【目次へ】 座標軸から
続折々の記へ
続折々の記 2020⑥
【心に浮かぶよしなしごと】
【 01 】08/30~ 【 02 】08/31~ 【 03 】09/01~
【 04 】09/03~ 【 05 】09/10~ 【 06 】09/11~
【 07 】09/15~ 【 08 】09/19~ 【 09 】09/23~
――――――――――――――――――――――――――――――
【 08 】09/19
憲法ないがしろの果てに
絡まり合う日米・憲法・退位
「法の支配」立て直せるか
スクープ文書
2015/9/19 のもの
問われる菅政権の安倍政治の継承
安保法制は米国の要求
米大使館 「対米誓約」 優先を絶賛
米は、日本人が考える以上に「国民の運動に力が」と恐れ
根強い戦争参加への批判 安倍政治"常態化"許さず
09 19 (土) 座標軸から 3件 論説主幹・根本清樹
安倍政権はいろいろと国民から遊離した勝手な政治で汚してきたことが一度に露見した感じである。
のど元過ぎれば熱さを忘れる。 こんな言い伝えだが、大事な教えだ。
座標軸から
論説主幹・根本清樹
憲法ないがしろの果てに
国の最高法規に背を向け、国権の最高機関を軽んじ、安倍首相が衆院解散を表明した。憲法あれどもなきがごとし、である。
内閣不信任が決議された場合は別として、いつ何時なら内閣は衆院を解散できるのか。憲法が明示しないことから、長く議論が続き、なお決着を見ない。
「なれあい」あり、「死んだふり」あり。戦後史上の解散は多様だ。有利な時に打ちたいのが権力者の常としても、憲法上4年とされた議員の任期を途中で打ち切る責任は重大である。それでも断行するからには、当然ながら相応の「大義」が求められてきた。
■2度目の「乱用」
「疑惑隠し」があからさまな今回の判断に、大義は見いだせない。野党の混迷もあり、好機と踏んだのだろうが、政略が過ぎよう。消費増税分の使い道の変更は取ってつけたようだ。
議員の任期を2年も残していた2014年11月に続き、解散権の乱用を批判されるのは2度目となる。
もう一つの意味でも、首相は憲法を粗略に扱った。
野党による臨時国会の召集要求を拒み続け、あげくに演説も質疑も飛ばして冒頭解散に及ぶ。
憲法53条は、衆参いずれかの議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は応じなければならないと定める。2分の1でも3分の1でもない。異例なまでに少数の声に従うことを内閣に命じている。
立法府が自律的に動き出す道を確保する53条の意味は、日本の議会制民主主義にとって極めて重い。
野党は15年の安保法成立後にも臨時国会を求めたが、政権は取り合わなかった。この憲法にもとる対応も、実質2度目となる。
■横紙破りの連続
思えば、安倍政権の5年近くは、憲法に対する横紙破りの連続だった。
その最たるものが、集団的自衛権の行使を憲法解釈を変えて認めたことである。9条の条文を改正しない限りできないとしてきた歴代内閣の立場を、あっさり捨てた。
失敗したとはいえ、改憲の発議要件を緩める96条改正論も、「ゲームに勝てないから、勝てるようにルールの方を変えてしまえ」という無理な発想だった。
環境権、緊急事態、自衛隊明記……。狙いをつける項目も入れ替わった。ともかく変えやすそうなところから。改憲の自己目的化というほかない。
根底には現憲法への強い不満があるのだろう。「押しつけ憲法」観に由来する思いか。かつて安倍氏が口にした「みっともない憲法ですよ」という言葉を忘れるわけにはいかない。
現憲法をないがしろにするこうした積み重ねの果てに、今回の解散はある。
その総体に対し、私たち有権者は審判を下すことになる。
座標軸から
論説主幹・根本清樹
絡まり合う日米・憲法・退位
日本の政治は今、重く、難しい課題の数々に同時に直面している。それは相互に関連しつつ、場合によっては、この国に大きな転換をもたらす可能性がある。
まず日米関係だ。安倍首相のいう「希望の同盟」を、次の大統領トランプ氏はどう扱うのか。いち早く会談した首相から発信はなく、安全保障や通商政策面の疑問は宙づりのままだ。
在日米軍の撤退といった選挙戦中の発言をそのまま実行はしないとしても、双方の安保協力は再構築を迫られるかもしれない。日本国内では「自主防衛」を語る声すら既に聞こえる。
次に憲法。衆参両院の憲法審査会が久しぶりに店開きした。「改憲勢力」は両院で3分の2を占める。議席数だけ見れば、国会による改憲発議が公布70年にして今までになく現実味を帯びてきたといえる。
そして天皇陛下の退位をめぐる議論である。皇位継承や公務のあり方は、戦後の象徴天皇制の根幹に関わる。専門家の意見は退位への賛否はもとより、法改正の手法でも割れている。
これらの難問は互いにバラバラに存在しているわけではない。
日米関係では、憲法解釈の変更を通じ、米国との集団的自衛権の行使に道が開かれた。野党には、与党が強行した「違憲」の安保法制を放置したままで憲法論議はできない、との声がある。議論の入り口で、日米と憲法が絡まり合う。
自民党の地金というべき「押しつけ憲法」論の根底には、「押しつけた米国」に対する複雑な感情がわだかまっている。その屈折は、全面書き換えに等しい党の改憲草案にあらわだ。
当面は新しい人権や緊急事態といった個別項目から取り上げていくにしても、押しつけ論はくすぶり続けるだろう。
自主憲法を渇望しつつ、日米同盟を強化するという二律背反の上に、自民党は長らく巧妙に乗っかってきた。しかし、トランプ氏の出方次第では、その均衡が崩れる可能性もある。
天皇の退位も、憲法と深く関わる。皇位の世襲は2条が定めている。その継承のルールについて有識者任せにせず、憲法審査会でこそ議論すべきだとの主張は、うなずける。憲法は、天皇の地位は「国民の総意」に基づくとする。国民代表である議員らが知恵を出し合うのは当然だろう。
営々と積み重ねてきた「国のかたち」を、ここで変動させるのかどうか。
日米、憲法、退位。三つを別々に扱うのではなく、有機的に連関させながら考える視点が欠かせない。
自由と民主主義を基軸とする世界秩序が揺らぐかと見える中、日本政治の底力が問われる。最終的に決めるのは、主権者である私たち一人ひとりである。
<訂正して、おわびします>
▼20日付1面「座標軸 絡まり合う日米・憲法・退位」で、「『改憲勢力』は初めて両院で3分の2を占める」としましたが、「初めて」を削除します。改憲を容認する政党の議席数が両院で3分の2を占める状態は、2013年7月の参院選で一度、生じていました。
座標軸から
論説主幹・根本清樹
「法の支配」立て直せるか
安倍晋三首相による奇襲作戦は図に当たった。
4年前、安倍氏に原発「即ゼロ」を迫った小泉純一郎元首相の言葉を思い出す。「首相の権力は強い。ピンチをチャンスに変える権力を首相は持っている」
安倍氏は今回、政治上の師の教えにつまみ食い的に従った。大義の怪しい強引な解散劇だったが、結果的にピンチをチャンスに変えたことは確かだ。
総じて首相の手にする権力が大きくなりすぎた。これが、自民大勝という結果を受け、いま考えるべき問題の一つである。
■首相に権力が集中
衆院小選挙区制をはじめとする一連の統治機構改革は、政権交代のある政治をめざすとともに、首相と官邸に権力を集中させていく過程でもあった。
衆参両院の間の「ねじれ」が一時見えにくくしていたとはいえ、両院を制した安倍首相の政権運営は、改革の一つの帰結をわかりやすく示す。
霞が関も自民党内も沈黙する。首相とその取り巻きか、さもなければ陣笠議員か。力の偏在は、今回の選挙戦でも野党幹部に皮肉られた。「300人いても、いないのと同じ」
結果として、この5年の政治の風景は、憲法以下のルールが軽んじられる殺伐としたものになった。
特定秘密保護法にせよ、安全保障関連法にせよ、「共謀罪」法にせよ、合意づくりは面倒だし、議論は無駄だといわんばかり。「こんな人たち」発言に、政治的な対話を重んじる姿勢は見受けられない。
「法の支配、人権、自由」。首相が折節、外交の場面で発信する近代の普遍的原理だが、言葉だけなのだろう。内政では言行不一致といわざるをえない。
■「立憲」新党の問い
肥大化した首相の権力をどう抑えるか。権力を拘束し、人々の自由を保障する「法の支配」を立て直せるか。衆院選後の政治の焦点としなければならない。
その意味で今回、「立憲」を名乗る新党が躍進したことは示唆的だ。
代表の枝野幸男氏は訴えた。「いかなる権力もルールに基づいて使われなければならない」
「トップダウンの傲慢(ごうまん)な政治」に対する指弾が有権者の支持を集めたことは、現状への危機感の一定の広がりをあらわす。
首相が改憲を論じたいのなら、まずは解散権の乱用を防ぐ方策に着目するのも一法ではないか。立憲主義の基本に立ち返った重心の低い議論を望む。
09 20 (日) 赤旗より 驚くべきスクープ文書
今までもいろいろと言われてきた内容であり、自分の考えも築いてきたいたが事実が示されてみると自分の考えが確かになっていく。
スクープ文書 2015/9/19 のもの
……, capping off a historic legislative feat for the Abe administration.
cap cap は動詞として帽子をかぶせる;ふたをするだから、capping off で
払いのける意味だろう
legislative 立法の、立法上の (ここでは日米安保条約だろう)
feat (勇敢な)手柄、(難しい)芸当;たいしたこと
administration 管理、行政、政権
新聞では 「安倍政権にとって立法上の歴史的偉業をなし遂げた」 としている。
具体的記事は次のとおりである。
首相となる菅義偉 氏が掲げる 「安倍政権の継承」 。 しかし世論調査(「共同」8~9日)では、安倍政権が進めた改憲やアベノミクスの継承には6割近くが反対です。
なかでも最悪の「負の遺産」は安保法制=戦争法の国会成立強行。 菅氏は強行時、官房長官でした。
編集部は米情報自由法を活用し、安保法制強行成立前後に在日米大使館が本国に伝えた秘密公電を入手しました。 米国は安保法制強行をどうみていたのか。(田中一郎記者)
問われる菅政権の安倍政治の継承
編集部は、安保法制強行について在日米大使館との間で交わした公電の開示を米国務省に請求。 2015年9月に在日米大使館が発した5本の公電を国務省は開示しました。
安倍自公政権が、違憲の安保法制を強行したのは15年の9月19日。 集団的自衛権行使容認など、日本を海外で戦争する国に作りかえるものです。
集団的自衛権は「憲法九条のものでは行使できない」というのが戦後一貫した政府の憲法解釈。 それを安倍政権は14年の閣議決定で勝手に変更しました。
閣議決定に触れているのが15年9月9日の公電。 米側は「平和憲法の解釈を初めて変更した」「歴史的決断」と高く評価しています。
当時、安倍晋三首相は "邦人を米艦を自衛隊が守れるようにするのが集団的自衛権だ" と国民に説明していました。 しかし公電では 「日本の軍隊は特定の条件のもとで同盟国への攻撃に対処できることが認められる」 と強調。 "米国の戦争に役立つようになった" と評価しています。
参院の本会議での強行成立を伝えた9月19日の公電。 国会周辺に抗議の市民が押し寄せたにもかかわらず、 「与党は午前2時半までに何とか採決を終わらせた」「歴史的偉業」 と絶賛しています。 国民の怒りに対する恐れもにじみ出ています。
元外務省国際情報局長の孫埼亨さんはいいます。 「公電を見ると、安保法制をめぐって二つの大問題があったことがわかります。 米国の戦争に自衛隊を参加させる憲法違反の問題と、国民意思に反しても強行する民主主義否定の体質です。 こんな政治を続けていいのかが問われています」(6面に続く)
安保法制は米国の要求
(1面のつづき)
憲法を踏みにじる安保法制=戦争法の強行成立から19日で5年。 5本の公電には、米側が安保法制成立に執念を燃やしながらも、反対世論の強まりに神経をとがらせていたことが詳細に描かれています。
法案の国会提出前に米で安倍首相が約束
「米日関係がこれほど強固になったことはない」。 2015年9月9日の公電②は日米関係をそう評価しています。
根拠の一つに挙げたのが、同年4月29日に安倍晋三首相(当時)が米上下両院合同会議で行った演説です。
演説で安倍首相は 「(温ぽ法制成立を)夏までに成就させる」 と誓約しました。 当時、法案は国会に提出されていませんでした。 国会で議論もしていない法案の成立を勝手に米国で約束する。 公電が絶賛する 「強固な日米関係」 とは、こんな異様な日米関係です。
当時、通常国会は6月24日で終わるはずでした。 しかし自公両党は安保法制を成立させるため、戦後最長の95日間の会期延長を強行。 安保法制は7月16日に衆院を通過しました。
9月9日の公電はこうした経緯に触れ 「歴史的法案を成立させるという上下両院合同会議での制約から、彼(安倍首相)の政府は逃げなかった」 と強調。 何よりも米国への誓約を優先した安倍政権の姿勢をほめたたえています。 まさに "米国いいなり"です。
「連休前に成立すれば国民は遊んで忘れる」
参院安保法制特別委員会で採決が強行されたことを伝えた9月17日の公電③。 自民党内の「情報提供者」が、9月19~23日の秋の大型連休前に参院本会議で可決・成立させるつもりだと語ったことを紹介。 「そうすることは事実上の冷却期間を作ることになる。日本の人々は遊びにいき、この問題を忘れてくれるかもしれない」と記しています。 "連休で怒りを忘れさせよう"とは、あまりにも国民をばかにした話です。
これは反対世論の根強さに対する恐れの表れでもあります。
連休後に採決が持ち越されると、同公電は 「5日間の連休は、反対勢力が抗議行動への参加者を集める機会を増すことになりかねない」 と述べ、デモの規模が拡大しかねないことを危惧しています。
続けて公電は 「反対世論は強まり続けてきた」 と指摘。 9月13日に広島で7千人の抗議行動があったことや14日の国会前行動に4万5千人が結集したことを報告しています。
それに先立つ9月8日の公電①は、 「安保法制に反対し抗議する動きは頻度でも規模でも拡大している」 とし、12万人が国会周辺を埋め尽くした8月30日の行動を紹介しています。
小政党の動きも分析修正案の行方を予測
公電は安保法制をめぐる国会内の動きを事細かく報告しています。
たとえば9月8日の公電は 「日本:小政党が大きな影響力? あまり知られていない野党が法案修正を目指す」 と題し、次世代の党、新党改革、日本を元気にする会の3党による安保法制の修正案を詳述しています。
同修正案について "自衛隊の海外派兵にあたり国会の事前承認などを求めたものだ" と紹介。 ただ法案の修正には衆院で採決をやり直す必要があるとし、法案の付帯決議に内容を盛り込むほうが 「より可能性がある」 と指摘しています。 結局、3党は付帯決議をつけることで修正のないまま法案に賛成。 米側の予想通りの展開になりました。
成立後「新しい法制の実行の検討が必要だ」
安保法制の国会成立後に出された9月28日の公電⑤は、強い反対世論と野党の激しい批判にもかかわらず安保法制が可決・成立したと評価。 そのうえで 「いま安倍政権は、この新しい法制の実行を検討しなければならない」 と記しています。 成立した途端、日本側に次の 「宿題」 を課す米国。 "米国いいなり" の安倍政権の舞台裏が透けて見えます。
米大使館 「対米誓約」 優先を絶賛
米国務省が編集部に開示した在日米大使館の公電は次の通りです
これが開示された在日米大使館の公電
①件名「日本 : 小政党が大きな影響力? あまり知られていない野党が法案修正を目指す」 (2015年9月8日、秘密)
次世代の党、新党改革、日本を元気にする会は9月3日に共同で参院に安倍首相の法案への修正案を提出した。
与党案に対する全面的な修正は衆院でもう一度採決する必要がある。 ■■(2行程度非開示) もう一つのより可能性のある選択肢は、修正案の一つかそれ以上の要素を連立与党が付帯決議に盛り込ませることだ。
安保法制に反対し抗議する動きは頻度でも規模でも拡大している。 最も注目すべき事例は8月30日だ。 このとき数万の人たちが国会周辺に集まった(主催者は12万人と主張、警察の見積もりは3万人)。
②件名「エルカインド・エネルギー省次官補とウォーリック国務省筆頭次官補代理の日本訪問のための情報説明」 (9月9日、秘密指定なし)
米日関係がこれほど強固になったことはない。 それは4月の安倍首相の歴史的訪米と上下両院合同会議での演説。その1年前のオバマ大統領の訪日に示されている。
安倍は日米同盟への強い献身を見せ、63年を経た安全保障の協力関係の範囲を拡大し、近代化する構想を主導してきた。 彼の内閣は、14年7月に歴史的決断を下し、日本の平和憲法の解釈を初めて変更した。 これにより、日本の軍隊は特定の条件のもとで同盟国への攻撃に対処することが認められる。 今国会は、この新政策を法律にする難しい審議の最中にある。 審議か性急だとの批判を受け、安倍は史上最長の会期延長を認めた。
しかし、9月27日の国会会期末までにこの歴史的法案を成立させるという上下両院合同会議での誓約から彼の政府は逃げなかった。 法案は衆院を7月16日に通過し、現在参院で審議中だ。
③件名「日本 : 安保法制が参院特別委員会を通過。 連立与党と野党とのたたかいは続く」 (9月17日、秘密)
安倍首相の安保法制は、与野党の激しい闘争の真っただ中、9月17日に参院(安保法制)特別委員会を通過した。
自民党の情報提供者は今もなお9月18~23日のシルバーウィーク(訳注 : 秋の大型連休)の前に参院本会議で可決させるつもりだ。 そうすることは事実上の冷却期間をつくることになる。 日本の人々は遊びにいき、この問題を忘れてくれるかもしれない。
もし採決が連休後になると、法案可決に残された時間は2日間だけとなる。 さらに5日間の連休は、反対勢力が抗議行動への参加者を集める機会を増やすことになりかねない。
安保法制への反対世論は強まり続けてきた。 法案への反対は、約40~70%に及ぶと見られている。 反対する諸団体は、東京や国の至る所で数万人のデモを続けてきた。 安保法制に反対する団体によれば、9月14日に最大4万5千人が国会周辺に集まった(警察は1万7千人と見積もっている)。 9月13日には最大7千人が広島で安保法制に抗議した。
④件名「日本 : 安保法制が参院本会議で可決」 (9月19日、秘密)
国会の外では1万1千人近い抗議の参加者が集まったと伝えられたにもかかわらず、連立与党は午前2時半までに何とか採決を終わらせた。 安倍政権にとって立法上の歴史的偉業をなし遂げた。
SEALDsは最近、幅広い人たちによる安保法制反対デモでは注目を集めている。 9月16日の記者会見で奥田愛基(あき)は、国民が反対の声を上げ、政治に変化をもたらすよう促すことに成功したと強調した。 法案成立後も、こうした政治的活動は続くことに期待を示した。 彼は、法案賛成議員を国民が落選できる場として16年夏の参院選を上げた。
⑤件名「プリンケン国務副長官の日本訪問のための情勢説明」 (9月28日、秘密指定なし)
いま安倍政権は、この新しい(安保)法制の実行を検討しなければならない。 それには、日本がやれる法的限界を新たに拡大した改定日米軍事協力の指針の履行について米国と協力することが含まれる。
米は、日本人が考える以上に「国民の運動に力が」と恐れ
元外務省国際情報局長 孫崎享
まござき・うける = 1943年生まれ。 駐ウズベキスタン大使、外務省国際情報局長、駐イラン大使など歴任。
『13歳からの日本外交』 『朝鮮戦争の正体』 など著書多数
今回開示された公電は「秘密」か「秘密指定なし」です。 米国務省文書としての秘密の度合いは高くありませんが、米側の関心、考えの方向性はわかります。 もう少し秘密度が高くてもいい内容で、これを「赤旗」に開示したことに驚きました。
公電で最も大事なのは、集団的自衛権行使容認の閣議決定について「日本の軍隊は特定の条件のもとで同盟国への攻撃に対処することが認められる」と述べている部分です。
集団的自衛権の行使を前提にした安保法制について政府側は「日本の安全を守るため」と説明してきました。 しかし米側は同盟国=米国の戦争に自衛隊を参加させるためだと明確に位置付けています。 安保法制が日本を守るためだけでなく、米国の要求を実行する発想で作られたことを裏付けています。
公電を見ると、米側は安保法成立に確信を持っていたことがわかります。 それでもデモ隊の様子を事細かく報告しています。
日本には「デモをやっても政治は変えられない」と思っている人がたくさんいます。 しかし日米安保条約改定(1960年)の際は反対運動が広がり岸政権は倒れました。 米国は日本人が考える以上に国民の運動に力があると考えています。
安保法制反対の世論の高まりは、成立後の日米関係全体に影響すると米側は見ていました。 法律が通っても世論の抵抗で実行ではなければ意味がない。 そう心配していたのだと思います。
実際、安保法制施行後の2016年末、南スーダンに派兵されている自衛隊に、安保法制に基づく「駆けつれ警護」という新任務が付与されました。 しかし、それは発動できず自衛隊は撤退しました。
私は(幹部自衛官を養成する)防衛大学校の教授をしたことがあります。 しかし、そうではない海外で、自分や部下が殺されたくはありません。 米側は今も、安保法制に基づき自衛隊が米軍と海外で戦争できるのか疑念を持っているのではないでしょうか。
根強い戦争参加への批判 安倍政治"常態化"許さず
上智大学教授 中野晃一
なかの・こういち = 1970年生まれ。 上智大学国際教養学部教授(政治学)。
『つながり、変える 私たちの立憲政治』 『私物化される国家 支配と服従の日本政治』 など著書多数
米国は以前から日米同盟を深化させる上で憲法9条が制約になっているとみていました。 9条が禁止した集団的自衛権の行使容認は、米側の長年の要求でした。
公電を見ると、この米側の要求を安倍政権が実現できるのか、世論や野党の反発に屈し腰砕けにならないか、心配していることがわかります。
米国は自由や民主主義を口実に掲げ、独裁政権を後押しするなど世界各地で介入政策を進めてきました。 戦う相手がソ連の手先やゲリラ勢力であれば、米国にとって介入の理屈が立ちます。 しかし安保法制に抗して立ち上がったのは、米国が掲げる自由、人権、民主主義に基づいて、自分の頭で考え尊厳を求めて立ち上がった新しい主権者としての運動でした。
公電を見ると、各地の抗議デモを詳しく報告していますが、敵意を持った取り上げ方ではありません。 公電を書いた人は自分たちの矛盾を感じたのではないでしょうか。
安保法制成立を伝えた9月19日の公電(④)は、SEALDs(シールズ=自由と民主主義のための学生緊急行動)の記述で終わっています。 記者会見で奥田愛基さんが法制成立後も取り組みは続くと発言したことを報告しています。 米側は安保法制反対の国民の動きは成立後も続くとわかっていました。 実際、市民連合の結成や市民と野党の共闘に発展しました。安保法制は今も違憲とみられており、米国の戦争に日本が参加することへの批判は国民に根強くあります。
安倍路線継承を掲げる菅義偉氏が首相になれば、安倍政治が一過程のものではなくなり、2012年に始まった第2時安倍政権の政治を「2012年体制」として"常態化"しかねません。 安保法制を動かさず廃止し、安倍政治を終わらせねばなりません。
以上で「赤旗」で取り上げたアメリカ大使館の本国への公電関係記事を終わります。
読んでいて愕然としたのは、安倍総理大臣が国会の議決をせずに勝手に他国と憲法にかかわる重大事項を約束したことでした。
とんでもないことであり、安全保障条約変更に賛成した議員は次期選挙では投票しないことを国民は確認しなくてはなりません。
このままでは戦争参加国として進むことになっています。