をする傾向を強めている。その一方で中国はどんどん成長・台頭し、日本など西側諸国にとって、中国は経済的に仲良くせねばならない相手になっている。このようなプロパガンダ(表向きの見せかけ)と、現実との乖離が、この4半世紀にどんどん拡大してきた。日本は、米国との関係を維持するためプロパガンダを鵜呑みにしつつ、目立たないように中国とも良好な関係を結んで日本の経済発展を維持する必要があった。安倍は、プロパガンダ系の勢力に後押しされて自分の権力を強めつつ、その一方で中国との関係を強化するバランス戦略をやってきた。 (米国の中国敵視に追随せず対中和解した安倍の日本)
米国の覇権低下が不可逆的になったのは、2003年のイラク侵攻から08年のリーマン危機にかけての時期以降だ。それまでの、米国覇権が永遠に見えた「戦後の時代」に、日本は「米国にいただいた平和憲法があるので、米国に求められても日本は軍事費を増やせません」という左翼平和運動的な「言い訳」を言って米国からの軍拡要求を断り、「自民党は農民など地方の票に握られているので」と言って食料輸入の自由化を断ってきた。米国は、自国の覇権低下とともに、日本の権力層が左翼やマスコミからの批判を無視して自分らの権力を拡大することを容認し、その代わり軍拡(思いやり予算急増)やTPP加盟・輸入自由化など、米国の言うことをもっと聞けと言うようになった。
この、米国が日本を転換させた時期に、たまたま首相だったのが安倍だった。安倍は、日本の首相として未曾有の権力を獲得し、長期政権を築いた。対米従属と中国敵視のプロパガンダが安倍を押し上げた。だが同時に現実は、米国の覇権低下と中国の台頭が続いた。安倍は、表の中国敵視プロパガンダと、裏の対中従属ともいえるような中国への接近の両方をバランスしてきた。このバランスが安倍路線だった。
安倍が石破に権力を継承するのなら、その理由は、表の対米従属・中国敵視と、裏の対中従属とのバランスが維持できなくなったからだ。トランプは今後2期目に入り、日本やその他の同盟諸国に対する要求をさらに引き上げていく。トランプは従来、安倍の日本に対し、米軍駐留費の負担(思いやり予算)の大幅増加は言っていたが、安倍がそれを断っても、それに対するひどい制裁をしてこなかった。トランプが同盟諸国に過大な要求をする真の理由は、同盟諸国に米国との関係を切らざるを得ないように仕向ける覇権放棄策であり、過大な要求を飲ませることが目的でなかった。日本は対米従属一本槍なので、過大な要求でも飲んでしまう。トランプは、日本に要求を飲ませるのでなく、日本を怒らせて拒否させたい。だが、日本はそれをしない。だからトランプはこれまで日本に対して寛容だった。安倍は、トランプの寛容さのおかげでバランス戦略が続けられた。
2期目のトランプは、日本に対する寛容さをやめる。米国側でも、それは指摘されている。トランプは日本に対し「思いやり予算の大幅増額だけでなく、中国と縁を切って敵視することもやれ。両方やらないと在日米軍を撤退する」と言ってくる。その一方で、米国はコロナ対策としての経済停止を続け、どんどん不況がひどくなり、覇権国として必須だった世界からの旺盛な消費ができなくなる。今後、旺盛な消費をしていくのは、米国でなく中国である。日本は、思いやり予算の増額はやれても、中国との本格的な縁切りはできない。日本は経済的に中国と縁を切れない。日本が、これまでのように優柔不断な態度を続けていると、米国は日本から軍事撤退していく。日米安保や日米同盟は不可避的に崩れていく。日米同盟は盤石だと言っているプロパガンダを信じてはならない。対米従属一本槍を変えずに米中のバランスをこっそりとってきた従来の安倍路線は行き詰まっている。
日本が対米従属を続けてきたのは、米国が経済(消費)と安保の両面でダントツ世界最強の覇権国だったからだ。コロナ危機の発生により米国の衰退と中国の台頭が加速し、消費も軍事力も、近年中に米国と中国が肩を並べていく。国際政治経済の力学的に見て、対米従属は日本の国益に合わなくなっている。この現実は、軍産のプロパガンダによって見えにくくされている。安倍には現実が見えているはずだ(だからこそ安倍は、こっそり中国に擦り寄ってきた)。 (米中逆転を意図的に早めるコロナ危機)
これからの日本に必要なのは、マスコミなど軍産官僚プロパガンダ勢力や自民党の主流派から攻撃されても負けない指導者だ。トランプに媚を売らずに喧嘩ができ、習近平と対等に渡り合える人物だ。バランス感覚がある人より、昭和の悪ガキみたいな方が良い。安倍は、軍産プロパガンダ勢力からの押しによって権力を拡張してきた。軍産プロパガンダは安倍の弱みも握っており、安倍がこっそり対米従属一本槍を逸脱して中国に擦り寄るたびに、森友だ何だといってスキャンダルが湧き出てくる。日本では、軍産傀儡のネトウヨと同様に、サヨクも軽信的なひどい間抜けなので、左右の軽信者たちがスキャンダルの尻馬に乗って安倍を許すなと騒ぎ出す。安倍自身が今後も続投してプロパガンダ勢力を振りきって対米従属を離脱しようとすると、スキャンダルなどで潰され、犯罪者におとしめられて政治生命を終えることになりかねない。
そんなリスクを追うより、これからトランプが無茶苦茶言ってくることが確実なここいらで、病気になったことにして辞めた方が良い。9月になると米選挙前でトランプが動き出すかもしれないので8月中が良い。安倍は、そう考えて辞任を決めたのでないか。安倍が指導者として日本の国益を重視するなら、自分の後任は、安倍路線のバランスで生きてきた人ではダメだと思うはずだ。この時点で菅や岸田は不適格だ。バランス感覚など無視して自民党内で村八分になる道をあえて歩んでいる石破にやらせてみる方が良い。安倍がすぐれた政治家なら、そう考えても不思議はない。昭和の悪ガキみたいな石破なら、米国の悪ガキであるトランプとも喧嘩できそうだ。石破は近年、右派だった昔と異なり、対米従属一本槍で中国を敵視する政策を否定しつつ、中国に大幅接近している。中国では、国営マスコミの新華社などが石破待望論みたいなものを流している。今の石破は以前と異なり、小沢鳩山に近い位置にいる。 (石破茂氏、安倍氏再任への挑戦者)
誰になるにせよ、次の日本の首相が、これまでの軍産プロパガンダまみれの非現実的な対米従属・中国敵視路線を脱却しようと思ったら、トランプが米国でやったような劇的な動きが必要になる。最大の敵は国内の軍産プロパガンダ勢力だ。トランプは2016年の当選時、共和党内で新参者の少数派で、軍産傘下の米マスコミやエスタブ権威筋からボロクソに批判され、ロシアゲートのスキャンダルの濡れ衣を着せられていた。だがその後、トランプはロシアゲートの濡れ衣ぶりを暴いて逆に軍産マスコミの犯罪性を明らかにしていき、共和党を「トランプ党」に変えていった。今では、軍産の中枢にある米諜報界はトランプ側に乗っ取られ、米マスコミの権威も大幅に低下した。トランプは軍産の無力化に成功している。 (続くトランプ革命)
これからの日本に必要なのは、トランプみたいな指導者だ。石破は自民党内で少数派なので当選時のトランプに似ているが、石破は自民党を「石破党」に変えられるのか??。米国には自分の頭で考えようとする人がある程度いるが、日本にはほとんどいないので、かなり難しいとは思う。小沢鳩山と同様、石破もほとんど理解されずに潰されそうだ。いつまでもクソな日本人。自業自得の衰退になりそう。しかし、まだわからない。安倍辞任が、小沢鳩山以来の日本転換の好機であるのは確かだ。 (多極化に対応し始めた日本)
安倍辞任の背景にトランプの日米安保破棄?
【2020年8月28日】
日米同盟は今、安倍とトランプの個人的な親密さで維持されているのだから、トランプが在日米軍の縮小を具体的に検討開始するなど、安倍や日本との関係を切ることにしたのでないかぎり、安倍が今回のように簡単に辞任を表明するのはおかしい。日米安保の円滑な維持を考えると、安倍は病気を悪化させないようにしつつ続投するのが筋だ。安倍の辞任は、トランプが再選される選挙を前に、在日米軍の縮小や日米安保の解消を本格検討し始めたのでないかとの疑念を抱かせる。
安倍辞任の背景にトランプの日米安保破棄?
8月28日、安倍首相が辞意を表明した。持病の悪化が理由だという。たしかに安倍は最近、何度も検査のために病院に行っている。しかし、安倍は検査後も、話したり歩いたりできているわけで、急に首相としての任務がこなせなくなったわけではない。安保面の日米関係が、安倍とトランプの個人的な関係に依存してきたことを考えると、安倍が辞めてしまうのは日本の安全保障にとってまずいことだ。安倍以外に、気難しいトランプと親密な関係を持っている政治家は日本にいない。日米安保の円滑な維持を考えると、安倍は病気を悪化させないようにしつつ続投するのが筋だ。対米従属派の全体がそう思っているはずだ。 (従属先を軍産からトランプに替えた日本)
しかし、もしトランプが日本と安倍に対する態度を変えており、安倍とトランプの関係が終わりになっているとか、トランプが安倍に在日米軍の撤退や日米安保の破棄を言ってきたなら、話は別だ。最近の記事に書いたように、11月の米大統領選挙は、マスコミのバイデン優勢の報道と裏腹に、トランプが再選される可能性が高い。2期目のトランプは、日本や韓国からの駐留米軍の撤退を具現化していきそうだ。すでにトランプは安倍に対して冷淡になっている可能性がある。日本側が米軍を引き留めようとすると、トランプに意地悪される。トランプは筋金入りの覇権放棄屋・隠れ多極主義者なので、トランプを翻身させる日韓からの米軍撤退をやめさせるのは不可能だ。 (米大統領選挙戦を読み解く)
安倍は、今後の米軍撤退を引き留めようとしてトランプから意地悪されて人気を下げるより、その前の今のタイミングで辞めることにしたのでないか。病気を理由に辞める話を作ることにして、何度も病院に検査に行き、何時間も病院に滞在して病気の演技をしたのでないかという感じもする。 (加速するトランプの世界撤兵)
トランプ以前は、米国の覇権と安保の戦略を軍産複合体(諜報界)が牛耳っていた。日本の外務省は軍産の手下であり、米軍産と日本外務省との組織的な関係によって日米関係・日本の対米従属が維持されていた。トランプは、軍産に喧嘩を売って就任し、ロシアゲートなど軍産からの攻撃を跳ね返して逆におおむね軍産を退治して今に至っている。2016年のトランプ当選後、日本外務省は米国の新たな権力中枢と親密にできるルートを喪失した。外務省が呆然としているところに安倍が訪米し、個人的にトランプに会って親分子分の契りを結んでしまい、外務省や軍産を経由しない日米の同盟関係を作った。それ以来、日本で米国の権力中枢つまりトランプと最もつながっているのは安倍である。安倍以外の政治家は、トランプとの強い関係を持っていない。安倍はトランプとの関係性をテコに、日本で独裁的な権力を維持してきた。 (世界と日本を変えるトランプ) (ロシアゲートで軍産に反撃するトランプ共和党)
安倍の今回の突然の辞任は、トランプと安倍の関係、もしくは日米の安保関係が終わりになったのでないかという疑念を抱かせる。安倍は、トランプに何らかの形で日本との関係を切ったので辞めるのでないか。そうでなければ辞める必要などない。従来の日本にとって最重要なことは、米国との同盟関係だ。病気がちでも、トランプからの電話を受けられれば首相をつとめられる。 (Pentagon Gives Trump Options For Cutting Troop Levels In South Korea)
トランプは、世界からの撤兵を加速している。ドイツ駐留数を大幅に減らし、アフガニスタンやイラクからの撤兵も進めている。「これらはトランプが勝手に言っているだけで、国防総省は実際の駐留の減員をやっていない」という指摘がある。そうかもしれない。それでも事態は大して変わらない。実際の駐留米軍数でなく、トランプが各国からの米軍撤兵を言い続けていることが、米国の覇権を低下させ、同盟諸国が安保面で米国と米軍に頼らなくなり、撤兵したのと同じ効果を持ち、最終的な撤兵へとつながる。 (US Troops Withdraw From Major Iraqi Base) (Trump Confirms 4,000 US Troops To Withdraw From Afghanistan By November Vote)
日本と韓国について、トランプは従来、いつか撤兵したいと言うだけで、実際の撤兵計画まで至っていなかった。もしかするとトランプは今後、11月3日の米大統領選挙の投票日までに、日韓からの具体的な撤兵計画を言い出すかもしれない。世界からの撤兵を主張した方が有権者の受けがいいからだ。いまだに軍産に絡め取られている民主党のバイデン陣営も、実際の撤兵を言わないまま、戦争はもうしないと言っている。そう言った方が人気が出るからだ。 (Trump And Democrats Both Promise End To ‘Forever Wars’)
トランプが選挙対策として9-10月に日韓からの撤兵を従来より強く言い出すつもりなら、それより前の8月末の今のタイミングで安倍が辞任を表明するのは合点がいく。しかし、トランプがそこまで言うかどうかはわからない。トランプはすでに在韓米軍の減員について検討している。 (Okinawa: Will The Pandemic Transform US Military Bases?) (Pentagon considers 'adjustments' to US troop levels in S Korea)
日米の安保関係は、今年6月に安倍政権が米国から買った地上イージスのミサイル防衛システムを途中でやめることにしたあたりから、ぎくしゃくしている。7月には、在日米軍の新型コロナウイルスへの対策が不十分だと日本政府が苦情を表明し、日米の安保関係がさらに齟齬をきたしている。これらは、トランプが日本から米軍を撤退しようとしていることに対する日本側からの不満の表明なのかもしれない。トランプは軍産を退治した筋金入りの覇権放棄屋なので、不満を表明されても米軍を撤退していくし、不満を表明する奴には倍返しで意地悪する。 (Japan: US military coronavirus policy has multiple problems) (トランプ、安倍、金正恩:関係性の転換)
日本が米国の言うことを聞きたくなくなっているもうひとつの分野は、コロナ対策としての自粛・経済停止を米国から強要され続けていることだ。日本は、世界的に見ても新型コロナに感染発症しにくい国民であり、すでに集団免疫にも達しており、米国から強要される経済停止策など必要ない。スウェーデン式の方が良い。米国から無意味な経済停止を強要され続けるほど、日本経済の自滅がひどくなり、すでに経済を成長の状態に戻している中国にどんどん抜かれていく。日本はコロナ対策の面でも、そろそろ対米従属をやめねばならない。 (米中逆転を意図的に早めるコロナ危機)
今後、後任首相の選定になるが、対米従属の色合いが強い人が次期首相になると、トランプからのいじめがひどくなり、短命に終わるか、対米従属からの離脱を余儀なくされていく。安倍は従来、米国との関係を維持しつつ中国との関係を強化してきた。トランプの米国が安保面で日本を見捨てる傾向を加速しそうな今後、日本側は、米国との関係を軽視して中国との関係を強化する親中国派を次期首相にする可能性もある。この場合、トランプが望む在日米軍の撤退に、日本はそれほど反対せずに事態が進む。 (Trump Has Damaged the U.S.-Japan-South Korea Alliance—And China Loves It)
今後注目すべき点は、安倍がやめた理由が、トランプの日本に対する態度が変わったからなのかどうか、トランプの言動からうかがえるかもしれないことだ。安倍の辞任が、トランプの覇権転換策と全く関係ないとは考えにくい。だが、その確たる証拠もないのが現状だ。
◆中国の対米離脱で加速するドル崩壊
【2020年8月7日】
今後のドルと米覇権の崩壊の引き金を引く要素は、金融のバブル崩壊や実体経済のコロナ不況でない。トランプが煽っている米中対立に押されて中国が経済的に米国やドルから離脱していく「中国の対米自立」がドル崩壊を誘発する。米国は自滅し、日韓や欧州は、中国中心の新世界システムへの参加を余儀なくされる。これは、1945年に米国(国連P5を作ったロックフェラーとか)が作ろうとして英軍産に冷戦で阻止された多極型の世界体制を実現する策略だ。多極化は、今後の均衡のとれた世界経済の長期的な発展のために必要なのだろう。
中国の対米離脱で加速するドル崩壊
マスコミでは報道されないが、ドルの基軸性が崩壊が加速している。報じられない理由は、皆がドル崩壊を認めざるを得ない顕著な兆候がないからだ。「またもや田中宇の妄想か」と言われそうだが、そうではない。リーマン危機から始まったドルの崩壊過程は、今まさに加速している。ドルの基軸性は米国覇権の基盤だ。ドル崩壊は米覇権の崩壊を意味する。ドル崩壊の加速を私が感じる根拠は3つある。(1)金地金が高騰し、今後さらに高騰しそうなこと。(1)ゴールドマンサックスが7月28日にドルの基軸性の喪失を予測したこと(ゴールドマンは「かもしれない」をつけたが、内容的に断定的な予測といえる)。(3)中国がドル建ての貿易決済や資産保有を減らすと決めたこと、の3点だ。いずれも最近の記事に書いた。 (US dollar’s grip on global markets might be over, warns Goldman) (急接近するドル崩壊) (中国が内需型に転換し世界経済を主導する?)
今起きているドル崩壊の加速を感知しにくい理由は、米国中心の株や債券のバブルが崩壊せず高値が保たれているからだ。ナスダックや米国債10年ものが最近、史上最高値を更新した。加えて、ドルの過剰発行である米連銀のQE(量的緩和策)はこの2週間ほど増加が止まり、微減を続けている。連銀は資産総額が7兆ドルを超えないことにしたのかもしれない。日欧中銀は、少しずつQEを増額する前からの動きを変えていない。以前のように、米国が日欧に肩代わりさせてバブルを維持しているとも思えるが、日欧も自国のコロナ経済対策の財政赤字増・国債増発をQEで買い支える必要があり、米国を助ける余力が減っている。 (The Fed - Factors Affecting Reserve Balances) (Bank of Japan Accounts (Every Ten Days)) (ECB Weekly financial statements)
株や債券のバブル崩壊を止めるためにQEを急増せねばならなくなると、ドルの危険が増す。QEを急増しても株や債券のバブル崩壊を止められなくなると、ドル崩壊が加速する。現状は全くそうでない。QEを減らしても株や債券の高値が維持できており、米金融界とや連銀としてはいい感じだ。金融的な状況はドル崩壊から遠い。今後、コロナ第2波の都市閉鎖で米国などの実体経済が再崩壊し、株や債券が暴落したら事態が変わるが、今は小康状態が保たれている。 (コロナ第2波で金融危機の再燃へ) (Futures Jump, Gold Soars As Dollar Destruction Accelerates)
株や債券、QEの小康状態はコロナ危機前と同じだ。相場的に、現状が以前と違う点は、金地金の高騰が容認されていることだ。株や債券、QEの維持に余裕があるのだから、以前なら、その余裕資金を使って金地金の売り先物を買って金相場を上昇抑止するのが常態だった。今年3月、暴落した株や債券をV字反騰させるために連銀がQEを急増したが、その時に同時に行われたのが金の暴落だった。金はドルの究極のライバルだから、金の高騰を容認するとドルの覇権低下を世界に感じさせてしまう。今まさにそれが起きている。 (Gold’s Hot Streak Has Legs to Continue to $3,500 (Or Higher))
先日まで1600ドルだった金相場は今や2000ドルを超え、今後は意外と早く2500ドルに達するとゴールドマンが予測している。金相場の抑止は放棄されている。米国債が金利が不健全に低すぎて安全な資産の置き場所と思えなくなったため、機関投資家は安全資産として米国債の代わりに金地金を買うようになっている。前代未聞だ。いずれ(今秋?)コロナ不況の再来で株や債券が暴落してQEの増額が再開されたら、その資金で金相場をいったん下落させる(そしてV字回復する)のかもしれないが、それまでは株や債券と金の両方が上がり続ける。 (ずっと世界恐慌、いずれドル安、インフレ、金高騰、金融破綻) (King Dollar? Rabobank Warns "Staying On Thrones Means A Battle At Some Point")
ゴールドマンがドルの基軸性の低下を予測した意味は、私の読み解きでは、中国がドルを使わなくなるという地政学的な分析として発している。株や債券のバブル崩壊、コロナの都市閉鎖による米経済の自滅といった金融経済の要因よりも、中国が米国覇権のシステムから離脱するという国際政治面が、ドルと米覇権の崩壊の最大要因になるという話だ。地政学は、相場の違って数値化されないので変化が見えにくい。米中対立の政治の話になると日本人は「米国が中国に負けるはずがない」という対米従属の洗脳に妨害されて現実が見えなくなる。私が説明してもわかってもらえない。 (ドル崩壊への準備を強める中国)
私が今回、新たな分析としてこの記事に書きたいことは、これからのドルと米覇権の崩壊の引き金を引く要素が、金融のバブル崩壊や実体経済のコロナ不況でなく、トランプが煽っている米中対立に押されて中国が経済的に米国やドルから離脱していく「中国の対米自立」だという点だ。 (Russia-China "Dedollarization" Reaches "Breakthrough Moment" As Countries Ditch Greenback For Bilateral Trade)
中国とロシアは、2国間貿易の決済の通貨に占めるドルの割合を減らし、ユーロや自国通貨建て(人民元とルーブル)を増やしている。中露貿易は2015年まで決済の90%がドルだったが、ドル比率は昨年に51%、今年上半期は46%に減り、史上初めてドルが半分以下になった。上半期は、ユーロ30%、人民元などその他通貨24%となっている。トランプがロシアや中国をSWIFTから外すと言っているのでドル利用が減っている。自滅的だ。 (Russia and China ‘ditch’ dollar and increase use of euro) (China and Russia ditch dollar in move toward 'financial alliance')
トランプ政権は、米国の株式市場に上場している中国企業に対し、米当局が厳しい調査を行い、従わない場合は上場廃止にすることを検討している。トランプは、中国が非ドル化を決心した途端、台湾に兵器を売ったり閣僚を派遣したり、南シナ海で米軍をうろうろさせたりして中国を怒らせる。トランプは、米中間の経済の連携を片っ端から切断していく。中国は、それで経済破綻していくのでなく、対米自立し、ロシアやイランを筆頭に多くの非米諸国を取り込み、儲けを増やしつつ米国と別の経済システムを作っていく。 (White House Seeks Crackdown on U.S.-Listed Chinese Firms) (Shaping Eurasia: Russia – China Bilateral Trade And Cooperation)
それが成功すると、日韓や欧州も中国中心の新世界システムへの参加を余儀なくされる。トランプは、中国を潰すためでなく、中国の対米自立を成功させ(米国を自滅させ)るために中国敵視をやっている。これは、1945年に米国(国連P5を作ったロックフェラーとか)が作ろうとして英軍産に冷戦で阻止された多極型の世界体制を実現するための策略だ。この転換は、今後の均衡のとれた世界経済の長期的な発展のために必要なのだろう。半信半疑で良いから、時々このシナリオを思い出しつつ、これからの国際政治経済の展開を見ていくと良い。10年後に振り返ってみると、なぜか当たっているだろう。 (多極化の目的は世界の安定化と経済成長) (田中宇史観:世界帝国から多極化へ) (隠れ多極主義の歴史)
米議会の民主党は、米連銀の目的として「貧困救済」を追加しようとしている。QEでドルを大量発行し、そのカネでUBIやMMTといった資金ばらまき政策をやらせようとする左翼の理論だ。この手の政策は必ず失敗する。貧困層や中産階級にあまり資金がいかず、多くの資金は議会に影響力を行使できる投資家や企業に入る。むしろ貧富格差を広げて終わる。ドルの過剰発行に拍車がかかり、ドル安から米国でインフレが激しくなり、庶民の生活が悪化する。左翼とトランプが寄ってたかって非効率な財政拡大を展開し、米国を自滅に追い込んでいく。 (Congressional Democrats Are Trying to Politicize the Federal Reserve) (Dems Increase Stimulus Demands Despite White House Concessions; Trump Weighs Executive Order For Extensions)
◆急接近するドル崩壊
【2020年7月31日】
今後ほぼ確実に、コロナの長期化で金融バブルが再崩壊する。QEの再度の急増が必要になるが、それをやるとドル崩壊に拍車がかかり、米国覇権の喪失と多極化が急進展する。一方、これ以上QEをやらないと、金融バブルの大崩壊が起こり、それも米覇権喪失と多極化につながる。早ければ11月の米大統領選挙の前に金融崩壊が起きる。ドルや金融が崩壊すると金相場が高騰する。米連銀がQEを再増加すると、金相場はいったん暴落してから反騰する。QEがもう拡大されないなら、このまま続騰する。
急接近するドル崩壊
トランプの米国から敵視され、米ドル建ての貿易決済を禁止される経済制裁を受けそうな中国の当局筋(中国銀行)が、中国の銀行界に対し、ドル建ての国際決済をやめて人民元建て決済に移行しなさいと要請し始めた。中国政府系の4大国有銀行の一つで外国為替に強い中国銀行が銀行界に対し、米国に監視されるSWIFT(世界の銀行間の決済情報システム。国際銀行間通信協会)に基づくドル建て決済を使うのをやめて、中国製で米国から監視されないCIPS(SWIFTのライバル)に基づく人民元建てなどドル以外の決済を使うようにすべきだとする報告書を出した。7月29日に報道された。 (Chinese banks urged to switch away from SWIFT as U.S. sanctions loom) (Chinese Banks Urged To Switch From SWIFT And Drop USD In Anticipation Of US Sanctions)
SWIFTで世界の銀行が送受信するドル建て国際決済の情報は米NY連銀にも送られるので、米政府は不適切と考えた送金を銀行にやめるよう命じられる。SWIFTはベルギーの民間企業で、米国の要請を受けてイランや北朝鮮の銀行による利用を停止した。米国が今後SWIFTに要請し、中国の銀行の利用も停止させる可能性がある。イランや北はもともと米企業との取引がないので、SWIFTから追放しても米国側が困ることはなかった。だが中国は違う。米国と同盟諸国(日本などドル建て決済の諸国)にとって、中国との貿易は世界最大級だ。米欧日の国際企業にとって中国との取引は儲け頭だ。中国をSWIFTから外すと中国側だけでなく、米国と同盟諸国も非常に困る。 (US dollar payment system debate continues, can America cut China off from SWIFT?) (コロナ時代の中国の6つの国際戦略)
だからこれまで関係者の多くが、米国が中国をSWIFTから追放することはない、と言っていた。だが、6月末に中国政府が香港に国家安全法を制定して自治を制限して以来、トランプは中国への非難・敵視と制裁を強めている。米国が中国をSWIFTから外すことが、現実にあり得る話になってきた。最近の記事で繰り返しているように、中共中央からもドル決済・SWIFT依存をやめる戦略が発せられている。 (ドル崩壊への準備を強める中国) (Opinion: China Shouldn’t Take Global Payment Network SWIFT for Granted Amid Potential U.S. Sanctions)
米国側から仕掛けられそうなSWIFTの話だけでなく、中国側からのドル離れも起きている。中国政府の外貨管理局によると、中国の貿易決済に占める人民元の割合は、2年前の19%から、今年6月に37%にまで増えている。半面、米ドルの割合は同時期に70%から56%へと減った。これは民間の貿易関連企業が中国政府の要請に応えたというより、元ドル為替の相場が不安定になってきたのでドルより人民元を好む中国企業が増えたという金儲けの話だと(矮小化)されている。 (China Has Quietly Cut Dollar Usage In Cross-Border Trade By 20%) (Fear Grips Beijing Over Possibility Of Washington Cutting Off China's Access To US Dollar System)
中国側には、近年新たに取引が増えている影響圏(経済覇権地域)として中央アジアから中東アフリカ、ロシア東欧、南欧にかけての一帯一路の領域があり、この地域の貿易は中国にとって純増分だ。中国は米欧からの経済攻撃を避けるため、経済覇権の拡大をこっそりやる策をとっており、中国と一帯一路との取引は統計の発表が少ない。中国の貿易はこっそり拡大している。中国と一帯一路との取引は、人民元など完全な非ドル体制だ(ドルを使うと米国に筒抜けになり、こっそり策にならない)。こっそり部分を含んだ中国と世界との総貿易でみると、人民元の割合はもっと高く、ドルの割合はもっと少ない。中国は、SWIFTのドル決済から追放されてもあまり困らない。 (中国は台頭するか潰れるか) (米国を中東から追い出すイラン中露)
中国だけでなく、世界の産油国の多くが非ドル化に向かっている。ロシア、イラン、イラク、ベネズエラといった産油国はいずれも米国から敵視されている。サウジアラビアも対米関係が微妙だ。これらの産油国と中国の石油ガス取引は大半が人民元だろう。中国はこっそり拡大策なので、人民元で取引されてしまうと国際統計として把握しにくくなる。少し前まで、世界の石油ガス取引の通貨は米ドルと決まっており、このペトロダラーのシステムがドル覇権の基盤だとされていた。しかし今や、世界の石油ガス取引のかなりの部分が人民元になっており、ペトロダラーとペトロユアンが並立・相克している。米中逆転の覇権転換が起きている。 (Will China Forming Oil Buying Cartel End the Petrodollar?) (反米諸国に移る石油利権)
中国側の貿易の拡大と反比例して、米国側の貿易は縮小している。この状態で米国が中国勢をSWIFTから追放すると、米中以外の世界は、米国による中国制裁に積極的に協力するのでなく、米国を怒らせないようにしながら中国との貿易を維持拡大しようとする。トランプは、中国制裁に協力しない同盟諸国との同盟関係を切ろうとするだろう。諸国は、米国との同盟をあきらめていくしかない。日本は陸上イージスをあきらめた。EUや韓国は、米国の中国敵視に乗りたくないと表明している。トランプは同盟国を切りたい。日韓EUは、安保と経済の両面で対米自立を余儀なくされる。インド太平洋とかクワッド(米日豪印4か国)と呼ばれる中国包囲網の戦略は、イメージ先行の外交=軍産の幻影だ(軍産はトランプに乗っ取られている)。 (South Korea Is Charting an Independent Course on China) (Communist China and the Free World’s Future) (Mike Pompeo Challenges China’s Governing Regime)
トランプが中国をSWIFTから追放しなくても、総合的に米中の経済分離(デカップリング)が進んでいく。2分された世界経済は、中国側が拡大し、米国側が縮小していく。米国自体の経済も、コロナと暴動で消費力が落ち続ける。世界各国は経済的に、米国を軽視し、中国を重視せざるを得ない。それまで世界で唯一の基軸通貨だったドルは、米中分離で力が半減する。トランプの中国敵視がドルと米国覇権のパワーを落とし、中国の台頭を加速させている。 (Bush advisers alarmed by Trump administration's China moves) (ドル覇権を壊すトランプの経済制裁と貿易戦争) (暴動が米国を自滅させる)
ドルの覇権低下はまだ実現していない未来の話でない。すでに7月中旬から世界の諸通貨に対するドルの為替が下落している。ゴールドマンサックスはこのドル安を、ドルの覇権・基軸性の低下、つまりドル崩壊であると7月28日に指摘した。ゴールドマンの指摘を受け、ドルの究極のライバルである金地金の相場が高騰した。ドル崩壊が起きているものの、それと並行して起きるはずの米国債の金利上昇(債券安)や株の暴落は、米連銀のQEによるテコ入れがあるので起きていない。逆に、債券や株の相場はQEの資金注入によって上がっている。 (Gold may eclipse dollar as reserve currency after outsize coronavirus spending: Goldman Sachs) (Spike in gold puts dollar's reserve status in question: Goldman Sachs)
少し前まで「米国は、無限にテコ入れできるQEがあるのでドルも債券も崩壊しない」と言われていた。私もそう書いていた。現在7兆ドルの総額(米連銀の資産総額)であるQEが25兆ドルぐらいになってもドルは崩壊しないと考えられていた。しかし今、QEの総額が7兆ドルでしかないのに、ゴールドマンがドル崩壊だと警告するドルの為替安が起きている。これからコロナの長期化で米経済が悪化して株や債券の相場が下がるときに、連銀がQEを急拡大して相場をテコ入れしたら、そのQE拡大がドル崩壊の加速につながる。米国は「ここで無理をしたら病気が急に悪化して死ぬぞ」と医者に警告される崩壊寸前の健康状態なのだ。米連銀はもうQEを大幅拡大できない。QEは、意外と早く、今すでに行き詰まっている。 (中央銀行群はいつまでもつか) (史上最大の金融バブルを国有化する米国)
米国中心の世界の金融システムは今のところ、米連銀など中銀群があまりQEをやらなくても上がる小康状態になっている。だが今後、ほぼ確実に、コロナの長期化で金融バブルが再崩壊する。QEの再度の急増が必要になるが、それをやってしまうとドル崩壊に拍車がかかり、米国覇権の喪失と多極化が急進展する。一方、これ以上QEをやらないと、金融バブルの大崩壊が起こり、それも米覇権喪失と多極化につながる。早ければ11月の米大統領選挙の前に金融崩壊が起きてしまう。ドルや金融が崩壊すると金相場が高騰する。米連銀がQEを再増加すると、金相場はいったん暴落してから反騰する。QEがもう拡大されないなら、このまま続騰する。 (ずっと世界恐慌、いずれドル安、インフレ、金高騰、金融破綻) (Gold’s Record Price Is All About Currency Debasement)
どちらの道をたどるにしても、最近まで2-5年以内と思われていたドル崩壊がぐんと近づき、今年か、遅くても来年の話になった。米国の衰退と中国の台頭、覇権の多極化が進む。もう多極化は陰謀論でない。現実だ。トランプとその背後にいる多極主義的な資本家たちはほくそ笑んでいる。核保有国である米中は戦争しない。米国は、中国の子分になったイランとも戦争できない。戦争予測こそ妄想の陰謀論だ。戦争の代わりにコロナ危機が誘発されている。コロナが真の死因で死ぬ人は世界的にほとんどいない。コロナも失業と貧困は急増するが、死ぬ戦争より貧しくなるコロナの方がましだ。 (US-China Military Conflict Deemed "Highly Likely" To "Almost Certain" Over Next 3 Years 間抜けなカンガルー 笑) (世界資本家とコラボする習近平の中国) (911とコロナは似ている) (長期化するウイルス危機)